(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183497
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】音板楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 13/10 20200101AFI20221206BHJP
G10D 13/08 20200101ALI20221206BHJP
G10F 1/08 20060101ALI20221206BHJP
A63H 5/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G10D13/10 180
G10D13/10 111
G10D13/08 120
G10F1/08
A63H5/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090847
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】二宮 世理子
(72)【発明者】
【氏名】三浦 麻紀
(72)【発明者】
【氏名】柴瀬 頌子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐実
(72)【発明者】
【氏名】石井 祥子
(72)【発明者】
【氏名】海外 遥香
(72)【発明者】
【氏名】平井 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】吉川 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】坂本 志乃
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA28
2C150CA16
2C150DF06
2C150DF27
2C150EH06
2C150EH09
2C150EH13
(57)【要約】
【課題】音板及び共鳴空間を有する音板楽器において、共鳴空間を形成するための構成部品点数を削減して音板楽器の構造の簡素化を図ることができるようにする。
【解決手段】音板楽器1は、打撃されることで音を発生する複数の音板2と、複数の音板2を着脱可能に固定する固定部3と、を備える。少なくとも固定部3は、当該固定部3に固定された複数の音板2から発生した音を共鳴させる一つの共鳴空間C1を形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃されることで音を発生する複数の音板と、
前記複数の音板を着脱可能に固定する固定部と、を備え、
少なくとも前記固定部は、当該固定部に固定された前記複数の音板から発生した音を共鳴させる一つの共鳴空間を形成する音板楽器。
【請求項2】
前記複数の音板には、それぞれ厚さ方向に窪む凹部が形成され、
前記複数の音板の大きさ及び形状は互いに等しく、
前記凹部の大きさ及び形状の少なくとも一方が、前記複数の音板の間で互いに異なっている請求項1に記載の音板楽器。
【請求項3】
前記固定部は、板厚方向に間隔をあけて配置された二つの円板を含んで前記二つの円板の中心を軸線として回転する回転部を備え、
前記音板は、前記二つの円板の外周に着脱可能に固定される凸部を備え、
前記共鳴空間は、前記二つの円板と、前記二つの円板の周方向に並べられた前記複数の音板とによって形成されている請求項1又は請求項2に記載の音板楽器。
【請求項4】
操作者が回転操作することで前記回転部を回転駆動する操作用ハンドルを備え、
前記操作用ハンドルの回転中心が、前記回転部の軸線と一致している請求項3に記載の音板楽器。
【請求項5】
前記操作用ハンドルは、第一回転方向及び第一回転方向と反対側の第二回転方向に回転可能とされ、
前記操作用ハンドルの前記第一回転方向及び前記第二回転方向への回転に対して前記回転部が前記第一回転方向のみに回転するように、前記操作用ハンドルと前記回転部とを連結する連結機構を備える請求項4に記載の音板楽器。
【請求項6】
前記回転部を回転させたときに前記音板が通過する所定位置に配置され、前記回転部の回転に伴って前記音板を打撃する打撃体をさらに備える請求項3に記載の音板楽器。
【請求項7】
前記回転部を回転可能に支持するための支持体を備え、
前記打撃体は、可撓性を有する紐によって前記支持体に対して吊り下げられている請求項6に記載の音板楽器。
【請求項8】
前記固定部は、内部に前記共鳴空間をなす空洞を有すると共に、外部に前記複数の音板を着脱可能に固定する固定用面を有する箱体である請求項1又は請求項2に記載の音板楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音板楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転可能な回転台の同一円周上の周方向に複数の発音体ユニットを着脱自在に取り付け、回転台を回転させたときに発音体ユニットが通過する所定位置に、発音体ユニットに当接する当接具を設けた楽器(回転式楽器)が開示されている。各発音体ユニットは、当接具に当接することで音を発する音板(発音体)と、音板が発する音を共鳴させる中空の共鳴箱とを有する。この回転式楽器では、回転台を回転させるだけで、複数の発音体ユニットの音板が順番に当接具に当接して音を発する。これにより、楽曲を演奏することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の楽器では、音板の音を共鳴させる共鳴空間(共鳴箱)が、複数の音板に対して一つずつ設けられている。このため、共鳴空間を形成するための構成部品点数が多くなり、楽器の構造が複雑になってしまう。
