(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183559
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20221206BHJP
A43B 13/16 20060101ALI20221206BHJP
A43B 17/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A43B13/14 Z
A43B13/16
A43B17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090935
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】一柳 星文
(72)【発明者】
【氏名】林 悟
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA02
4F050BA36
4F050BA49
4F050GA30
(57)【要約】
【課題】検出装置の耐久性を向上させる。
【解決手段】検出装置10は、足裏に配置される基部20と、基部20に取り付けられる検出素子31と、配線36とを備える。検出素子31は、荷重を検出する本体部32と、配線36に接続される接続端子33とを備える。基部20は、接続端子33と配線36との接続部Aを収容するセンサ収容部24を備える。センサ収容部24には、接続部Aの下方への変位を許容する隙間Sが設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足裏から得られる身体情報を検出する検出素子を備える検出装置であって、
足裏に配置される柔軟性を有する基部と、
前記基部に追従して変形可能な配線とを備え、
前記検出素子は、前記身体情報を検出する本体部と、前記本体部から突出するとともに前記配線に接続される接続端子とを備え、
前記基部は、前記接続端子と前記配線との接続部を収容する収容部を備え、
前記収容部には、前記接続部の上方及び下方の少なくとも一方への変位を許容する隙間が設けられていることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記隙間は、前記接続部の全体の上方及び下方の少なくとも一方に設けられている請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記隙間は、前記接続部の下方への変位を許容する隙間である請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記収容部は、前記接続部及び前記検出素子を収容し、
前記収容部の上面又は下面と前記本体部との間には、弾性体により構成されるスペーサが配置されている請求項1~3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記検出素子は、圧力センサであり、
前記スペーサの硬さは、前記基部における前記収容部の側壁を構成する部分の硬さよりも硬い又は柔らかい請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記基部は、上筐体及び下筐体を備え、
前記配線及び前記検出素子は、前記上筐体と前記下筐体との間に配置され、
前記収容部は、前記上筐体の下面及び前記下筐体の上面の少なくとも一方に設けられる凹部である請求項1~5のいずれか一項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足裏から得られる身体情報を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、履物の底部又はインソールに配置した検出装置を用いて、足裏から得られるユーザの身体情報を検出する技術が提案されている。検出装置により検出された身体情報は、例えば、ユーザの歩行状態、健康状態、運動時のパフォーマンスなどの解析に利用される。例えば、特許文献1には、インソールボディと、インソールボディの内部に配置された検出素子としての圧力センサ又は慣性センサとを備えるインソールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
