(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183547
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】接続構造
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20221206BHJP
F16L 37/02 20060101ALI20221206BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B01L3/02 Z
F16L37/02
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090914
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】岡下 勝己
【テーマコード(参考)】
3J106
4G057
【Fターム(参考)】
3J106AA10
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC03
3J106CA01
3J106DA16
4G057AB11
4G057AB38
(57)【要約】
【課題】接続部と挿入管とのシール性を確保可能な接続構造を提供することを課題とする。
【解決手段】接続構造1は、接続部2と挿入管3と押圧部4とを備える。接続部2は、エラストマー製であって弾性変形可能な筒状の被押圧部20と、被押圧部20の径方向内側に配置されマイクロデバイス8の流路810に連通するポート21と、を有する。挿入管3は、ポート21に挿入される。挿入管3と流路810との間で流体試料が流動する。押圧部4は、被押圧部20の径方向外側に配置され、径方向外側から被押圧部20を押圧することにより、挿入管3に被押圧部20を押し付ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー製であって弾性変形可能な筒状の被押圧部と、前記被押圧部の径方向内側に配置されマイクロデバイスの流路に連通するポートと、を有する接続部と、
前記ポートに挿入され、前記流路との間で流体試料が流動する挿入管と、
前記被押圧部の径方向外側に配置され、径方向外側から前記被押圧部を押圧することにより、前記挿入管に前記被押圧部を押し付ける押圧部と、
を備える接続構造。
【請求項2】
前記被押圧部は、前記接続部の外周面と、前記ポートの内周面と、の間に配置され、
前記押圧部は、径方向外側から前記接続部の外周面を押圧する請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記接続部は、前記押圧部が挿入される被挿入溝を有し、
前記被挿入溝は、径方向内向きの外側面と、前記外側面の径方向内側に配置され径方向外向きの内側面と、を有し、
前記被押圧部は、前記内側面と、前記ポートの内周面と、の間に配置され、
前記押圧部は、径方向外側から前記内側面を押圧する請求項1に記載の接続構造。
【請求項4】
前記被押圧部を形成する前記エラストマーは、シリコーンゴムであり、
前記押圧部が、径方向外側から前記被押圧部を押圧する際の押圧力は、2N以上10N以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の接続構造。
【請求項5】
前記シリコーンゴムの硬度は、80度以下である請求項4に記載の接続構造。
【請求項6】
前記流路と前記挿入管との間を前記流体試料が流動する際に、前記挿入管が前記ポートから脱落する方向に、前記挿入管に作用する荷重をF1、
前記挿入管の外周面と前記ポートの内周面との間の摩擦力をF2、
として、
F2≧F1の関係が成立する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の接続構造。
【請求項7】
前記押圧部と前記挿入管と前記ポートとは同軸上に配置される請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の接続構造。
【請求項8】
前記押圧部の内周面は、押圧面を有し、
前記被押圧部の外周面は、前記押圧面により押圧される被押圧面を有し、
無荷重状態において、前記押圧面の形状と、前記被押圧面の形状と、は相違しており、
前記押圧面が前記被押圧面を押圧する際、前記被押圧面の形状が前記押圧面の形状に倣うことにより、前記被押圧部が圧縮され、前記挿入管に前記被押圧部が押し付けられる請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の接続構造。
【請求項9】
前記ポートの内周面は、径方向内側に向かって突出する環状の突起部を有し、
前記突起部は、前記被押圧部の径方向内側に配置される請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の接続構造。
【請求項10】
前記挿入管が前記ポートに挿入される途中の状態を挿入中状態、前記挿入管が前記ポートに挿入された後の状態を挿入後状態として、
前記押圧部は、径方向に変形可能な変形部を有し、
前記変形部の内径は、前記挿入中状態よりも前記挿入後状態の方が小さい請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の接続構造。
【請求項11】
前記挿入中状態または前記挿入後状態において、前記変形部を拘束する拘束部材を有する請求項10に記載の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロデバイスにノズルやピペットなどを接続するための接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属製の取付部を備えるマイクロデバイスが開示されている。
図16に、同文献のマイクロデバイスの一部の軸方向(上下方向)断面図を示す。
図16に示すように、マイクロデバイス100の取付部101には、供給パイプ102が挿入されている。取付部101は、金属製であり、弾性変形しにくい。このため、取付部101と供給パイプ102とは、補助取付具103により連結されている。
【0003】
補助取付具103の上端は、供給パイプ102の外周面に固定されている。補助取付具103の下端には、係合爪103aが配置されている。係合爪103aは、取付部101の外周面の係止部101aに、下側(取付部101の軸方向)から係合している。マイクロデバイス100は、当該係合により、取付部101から供給パイプ102が上側に抜けるのを抑制している。供給パイプ102と取付部101と補助取付具103との隙間には、ゴム製のシール材104が配置されている。シール材104は、当該隙間を封止している。
【0004】
しかしながら、マイクロデバイス100によると、取付部101と供給パイプ102とのシール性を確保しにくい。すなわち、係合爪103aと係止部101aとの係合力F100は、軸方向に作用する。このため、当該係合力により、取付部101内周面を供給パイプ102外周面に押し付けることはできない。この点、シール材104の弾性力F101は、径方向に作用する。ところが、当該弾性力F101は、供給パイプ102外周面を径方向内側に押圧する。つまり、当該弾性力は、取付部101内周面と供給パイプ102外周面との界面を拡張する方向に作用する。このように、マイクロデバイス100によると、取付部101と供給パイプ102とのシール性を確保しにくい。
