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  • 特開-支柱の定着構造及び定着方法 図1
  • 特開-支柱の定着構造及び定着方法 図2
  • 特開-支柱の定着構造及び定着方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183585
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】支柱の定着構造及び定着方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20221206BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E04F11/18
E04B1/00 501L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090987
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】横松 竜司
(72)【発明者】
【氏名】田村 充
(72)【発明者】
【氏名】田島 正士
(72)【発明者】
【氏名】原井 直人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大毅
(72)【発明者】
【氏名】上野 利久男
(72)【発明者】
【氏名】越智 健太郎
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301LL13
(57)【要約】
【課題】手摺等の横架材を支持する支柱を平面上の位置調整と高さ調整が自在で、簡潔に、スラブ上に打設される押えコンクリートに定着させる。
【解決手段】基礎ブロック2に、支柱1の断面積より大きい面積を持ち、上下面間を貫通する支持孔2aを形成し、基礎ブロック2の下方寄りに、押えコンクリート7中に配筋される定着筋3が挿通する挿通孔2bを、基礎ブロック2の側面から少なくとも水平の二方向を向けて形成し、挿通孔2bに定着筋3を挿通させた状態で基礎ブロック2をスラブ6上に載置し、支持孔2a内の下方寄りに先行充填材4を充填した状態で、支持孔2a内の先行充填材4上に支柱1を挿入すると共に、後行充填材5を充填して支柱1を基礎ブロック2に定着させ、基礎ブロック2を押えコンクリート7に定着させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱を支持するための支持孔が形成された基礎ブロックをスラブ上に打設される押えコンクリートに定着させた定着構造であり、
前記基礎ブロックの前記支持孔は前記支柱の断面積より大きい面積を持ち、前記基礎ブロックの上面と下面との間を高さ方向に貫通し、
前記基礎ブロックの高さ方向の下方寄りに、前記押えコンクリート中に配筋される定着筋が挿通する挿通孔が、前記基礎ブロックの側面から少なくとも水平の二方向を向いて形成されており、
前記基礎ブロックは前記定着筋が前記挿通孔内に挿通した状態で前記スラブ上に直接、もしくは間接的に載置され、
前記支持孔内の下方寄りに先行充填材が充填された状態で、前記支持孔内の前記先行充填材上に前記支柱が挿入されると共に、後行充填材が充填されて前記支柱が前記基礎ブロックに定着され、
前記基礎ブロックが前記押えコンクリートに定着されていることを特徴とする支柱の定着構造。
【請求項2】
前記定着筋は前記支持孔を横切りながら、前記挿通孔内に挿通し、前記支持孔内の前記挿通孔より上の位置までに前記先行充填材が充填された状態で、前記支持孔内の前記先行充填材上に前記支柱が挿入されると共に、前記先行充填材上に前記後行充填材が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の支柱の定着構造。
【請求項3】
支柱を支持するための支持孔が形成された基礎ブロックをスラブ上に打設される押えコンクリートに定着させる定着方法であり、
前記基礎ブロックの前記支持孔は前記支柱の断面積より大きい面積を持ち、前記基礎ブロックの上面と下面との間を高さ方向に貫通し、
前記基礎ブロックの高さ方向の下方寄りに、前記押えコンクリート中に配筋される定着筋が挿通する挿通孔が、前記基礎ブロックの側面から少なくとも水平の二方向を向いて形成されており、
前記定着筋を前記挿通孔内に挿通させた状態で前記基礎ブロックを前記スラブ上に直接、もしくは間接的に載置する工程と、
前記支持孔内の下方寄りに先行充填材を充填する工程と、
前記支持孔内に前記支柱を挿入すると共に、後行充填材を充填して前記支柱を前記基礎ブロックに定着させる工程と、
