(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183580
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】硬化装置及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41F 23/04 20060101AFI20221206BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41F23/04 B
B41J2/01 129
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090981
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 治久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【テーマコード(参考)】
2C020
2C056
【Fターム(参考)】
2C020CB00
2C056EB13
2C056EB59
2C056EC28
2C056EC42
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】コスト上昇を抑えつつ、印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる硬化装置提供する。
【解決手段】硬化装置10は、印刷媒体A上の液体を硬化させる光を照射する光源31を有する光照射部30と、制御装置60と、を備え、制御装置60は、光源31と印刷媒体Aとの光源ギャップGiが第1距離のときに比べて、光源ギャップGiが前記第1距離よりも大きい第2距離のときは、光源31の光の強度を大きくするように光源31を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体上の液体を硬化させる光を照射する光源を有する光照射部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記光源と前記印刷媒体との光源ギャップが第1距離のときに比べて、前記光源ギャップが前記第1距離よりも大きい第2距離のときは、前記光源の光の強度を大きくするように前記光源を制御する、硬化装置。
【請求項2】
前記印刷媒体と前記光照射部とを、前記印刷媒体及び前記光照射部が並ぶ方向と直交する移動方向において相対的に移動させる移動装置を備え、
前記制御装置は、前記印刷媒体と前記光照射部とを前記移動方向に相対的に移動させながら、前記光源ギャップが前記第1距離のときに比べて、前記光源ギャップが前記第2距離のときは、前記光源の光の強度を大きくするように前記光源を制御する、請求項1に記載の硬化装置。
【請求項3】
前記光源は、第1光源、及び、前記第1光源と異なる第2光源を有し、
前記制御装置は、前記印刷媒体と前記光照射部とを前記移動方向に相対的に移動させながら、前記第1光源と前記印刷媒体との前記光源ギャップである第1光源ギャップが前記第1距離であり且つ前記第2光源と前記印刷媒体との前記光源ギャップである第2光源ギャップが前記第2距離であるときは、前記第1光源の光の強度よりも前記第2光源の光の強度を大きくするように前記光源を制御する、請求項2に記載の硬化装置。
【請求項4】
前記移動装置は、前記光照射部を搭載して前記移動方向に移動するキャリッジを有し、
前記第1光源及び前記第2光源は、前記移動方向に直交する直交方向に並んでいる、請求項3に記載の硬化装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第1光源ギャップと前記第2光源ギャップとの差が所定値以上である場合には、前記第1光源及び前記第2光源のうち、前記光源ギャップが前記第1距離である一方の光源に比べて、前記光源ギャップが前記第2距離である他方の光源は、光の強度を大きくし、
前記第1光源ギャップと前記第2光源ギャップとの差が前記所定値未満である場合には、前記第1光源の光の強度と前記第2光源の光の強度を互いに等しくなるように前記光源を制御する、請求項3又は4に記載の硬化装置。
【請求項6】
前記所定値は10mmである、請求項5に記載の硬化装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記印刷媒体の形状情報に基づいて前記光源を制御する、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化装置と、
前記液体を前記印刷媒体に吐出可能な複数のノズルを有するヘッドを備え、
前記制御装置は、
前記ノズルと前記印刷媒体とのノズルギャップが第3距離未満のときは、前記ノズルから前記液体を吐出させ、前記光源から前記印刷媒体に光を照射させ、
前記ノズルギャップが前記第3距離以上のときは、前記ノズルから前記液体を吐出させず、前記光源から前記印刷媒体に光を照射させない、印刷装置。
【請求項9】
前記ヘッドは、前記ノズルが開口するノズル面を有し、
前記制御装置は、前記ノズルギャップが前記第3距離未満のときに、前記印刷媒体のうち、前記ノズル面に対する角度が所定角度以上である領域に対応する前記ノズルから前記液体を吐出させず、前記領域に対応する前記光源から前記印刷媒体に光を照射させない、請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記第3距離は、前記印刷媒体に基づいて設定される、請求項8又は9のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項11】
印刷媒体上の液体を硬化させる光を照射する光源を有する光照射部と、
前記印刷媒体と前記光源との間において前記光源からの前記光が透過するレンズと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記光源と前記レンズとが並ぶ第3方向において前記レンズからの光の集光点と前記印刷媒体との集光点ギャップが第1間隔のときに比べて、前記集光点ギャップが前記第1間隔よりも大きい第2間隔のときは、前記光源の光の強度を大きくするように前記光源を制御する、硬化装置。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化装置と、
