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  • 特開-衛生マスク、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183512
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】衛生マスク、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20221206BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A41D13/11 D
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090869
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】593157736
【氏名又は名称】株式会社アーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】宇野 泰正
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA16
2E185CC32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】肌触りが良く、感染防止効果が高く見える衛生マスクを提供する。
【解決手段】本発明の衛生マスクは、着用者の鼻と口を覆うシート状のマスク本体と、マスク本体の両端に設けられる係着部とをする。マスク本体は、着用者の顔に接する内層3と、内層3の外側に重ねられる中間層4と、中間層4の外側に重ねられる外層5とを有する3層以上の構造をなし、記内層3は、編地からなり、中間層4は、不織布製フィルタからなり、外層5は、不織布からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の鼻と口を覆うシート状のマスク本体と、該マスク本体の両端に設けられる係着部とを有する衛生マスクであって、
前記マスク本体は、着用者の顔に接する内層と、前記内層の外側に重ねられる中間層と、前記中間層の外側に重ねられる外層とを有する3層以上の構造をなし、
前記内層は、編地からなり、
前記中間層は、不織布製フィルタからなり、
前記外層は、不織布からなることを特徴とする衛生マスク。
【請求項2】
前記マスク本体は、左右対称に設けられる右半部、及び左半部からなり、
前記内層は、芯糸に熱可塑性糸をカバリングしたカバリングヤーン、及び/又は熱可塑性糸からなる単糸により編成されており、
前記右半部、及び前記左半部は、周縁に設けられた溶着線により前記3層が溶着されており、互いの左右方向の内側の端縁が、互いの内層同士を重ねた状態で溶着されている請求項1に記載の衛生マスク。
【請求項3】
前記内層は、前記カバリングヤーンにより編成されており、前記芯糸がポリウレタンからなり、前記熱可塑性糸がポリエステルからなる請求項2に記載の衛生マスク。
【請求項4】
前記右半部、及び前記左半部の左右方向の内側の端縁が湾曲状に突出しており、
前記内層は、スムース編に編成されている請求項2に記載の衛生マスク。
【請求項5】
請求項2、又は請求項3に記載の衛生マスクの製造方法であって、
前記3層を構成する生地を重ねた状態で、超音波プレス加工により、前記左半部、及び右半部の裁断と同時に、上縁、下縁、及び左右の外側縁を溶着して前記3層を連結する第1工程と、
前記第1工程により形成された右半部と左半部を、内層同士重ねた状態で、それぞれの左右の内側の端縁となる側で溶着して連結する第2工程と
を備えることを特徴とする衛生マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鼻と口を覆うシート状のマスク本体の両端に耳掛け紐等の係着部を備える衛生マスクに関し、特にマスク本体が、内層、中間層、及び外層からなる三層構造をなし、中間層にフィルタを備える衛生マスク、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コロナウイルスの蔓延によりマスクの着用が日常化する中、感染の防止効果や、肌触り、洗濯の可否等により、各種のマスクが選択されて使い分けられている。
【0003】
例えば、不織布製のマスクは、感染防止効果が高い一方で、洗濯して再使用することができず不経済であるという問題や、肌触りが悪いため連日続けて使用すると肌が有れるという問題が有る。
【0004】
また、布を縫製した布製マスクは、肌触りがよく、洗濯して再使用が可能であるが、呼気・給気の透過率が高く感染防止効果に劣るという問題が有る。
【0005】