【0005】
以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、音板及び共鳴空間を有していても、共鳴空間を形成するための構成部品点数を削減して構造の簡素化を図ることが可能な音板楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、打撃されることで音を発生する複数の音板と、前記複数の音板を着脱可能に固定する固定部と、を備え、少なくとも前記固定部は、当該固定部に固定された前記複数の音板から発生した音を共鳴させる一つの共鳴空間を形成する音板楽器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、音板及び共鳴空間を有する音板楽器において、共鳴空間を形成するための構成部品点数を削減して音板楽器の構造の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る音板楽器を示す斜視図である。
【
図2】
図1の音板楽器において、一部の音板を回転部から取り外した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図1~4の音板楽器に備える音板をその下面側から見た斜視図である。
【
図7】
図1~4の音板楽器において、音板を回転部の二つの円板から取り外した状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る音板楽器に備える連結機構のワンウェイクラッチを示す概略図である。
【
図9】本発明の第三実施形態に係る音板楽器に備える連結機構の遊星歯車機構を示す概略図である。
【
図10】本発明の第三実施形態に係る音板楽器の他の構成例を示す側面図である。
【
図11】本発明の第四実施形態に係る音板楽器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第一実施形態〕
以下、
図1~7を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、本実施形態の音板楽器1は、複数の音板2と、回転部3(固定部)と、を備える。また、音板楽器1は、支持体4と、打撃体5と、操作用ハンドル6と、を備える。
【0010】
複数の音板2は、それぞれ打撃されることで音を発生する。
図6に示すように、各音板2は、音板本体21と、音板本体21から突出する凸部22と、を有する。音板本体21は、帯板状に形成されている。
以下の説明では、音板本体21のうちその厚さ方向の一方側の面であって打撃体5により打撃される面を音板本体21の上面21aと呼ぶことがある。また、上面21aと反対側に向く面を音板本体21の下面21bと呼ぶことがある。また、上面21a及び下面21bの幅方向の両側において音板本体21の厚さ方向に延びる面を音板本体21の側面21cと呼ぶことがある。
【0011】
音板本体21には、厚さ方向に窪む凹部23が形成されている。凹部23は、音板本体21の長手方向の中間部分において、音板本体21の下面21bから窪むように形成されている。凹部23の内面は、音板本体21の幅方向から見て湾曲している。すなわち、音板本体21の形状は、シロフォン、マリンバ、ヴィブラフォン等の音板の形状と似ている。
【0012】
音板本体21の形状及び大きさ(例えば音板本体21の厚さ、長さ、幅)は、複数の音板2の間で互いに等しい。一方、音板本体21に形成される凹部23の大きさは、複数の音板2の間で互いに異なっている。凹部23の大きさは、例えば、音板本体21の厚さ方向における凹部23の深さや、音板本体21の長手方向における凹部23の長さによって規定される。複数の音板2の間では、音板本体21の大きさが同じであっても、凹部23の大きさが異なることで、音板本体21から発生する音高(音板本体21を打撃することで発生する音の音高)が互いに異なる。例えば、凹部23の大きさ(例えば凹部23の深さや長さ)が大きい程、音板本体21の音高が低くなる。
音板本体21の凹部の形状が、複数の音板2の間で互いに異なっていてもよい。凹部23の形状を複数の音板2の間で互いに異ならせることでも、音板本体21から発生する音高(音板本体21を打撃することで発生する音の音高)を互いに異ならせることができる。
【0013】
音板2の凸部22は、音板本体21を後述する回転部3に取り付けるための音板2の部位である。凸部22は、音板本体21の長手方向における凹部23の両側(音板本体21の両端部)において、音板本体21の下面21bから突出している。すなわち、音板2は、二つの凸部22を有する。
各凸部22は、少なくとも磁力によって回転部3に固定されるように構成されていればよい。
図6,7に示すように、凸部22は、吸着用磁石24と、吸着用磁石24を収納する磁石収納部25と、を有する。磁石収納部25には、凸部22の突出方向の先端から窪む窪み25Aが形成されている。吸着用磁石24は、永久磁石であり、磁石収納部25の窪み25Aの内側に保持される。