前記スラブ上に前記押えコンクリートを打設する工程とを含み、
前記基礎ブロックを前記押えコンクリートに定着させることを特徴とする支柱の定着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手摺や欄干等の横架材を支持する支柱をスラブ上に打設される押えコンクリートに定着させた支柱の定着構造、及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手摺等の横架材を例えば地上に設置する場合、地中に形成した削孔内に横架材を支持する支柱を挿入し、削孔の底面に敷設された砕石等上で支柱を位置決めした後、削孔内にコンクリートを打設し、図3に示すように支柱を地盤に定着させる方法がある。この場合のコンクリートには既製のコンクリートブロックが使用されることもある。
【0003】
一方、横架材を屋根スラブ等のスラブ上に設置するには、支柱をスラブ上に設置し、定着させることが必要になる。支柱をスラブ上に設置し、定着させる作業を単純化させる方法として、支柱の下端部にコンクリートブロックを一体化させておき、コンクリートブロックをスラブ上に載置し、スラブ上に打設される押えコンクリート中に埋設する方法がある(特許文献1参照)。
【0004】
この方法では各側面から押えコンクリート中に埋設される差し筋(定着筋)を突設したコンクリートブロックがスラブ上に設置され、差し筋が埋設される厚さの押えコンクリートが打設されることで、コンクリートブロックが押えコンクリート中に定着される。
【0005】
この例では、差し筋がコンクリートブロックを貫通せず、コンクリートブロックの側面(表面)側から接続されていることから(図2)、コンクリートブロックの側面から形成された孔内に差し筋をあと施工アンカーの要領で接続しなければならないと考えられるため、差し筋付きコンクリートブロックの製作性に難がある。
【0006】
特許文献1の支柱に相当し得るスリーブが挿通可能な開口を有するコンクリートブロックを後から打設されるコンクリート中に埋設する目的で、コンクリートブロックの側面から打設コンクリート側へ張り出す鉄筋を突設しておく方法もある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-255007号公報(請求項1、段落0009~0014、図1図2
【特許文献2】特開平1-165852号公報(公報第2頁下左欄第16行~第3頁上左欄第20行、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
只、特許文献2ではスリーブは主にコンクリートブロックの下方と外部の空間を連続させるための役目を担うため、コンクリートブロックに対する平面上の位置調整と高さ方向のレベル調整は可能な状態にない。
【0009】
例えば特許文献2ではスリーブの下端が支保工上に載る型枠の上面に突き当たることで、位置決めされるため、コンクリートブロックに対する直接の高さ調整が難しい。またスリーブは開口の内周面に沿って挿入されるため、平面上の位置が一義的に定まり、水平方向の位置調整が利かない。
【0010】
コンクリートブロックに対する高さ調整ができないことは、コンクリートブロックの設置面であるスラブ天端面に例えば水勾配があるか、不陸があるような場合に、コンクリートブロックに対する高さと位置の調整だけでは、スリーブが支柱である場合に、支柱が支持する横架材を水平に架設することができないことを意味する。
【0011】
本発明は上記背景より、横架材を支持する支柱を平面上の位置調整と高さ調整が自在で、簡潔に押えコンクリート中に定着させることが可能な支柱の定着構造及び定着方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の支柱の定着構造は、支柱を支持するための支持孔が形成された基礎ブロックをスラブ上に打設される押えコンクリートに定着させた定着構造であり、
前記基礎ブロックの前記支持孔は前記支柱の断面積より大きい面積を持ち、前記基礎ブロックの上面と下面との間を高さ方向に貫通し、
前記基礎ブロックの高さ方向の下方寄りに、前記押えコンクリート中に配筋される定着筋が挿通する挿通孔が、前記基礎ブロックの側面から少なくとも水平の二方向を向いて形成されており、
前記基礎ブロックが、前記定着筋が前記挿通孔内に挿通した状態で前記スラブ上に直接、もしくは間接的に載置され、前記支持孔内の下方寄りに先行充填材が充填された状態で、前記支持孔内の前記先行充填材上に前記支柱が挿入されると共に、後行充填材が充填されて前記支柱が前記基礎ブロックに定着され、前記基礎ブロックが前記押えコンクリートに定着されていることを構成要件とする。
