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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183576
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】過給機付きエンジンの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
F02B37/18 B
F02B37/18 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090976
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竜大
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 賢一
(72)【発明者】
【氏名】末國 栄之介
(72)【発明者】
【氏名】上刎 慶幸
(72)【発明者】
【氏名】藤山 智彰
(72)【発明者】
【氏名】砂流 雄剛
【テーマコード(参考)】
3G005
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA13
3G005GA03
3G005GB28
3G005GC08
(57)【要約】
【課題】ウエストゲートバルブとこれを駆動する駆動装置との連結部分の過度な負荷がかかるのを抑制可能な過給機付きエンジンの制御装置を提供する。
【解決手段】ウエストゲートバルブを閉弁させる要求が出された場合、駆動手段によりウエストゲートバルブを開弁位置から閉弁位置に移動させ、且つ、移動後のウエストゲートバルブに駆動手段から付与される閉弁方向のトルクを所定の第1トルクに設定してウエストゲートバルブを開口部に押し付ける閉弁制御を実施し、閉弁制御の実施後、ウエストゲートバルブの閉弁継続時間が所定の判定時間に達した場合に、駆動手段からウエストゲートバルブに付与される閉弁方向のトルクを第1トルクからこれよりも小さい第2トルクに減じるトルク低減制御を実施する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体と、エンジン本体から排出された排気ガスが流通する排気通路と、排気通路に設けられたタービンを含むターボ過給機と、タービンよりも上流側の排気通路に形成された開口部と連通してタービンをバイパスするバイパス通路とを備えた過給機付きエンジンの制御装置であって、
前記開口部を開閉するウエストゲートバルブと、
前記ウエストゲートバルブを駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記ウエストゲートバルブは、前記開口部の開口方向と交差する方向に延びる軸回りに回動して、前記開口部を前記バイパス通路の内側から塞ぐ閉弁位置と、前記開口部から離間して当該開口部を開放する開弁位置との間で変位するように、前記バイパス通路内に配設されており、
前記駆動手段は、前記ウエストゲートバルブを前記軸回りに回動させるように当該ウエストゲートバルブに連結されており、
前記制御手段は、
前記ウエストゲートバルブを閉弁させる要求が出された場合、前記駆動手段により前記ウエストゲートバルブを前記開弁位置から前記閉弁位置に移動させ、且つ、移動後の前記ウエストゲートバルブに前記駆動手段から付与される閉弁方向のトルクを所定の第1トルクに設定して前記ウエストゲートバルブを前記開口部に押し付ける閉弁制御を実施するとともに、
前記閉弁制御の実施後、前記ウエストゲートバルブの閉弁継続時間が所定の判定時間に達した場合に、前記駆動手段から前記ウエストゲートバルブに付与される閉弁方向のトルクを前記第1トルクからこれよりも小さい第2トルクに減じるトルク低減制御を実施する、ことを特徴とする過給機付きエンジンの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の過給機付きエンジンの制御装置において、
前記第2トルクは、前記ウエストゲートバルブを前記閉弁位置に維持できる閉弁方向のトルクの最小値以上の値に設定されている、ことを特徴とする過給機付きエンジンの制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の過給機付きエンジンの制御装置において、
前記第1トルクは、前記駆動手段から前記ウエストゲートバルブに付与可能な閉弁方向のトルクの最大値よりも小さい値に設定されている、ことを特徴とする過給機付きエンジンの制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の過給機付きエンジンの制御装置において、
前記ターボ過給機は、前記タービンを収容するタービンハウジングを備え、
前記開口部は前記タービンハウジングに形成されている、ことを特徴とする過給機付きエンジンの制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の過給機付きエンジンの制御装置において、
前記ウエストゲートバルブは、前記開口部を開閉するバルブ本体部と、当該バルブ本体部から前記軸に沿って延びるバルブシャフトとを有し、
前記駆動手段は、前記バルブシャフトの前記バルブ本体部と反対側の端部に溶接された連結部材と、当該連結部材を前記軸回りに回動させる回動部材とを有する、ことを特徴とする過給機付きエンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン本体と、エンジン本体から排出された排気ガスが流通する排気通路と、排気通路に設けられたタービンを含むターボ過給機と、タービンよりも上流側の排気通路に形成された開口部と連通してタービンをバイパスするバイパス通路とを備えた過給機付きエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、ターボ過給機を有するエンジンにおいて、タービンをバイパスするバイパス通路と、これを開閉するウエストゲートバルブと、ウエストゲートバルブを開閉駆動する駆動手段とを有するものが知られている。
【0003】