履物を装着した状態のユーザが歩行、跳躍、着地などの足裏の動きを伴う動作を行った際に、履物の底部及びインソールには、足裏から伝わる荷重に基づいて、厚さ方向における局所的な圧縮が生じる。例えば、大きな荷重がかかる部分である、踵や母指球に接する部分は、局所的な圧縮が生じやすい。そのため、履物の底部又はインソールに配置された検出装置には、厚さ方向の圧縮に対する耐久性が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する検出装置は、足裏から得られる身体情報を検出する検出素子を備える検出装置であって、足裏に配置される柔軟性を有する基部と、前記基部に追従して変形可能な配線とを備え、前記検出素子は、前記身体情報を検出する本体部と、前記本体部から突出するとともに前記配線に接続される接続端子とを備え、前記基部は、前記接続端子と前記配線との接続部を収容する収容部を備え、前記収容部には、前記接続部の上方及び下方の少なくとも一方への変位を許容する隙間が設けられている。
【0006】
履物を装着した状態のユーザが歩行、跳躍、着地などの足裏の動きを伴う動作を行った際に、履物の底部及びインソールには、足裏から伝わる荷重に基づいて、厚さ方向における局所的な圧縮である圧縮変形が生じる。このとき、基部に配置されている配線も、基部の圧縮変形に追従して変形する。ここで、接続端子を構成する配線の端部は、接続端子と接合されていることから、配線の他の部位と比較して柔軟性が低い。そのため、接続部は、基部が圧縮変形した際に、その圧縮変形に追従して変形し難く、応力が集中しやすい。
【0007】
上記構成によれば、接続部は、その上方側及び下方側の少なくとも一方に位置する隙間内において、上方側又は下方側に向かって撓むように湾曲したり、平行移動したりするように変位することが可能になる。これにより、基部の圧縮変形に追従して接続部を変形させようとする力が作用した場合に、隙間内にて接続部が変位することにより、隙間内に位置する配線の全体に応力が分散される。その結果、接続部への応力の集中が緩和されて、接続部の座屈、及び接続部における断線の発生を抑制できる。よって、ユーザの動作に基づく基部の圧縮変形に対する検出装置の耐久性が向上する。
【0008】
上記検出装置において、前記隙間は、前記接続部の全体の上方及び下方の少なくとも一方に設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、配線において、上方及び下方のすくなくとも一方に隙間Sが位置して変位の自由度が高くなっている部分と、上方及び下方に隙間が位置せず、基部により変位が制限されている部分との境界を避けた位置に接続部が位置する。隙間内における接続部の変位は、配線における上記境界に位置する部分を支点とする。そのため、接続部の位置を支点から遠ざけることにより、隙間内における接続部の変位の自由度が更に高くなる。
【0009】
上記検出装置において、前記隙間は、前記接続部の下方への変位を許容する隙間であることが好ましい。
基部が圧縮変形した場合、基部における圧縮された部分は、下側が凸となる湾曲形状になりやすい。そのため、配線も、基部の変形に追従して下側が凸となる湾曲形状になりやすい。下側が凸となる湾曲形状となった配線には、下側に向かう力が作用しているため、接続部の下方への変位を許容する隙間とすることによって、隙間内にて接続部がスムーズに変位する。これにより、接続部に作用する力を分散させる効果がより顕著に得られる。
【0010】
上記検出装置において、前記収容部は、前記接続部及び前記検出素子を収容し、前記収容部の上面又は下面と前記本体部との間には、弾性体により構成されるスペーサが配置されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、スペーサが配置されることにより、検出素子の接続端子を収容部の底面から浮いた状態にできる。これにより、隙間を簡易に形成できる。また、隙間を厚さ方向に大きく形成できるため、隙間内における接続部の変位の自由度が更に高くなる。
【0012】
