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特開2022-183573電子ペンによる入力を制御するためのプロセッサ、及び、電子ペンとともに用いられるコンピュータにより実行される方法
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  • 特開-電子ペンによる入力を制御するためのプロセッサ、及び、電子ペンとともに用いられるコンピュータにより実行される方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183573
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電子ペンによる入力を制御するためのプロセッサ、及び、電子ペンとともに用いられるコンピュータにより実行される方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
G06F3/03 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090967
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】野村 佳生
(57)【要約】
【課題】ユーザの意図に反して、電子ペン2による描画のための処理が中断してしまうことを防止する。
【解決手段】電子ペンは、側面に設けられたサイドスイッチと、電子ペンのペン先がパネルに接触しているか否かを示す接触情報を取得する接触情報取得部と、を含む。プロセッサは、サイドスイッチの押下状態を示すスイッチ情報を含むデータを受信し(ステップS20)、接触情報に基づいてペン先がパネルに接触しているか否かを判定し(ステップS24)、ペン先がパネルに接触していないと判定した場合にはスイッチ情報を出力する一方、ペン先がパネルに接触していると判定した場合にはスイッチ情報の値を無効にする(ステップS26)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペンによる入力を制御するためのプロセッサであって、
前記電子ペンは、
側面に設けられたサイドスイッチと、
前記電子ペンのペン先がパネルに接触しているか否かを示す接触情報を取得する接触情報取得部と、を含み、
前記サイドスイッチの押下状態を示すスイッチ情報を取得し、
前記接触情報に基づいて前記ペン先がパネルに接触しているか否かを判定し、
前記ペン先がパネルに接触していないと判定した場合には、前記スイッチ情報を出力し、
前記ペン先がパネルに接触していると判定した場合には、前記スイッチ情報の値を無効にする、
プロセッサ。
【請求項2】
前記スイッチ情報の値を無効にするケースを設定するための設定ツールを実行し、
前記ペン先がパネルに接触していると判定し、かつ、前記設定ツールにおいて前記ペン先がパネルに接触している場合に前記スイッチ情報の値を無効にすることが設定されている場合に、前記スイッチ情報の値を無効にする、
請求項1に記載のプロセッサ。
【請求項3】
前記プロセッサは、デバイスドライバ及びアプリケーションを実行するよう構成され、
前記デバイスドライバは、前記接触情報に基づいて前記ペン先がパネルに接触しているか否かを判定し、前記ペン先がパネルに接触していないと判定した場合には、前記スイッチ情報を前記アプリケーションに出力する一方、前記ペン先がパネルに接触していると判定した場合には、前記スイッチ情報の値を無効にする動作を実行するよう構成される、
請求項1に記載のプロセッサ。
【請求項4】
前記電子ペンは、前記スイッチ情報及び前記接触情報を含むペン信号を送信し、
前記プロセッサは、センサを介して前記ペン信号を受信するタッチコントローラであり、前記スイッチ情報をホストプロセッサに対して出力することにより前記スイッチ情報の出力を行う、
請求項1に記載のプロセッサ。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記電子ペンに内蔵されるプロセッサであり、前記スイッチ情報を含むペン信号を送信することにより前記スイッチ情報の出力を行う、