特許文献1のエンジンでは、上記駆動手段が、モータと、モータによってスライド駆動されるロッドと、ロッドとウエストゲートバルブとを連結するリンク材とを備えている。そして、ロッドのスライド移動に伴ってリンク材が所定の軸回りに回動し、これと一体にウエストゲートバルブが回動することで、バイパス通路の下流端部であって排気通路に形成された開口部がウエストゲートバルブによって開閉されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-96266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような、ウエストゲートバルブが所定の軸回りに回動されるように駆動手段に連結されたエンジンにおいて、ウエストゲートバルブが、閉弁時にバイパス通路側から開口部を塞ぐように配設される場合がある。このような構成では、ウエストゲートバルブの閉弁時に、排気ガスからウエストゲートバルブにこれを開弁する方向のトルクが付与されることで、ウエストゲートバルブの閉弁が維持されないおそれがある。
【0006】
これに対して、駆動手段からウエストゲートバルブに閉弁方向について高いトルクを付与すれば閉弁を維持できる。しかし、駆動手段からウエストゲートバルブに単純に閉弁方向の高いトルクを付与すると、開口部がバイパス通路側に変位してウエストゲートバルブに加えられる開弁方向のトルクが増大したときに、ウエストゲートバルブと駆動手段(特許文献1におけるリンク材)との連結部分に過度な負荷がかかるおそれがある。
【0007】
具体的に、駆動手段からウエストゲートバルブに閉弁方向の高いトルクが加えられている状態で、これと反対方向の高いトルクがウエストゲートバルブに加えられると、連結部分の駆動手段側とウエストゲートバルブ側とに互いに反対方向の高いトルクがかかることになる。そのため、連結部分にかかる負荷が大きくなってしまう。
【0008】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、ウエストゲートバルブとこれを駆動する駆動装置との連結部分に過度な負荷がかかるのを抑制できる過給機付きエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、エンジン本体と、エンジン本体から排出された排気ガスが流通する排気通路と、排気通路に設けられたタービンを含むターボ過給機と、タービンよりも上流側の排気通路に形成された開口部と連通してタービンをバイパスするバイパス通路とを備えた過給機付きエンジンの制御装置であって、前記開口部を開閉するウエストゲートバルブと、前記ウエストゲートバルブを駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、前記ウエストゲートバルブは、前記開口部の開口方向と交差する方向に延びる軸回りに回動して、前記開口部を前記バイパス通路の内側から塞ぐ閉弁位置と、前記開口部から離間して当該開口部を開放する開弁位置との間で変位するように、前記バイパス通路内に配設されており、前記駆動手段は、前記ウエストゲートバルブを前記軸回りに回動させるように当該ウエストゲートバルブに連結されており、前記制御手段は、前記ウエストゲートバルブを閉弁させる要求が出された場合、前記駆動手段により前記ウエストゲートバルブを前記開弁位置から前記閉弁位置に移動させ、且つ、移動後の前記ウエストゲートバルブに前記駆動手段から付与される閉弁方向のトルクを所定の第1トルクに設定して前記ウエストゲートバルブを前記開口部に押し付ける閉弁制御を実施するとともに、前記閉弁制御の実施後、前記ウエストゲートバルブの閉弁継続時間が所定の判定時間に達した場合に、前記駆動手段から前記ウエストゲートバルブに付与される閉弁方向のトルクを前記第1トルクからこれよりも小さい第2トルクに減じるトルク低減制御を実施する、ことを特徴とするものである(請求項1)。
【0010】
本発明では、ウエストゲートバルブの閉弁後に、駆動手段からウエストゲートバルブに閉弁方向の第1トルクが付与されてウエストゲートバルブが開口部に押し付けられる。そのため、ウエストゲートバルブの閉弁を維持できる。
【0011】
ただし、この構成では、ウエストゲートバルブの閉弁継続時間が所定時間以上になると、ウエストゲートバルブと駆動装置との連結部分に過度な負荷がかかるおそれがある。具体的に、ウエストゲートバルブの閉弁継続時間が所定時間以上になると過給圧の上昇に伴って排気ガスが高温になる。高温の排気ガスに晒されると排気通路(タービン本体に向かう排気ガスが流通する部分)が熱膨張して開口部がバイパス通路側に変位する可能性がある。そのため、ウエストゲートバルブに加えられる開弁方向のトルクが増大することで、ウエストゲートバルブと駆動装置との連結部分にかかる負荷が過大になるおそれがある。
【0012】
これに対して、本発明では、ウエストゲートバルブの閉弁継続時間が所定の判定時間に達すると、駆動手段からウエストゲートバルブに付与される閉弁方向のトルクが上記の第1トルクからこれよりも小さい第2トルクに減じるトルク低減制御が実施される。そのため、上記連結部分の駆動手段側にかかる閉弁方向のトルクを小さくできる。従って、連結部分に過度な負荷がかかるのを抑制でき、当該連結部分の損傷を抑制できる。
【0013】
前記構成において、好ましくは、前記第2トルクは、前記ウエストゲートバルブを前記閉弁位置に維持できる閉弁方向のトルクの最小値以上の値に設定されている(請求項2)。
【0014】
この構成によれば、上記のように駆動装置とウエストゲートバルブとの連結部分に過度な負荷がかかるのを抑制しつつ、ウエストゲートバルブの閉弁を確実に維持できる。
【0015】
前記構成において、好ましくは、前記第1トルクは、前記駆動手段から前記ウエストゲートバルブに付与可能な閉弁方向のトルクの最大値よりも小さい値に設定されている(請求項3)。
【0016】
この構成によれば、閉弁継続時間が判定時間未満の場合においても、上記連結部分にかかる負荷を小さく抑えることができ、当該連結部分の損傷を確実に防止できる。
【0017】
タービンハウジングは、ウエストゲートバルブが全閉時に全ての排気ガスが導入されることで熱膨張しやすい。
【0018】
これより、前記ターボ過給機が、前記タービンを収容するタービンハウジングを備え、前記開口部が前記タービンハウジングに形成されている構成において、本発明が適用されれば、上記連結部分の負荷を効果的に小さくできる(請求項4)。
【0019】