【0005】
この点、特許文献2には、エラストマー製のポートを備えるマイクロデバイスが開示されている。ポートには中空管が挿入される。中空管の挿入により、ポートの内周面は弾性的に拡径変形する。当該拡径変形により、ポートの内周面は中空管の外周面に弾接する。このように、同文献のマイクロデバイスによると、ポートの拡径変形に伴う弾性復元力により、ポートと中空管との界面を封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-150891号公報
【特許文献2】国際公開第2013/166106号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のマイクロデバイスの場合、中空管挿入時に、ポート自体が自由に拡径変形することができる。このため、ポートから中空管に加わる押圧力(シール力)が小さくなる。すなわち、シール性が低下する。そこで、本開示は、接続部と挿入管とのシール性を確保可能な接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示の接続構造は、エラストマー製であって弾性変形可能な筒状の被押圧部と、前記被押圧部の径方向内側に配置されマイクロデバイスの流路に連通するポートと、を有する接続部と、前記ポートに挿入され、前記流路との間で流体試料が流動する挿入管と、前記被押圧部の径方向外側に配置され、径方向外側から前記被押圧部を押圧することにより、前記挿入管に前記被押圧部を押し付ける押圧部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の接続構造によると、押圧部が被押圧部を押圧することにより、ポートの内周面を挿入管の外周面に押し付けることができる。このため、接続部と挿入管とのシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第一実施形態の接続構造が用いられるマイクロデバイスの斜視図である。
【
図5】
図5は、同接続構造の挿入前状態における軸方向断面図である。
【
図6】
図6は、同接続構造の挿入中状態における軸方向断面図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態の接続構造の挿入後状態における軸方向断面図である。
【
図8】
図8は、同接続構造の挿入前状態における軸方向断面図である。
【
図9】
図9は、同接続構造の挿入中状態(その1)における軸方向断面図である。
【
図10】
図10は、同接続構造の挿入中状態(その2)における軸方向断面図である。
【
図11】
図11は、第三実施形態の接続構造の挿入後状態における軸方向断面図である。
【
図12】
図12は、第四実施形態の接続構造の挿入後状態における軸方向断面図である。
【
図13】
図13は、第五実施形態の接続構造の挿入後状態における軸方向断面図である。
【
図14】
図14は、第六実施形態の接続構造の挿入後状態における上面図である。
【
図15】
図15は、同接続構造の挿入中状態における上面図である。
【
図16】
図16は、従来のマイクロデバイスの一部の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の接続構造の実施の形態について説明する。
【0012】
<第一実施形態>
図1に、本実施形態の接続構造が用いられるマイクロデバイスの斜視図を示す。なお、説明の便宜上、カバープレート80を透過して、右から二番目の流路810、および当該流路810の前後両側のポート21を示す。
図2に、
図1の枠II内の拡大図を示す。
図3に、
図2のIII-III方向断面図を示す。
図4に、
図2のIV-IV方向断面図を示す。なお、
図3においては、ポート21の中心軸Aに対して、接続構造1の左半分を外観図で、右半分を断面図で、各々示す。
【0013】
[マイクロデバイス8の構成]
まず、本実施形態の接続構造1が用いられるマイクロデバイス8の構成について、簡単に説明する。
図1に示すように、マイクロデバイス8は、柔軟なシリコーンゴム製(エラストマー製)であって、カバープレート80と、デバイス本体81と、を備えている。デバイス本体81は、板状を呈している。デバイス本体81の上面(表面)には、前後方向に延在する複数の流路810が凹設されている。カバープレート80は、板状を呈している。カバープレート80は、プレート本体800と、複数の接続部2と、を備えている。プレート本体800の下面(裏面)は、デバイス本体81の上面に接着されている。すなわち、プレート本体800は、複数の流路810を上側から封止している。複数の接続部2は、プレート本体800の上面の前後両縁に沿って、配置されている。複数の接続部2は、プレート本体800の上面から、上向きに突設されている。
【0014】
[接続構造1の構成]
次に、本実施形態の接続構造1の構成について説明する。本実施形態の接続構造1は、上述の接続部2と、挿入管3と、押圧部4と、を備えている。
【0015】
(接続部2)
図2~
図4に示すように、接続部2は、被押圧部20と、ポート21と、を備えている。被押圧部20は、前述したようにシリコーンゴム製(エラストマー製)であって、弾性変形可能である。被押圧部20は、上下方向に延在する同径円筒状を呈している。被押圧部20は、接続部2の外周面と、ポート21の内周面と、の間の径方向全長に亘って配置されている。被押圧部20の外周面には、被押圧面20aが配置されている。
【0016】
図4に示すように、ポート21は、被押圧部20の径方向内側に配置されている。ポート21は、上下方向(中心軸Aの軸方向)に延在する孔状を呈している。ポート21の下端は、プレート本体800の下面に開口している。ポート21の下端は、デバイス本体81の流路810に連通している。上側から下側(
図3に示す挿入管3の挿入方向における後側から前側)に向かって、ポート21の内周面には、ガイド部210と、突起部211と、テーパー部212と、段差部213と、が配置されている。
【0017】
ガイド部210は、ポート21の開口縁に配置されている。ガイド部210は、面取状を呈している。突起部211は、環状を呈している。突起部211は、ガイド部210の下端から、径方向内側に突出している。テーパー部212は、上側から下側に向かって尖る、テーパー状を呈している。段差部213は、上側から下側に向かって縮径する段差状を呈している。
図3に示すように、段差部213には、挿入管3の下端(先端)が当接する。
【0018】
(挿入管3)
図2、
図3に示すように、挿入管3は、任意の接続部2のポート21に対して、挿脱可能である。挿入管3は、金属製であって、上下方向に延在する管状を呈している。挿入管3、ポート21を介して、流路810に流体試料が供給される。あるいは、ポート21、挿入管3を介して、流路810から流体試料が排出される。
【0019】
(押圧部4)
図2、