請求項1に記載のプロセッサ。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記スイッチ情報の値を無効な値に強制的に書き換えることにより、前記スイッチ情報の値を無効にする処理を行う、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプロセッサ。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記スイッチ情報を出力しないことにより、前記スイッチ情報の値を無効にする処理を行う、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプロセッサ。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記サイドスイッチに割り当てられた機能に応じたイベントを発生させないことにより、前記スイッチ情報の値を無効にする処理を行う、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプロセッサ。
【請求項9】
電子ペンとともに用いられるコンピュータにより実行される方法であって、
前記コンピュータが、前記電子ペンの側面に設けられたサイドスイッチの押下状態を示すスイッチ情報の値を無効にするケースを設定するための設定ツールを実行するステップと、
前記電子ペンのペン先がパネルに接触しており、かつ、前記設定ツールにおいて前記ペン先がパネルに接触している場合に前記スイッチ情報の値を無効にすることが設定されている場合に、前記コンピュータが前記スイッチ情報の値を無効にするステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記コンピュータが、前記電子ペンのペン先がパネルに接触しているか否かを示す接触情報を前記電子ペンから受信するステップと、
前記コンピュータが、前記接触情報に基づいて前記ペン先がパネルに接触しているか否かを判定するステップと、をさらに含む、
請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペンによる入力を制御するためのプロセッサ、及び、電子ペンとともに用いられるコンピュータにより実行される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイドスイッチやテールスイッチなどのスイッチを有する電子ペンが知られている。特許文献1には、この種の電子ペンの例が開示されている。同文献には、マウスの左クリックや右クリックと同様の機能を実現するためにサイドスイッチを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-033542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子ペンのサイドスイッチは、通常、電子ペンを把持したユーザの人差し指が当たる位置に設けられる。電子ペンを把持した状態で押下しやすいようにとの配慮からであるが、ボールペンや鉛筆などの伝統的な文房具には存在しないスイッチであることから、電子ペンに慣れていないユーザが使用する場合、筆記中に意図せずしてサイドスイッチに人差し指が当たってしまうことがある。そうすると、左クリックや右クリックなどの機能が発動してしまい、筆記の最中に突然ストローク線が選択されたりするなど描画のための処理が中断してしまう結果となるため、改善が求められていた。
【0005】
したがって、本発明の目的の一つは、ユーザの意図に反して描画のための処理が中断してしまうことを防止できるプロセッサ及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるプロセッサは、電子ペンによる入力を制御するためのプロセッサであって、前記電子ペンは、側面に設けられたサイドスイッチと、前記電子ペンのペン先がパネルに接触しているか否かを示す接触情報を取得する接触情報取得部と、を含み、前記サイドスイッチの押下状態を示すスイッチ情報を取得し、前記接触情報に基づいて前記ペン先がパネルに接触しているか否かを判定し、前記ペン先がパネルに接触していないと判定した場合には、前記スイッチ情報を出力し、前記ペン先がパネルに接触していると判定した場合には、前記スイッチ情報の値を無効にする、プロセッサである。
【0007】
本発明による方法は、電子ペンとともに用いられるコンピュータにより実行される方法であって、前記コンピュータが、前記電子ペンの側面に設けられたサイドスイッチの押下状態を示すスイッチ情報の値を無効にするケースを設定するための設定ツールを実行するステップと、前記電子ペンのペン先がパネルに接触しており、かつ、前記設定ツールにおいて前記ペン先がパネルに接触している場合に前記スイッチ情報の値を無効にすることが設定されている場合に、前記コンピュータが前記スイッチ情報の値を無効にするステップと、を含む方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ペン先がパネルに接触している描画中にはサイドスイッチに対応する機能が発動しなくなるので、ユーザの意図に反して描画のための処理が中断してしまうことを防止可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は、本発明の第1の実施の形態による位置検出システム1の構成を示す図であり、(b)は、電子ペン2の内部構成を示す図である。