【0014】
凸部22は、音板本体21を上面21aから下面21bに貫通するネジ26(雄ねじ)を利用して音板本体21の下面21b側に固定される。具体的には、音板本体21の下面21b側においてネジ26を磁石収納部25の雌ねじ25Bに噛み合わせることで、凸部22が音板本体21の下面21bに固定される。凸部22をネジ26により音板本体21に固定した状態において、ネジ26の頭26Aは、音板本体21の上面21aから突出しないように音板本体21の内部に収納される。
【0015】
さらに、本実施形態の音板2では、凸部22と音板本体21の下面21bとの間に緩衝材としてのフェルト27が介在している。フェルト27は、凸部22が音板本体21に取り付けられることに起因して、打撃による音板本体21の振動特性が変わってしまうことを抑制又は防止する。これにより、音板本体21を打撃した際に雑音が発生することを抑制又は防止したり、音板本体21を打撃した際の音板本体21の音の鳴りを向上したりすることができる。
【0016】
図1~4に示すように、回転部3は、二つの円板31と、回転軸32と、を有する。二つの円板31は、その板厚方向に間隔をあけて配置されている。回転軸32は、二つの円板31の中心同士を接続する。回転部3は、二つの円板31の中心(すなわち回転軸32)を軸線として回転するように構成されている。
【0017】
本実施形態の回転部3は、支持体4によって回転可能に支持されている。支持体4は、土台41と、支持部42と、を有する。土台41は、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。支持部42は、土台41の上面41aに設けられ、前述した回転部3を回転可能に支持する。支持部42は、二つの帯板部43と、アーチ部44と、を有する。
【0018】
二つの帯板部43は、その板厚方向に間隔をあけて配置された状態で、それぞれ土台41の上面41aから上方に延びている。二つの帯板部43には、回転部3の回転軸32の両端部が挿通あるいは挿入されている。これら二つの帯板部43が、回転軸32を回転可能に支持している。
アーチ部44は、二つの帯板部43の上端に接続されている。アーチ部44は、二つの帯板部43の上端を繋ぐように上方に弓形に曲がった形状を呈している。
【0019】
支持体4の土台41と支持部42とは、別個に形成された上で互いに固定されてもよいし、一体に形成されてもよい。また、支持部42の帯板部43とアーチ部44とは、別個に形成された上で互いに固定されてもよいし、一体に形成されてもよい。
【0020】
回転部3には、音板本体21の長手方向が二つの円板31の配列方向に沿うように、音板2が二つの円板31の外周に着脱可能に固定される。すなわち、回転部3は、複数の音板2を着脱可能に固定する固定部として機能する。これにより、二つの円板31の外周には、複数の音板2が円板31の周方向に並ぶように配置される。以下、音板2を回転部3に対して着脱可能に固定する具体的な構造について説明する。
【0021】
図2,3に示すように、各円板31の外周には、平坦に形成された複数の支持面31aと段差面31bとが円板31の周方向に交互に並んでいる。
各支持面31aは、音板本体21の下面21bが対向するように音板2を支持する面である。各支持面31aは、円板31の径方向に延びて支持面31aを通る仮想線(不図示)に対して比較的大きな角度(例えば40度以上90度未満)で傾斜している。複数の支持面31aは、円板31の径方向に対して互いに同じ方向に同じ角度で傾斜している。
各段差面31bは、円板31の周方向において隣り合う支持面31a同士を接続するように形成されている。各段差面31bは、円板31の径方向に延びて段差面31bを通る仮想線(不図示)に対して比較的小さい角度(例えば0度以上40度未満)で傾斜している。複数の段差面31bは、円板31の径方向に対して互いに同じ方向に同じ角度で傾斜している。
【0022】
図2,4,7に示すように、各円板31には、各支持面31aから窪む挿入孔33が形成されている。挿入孔33には、音板2の凸部22が挿入される。挿入孔33の底部には、音板2の凸部22の吸着用磁石24と磁力によって吸着する吸着部34が設けられている。吸着部34は、例えば永久磁石であってもよいし、鉄などの一時磁石であってもよい。なお、吸着部34が永久磁石である場合には、音板2の吸着用磁石24は例えば一時磁石であってもよい。
【0023】
音板2を回転部3に固定する場合には、音板本体21の長手方向を二つの円板31の配列方向に沿わせた状態で、音板2の二つの凸部22を二つの円板31の挿入孔33に挿入すればよい。音板2の凸部22が挿入孔33に挿入された状態では、音板2の凸部22が挿入孔33に設けられた吸着部34に磁力で吸着することで、音板2が回転部3に固定される。なお、上記した磁力よりも大きな力であって音板2を回転部3(支持面31a)から離す方向の力を音板2に加えることで、音板2を回転部3から取り外すことができる。
【0024】
図3に示すように、音板2が回転部3に固定された状態においては、音板本体21の上面21aは、音板本体21を配した円板31の支持面31aと平行するように位置する。すなわち、音板本体21の上面21aは、円板31の径方向に延びて当該音板本体21の上面21aを通る仮想線(不図示)に対して比較的大きな角度で傾斜している。円板31の周方向に並ぶ複数の音板本体21の上面21aは、互いに同じ方向に同じ角度で傾斜している。