図3に示すように、押圧部4は、被押圧部20の径方向外側に配置されている。押圧部4は、径方向外側から被押圧部20を押圧する。すなわち、押圧部4は、挿入管3の外周面に、被押圧部20の内周面(ポート21の内周面)を押し付ける。押圧部4は、金属製であって、連結部40と、変形部41と、拘束部材42と、を備えている。
【0020】
連結部40は、フランジ状を呈している。連結部40の径方向内端は、挿入管3の外周面に取り付けられている。変形部41は、全体として筒状を呈している。変形部41は、基部410と、テーパー部411と、複数のスリット412と、を備えている。基部410は、上下方向に延在する同径円筒状を呈している。基部410は、連結部40の径方向外端から、下側に延在している。テーパー部411は、基部410の下側に連なっている。テーパー部411の内周面には、押圧面411aが配置されている。無荷重状態(自然状態。荷重が加わっていない状態)において、テーパー部411は、上側から下側に向かって尖るテーパー円筒状を呈している。複数のスリット412は、周方向に所定間隔ずつ離間して、変形部41に配置されている。スリット412は、下向きに開口している。スリット412は、変形部41のうち、テーパー部411の上下方向全長と、基部410の下側部分と、に配置されている。
【0021】
拘束部材42は、環状部420と、動力伝達部421と、を備えている。環状部420は、変形部41の径方向内側に配置されている。環状部420は、変形部41の内周面に対して、上下方向にスライド可能である。拘束部材42の位置は、解放位置(上位置)と、拘束位置(下位置)と、に切り換え可能である。解放位置において、環状部420は、基部410の径方向内側に配置されている。他方、拘束位置において、環状部420は、テーパー部411の径方向内側に配置されている。すなわち、テーパー部411は、環状部420により、径方向外側に押し拡げられている。
【0022】
動力伝達部421は、環状部420から径方向外側に突出している。動力伝達部421は、スリット412を介して、変形部41の径方向外側に突出している。
図3に示すように、動力伝達部421つまり拘束部材42は、挿入管3移動用のロボット(図略)の把持部90に把持され、解放位置と拘束位置との間を移動可能である。
【0023】
[接続構造1の動作]
次に、接続部2のポート21に対して挿入管3を挿脱する際の、本実施形態の接続構造1の動作について説明する。以下、挿入管3がポート21に挿入される前の状態を挿入前状態と、挿入管3がポート21に挿入される途中の状態を挿入中状態と、挿入管3がポート21に挿入された後の状態を挿入後状態と、各々称す。
【0024】
図5に、本実施形態の接続構造の挿入前状態における軸方向断面図を示す。
図6に、同接続構造の挿入中状態における軸方向断面図を示す。なお、
図5、
図6においては、ポート21の中心軸Aに対して、接続構造1の左半分を外観図で、右半分を断面図で、各々示す。また、
図5に点線で示す状態が、同接続構造の無荷重状態である。また、
図3に示す状態が、同接続構造の挿入後状態である。
【0025】
(挿入前状態)
図5に示すように、挿入前状態において、挿入管3には押圧部4が取り付けられている。また、拘束部材42は、
図3に示す把持部90により、拘束位置に切り換えられている。すなわち、環状部420は、テーパー部411の径方向内側に配置されている。テーパー部411は、環状部420により、無荷重状態(
図5に点線で示す状態)に対して、径方向外側に弾性的に押し拡げられた状態で、拘束されている。このため、テーパー部411には、径方向内向きの弾性復元力が蓄積されている。また、テーパー部411下端(先端、最小径部)の内径R2は、被押圧部20(接続部2)の外径R1よりも、拡張されている。挿入管3移動用のロボットは、ポート21の真上に、押圧部4付きの挿入管3を、移動させる。すなわち、ポート21の中心軸A上に、挿入管3の中心軸を配置する。
【0026】
(挿入中状態)
ロボットは、
図5に示す状態のまま、矢印Y1で示すように、押圧部4付きの挿入管3を、下降させる。すなわち、ロボットは、押圧部4付きの挿入管3を、ポート21に対して上側から近づける。
【0027】
図6に示すように、挿入中状態において、環状部420の下面は、接続部2の上端面(ポート21の開口面)に当接する。このため、環状部420つまり拘束部材42の下降が停止する。他方、テーパー部411下端の内径R2は接続部2の外径R1よりも大きい。このため、矢印Y2で示すように、押圧部4のうち拘束部材42以外の部分と、挿入管3と、は下降を継続する。したがって、相対的に、環状部420がテーパー部411の径方向内側を上昇する。すなわち、拘束部材42が、拘束位置から解放位置に向かって移動する。
【0028】
ここで、前述したように、テーパー部411には、環状部420の拘束により、径方向内向きの弾性復元力が蓄積されている。環状部420がテーパー部411の径方向内側を相対的に上昇すると、テーパー部411に対する拘束が解除される。このため、環状部420の上昇に伴って、矢印Y3で示すように、テーパー部411は、蓄積されている弾性復元力を消費しながら、縮径変形する。
【0029】
(挿入後状態)
図3に示すように、挿入後状態において、テーパー部411下端の内径R2は、接続部2の外径R1よりも、小さくなる。テーパー部411の押圧面411aは、径方向外側から、被押圧部20の被押圧面20aに、押圧力F(図において押圧力Fを示す矢印は模式的なものであり、押圧力Fの大きさや方向を限定するものではない。以下同様。)を加える。すなわち、テーパー部411は、挿入管3の外周面に、被押圧部20の内周面(ポート21の内周面)を押し付ける。この際、被押圧部20は、径方向内側から挿入管3に支持された状態で、径方向外側からテーパー部411により押圧されることになる。このため、被押圧部20は、径方向に圧縮変形する。挿入後状態においては、挿入管3、ポート21を介して、流路810に流体試料が供給される。あるいは、挿入管3、ポート21を介して、流路810から流体試料が排出される。
【0030】
流体試料の流動後は、ロボットを用いて、挿入管3をポート21から引き抜く。すなわち、上述の一連の動作(
図5(挿入前状態)→
図6(挿入中状態)→
図3(挿入後状態))を、逆向きに実行する。具体的には、
図3に示すように、把持部90により拘束部材42の上下方向位置を固定したまま、ロボットにより、押圧部4のうち拘束部材42以外の部分と、挿入管3と、を上昇させる。相対的に、環状部420はテーパー部411の径方向内側を下降する。この際、テーパー部411は、環状部420により、径方向外側に押し拡げられる。当該拡径変形により、被押圧部20に対するテーパー部411の押圧力Fが解除される。
図6に示すように、環状部420は、解放位置から拘束位置に切り換えられる。環状部420が拘束位置に切り換えられたら、把持部90は拘束部材42を解放する。
図5に示すように、ロボットは、押圧部4付きの挿入管3を、更に上昇させる。このように、ポート21に対する挿入管3の挿脱作業(流体試料の給排作業)は、挿入管3移動用のロボットにより、自動的に実行される。
【0031】
[作用効果]
次に、本実施形態の接続構造1の作用効果について説明する。