図2】デバイスドライバ34によってディスプレイ32に表示される電子機器3のプロパティ画面を示す図である。
図3】本発明の第1の実施の形態による位置検出システム1に含まれるデバイスドライバ34によって実行される設定処理を示す処理フロー図である。
図4】本発明の第1の実施の形態による位置検出システム1に含まれるデバイスドライバ34によって実行されるペン入力処理を示す処理フロー図である。
図5】本発明の第2の実施の形態による位置検出システム1に含まれるタッチコントローラ31によって実行されるペン入力処理を示す処理フロー図である。
図6】本発明の第3の実施の形態による位置検出システム1に含まれる電子ペン2のプロセッサ26によって実行されるペン入力処理を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態による位置検出システム1の構成を示す図である。同図に示すように、位置検出システム1は、電子ペン2と、電子ペン2を検出する位置検出装置である電子機器3とを備えて構成される。
【0012】
電子機器3は、例えばタブレットコンピュータやデジタイザなどのタッチ面3aを有するコンピュータである。電子機器3内には、タッチ面3aの直下に配置されたセンサ30と、センサ30に接続されたタッチコントローラ31と、センサ30と重畳して配置されたディスプレイ32と、これらを含む電子機器3の各部を制御するホストプロセッサ33とが設けられる。
【0013】
ホストプロセッサ33は電子機器3の中央処理装置であり、図示しないメモリから各種のプログラムを読み出し、実行するように構成される。こうして実行されるプログラムには、電子機器3のオペレーティングシステムや描画アプリケーションを含む各種のアプリケーションが含まれる。このうち描画アプリケーションは、タッチコントローラ31から供給される位置及びデータに基づいてデジタルインクを生成し、電子機器3内のメモリに記憶する処理や、生成したデジタルインクをレンダリングし、その結果を示す映像信号を生成してディスプレイ32に供給する処理を実行するためのプログラムである。ディスプレイ32は、ホストプロセッサ33から供給される映像信号を表示する装置であり、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイによって構成される。
【0014】
ホストプロセッサ33により実行されるプログラムには、上記の他に、タッチコントローラ31を介して電子ペン2の制御を行うデバイスドライバ34も含まれる。デバイスドライバ34はオペレーティングシステムの一部を構成するプログラムであり、描画アプリケーションとタッチコントローラ31の間の通信を媒介するとともに、後述する図2に示す設定ツールを実行することによってペン入力に関する各種のユーザ設定を受け付け、設定内容に応じた処理を実行する役割を有している。
【0015】
タッチコントローラ31は、センサ30を介して電子ペン2と双方向に通信することによって、タッチ面3a内における電子ペン2の位置を導出するとともに、電子ペン2からデータを取得し、導出した位置及び取得したデータを、都度デバイスドライバ34に供給する機能を有するプロセッサである。ここでいうプロセッサには、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路によって実現される処理回路が含まれる。デバイスドライバ34は、供給された位置及びデータを、描画アプリケーションに転送する役割を果たす。このときデバイスドライバ34は、所定の条件が満たされる場合に、タッチコントローラ31から供給されたデータに含まれるスイッチ情報(後述)を変更する処理も行う。この点の詳細については、後述する。
【0016】
タッチコントローラ31と電子ペン2の間の通信は、例えばアクティブ静電方式又は電磁誘導方式によって実現される。アクティブ静電方式を用いる場合のセンサ30は、それぞれy方向に延在し、x方向に等間隔で配置される複数のx側線状電極と、それぞれx方向に延在し、y方向に等間隔で配置される複数のy側線状電極とを含んで構成される。一方、電磁誘導方式を用いる場合のセンサ30は、それぞれy方向に延在する複数のx側ループコイルと、それぞれx方向に延在する複数のy側ループコイルとを含んで構成される。以下では、タッチコントローラ31から電子ペン2に対して送信される信号をアップリンク信号USと称し、電子ペン2からタッチコントローラ31に対して送信される信号(ペン信号)をダウンリンク信号DSと称する。