また、上記のように本発明では上記連結部分の負荷を小さくすることができる。そのため、前記ウエストゲートバルブが、前記開口部を開閉するバルブ本体部と、当該バルブ本体部から前記軸に沿って延びるバルブシャフトとを有し、前記駆動手段が、前記バルブシャフトの前記本体部と反対側の端部に溶接された連結部材と、当該連結部材を前記軸回りに回動させる回動部材とを有する構成に本発明を適用すれば、バルブシャフトと連結部材との溶接領域を小さくすることが可能になる(請求項5)。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の過給機付きエンジンの制御装置によれば、ウエストゲートバルブとこれを駆動する駆動装置との連結部分の過度な負荷がかかるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの構成を示した図である。
図2】ターボ過給機の概略側面図である。
図3】タービンの概略正面図である。
図4図3のIV-IV線における概略断面図である。
図5】ウエストゲートバルブが開弁しているときの図であって(a)は概略底面図、(b)は図2のV-V線における概略断面図である。
図6】ウエストゲートバルブが全閉のときの図であって(a)は概略底面図、(b)は図2のV-V線における概略断面図である。
図7】エンジンの制御系統を示したブロック図である。
図8】ウエストゲートバルブの制御手順を示したフローチャートである。
図9】ウエストゲートバルブを全閉にしたときの各パラメータの時間変化を示したタイムチャートである。
図10】タービンハウジングが熱膨張したときにウエストゲートバルブとリンクプレートにかかるトルクを説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(エンジンの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置が適用されたエンジンの好ましい実施形態を示す概略システム図である。エンジンは、燃料の供給を受けて駆動されるエンジン本体1と、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路50と、エンジン本体1から排出された排気ガスが流通する排気通路60とを備える。また、エンジンは、過給機付きエンジンであり、排気通路60を通過する排気ガスにより駆動されるターボ過給機70を備える。つまり、エンジンは、排気通路60に設けられて排気により駆動されるタービン81と、吸気通路50に設けられてタービン81により回転駆動されて吸気を過給するコンプレッサ91とを有する。このエンジンは、自動車等の車両に、走行用の動力源等として搭載される。
【0023】
エンジン本体1は、図1の紙面に直交する方向に並ぶ複数の気筒2a(図1ではそのうちの一つのみを示す)を有する直列多気筒型のものである。エンジン本体1は、複数の気筒2aが形成されたシリンダブロック2と、各気筒2aの上端開口を塞ぐシリンダヘッド3と、各気筒2aにそれぞれ収容された複数のピストン4とを備える。なお、本実施形態では、シリンダブロック2からシリンダヘッド3に向かう側を上、その逆を下として扱うが、これは説明の便宜のためであって、エンジンの据付姿勢を限定する趣旨ではない。
【0024】
各気筒2aのピストン4の上方には、それぞれ燃焼室5が区画されている。燃焼室5には、後述するインジェクタ10からの噴射によって燃料が供給される。供給された燃料と空気との混合気は燃焼室5で燃焼し、当該燃焼による膨張力を受けてピストン4は上下方向に往復運動する。
【0025】
シリンダブロック2の下部(ピストン4の下方)には、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸13が設けられている。クランク軸13は、ピストン4と連結されておりピストン4の往復運動(上下運動)に応じてその中心軸回りに回転する。シリンダブロック2には、クランク軸13の回転数であるエンジン回転数を検出するクランク角センサSN1が取り付けられている。
【0026】
シリンダヘッド3には、燃焼室5と連通する吸気ポート6および排気ポート7が、それぞれ気筒2aごとに形成されている。また、シリンダヘッド3には、吸気ポート6を開閉する吸気弁8、排気ポート7を開閉する排気弁9、燃焼室5に燃料を噴射するインジェクタ10、および、混合気に点火を行う点火プラグ11の組合せが、それぞれ気筒2aごとに装備されている。
【0027】
吸気通路50は、各気筒2aの吸気ポート6と連通するようにシリンダヘッド3の一側面に接続されている。吸気通路50には、その上流側から順に、エアクリーナ51、ターボ過給機70のコンプレッサ91、スロットル弁52、インタークーラ53、およびサージタンク54が配置されている。エアクリーナ51は、吸気中の異物を除去するフィルターである。スロットル弁52は、吸気通路50を流通する吸気の流量を調整可能なバルブである。インタークーラ53は、ターボ過給機70(コンプレッサ91)により圧縮された吸気を冷却する熱交換器である。サージタンク54は、各気筒2aに吸気を均等に配分するための空間を提供するタンクである。吸気通路50のエアクリーナ51とコンプレッサ91の間の部分には、当該部分を通過する吸気の流量を検出するエアフロ―センサSN2が取り付けられている。サージタンク54には、サージタンク54内の圧力つまりコンプレッサ91で過給された後の吸気の圧力である過給圧を検出する過給圧センサSN3が取り付けられている。
【0028】
排気通路60は、各気筒2aの排気ポート7と連通するようにシリンダヘッド3の一側面(吸気通路50と反対側の面)に接続されている。排気通路60には、上流側から順に、ターボ過給機70のタービン81と、三元触媒等の触媒が内蔵された触媒装置61が設けられている。
【0029】
(ターボ過給機)
ターボ過給機70は、タービン81を含むタービンユニット80と、コンプレッサ91を含むコンプレッサユニット90とを備える。
【0030】
タービンユニット80は、タービン81と、タービン81を収容するタービンハウジング82とを有する。タービン81は、ラジアルタービンであり、外周に複数の羽根を有してこれら羽根に排気ガスが衝突することで回転する。以下では、タービン81つまりいわゆるタービンインペラをタービン本体81という。コンプレッサユニット90は、コンプレッサ91と、コンプレッサ91を収容するコンプレッサハウジング92とを有する。コンプレッサ91も、外周に複数の羽根を有している。なお、ターボ過給機70は、さらに、タービン本体81とコンプレッサ91とを連結する連結軸71と、連結軸71を収容するセンターハウジング72とを有している。