前記液体を前記印刷媒体に吐出可能なヘッドと、を備えた、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化装置及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置として、特許文献1のインクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタは、記録媒体に液体を吐出するヘッドと、記録媒体に吐出された液体に光を照射する紫外線照射装置を備えている。この紫外線照射装置は、上下方向に移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のインクジェットプリンタでは、ヘッドから液体を吐出させ記録媒体に着弾させてから、紫外線照射装置から光を記録媒体に照射させ液体を記録媒体に定着させることにより、画像を記録媒体に印刷している。ところで、例えば、記録媒体が立体形状である場合、その凹凸に応じて紫外線照射装置と記録媒体との間隔が変化し、間隔が大きいほど記録媒体における光の照度が低下する。
【0005】
これに対して、仮に紫外線照射装置と記録媒体との間隔に応じて紫外線照射装置を上下方向に移動させれば、光の照度を変化させられる。これにより、液体の硬化状態が均一化され、画像の品質低下が抑制される。しかしながら、紫外線照射装置を上下方向に移動させる機構が必要になり、コスト上昇を招いてしまう。
【0006】
本発明はこのような事態に鑑み、コスト上昇を抑えつつ、印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる硬化装置及び印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る硬化装置は、印刷媒体上の液体を硬化させる光を照射する光源を有する光照射部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記光源と前記印刷媒体との光源ギャップが第1距離のときに比べて、前記光源ギャップが前記第1距離よりも大きい第2距離のときは、前記光源の光の強度を大きくするように前記光源を制御する。
【0008】
本発明のある態様に係る印刷装置は、印刷媒体上の液体を硬化させる光を照射する光源を有する光照射部と、前記印刷媒体と前記光源との間において前記光源からの前記光が透過するレンズと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記光源と前記レンズとが並ぶ第3方向において前記レンズからの光の集光点と前記印刷媒体との集光点ギャップが第1間隔のときに比べて、前記集光点ギャップが前記第1間隔よりも大きい第2間隔のときは、前記光源の光の強度を大きくするように前記光源を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、光源を制御することで記録媒体に付与される光の照度を変えることができるので、紫外線照射装置を上下方向に移動させる機構は必要なく、コスト上昇を抑えつつ、印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる硬化装置及び印刷装置を提供することが可能であるという効果を奏する。
【0010】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1の搬送装置を上方から視た概略図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2の搬送装置を前側から視た概略図である。
図3(b)は、
図2の搬送装置を右側から視た概略図である。
【
図4】
図1のヘッドユニットを下方から視た概略図である。
【
図5】
図1の印刷装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図1の印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図1のヘッド及び印刷媒体を右側から視た概略図である。
【
図8】
図1の光照射部及び印刷媒体を右側から視た概略図である。
【
図9】
図1のヘッドユニット及び印刷媒体を前側から視た概略図である。
【
図10】
図10(a)は、集光点距離よりもレンズギャップが小さい光照射部、レンズ及び印刷媒体を示す図である。
図10(b)は、集光点距離と等しいレンズギャップの光照射部、レンズ及び印刷媒体を示す図である。
図10(c)は、集光点距離よりもレンズギャップが大きい光照射部、レンズ及び印刷媒体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0013】
(実施の形態1)
<印刷装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る硬化装置10を備えた印刷装置11は、
図1に示すように、例えば、ヘッド20から印刷媒体A(
図2)に液体を吐出し、光照射部30から光を印刷媒体Aに照射して、画像を印刷するインクジェットプリンタである。印刷媒体Aとしては、ボール及びマグカップなどの立体物が挙げられる。液体は、光硬化性の液体であって、例えば、紫外線又は赤外線等の光によって硬化するインクである。
【0014】
印刷装置11は、硬化装置10、ヘッド20及び搬送装置50(
図2)を備え、硬化装置10は、光照射部30、移動装置40、筐体12及び制御装置60(
図5)を備えている。筐体12は、硬化装置10、ヘッド20及び搬送装置50を収容している。例えば、ヘッド20及び光照射部30は、ヘッドユニット13としてユニット化されている。なお、搬送装置50及び制御装置60の詳細については後述する。
【0015】
また、印刷媒体A及び光照射部30が並ぶ並び方向を上下方向と称する。この並び方向に直交する方向であって移動装置40により印刷媒体Aと光照射部30とを相対的に移動させる移動方向を左右方向と称する。この並び方向及び移動方向に直交する方向を前後方向と称する。但し、硬化装置10及び印刷装置11の配置はこれに限定されない。
【0016】
移動装置40は、一対の移動レール41、キャリッジ42、駆動ベルト43、移動モータ44を有し、ヘッドユニット13を左右方向に移動させる。一対の移動レール41は、左右方向に延びる長尺部材であって、前後方向において互いの間にヘッドユニット13を挟むように互いに平行に配置されている。
【0017】
キャリッジ42は、ヘッドユニット13を搭載し、移動レール41に沿って左右方向に移動可能に支持されている。駆動ベルト43は、無端ベルトであって、左右方向に移動レール41に沿って延び、キャリッジ42に接続され、プーリを介して移動モータ44に連結されている。移動モータ44が駆動ベルト43を駆動することにより、移動レール41に沿ってキャリッジ42が左右方向に往復移動する。これにより、移動装置40は、左右方向において印刷媒体Aとヘッド20及び光照射部30とを相対的に移動させる。