【0017】
タッチコントローラ31は、所定のフレーム周期ごとにアップリンク信号USを送信し、アップリンク信号USのインターバルでダウンリンク信号DSを受信するよう構成される。アップリンク信号USは、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュール(つまり、ダウンリンク信号DSの送信タイミング、及び、次のアップリンク信号USの受信タイミング)の基準となるタイミングを電子ペン2に知らせる役割を有している。電子ペン2は、アップリンク信号USの受信タイミングに基づいてアップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュールを決定し、決定した送受信スケジュールに従って、ダウンリンク信号DSの送信と、次のアップリンク信号USの受信とを実行する。アップリンク信号USのインターバル内におけるダウンリンク信号DSの送信タイミング及び送信継続時間は、通信プロトコルにより予め規定されている。
【0018】
タッチコントローラ31と電子ペン2の間の通信をアクティブ静電方式により行う場合、電子機器3を、所謂「インセル型」の位置検出装置として構成してもよい。この場合、センサ30を構成する複数のx側線状電極及び複数のy側線状電極の一方がディスプレイ32の共通電極(各画素に共通に接地電位を供給するための電極)を兼ねる。したがってタッチコントローラ31は、ディスプレイ32内の画素を駆動するタイミングでは、センサ30を用いてアップリンク信号USの送信やダウンリンク信号DSの受信を行うことができない。そこでタッチコントローラ31は、ホストプロセッサ33からディスプレイ32内の画素を駆動するタイミングを取得し、画素の駆動周期によって定まる一定の周期を上記フレーム周期としてアップリンク信号USの送信を行うとともに、それぞれ画素の駆動インターバルに相当する複数の時間スロットをアップリンク信号USの送信インターバルに設定し、各時間スロット内の時間を用いて電子ペン2からのダウンリンク信号DSを受信するよう構成される。
【0019】
アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの構成について簡単に説明すると、まずアップリンク信号USは、電子ペン2に対する命令を示すコマンドによって変調された信号であり、各送信ビットを所定のチップ列(拡散符号)により拡散してなるパルス波(矩形波)によって構成される。一方、ダウンリンク信号DSは、タッチコントローラ31に電子ペン2の位置を検出させるための位置信号と、タッチコントローラ31に対して送信するデータによって変調されたデータ信号とを含む信号である。データ信号により送信されるデータには、後述する筆圧値(接触情報)又はスイッチ情報など、描画のために周期的に送信される通常データと、コマンドへの応答として送信される応答データとが含まれる。ただし、位置信号の送信は必須ではなく、タッチコントローラ31は、データ信号からも電子ペン2の位置を検出し得る。
【0020】
図1(b)は、電子ペン2の内部構成を示す図である。同図に示すように、電子ペン2は、芯体21と、ペン先電極22と、圧力センサ23と、サイドスイッチ24a,24bと、バッテリー25と、プロセッサ26とを有して構成される。芯体21は、電子ペン2のペン軸を構成する部材である。芯体21の先端は電子ペン2のペン先を構成し、末端は圧力センサ23に当接している。ペン先電極22はペン先に設けられた導電体であり、プロセッサ26と電気的に接続されている。
【0021】
圧力センサ23は、芯体21の先端に加わる圧力を検出するセンサである。圧力センサ23が検出した圧力は、例えば12ビットの筆圧値としてプロセッサ26に供給される。筆圧値は、電子ペン2のペン先がタッチ面3aなどのパネルに接触している場合(以下「コンタクト中」と称する)に0となる一方、電子ペン2のペン先がタッチ面3aなどのパネルに接触していない場合(以下「ホバー中」と称する)に0以上となる性質を有している。したがって筆圧値は、電子ペン2のペン先がタッチ面3aなどのパネルに接触しているか否かを示す接触情報として機能する。また、圧力センサ23は、接触情報を取得する接触情報取得部として機能する。
【0022】