図3に示すように、押圧部4は、径方向外側から、エラストマー製の被押圧部20を押圧することにより、ポート21の内周面を挿入管3の外周面に押し付けることができる。このため、接続部2と挿入管3とのシール性を確保することができる。したがって、ポート21と挿入管3との界面から流体試料がリークするのを、抑制することができる。
【0032】
図6に示すように、押圧部4は、テーパー部411(変形部41)を備えている。挿入中状態において、テーパー部411下端の内径R2は、被押圧部20(接続部2)の外径R1よりも大きい。このため、テーパー部411が被押圧部20に干渉するのを抑制することができる。他方、
図3に示すように、挿入後状態において、テーパー部411下端の内径R2は、被押圧部20の外径R1よりも小さい。このため、テーパー部411により被押圧部20を押圧することができる。
【0033】
図6に示すように、押圧部4は、挿入中状態におけるテーパー部411(変形部41)の内径を拘束する拘束部材42を備えている。このため、テーパー部411が被押圧部20に干渉するのを抑制することができる。
【0034】
図2に示すように、テーパー部411はテーパー円筒状を呈している。すなわち、テーパー部411は、被押圧部20を全周的に包囲している。このため、
図3に示す押圧力Fの周方向分布がばらつきにくい。
【0035】
図1に示すように、マイクロデバイス8は小型である。また、複数の接続部2は密集して配置されている。例えば、左右方向に隣り合う一対の接続部2間の間隔L1は、0.5mm以上10mm以下に設定されている。また、ポート21に対する押圧部4付きの挿入管3の挿脱作業においては、変形部41を変形させて、押圧力Fの加除を行う必要がある。このような理由から、使用者が、手作業で、ポート21に対する押圧部4付きの挿入管3の挿脱作業を行うのは、困難である。
【0036】
この点、本実施形態の接続構造1によると、
図3、
図5、
図6に示すように、ポート21に対する押圧部4付きの挿入管3の挿脱作業を、ロボットにより、自動的に実行することができる。このため、上述のような理由があるにもかかわらず、挿脱作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【0037】
ところで、仮に、
図4に示すマイクロデバイス8の接続部2のうち、径方向内側の一部だけを
図3に示す被押圧部20として利用する場合を想定する(後述する
図11参照)。この場合、被押圧部20の径方向外側に、押圧部4を挿入するための被挿入溝を形成する必要がある。しかしながら、
図4に示す接続部2の壁厚L2は非常に小さい。例えば、壁厚L2(最大値)は、0.1mm以上1mm以下である。このため、被挿入溝を形成するのは困難である。
【0038】
この点、本実施形態の接続構造1によると、
図3に示すように、被押圧部20は、接続部2の外周面と、ポート21の内周面と、の間の径方向全長に亘って配置されている。また、押圧部4は、径方向外側から接続部2の外周面を押圧している。このため、接続部2の径方向全長を、被押圧部20として利用することができる。したがって、接続部2の一部を被押圧部20として利用する場合と比較して、被押圧部20に被挿入溝を形成する必要がない。すなわち、被押圧部20に精密加工を施す必要がない。よって、被押圧部20の構造が簡単になる。また、被押圧部20延いてはマイクロデバイス8の製造コストを削減しながら、接続部2と挿入管3とのシール性を確保することができる。
【0039】
図3に示す被押圧部20を形成するエラストマーは、シリコーンゴム(詳しくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むシリコーンゴム)である。押圧部4が、径方向外側から被押圧部20を押圧する際の押圧力F(押圧力Fは、径方向内向きの成分と、軸方向上向きの成分と、を有する。ここでは、押圧力Fのうち径方向内向きの成分)は、2N以上に設定されている。このため、押圧力Fが2N未満の場合と比較して、ポート21と挿入管3との界面から流体試料がリークするのを、より確実に抑制することができる。また、上記押圧力Fは、10N以下に設定されている。このため、押圧力Fが10N超過の場合と比較して、シリコーンゴム製の被押圧部20に過度の荷重が加わるのを、抑制することができる。
【0040】
図3に示す被押圧部20を形成するシリコーンゴムの硬度は、80度以下に設定されている。すなわち、被押圧部20は柔軟である。このため、硬度が80度超過の場合と比較して、簡単に被押圧部20を変形させることができる。また、上記硬度は、30度以上に設定されている。このため、硬度が30度未満の場合と比較して、挿入管3を挿入する際(
図5、
図6参照)の被押圧部20の過度な変形を、抑制することができる。なお、「硬度」とは、デュロメータタイプAによる硬度をいう。
【0041】
被押圧部20を形成するエラストマー(非圧縮性材料)のポアソン比は、0.5程度である。このため、
図3に示す挿入後状態において、被押圧部20は、径方向に圧縮された分だけ、他の方向(周方向、軸方向など)に伸張してしまう。この点、変形部41には、複数のスリット412が配置されている。被押圧部20の伸張分のうち少なくとも一部は、スリット412に入り込む。このため、被押圧部20の伸張に伴うシール性の低下を、抑制することができる。なお、被押圧部20の伸張分のうち少なくとも一部は、被押圧部20の上側部分や下側部分(被押圧部20の軸方向外側部分)に逃げることもできる。
【0042】
図3に示すように、挿入管3から流路810に流体試料が供給される際に、挿入管3には、挿入管3がポート21から脱落する方向(上向き)に、荷重F1が作用している。また、挿入管3の外周面と、ポート21の内周面と、の間には、荷重F1に抗して、摩擦力F2が作用している。荷重F1と摩擦力F2との間には、F2≧F1の関係が成立している。このため、挿入管3がポート21から脱落するのを抑制することができる。なお、流路810から挿入管3に流体試料が排出される際も、F2≧F1の関係が成立している。
【0043】
図3に示すように、押圧部4(テーパー部411)の径方向中心、挿入管3の径方向中心は、共にポート21の中心軸A上に配置されている。すなわち、押圧部4と挿入管3とポート21とは同軸上に配置されている。また、被押圧部20の壁厚(詳しくは、所定の軸方向位置における径方向壁厚)は、周方向全長に亘って一定である。このため、ポート21の周方向全長に亘って、挿入管3に作用する押圧力Fのばらつきを抑制することができる。
【0044】
図5に点線で示すように、無荷重状態において、押圧面411aは、上側から下側に向かって尖るテーパー面状を呈している。他方、
図5に示すように、無荷重状態において、被押圧面20aは、同軸円筒(直管)の外周面状を呈している。このように、無荷重状態において、押圧面411aの形状と被押圧面20aの形状とは相違している。
図3に示すように、押圧面411aが被押圧面20aを押圧する際、被押圧面20aの形状は押圧面411aの形状に倣って縮径変形する。当該変形により、被押圧部20が押圧され、挿入管3に被押圧部20が押し付けられる。このように、無荷重状態における押圧面411aと被押圧面20aとの形状の相違により、被押圧部20を押圧することができる。
【0045】
図3に示すように、突起部211は、被押圧部20の径方向内側に配置されている。