【0025】
複数の音板本体21の上面21aは、円板31の径方向に延びて各音板本体21の上面21aを通る仮想線に対し、回転部3の一方の回転方向R1(
図3において反時計周りの方向、以下第一回転方向R1と呼ぶ。)に向けて傾斜している。このため、回転部3の他方の回転方向R2(以下、第二回転方向R2と呼ぶ。)側に位置する各音板本体21の側面21cは、第二回転方向R2に隣り合う別の音板本体21によって覆われずに露出する。すなわち、複数の音板2を回転部3に固定した状態では、複数の音板本体21の上面21aと側面21cとが円板31の周方向に交互に並ぶ。また、これら複数の音板本体21の上面21aと側面21cとによって、円板31の周方向に隣り合う音板本体21の間に段差が現れる。
【0026】
図3,4に示すように、複数の音板2を二つの円板31の周方向全体に設けた状態では、二つの円板31の間の空間が複数の音板2によって覆われる。すなわち、音板楽器1には、二つの円板31と、円板31の周方向に並べられた複数の音板2とによって囲まれた空洞C1が形成される。この空洞C1は、複数の音板2から発生した音を共鳴させる一つの共鳴空間として機能する。
【0027】
図1,3に示すように、打撃体5は、回転部3を回転させたときに回転部3に取り付けられた音板2が通過する所定位置に配置されている。打撃体5は、回転部3の回転に伴って音板2を打撃する。打撃体5は、球状に形成されている。本実施形態の打撃体5は、可撓性を有する紐51によって支持体4に対して吊り下げられている。具体的に、打撃体5は、回転軸32の上方に位置するアーチ部44の上端部から紐51によって吊り下げられている。この状態において、打撃体5は、回転部3の上部に位置する音板2に接触する。
【0028】
図1,2,4に示すように、操作用ハンドル6は、音板楽器1のユーザー(操作者)が回転操作することで回転部3を回転駆動する部位である。操作用ハンドル6の回転中心は、回転部3の回転軸32(軸線)と一致している。
本実施形態の操作用ハンドル6は、第一操作部61と、第二操作部62と、を有する。第一操作部61は、円板状に形成され、その中心部分が回転軸32の端部に連結されている。本実施形態において、第一操作部61は、その中心部分が回転軸32と一致している。また、第一操作部61は、回転軸32に一体に固定されている。第一操作部61の外周は、周方向に凹凸を繰り返す形状に形成されている。第二操作部62は、操作用ハンドル6を回転させる際に音板楽器1のユーザーが手指で摘まむ摘まみ部である。第二操作部62は、回転軸32の軸方向において音板楽器1の外側に向く第一操作部61の外側面61aのうち、第一操作部61の外周部分に設けられている。
【0029】
次に、本実施形態の音板楽器1の動作の一例について説明する。
本実施形態の音板楽器1で演奏する際には、音板楽器1のユーザーが回転部3を回転させる。回転部3を回転させる際には、ユーザーが操作用ハンドル6を回転させればよい。ユーザーは、例えば操作用ハンドル6の第二操作部62(摘まみ部)を摘まんだ状態で操作用ハンドル6を回転させることができる。また、ユーザーは、操作用ハンドル6の第一操作部61を摘まんだ状態で操作用ハンドル6を回転させることもできる。ここで、第一操作部61の外周が周方向の凹凸を繰り返す形状に形成されているため、ユーザーが自身の手で第一操作部61を掴んだ状態では、ユーザーの手指を第一操作部61の外周の窪み25A部分に引っ掛けることができる。これにより、ユーザーは、第一操作部61を掴んだ状態でも簡単に操作用ハンドル6を回転させることもできる。
なお、回転部3を回転させる際には、例えば回転部3に取り付けられ状態で隣り合う音板2の間の段差にユーザーの手指を引っ掛けてもよい。すなわち、ユーザーは操作用ハンドル6ではなく、回転部3を直接回転させてもよい。
【0030】
本実施形態の音板楽器1では、操作用ハンドル6が回転部3の回転軸32に一体に固定されているため、回転部3の回転方向は、操作用ハンドル6の回転方向と同期する。例えば、操作用ハンドル6を第一回転方向R1に回転させると、回転部3も第一回転方向R1に回転する。また、操作用ハンドル6を第二回転方向R2に回転させると、回転部3は第二回転方向R2も回転する。回転部3が第一回転方向R1に回転した場合には、複数の音板本体21の上面21aが打撃体5によって順番に打撃される。一方、回転部3が第二回転方向R2に回転した場合には、複数の音板本体21の側面21cが打撃体5によって順番に打撃される。
【0031】
打撃体5が各音板本体21を打撃すると、各音板本体21から音が発生し、当該音が共鳴空間で共鳴する。これにより、打撃により音板本体21から発生した音自体が小さくても、共鳴によってより音を増幅させて音板楽器1の外部に放出することができる。