サイドスイッチ24a,24bはそれぞれ、電子ペン2の側面に設けられた押しボタン式のスイッチであり、ユーザによりオンオフ操作可能に構成される。サイドスイッチ24a,24bの操作状態(オンオフ状態)は、例えば2ビットのスイッチ情報としてプロセッサ26に供給される。
【0023】
プロセッサ26は、バッテリー25から供給される電力によって動作する集積回路であり、アップリンク信号USの受信、ダウンリンク信号DSの生成及び送信を含む各種の処理を実行する役割を有している。具体的には、ペン先電極22の電位の変化を検出することによってアップリンク信号USを受信し、受信したアップリンク信号USに基づいてダウンリンク信号DSを生成し、生成したダウンリンク信号DSに基づいてペン先電極22の電位に変化を与えることによって、ダウンリンク信号DSを送信する。プロセッサ26がアップリンク信号USに基づいて行う処理には、他に、アップリンク信号USの受信タイミングを基準時刻として、上述した送受信スケジュールを決定する処理が含まれる。
【0024】
プロセッサ26には、アップリンク信号USにより、タッチコントローラ31から各種のデータを設定可能に構成される。このデータには、例えば、描画アプリケーションがデジタルインクをレンダリングする際の描画色を決める属性BrushColorが含まれる。後述する第3の実施の形態においては、この機能を利用して、後述する設定ツール46bの設定内容がプロセッサ26に設定される。
【0025】
図2は、デバイスドライバ34によってディスプレイ32に表示される電子機器3のプロパティ画面を示す図である。デバイスドライバ34は、電子機器3が電子ペン2などの入力機器を介して受け付けたユーザの指示に応じて、このプロパティ画面を起動するよう構成される。
【0026】
図2に示すように、プロパティ画面は、アプリケーション選択ボックス40と、設定内容選択タブ41とを含んで構成される。アプリケーション選択ボックス40は、このプロパティ画面による設定を用いるアプリケーションを選択するためのボックスである。図2には、すべてのアプリケーションが同じ設定を用いる場合の例を示している。設定内容選択タブ41は、プロパティ画面に含まれる複数の設定画面のうちの1つを選択するためのタブである。図2には、電子ペン2に関する設定画面42が選択された状態を示している。
【0027】
設定画面42は、電子ペン2のイラスト43と、コンボボックス45a,45bとを含んで構成される。イラスト43には、サイドスイッチ24a,24bのイラスト44a,44bも含まれる。コンボボックス45a,45bはサイドスイッチ24a,24bに対応して設けられており、対応するサイドスイッチの押下に応じて起動する機能を選択可能に構成される。コンボボックス45a,45bのそれぞれにおいて選択し得る機能の内容は同一であるので、以下ではコンボボックス45aに着目して説明する。
【0028】
コンボボックス45aをユーザがクリック又はタップすると、図示したリストボックス46が表示される。リストボックス46には、サイドスイッチ24aに割り当てる機能のリスト46aと、スイッチ情報の値を無効にするケースを設定するための設定ツール46bとが表示される。このうちリスト46aで選択された機能は、コンボボックス45a内に表示される。
【0029】
設定ツール46bは、選択肢として「アプリケーションに従う」「無効」「コンタクト描画時だけ無効」「標準設定」の4つを有して構成される。このうち「標準設定」は、デバイスドライバ34の標準設定に従ってスイッチ情報を無効にする処理を行う、という選択肢である。デバイスドライバ34の標準設定は、「アプリケーションに従う」「無効」「コンタクト描画時だけ無効」のいずれかであり、デバイスドライバ34に予め書き込まれる。
【0030】
「アプリケーションに従う」は、デバイスドライバ34ではスイッチ情報を無効にする処理を行わずアプリケーションに委ねる、という選択肢である。この選択肢が選択されている場合、デバイスドライバ34は、タッチコントローラ31から供給されたデータに含まれるスイッチ情報を何ら加工することなく、アプリケーションに出力する。
【0031】
「無効」は、デバイスドライバ34においてスイッチ情報の値を常に無効にする、という選択肢である。この選択肢が選択されている場合、デバイスドライバ34は、タッチコントローラ31から供給されたデータに含まれるスイッチ情報の値を常に無効とする。なお、スイッチ情報の値を無効にするための具体的な処理は、結果としてサイドスイッチ24aが押下されていない状態と同じ状態になる処理であればよく、特に限定されない。例えば、サイドスイッチ24aが押下されている場合に1、押下されていない場合に0となるようにスイッチ情報が構成されている場合であれば、スイッチ情報の値を強制的に0に書き換えてアプリケーションに出力することとしてもよい。また、アプリケーションに対してスイッチ情報を出力しないこととしてもよい。また、デバイスドライバ34がサイドスイッチ24aに割り当てた機能に応じたイベントを発生させる処理を行う場合には、そのイベントを発生させないことによっても、スイッチ情報の値を無効にすることができる。