図6に示すように、押圧力Fが加えられていない状態で、突起部211は挿入管3の外周面に弾接している。本実施形態の接続構造1によると、突起部211の弾接力を、押圧力Fにより、増幅することができる。
【0046】
図3に示すように、環状部420の外径は、テーパー部411上端の内径よりも大きく、基部410の内径と等しい。このため、挿入中状態(
図6)から挿入後状態(
図3)に切り替わる際に、テーパー部411の縮径変形により、環状部420を
図3に示す解放位置まで押し上げることができる。
【0047】
図6に示すように、挿入中状態において、押圧部4のうち拘束部材42以外の部分は、接続部2つまりマイクロデバイス8に干渉しない。このため、挿入管3の挿入作業時に、柔軟なマイクロデバイス8が変形するのを、抑制することができる。また、被押圧部20は、エラストマー製である。他方、挿入管3、テーパー部411は金属製である。このため、
図3に示すように、被押圧部20を簡単に変形させることができる。
【0048】
図16に示す従来のマイクロデバイス100には、上下方向(軸方向)の係合機構(係合爪103a、係止部101a)が配置されている。このため、流体試料の流動後に、供給パイプ102を取付部101から引き抜きにくい。この点、
図3に示すように、本実施形態の接続構造1の場合、径方向外側からテーパー部411が被押圧部20を押圧している。接続構造1は、上下方向の係合機構を有していない。このため、流体試料の流動後に、簡単に挿入管3をポート21から引き抜くことができる。
【0049】
図4に示すように、ポート21は、面取状のガイド部210を備えている。このため、挿入管3をポート21に案内することができる。また、中心軸Aに対して挿入管3を調芯することができる。ポート21は、突起部211を備えている。このため、接続部2と挿入管3とのシール性を確保することができる。ポート21は、テーパー部212を備えている。このため、中心軸Aに対して挿入管3を調芯することができる。ポート21は、段差部213を備えている。このため、
図3に示す挿入後状態における挿入管3の挿入深さ(上下方向深さ)を制御することができる。
【0050】
<第二実施形態>
本実施形態の接続構造と、第一実施形態の接続構造との相違点は、拘束部材が、挿入中状態ではなく、挿入後状態における変形部の内径を拘束している点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0051】
図7に、本実施形態の接続構造の挿入後状態における軸方向断面図を示す。
図8に、本実施形態の接続構造の挿入前状態における軸方向断面図を示す。
図9に、同接続構造の挿入中状態(その1)における軸方向断面図を示す。
図10に、同接続構造の挿入中状態(その2)における軸方向断面図を示す。なお、
図3、
図5、
図6と対応する部位については、同じ符号で示す。また、
図7~
図10においては、ポート21の中心軸Aに対して、接続構造1の左半分を外観図で、右半分を断面図で、各々示す。
【0052】
[接続構造1の構成]
まず、本実施形態の接続構造1の構成について説明する。
図7に示すように、押圧部4は、金属製であって、連結部40と、変形部41と、拘束部材42と、を備えている。変形部41は、基部410と、テーパー部411と、複数のスリット412と、逆テーパー部413と、解放位置規制部414と、拘束位置規制部415と、を備えている。
【0053】
逆テーパー部413は、テーパー部411の下側に連なっている。逆テーパー部413の内周面には、押圧面413aが配置されている。無荷重状態において、逆テーパー部413は、下側から上側に向かって尖るテーパー円筒状を呈している。複数のスリット412は、周方向に所定間隔ずつ離間して、変形部41に配置されている。スリット412は、下向きに開口している。スリット412は、変形部41の上下方向全長に亘って配置されている。
【0054】
解放位置規制部414は、フランジ状を呈している。解放位置規制部414は、基部410の上端に配置されている。拘束位置規制部415は、フランジ状を呈している。拘束位置規制部415は、基部410の下端に配置されている。
【0055】
拘束部材42は、環状であって、基部410に環装されている。拘束部材42は、解放位置規制部414、拘束位置規制部415よりも、外径が大きい。このため、
図10に示すように、挿入管3移動用のロボット(図略)の把持部90は、拘束部材42を把持可能である。把持部90により、拘束部材42は、解放位置規制部414と拘束位置規制部415との間を、上下方向にスライド可能である。すなわち、拘束部材42の位置は、解放位置(上位置。解放位置規制部414に当接する位置)と、拘束位置(下位置。拘束位置規制部415に当接する位置)と、に切り換え可能である。
【0056】
[接続構造1の動作]
次に、接続部2のポート21に対して挿入管3を挿脱する際の、本実施形態の接続構造1の動作について説明する。
【0057】
(挿入前状態)
図8に示すように、挿入前状態(無荷重状態)において、挿入管3には押圧部4が取り付けられている。また、拘束部材42は、
図10に示す把持部90により、解放位置に切り換えられている。挿入管3移動用のロボットは、ポート21の真上に、押圧部4付きの挿入管3を、移動させる。すなわち、ポート21の中心軸A上に、挿入管3の中心軸を配置する。
【0058】
(挿入中状態)
ロボットは、
図8に示す状態のまま、矢印Y4で示すように、押圧部4付きの挿入管3を、下降させる。すなわち、ロボットは、押圧部4付きの挿入管3を、ポート21に対して上側から近づける。
【0059】
図8に示す解放位置において、拘束部材42に対して、テーパー部411および逆テーパー部413は、離間している。このため、拘束部材42の拘束力(径方向内側に作用する荷重)は、テーパー部411および逆テーパー部413に、伝わりにくい。したがって、テーパー部411および逆テーパー部413は、拘束部材42を基点に、径方向に変形しやすい。また、逆テーパー部413下端(先端)の内径R2Aは、被押圧部20(接続部2)の外径R1よりも、大きい。並びに、テーパー部411下端(最小径部)の内径R2Bは、被押圧部20(接続部2)の外径R1よりも、小さい。このため、
図9に矢印Y5、Y6で示すように、挿入中状態において、押圧部4付きの挿入管3の下降に伴って、テーパー部411および逆テーパー部413は、簡単に拡径変形する。
図10に示すように、挿入管3の下端(先端)が段差部213に当接したら、ロボットは、押圧部4付きの挿入管3の下降を停止する。
図10に矢印Y7で示すように、ロボットの把持部90は、拘束部材42を、解放位置から拘束位置に切り換える。当該切り換えにより、矢印Y8で示すように、テーパー部411および逆テーパー部413は、縮径変形する。
【0060】
(挿入後状態)