【0013】
「基礎ブロックの支持孔は支柱の断面積より大きい面積を持ち」とは、基礎ブロックの支持孔の、軸方向に直交する方向の面積が、支柱の軸方向に直交する断面積より大きいことを言う。このことは図1に示すように支持孔2a内の支柱1の下方にモルタルや接着剤等の硬化性の先行充填材4が充填可能であり、支持孔2a内に支柱1が軸方向に挿入されたときに、支持孔2a内の支柱1周りにモルタル等の後行充填材5が充填可能であることを意味する。支柱1は支持孔2a内への挿入と先行充填材4上への載置、及び支持孔2a内への後行充填材5の充填と硬化によって基礎ブロック2に定着される。
【0014】
支持孔2a内に充填材4、5が充填可能であることは、支持孔2a内に支柱1が挿入されたときに、支柱1の水平方向の位置と高さが、支柱1の支持孔2a内への挿入のみによって一義的に定まることがなく、先行充填材4の天端の高さで支柱1の高さが調整可能であることを意味する。また支柱1の外周に後行充填材5の充填可能な空間が確保されることで、支柱1の下端が先行充填材4の天端面上で水平二方向に移動可能であるため、先行充填材4の天端上での支柱1の水平方向の位置調整も可能である意味もある。
【0015】
基礎ブロック2に対する支柱1の水平方向と高さ方向の位置調整が可能であることで、上記のようにスラブ6天端面に水勾配や不陸があるような場合にも、支柱1が支持する手摺等の横架材の位置と高さに合わせて支柱1を基礎ブロック2に支持させ、定着させることができる。結果として、スラブ6天端面の状況に拘わらず、横架材を水平に架設することが可能になる。
【0016】
特に支柱1は支持孔2a内の下方寄りに先行充填材4が充填された状態で、支持孔2a内の先行充填材4上に載置されることで、支柱1(頂部)の高さ調整をしながら、先行充填材4の天端面を調整し、先行充填材4の硬化後にはその天端面上での位置調整が可能である。このため、支柱1の水平方向と高さ方向の位置調整を詳細にすることが可能であり、支柱1の基礎ブロック2への調整上の誤差が生じにくい。併せて充填材は支柱1が載置される先行充填材4と後から充填される後行充填材5とに分割されて充填されることで、支柱1の位置調整後に支柱1周りに後行充填材5を充填して基礎ブロック2に定着させることができるため、位置調整後の支柱1の安定性が確保され易い。
【0017】
基礎ブロック2は定着筋3が挿通孔2b内に挿通した状態でスラブ6上に直接、もしくは間接的に載置され、基礎ブロック2の外周面から外部に突出した定着筋3が押えコンクリート7中に埋設され、定着されることで、押えコンクリート7に定着される。「基礎ブロックがスラブ上に間接的に載置され」とは、基礎ブロック2がスラブ6上に敷設された防水層8や断熱材9等の上に載置される場合があることを言う。基礎ブロック2が押えコンクリート7に定着されることで、支柱1が押えコンクリート7に間接的に定着される。
【0018】
「定着筋3が挿通孔2b内に挿通する」とは、定着筋3が挿通孔2b内に通されることであり、必ずしも定着筋3が基礎ブロック2を貫通するように挿通孔2bが基礎ブロック2に形成される必要はない。言い換えれば、挿通孔2bは基礎ブロック2の対向する外周面(側面)間を貫通するように形成されるとは限らず、基礎ブロック2の外周面から基礎ブロック2の内部に留まる位置まで形成される場合もある。その場合、定着筋3は基礎ブロック2に外周面側から挿通し、接続される形になる。
【0019】
「挿通孔が基礎ブロックの側面から少なくとも水平の二方向を向いて形成され」とは、定着筋3が平面上、少なくとも二方向を向いて基礎ブロック2に接続されることであり、押えコンクリート7中に少なくとも二方向を向いて配筋されることである。このことには、基礎ブロック2がスラブ6上に設置され、押えコンクリート7中に埋設された後の水平二方向の転倒に対する安定性を確保する意味がある。二方向は必ずしも直交する方向とは限らない。
【0020】
基礎ブロック2の挿通孔2bは、基礎ブロック2の上面と下面との間を高さ方向に貫通する支持孔2aに必ずしも面する必要はないが、支持孔2aに面するように、すなわち支持孔2aを横切るように形成された場合には(請求項2)、定着筋3が挿通孔2b内に充填される先行充填材4中にも定着されるため、押えコンクリート7と先行充填材4との一体性が確保され易い。
【0021】