回転部3の回転速度が一定である場合、打撃体5が各音板本体21を打撃する力の大きさは、複数の音板2の間で互いに等しい。このため、音板楽器1の外部に放出される音の大きさも複数の音板2の間で互いに等しくなる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の音板楽器1では、複数の音板2から発生した音を共鳴させる共鳴空間(空洞C1)が一つ形成されている。すなわち、回転部3に固定された複数の音板2に対して同一の共鳴空間が対応している。このため、共鳴空間を複数の音板2に対して個別に形成する場合と比較して、共鳴空間を形成するための構成部品点数を減らして、音板楽器1の簡素化を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態の音板楽器1では、一つの共鳴空間が、回転部3を構成する二つの円板31と、円板31の外周に並べられた複数の音板2とによって形成されている。すなわち、共鳴空間の形成に音板2を利用することで、共鳴空間を形成する構成部品点数を確実に削減することができる。
【0034】
また、本実施形態の音板楽器1では、複数の音板本体21の大きさ及び形状が互いに等しく、かつ、音板本体21に形成された凹部23の大きさや形状が複数の音板2の間で互いに異なっている。複数の音板本体21の大きさ及び形状が互いに等しいことで、音板本体21のうち打撃される部位や音板本体21が打撃される力の大きさが、複数の音板2の間で互いに等しい場合に、打撃により発生する音板2の音量や音色が、複数の音板2の間で異なることを抑制することができる。また、凹部23の大きさや形状を複数の音板2の間で異ならせることで、音板本体21から発生する音高を複数の音板2の間で互いに異ならせることができる。すなわち、複数の音板2の間で、音高を互いに異ならせながら、音板2の音量や音色の均一化を図ることができる。
【0035】
また、複数の音板本体21の大きさ及び形状が互いに等しいことで、音板2を固定する回転部3の領域に制約があっても、音高が互いに異なる複数の音板2のいずれも、回転部3に固定することができる。以下、この点について説明する。
本実施形態の音板楽器1では、回転部3がその回転軸32の軸方向において支持体4の二つの支持部42の間に配置されている。このため、音板2を固定する回転部3の領域には、二つの支持部42同士の間隔に起因する制約がある。言い換えれば、回転部3に固定できる音板2の大きさは、二つの支持部42同士の間隔の制約を受ける。具体的に、回転軸32の軸方向における音板本体21の長さは、二つの支持部42の間隔以下とする必要がある。これに対し、本実施形態では、音高が互いに異なる複数の音板本体21の長さが、互いに等しく、いずれも二つの支持部42の間隔以下となっている。これにより、いずれの音板2も回転部3に固定することができる。
【0036】
また、本実施形態の音板楽器1では、操作用ハンドル6の回転中心が、回転部3の軸線と一致している。これにより、操作用ハンドル6の回転中心と回転部3の軸線とが互いにずれて位置する場合と比較して、操作用ハンドル6による回転部3の回転操作を直感的に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態の音板楽器1では、音板2を打撃する打撃体5が、回転部3を回転させたときに音板2が通過する所定位置に配置される。これにより、回転部3を回転させるだけで、打撃体5が周方向に並ぶ音板2(音板本体21)を順番に打撃して音を鳴らすことができる。
さらに、本実施形態の音板楽器1では、複数の音板2を回転部3に対して着脱可能に固定可能となっている。このため、ユーザーが所望する楽曲にあうように様々な音高の音板2を回転部3の回転方向に順番に並べることにより、回転部3を所定の回転方向に回転させるだけで、所望の楽曲を演奏することができる。
【0038】
また、本実施形態の音板楽器1では、打撃体5が、可撓性を有する紐51によって支持体4に対して吊り下げられている。このため、回転部3を第一回転方向R1及び第二回転方向R2のいずれに回転させても、打撃体5が円板31の周方向に隣り合う音板本体21の間の段差に引っ掛かることを防ぐことができる。これにより、音板楽器1の各部に不要な応力が発生して、音板楽器1に不具合が生じることを抑制又は防止することができる。
また、回転部3を第一回転方向R1及び第二回転方向R2のいずれに回転させても、打撃体5によって音板本体21を打撃して音を鳴らすことができる。
なお、上記した音板楽器1に発生する不要な応力とは、回転部3を回転させようとした際に、例えば打撃体5が音板本体21の間の段差に引っ掛かることで回転部3の回転が阻害されたときに、音板本体21や音板2と回転部3との接続部分(凸部22や挿入孔33)などに作用する応力である。また、上記した音板楽器1に生じる不具合とは、例えば回転部3を回転させようとしても、打撃体5が音板本体21の間の段差に引っ掛かることで回転部3が回転できない不具合である。
【0039】
〔第二実施形態〕
次に、主に
図8を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0040】
第二実施形態の音板楽器は、
図1~7に示した第一実施形態の音板楽器1と同様の構成要素を有する。第二実施形態の音板楽器は、
図8に示す連結機構7をさらに備える。連結機構7は、操作用ハンドル6と回転部3とを連結する。連結機構7は、操作用ハンドル6が第一回転方向R1に回転した際にのみ、当該回転を回転部3に伝達して、回転部3を第一回転方向R1に回転させる。また、連結機構7は、操作用ハンドル6が第二回転方向R2に回転しても、当該回転を回転部3に伝達しない。すなわち、操作用ハンドル6が第二回転方向R2に回転しても、回転部3は回転しない。
【0041】