【0032】
「コンタクト描画時だけ無効」は、電子ペン2が上述したコンタクト中の状態にある場合にスイッチ情報の値を無効にする、という選択肢である。この選択肢が選択されている場合、デバイスドライバ34は、まず初めにタッチコントローラ31から供給されたデータに含まれる接触情報(筆圧値)を参照し、電子ペン2がコンタクト中及びホバー中のいずれの状態にあるかを判定する。そして、電子ペン2がコンタクト中であると判定した場合に限り、スイッチ情報の値を無効とする。スイッチ情報の値を無効にするための具体的な処理は、「無効」の場合と同様である。電子ペン2がホバー中であると判定した場合には、デバイスドライバ34は、タッチコントローラ31から供給されたデータに含まれるスイッチ情報を何ら加工することなく、アプリケーションに出力する。
【0033】
図3及び図4は、本実施の形態による位置検出システム1に含まれるデバイスドライバ34によって実行される処理を示す処理フロー図である。図3は、スイッチ情報の値を無効にするケースを設定するための処理(以下「設定処理」という)を示し、図4は、電子ペン2によるペン入力のための処理(以下「ペン入力処理」という)を示している。
【0034】
まず図3を参照すると、デバイスドライバ34は、ユーザ指示に応じて、図2に示したプロパティ画面を表示する(ステップS10)。上述したように、このプロパティ画面には、スイッチ情報の値を無効にするケースを設定するための設定ツール46bが含まれる。表示したプロパティ画面においてユーザが決定ボタンを押下すると(ステップS11)、デバイスドライバ34は、設定内容を記憶するとともに、アプリケーション、タッチコントローラ31、電子ペン2に対してそれぞれが必要とする情報を供給し(ステップS12)、処理を終了する。本実施の形態においては、ステップS12において他の装置又は処理部に供給される情報に、設定ツール46bの設定内容は含まれなくてもよい。
【0035】
次に図4を参照すると、デバイスドライバ34はまず、タッチコントローラ31から電子ペン2の位置及び電子ペン2が送信したデータを受信する(ステップS20)。こうして受信されるデータには、上述した接触情報及びスイッチ情報が含まれる。
【0036】
次にデバイスドライバ34は、電子ペン2のサイドスイッチ24a,24bごとに、ステップS22~S25の処理を実行する(ステップS21)。具体的に説明すると、デバイスドライバ34はまず、対応するサイドスイッチに関して、設定ツール46bにおいて「無効」が設定されていたか否かを判定する(ステップS22)。この判定の結果は、設定ツール46bにおいて「無効」が設定されているか、又は、設定ツール46bにおいて「標準設定」が設定され、かつ、デバイスドライバ34の標準設定が「無効」である場合に肯定となり、その他の場合に否定となる。
【0037】
ステップS22において否定的な判定結果を得たデバイスドライバ34は次に、設定ツール46bにおいて「コンタクト描画時だけ無効」が設定されていたか否かを判定する(ステップS23)。この判定の結果は、設定ツール46bにおいて「コンタクト描画時だけ無効」が設定されているか、又は、設定ツール46bにおいて「標準設定」が設定され、かつ、デバイスドライバ34の標準設定が「コンタクト描画時だけ無効」である場合に肯定となり、その他の場合に否定となる。ステップS23において肯定的な判定結果を得たデバイスドライバ34はさらに、ステップS20で受信された接触情報を参照し、電子ペン2の状態がコンタクト中であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0038】
ステップS22において肯定的な判定結果を得た場合、及び、ステップS24においてコンタクト中であると判定した場合、デバイスドライバ34は、対応するスイッチ情報の値を無効にすることを決定したうえで(ステップS25)、次のサイドスイッチに処理を移す。一方、ステップS23において否定的な判定結果を得た場合、及び、ステップS24においてコンタクト中でないと判定した場合、デバイスドライバ34は、ステップS25の決定を行うことなく、次のサイドスイッチに処理を移す。
【0039】