上記検出装置において、前記検出素子は、圧力センサであり、前記スペーサの硬さは、前記基部における前記収容部の側壁を構成する部分の硬さよりも硬い又は柔らかいことが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、硬さの異なる複数種類のスペーサを用意しておき、基部の物性及び寸法に応じてスペーサの種類を変更するのみで検出素子の検出感度を調節できる。そのため、基部の物性及び寸法が異なる検出装置であっても、共通の検出素子を用いることが容易である。つまり、基部の物性及び寸法を変更した場合にも、同じ検出感度の検出装置を容易に構築できる。
【0014】
上記検出装置において、前記基部は、上筐体及び下筐体を備え、前記配線及び前記検出素子は、前記上筐体と前記下筐体との間に配置され、前記収容部は、前記上筐体の下面及び前記下筐体の上面の少なくとも一方に設けられる凹部であることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、収容部及び隙間を容易に形成できる。また、下筐体を共通の部材として、上筐体を物性及び寸法の一方又は両方が異なるものに変更することにより、基部のクッション性や反発性を容易に変更できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検出装置の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】上筐体及び接着層の図示を省略した検出装置の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、荷重を検出するインソールに具体化した本発明の検出装置10の一実施形態を説明する。
図1に示すように、検出装置10は、履物のインソールとして用いられる基部20と、基部20に取り付けられる検出ユニット30とを備えている。なお、柔軟性を有するとは、歩行、跳躍、着地などの際の足裏の動きに伴って、部分的に厚さ方向に圧縮させることができる程度に柔らかいことを意味する。
【0019】
<基部>
基部20は、基部20の上部を構成する上筐体21と、基部20の下部を構成する下筐体22とを備えている。検出ユニット30は、上筐体21と下筐体22との間に挟持される態様にて基部20の内部に取り付けられている。
【0020】
上筐体21は、その下面側が平面状に形成されるとともに、その上面が足裏の形状に沿った立体形状に形成されている。上筐体21の構成材料としては、例えば、EVA(エチレンビニルアセテート,エチレン酢酸ビニル)やPU(ポリウレタン)が挙げられる。上筐体21の構成材料及び上筐体21の厚さの一方又は両方を調整することにより、インソールのクッション性及び反発性を調整できる。また、上筐体21の上面には、上筐体21を被覆する表皮23が貼り付けられている。
【0021】
下筐体22は、平板状に形成される部位であり、その上面には、検出ユニット30の構成要素を収容するセンサ収容部24及びモジュール収容部25が設けられている。センサ収容部24及びモジュール収容部25は、下筐体22に上面に設けられる凹部である。下筐体22は、センサ収容部24及びモジュール収容部25に対応する形状の貫通孔26を有する有孔板22aの下に、孔を有さない底板22bを重ねて一体化することにより形成されている。下筐体22の構成材料としては、例えば、EVA(エチレンビニルアセテート,エチレン酢酸ビニル)やPU(ポリウレタン)が挙げられる。
【0022】
また、基部20は、上筐体21の下面と、下筐体22の上面とを接着する接着層27を備えている。接着層27は特に限定されるものではなく、両面テープなどのシート材を用いた接着層であってもよいし、接着剤を用いた接着層であってもよい。
【0023】
<検出ユニット>
図1に示すように、検出ユニット30は、三つのつま先センサ31a~31cと、一つの踵センサ31dとを備えている。つま先センサ31a~31cは、足裏における母指球から小指球に連なる肉が厚くなっている範囲にかかる荷重を検出するためのつま先用の検出素子である。踵センサ31dは、足裏の踵にかかる荷重を検出するための踵用の検出素子である。
【0024】
図2に示すように、つま先センサ31aは、第1指の付け根(母指球)にかかる荷重を検出するためのセンサであり、基部20における第1指の付け根の荷重がかかる部分に配置されている。つま先センサ31bは、第2指の付け根にかかる荷重を検出するためのセンサであり、基部20における第2指の付け根の荷重がかかる部分に配置されている。つま先センサ31cは、第5指の付け根(小指球)にかかる荷重を検出するためのセンサであり、基部20における第5指の付け根の荷重がかかる部分に配置されている。