本実施形態の連結機構7は、ワンウェイクラッチ71であり、同一の回転中心を有する外周部72及び内周部73と、内周部73に設けられた爪部74と、を有する。
外周部72の内周には、それぞれ径方向内側に突出して周方向に並ぶ複数の歯77が形成されている。これら複数の歯77の突出方向は、外周部72の径方向に対して第一回転方向R1に傾斜している。外周部72は、操作用ハンドル6に一体に固定され、操作用ハンドル6と一体に回転する。
【0042】
内周部73は、回転部3(例えば回転軸32)に一体に固定され、回転部3と一体に回転する。爪部74は、内周部73の回転中心と平行する軸を中心に、内周部73に対して回転可能に取り付けられている。また、爪部74は、内周部73から外周部72の内周まで延びている。爪部74は、その延長方向の先端が外周部72の歯77の間に入るように配される。また、爪部74は、その先端が外周部72の内周に押し付けられるようにバネ75によって付勢されている。
【0043】
以上のように構成される第二実施形態の音板楽器では、操作用ハンドル6及び外周部72を第一回転方向R1に回転させた際には、爪部74が外周部72の所定の歯77の間に入った状態に保持される。このため、内周部73及び回転部3(回転軸32)が操作用ハンドル6及び外周部72と共に第一回転方向R1に回転する。一方、操作用ハンドル6及び外周部72を第二回転方向R2に回転させた際には、爪部74が外周部72の歯77を乗り越える、すなわち所定の歯77の間に入った状態に保持されない。このため、外周部72の第二回転方向R2への回転は内周部73及び回転部3(回転軸32)に伝達されない。すなわち、操作用ハンドル6を第二回転方向R2に回転させても回転部3は回転しない。
【0044】
第二実施形態の音板楽器によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態の音板楽器では、操作用ハンドル6を第一回転方向R1に回転させたときのみに、回転部3が第一回転方向R1に回転する。このため、本実施形態の音板楽器のユーザーが所望する楽曲にあうように様々な音高の音板2を回転部3の第一回転方向R1に順番に並べることにより、回転部3を第一回転方向R1に回転させて所望の楽曲を演奏することができる。
【0045】
〔第三実施形態〕
次に、主に
図8を参照して本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0046】
第三実施形態の音板楽器は、
図1~7に示した第一実施形態の音板楽器1と同様の構成要素を有する。第三実施形態の音板楽器は、連結機構をさらに備える。連結機構は、操作用ハンドル6と回転部3とを連結する。連結機構は、操作用ハンドル6の第一回転方向R1及び第二回転方向R2への回転に対して回転部3を第一回転方向R1のみに回転させる。すなわち、連結機構は、操作用ハンドル6の第一回転方向R1及び第二回転方向R2のいずれの回転も回転部3に伝達するが、操作用ハンドル6の回転に対して回転部3を第一回転方向R1のみに回転させる。
【0047】
本実施形態の連結機構は、
図9に示す遊星歯車機構81と、二つのワンウェイクラッチ(不図示)と、を備える。遊星歯車機構81は、入力軸82と、太陽歯車83と、内歯車84と、複数(図示例では三つ)の遊星歯車85と、歯車支持部86と、を有する。
【0048】
入力軸82は、操作用ハンドル6に一体に固定され、操作用ハンドル6と一体に回転する。また、入力軸82は、第一のワンウェイクラッチ(不図示)を介して回転部3(例えば回転軸32)に連結されている。第一のワンウェイクラッチの構造及び機能は、
図8に示した第二実施形態のワンウェイクラッチ71と同様である。すなわち、第一のワンウェイクラッチは、操作用ハンドル6及び入力軸82が第一回転方向R1に回転した際にのみ、当該回転を回転部3に伝達して、回転部3を第一回転方向R1に回転させる。
太陽歯車83は、入力軸82に一体に固定され、入力軸82と一体に回転する。
【0049】
内歯車84は、太陽歯車83の外側を囲む円環状に形成されている。内歯車84の回転中心は、入力軸82及び太陽歯車83の回転中心と一致している。複数の遊星歯車85は、それぞれ太陽歯車83の外周及び内歯車84の内周に噛み合い、太陽歯車83の回転を内歯車84に伝達する。歯車支持部86は、複数の遊星歯車85の自転を許容し、かつ、太陽歯車83及び内歯車84の回転中心を軸とした遊星歯車85の公転を規制するように、複数の遊星歯車85を支持する。
【0050】
このように遊星歯車機構81が構成されることで、操作用ハンドル6及び入力軸82を第一回転方向R1に回転させた際には、内歯車84は第二回転方向R2に回転する。また、操作用ハンドル6及び入力軸82を第二回転方向R2に回転させた際には、内歯車84は第一回転方向R1に回転する。すなわち、内歯車84は、操作用ハンドル6及び入力軸82と反対の方向に回転する。
図9における各矢印の向きは、入力軸82を第一回転方向R1に回転させたときの、遊星歯車85及び内歯車84の回転方向を示している。
【0051】
内歯車84は、第二のワンウェイクラッチ(不図示)を介して回転部3(例えば回転軸32)に連結されている。第二のワンウェイクラッチの構造及び機能は、
図8に示した第二実施形態のワンウェイクラッチ71と同様である。すなわち、第二のワンウェイクラッチは、内歯車84が第一回転方向R1に回転した際にのみ、当該回転を回転部3に伝達して、回転部3を第一回転方向R1に回転させる。
