(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183595
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】接近経路設定システム及び地上支援装置
(51)【国際特許分類】
B64F 1/32 20060101AFI20221206BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20221206BHJP
【FI】
B64F1/32
B64F1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091002
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 いずみ
(72)【発明者】
【氏名】水谷 友哉
(57)【要約】
【課題】航空機の作業用出入口の高さが変位したとしても、地上支援装置に設けられた接続部分の高さの調整を容易に行うことができる。
【解決手段】接近経路設定システム24は、機種情報に含まれる基準高さの位置情報に基づいて、GSE13の接続部分46の高さに対する作業用出入口14の鉛直方向の相対高さ位置を予測する出入口位置予測部241と、相対高さ位置の予測時における航空機100の積載物の重量である予測時重量を取得する重量取得部245と、出入口位置予測部によって予測された相対高さ位置に基づいて、接続部分46を高さ調整によって作業用出入口14まで接近させる接近経路を設定する接近経路設定部243と、を備えている。出入口位置予測部241は、基準重量と予測時重量とに基づいて、相対高さ位置の予測値を補正する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の作業用出入口に接続または接近可能且つ高さを調整可能であって、地上支援装置に設けられた接続部分を、前記作業用出入口に接近させる接近経路を設定する接近経路設定システムであって、
前記航空機の積載物の重量が所定の基準重量であるときの前記作業用出入口の高さである基準高さの位置情報を含む前記航空機の機種情報を取得する機種情報取得部と、
前記基準高さの位置情報に基づいて、前記地上支援装置の接続部分の高さに対する前記作業用出入口の鉛直方向の相対高さ位置を予測する出入口位置予測部と、
前記出入口位置予測部による前記相対高さ位置の予測時における前記航空機の積載物の重量である予測時重量を取得する重量取得部と、
前記出入口位置予測部によって予測された前記相対高さ位置に基づいて、前記接続部分を高さ調整によって前記作業用出入口まで接近させる接近経路を設定する接近経路設定部と、を備え、
前記出入口位置予測部は、
前記基準重量と前記予測時重量とに基づいて、前記作業用出入口の前記相対高さ位置の予測値を補正することを特徴とする接近経路設定システム。
【請求項2】
前記地上支援装置の現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記地上支援装置の前記現在位置に対する前記作業用出入口の水平方向の相対水平位置を検出する出入口位置検出部と、をさらに備え、
前記接近経路設定部は、前記出入口位置検出部によって検出された前記相対水平位置に基づいて、前記地上支援装置を移動させることによって前記接続部分を前記作業用出入口まで接近させる接近経路を設定することを特徴とする請求項1に記載の接近経路設定システム。
【請求項3】
前記接近経路設定部によって設定された前記接近経路に沿って前記地上支援装置及び前記接続部分を前記作業用出入口まで接近させる接近動作のシミュレーションを、前記地上支援装置の接近動作が実際に行われる前に予め実行するシミュレーション部をさらに備え、
前記シミュレーション部によって実行されたシミュレーションによって前記地上支援装置と前記航空機とが接触する可能性があると判断された場合、前記接近経路設定部は前記接近経路の設定を再度実行することを特徴とする請求項2に記載の接近経路設定システム。
【請求項4】
前記出入口位置予測部による前記相対高さ位置の予測時における前記航空機の基準面に対する傾き量である予測時傾き量を取得する傾き取得部をさらに備え、
前記出入口位置予測部は、
前記予測時傾き量を用いて、前記作業用出入口の前記鉛直方向の前記相対高さ位置の予測値を補正することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の接近経路設定システム。
【請求項5】
(作業進捗を取得)
前記地上支援装置による作業スケジュールであって、前記地上支援装置によって前記航空機に搬入される積載物の搬入重量と、前記航空機から搬出される積載物の搬出重量と、前記航空機内における積載物の積載位置とに関する情報を含む作業スケジュールを取得するスケジュール取得部と、