そこで、感染防止効果が高く、かつ肌触りのよいマスクが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に係るマスクでは、マスク本体を、着用者に接する内側に接触冷感を有する編地と、外側に通気性を有する編地を設け、中間層にフィルタを設けた三層構造とすることで、肌触りのよさと感染防止効果を両立させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6821286号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のマスクでは、人目に付く外側の層に編地を用いているため、感染防止効果の低いマスクを着用していると周囲の人に誤解される恐れがある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、感染防止効果と、肌触りの良さを確保しながら、人から見ても感染防止効果の高いマスクに見える衛生マスクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、着用者の鼻と口を覆うシート状のマスク本体と、該マスク本体の両端に設けられる係着部とを有する衛生マスクであって、前記マスク本体は、着用者の顔に接する内層と、前記内層の外側に重ねられる中間層と、前記中間層の外側に重ねられる外層とを有する3層以上の構造をなし、前記内層は、編地からなり、 前記中間層は、不織布製フィルタからなり、前記外層は、不織布からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の衛生マスクは、このように、内層に編地を用いたので、内層が十分に良好な肌触りを有する。
また、外層に不織布を用いたので、感染効果の低いマスクに見えることを抑制できる。
【0010】
本発明の衛生マスクは、前記マスク本体が、左右対称に設けられる右半部、及び左半部からなり、前記内層は、芯糸に熱可塑性糸をカバリングしたカバリングヤーン、及び/又は熱可塑性糸からなる単糸により編成されており、前記右半部、及び前記左半部は、周縁に設けられた溶着線により前記3層が溶着されており、互いの左右方向の内側の端縁が、互いの内層同士を重ねた状態で溶着されていることが好ましい。
このように、全ての接合箇所を縫合によらず溶着により接合することで、針穴を無くすことができ、より感染防止効果を高めることができる。また、布製マスクは、縫製に使用した針が折れて、マスクに混入する恐れがあるが、全ての接合箇所を溶着により接合することで、マスクに針が混入することを防止できる。
【0011】
前記内層が、カバリングヤーンにより編成されている場合において、前記芯糸は、ポリウレタンからなり、前記熱可塑性糸はポリエステルからなることが好ましい。こうすることで、より肌触りの良い内層と、接合品質の高い溶着線を得ることができる。
【0012】
前記右半部、及び前記左半部の左右方向の内側の端縁が湾曲状に突出しており、前記内層は、スムース編に編成されていることが好ましい。
接合前における右半部と左半部の左右方向の内側の端縁を、ともに外側へ湾曲状に突出するように設け、これを互いの内層同士を重ねて溶着することによりマスク本体は外層側へ膨らんだ立体形状となる。ここで、内層に天竺編のように表裏の編組織に違いの有る編地を用いると、右半部と左半部の内層の左右方向の内側の端縁は、切断した際に丸まってしまうため、その後の溶着に不具合が生じる恐れがある。内層を表裏の組織に違いの無いスムース編とすることで、内層の丸まりを抑制できるので、右半部と左半部の左右方向の内側の端縁の溶着を着実に行うことができる。
【0013】
本発明は、上記の衛生マスクの製造方法であって、前記3層を構成する生地を重ねた状態で、超音波プレス加工により、前記左半部、及び右半部の裁断と同時に、上縁、下縁、及び左右の外側縁を溶着して前記3層を連結する第1工程と、前記第1工程により形成された右半部と左半部を、内層同士重ねた状態で、それぞれの左右の内側の端縁となる側で溶着して連結する第2工程とを備える衛生マスクの製造方法を含む。
このように、右半部と左半部の左右の内層同士を溶着により接合することで、当該接合部を縫製する場合に比べて針孔等が生じないので、より感染防止効果を高めることができる。
また、右半部と左半部を重ねた状態で、それぞれの左右の内側となる端縁を溶着するようにしたので、当該内側の端縁がマスク本体に膨らみを持たせるために曲線状となっている場合も、容易に溶着できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の衛生マスクによれば、感染防止効果の低いマスクに見えることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一の実施形態に係るマスク本体の模式的断面図である。
図2】本発明の一の実施形態に係る衛生マスクの斜視図である。
図3】本発明の一の実施形態に係る衛生マスクの製造方法における第1工程の説明図である。
図4】本発明の一の実施形態に係る衛生マスクの製造方法における第2工程の説明図である。
図5】本発明の一の実施形態に係る衛生マスクの製造方法における第3工程の説明図である。
図6】本発明の一の実施形態に係る衛生マスクの製造方法における第4工程の説明図である。
図7】内層の編成組織を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図2は、本発明の一の実施形態に係る衛生マスク100を示している。衛生マスク100は、着用者の鼻と口を覆うシート状のマスク本体1と、マスク本体1の両端に設けられる一対の係着部2,2とを備えている。
【0018】
マスク本体1は、図1に示すように、着用者の顔に接する内層3と、内層3の外側(図1の上側)に重ねられる中間層4と、中間層4の外側に重ねられる外層5とからなる3層構造をなしている。