この場合、定着筋3は基礎ブロック2に接続されながら、押えコンクリート7中と先行充填材4中に定着されるため、先行充填材4と、基礎ブロック2及び押えコンクリート7と一体性が高まり、先行充填材4の基礎ブロック2からの離脱が防止され易くなる。先行充填材4は支持孔2a内の挿通孔2bより上の位置までに充填された状態で、支持孔2a内の先行充填材4上に支柱1が挿入されると共に、先行充填材4上に後行充填材5が充填される(請求項2)。
【0022】
請求項1、2に記載の支柱の定着構造は、定着筋3を挿通孔2b内に挿通させた状態で基礎ブロック2をスラブ6上に直接、もしくは間接的に載置する工程と、支持孔2a内の下方寄りに先行充填材4を充填する工程と、支持孔2a内に支柱1を挿入すると共に、後行充填材5を充填して支柱1を基礎ブロック2に定着させる工程と、スラブ6上に押えコンクリート7を打設する工程とを経て完成する(請求項3)。
【0023】
基礎ブロック2をスラブ6上への載置後、押えコンクリート7の打設時にコンクリートが基礎ブロック2の挿通孔2b内に入り込むこともあるが、基礎ブロック2の設置前に挿通孔2b内にモルタル等の充填材を充填しておくこともある。
【0024】
後行充填材5の充填工程と押えコンクリート7の打設工程は独立し、前後する場合と並行する場合がある。定着筋3が支持孔2aを横切らない場合には、先行充填材4の充填工程は基礎ブロック2のスラブ6上への載置前になる場合もある。
【発明の効果】
【0025】
支柱を支持し、押えコンクリートに定着される基礎ブロックの支持孔に支柱の断面積より大きい面積を与えているため、支持孔内に支柱を軸方向に挿入したときに支持孔内の支柱周りに、支柱の水平方向の位置調整と高さ調整の後に支柱を基礎ブロックに固定するための充填材を充填することができる。基礎ブロックに対する支柱の位置調整が可能であることで、スラブ天端面に水勾配や不陸があるあるような場合にも、横架材の位置と高さに合わせて支柱を基礎ブロックに支持させ、定着させることができるため、横架材を水平に架設することができる。
【0026】
特に支柱を支持孔内の下方寄りに先行充填材が充填された状態で、支持孔内の先行充填材上に挿入するため、支柱の水平方向と高さ方向の位置調整を詳細にすることができ、支柱の基礎ブロックへの調整上の誤差が生じにくい。また充填材を支柱が載置される先行充填材と後から充填される後行充填材とに分割して充填するため、支柱の位置調整後に支柱周りに後行充填材を充填して基礎ブロックに定着させることができ、位置調整後の支柱の安定性を確保し易い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】定着筋が接続された基礎ブロックをスラブ上の断熱材上に載置した後、支持孔内に支柱を挿入し、断熱材上に押えコンクリートを打設した様子を示した縦断面図である。
図2】(a)は図1に示す基礎ブロックを示した平面図、(b)は(a)のx-x線断面図、(c)は(a)のy-y線断面図である。
図3】支柱を地盤に定着させる従来の方法を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は手摺等の横架材を支持する支柱1を支持するための支持孔2aが形成された基礎ブロック2をスラブ6上に打設される押えコンクリート7に定着させ、支柱1を基礎ブロック2に固定した様子を示す。
【0029】
基礎ブロック2の支持孔2aは基礎ブロック2の軸方向(高さ方向)に直交する断面で見たとき、支柱1の軸方向に直交する断面積より大きい面積(平面積)を持ち、基礎ブロック2の上面と下面との間を高さ方向に貫通する。支持孔2aの面積は図2-(a)に示すように基礎ブロック2を平面で見たときの、支持孔2aの内周面が包囲する領域の面積を指す。
【0030】
支持孔2aの面積は軸方向の全長に亘って支柱1の断面積より大きく、支持孔2a内に軸方向に支柱1が挿入されたときに、支柱1の周囲と支持孔2aの内周面との間に空隙が確保され、支柱1の周囲にモルタル等の後行充填材5が充填可能な大きさを持つ。基礎ブロック2は基本的に鉄筋コンクリートで製作される。「支柱1の断面積」は支柱1が中空断面か中実断面かを問わず、支柱1の軸方向に直交する断面上の外形線が包囲する領域の面積を指す。支柱1の断面積は軸方向に一定とは限らない。
【0031】
支持孔2aの断面形状は支柱1の断面形状に応じて決まるが、特に制限はない。図面では支持孔2a内に支柱1を挿入した状態での後行充填材5の充填性を良好にするために、基礎ブロック2の上面側の支持孔2aの面積を、下面側の支持孔2aの面積より大きく形成し、面積が基礎ブロック2の上面側から下面側へかけて次第に小さくなるようにしている。
【0032】