前記地上支援装置による前記作業スケジュールの進捗状況に関する作業進捗データを取得する作業進捗データ取得部と、をさらに備え、
前記重量取得部は、前記作業スケジュールと前記作業進捗データとの比較に基づいて算出された前記相対高さ位置の予測時における前記搬入重量と前記搬出重量との差から、前記予測時重量を算出し、
前記傾き取得部は、前記作業スケジュールと前記作業進捗データとの比較に基づいて算出された前記相対高さ位置の予測時における前記搬入重量、前記搬出重量及び前記積載位置から、前記予測時傾き量を算出することを特徴とする請求項4に記載の接近経路設定システム。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の接近経路設定システムと通信可能な地上支援装置であって、
前記接近経路設定システムによって設定された前記接近経路を受信する通信部と、
現在の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記航空機の作業用出入口に接続または接近可能であって、高さを調整可能な接続部分と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記位置情報取得部によって取得された前記現在の位置情報と、前記接近経路とに基づいて、前記接続部分の高さの調整を行うことを特徴とする地上支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の作業用出入口に接続または接近可能且つ高さを調整可能であって、地上支援装置に設けられた接続部分を、前記作業用出入口に接近させる接近経路を設定する接近経路設定システム及び地上支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空港には、航空機に対する地上支援を行うための複数の地上支援装置が配備されている。地上支援装置はGSE(Ground Support Equipment)と呼ばれており、GSEにはハイリフトローダ、ベルトローダ、トーイングトラクタ、給油車、空港電源車、パッセンジャーステップ等の様々な種類がある。従来、航空機への地上支援を行う際には、作業者による手動操作によってGSEを航空機へ接近させていた。
【0003】
GSEは、エンジン式と電動式のものがある。特許文献1には、ベルトコンベアの荷役動作及び走行を電動で行うことができる電動式ベルトローダについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
航空機には、貨物の搬出入口、乗客の乗降口、給油口、電源口等の作業用出入口がある。GSEには作業用出入口に接続可能な接続部分が設けられており、作業用出入口と接続された接続部分を介して航空機内への貨物や乗客などの搬入及び搬出が行われる。GSEの接続部分を作業用出入口に接続させる際は、航空機の損傷を避けるためにGSEと航空機との接触を回避しつつ、対応する作業用出入口にGSEの接続部分を接近させる。しかしながら、作業用出入口の位置は機種ごとに異なるため、GSEを操作する作業者は機種ごとの作業用出入口の位置を覚えておくか、又は、その都度確認するなどして、GSEを操作する必要がある。
【0006】
また、航空機への乗客の乗降、給油、貨物の搬出及び搬入などの地上支援作業が行われると、航空機のタイヤの沈み込み量が変化し、作業用出入口の高さが変位する。GSEを操作する作業者は、他のGSEによって行われた地上支援作業によって作業用出入口の高さの変位がある度に、目視で高さの位置を確認してGSEの接続部分の高さを調整する必要がある。このようなGSEの操作は、作業者にとって非常に困難で手間となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、航空機の作業用出入口の高さが変位したとしても、地上支援装置に設けられた接続部分の高さの調整を容易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の接近経路設定システムは、航空機の作業用出入口に接続または接近可能且つ高さを調整可能であって、地上支援装置に設けられた接続部分を、前記作業用出入口に接近させる接近経路を設定する接近経路設定システムであって、前記航空機の積載物の重量が所定の基準重量であるときの前記作業用出入口の高さである基準高さの位置情報を含む前記航空機の機種情報を取得する機種情報取得部と、前記基準高さの位置情報に基づいて、前記地上支援装置の接続部分の高さに対する前記作業用出入口の鉛直方向の相対高さ位置を予測する出入口位置予測部と、前記出入口位置予測部による前記相対高さ位置の予測時における前記航空機の積載物の重量である予測時重量を取得する重量取得部と、前記出入口位置予測部によって予測された前記相対高さ位置に基づいて、前記接続部分を高さ調整によって前記作業用出入口まで接近させる接近経路を設定する接近経路設定部と、を備え、前記出入口位置予測部は、前記基準重量と前記予測時重量とに基づいて、前記作業用出入口の前記相対高さ位置の予測値を補正することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、基準重量と予測時重量とに基づいて、作業用出入口の鉛直方向の相対高さ位置の予測値を補正している。