【0019】
内層3は、熱可塑性糸で編成された編地からなる。熱可塑性糸としては、特に限定されず、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等を用いることができるが、伸縮性と溶着性の観点から、ポリウレタン糸を芯糸とし、ポリエステル糸をカバリング糸としたカバリングヤーンが好ましい。さらに、芯糸のポリウレタン糸とカバリング糸のポリエステル糸の合計重量に対するカバリング糸のポリエステルの重量比が90%以上であることが好ましく、95%以上が特に好ましい。この重量比を90%以上とすることで、内層3は、十分な溶着性と、滑らかさと、接触冷感を具備することができる。95%以上とすることで、内層3は、これらの特性をさらに高めることができる。
【0020】
内層3の編成方法としては、経編、緯編のいずれでもよく、特に限定されないが、丸編み機によりスムース編(図7参照)に編成することが好ましい。
こうすることで、内層3をウエール方向に傾斜して切断した際に、端が丸まることを抑制できる。尚、図7の符号31はループを、符号32はウエール方向を、符号33はコース方向を示している。図7において、黒糸と白糸は異なる給糸口から給糸された同じ糸である。
【0021】
中間層4は、不織布製のフィルタであれば特に限定されないが、メルトブローンフィルターが特に好ましい。こうすることで、中間層4は、十分な溶着性と、十分なフィルタ性能を具備することができる。外層5も不織布からなり、これにより外層5は溶着加工が可能になる。内層3、中間層4、及び外層5は、溶着線6、及び溶着線7により周縁のみが互いに接合されている。
【0022】
マスク本体1は、左右対称に設けられた右半部11と左半部12とからなり、周縁の溶着線6と、右半部11と左半部12とを溶着する溶着線7とを有している。マスク本体1の左右の両端には、左右の外側へ湾出する上側湾出部14,14と下側湾出部15,15と上下の湾出部14,15の間に設けられる湾入部16,16とを有している。
【0023】
係着部2は、樹脂製の糸により細筒状、又は細帯状に編成された紐からなり、両端が湾出部14,15に超音波溶着されている。係着部2としては、例えば、ポリエステル70%、ポリウレタン30%のカバリングヤーンにより編成された筒状紐が好ましく挙げられる。尚、図中の符号9は、係着部2をマスク本体1に溶着した際の溶着痕を表している。
【0024】
係着部2には、長さ調節用の調節ゴム8が取り付けられる。調節ゴム8は、中空の円盤状をなし、径方向に対向するやや大きめの孔からなる挿入孔とやや小さめの孔からなる掛止孔(ともに不図示)とを有している。調節ゴム8は、係着部2の中間部を1本に折り重ねた状態で挿入孔から掛止孔へ挿通し、係止孔の収縮力で係着部2に係止するよう構成されている。
【0025】
(衛生マスク100の製造方法)
衛生マスク100を製造する際には、まず第1工程にて、内層3と中間層4と外層5の素材シートを3枚重ねた状態で、図3に示したように、超音波プレスカット加工により、右半部11と左半部12とを打ち抜き、同時に、右半部11、及び左半部12の左右方向の内側の端縁13,13を除いた3方を溶着線6に沿って超音波溶着により溶着する。第1工程では、右半部11、及び左半部12の左右方向の内側の端縁13,13は、切断されるのみで溶着されない。
【0026】
第2工程では、こうして形成した右半部11と左半部12とを、図4に示したように、互いの内層3,3を重ね合わせるようにして互いの左右方向の内側の端縁13,13を溶着線7に沿って超音波で溶着する。
こうすることで、右半部11、及び左半部12の左右方向の内側の端縁13,13が、直線でなくとも対称な曲線であれば溶着できるため、容易に立体的なマスク本体1を形成できる。
【0027】
第3工程では、図5に示すように、マスク本体1に係着部2の両端をマスク本体1の外層5に超音波溶接する。
【0028】
しかるのち、図6に示すように、第4工程で係着部2に調節ゴム8を取着して、衛生マスク100を完成させる。
【0029】
衛生マスク100は、外層が不織布により形成されているので、外側から見た場合に、外層が布地により形成されているものに比べて、十分な感染防止効果を有するように見える。
【0030】
また、衛生マスク100は、全ての接合部が超音波溶着により接合されるので、縫製により接合する場合の様に、折れた針の混入がない。
【0031】
さらに、衛生マスク100の製造方法は、右半部と左半部を溶着により接合することで、当該接合部を縫製する場合に比べて針孔等が生じないので、より感染防止効果を高めることができる。
【0032】
以上、本発明の衛生マスクは、上述した形態に限られず、例えば、マスク本体は、4層以上であってもよく、右半部と左半部に分かれていなくてもよい。係着部は、調節ゴムを備えなくともよいし、マスク本体の打ち抜き時に一体に形成してもよい。係着部は耳掛け式でなくマスク本体の両端に架け渡されて頭の後を通るタイプのものでもよい。
【符号の説明】
【0033】
100 衛生マスク
1 マスク本体
11 右半部
12 左半部
13 左右方向の内側の端縁
2 係着部
3 内層
4 中間層
5 外層
6 溶着線
7 溶着線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7