【0018】
<搬送装置>
搬送装置50は、
図2~
図3(b)に示すように、一対の枠体51、駆動ローラ52、従動ローラ53、搬送モータ54及び押さえ部55を有している。枠体51は、平板形状であって、一対の枠体51は、左右方向において間隔を空けて配置される。
【0019】
駆動ローラ52及び従動ローラ53は、円柱形状であって、その中心軸が左右方向に延び、その中心軸を中心に回転可能に一対の枠体51に取り付けられている。駆動ローラ52及び従動ローラ53は、互いに平行であって、前後方向において互いに間隔を空けて、上下方向において互いに同じ高さに配置されている。この駆動ローラ52と従動ローラ53とのローラ間隔は、印刷媒体Aの前後方向の寸法よりも小さい。このため、一対の枠体51の間において駆動ローラ52及び従動ローラ53上に印刷媒体Aが配置される。
【0020】
駆動ローラ52及び従動ローラ53は、その外周面に、ゴムなどの弾性材料などから成る滑り止めが取り付けられている。この滑り止めによって、駆動ローラ52及び従動ローラ53の上に配置された印刷媒体Aは、回転する駆動ローラ52及び従動ローラ53に追随して回転する。
【0021】
また、駆動ローラ52及び従動ローラ53の上に配置された印刷媒体Aがヘッドユニット13の下面と対向するように、筐体12(
図1)などに着脱可能に取り付けられている。これにより、ヘッドユニット13のヘッド20から印刷媒体Aに液体が吐出可能であり、光照射部30から印刷媒体Aに光を照射可能である。
【0022】
搬送モータ54は、例えば、枠体51に配置され、駆動ローラ52に接続されている。搬送モータ54は、駆動ローラ52を回転すると、駆動ローラ52により印刷媒体Aが回転し、さらに、印刷媒体Aにより従動ローラ53が回転する。これにより、印刷媒体Aにおいて、ヘッドユニット13の下面に対向する領域が、例えば、後方に移動していく。
【0023】
押さえ部55は、搬送レール56、固定部57及び可動部58を有している。搬送レール56は、左右方向に延びて、前後方向において駆動ローラ52と従動ローラ53との間に配置され、一対の枠体51の間に架け渡されて、一対の枠体51に固定されている。固定部57は、搬送レール56の右端において右側の枠体51に固定され、可動部58は、固定部57の左側において左右方向に移動可能なように搬送レール56に取り付けられている。
【0024】
固定部57及び可動部58は、例えば、搬送レール56から上方に延びて、その上端において互いに対向する面に球が回転可能に設けられている。これにより、固定部57及び可動部58は、左右方向において互いの間に印刷媒体Aを挟み、その球が印刷媒体Aに接触する。固定部57及び可動部58は、球により印刷媒体Aが回転可能に支持する。
【0025】
固定部57と可動部58との間において駆動ローラ52及び従動ローラ53上に印刷媒体Aが配置され、印刷媒体Aの右端が固定部57に接するように印刷媒体Aが右側に寄せられる。そして、可動部58を右側に移動させて印刷媒体Aの左端に当接する。これにより、左右方向において印刷媒体Aは固定部57及び可動部58により支持されて、駆動ローラ52及び従動ローラ53により回転する。
【0026】
<ヘッドユニット>
図4に示すように、ヘッドユニット13において、ヘッド20及び光照射部30は左右方向に並んで配置されている。ヘッド20は、複数のノズル21、液体流路26、流路形成体24、及び、複数の駆動素子25(
図5)を有している。複数のノズル21は、前後方向において互いに等間隔に並んでノズル列を成している。複数のノズル列は、左右方向において互いに等間隔に並んでいる。
【0027】
流路形成体24は、例えば、直方体形状であって、その内部にノズル21及び液体流路26が形成されている。ノズル21は、流路形成体24の下面であるノズル面24aにて開口している。液体流路26は、液体タンク27(
図1)及びノズル21に接続されており、共通流路23及び複数の個別流路22を有している。共通流路23は前後方向に延び、共通流路23から複数の個別流路22が分岐している。個別流路22は、その上流端が共通流路23に接続され、その下流端がノズル21に接続されている。このため、液体は、液体タンク27から共通流路23に流れ、共通流路23において前後方向に流れる間に個別流路22に分流し、ノズル21に供給される。
【0028】
駆動素子25は、圧電素子、発熱素子及び静電式アクチュエータ等であって、個別流路22に対応して設けられ、個別流路22の容積を変動させるよう駆動する。これにより、個別流路22の液体に、ノズル21から液体を吐出する圧力が付与される。
【0029】
光照射部30は、ヘッド20が液体を吐出しながら移動する方向においてヘッド20の上流に配置されている。一方向印刷では、例えば、ヘッド20が左側に移動する際に液体を吐出し、右側に移動する際には液体を吐出しない。この場合、光照射部30は、印刷時の左側への移動方向においてヘッド20の上流である右側に配置されている。光照射部30は、液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して移動しながら、印刷媒体A上の液体に光を照射する。
【0030】
なお、双方向印刷では、印刷装置11は、左右方向においてヘッド20を挟むように一対の光照射部30が配置される。一対の光照射部30のうちの右側の光照射部30は、左側に移動しながら液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して左側に移動しながら、印刷媒体A上の液体に光を照射する。また、一対の光照射部30のうちの左側の光照射部30は、右側に移動しながら液体を印刷媒体A上に吐出するヘッド20に追随して右側に移動しながら、印刷媒体A上の液体に光を照射する。
【0031】
光照射部30は、複数の光源31、及び、光源31が搭載された回路基板32を有している。回路基板32は、例えば、絶縁性材料から成り、矩形の平板形状であって、光源31が搭載された下面を有している。複数の光源31は、前後方向に並んで光源列を構成している。複数(例えば、7個)の光源列は、左右方向に間隔を空けながら並べられている。光源31は、例えば、LED等の発光素子であって、制御装置60により駆動されて、ノズル21から吐出された液体を硬化する光(例えば、紫外線又は赤外線)を発光する。
【0032】