【0031】
図2は、ターボ過給機70の概略側面図である。図2に示すように、ターボ過給機70は、タービンハウジング82とコンプレッサハウジング92とがセンターハウジング72を挟んで一列に並ぶように配設されている。以下では、この並び方向であって連結軸71の軸方向を左右方向といい、タービンハウジング82側を右として説明を行う。また、以下の説明では、図2の上下方向を単に上下方向として説明を行うとともに、図2の紙面と直交する方向(上下方向および左右方向と直交する方向)を前後方向とし、図2紙面の手前側を前として説明を行う。
【0032】
図3は、タービンユニット80の概略正面図(右側から見た図)である。なお、図3では、タービン本体81の図示は省略している。タービンハウジング82は、タービンユニット80よりも上流側の排気通路60に接続されてタービンハウジング82内に排気ガスを導入するための導入部83と、タービン本体81の外周に沿って延びてタービン本体81をその全周にわたって囲むタービンスクロール部84と、タービンユニット80よりも下流側の排気通路60に接続されてタービンハウジング82内から排気ガスを導出するための導出部85とを有する。これら導入部83、タービンスクロール部84および導出部85とは、互いに一体に形成されている。タービンハウジング82は、例えば、鋳造製である。なお、図1に示すように、本実施形態のタービンユニット80は、ツインスクロール式タービンであり、タービンスクロール部84は左右方向について2つの通路に区画されている。
【0033】
タービンスクロール部84は、タービンハウジング82の左側部分に設けられている。タービンスクロール部84の内周側には、タービン本体81が収容されるタービン本体収容部84aが区画されている。
【0034】
導入部83は、左右方向についてタービンスクロール部84の右方に位置しており、タービンハウジング82の右側部分の下部において後方に開口している。導入部83は、その開口端からタービンハウジング82の前部の上下方向の中央付近に向かって延びており、この付近でタービンスクロール部84につながっている。導入部83は、タービン本体収容部84aの外周に沿うように設けられており、前斜め下方に膨張するような湾曲した形状を有している。
【0035】
導出部85は、その下部を構成して導入部83の右側壁83aから右方に延びる第1導出部86と、導出部85の上部を構成してタービンスクロール部84(タービンスクロール部84のうち正面視で導入部83と重複しない部分)から右方に延びる第2導出部87とで構成されている。導出部85は、第1導出部86と第2導出部87とによって、正面視で上下方向に延びる略楕円形の空間を区画している。
【0036】
導出部85の上部であって主として第2導出部87を構成する部分の内側空間は、タービン本体収容部84aと連通しており、タービン本体81を通過した排気ガスは導出部85に導入され、その後、タービンユニット80よりも下流側の排気通路60に流入する。
【0037】
導入部83の右側壁83aのうち第1導出部86の内壁を構成する部分には、これの表裏を貫通する開口部88が設けられている。この開口部88を介して導入部83と導出部85とは連通している。本実施形態では、開口部88は円形を呈している。
【0038】
導入部83はタービン本体81よりも上流側に位置し、導出部85はタービン本体81よりも下流側に位置しており、開口部88は、排気通路60のうちタービン本体81よりも上流側の部分と下流側の部分とを連通している。後述するウエストゲートバルブ20が開弁して開口部88が開放されている状態では、導入部83に導入された排気ガスの一部は、タービンスクロール部84およびタービン本体81を通らずに開口部88を通って導出部85に導入され、その後、タービンユニット80よりも下流側の排気通路60に導出される。これより、本実施形態では、導出部85が、開口部88と連通してタービン本体81をバイパスするバイパス通路として機能する。つまり、本実施形態では、この導出部85が請求項の「バイパス通路」に相当する。
【0039】
(ウエストゲートバルブおよび駆動装置)
エンジンには、開口部88を開閉可能なウエストゲートバルブ20と、これを開閉駆動するウエストゲートバルブ駆動装置30が設けられている。以下では、ウエストゲートバルブ駆動装置30をWG駆動装置30という。
【0040】
図4は、図3のIV-IV線断面の一部を示した図である。図4に示すように、ウエストゲートバルブ20は、互いに一体に形成されたバルブ本体部21とバルブシャフト24とを有する。
【0041】
バルブ本体部21は、開口部88の開口縁88aに対応した円盤状を有して開口部88を開閉するバルブヘッド22と、バルブヘッド22の表面から突出するヘッド支持部23とを有する。図3に示すように、ヘッド支持部23は、バルブヘッド22に対してその中心からずれた位置に設けられている。バルブシャフト24は、円柱状を有し、ヘッド支持部23の先端部からバルブヘッド22の表面と平行に延びている。本実施形態では、バルブシャフト24は円筒状のカバー部材25により覆われている。
【0042】
ウエストゲートバルブ20は、WG駆動装置30によってバルブシャフト24の中心軸X1回りに回動されることで開口部88を開閉する。ウエストゲートバルブ20は、導出部85内において開口部88を開閉するように、つまり、導出部85内において、これの内側から開口部88を塞ぐ閉弁位置と開口部88から離間して開口部88を開放する開弁位置との間で変位するように、タービンハウジング82に支持されている。具体的に、タービンハウジング82(導出部85)には取付孔85aが形成されており、バルブシャフト24がこの取付孔85a内に挿通されることで、ウエストゲートバルブ20はタービンハウジング82に支持されている。また、ウエストゲートバルブ20は、バルブシャフト24の中心軸X1が開口部88の開口方向(図4の鎖線X2に沿う方向)と略直交し、且つ、バルブシャフト24の中心軸X1回りに回動する状態で、タービンハウジング82に支持されている。
【0043】