すべてのサイドスイッチ24a,24bについてステップS22~S25の処理を実行したデバイスドライバ34は、ステップS20で受信した位置及びデータをアプリケーションに出力し(ステップS26)、ステップS20に処理を戻す。ただし、ステップS25においてその値を無効にすることを決定したスイッチ情報が存在する場合、デバイスドライバ34はステップS26において、そのスイッチ情報の値を無効にする処理を実行する。そのための具体的な処理の内容は、上述したとおりである。すなわち、デバイスドライバ34は、スイッチ情報の値を無効な値に強制的に書き換えることとしてもよいし、スイッチ情報を出力しないこととしてもよいし、サイドスイッチに割り当てた機能に応じたイベントを発生させないこととしてもよい。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態による位置検出システム1によれば、ユーザ設定により電子ペン2のペン先がパネルに接触している描画中にはスイッチ情報の値が無効になるので、サイドスイッチ24a,24bに対応する機能が発動しなくなる。したがって、ユーザの意図に反して、アプリケーションによって実行されている描画のための処理が中断してしまうことを防止可能となる。
【0041】
図5は、本発明の第2の実施の形態による位置検出システム1に含まれるタッチコントローラ31によって実行されるペン入力処理を示す処理フロー図である。本実施の形態による位置検出システム1は、スイッチ情報の値を無効にする処理をデバイスドライバ34ではなくタッチコントローラ31で行う点で第1の実施の形態による位置検出システム1と異なり、その他の点では、第1の実施の形態による位置検出システム1と同様である。以下では、第1の実施の形態による位置検出システム1との相違点に着目し、本実施の形態による位置検出システム1において実行される処理を説明する。
【0042】
本実施の形態においては、図3に示したステップS12において、デバイスドライバ34からタッチコントローラ31に設定ツール46bの設定内容が供給される。タッチコントローラ31は、こうして供給された設定内容を記憶し、ペン入力処理の際に利用する。
【0043】
図5を参照すると、タッチコントローラ31はまず、図1に示したセンサ30を介してアップリンク信号USを送信し(ステップS30)、次いで、電子ペン2が送信したダウンリンク信号DSをセンサ30を介して受信する(ステップS31)。続いてタッチコントローラ31は、センサ30を構成する各線状電極又はループコイルのそれぞれにおけるダウンリンク信号DS(具体的には、上述した位置信号)の受信強度に基づいて、タッチ面3a内における電子ペン2の位置を導出する(ステップS32)とともに、ダウンリンク信号DSを復調することによって、ペンが送信したデータを取得する(ステップS33)。
【0044】
ステップS33を実行したタッチコントローラ31は、電子ペン2のサイドスイッチ24a,24bごとに、ステップS35~S38の処理を実行する(ステップS34)。この処理の具体的な内容は、図4に示したステップS22~S25の処理と同様である。すべてのサイドスイッチ24a,24bについてステップS35~S38の処理を実行したタッチコントローラ31は、ステップS32で導出した位置及びステップS33で取得したデータをデバイスドライバ34に出力し(ステップS39)、ステップS30に処理を戻す。ただし、ステップS38においてその値を無効にすることを決定したスイッチ情報が存在する場合、タッチコントローラ31はステップS39において、図4の場合と同様の処理により、そのスイッチ情報の値を無効にする処理を実行する。これにより、設定ツール46bでのユーザの設定内容に従って、スイッチ情報の値を無効にすることが可能になる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態による位置検出システム1によっても、ユーザ設定により電子ペン2のペン先がパネルに接触している描画中にはスイッチ情報の値が無効となるので、サイドスイッチ24a,24bに対応する機能が発動しなくなる。したがって、ユーザの意図に反して、アプリケーションによって実行されている描画のための処理が中断してしまうことを防止可能となる。
【0046】
図6は、本発明の第3の実施の形態による位置検出システム1に含まれる電子ペン2のプロセッサ26によって実行されるペン入力処理を示す処理フロー図である。本実施の形態による位置検出システム1は、スイッチ情報の値を無効にする処理をデバイスドライバ34ではなく電子ペン2のプロセッサ26において行う点で第1の実施の形態による位置検出システム1と異なり、その他の点では、第1の実施の形態による位置検出システム1と同様である。以下では、第1の実施の形態による位置検出システム1との相違点に着目し、本実施の形態による位置検出システム1において実行される処理を説明する。