図1に示すように支持孔2aの下方寄りには、支柱1の下端が載置される先行充填材4が後行充填材5に先行して充填される。この先行充填材4が支持孔2a内に充填された後の先行充填材4の天端の面積(平面積)は支柱1の下端の面積、または後述の定着板1aが接合された場合の定着板1aの面積より大きく、支柱1は先行充填材4の天端上で水平方向に位置調整可能になる。先行充填材4の天端の面積は先行充填材4の天端位置における支持孔2aの平面積でもある。
【0033】
基礎ブロック2の高さ方向(軸方向)の下方寄りには、図2に示すように押えコンクリート7中に配筋される定着筋3が挿通する挿通孔2bが、基礎ブロック2の外周面(側面)から少なくとも水平の二方向を向いて形成されている。二方向は主に直交する方向であるが、必ずしもその必要はない。直交する場合、挿通孔2bは基本的に基礎ブロック2の対向する方向の外周面間を貫通するように形成されるが、定着筋3は基礎ブロック2に接続されていればよいため、基礎ブロック2を貫通しないこともある。
【0034】
挿通孔2bが基礎ブロック2の対向する方向の外周面間を貫通する場合、挿通孔2bは図2-(a)に示すように支持孔2aに面するように形成される場合と面しない場合がある。挿通孔2bが支持孔2aに面するように形成される場合には、定着筋3が支持孔2aを横切り、支持孔2aに露出するため、支持孔2a内に充填されるモルタル等の先行充填材4中に定着筋3が埋設され、先行充填材4と基礎ブロック2、及び押えコンクリート7との一体性が高まる利点がある。挿通孔2bが支持孔2aに面しない場合とは、平面上、支持孔2aを通らない位置に形成されることを言う。
【0035】
図2では水平二方向の内、一方向に1本の定着筋3を配筋し、他方向に2本の定着筋3、3を水平方向に並列させているが、各方向の定着筋3の配筋数は任意であり、鉛直方向に並列させる場合もある。図2ではまた、1本の定着筋3が配筋された方向の、基礎ブロック2の外周面に溝状の凹部2cを形成し、基礎ブロック2の設置後に打設される押えコンクリート7との付着力を増し、押えコンクリート7への定着効果を補っている。定着筋3は基礎ブロック2を押えコンクリート7に定着させる役目を持つが、押えコンクリート7中に配筋される鉄筋を兼ねることもある。
【0036】
スラブ6上への基礎ブロック2の設置から基礎ブロック2への支柱1の定着までの作業は以下の要領で行われる。図1はスラブ6が屋根スラブである場合の施工例を示しているため、スラブ6の天端上に防水層8が敷設され、防水層8上に断熱材(断熱層)9が敷設されているが、スラブ6の部位によってはこれらは省略されることもある。
【0037】
基礎ブロック2は定着筋3を挿通孔2b内に挿通させた状態で、断熱材9上に載置される。定着筋3を挿通させた状態とは、挿通孔2bが基礎ブロック2を貫通している場合と、基礎ブロック2を貫通していない場合を含む。防水層8や断熱材9がない場合、基礎ブロック2はスラブ6上に直接、載置される。
【0038】
定着筋3が支持孔2aを横切る場合、基礎ブロック1のスラブ6上への載置後、支持孔2a内に先行充填材4が充填される。定着筋3が支持孔2aを横切らない場合には、基礎ブロック2の設置前に支持孔2a内に先行充填材4を充填しておくこともある。先行充填材4の充填後、支持孔2a内に支柱1が挿入されると共に、後行充填材5が充填され、支柱1が基礎ブロック2に定着させられる。
【0039】
図1では支柱1を後行充填材5中に埋設したときの定着効果を高める目的で、支柱1の下端に、支柱1の外周面(側面)から外周側へ張り出す定着板1aを接合する等により一体化させ、定着板1aを後行充填材5中に埋設し、支柱1の引き抜きに対する安定性を確保している。定着板1aは支柱1の外周面から水平二方向に張り出す面積を持つ。
【0040】
図1ではまた、支柱1全体を基礎ブロック2に直接、定着される下部支柱11と、下部支柱11の上端に接続される上部支柱12とに2分割し、それぞれの上端と下端に一体化した継手板11a、12aを互いに接合して1本の支柱1を構成しているが、支柱1の構成方法は任意である。
【0041】
支柱1の基礎ブロック2への定着後、あるいは定着作業と並行してスラブ6上の断熱材9上に押えコンクリート7が打設され、押えコンクリート7中に定着筋3が埋設されて基礎ブロック2が押えコンクリート7中に定着される。同時に、支柱1が押えコンクリート7に定着される。
【符号の説明】
【0042】
1……支柱、1a……定着板、11……下部支柱、11a……継手板、12……上部支柱、12a……継手板、
2……基礎ブロック、2a……支持孔、2b……挿通孔、2c……凹部、
3……定着筋、4……先行充填材、5……後行充填材、
6……スラブ、7……押えコンクリート、
8……防水層、9……断熱材。
図1
図2
図3