ウエストゲートバルブ20が全閉の状態では、エンジン本体1から排出されて導入部83に導入された排気ガスはすべてタービン本体81を通過してこれを回転駆動する。一方、上記のように、ウエストゲートバルブ20が開弁している状態では、導入部83に導入された排気ガスの一部はタービン本体81をバイパスして導出部85に導出される。そして、このタービン本体81をバイパスする排気ガスの流量はウエストゲートバルブ20の開度によって変更される。これより、排気ガスがタービン本体81を回転させる力および過給圧は、ウエストゲートバルブ20の開度によって変更される。なお、以下では、ウエストゲートバルブ20が全閉のときの開度を0とする。また、ウエストゲートバルブ20の開度を開き側にすることを開度を大きくする(増大する)といい、ウエストゲートバルブ20の開度を閉じ側にすることを開度を小さくする(低減する)という。
【0044】
図4に示すように、本実施形態では、開口部88の開口縁88aであってバルブヘッド22が着座する着座部88aはテーパ状を有し、導出部85側の方が導入部83側よりも径が大きくなっている。そして、バルブヘッド22の開口部88側の周面も、ヘッド支持部23に近い側の方が(全閉位置にある状態で導出部85側に位置する部分の方が)遠い側よりも(導入部83側よりも)径が大きいテーパ状とされて、テーパ状の着座部88aの途中部に着座するようになっている。これより、本実施形態では、ウエストゲートバルブ20の開度変化に対するバルブ開口面積の変化量が小さく抑えられて、タービン本体81をバイパスする排気ガスの流量ひいては過給圧を細かく変更できるようになっている。
【0045】
WG駆動装置30は、電動アクチュエータ31と、リンクアーム部34と、リンクプレート37と、WGポジションセンサSN4とを有する。なお、WG駆動装置30は請求項の「駆動手段」に相当し、電動アクチュエータ31とリンクアーム部34とは請求項の「回動部材」に相当し、リンクプレート37は請求項の「連結部材」に相当する。
【0046】
電動アクチュエータ31は、モータ32と、モータ32によってスライド駆動されるロッド33とを含む。WGポジションセンサSN4は、ロッド33の位置を検出するセンサである。電動アクチュエータ31は、モータ32に供給される電流の向きによってロッド33の移動方向を切り替えられるように構成されている。また、電動アクチュエータ31は、モータ32に印加される電圧のONとOFFの割合であるDUTY比に応じてモータ32からロッド33に付与される力が変化するように構成されており、このDUTY比の変更によってロッド33の移動スピードやロッド33の位置を変更できるようになっている。具体的には、DUTY比が大きくなるとモータ32からロッド33に付与される力は大きくなる。なお、以下の説明および図面では、電動アクチュエータ31のモータ32をWGモータ32と表し、WGモータ32に印加される電圧のDUTY比を駆動DUTYという。また、以下の説明および図面では、電動アクチュエータ31のモータ32をWGモータ32と記す。なお、WGモータ32としては、例えば、サーボ式のDCモータを用いることができる。
【0047】
電動アクチュエータ31は、ロッド33がWGモータ32から右方に突出してこれが左右方向に往復動するようにコンプレッサハウジング92に支持されている。
【0048】
リンクアーム部34は、ロッド33の先端(右端部)に連結されてこれから右方に延びる第1リンクアーム部35と、第1リンクアーム部35の右端部に連結されてこれから右方に延びる第2リンクアーム部36とを有する。リンクアーム部34は、ロッド33の移動に伴って左右方向に移動するように、ロッド33に連結されている。
【0049】
リンクプレート37は、第2リンクアーム部36の右端部に連結されている。具体的に、リンクプレート37は、上下方向に延びる略長方形の板状を呈し、リンクプレート37の下端部に第2リンクアーム部36の右端部が連結されている。
【0050】
バルブシャフト24は、リンクプレート37の上端部にこれと一体に移動するように連結されている。具体的に、リンクプレート37の上端部にはこれの表裏を貫通する貫通孔37aが形成されている。バルブシャフト24の軸方向の一方端であってヘッド支持部23と反対側の端部24aには、他の部分に比べて径が小さくされた取付部24aが設けられている。バルブシャフト24は、その取付部24aがリンクプレート37の貫通孔37aに挿通されて、取付部24aとリンクプレート37の貫通孔37aの周囲の部分とが溶接されることで、リンクプレート37に連結されている。つまり、バルブシャフト24の取付部24aの周囲には溶接部Wが形成されており、この溶接部Wによってバルブシャフト24とリンクプレート37とは連結されている。
【0051】
本実施形態では、上記のように、バルブヘッド22がテーパ状とされてテーパ状の着座部88aの途中部に着座するように構成されている。そのため、バルブヘッド22の径方向の寸法と着座部88aの寸法とにずれが生じるとウエストゲートバルブ20を全閉位置に移動させてもバルブヘッド22が着座部88aに適切に着座せず、これらの隙間から排気ガスが漏れるおそれがある。これより、本実施形態では、バルブヘッド22の寸法について高い精度が求められ、この高い精度が実現されるように、バルブシャフト24とリンクプレート37とはレーザー溶接により溶接されている。ここで、レーザー溶接では、溶接長が長いと溶接精度を出しにくいことから、溶接長を短くする必要がある。これより、バルブシャフト24の径は、比較的小さくされている。
【0052】
WG駆動装置30は、ロッド33を左右方向に移動させることで、ウエストゲートバルブ20をバルブシャフト24の中心軸X1回り回動して開口部88を開閉させる。以下では、バルブシャフト24の中心軸X1を回動軸X1という。
【0053】
図5図6を用いて具体的に説明する。図5および図6の各(a)の図はタービンユニット80の底面図であり、各(b)の図は、各(a)の図を図3のV-V線を通る面で切断したときの概略断面図である。図5(a)に示す状態から、ロッド33が左方に移動すると(WGモータ32側に引き込まれると)、矢印Y1に示すように第2リンクアーム部36も左方に移動して図6(a)に示す状態になる。第2リンクアーム部36が左方に移動すると、図5(a)の矢印Y2に示すようにリンクプレート37はその下端部が左方に移動するように回動軸X1回りに回動する。つまり、下から見て、リンクプレート37は時計回りに回動する。上記のように、リンクプレート37とバルブシャフト24とは一体に移動する。これより、バルブシャフト24つまりウエストゲートバルブ20も、図5(b)の矢印Y3に示すように回動軸X1を中心として下から見て時計回りに回動する。これにより、ウエストゲートバルブ20の開度は低減される。図6では、ウエストゲートバルブ20は開口部88を塞ぐ閉弁位置まで回動されてその開度は0とされている。ウエストゲートバルブ20を開弁させる場合およびその開度を増大させる場合は、上記とは逆の方向に各部が移動させられる。つまり、ロッド33およびリンクアーム部34が右方に移動し、これによって、リンクプレート37とバルブシャフト24とが回動軸X1を中心として下から反時計回りに回動するとウエストゲートバルブ20の開度は増大する。