このようなヘッドユニット13において、例えば、各ノズル列において11本のノズル21が前後方向に並び、各光源列において11個の光源31が前後方向に並んでいる。11本のノズル21は、前側からノズル21a~ノズル21kを有し、11個の光源31は、前側から光源31a~光源31kを有している。ノズル21aに対応する光源31aは、左右方向においてノズル21aに並んで配置され、ノズル21aから吐出された印刷媒体A上の液体に光を照射する。なお、光源31b~光源31mについても光源31aと同様に、ノズル21b~ノズル21kにそれぞれ対応する。
【0033】
<制御装置>
図5に示すように、制御装置60は、演算部61及び記憶部62を有している。記憶部62は、演算部61がアクセス可能なメモリであって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、印刷データ等の各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。なお、制御装置60は、集中制御する単独の制御装置60であってもよいし、分散制御する複数の制御装置60であってもよい。また、プログラムは、記憶部62以外の他の記憶媒体に記憶されていてもよい。さらに、プログラムは、単独の記憶媒体に記憶されていてもよく、また、複数の記憶媒体に分割されて記憶されていてもよい。
【0034】
演算部61は、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等の回路により構成されている。演算部61は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子25、光源31、移動モータ44及び搬送モータ54を制御して、印刷処理を実行する。この印刷処理において、制御装置60は、光照射部30における複数の光源31のそれぞれについて上下方向における光源31と印刷媒体Aとの間隔である光源ギャップGi(
図8)が大きくなるほど光源31の光の強度を大きくするよう光源31を制御する。この制御の詳細については後述する。
【0035】
制御装置60は、ヘッド駆動回路63を介して駆動素子25に接続され、駆動素子25の駆動を制御する。制御装置60は、光源駆動回路64を介して光源31に接続され、光源31の駆動を制御する。制御装置60は、移動駆動回路65を介して移動モータ44に接続され、移動モータ44の駆動を制御する。制御装置60は、搬送駆動回路66を介して搬送モータ54に接続され、搬送モータ54の駆動を制御する。
【0036】
制御装置60は、商用電源等の外部電源Bに電源回路67を介して接続されている。電源回路67は、外部電源Bからの電力について交流から直流に変換したり、電圧又は周波数等を変換したりして、印刷装置11における駆動素子25、光源31、移動モータ44及び搬送モータ54等の各部に電力を供給する。この電力の変換は制御装置60により制御される。
【0037】
<印刷処理>
このような印刷装置11において、制御装置60は、印刷データを取得し、印刷データに基づいて印刷処理を実行する。印刷データは、印刷媒体Aに印刷される画像を示す画像データ(例えば、ラスタデータ)を含んでいる。印刷データは、記憶部62に記憶されていてもよいし、ネットワーク、コンピュータ及び記憶媒体等の外部機器から取得されてもよい。
【0038】
制御装置60が、移動モータ44を制御して、ヘッドユニット13を左右方向に移動させる移動動作を実行する。また、制御装置60は、駆動素子25を制御して、ヘッド20から液体を吐出させる吐出動作を実行する。さらに、制御装置60は、光源31を制御して、光源31から光を照射させる光照射動作を実行する。さらに、制御装置60は、搬送モータ54を制御して、印刷媒体Aを回転させて搬送させる搬送動作を実行する。そして、印刷装置11が移動動作、吐出動作及び光照射動作を含む走査と、搬送動作とを交互に繰り返し、印刷処理を進めていく。
【0039】
すなわち、走査では、
図3(a)に示すように、ヘッド20が左側へ移動しながら、ヘッド20のノズル面24aから液体を吐出する。これにより、ノズル面24aに対向した印刷媒体Aの対向領域に液体が着弾する。また、光照射部30がヘッド20に追随して左側へ移動しながら、光源31から光を照射する。これにより、光照射部30に対向した印刷媒体A上の液体に光が照射され、この液体が光により硬化して印刷媒体Aに定着する。このため、印刷媒体Aの対向領域に左右方向に延びる画像が印刷される。
【0040】
そして、
図3(b)に示すように、搬送動作により、右側から視て印刷媒体Aを反時計回りに回転させて、印刷媒体Aにおいて画像が印刷された領域を前方へ移動させて、この印刷領域の後方の領域を対向領域とする。そして、この対向領域に対して走査により画像を印刷する。このように、走査による対向領域への画像の印刷と、印刷媒体Aにおける対向領域の移動とを繰り返して、印刷媒体Aの周方向に順に画像を形成していく。
【0041】
<光の強度>
図3(a)に示すように、例えば、円柱形状の印刷媒体Aの中心軸が左右方向に延びるように駆動ローラ52及び従動ローラ53の上に配置する。この場合、光照射部30を左右方向に移動しても、光照射部30の光源31と印刷媒体Aとの間隔である光源ギャップGiは、変化せずに一定である。
【0042】
これに対し、
図3(b)及び
図8に示すように、前後方向においては印刷媒体Aが湾曲しているため、光照射部30において前後方向に並ぶ複数の光源31のそれぞれの光源ギャップGiは互いに異なる。これにより、印刷媒体Aにおける光照射部30からの光の照度は、光源ギャップGiが大きくなるほど小さくなる。よって、制御装置60は、光源ギャップGiが第1距離のときよりも、光源ギャップGiが第1距離よりも大きい第2距離のときは、光源31の光の強度を大きくするように光源31を制御する。例えば、第1距離は所定距離未満の間隔幅であり、第2距離は第1距離よりも長い所定距離以上の間隔幅である。
【0043】
光源ギャップGiは、光源31と印刷媒体Aとの間隔であって、例えば、光源31から出射される光の光軸に平行な方向において光源31と、光源31に対向する印刷媒体Aの位置との間隔である。光源ギャップGiは、例えば、形状情報により取得される。形状情報は、印刷媒体Aの寸法などの形状を示す情報であって、例えば、記憶部62又は外部機器から入力された寸法データから得られてもよく、また、測距センサ14(
図5)から得られてもよい。
【0044】