このため、航空機の積載物の増減に伴って作業用出入口の高さが変位したとしても、当該変位に対応して、接続部分を高さ調整によって作業用出入口に接近させるための正確な接近経路を設定することができる。これにより、航空機の作業用出入口の高さが変位したとしても、地上支援装置に設けられた接続部分の高さの調整を容易に行うことができる。
【0010】
本発明において、接近経路設定システムは、前記地上支援装置の現在位置を取得する現在位置取得部と、前記地上支援装置の前記現在位置に対する前記作業用出入口の水平方向の相対水平位置を検出する出入口位置検出部と、をさらに備え、前記接近経路設定部は、前記出入口位置検出部によって検出された前記相対水平位置に基づいて、前記地上支援装置を移動させることによって前記接続部分を前記作業用出入口まで接近させる接近経路を設定することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、機種ごとに異なる作業用出入口の相対水平位置は、出入口位置検出部によって検出される。そして、検出された相対水平位置に基づいて設定された接近経路に沿って、地上支援装置の接続部分を作業用出入口に接近させることができる。これにより、地上支援装置を作業用出入口に容易に接近させることができる。
【0012】
本発明において、接近経路設定システムは、前記接近経路設定部によって設定された前記接近経路に沿って前記地上支援装置及び前記接続部分を前記作業用出入口まで接近させる接近動作のシミュレーションを、前記地上支援装置の接近動作が実際に行われる前に予め実行するシミュレーション部をさらに備え、前記シミュレーション部によって実行されたシミュレーションによって前記地上支援装置と前記航空機とが接触する可能性があると判断された場合、前記接近経路設定部は前記接近経路の設定を再度実行することが好ましい。
【0013】
本発明によれば、接近経路に沿った地上支援装置及び接続部分の接近動作のシミュレーションを予め行い、航空機と接触する可能性がある場合は接近経路の再設定を行っている。このため、地上支援装置と航空機との接触をより確実に回避しつつ作業用出入口に接近させる接近経路を設定することができる。よって、接近経路の設定後に作業の遅れや装置トラブルなどが発生した場合や、機種情報のミスなどにより接近経路に誤差があった場合でも、地上支援装置と航空機とが接触することを防ぐことができる。
【0014】
本発明において、接近経路設定システムは、前記出入口位置予測部による前記相対高さ位置の予測時における前記航空機の基準面に対する傾き量である予測時傾き量を取得する傾き取得部をさらに備え、前記出入口位置予測部は、前記予測時傾き量を用いて、前記作業用出入口の前記鉛直方向の前記相対高さ位置の予測値を補正することが好ましい。
【0015】
本発明によれば、出入口位置予測部は、航空機の基準面に対する傾き量に基づいて、作業用出入口の鉛直方向の相対高さ位置の予測値を補正している。このため、航空機の積載物の増減などに伴って航空機の基準面に対する傾きが生じたとしても、当該傾きに対応して、接続部分を高さ調整によって作業用出入口に接近させるための正確な接近経路を設定することができる。これにより、航空機の作業用出入口の高さが変位したとしても、地上支援装置に設けられた接続部分の高さの調整をより容易に行うことができる。
【0016】
本発明において、接近経路設定システムは、前記地上支援装置による作業スケジュールであって、前記地上支援装置によって前記航空機に搬入される積載物の搬入重量と、前記航空機から搬出される積載物の搬出重量と、前記航空機内における積載物の積載位置とに関する情報を含む作業スケジュールを取得するスケジュール取得部と、前記地上支援装置による前記作業スケジュールの進捗状況に関する作業進捗データを取得する作業進捗データ取得部と、をさらに備え、前記重量取得部は、前記作業スケジュールと前記作業進捗データとの比較に基づいて算出された前記相対高さ位置の予測時における前記搬入重量と前記搬出重量との差から、前記予測時重量を算出し、前記傾き取得部は、前記作業スケジュールと前記作業進捗データとの比較に基づいて算出された前記相対高さ位置の予測時における前記搬入重量、前記搬出重量及び前記積載位置から、前記予測時傾き量を算出することが好ましい。
【0017】