【0025】
踵センサ31dは、基部20における踵の荷重がかかる部分に配置される。なお、以下では、つま先センサ31a~31c及び踵センサ31dをまとめて各検出素子31と記載する場合がある。
【0026】
図1及び
図2に示すように、基部20の下筐体22に設けられるセンサ収容部24は、各検出素子31が配置される位置にそれぞれ設けられている。各検出素子31は、センサ収容部24内に収容されている。各検出素子31を構成する圧力センサとしては、圧電素子等を用いた公知の感圧センサを用いることができる。特に、足裏に配置されるという使用状況に鑑みると、伸縮性及び耐久性の観点から、誘電エラストマーを利用したエラストマー製の静電容量式圧力センサを用いることが好ましい。上記誘電エラストマーとしては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。
【0027】
本実施形態では、各検出素子31として、形状が同じである共通の圧力センサを用いている。以下では、つま先センサ31aの構成を説明し、つま先センサ31b,31c及び踵センサ31dの構成の説明を省略する。
【0028】
図3に示すように、エラストマー製の静電容量式圧力センサであるつま先センサ31aは、荷重を検出する本体部32を備えている。本体部32は、誘電エラストマーからなるシート状の誘電層と、誘電層の厚さ方向の両側に配置された電極層としての正極電極及び負極電極とが複数積層されたシート状の多層構造体(図示略)である。また、つま先センサ31aは、本体部32の電極層に電気的に接続される接続端子33を備えている。接続端子33は、本体部32の周縁から面方向に突出するシート状の導電部位であり、センサ収容部24内に配置されている。
【0029】
センサ収容部24の上面である底面には、弾性体により構成されるとともに、本体部32と外形が等しい平板状のスペーサ32aが配置されている。つま先センサ31aの本体部32は、スペーサ32aの上に載置されている。スペーサ32a及び本体部32は、接着層27と同様の接着層32bにより接着されている。本体部32の下にスペーサ32aが配置されることにより、センサ収容部24の底面から接続端子33が浮いた状態になっている。
【0030】
スペーサ32aの厚さは、センサ収容部24の底面から接続端子33との間を離間させる観点から、例えば、1mm以上であることが好ましい。また、スペーサ32aの厚さは、本体部32の上面の高さ位置を下筐体22の上面の位置に一致させる厚さである。
【0031】
スペーサ32aの構成材料としては、例えば、EVA(エチレンビニルアセテート,エチレン酢酸ビニル)やPU(ポリウレタン)が挙げられる。
スペーサ32aの硬さは、センサ収容部24の側壁を構成する部分の硬さ、即ち、下筐体22の硬さと同じであってもよいし、異なっていてもよい。下筐体22の硬さに対するスペーサ32aの相対的な硬さを調整することにより、つま先センサ31aの検出感度を調節できる。
【0032】
詳述すると、基部20におけるつま先センサ31aの本体部32が位置する部分に局所的に荷重が加わった場合を想定する。このとき、スペーサ32aの硬さが下筐体22の硬さよりも硬い場合、スペーサ32aに載置されている本体部32は、下筐体22により構成される周囲の部分よりも下方に沈み込み難くなる。これにより、基部20に加わった荷重が本体部32に集中する。その結果、本体部32による荷重の検出感度が高くなる。一方、スペーサ32aの硬さが下筐体22の硬さよりも柔らかい場合、スペーサ32aに載置されている本体部32は、下筐体22により構成される周囲の部分よりも下方に沈み込みやすくなる。これにより、基部20に加わった荷重が下筐体22により構成される周囲の部分に分散される。その結果、本体部32による荷重の検出感度が低くなる。
【0033】
スペーサ32aの硬さは、下筐体22の構成材料に応じてスペーサ32aの構成材料を選択することにより調整できる。なお、本実施形態において、スペーサ32aなどの硬さは、アスカーC硬度を意味する。
【0034】
図1及び
図2に示すように、検出ユニット30は更に、電子モジュール35及び配線36を備えている。電子モジュール35を構成する機能的要素としては、例えば、バッテリ等の電源、各検出素子31の各圧力センサからの信号を処理する信号処理回路、各圧力センサからの信号やその信号を処理して得られる情報等の各種情報を記憶する記憶部、外部と通信を行う通信部が挙げられる。