寸法データは、例えば、円柱形状の印刷媒体Aについては、直径及び左右方向の長さを含んでいる。印刷装置11におけるヘッド20の各ノズル21及び光照射部30の各光源31と搬送装置50との間隔などの位置関係は予め定められており、記憶部62に記憶されている。また、搬送装置50における駆動ローラ52及び従動ローラ53の直径、及び、これらの間隔は予め定められており、記憶部62に記憶されている。
【0045】
制御装置60は、これらの寸法情報に基づいて、駆動ローラ52及び従動ローラ53上に配置された印刷媒体Aの位置、並びに、この印刷媒体Aとノズル21との間隔であるノズルギャップGn及び光源ギャップGiを取得することができる。
図7に示すように、ノズルギャップGnは、ヘッド20のノズル面24aに開口するノズル21と、ノズル21に対向する印刷媒体Aとの間隔である。
【0046】
測距センサ14は、出力した光の対象物による光量変化などにより対象物までの距離を測定し、制御装置60に測定値を出力する。測距センサ14は、筐体12又はヘッドユニット13などの所定の位置に配置されており、この所定の位置から駆動ローラ52及び従動ローラ53上に配置された印刷媒体Aまでの距離を測定する。所定の位置から各ノズル21及び各光源31までの距離は予め記憶部62に記憶されている。これらの情報に基づいて、制御装置60は、ノズルギャップGn及び光源ギャップGiを取得することができる。
【0047】
光源31は、供給された電力に応じて出射する光の強度が変更可能な発光素子であって、電力が小さいほど光の強度が小さくなる。光源31の発光素子は、他の光源31の発光素子と同じ電力が供給されたときに、他の光源31と同じ強度の光を放射する。例えば、この制御には、PWM制御により光の強度を下げる制御が含まれる。
【0048】
この光源31が放射した光の強度は、光源31の単位面積から単位時間当たりに出射した放射束であって、例えば、放射発散度(mW/cm2)である。これに対し、光源31から照射された印刷媒体Aにおける光の照度(mW/cm2)は、光源31から単位時間当たりに入射した光の印刷媒体Aの単位面積当たりの放射束である。積算光量は、は、照度(mW/cm2)と光の照射時間(s)とを掛け合わせた積であって、光照射部30から入射した光の印刷媒体Aにおける単位面積当たりの光エネルギ(mJ/cm2)である。
【0049】
<印刷装置の制御方法>
印刷装置11の制御方法は、例えば、
図6のフローチャートに沿って制御装置60により実行される。制御装置60は、印刷データを取得して(ステップS1)、印刷データに基づいて印刷処理を開始する。また、制御装置60は、形状情報を取得し(ステップS2)、形状情報に基づいてノズル21毎のノズルギャップGnを及び光源31毎の光源ギャップGiを取得する。
【0050】
制御装置60は、ノズルギャップGnが所定の第3距離未満か否かをノズル21毎に判定する(ステップS3)。例えば、
図7に示すように、前後方向に並ぶ11本のノズル21のうちの中央のノズル21fが、上側から視て円柱形状の印刷媒体Aの中心軸に重なるように配置されている。この場合、11本のノズル21のノズルギャップGnのうち、中央のノズル21fのノズルギャップGnが最も小さく、前後方向において中央から離れるほどノズルギャップGnが大きくなり、端のノズル21a、21kのノズルギャップGnが最も大きくなる。
【0051】
例えば、制御装置60は、このノズル21のうち、前端のノズル21a及び後端のノズル21kのノズルギャップGnが第3距離以上であると判定する(ステップS3:NO)。この場合、制御装置60は、第3距離以上のノズルギャップGnのノズル21a、21kから液体を吐出せずに、これらに対応する光源31a、31kから光を照射させないで(ステップS4)、ステップS12の処理に進める。
【0052】
このノズル21a、21kに対向する印刷媒体Aの対向領域はノズル面24aに対して傾斜が大きい。このため、仮にノズル21a、21kから液体を吐出させると、液体が印刷媒体A上から滑り落ちることがある。このため、このようなノズルギャップGnが大きい印刷媒体Aの領域には液体を吐出せず且つ光を照射しないことにより、電力を低減しつつ、液体に起因した画質の低下を抑制することができる。
【0053】
一方、制御装置60は、端の2本のノズル21以外の9本のノズル21b~ノズル21jのノズルギャップGnが第3距離未満であると判定する(ステップS3:YES)。続いて、制御装置60は、ノズル21が、ノズル面24aに対する角度θが所定角度以上である印刷媒体Aの領域に対応するか否かを判定する(ステップS5)。
【0054】
この角度θは、上下方向に直交する平らなノズル面24aと、印刷媒体Aにおいてノズル21に対向する位置Cにおける接線Dとの間のなす角のうち、小さい方の角度である。前後方向における印刷媒体Aの中央において、ノズル面24aと接線Dとは平行になる。前後方向において印刷媒体Aの中央から離れるほど、ノズル面24aに対する接線Dの角度θは大きくなる。例えば、9本のノズル21のうち、前端のノズル21b及び後端のノズル21jが対向する印刷媒体Aの位置Cにおける接線Dと、ノズル面24aとのなす角度θが所定角度以上である。
【0055】
制御装置60は、ノズル21b、21jが、ノズル面24aに対する角度θが所定角度以上である印刷媒体Aの領域に対応すると判定する(ステップS5:YES)。この場合、制御装置60は、角度θが所定角度以上のノズル21b、21jからは液体を吐出させずにこれらのノズル21に対応する光源31b、31jから光を照射させないで(ステップS4)、ステップS12の処理に進める。
【0056】
これにより、ノズルギャップGnが第3距離未満であっても、印刷媒体Aの傾斜が大きい場合には、液体を吐出しても、液体が印刷媒体A上を垂れ落ちることがある。このため、このような印刷媒体Aの領域には液体を吐出せず且つ光を照射しないことにより、電力を低減しつつ、付着液体に起因した画質の低下を抑制することができる。
【0057】
一方、9本のノズル21のうちノズル21b、21j以外の7本のノズル21c~21iについて、ノズル21が対向する印刷媒体Aの位置Cにおける接線Dと、ノズル面24aとのなす角度θが所定角度未満である。このため、制御装置60は、ノズル21c~21iについて、ノズル面24aに対する角度θが所定角度以上である印刷媒体Aの領域に対応しないと判定する(ステップS5:NO)。続いて、制御装置60は、印刷データに基づいてヘッド20を左側に移動させながらノズル21c~21iから液体を吐出させる(ステップS6)。これにより、ノズル21c~21iから吐出された液体が印刷媒体Aに着弾する。
【0058】
続いて、制御装置60は、光源ギャップGiが第2距離か否かを判定する(ステップS7)。