本発明によれば、作業スケジュールと作業進捗データとの比較に基づいて、相対高さ位置の予測時における航空機の積載物の重量及び航空機の基準面に対する傾き量を算出することができる。このため、航空機の積載物の重量や航空機の傾き量を直接検知するための装置を航空機に別途設けることなく、予測時重量及び予測時傾き量を取得することができる。これにより、システム全体として簡素化でき、低コスト化が実現できる。
【0018】
本発明の地上支援装置は、上記の接近経路設定システムと通信可能な地上支援装置であって、前記接近経路設定システムによって設定された前記接近経路を受信する通信部と、現在の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記航空機の作業用出入口に接続または接近可能であって、高さを調整可能な接続部分と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記位置情報取得部によって取得された前記現在の位置情報と、前記接近経路とに基づいて、前記接続部分の高さの調整を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、上記の接近経路設定システムによって設定された接近経路に基づいて、接続部分の高さの調整は自動で行われる。このため、航空機の作業用出入口の高さが変位したとしても、地上支援装置に設けられた接続部分の高さ調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
航空機の積載物の増減に伴って航空機の作業用出入口の高さが変位したとしても、地上支援装置に設けられた接続部分の高さの調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】本実施形態の空港システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】GSEを航空機の作業用出入口に接近させる際の一連の処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図3に示すフローチャートの続きであって、GSEを航空機の作業用出入口に接近させる際の一連の処理を示すフローチャートである。
【
図5】相対高さ位置の予測が行われるときの一連の処理を示すフローチャートである。
【
図6】GSE及び航空機の作業用出入口を示す概略図である。
【
図7】作業エリアに設定した平面グリッドを示す平面図である。
【
図8】(a)フライトスケジュールの一例を示す表、及び、(b)積載物のリストの一例を示す表である。
【
図9】(a)作業者関連データの一例を示す表、及び、(b)GSE関連データの一例を示す表である。
【
図10】地上支援スケジュールの一例を示す表である。
【
図11】作業者端末に送信される地上支援スケジュールの一例を示す表である。
【
図12】GSEに送信される地上支援スケジュールの一例を示す表である。
【
図13】空港システムによるGSEの運行管理の流れを示すフローチャートである
【
図14】GSEを作業位置まで移動させる際の一連の処理を示すフローチャートである。
【
図15】GSEの作業位置の一例を示す平面図である。
【
図16】GSEの案内経路の一例を示す平面図である。
【
図17】GSEの予約領域の一例を示す平面図である。
【
図18】GSEの照射部が作業用出入口にレーザを照射する様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る接近動作制御システムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は、空港1の設備を簡易的に示す平面図である。
図1に示すように、空港1にはターミナルビル2が設けられている。ターミナルビル2には、複数のゲート3が設けられており、着陸した航空機100は所定のゲート3まで移動して停止する。複数のゲート3には、ボーディングブリッジ4が接続されている。ボーディングブリッジ4は、ゲート3から航空機100に乗客及び乗員を乗降させるための設備である。ボーディングブリッジ4が利用できない場合には、後述のパッセンジャーステップ13eを利用することもある。空港1において航空機100が駐機している間、乗客及び乗員の乗降、貨物及び手荷物の搬出入、燃料の補充、機内外の清掃、機体設備の点検、除氷作業、電源の供給等、各種作業(地上支援作業)が行われる。そして、地上支援作業が完了して準備が整うと、航空機100は空港1に設けられた滑走路(不図示)から離陸する。
【0024】