【0052】
以上のように操作用ハンドル6と回転部3とを連結する連結機構が構成されていることで、第三実施形態の音板楽器では、操作用ハンドル6を第一回転方向R1及び第二回転方向R2のいずれに回転させても、回転部3は第一回転方向R1に回転する。
【0053】
第三実施形態の音板楽器によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第三実施形態の音板楽器によれば、操作用ハンドル6を第一回転方向R1及び第二回転方向R2のいずれに回転させても、回転部3は同じ方向(第一回転方向R1)にしか回転しない。このため、操作用ハンドル6の回転方向にかかわらず、回転部3の回転に伴って複数の音板2が打撃体5で打撃されて発音する順番が変化しない。すなわち、この音板楽器では、そのユーザーが意図した楽曲を演奏するように複数の音板2を並べた順番通りに鳴らすことができる。
【0054】
第二、第三実施形態のように操作用ハンドル6によって回転部3が第一回転方向R1にしか回転しない音板楽器において、打撃体5は、例えば
図10に示すように、支持体4に対して上下方向に揺動可能に設けられた棒状部材52の先端に設けられてもよい。棒状部材52の揺動の中心となる中心軸53は、回転部3の回転軸32と平行している。打撃体5は、回転部3を回転させたときに音板2が通過する所定位置に配置されることに加え、打撃体5の自重によって音板本体21の上面21a上に落下する位置に配置される。
【0055】
図10に例示した音板楽器1Zでは、仮に回転部3が第二回転方向R2に回転しようとすると、棒状部材52がその長手方向において棒状部材52の中心軸53と音板本体21の側面21cとの間に挟まれて、回転部3の第二回転方向R2への回転が阻害されてしまう。また、棒状部材52や回転部3など音板楽器の各部に不要な応力が生じてしまう。ここで、音板楽器に発生する不要な応力とは、例えば、回転部3を第二回転方向R2に回転させようとした際に、棒状部材52がその中心軸53と音板本体21の側面21cとの間に挟まれることで、棒状部材52、音板2、回転部3などに作用する応力である。これに対し、第二、第三実施形態の音板楽器では、回転部3が第一回転方向R1にしか回転しないため、
図10に例示した音板楽器1Zであっても上記した不具合が生じることを防止できる。
【0056】
第一~第三実施形態のように回転部3の回転によって楽曲を演奏する音板楽器では、前述したように、音板2から発生した音を共鳴させる一つの共鳴空間(空洞C1)を形成するために、複数の音板2を二つの円板31の周方向全体に設けることが望ましい。このため、この種の音板楽器は、例えば、打撃されることで積極的に音を発生する音板2に加え、例えば打撃されても音が発生し難い音板を有してもよい。この場合には、楽曲の休符に対応する位置に音が発生し難い音板を設けることで、休符のある楽曲も演奏することが可能となる。
【0057】
〔第四実施形態〕
次に、
図11~13を参照して本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0058】
図11~13に示すように、第四実施形態の音板楽器100は、複数の音板2と、箱体130(固定部)と、を備える。各音板2の構成は、第一実施形態と同様である。
箱体130は、その内部に空洞C2を有する。また、箱体130は、その外部に複数の音板2を着脱可能に固定する固定用面133aを有する。すなわち、箱体130は、複数の音板2を着脱可能に固定する固定部として機能する。
【0059】
箱体130は、上方に開口する収納空間131Aを有する箱本体131と、箱本体131の上方の開口を開閉可能に覆う蓋132と、を備える。箱体130の空洞C2は、箱本体131の収納空間131Aの開口を蓋132で覆うことで形成される。蓋132は箱本体131に対して着脱自在である。箱本体131の収納空間131Aには、例えば複数の音板2を収納することができる。また、この収納空間131Aには、音板2を打撃するマレット等の打撃体5(不図示)が収納されてもよい。
【0060】
蓋132は、箱本体131の開口を覆う平板部133を有する。蓋132の平板部133のうち箱体130の外側に向く外面が、箱体130の固定用面133aとなっている。固定用面133aは、長方形状に形成されている。
音板2は、その音板本体21の長手方向が固定用面133aの短辺に沿うように、固定用面133aに着脱可能に固定される。また、複数の音板2は、固定用面133aの長辺に沿って並べられる。
図11においては、複数の音板2を固定用面133a上で並べた状態で、隣り合う音板2が固定用面133aの短辺に沿って互いにずれて位置しているが、例えば隣り合う音板2は互いにずれずに位置してもよい。
【0061】
蓋132の平板部133には、その外面(固定用面133a)から窪む挿入孔134が形成されている。挿入孔134には、音板2の凸部22が挿入される。挿入孔134は、同一の音板2の二つの凸部22に対応するように、固定用面133aの短辺に沿って二つ並んでいる。また、挿入孔134は、複数の音板2の凸部22に対応するように、固定用面133aの長辺に沿って複数(
図11,12において八つ)並んでいる。挿入孔134が形成されていることで、固定用面133aに対する音板2の位置決めを簡単に行うことができる。
【0062】