【0035】
図1に示すように、電子モジュール35は、モジュール収容部25内に収容されるとともに、接着層27と同様の接着層35aにより上筐体21の下面に接着されている。電子モジュール35及びモジュール収容部25は、足底弓蓋、所謂、土踏まずの位置に配置されている。したがって、電子モジュール35は、つま先センサ31a~31cよりも踵側に位置している。
【0036】
配線36は、各検出素子31の各接続端子33と電子モジュール35とを電気的に接続する。配線36は、基部20に追従して変形可能な柔軟性を有している。柔軟性を有する配線36としては、例えば、フレキシブルプリント配線板、リード線が挙げられる。以下では、配線36として、フレキシブルプリント配線板を用いた場合について説明する。
【0037】
図2及び
図3に示すように、配線36における各検出素子31に接続される端部は、センサ収容部24内に配置されている。配線36における他の部分は、上筐体21の下面と下筐体22の上面との間に挟まれる態様にて、上筐体21と下筐体22との間に配置されている。なお、
図3においては、表皮23及び接着層27の図示を省略している。
【0038】
図3に示すように、配線36は、絶縁材料により構成される基部層36aと、基部層36aの片側の表面に設けられる導電層36bと、基部層36a及び導電層36bを被覆するシールド層36cとを備えている。
【0039】
センサ収容部24内に収容されている配線36の端部と接続端子33の先端部分とにより、配線36と接続端子33とを接続する接続部Aが形成されている。接続部Aを構成する配線36の端部は、部分的にシールド層36cが除去されて基部層36a及び導電層36bが露出している。接続部Aにおいて、配線36の端部は、基部層36aの導電層36bが設けられている面が接続端子33の上面に対向するように接続端子33に重ねられるとともに、導電接着層37を介して接続端子33の上面に接着されている。導電接着層37としては、異方性導電膜などの導電性接着材料を用いることができる。
【0040】
<隙間(応力緩和部)>
図3に示すように、センサ収容部24は、接続端子33と配線36との接続部Aを収容する収容部である。センサ収容部24の底面と接続部Aとの間には、応力緩和部として機能する隙間Sが設けられている。配線36の長さ方向において、隙間Sは、接続部Aの下方に加えて、接続端子33の下方、及び配線36における接続部Aよりも基端側の部分の下方にも広がるように形成されている。配線36の幅方向において、隙間Sは、接続端子33、接続部A、及び配線36よりも幅広に形成されている。したがって、接続部Aは、その全体が隙間Sの上方に位置している。
【0041】
なお、配線36の幅方向における隙間Sの長さは、センサ収容部24における本体部32及びスペーサ32aを収容する部分の長さよりも短い。これにより、センサ収容部24に収容されている本体部32及びスペーサ32aが隙間S側にずれることが抑制されている。
【0042】
次に、本実施形態の作用について説明する。
履物を装着した状態のユーザが歩行、跳躍、着地などの足裏の動きを伴う動作を行った際に、履物の底部及びインソールには、足裏から伝わる荷重に基づいて、厚さ方向における局所的な圧縮が生じる。例えば、大きな荷重がかかる部分である、踵や母指球に接する部分は、局所的な圧縮が生じやすい。以下、局所的な圧縮を伴う基部20の変形を圧縮変形と記載する。
【0043】
このとき、基部20内に配置されている配線36も、基部20の圧縮変形に追従して変形する。ここで、配線36と接続端子33との接続部Aは、互いに接合されていること、及び接続端子33が接着されて配線36の他の部位よりも部分的に厚くなっていることから、配線36の他の部位と比較して柔軟性が低い。そのため、配線36の接続部Aは、基部20が圧縮変形した際に、その圧縮変形に追従して変形し難く、応力が集中しやすい。
【0044】
図3に示すように、本実施形態では、基部20の下筐体22に対して、接続端子33と配線36との接続部Aを収容する収容部としてのセンサ収容部24を設けている。そして、センサ収容部24の底面と接続部Aとの間に隙間Sを設けている。これにより、接続部Aは、その下方側に位置する隙間S内において、下方側に向かって撓むように湾曲したり、平行移動、即ち、姿勢を維持したまま下方側に沈むように変位したりすることが可能になる。つまり、接続部Aの下方側への変位を許容する隙間Sが設けられることによって、接続部Aの変位の自由度が高くなっている。