地上支援作業では、複数のGSE13が使用される。GSEとは、Ground Support Equipmentの略であり、地上支援装置を意味する。GSE13には様々な種類があるが、一例を挙げると、航空機100に給油するための給油車13a、乗客の手荷物を機内に搬出入するベルトローダ13b、航空機100を牽引するトーイングトラクタ13c、貨物を機内に搬出入するハイリフトローダ13d、乗員及び乗客を機内に直接乗降させるためのパッセンジャーステップ13e等がある。給油車13a、ベルトローダ13b、トーイングトラクタ13c、ハイリフトローダ13d、パッセンジャーステップ13eは、空港1内を走行する作業車両である。なお、
図1に示すように、空港1内において、複数のGSE13によって地上支援作業が行われるエリアを作業エリア102と呼ぶ。
【0025】
各GSE13による航空機100への地上支援作業は、航空機100に設けられた各作業用出入口14を介して行われる。作業用出入口14は、例えば、貨物の機内への搬出入が行われる貨物搬出入口(不図示)、手荷物の搬出入が行われる手荷物搬出入口14a(
図6参照)、乗員及び乗客の乗降が行われる乗降口14b(
図6参照)、給油を行うための給油口(不図示)、電源の供給を行うための電源口(不図示)等が挙げられる。そして、各GSE13を、航空機100の損傷を避けるために航空機100との接触を回避しつつ、対応する作業用出入口14に接近させる。例えば、
図6に示すように、ベルトローダ13bを手荷物搬出入口14aに接近させ、パッセンジャーステップ13eを乗降口14bに接近させる。各GSE13には、作業用出入口14に接続または接近可能な接続部分46が設けられている。例えば、ベルトローダ13bの接続部分46bは、手荷物搬出入口14aに接続可能である。パッセンジャーステップ13eの接続部分46eは、乗降口14bに接続または接近可能である。各接続部分46は、鉛直方向に高さ調整が可能である。各GSE13を対応する作業用出入口14に接近させるとともに、接続部分46の高さを調整することで、接続部分46と作業用出入口14とを接続させる。GSE13から航空機100の機内への貨物や手荷物の搬出及び搬入、乗客の乗降などは、作業用出入口14と接続された接続部分46を介して行われる。
【0026】
ここで、各作業用出入口14の位置は、航空機100の機種ごとに異なっている。このため、GSE13を操作する作業者は、機種ごとに異なる各作業用出入口14の位置を覚えておくか、又は、航空機100の作業用出入口14の位置を操作の度に確認するなどして、GSE13を操作する必要がある。また、航空機100への乗客の乗降、給油、貨物の搬出及び搬入などの地上支援作業が行われると、航空機100のタイヤの沈み込み量が変化し、作業用出入口14の高さが変位する。GSE13を操作する作業者は、他のGSE13によって行われた地上支援作業によって作業用出入口14の高さの変位がある度に、目視で高さの位置を確認してGSE13の接続部分46の高さを調整する必要がある。こういったGSE13の操作は、作業者にとって非常に困難で手間となる。そこで、本願発明者らは、これらの課題を解決すべく、GSE13を航空機100の作業用出入口14に容易に接近させるための接近経路設定システムを考案した。以下、この接近経路設定システム24を含む空港システム10について詳細に説明する。
【0027】
(空港システム)
本実施形態の空港システム10は、
図2に示すように、航空管制21と、GSE管制22と、複数のGSE13と、複数の作業者端末15とを含む。GSE管制22は、案内経路設定システム23と、接近経路設定システム24と、を含む。
【0028】
それぞれのGSE13は、通信部41、位置情報取得部42、レーザ照射部43、走行制御部44、ID取得部45、接続部分46を有する。GSE13は、通信部41を介して、GSE管制22と通信可能であり、GSE管制22との間でデータの送受信が可能に構成されている。なお、通信部41は、その他のシステムや端末(他のGSE13、案内経路設定システム23、接近経路設定システム24、作業者端末15など)と通信可能な構成としてもよい。位置情報取得部42は、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)信号を受信して自車の位置情報を取得する。自車の位置情報は、GPS以外の測位方式を用いて取得してもよい。レーザ照射部43は、GSE13の前方にレーザを照射可能な部分である。走行制御部44は、GSE管制22から送られてきた所定の情報や、位置情報取得部42によって取得した自車の位置情報等に基づいて、自車の走行制御を行う。ID取得部45は、後述する作業者端末15に表示される作業者IDや作業者が有するIDカードに付与されている作業者IDを読み取ることができるように構成されている。なお、作業者IDはバーコードやICタグでもよいし、作業者が手入力してもよい。接続部分46は、当該GSE13の対応する作業用出入口14に接続または接近可能であって、高さ調整が可能な部分である。接続部分46の高さ調整は、GSE管制22によって自動で制御されてもよく、作業者の操作によって行われてもよい。GSE13による、航空機100の機内への貨物や乗客などの搬入及び搬出は、作業用出入口14と接続された接続部分46を介して行われる。