【0054】
以下では、ロッド33、リンクアーム部34、リンクプレート37およびウエストゲートバルブ20の移動方向について、ウエストゲートバルブ20の開度が増大する方向を開弁方向という。つまり、本実施形態では、ロッド33およびリンクアーム部34については右方向を開弁方向といい、リンクプレート37およびウエストゲートバルブ20については下から見て時計回りの方向を開弁方向という。また、各部の移動方向について開弁方向と逆の方向であってウエストゲートバルブ20を閉弁する方向(ウエストゲートバルブ20の開度が減少する方向)を閉弁方向という。
【0055】
(ウエストゲートバルブの制御)
次に、ウエストゲートバルブ20の制御について説明する。図7はエンジンの制御系を示したブロック図である。インジェクタ10、点火プラグ11、スロットル弁52、ウエストゲートバルブ20等のエンジンの各部は、車両に搭載されたECU(エンジン制御ユニット)100によって制御される。ECU100は、周知のとおり、CPU、ROM、RAM、I/F等から構成されるマイクロプロセッサである。ECU100には、ウエストゲートバルブ20の開度を調整して過給圧を制御する過給圧制御部101が機能的に設けられている。この過給圧制御部101は、請求項の「制御手段」の一例に該当する。
【0056】
ECU100には、各種センサからの情報が入力される。例えば、ECU100は、クランク角センサSN1、エアフローセンサSN2、過給圧センサSN3、WGポジションセンサSN4と電気的に接続されており、これらのセンサからの入力信号を受け付ける。また、車両には、運転者により操作されるアクセルペダル(不図示)の開度を検出するアクセル開度センサSN5が設けられており、これの検出結果もECU100に入力される。
【0057】
図8は、ECU100(過給圧制御部101)により実施されるウエストゲートバルブ20の制御手順を示したフローチャートである。
【0058】
まず、ECU100は、ステップS1にて、センサSN1~SN5等により検出されたエンジン回転数等の各種情報を読み込む。上記のように、ウエストゲートバルブ20の開度はロッド33の位置によって変化する。これより、ステップS1にて、ECU100は、WGポジションセンサSN4により検出されたロッド33の位置から現在のウエストゲートバルブ20の開度を逐次算出する。以下では、適宜、WGポジションセンサSN4の検出値に基づいて算出された現在のウエストゲートバルブ20の開度を実バルブ開度という。
【0059】
次に、ECU100は、ステップS2にて、過給圧の目標値である目標過給圧を設定する。ECU100は、エンジンの運転状態に基づいて目標過給圧を設定する。例えば、ECU100は、アクセル開度センサSN5により検出されたアクセルペダルの開度とクランク角センサSN1により検出されたエンジン回転数等からエンジン負荷を算出して、算出したエンジン負荷とエンジン回転数とに基づいて目標過給圧を設定する。
【0060】
次に、ECU100は、ステップS3にて、ウエストゲートバルブ20を閉弁させる(全閉にする)要求である全閉要求があるか否かを判定する。例えば、ECU100は、過給圧センサSN3により検出された現在の過給圧に対してステップS2で設定した目標過給圧が所定値以上大きい場合に、全閉要求があると判定する。なお、この判定に代えて、あるいは、加えて、エンジン回転数とエンジン負荷に基づき、予め設定された運転領域でエンジンが運転されている場合に全閉要求があると判定してもよい。
【0061】
ステップS3の判定がNOであって全閉要求がない場合、ECU100は、ステップS6に進み、ステップS2で設定した目標過給圧に基づいてWGモータ32の駆動DUTYを調整する。具体的に、ECU100は、目標過給圧に基づき、ウエストゲートバルブ20の開度の目標値である目標バルブ開度を設定する。そして、実バルブ開度が目標バルブ開度になるようにWGモータ32の駆動DUTYを設定する。なお、ステップS6では、駆動DUTYと合わせてWGモータ32の通電電流の向きも設定される。具体的に、目標過給圧が過給圧センサSN3により検出された現在の過給圧よりも高い場合、WGモータ32の通電電流の向きはロッド33が閉弁方向に移動する向きに設定され、目標過給圧が現在の過給圧よりも高い場合は上記とは逆の向きに設定される。なお、以下では、WGモータ32の通電電流の向きのうち、ロッド33を閉弁方向に移動させる向きを、閉弁向きといい、逆向きを開弁向きという。このように駆動DUTYおよび通電電流の向きを設定した後は、ECU100は、これらが実現されるようにWG駆動装置30に指令を出す。
【0062】
一方、ステップS3の判定がYESであって全閉要求がある場合、ECU100は、ステップS4にて、ウエストゲートバルブ20が全閉であるか否かを判定する。
【0063】
ステップS4の判定がNOであってウエストゲートバルブ20が開弁している場合、ECU100は、ステップS7にて、WGモータ32の駆動DUTYをまず第1DUTYにし、その後、第1DUTYよりも小さい第2DUTYに低減する。第1DUTYおよび第2DUTYは予め設定されてECU100に記憶されている。なお、ステップS7にて、ECU100は、WGモータ32の通電電流の向きを閉弁向きにする。
【0064】
第2DUTYは、ウエストゲートバルブ20を全閉にしてそれを維持できる駆動DUTYの最小値である基準DUTYよりも大きい値に設定されている。
【0065】
