IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋マテリアル株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183540
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】セメント混和材
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/06 20060101AFI20221206BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20221206BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20221206BHJP
   C04B 103/60 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
C04B22/06 Z
C04B28/02
C04B22/14 A
C04B103:60
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090905
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】倉形 公悦
(72)【発明者】
【氏名】長塩 靖祐
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB13
4G112PB03
4G112PB10
(57)【要約】
【課題】良好な拘束膨張率を発現すると共に、モルタル、コンクリートのブリーディングを抑制できるセメント混和材を提供する。
【解決手段】膨張材及び硫酸アルミニウムを含有するセメント混和材であって、セメント混和材100質量部中、該膨張材が80~99質量部、該硫酸アルミニウムが1~20質量部であることを特徴とするセメント混和材。さらに、前記硫酸アルミニウムは、150μmの篩残分が10~100質量%であることを特徴とするセメント混和材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張材及び硫酸アルミニウムを含有するセメント混和材であって、セメント混和材100質量部中、該膨張材が80~99質量部、該硫酸アルミニウムが1~20質量部であることを特徴とするセメント混和材。
【請求項2】
前記硫酸アルミニウムは、150μmの篩残分が10~100質量%であることを特徴とする請求項1に記載のセメント混和材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセメント混和材を含有してなるモルタル又はコンクリート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル、コンクリート等のひび割れ抑制等のために混和使用されるセメント混和材に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントを結合相とするモルタル、コンクリート等の各種部材や建築物、とりわけコンクリート製の建築構造物の耐久性を向上するためには、硬化収縮に伴い発生するひび割れや乾燥収縮で発生する亀裂を抑制することが不可欠である。ひび割れ抑制の特に有効な手段は、膨張成分の混和材使用である。このような膨張成分としては、生石灰を有効成分とするものと、例えばカルシウムサルフォアルミネート等の水和反応を経てエトリンガイトを生成する物質を有効成分とするものに大別される。このうち、生石灰を有効成分とするものは、一般に、反応活性が高いため早期膨張発現性に優れ、また比較的大きな膨張量も期待できるため、特にコンクリートの大規模な初期収縮を抑制するには適している。
【0003】
しかしながら、近年、膨張材が各種用途への応用展開が図られる中、膨張性能に加えて付加的機能が求められてきている。このような要望を受けて、例えば、打放しコンクリート用膨張材、水中不分離性コンクリート用膨張材などが提案されている(特許文献1、2)。
【0004】
一方、モルタル又はコンクリートを打設した場合に、コンクリート表面に浮き水を生じる現象(ブリーディング)が起きることがあるが、このブリーディングが多量に発生すると、モルタル又はコンクリート中の水が表面に出る際に生じる水の通り道が、モルタル又はコンクリート硬化体の組織の緻密性を損ない、硬化後の強度低下を生じる可能性がある。加えて、ブリーディング水が生じることで、打設した構造物の寸法が想定より低くなる可能性がある。
【0005】
このようなブリーディングを抑制する方法として、高分子増粘剤等をモルタルやコンクリートに添加する方法が知られている(特許文献3)。高分子増粘剤としては、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、澱粉などが挙げられている。しかしながら、ブリーディングを有効に防止するために、必要量の高分子増粘剤等を添加すると、粘度の増加に伴い流動性が低下する、あるいはモルタルやコンクリート硬化体の強度が低下する等の課題があることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-127372号公報
【特許文献2】特開2018-131359号公報
【特許文献3】特開平8-26803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述する課題を解決すべく、新しいセメント混和材を提供するものである。具体的には、良好な拘束膨張率を発現すると共に、モルタル、コンクリートのブリーディングを抑制できるセメント混和材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔3〕を提供するものである。
〔1〕膨張材及び硫酸アルミニウムを含有するセメント混和材であって、セメント混和材100質量部中、該膨張材が80~99質量部、該硫酸アルミニウムが1~20質量部であるセメント混和材。
〔2〕前記硫酸アルミニウムは、150μmの篩残分が10~100質量%であることを特徴とする〔1〕のセメント混和材。
〔3〕〔1〕又は〔2〕のセメント混和材を含有してなるモルタル又はコンクリート。
【発明の効果】
【0009】
本発明におけるセメント混和材を使用することによって、良好な拘束膨張率を発現すると共に、ブリーディング量が少ないモルタル又はコンクリートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のセメント混和材は、膨張材及び硫酸アルミニウムを含有し、セメント混和材100質量部中、該膨張材が80~99質量部、該硫酸アルミニウムが1~20質量部であることを特徴とする。以下、詳細に説明する。