図7に示すように、挿入後状態(拘束位置)においては、拘束部材42に対して、テーパー部411および逆テーパー部413が、近接している。このため、拘束部材42の拘束力が、テーパー部411および逆テーパー部413に、伝わりやすい。したがって、テーパー部411下端の内径R2Bは、接続部2の外径R1よりも、小さくなる。テーパー部411の押圧面411aおよび逆テーパー部413の押圧面413aは、径方向外側から、被押圧部20の被押圧面20aに、押圧力Fを加える。すなわち、テーパー部411、逆テーパー部413は、挿入管3の外周面に、被押圧部20の内周面(ポート21の内周面)を押し付ける。この際、被押圧部20は、径方向内側から挿入管3に支持された状態で、径方向外側からテーパー部411、逆テーパー部413により押圧されることになる。このため、被押圧部20は、径方向に圧縮変形する。挿入後状態においては、挿入管3、ポート21を介して、流路810に流体試料が供給される。あるいは、ポート21、挿入管3を介して、流路810から流体試料が排出される。
【0061】
流体試料の流動後は、ロボットを用いて、挿入管3をポート21から引き抜く。すなわち、上述の一連の動作(
図8(挿入前状態)→
図9(挿入中状態)→
図10(挿入中状態)→
図7(挿入後状態))を、逆向きに実行する。具体的には、
図7、
図10に示すように、把持部90により拘束部材42を拘束位置から解放位置に切り換える。当該切り換えにより、被押圧部20に対するテーパー部411、逆テーパー部413の押圧力Fが解除される。把持部90は、拘束部材42を解放位置に切り換えたら、拘束部材42を解放する。
図8に示すように、ロボットは、押圧部4付きの挿入管3を上昇させる。このように、ポート21に対する挿入管3の挿脱作業(流体試料の給排作業)は、挿入管3移動用のロボットにより、自動的に実行される。
【0062】
[作用効果]
次に、本実施形態の接続構造1の作用効果について説明する。本実施形態の接続構造1と、第一実施形態の接続構造とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。
【0063】
図8に示すように、解放位置において、拘束部材42に対して、テーパー部411および逆テーパー部413は、離間している。このため、テーパー部411および逆テーパー部413は、径方向に変形しやすい。また、逆テーパー部413下端の内径R2Aは、接続部2の外径R1よりも大きい。並びに、テーパー部411下端の内径R2Bは、接続部2の外径R1よりも小さい。このため、
図9に示すように、挿入中状態において、押圧部4付きの挿入管3の下降に伴って、テーパー部411および逆テーパー部413を、簡単に拡径変形させることができる。
【0064】
図7に示すように、拘束位置において、拘束部材42に対して、テーパー部411および逆テーパー部413は、近接している。このため、拘束部材42の拘束力は、テーパー部411および逆テーパー部413に、伝わりやすい。したがって、押圧面411a、押圧面413aにより、径方向外側から、被押圧部20の被押圧面20aに、押圧力Fを加えることができる。
【0065】
図7に示すように、拘束部材42は環状を呈している。このため、拘束部材42からテーパー部411および逆テーパー部413に伝わる拘束力の周方向分布がばらつきにくい。したがって、押圧力Fの周方向分布がばらつきにくい。
【0066】
<第三実施形態>
本実施形態の接続構造と、第一実施形態の接続構造との相違点は、被押圧部が、被挿入溝の内側面と、ポートの内周面と、の間に配置されている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0067】
図11に、本実施形態の接続構造の挿入後状態における軸方向断面図を示す。なお、
図3と対応する部位については、同じ符号で示す。また、
図11においては、ポート21の中心軸Aに対して、接続構造1の左半分を外観図で、右半分を断面図で、各々示す。
【0068】
図11に示すように、接続部2は、被挿入溝22を備えている。被挿入溝22は、中心軸Aを中心とする円環状を呈している。被挿入溝22は、接続部2の上端面(ポート21の開口面)に開口している。被挿入溝22は、上下方向(軸方向)に延在している。被挿入溝22は、外側面220と、内側面221と、を備えている。内側面221は、外側面220の径方向内側に配置されている。被押圧部20は、内側面221と、ポート21の内周面と、の間の径方向全長に亘って配置されている。すなわち、内側面221は、
図3、
図5、
図6の接続部2の外周面に対応する。内側面221には、被押圧面20aが配置されている。ポート21は、ガイド部210を備えている。ポート21は、
図4に示す突起部211、テーパー部212、段差部213を備えていない。
【0069】
接続部2のポート21に対して挿入管3を挿脱する際の、本実施形態の接続構造1の動作は、第一実施形態の接続構造と同様である。ただし、
図3、
図11に示すように、挿入後状態において、第一実施形態のテーパー部411が接続部2の外周面を押圧するのに対して、本実施形態のテーパー部411は被挿入溝22の内側面221を押圧する。
【0070】
本実施形態の接続構造1と、第一実施形態の接続構造とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の接続構造1によると、接続部2のうち、被挿入溝22よりも径方向内側の部分を被押圧部20として利用する。このため、接続部2のうち、被挿入溝22よりも径方向外側の部分については、被押圧部20を形成する材料と同一の材料、あるいは異なる材料(例えば、エラストマー、樹脂、金属など)を使用することができる。したがって、材料選択の自由度が高くなる。また、内側面221の径方向位置を調整することにより、被押圧部20の圧縮量や押圧力Fを調整することができる。また、被挿入溝22の上下方向深さを調整することにより、被押圧部20の上下方向長さを調整することができる。
【0071】
また、本実施形態のように、ポート21が、
図4に示す突起部211、テーパー部212、段差部213を備えていなくてもよい。すなわち、ポート21の内部空間が同径円柱状であってもよい。この場合であっても、テーパー部411が被押圧部20に加える押圧力Fにより、ポート21の内周面を挿入管3の外周面に押し付けることができる。このため、接続部2と挿入管3とのシール性を確保することができる。また、ロボットにより、挿入管3の挿入深さ(上下方向深さ)を制御することができる。
【0072】
<第四実施形態>
本実施形態の接続構造と、第一実施形態の接続構造との相違点は、被押圧部が、接続部の逆テーパー部に、配置されている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0073】
図12に、本実施形態の接続構造の挿入後状態における軸方向断面図を示す。なお、
図3と対応する部位については、同じ符号で示す。また、
図12においては、ポート21の中心軸Aに対して、接続構造1の左半分を外観図で、右半分を断面図で、各々示す。
【0074】
図12に示すように、接続部2は、逆テーパー部23を備えている。逆テーパー部23は、接続部2の上側部分に配置されている。逆テーパー部23には、被押圧部20が配置されている。
図12に点線で示すように、挿入前状態(無荷重状態)において、逆テーパー部23の外周面には、下側から上側に向かって尖る逆テーパー面23aが配置されている。逆テーパー面23aには、被押圧面20aが配置されている。
【0075】