本実施形態において、挿入孔134は、平板部133の外面(固定用面133a)から反対側の内面まで貫通している。挿入孔134のうち平板部133の内面側の開口は、平板部133の内面に取り付けられたシート状の吸着部135によって覆われている。吸着部135は、音板2の凸部22に磁力によって吸着するものである。吸着部135は、例えば永久磁石であってもよいし、鉄などの一時磁石であってもよい。
【0063】
音板2を箱体130に固定する場合には、音板2の二つの凸部22を固定用面133aの短辺に並ぶ二つの挿入孔134に挿入すればよい。音板2の凸部22が挿入孔134に挿入された状態では、音板2の凸部22が平板部133の内面側に設けられた吸着部135に磁力で吸着することで、音板2が箱体130に固定される。なお、上記した磁力よりも大きな力であって音板2を固定用面133aから離す方向の力を音板2に加えることで、音板2を箱体130から取り外すことができる。
【0064】
本実施形態の音板楽器100で演奏する際には、箱体130の固定用面133aに音板2を固定した状態で、音板本体21の上面21aを、不図示の打撃体5によって打撃すればよい。これにより、音板本体21から音が発生する。また、音板本体21から発生した音は、箱体130の空洞C2で共鳴する。すなわち、箱体130の空洞C2は、音板本体21から発生した音を共鳴させる共鳴空間として機能する。共鳴空間である箱体130の一つの空洞C2は、箱体130の固定用面133aに固定された複数の音板2に対応している。すなわち、複数の音板2の音板本体21で発生した音は、箱体130の空洞C2(同一の共鳴空間)で共鳴する。
【0065】
第四実施形態の音板楽器100によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第四実施形態の音板楽器100によれば、箱体130の空洞C2を、共鳴空間、及び、音板2の収納する空間として活用することができる。これにより、共鳴空間と音板2の収納空間とを別個に設ける場合と比較して、音板楽器100の構成部品点数を削減できると共に、音板楽器100をコンパクトに構成することができる。
【0066】
第四実施形態の音板楽器100において、蓋132に形成される挿入孔134は、例えば蓋132の外面から窪むだけで蓋132の内面に開口しなくてもよい。
また、第四実施形態の音板楽器100において、蓋132に挿入孔134が形成されている場合、蓋132には吸着部135が設けられなくてもよく、音板2の凸部22が吸着用磁石24を有していなくてもよい。このような構成であっても、音板2の凸部22が蓋132の挿入孔134に挿入されることで、音板2が箱体130に対してずれることを抑制又は防止できる。
【0067】
また、第四実施形態の音板楽器100において、音板2の凸部22が磁力によって蓋132に設けられた吸着部135に吸着する場合、蓋132には挿入孔134が形成されなくてもよい。この場合には、例えば、蓋132の外面(固定用面133a)に音板2の凸部22を接触させる位置を示すマーカーが形成されてもよい。蓋132の外面にマーカーが形成されていることで、音板2の位置を容易に把握することができる。
【0068】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0069】
本発明において、音板2における凸部22の数は、二つに限らず、例えば一つでもよいし、三つ以上でもよい。ただし、音板2の打撃時等において固定部(回転部3や箱体130)に対する音板2の位置ずれを防ぐためには、凸部22の数は複数であることが好ましい。
また、凸部22の数が三つ以上の場合、複数の凸部22は上記実施形態と同様に音板本体21の長手方向に一列に並んでもよいが、例えば音板本体21の長手方向及び幅方向(すなわち縦横)の両方に並ぶように並べられてもよい。凸部22を音板本体21の幅方向にも並べた場合には、幅寸法が大きい音板本体21であっても、打撃時等における音板本体21の姿勢が安定するという利点がある。また、凸部22が長手方向や幅方向における音板本体21の両端に配置されることで、凸部22が打撃による音板本体21の振動を阻害しないという効果も奏する。
【0070】
本発明において、音板2は、例えば凸部22を含まなくてもよい。この場合には、例えば、音板2を固定部(回転部3や箱体130)に固定するための吸着用磁石24(永久磁石又は一時磁石)が、音板本体21の下面21bから突出しないように音板本体21の内部に設けられてもよい。また、この場合には、固定部に挿入孔33,134が形成されなくてもよい。
本発明において、音板2を固定部(回転部3や箱体130)に対して着脱可能に固定する手法は、磁力を利用した手法に限らず、例えば面ファスナーを利用した手法であってもよい。
【0071】
本発明においては、例えば音板本体21の大きさを異ならせることで、複数の音板2の音高を互いに異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,100…音板楽器、2…音板、3…回転部(固定部)、4…支持体、5…打撃体、6…操作用ハンドル、7…連結機構、23…凹部、31…円板、32…回転軸、51…紐、71…ワンウェイクラッチ、81…遊星歯車機構、130…箱体(固定部)、133a…固定用面、C1,C2…空洞(共鳴空間)、R1…第一回転方向、R2…第二回転方向