具体的に、図6(b)に示すように、ウエストゲートバルブ20が全閉のとき、ウエストゲートバルブ20のバルブヘッド22には導入部83内の排気ガスから圧力F1が加えられ、ウエストゲートバルブ20には排気ガスから開弁方向のトルクT1(以下、排ガス押圧トルクT1という)が付与される。そのため、ウエストゲートバルブ20を全閉にしそれを維持するためには、WG駆動装置30からウエストゲートバルブ20に上記の排ガス押圧トルクT1に抗する閉弁方向のトルクを付与せねばならない。つまり、WGモータ32からロッド33およびリンクアーム部34に閉弁方向の力F2を付与し、これによってリンクプレート37を介してウエストゲートバルブ20に閉弁方向のトルクT2を付与するとともに、このトルクT2を排ガス押圧トルクT1以上にする必要がある。基準DUTYは、このトルクT2(ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルク)を排ガス押圧トルクT1以上にできる駆動DUTYの最小値であり、トルクT2が排ガス押圧トルクT1と同じとなるときの駆動DUTYの値である。
【0066】
第2DUTYがこのように設定されていることで、ステップS7において駆動DUTYが第2DUTYよりも大きい第1DUTYとされてその後第2DUTYとされると、ウエストゲートバルブ20は全閉とされる。また、第1DUTYから第2DUTYに切り替えられることで、ウエストゲートバルブ20を早期に全閉にしつつウエストゲートバルブ20が着座部88aに勢いよく衝突するのが回避される。具体的に、駆動DUTYが比較的大きい第1DUTYとされることでウエストゲートバルブ20の開度は早期に全閉に近い開度まで低減される。そして、その後、駆動DUTYが比較的小さい第2DUTYとされることで、全閉に至るまでのウエストゲートバルブ20の移動速度が小さく抑えられてウエストゲートバルブ20が勢いよく着座部88aに衝突するのが回避される。
【0067】
第1DUTYおよび第2DUTYは、予め設定されてECU100に記憶されている。なお、上記のように第2DUTYは第1DUTYよりも小さい値であり、第2DUTYは100%よりも小さい値に設定される。例えば、基準DUTYが10%程度であるのに対して、第2DUTYは45%に設定され、第1DUTYは100%に設定される。
【0068】
図8に戻り、ステップS4の判定がYESであってウエストゲートバルブ20が既に全閉の場合、ステップS5にて、ECU100は、ウエストゲートバルブ20の全閉継続時間(ウエストゲートバルブ20が継続して全閉である時間)が判定時間以上であるか否かを判定する。具体的に、ECU100はタイマー機能を有しており、実バルブ開度の変化に基づいてウエストゲートバルブ20が開弁している状態から全閉になったことを検知するとタイマーをオンにし、このタイマーの値に基づいてステップS5の判定を行う。判定時間は、予め設定されてECU100に記憶されている。例えば、判定時間は200msに設定される。
【0069】
ステップS5の判定がNOであって、全閉継続時間が判定時間未満の場合、ステップS8にて、ECU100は、駆動DUTYを第2DUTYにする。上記のように、本実施形態ではウエストゲートバルブ20が全閉になるときの駆動DUTYも第2DUTYであり、ウエストゲートバルブ20が全閉になってから全閉継続時間が判定時間に到達するまでの間、駆動DUTYは第2DUTYに維持されることになる。なお、ステップS5においてもステップS7と同様に、WGモータ32の通電電流は閉弁向きとされる。第2DUTYは基準DUTYよりも大きい値である。これより、ステップS8において、ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルクT2は排ガス押圧トルクT1よりも大きい所定の第1トルクTxとされ、ウエストゲートバルブ20は着座部88aに押し付けられる。
【0070】
上記のステップS7、S8は、請求項の「閉弁制御」に相当する。つまり、ECU100は、ステップS7、S8において、ウエストゲートバルブ20を開弁位置から閉弁位置に移動させ、且つ、移動後のウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルクT2を、排ガス押圧トルクT1よりも大きい第1トルクTxに設定してウエストゲートバルブ20を開口部88に押し付ける閉弁制御を実施する。
【0071】
ステップS5に戻り、ステップS5の判定がYESであって全閉継続時間が判定時間以上の場合、ステップS9にて、ECU100は、駆動DUTYを第2DUTYよりも小さいトルク低減用DUTYにする。トルク低減用DUTYは予め設定されてECU100に記憶されている。上記のように、ウエストゲートバルブ20が全閉となってから全閉継続時間が判定時間に到達するまでの間、駆動DUTYは第2DUTYとされている。これより、全閉継続時間が判定時間以上になると、駆動DUTYは低減されることになる。駆動DUTYが低減されると、ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルクT2は、上記の第1トルクTxからこれよりも小さい第2トルクTyに低減される。このステップS9は、請求項の「トルク低減制御」に相当する。つまり、ステップS9では、ECU100は、ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルクを、駆動DUTYが第2DUTYのときの第1トルクTxからこれよりも小さい第2トルクTyに低減するトルク低減制御を実施する。
【0072】
本実施形態では、トルク低減用DUTYは基準DUTY以上の値に設定されて、第2トルクTyは排ガス押圧トルクT1以上とされる。これにより、ステップS9の実施後もウエストゲートバルブ20は全閉に維持される。例えば、基準DUTYが10%、第2DUTYが45%であるのに対して、トルク低減用DUTYは25%に設定される。
【0073】
図9は、ウエストゲートバルブ20が開弁している状態で全閉要求が出されたときの、駆動DUTYと、ウエストゲートバルブ20の開度と、ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルクの時間変化の一例を示したタイムチャートである。図9の例では、時刻t1にて全閉要求が出される。これに伴い、時刻t1にて駆動DUTYは第1DUTYとされる。駆動DUTYが第1DUTYとされることで、ウエストゲートバルブ20には閉弁方向の高いトルクが付与され、ウエストゲートバルブ20の開度は早期に低下していく。その後、時刻t2にて駆動DUTYは第2DUTYに切り替えられる。これにより、ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルクは第1トルクTxに低減され、ウエストゲートバルブ20の開度は緩やかに低下し、時刻t3にて全閉になる。図9の例では時刻t3以降も全閉要求が継続して出されており、時刻t3後も、駆動DUTYが第2DUTYに維持されてウエストゲートバルブ20は全閉に維持される。また、ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルクも第1トルクTxに維持される。そして、時刻t3から判定時間が経過すると、つまり全閉継続時間が判定時間に到達すると、その時点t4にて、駆動DUTYはトルク低減用DUTYに低減され、ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルクが第2トルクTyに低減される。