押圧部4は、連結部40と、非変形部43と、を備えている。非変形部43は、上下方向に延在する同径円筒状を呈している。非変形部43は、連結部40の径方向外端から、下側に延在している。非変形部43の内周面には、押圧面43aが配置されている。非変形部43の下端内周縁には、曲面状の面取部43bが配置されている。ポート21は、ガイド部210を備えている。ポート21は、
図4に示す突起部211、テーパー部212、段差部213を備えていない。
【0076】
ロボットがポート21に挿入管3を挿入する際、非変形部43は、逆テーパー部23を径方向内側に押し込みながら、下降する。この際、面取部43bは、逆テーパー面23aに圧接しながら摺接する。このように、非変形部43を下降させることにより、非変形部43から被押圧部20に押圧力Fが加わる。ロボットがポート21から挿入管3を引き抜く際、逆テーパー部23は、自身の弾性復元力により、拡径変形(復動)する。
【0077】
本実施形態の接続構造1と、第一実施形態の接続構造とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の接続構造1によると、押圧部4の非変形部43を変形させる必要がない。すなわち、非変形部43に、スリット412(
図3参照)などを形成する必要がない。このため、押圧部4の構造が簡単になる。
【0078】
また、本実施形態のように、ポート21が、
図4に示す突起部211、テーパー部212、段差部213を備えていなくてもよい。この場合であっても、
図11に示す第三実施形態と同様に、非変形部43が被押圧部20に加える押圧力Fにより、接続部2と挿入管3とのシール性を確保することができる。また、挿入管3の挿入深さを制御することができる。
【0079】
<第五実施形態>
本実施形態の接続構造と、第一実施形態の接続構造との相違点は、ピエゾアクチュエーターの逆圧電効果を利用して、変形部を変形させる点である。ここでは、主に相違点について説明する。
【0080】
図13に、本実施形態の接続構造の挿入後状態における軸方向断面図を示す。なお、
図3と対応する部位については、同じ符号で示す。また、
図13においては、ポート21の中心軸Aに対して、接続構造1の左半分を外観図で、右半分を断面図で、各々示す。
【0081】
図13に示すように、押圧部4は、連結部40と、変形部41と、を備えている。変形部41は、基部410と、複数のピエゾアクチュエーター416と、複数のスリット412と、を備えている。複数のピエゾアクチュエーター416は、基部410の下側に連なっている。複数のピエゾアクチュエーター416は、周方向に並んでいる。すなわち、複数のピエゾアクチュエーター416は、全体として円筒状を呈している。スリット412は、周方向に隣り合う一対のピエゾアクチュエーター416の間に配置されている。ピエゾアクチュエーター416は、ベンダー型のピエゾアクチュエーターである。ピエゾアクチュエーター416は、板状を呈しており、外層416aと、内層416bと、を備えている。外層416aと内層416bとは接合されている。
【0082】
ロボットがポート21に挿入管3を挿入する際(挿入前状態、挿入中状態)、
図13に点線で示すように、外層416a、内層416bには電圧が印加されていない。このため、複数のピエゾアクチュエーター416は、全体として、同径円筒状を呈している。したがって、ピエゾアクチュエーター416は、接続部2に干渉しない。
【0083】
他方、
図13に実線で示すように、挿入後状態において、外層416a、内層416bには電圧が印加されている。このため、基部410を基点に、外層416aは伸張し、内層416bは収縮する。したがって、ピエゾアクチュエーター416は、径方向内側に湾曲変形する。すなわち、複数のピエゾアクチュエーター416は、全体として、上側から下側に向かって尖るテーパー円筒状に縮径変形する。当該縮径変形により、ピエゾアクチュエーター416の押圧面416cは、径方向外側から、被押圧部20の被押圧面20aに、押圧力Fを加える。すなわち、ピエゾアクチュエーター416は、挿入管3の外周面に、被押圧部20の内周面(ポート21の内周面)を押し付ける。この際、被押圧部20は、径方向内側から挿入管3に支持された状態で、径方向外側からテーパー部411により押圧されることになる。このため、被押圧部20は、径方向に圧縮変形する。ロボットがポート21から挿入管3を引き抜く際は、外層416a、内層416bへの電圧印加を終了する。ピエゾアクチュエーター416は、自身の弾性復元力により、拡径変形(復動)する。
【0084】
本実施形態の接続構造1と、第一実施形態の接続構造とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の接続構造1によると、
図3、
図7に示す拘束部材42を配置せずに、変形部41を変形させることができる。このため、押圧部4の構造が簡単になる。また、電力により変形部41を駆動することができる。
【0085】
<第六実施形態>
本実施形態の接続構造と、第一実施形態の接続構造との相違点は、挿入管から独立して押圧部が配置されている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
図14に、本実施形態の接続構造の挿入後状態における上面図を示す。
図15に、本実施形態の接続構造の挿入中状態における上面図を示す。なお、
図3、
図6と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0086】
図14、
図15に示すように、押圧部4は、挿入管3、接続部2とは別部材である。押圧部4は、環状の変形部41と、コイル(図略)と、電源装置(図略)と、を備えている。変形部41は、接続部2に環装されている。変形部41は、複数の分割体417と、複数の弾性体418と、を備えている。分割体417は、電磁石製であって、円弧状を呈している。コイルに電流を流すことにより、分割体417には磁力が発生する。弾性体418は、エラストマー発泡体製であって、円弧状を呈している。複数の分割体417と複数の弾性体418とは、周方向に交互に配置されている。
【0087】
変形部41は、
図1に示すプレート本体800に載置された状態で、予め接続部2に環装されている。
図15に示すように、ロボットがポート21に挿入管3を挿入する際(挿入前状態、挿入中状態)、電源装置はコイルに電流を流さない。このため、変形部41は、接続部2に当接していない。この状態で、ロボットは、挿入管3をポート21に挿入する。
【0088】
図14に示す挿入後状態において、電源装置はコイルに電流を流す。このため、分割体417には磁気吸引力が発生する。したがって、弾性体418を圧縮しながら、周方向に隣り合う分割体417同士が近接する。よって、矢印Y9で示すように、変形部41は縮径変形する。当該縮径変形により、変形部41は、径方向外側から、被押圧部20に押圧力Fを加える。すなわち、変形部41は、挿入管3の外周面に、被押圧部20の内周面(ポート21の内周面)を押し付ける。この際、被押圧部20は、径方向内側から挿入管3に支持された状態で、径方向外側からテーパー部411により押圧されることになる。このため、被押圧部20は、径方向に圧縮変形する。ロボットがポート21から挿入管3を引き抜く際は、電源装置がコイルへの通電を遮断する。通電を遮断すると、分割体417の磁気吸引力が消去される。このため、弾性体418は、自身の弾性復元力により、伸張する。したがって、