図8の例では、制御装置60は、光源31c~31iのそれぞれについて光源ギャップGiを取得する。そして、制御装置60は、光源ギャップGiが所定距離未満の光源31e~31gについて、その光源ギャップGiは第1距離であると判定する(ステップS7:NO)。例えば、所定値は、10mmである。
【0059】
このような、光源ギャップGiが小さい場合には、制御装置60は、光源ギャップGiが第1距離の光源31e~31gから所定の第1強度の光を照射させる(ステップS8)。これにより、液体に光が照射されて、液体が印刷媒体Aに定着する。
【0060】
一方、制御装置60は、光源ギャップGiが所定距離以上の光源31c~31d、31h~31iについて、その光源ギャップGiは第2距離であると判定する(ステップS7:YES)。続いて、制御装置60は、光源ギャップGiは第2距離の光源31c~31d、31h~31iについて、光源ギャップGiの差が所定値以上か否かを判定する(ステップS9)。
【0061】
光源ギャップGiの差は、第1光源ギャップと、第2光源ギャップとの差である。第1光源ギャップは第1光源と印刷媒体Aとの光源ギャップGiであり、第2光源ギャップは第2光源と印刷媒体Aとの光源ギャップGiである。第1光源及び第2光源は、互いに異なる光源31であって、例えば、前後方向に並んでいる。
図8の例では、第1光源及び第2光源は、光源31a~31kのいずれかの光源31であって、例えば、第1光源は光源31fであり、第2光源は光源31c~31d、31h~31iである。この場合、制御装置60は、光源31c~31d、31h~31iのそれぞれについて、光源ギャップGiである第2光源ギャップと、光源31fの光源ギャップGiである第1光源ギャップとの差を算出する。なお、例えば、光源ギャップGiが第1距離の光源31e~31gのうち、第2光源に最も近い光源31を第1光源としてもよい。
【0062】
制御装置60は、例えば、光源31d、31hについて光源ギャップGiの差が所定値未満であると判定すると(ステップS9:NO)、この光源31d、31hから第1強度の光を照射させる(ステップS8)。このように、第2光源である光源31d、31hの第2光源ギャップが大きい場合であっても、第1光源の第1光源ギャップとの差が小さい場合には、光源31d、31hからの光の強度を第1光源の光の強度を等しくする。これにより、光により硬化した液体の状態の均一化を図ることができる。
【0063】
一方、制御装置60は、例えば、光源31c、31iについて光源ギャップGiの差が所定値以上であると判定すると(ステップS9:YES)、この光源31c、31iから第1強度よりも大きい第2強度の光を照射させる(ステップS10)。このように、第2光源である光源31c、31iの第2光源ギャップ、及び、第1光源の第1光源ギャップとの差が大きい場合には、光源31c、31iからの光の強度を第1光源の光の強度よりも大きくする。これにより、液体を硬化することができる。
【0064】
そして、制御装置60は印刷データに基づいた印刷処理が終了したか否かを判定する(ステップS11)。ここで、印刷処理が残っていれば(ステップS11:NO)、制御装置60は、ステップS3の処理に戻ってこれ以降の処理を繰り返す。一方、印刷処理が終了していれば、制御装置60は印刷を終了する。
【0065】
<作用、効果>
硬化装置10は、印刷媒体A上の液体を硬化させる光を照射する光源31を有する光照射部30と、制御装置60と、を備える。制御装置60は、光源31と印刷媒体Aとの光源ギャップGiが第1距離のときに比べて、光源ギャップGiが第1距離よりも大きい第2距離のときは、光源31の光の強度を大きくするように光源31を制御する。
【0066】
これによれば、光源31の光の強度が一定の場合、光源ギャップGiが大きいほど、印刷媒体Aにおける光の照度が低下する。これに対して、光源ギャップGiが小さい第1距離のときの光の強度よりも、光源ギャップGiが大きい第2距離のときの光の強度を大きくする。これにより、印刷媒体Aにおける光の照度を均一化して、印刷媒体A上の液体が光により硬化する状態を一様にし、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0067】
また、光の強度を制御することにより、印刷媒体A上における光の照度を調整している。これにより、光照射部30を上下方向に移動させる機構等を硬化装置10は備えず、硬化装置10のコスト上昇を抑制することができる。
【0068】
この硬化装置10では、光源31は、第1光源、及び、第1光源と異なる第2光源を有する。制御装置60は、印刷媒体Aと光照射部30とを移動方向に相対的に移動させながら、第1光源と印刷媒体Aとの光源ギャップGiである第1光源ギャップが第1距離であり且つ第2光源と印刷媒体Aとの光源ギャップGiである第2光源ギャップが第2距離であるときは、第1光源の光の強度よりも第2光源の光の強度を大きくするように光源31を制御する。
【0069】
これによれば、光照射部30を移動しながら、光照射部30の複数の光源31から光を照射しているときに、光源ギャップが第2距離である光源31からの光の強度を、光源ギャップが第1距離である光源31からの光の強度よりも大きくする。このように、光照射動作において、複数の光源31の光強度を光源ギャップGiに応じて制御することにより、コスト上昇を抑えつつ、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0070】
この硬化装置10は、移動装置40は、光照射部30を搭載して移動方向(例えば、左右方向)に移動するキャリッジ42を有し、第1光源及び第2光源は、移動方向に直交する直交方向(例えば、前後方向)に並んでいる。このような、複数の光源31が前後方向に並んでいる場合にも、コスト上昇を抑えつつ、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0071】
この硬化装置10では、制御装置60は、第1光源ギャップと第2光源ギャップとの差が所定値以上である場合には、第1光源及び第2光源のうち、光源ギャップGiが第1距離である一方の光源31に比べて、光源ギャップGiが第2距離である他方の光源31は、光の強度を大きくし、第1光源ギャップと第2光源ギャップとの差が所定値未満である場合には、第1光源の光の強度と第2光源の光の強度を互いに等しくなるように光源31を制御する。
【0072】