【0047】
本実施の形態においては、図3に示したステップS12において、デバイスドライバ34から電子ペン2に対し、タッチコントローラ31を介して設定ツール46bの設定内容が供給される。電子ペン2のプロセッサ26は、こうして供給された設定内容を記憶し、ペン入力処理の際に利用する。
【0048】
図6を参照すると、プロセッサ26はまず、図1(b)に示したペン先電極22を介してアップリンク信号USを受信する(ステップS40)。この受信は、プロセッサ26が継続的又は断続的に受信動作を行いつつ、ペン先電極22がセンサ30に接近した場合に実現される。
【0049】
アップリンク信号USを受信したプロセッサ26は、アップリンク信号USの受信タイミングに基づいて、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュールを決定する(ステップS41)。続いてプロセッサ26は、スイッチ情報及び接触情報を含む送信データを取得し(ステップS42)、サイドスイッチ24a,24bごとに、ステップS44~S47の処理を実行する(ステップS43)。この処理の具体的な内容は、図4に示したステップS22~S25の処理と同様である。
【0050】
すべてのサイドスイッチ24a,24bについてステップS44~S47の処理を実行したプロセッサ26は、決定した送受信スケジュールに従い、ペン先電極22を介してダウンリンク信号DSの送信を行う(ステップS48)。ただし、ステップS47においてその値を無効にすることを決定したスイッチ情報が存在する場合、プロセッサ26はステップS48において、図4及び図5の場合と同様の処理により、そのスイッチ情報の値を無効にする処理を実行する。これにより、設定ツール46bでのユーザの設定内容に従って、スイッチ情報の値を無効にすることが可能になる。
【0051】
次にプロセッサ26は、決定した送受信スケジュールに従って次のアップリンク信号USを受信し(ステップS48)、ステップS41に処理を戻す。この後、プロセッサ26は、ステップS41からの処理を繰り返し実行することになる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態による位置検出システム1によっても、ユーザ設定により電子ペン2のペン先がパネルに接触している描画中にはスイッチ情報の値が無効となるので、サイドスイッチ24a,24bに対応する機能が発動しなくなる。したがって、ユーザの意図に反して、アプリケーションによって実行されている描画のための処理が中断してしまうことを防止可能となる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0054】
例えば、第1の実施の形態ではデバイスドライバ34(ホストプロセッサ33)においてスイッチ情報の値を無効にする処理を行い、第2の実施の形態ではタッチコントローラ31においてスイッチ情報の値を無効にする処理を行い、第3の実施の形態では電子ペン2内のプロセッサ26においてスイッチ情報の値を無効にする処理を行う例をそれぞれ説明したが、これらの他の装置又は処理部において、スイッチ情報の値を無効にする処理を行うこととしてもよい。例えば、ホストプロセッサ33内で実行されるアプリケーションにおいてスイッチ情報の値を無効にする処理を行うこととしてもよい。この場合、図3のステップS12において、デバイスドライバ34からスイッチ情報の値を無効にする処理を行う装置又は処理部に対し、設定ツール46bの設定内容を供給することが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1 位置検出システム
2 電子ペン
3 電子機器
3a タッチ面
21 芯体
22 ペン先電極
23 圧力センサ
24a,24b サイドスイッチ
25 バッテリー
26 プロセッサ
30 センサ
31 タッチコントローラ
32 ディスプレイ
33 ホストプロセッサ
34 デバイスドライバ
40 アプリケーション選択ボックス
41 設定内容選択タブ
42 設定画面
43 電子ペン2のイラスト
44a,44b サイドスイッチ24a,24bのイラスト
45a,45b コンボボックス
46 リストボックス
46a リスト
46b 設定ツール
DS ダウンリンク信号
US アップリンク信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6