図3においては、一例として、下方側に向かって沈むように変位した状態の接続部Aを破線で示している。
【0045】
接続部Aの変位の自由度が高くなることにより、基部20の圧縮変形に追従して接続部Aを変形させようとする力が作用した場合に、接続部A、並びに隙間S内に位置する配線及び接続端子33は、応力がより効果的に分散される形状となるように変位する。その結果、接続部Aの座屈、及び接続部Aにおける断線の発生を抑制できる。
【0046】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)検出装置10は、足裏に配置される基部20と、基部20に取り付けられる検出素子31と、配線36とを備える。検出素子31は、荷重を検出する本体部32と、配線36に接続される接続端子33とを備える。基部20は、接続端子33と配線36との接続部Aを収容するセンサ収容部24を備える。センサ収容部24には、接続部Aの下方への変位を許容する隙間Sが設けられている。
【0047】
上記構成によれば、基部20の圧縮変形に追従して接続部Aを変形させようとする力が作用した場合に、隙間S内にて接続部Aが変位することにより、隙間S内に位置する配線36及び接続端子33の全体に応力を分散させることができる。これにより、接続部Aへの応力の集中が緩和されて、接続部Aの座屈、及び接続部Aにおける断線の発生を抑制できる。したがって、ユーザの動作に基づく基部20の圧縮変形に対する検出装置10の耐久性が向上する。
【0048】
(2)隙間Sは、接続部Aの全体の下方に位置するように設けられている。
上記構成によれば、配線36において、下方に隙間Sが位置して変位の自由度が高くなっている部分と、下方に隙間Sが位置せず、基部20により変位が制限されている部分との境界を避けた位置に接続部Aが位置する。隙間S内における接続部Aの変位は、配線36における上記境界に位置する部分を支点とする。そのため、接続部Aの位置を支点から遠ざけることにより、隙間S内における接続部Aの変位の自由度が更に高くなる。
【0049】
(3)隙間Sは、接続部Aの下方への変位を許容する隙間である。
基部20が圧縮変形した場合、基部20の圧縮された部分は、下側が凸となる湾曲形状になりやすい。そのため、配線36も、基部20の圧縮変形に追従して下側が凸となる湾曲形状になりやすい。下側が凸となる湾曲形状となった配線36には、下側に向かう力が作用しているため、接続部Aの下方への変位を許容する隙間Sとすることによって、隙間S内にて接続部Aがスムーズに変位する。これにより、接続部Aに作用する力を分散させる効果がより顕著に得られる。
【0050】
(4)センサ収容部24は、接続部A及び検出素子31を収容する。センサ収容部24の上面と検出素子31の本体部32とのには、弾性体により構成されるスペーサ32aが配置されている。
【0051】
上記構成によれば、スペーサ32aが配置されることにより、検出素子31の接続端子33をセンサ収容部24の底面から浮いた状態にできる。これにより、隙間Sを簡易に形成できる。また、隙間Sを厚さ方向に大きく形成できるため、隙間S内における接続部Aの変位の自由度が更に高くなる。
【0052】
(5)検出素子31は、圧力センサである。スペーサ32aの硬さは、基部20におけるセンサ収容部24の側壁を構成する部分である下筐体22の硬さよりも硬い又は柔らかい。
【0053】
基部20のクッション性や反発性は、日常用途、スポーツ用となどの用途に応じて設定される。基部20を、クッション性や反発性などの物性又は厚さなどの寸法が異なるものに変更すると、圧力センサである検出素子31に伝わる荷重が変化し、検出素子31の検出感度が変化する。そのため、基部20の種類による検出感度への影響を排除するためには、基部20の物性及び寸法に応じて、検出感度の異なる検出素子31を用いる必要がある。
【0054】
上記構成によれば、硬さの異なる複数種類のスペーサ32aを用意しておき、基部20の物性及び寸法に応じてスペーサ32aの種類を変更するのみで検出素子31の検出感度を調節できる。そのため、基部20の物性及び寸法が異なる検出装置10であっても、共通の検出素子31、又は検出素子31及び配線36を備える共通の検出ユニット30を用いることが容易である。つまり、基部20の物性及び寸法を変更した場合にも、同じ検出感度の検出装置10を容易に構築できる。