例えば、第1光源ギャップが第1距離であって、第2光源ギャップが第2距離であっても、第1光源ギャップ及び第2光源ギャップが、第1距離と第2距離との間の閾値である所定距離に近く、第1光源ギャップと第2光源ギャップとの差が小さい場合がある。この場合には、第1光源の光の強度と第2光源の光の強度とを互いに等しくすることにより、光により硬化した液体の状態の均一化を図ることができる。
【0073】
印刷装置11は、硬化装置10と、液体を印刷媒体Aに吐出可能な複数のノズル21を有するヘッド20を備える。制御装置60は、ノズル21と印刷媒体AとのノズルギャップGnが第3距離未満のときは、ノズル21から液体を吐出させ、光源31から印刷媒体Aに光を照射させ、ノズルギャップGnが第3距離以上のときは、ノズル21から液体を吐出させず、光源31から印刷媒体Aに光を照射させない。
【0074】
例えば、湾曲した印刷媒体Aの端ではノズルギャップGnが非常に大きいため、このような部分に液体を吐出すると、液体が垂れ落ちることがある。このため、このような部分には液体を吐出せずに、光を照射しないことにより、電力を低減しつつ、付着液体に起因した画質の低下を抑制することができる。
【0075】
印刷装置11では、ヘッド20は、ノズル21が開口するノズル面24aを有する。制御装置60は、ノズルギャップGnが第3距離未満のときに、印刷媒体Aのうち、ノズル面24aに対する角度θが所定角度以上である領域に対応するノズル21から液体を吐出させず、領域に対応する光源31から印刷媒体Aに光を照射させない。
【0076】
ノズルギャップGnが第3距離未満であっても、印刷媒体Aの傾斜が大きい場合には、液体を吐出しても、液体が垂れ落ちることがある。このため、このような部分には液体を吐出せずに、光を照射しないことにより、電力を低減しつつ、付着液体に起因した画質の低下を抑制することができる。
【0077】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置11では、第3距離は、印刷媒体Aに基づいて設定される。例えば、印刷媒体Aの素材及び色などの種類に応じて、印刷媒体Aへの液体の付着し易さ、及び、印刷媒体A上の液体が硬化する照度などが異なり、第3距離が変化する。
【0078】
このため、印刷媒体Aの種類と第3距離との対応関係が記憶部62に予め記憶されている。制御装置60は、印刷媒体Aの種類を記憶部62又は外部機器などから取得し、所定の対応関係に基づいて印刷媒体Aの種類に応じた第3距離を取得する。そして、制御装置60は、例えば、
図6のステップS3において、ノズルギャップGnが、取得した第3距離未満か否かをノズル21毎に判定する。
【0079】
<変形例2>
変形例2に係る硬化装置10は、印刷媒体Aと光照射部30とを、印刷媒体A及び光照射部30が並ぶ方向と直交する移動方向において相対的に移動させる移動装置40を備えている。制御装置60は、印刷媒体Aと光照射部30とを移動方向に相対的に移動させながら、光源ギャップGiが第1距離のときに比べて、光源ギャップGiが第2距離のときは、光源31の光の強度を大きくするように光源31を制御する。
【0080】
例えば、
図9に示すように、印刷媒体Aが左右方向において凹凸を有する場合、ヘッドユニット13を移動装置40により左右方向に移動したとき、光源31と印刷媒体Aとの間隔である光源ギャップGiが凹凸に応じて変化する。このような場合も、制御装置60は、ヘッドユニット13を左右方向に移動させながら、光源ギャップGiが第1距離のときに比べて、光源ギャップGiが第1距離よりも大きい第2距離のときは、光源31の光の強度を大きくするように光源31を制御する。これにより、コスト上昇を抑えつつ、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。
【0081】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る印刷装置11は、
図10(a)~
図10(c)に示すように、硬化装置10と、液体を印刷媒体Aに吐出可能なヘッド20(
図1)と、を備えている。この硬化装置10は、印刷媒体A上の液体を硬化させる光を照射する光源31を有する光照射部30と、印刷媒体Aと光源31との間において光源31からの光が透過するレンズ33と、制御装置60(
図5)と、を備えている。制御装置60は、光源31とレンズ33とが並ぶ第3方向においてレンズ33からの光の集光点Fと印刷媒体Aとの集光点ギャップGfが第1間隔のときに比べて、集光点ギャップGfが第1間隔よりも大きい第2間隔のときは、光源31の光の強度を大きくするように光源31を制御する。
【0082】
光照射部30の複数(例えば、全て)の光源31を覆うように、光照射部30と印刷媒体Aとの間にレンズ33が設けられている。レンズ33は、例えば、凸レンズであって、その軸は上下方向に延び、例えば、光源31から放射される光の光軸に平行である。なお、光照射部30の複数の光源31について、1つの光源31に対して1つのレンズ33が設けられていてもよい。また、光照射部30に対して複数のレンズ33が設けられており、光照射部30の複数の光源31毎に1つのレンズ33が配置されていてもよい。
【0083】
光源31からの光は、レンズ33を通過して集光点Fにて集光する。上下方向におけるレンズ33からの距離(mm)をzとし、集光点距離(mm)をz0とし、集光点Fでの光の照度(mW/cm2)をI0とする場合、距離zの位置における照度I(z)は、下記の式で表される。なお、下記式におけるk(i)及びn(i)は、所定の係数である。
I(z)=I0×(1-Σk(i)*|z-z0|^n(i))
【0084】
上記式の通り、レンズ33の集光点Fで光の照度が最も大きくなり、上下方向におけるレンズ33の集光点Fと印刷媒体Aとの集光点ギャップGfが大きくなるほど、印刷媒体Aにおける光の照度は小さくなる。
図10(b)の例では、印刷媒体Aの表面において光の集光点Fがあり、レンズ33と印刷媒体Aとの間の距離zであるレンズギャップは集光点距離z0と等しいため、レンズギャップzと集光点距離z0との差である集光点ギャップGfが0である。ここで、例えば、レンズギャップz=10(mm)の印刷媒体Aにおける照度が5(mW/cm
2)とする。
【0085】
図10(a)の例では、印刷媒体Aの表面が光の集光点Fよりも上方にあり、レンズギャップzが集光点距離z0よりも小さい。ここで、例えば、
図10(b)の場合と光源31の光の強度が等しいとき、レンズギャップz=8(mm)の印刷媒体Aにおける照度が4.6(mW/cm
2)である。
【0086】
図10(c)の例では、印刷媒体Aの表面が光の集光点Fよりも下方にあり、レンズギャップzが集光点距離z0よりも大きい。ここで、例えば、