【0011】
本発明に用いる膨張材としては、遊離生石灰(f-CaO)を有効成分とするもの、3CaO・3Al23・CaSO4(アウイン)等のカルシウムサルフォアルミネートを有効成分とするもの、さらに遊離生石灰及びカルシウムサルフォアルミネートの両方を有効成分とするもの、いずれも使用できる。特に、遊離生石灰の水和による体積増加によって膨張作用が発現するものが好ましい。膨張材中の遊離生石灰含有量としては、30~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。
【0012】
本発明における膨張材中には、上記成分の他に、水硬性化合物として、CaO・2SiO2(C2S)、CaO・3SiO2(C3S)等のカルシウムシリケート、CaO・Al23(CA)、12CaO・7Al23(C127)、3CaO・Al23(C3A)等のカルシウムアルミネート、4CaO・Al23・Fe23(C4AF)、6CaO・2Al23・Fe23(C62F)等のカルシウムアルミノフェライトが含まれてもよい。膨張材中の水硬性化合物の含有量としては、3~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。
【0013】
本発明における膨張材中には、さらに石膏が含まれることが好ましい。石膏としては、半水石膏、二水石膏、無水石膏等が挙げられるが、特に無水石膏が好ましい。膨張材中の石膏の含有量は、2~30質量%が好ましく、3~25質量%がより好ましい。
【0014】
膨張材の粉末度としては、ブレーン比表面積で2000~7000cm2/gが好ましく、3000~6500cm2/gがより好まく、4000~6000cm2/gがさらに好ましい。
【0015】
次に、本発明に用いる硫酸アルミニウムは、特に限定されるものではないが、工業的に製造・市販されている粉末状のものを使用することができる。例えば、水の浄化のための凝集剤として使用されている硫酸バンド等が挙げられる。
【0016】
硫酸アルミニウムの粒度としては、ブリーディング率の低減およびフレッシュコンクリートのスランプ性状の観点から、150μm篩残分が10~100質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、40~80質量%であることがさらに好ましい。
【0017】
セメント混和材中の膨張材及び硫酸アルミニウムの含有量は、セメント混和材100質量部中、膨張材が80~99質量部、硫酸アルミニウムが1~20質量部である。硫酸アルミニウムの含有量が1質量部未満ではブリーディング抑制効果が得られず、一方硫酸アルミニウムの含有量が20質量部を超えると拘束膨張性能を確保できなく虞があり、またフレッシュ性状が低下する虞がある。硫酸アルミニウムの含有量としては、3~18質量部がより好ましく、5~15質量部がさらに好ましい。
【0018】
本発明におけるセメント混和材には、上記構成成分の他に、本発明の特長が損なわれない範囲で、各種添加剤が併用されても良い。この種の添加剤としては、例えば減水剤、AE剤、発泡剤、収縮低減剤、防水剤、防錆剤、増粘剤、セメント混和用ポリマー、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤等が挙げられる。
【0019】
モルタル又はコンクリートに対する本発明のセメント混和材の添加量としては、モルタル又はコンクリート中のセメントに対して、3~15質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。また、コンクリート中の単位量としては、10~30kg/m3が好ましい。
【実施例0020】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0021】
〔実施例1〕
まず、膨張材と硫酸アルミニウムを配合し、セメント混和材を調製した。使用した膨張材は、生石灰系膨張材(遊離生石灰含有量;50質量%、ブレーン比表面積5,130cm2/g)である。また、硫酸アルミニウムとしては、市販の硫酸バンド(アルミナ17%品)を粒度調整したもの(150μm篩残分60質量%)を使用した。また、比較例として、硫酸アルミニウムに換えて硫酸ナトリウム(芒硝、市販品)を使用したものも調製した。表1に調製したセメント混和材を示す。
【0022】
【表1】
【0023】
これらセメント混和材を添加して、10℃環境下において、コンクリートを作製した。セメントは普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)を、細骨材は掛川産山砂を、粗骨材は桜川砕石2005を使用した。コンクリート配合を表2に示す。なお、セメントとセメント混和材の合計量に対して、高性能減水剤を0.7質量%添加した。
【0024】
【表2】
【0025】
<評価試験>
作製したコンクリートについて、スランプ、ブリーディング率、凝結始発時間、拘束膨張率を試験した。試験方法を下記に示す。
(1)スランプ
「JIS A 1101 コンクリートのスランプ試験」に準じて試験した。
(2)ブリーディング試験
「JCI-S-015 小型容器によるコンクリートのブリーディング試験方法」に準拠して、φ12.5cmのサミットモールドを用いて測定した。
(3)凝結試験
「JIS A 1147 コンクリートの凝結試験方法」に準じて試験した。
(4)拘束膨張試験
10℃環境下で作製したコンクリートを20℃環境下にて供試体を成型し、以降「JIS A 6202 コンクリート用膨張材 付属書B」に準拠して試験した。
【0026】
<試験結果>
試験結果を表3に示す。膨張材に所定量の硫酸アルミニウムが配合されたセメント混和材を使用した場合、ブリーディングの低減効果が得られることが分かった。硫酸アルミニウムの配合量が24質量部の混和材Hを使用した場合、ブリーディングは十分低減されるものの、スランプが大幅に低下するとともに、拘束膨張率も小さくなった。また、膨張材単味の場合及び硫酸ナトリウムを配合したセメント混和材の場合、ブリーディングの十分な低減効果が得られなかった。
【0027】
【表3】
【0028】
〔実施例2〕
次に、セメント混和材として使用する硫酸アルミニウムの粒度の影響について評価した。
粒度調整した硫酸アルミニウムを表4に示す。
【0029】
【表4】
【0030】
これらの硫酸アルミニウムを実施例1で使用した膨張材と配合し、セメント混和材を調製した。表5に調製したセメント混和材を示す。
【0031】
【表5】
【0032】
調整したセメント混和材を添加し、実施例1と同様にコンクリートを作製して、各評価試験を実施した。
【0033】
<試験結果>
試験結果を表6に示す。
【0034】
【表6】