図15に示すように、変形部41は拡径変形(復動)する。当該拡径変形により、被押圧部20に対する変形部41の押圧力Fが解除される。
【0089】
本実施形態の接続構造1と、第一実施形態の接続構造とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。本実施形態の接続構造1によると、押圧部4を、挿入管3、接続部2から、独立して配置することができる。また、本実施形態の接続構造1によると、拘束部材42を配置せずに、変形部41を変形させることができる。このため、押圧部4の構造が簡単になる。また、磁力により変形部41を駆動することができる。
【0090】
<その他>
以上、本開示の接続構造の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0091】
押圧部4が被押圧部20に加える押圧力Fの方向は、特に限定しない。例えば、押圧力Fは、径方向内向きの成分のみを有していてもよい。また、押圧力Fは、径方向内向きの成分と、軸方向上向きまたは下向きの成分と、を有していてもよい。すなわち、押圧力Fは、少なくとも径方向内向きの成分を有していればよい。
【0092】
変形部41を径方向に変形させる駆動力は特に限定しない。例えば、変形部41自身の弾性力(
図3、
図11)、拘束部材42からの拘束力(
図7)、電力(
図13)、磁力(
図14)などを用いてもよい。流体圧(油圧、空気圧など)を用いてもよい。これらの力のうち、少なくとも二つを組み合わせて用いてもよい。また、変形部41を駆動する際に、モーター、ソレノイド、シリンダー、ポンプなどのアクチュエーターを用いてもよい。
【0093】
マイクロデバイス8の接続部2の配置数、位置は特に限定しない。マイクロデバイス8の配置方向は特に限定しない。中心軸Aの軸方向が、上下方向、水平方向、傾斜方向(上下方向、水平方向以外の方向)であってもよい。マイクロデバイス8(接続部2を含む)の材質は特に限定しない。エラストマー(詳しくは、エラストマーを主成分とする材料)、樹脂などであってもよい。マイクロデバイス8用のエラストマーとしては、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴムや、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0094】
カバープレート80の接続部2のうち被押圧部20だけが、エラストマー製であってもよい。また、接続部2の全体が、エラストマー製であってもよい。また、カバープレート80の全体が、エラストマー製であってもよい。すなわち、カバープレート80のうち、少なくとも被押圧部20がエラストマー製であればよい。また、押圧力Fにより弾性変形可能であれば、被押圧部20は、エラストマー以外の材料(例えば樹脂など)や、エラストマーとエラストマー以外の材料との複合材料などで形成されていてもよい。デバイス本体81の材質は特に限定しない。エラストマー、樹脂、ガラスなどであってもよい。カバープレート80およびデバイス本体81がエラストマー製の場合、双方のエラストマーは同一でも異なっていてもよい。
【0095】
押圧部4、被押圧部20の位置、配置数は特に限定しない。押圧部4、被押圧部20の形状は特に限定しない。各々の径方向(中心軸Aに対して直交する方向)断面が、無端環状(真円環状、楕円環状、多角形(三角形、四角形など)環状など)、有端環状(C字状)、円弧状などであってもよい。ポート21の形状は特に限定しない。径方向断面が、真円状、楕円状、多角形状などであってもよい。被押圧部20の構造は特に限定しない。単層でも複層でもよい。例えば、被押圧部20が、硬度の異なる複数の層(中心軸Aを中心とする筒状の層)から構成されていてもよい。
【0096】
挿入管3の種類は特に限定しない。例えば、パイプ、チューブ、ホース、ノズル、ピペットなどであってもよい。あるいは、これらの部材の先端に取り付けられるジョイントであってもよい。挿入管3の形状は特に限定しない。径方向断面が、真円管状、楕円管状、多角形管状などであってもよい。挿入管3の材質は特に限定しない。金属、樹脂、エラストマーなどであってもよい。
【0097】
流体試料の種類は特に限定しない。例えば、水溶液、血液、タンパク質、核酸溶液などであってもよい。流体試料の用途は特に限定しない。試験用、薬品(試薬、量産薬など)製造用などであってもよい。挿入管3の用途は特に限定しない。流路810に流体試料を供給するために、挿入管3を用いてもよい。また、流路810から流体試料を排出するために、挿入管3を用いてもよい。勿論、挿入管3をポート21に差し込んだまま、供給と排出(あるいは排出と供給)を連続して行ってもよい。
【0098】
スリット412の配置数は特に限定しない。スリット412の配置数を増やすと、拘束部材42により、テーパー部411を簡単に変形させることができる。テーパー部411、逆テーパー部413、23の傾斜角度(中心軸Aに対する傾斜角度)は特に限定しない。
【0099】
ピエゾアクチュエーター416の種類は特に限定しない。バイモルフ型でもユニモルフ型でもよい。ピエゾアクチュエーター416の層数は特に限定しない。層数を増やすと、変位量が大きくなる。所望の変位量に応じて、適宜、層数を設定すればよい。また、ピエゾアクチュエーター416の代わりに、バイメタルを配置してもよい。すなわち、熱により変形部41を変形させてもよい。また、環状あるいは筒状のピエゾアクチュエーター416を、
図14に示す変形部41のように、接続部2に環装してもよい。この場合、電圧により、ピエゾアクチュエーター416を径方向に変形させてもよい。弾性体418の種類は特に限定しない。すなわち、弾性体418の弾性は、材料に起因するものであってもよい。例えば、弾性体418をエラストマー製としてもよい。また、弾性体418の弾性は、構造に起因するものであってもよい。例えば、弾性体418として、ばねを用いてもよい。
【0100】
上記実施形態においては、ポート21に対する挿入管3の挿脱作業を、挿入管3移動用のロボットにより、自動的に実行した。しかしながら、例えば拡大鏡などを用いて、挿脱作業を作業者が手作業で行ってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1:接続構造
2:接続部、20:被押圧部、20a:被押圧面、21:ポート、210:ガイド部、211:突起部、212:テーパー部、213:段差部、22:被挿入溝、220:外側面、221:内側面、23:逆テーパー部、23a:逆テーパー面
3:挿入管
4:押圧部、40:連結部、41:変形部、41a:押圧面、410:基部、411:テーパー部、411a:押圧面、412:スリット、413:逆テーパー部、413a:押圧面、414:解放位置規制部、415:拘束位置規制部、416:ピエゾアクチュエーター、416a:外層、416b:内層、416c:押圧面、417:分割体、418:弾性体、42:拘束部材、420:環状部、421:動力伝達部、43:非変形部、43a:押圧面、43b:面取部
8:マイクロデバイス、80:カバープレート、800:プレート本体、81:デバイス本体、810:流路
90:把持部