図10(b)の場合と光源31の光の強度が等しいとき、レンズギャップz=16(mm)の印刷媒体Aにおける照度が1.4(mW/cm
2)である。
【0087】
この場合、
図10(a)の例における集光点ギャップGfが2(mm)であり、例えば、所定間隔未満の第1間隔である。これに対し、
図10(c)の例における集光点ギャップGfが6(mm)で、例えば、所定間隔以上の第2間隔である。制御装置60は、
図10(a)の集光点ギャップGfが第1間隔のときに比べて、
図10(c)の集光点Fギャップが第1間隔よりも大きい第2間隔のときは、光源31の光の強度を大きくするように光源31を制御する。これにより、印刷媒体Aにおける光の照度が均一化するため、印刷媒体A上の液体が光により硬化する状態が一様になり、印刷媒体Aの形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる。また、光源31の制御によるため、コスト上昇を抑制することができる。
【0088】
<その他の変形例>
上記全ての実施の形態及び変形例において、ヘッド20から吐出された液体が印刷媒体Aに着弾する範囲よりも、光照射部30から照射された光の印刷媒体Aにおける範囲が大きくなるようにしてもよい。すなわち、印刷媒体Aにおける照射範囲の中央では複数の光源31の光が重なり光の照度が高い一方、印刷媒体Aにおける照射範囲の端では光源31の光の重なりがない又は少なく光の照度が低い。これに対し、印刷媒体Aにおいて液体の着弾範囲よりも光の照射範囲を大きくすることにより、照度が低い光の照射範囲の端が液体の着弾範囲の端よりも外側に位置するため、光の照射範囲のうち液体の着弾範囲と重なる範囲における光の照度の均一化を図ることができる。
【0089】
例えば、ヘッド20におけるノズル21の配置範囲を光照射部30における光源31の配置範囲よりも広くしてもよい。この場合、
図4に示すように、前後方向に並ぶ複数のノズル21の配置範囲と前後方向に並ぶ複数の光源31の配置範囲とは互いに等しく範囲Cである。これに対して、前後方向において光源31の配置範囲をノズル21の配置範囲よりも広くしてもよい。この場合、前後方向に並ぶ光源31の数を前後方向に並ぶノズル21の数よりも多くしてもよい。これにより、印刷媒体Aでは前後方向において、複数のノズル21から液体が着弾する着弾範囲よりも、複数の光源31から光が照射される照射範囲が広くなる。このため、前後方向における着弾範囲の端よりも外側に照射範囲の端が配置され、光の照射範囲のうち液体の着弾範囲と重なる範囲における光の照度の均一化が図られる。
【0090】
また、制御装置60は、ヘッド20において複数のノズル21のうち一部のノズル21から液体を吐出する場合、そのノズル21に対応する光源31及び、その光源31の周囲に配置された1つ又は複数の光源31から光を照射させてもよい。これにより、印刷媒体Aにおいて光の照射範囲は液体の着弾範囲に重なり液体の着弾範囲よりも大きくなるため、光の照射範囲のうち液体の着弾範囲と重なる範囲における光の照度の均一化が図られる。
【0091】
さらに、制御装置60は、光源31と印刷媒体Aとの間隔である光源ギャップGiが第2距離となる場合、その光源31に対応するノズル21の印刷媒体Aにおける光の着弾範囲よりも光の照射範囲が大きくなるように光源31を制御してもよい。この場合、制御装置60は、光源ギャップGiが第2距離と大きい場合に、ノズル21に対応する光源31及び、その光源31の周囲に配置された1つ又は複数の光源31から光を照射させる。このような場合であっても、印刷媒体Aにおいて光の照射範囲は液体の着弾範囲に重なり液体の着弾範囲よりも大きくなるため、液体の硬化に十分な光を照射することができる。
【0092】
上記全ての実施の形態及び変形例では、移動装置40は、左右方向において、印刷媒体Aを移動させずに、印刷媒体Aに対してヘッド20を移動させた。これに対し、移動装置40は、左右方向において、ヘッド20を移動させずに、ヘッド20に対して印刷媒体Aを移動させるように搬送装置50を左右方向に移動させてもよい。
【0093】
上記実施の形態1及びその変形例では、制御装置60は、光源ギャップGiを1つの所定距離に基づいて第1距離又は第2距離であるかを判定した。しかしながら、光源ギャップGiを判定する閾値の距離は1つに限らずに2つ以上であってもよい。
【0094】
例えば、制御装置60は、光源ギャップGiが第1所定距離未満であれば光源ギャップGiを第1距離と判定し、光源ギャップGiが第1所定距離以上であって且つ第1所定距離よりも大きい第2所定距離未満であれば光源ギャップGiを第1距離よりも大きい第2距離と判定し、光源ギャップGiが第2所定距離以上であれば光源ギャップGiを第2距離よりも大きい第3距離と判定してもよい。
【0095】
この場合、制御装置60は、光源ギャップGiが第1距離のときに比べて、光源ギャップGiが第2距離のときの光源31の光の強度を大きくする。また、制御装置60は、光源ギャップGiが第2距離のときに比べて、光源ギャップGiが第3距離のときの光源31の光の強度を大きくするように光源31を制御する。
【0096】
このように、光源ギャップGiの閾値を増やすほど、光源ギャップGiに応じた光の強度の差が小さくなり、印刷媒体Aにおける光の照度がさらに均一化される。よって、印刷媒体Aにおいて光により硬化された液体の硬さ及び光沢感などの硬化性をさらに一様にすることができる。
【0097】
上記実施の形態1及びその変形例において、制御装置60は、光源ギャップGiと光源31の光の強度との関係を連続的に判定してもよい。この場合、例えば、光源31は、供給された電力に応じて出射する光の強度が変更可能な発光素子であって、電力が小さいほど光の強度が小さくなってもよい。ここで、制御装置60は、光源ギャップGiが大きくなるほど、光の強度が大きくなるように、光源31を制御する。これにより、光源ギャップGiに応じた光の強度の差がさらに小さくなり、印刷媒体Aにおける光の照度がさらに均一化されて、印刷媒体Aにおいて光により硬化された液体の硬化性をさらに一様にすることができる。
【0098】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る硬化装置及び印刷装置は、コスト上昇を抑えつつ、印刷媒体の形状に起因する印刷画質の低下を抑制することができる硬化装置及び印刷装置等として有用である。
【符号の説明】
【0100】
10 :硬化装置
11 :印刷装置
20 :ヘッド
21 :ノズル
30 :光照射部
31 :光源
40 :移動装置
42 :キャリッジ
60 :制御装置
311 :第1光源
312 :第2光源