【0055】
(6)基部20は、上筐体21及び下筐体22を備える。配線36及び検出素子31は、上筐体21と下筐体22との間に配置されている。センサ収容部24は、下筐体22の上面に設けられる凹部である。
【0056】
上記構成によれば、センサ収容部24及び隙間Sを容易に形成できる。また、下筐体22を共通の部材として、上筐体21を物性及び寸法の一方又は両方が異なるものに変更することにより、基部20のクッション性や反発性を容易に変更できる。
【0057】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・接続部Aは接着層を有している必要はない。コネクタ等によって電気的に接続されていてもよい。または、配線36と接続端子33をスクリーン印刷によって連続形成することで、一様の配線にて本実施形態の配線36から本体部32までが形成された検出ユニットでもよい。この場合、本体部32に接続される配線36の全体を接続部Aとみなす。
【0058】
・上記実施形態では、配線36の長さ方向において、接続部Aの全体が隙間Sの上方に位置するように隙間Sを設けていたが、配線36の長さ方向における接続部Aの少なくとも一部の範囲が隙間Sの上方に位置していればよい。つまり、配線36において、下方に隙間Sが位置して変位の自由度が高くなっている部分と、下方に隙間Sが位置せず、基部20により変位が制限されている部分との境界が接続部Aに位置していてもよい。
【0059】
・全ての接続部Aの下方に隙間Sが設けられている必要はない。例えば、第1指の付け根にかかる荷重を検出するつま先センサ31a、及び踵にかかる荷重を検出する踵センサ31dなどの大きな荷重がかかる部分に設けられる検出素子31との接続部Aの下方にのみ隙間Sを設けてもよい。
【0060】
・隙間Sは、接続部Aの上方への変位を許容する隙間であってもよい。例えば、上筐体21の下面に、センサ収容部24を設けて、センサ収容部24の下面である底面と接続部Aとの間に隙間Sを設ける構成としてもよい。また、接続部Aの下方への変位を許容する隙間Sと、接続部Aの上方への変位を許容する隙間Sの両方を設けてもよい。
【0061】
・検出素子31の本体部32を収容するセンサ収容部24と、接続部Aを収容する収容部とを別の凹部として設け、接続部Aを収容する収容部に隙間Sを設ける構成としてもよい。
【0062】
・本体部32の上面の高さ位置が下筐体22の上面よりも高い位置又は低い位置となるようにスペーサ32aの厚さを変更してもよい。
・一部又は全部のスペーサ32aを省略してもよい。例えば、大きな荷重がかかる部分に設けられる検出素子31が収容されるセンサ収容部24にのみ、スペーサ32aを設けてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、各検出素子31を、形状が同じである共通の圧力センサとしていたが、一部又は全部を非共通の圧力センサとしてもよい。
・検出装置10に設けられるつま先センサの数及び配置は、上記実施形態の構成に限定されない。例えば、つま先センサの数は、2個であってもよいし、4個以上であってもよい。
【0064】
・検出装置10に設けられる踵センサの数及び配置は、上記実施形態の構成に限定されない。
・検出装置10に設けられる電子モジュール35の数及び配置は、上記実施形態の構成に限定されない。例えば、電子モジュール35を複数の部材に分割して設けてもよいし、電子モジュール35を基部20の外側に設けてもよい。
【0065】
・つま先センサを、足裏から得られる身体情報を検出する他の検出素子に変更してもよい。他の検出素子としては、例えば、温度センサ、臭いセンサ、慣性センサが挙げられる。踵センサについても同様である。
【0066】
・検出装置10を履物に適用してもよい。この場合、履物の底壁部分を基部20として用いる。
【符号の説明】
【0067】
A…接続部
S…隙間
10…検出装置
20…基部
21…上筐体
22…下筐体
24…センサ収容部
31…検出素子
31a~31c…つま先センサ
31d…踵センサ
32…本体部
32a…スペーサ
33…接続端子
36…配線