【0074】
(作用等)
以上のように、本実施形態では、全閉要求が出されてウエストゲートバルブ20が全閉にされた後も、ウエストゲートバルブ20には、排ガス押圧トルクT1よりも大きい閉弁方向の第1トルクTxが付与されてウエストゲートバルブ20が開口部88に押し付けられる。そのため、排ガス押圧トルクT1に抗してウエストゲートバルブ20を確実に全閉に維持できる。
【0075】
ところが、ウエストゲートバルブ20を閉弁すると過給圧が上昇して排気ガスが高温となることでタービンハウジング82が熱膨張する。タービンハウジング82が熱膨張すると、図6(b)の矢印F10のように開口部88の周辺部によってウエストゲートバルブ20は開弁方向に押圧され、ウエストゲートバルブ20には開弁方向のトルクT10が付与される。そのため、上記のようにウエストゲートバルブ20に比較的大きい閉弁方向のトルク(第1トルクTx)を付与していると、ウエストゲートバルブ20とリンクプレート37との連結部分に高い負荷がかかることになる。つまり、図10に示すように、リンクプレート37とウエストゲートバルブ20の連結部分である溶接部Wにおいて、リンクプレート37側には閉弁方向の第1トルクTxがかかる一方、ウエストゲートバルブ20側には排ガス押圧トルクT1と熱膨張に伴うトルクT10とを合わせた開弁方向のトルクTz、つまり、リンクプレート37側とは反対方向の高いトルクTzが加えられる。そのため、溶接部Wの負荷が高くなりこれが損傷するおそれがある。
【0076】
これに対して、本実施形態では、ウエストゲートバルブ20の閉弁継続時間が判定時間以上となって、ウエストゲートバルブ20に熱膨張に伴う開弁方向のトルクT10が加えられると考えられる場合に、ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルクが上記の第1トルクTxからこれよりも小さい第2トルクTyに低減される。そのため、溶接部Wにかかる負荷を低減することができ、溶接部Wの損傷を抑制できる。
【0077】
特に、本実施形態では、ウエストゲートバルブ20が全閉の時に全ての排気ガスが導入されるタービンハウジング82に開口部88が形成されていることで、開口部88の周辺部は熱膨張しやすい。つまり、連結部分Wの負荷が過大になりやすい。従って、上記のトルクを低減する制御を実施すれば、連結部分Wの負荷を効果的に小さくできる。
【0078】
また、本実施形態では、連結部分Wがレーザー溶接により形成されていることに伴いバルブシャフト24の径が小さくされており、溶接面積が比較的小さくなる。そのため、連結部分Wが損傷しやすい。従って、上記のトルクを低減する制御を実施すれば、連結部分Wの損傷を効果的に抑制できる。換言すれば、本実施形態によれば、連結部分Wをレーザー溶接により形成しつつ連結部分Wの損傷を抑制できる。そして、上記のように連結部分Wをレーザー溶接により形成すれば、バルブヘッド22をテーパ状として過給圧の細かな制御を実現しながら、排気ガスの漏れを抑えることが可能になる。
【0079】
また、本実施形態では、閉弁継続時間が判定時間以上になっても駆動DUTY(トルク低減用DUTY)が基準DUTY以上とされる。そのため、上記のように、ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルク(第2トルクTy)を排ガス押圧トルクT1以上にでき、ウエストゲートバルブ20の閉弁を維持できる。
【0080】
また、本実施形態では、ウエストゲートバルブ20が閉弁してから、閉弁継続時間が判定時間に到達するまでの期間、駆動DUTYが100%よりも小さい第2DUTYとされて、ウエストゲートバルブ20に付与される閉弁方向のトルクが、WG駆動装置30からウエストゲートバルブ20に付与可能な閉弁方向のトルクの最大値よりも小さい値とされる。そのため、上記の期間中においても、連結部分Wにかかる負荷を小さく抑えることができる。
【0081】
(変形例)
上記実施形態では、リンクプレート37とウエストゲートバルブ20とがレーザー溶接によって連結された場合を説明したが、これらの連結構造はこれに限らない。
【0082】
また、上記実施形態では、開口部88がタービンハウジング82に形成された場合を説明したが、開口部88はタービン本体81よりも上流側の排気通路60に形成されていればよく、上記に限られない。
【0083】
また、上記実施形態では、ウエストゲートバルブ20がECU100によって制御される場合を説明したが、ECU100とは別に設けたマイコン等によって、あるいは、ECU100とこれとは別のマイコン等との組み合わせによってウエストゲートバルブ20が制御されてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、タービンユニット80が2つのスクロール部を有するツインスクロールタービンである場合を説明したが、スクロール部の数はこれに限られない。また、エンジン本体1は、点火プラグ11を有しないものや、気筒数が4つでないものでもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 エンジン本体
20 ウエストゲートバルブ
21 バルブ本体
24 バルブシャフト
30 WG駆動装置(駆動手段)
32 WGモータ(回動部材)
37 リンクプレート
60 排気通路
70 ターボ過給機
81 タービン(タービン本体)
82 タービンハウジング
85 導出部(バイパス通路)
88 開口部
100 ECU
101 過給圧制御部(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10