【0029】
作業者端末15は、航空機100の地上支援作業を行う作業者が携帯する端末である。本実施形態では、GPSで現在地を特定可能であり、GSE管制22と通信可能なスマートフォンを用いることとする。なお、作業者端末15は、作業者の現在地が確認可能であり、GSE管制22と通信可能であれば、どのような端末を用いてもよい(ガラパゴスケータイ、無線通信機、タブレット端末、スマートグラス、スマートウォッチなどのウェアラブル端末など)。また、作業者端末15は、その他のシステムや端末(他の作業者端末15、GSE13、案内経路設定システム23、接近経路設定システム24など)と通信可能な構成としてもよい。
【0030】
(GSE管制)
現状、GSE13を用いて地上支援作業を行う際には、作業者がフライトスケジュールを確認し、必要なGSE13を手配してから作業に当たっている。しかしながら、作業者がフライトスケジュールの確認からGSE13の手配まで行うのは非常に手間である。また、作業を行うまでの準備が煩雑であり、作業者には多くの経験や知識が求められるため、作業者の大きな負担となっている。さらに、作業者が情報を見落とすなどしてミスが生じれば、フライトスケジュールにも影響が出てしまう。そこで、本実施形態の空港システム10では、空港1におけるGSE13の運行管理において作業者の負担を軽減することを目的としている。
【0031】
GSE管制22は、
図2に示すように、通信部220、スケジュール作成部221、機種情報取得部222、現在位置取得部223を有しており、通信部220を介して、航空管制21、案内経路設定システム23、複数のGSE13及び作業者端末15と通信可能である。スケジュール作成部221は、航空管制21から提供されたフライトスケジュールと、作業者関連データと、GSE関連データとに基づいて、複数のGSE13による地上支援スケジュールを作成する。フライトスケジュールは、エアラインから受信するようにしてもよい。機種情報取得部222は、上述したフライトスケジュールから、GSE13によって地上支援作業が行われる航空機100の機種情報を取得する。現在位置取得部223は、GSE13の位置情報取得部42(前述)から各GSE13の現在位置を取得する。
【0032】
以下に、GSE管制22がスケジュール作成部221で参照するデータを示す。
図8(a)にフライトスケジュールの一例を示す。GSE管制22は、通信部220を介して、フライトスケジュールを航空管制21から受信する。この際、GSE管制22は、受信したフライトスケジュールを
図8(a)のようなデータに加工してもよい。また、フライトスケジュールには
図8(b)のような積載物リストが添付されていることが望ましい。積載物リストは、
図8(a)の各フライト番号ごとに生成され、それぞれの航空機100に積載されている貨物の情報が含まれている。
【0033】
図9(a)に作業者関連データの一例を示す。作業者関連データには、作業者が担当可能な作業内容、運転・使用が可能なGSE13の種類、その日の勤務状況(出勤状況)等が含まれる。また、各作業者には個別に作業者IDが割り振られていることが望ましい。
【0034】
図9(b)にGSE関連データの一例を示す。GSE関連データには、それぞれのGSE13に割り振られたGSE ID、GSE13の種類(車種や機種など)、対応可能な航空機100の機種、GSE13に付属の補助器具、稼働状況(正常稼働中、メンテナンス中、異常発生中、有人運転中・無人運転中などの情報)、現在の待機場所(稼働中の場合は作業中のゲート番号など)が含まれている。スケジュール作成部221は、上述したようなフライトスケジュール、作業者関連データ及びGSE関連データに加え、GSE13及び作業者の現在位置に基づいて、地上支援スケジュールを作成するのが好ましい。
【0035】
図10に地上支援スケジュールの一例を示す表である。地上支援スケジュールには、航空機100の離発着時刻、離発着時の滑走路、地上支援作業を行うゲート番号、航空機100の機種、作業内容ごとの担当作業者、使用するGSE IDなどが含まれる。例えば、フライト番号1に関しては、作業者IDが001の作業者が、GSE IDがHL-01のハイリフトローダを使って、貨物搬出の作業を担当することを示している。なお、
図10において、PSはパッセンジャーステップ、TTはトーイングトラクタ、BLはベルトローダを示す。また、地上支援スケジュールには、各GSE13によって航空機100に搬入される積載物の搬入重量、航空機100から搬出される積載物の搬出重量、航空機100内における積載物の積載位置などに関する情報も含まれる。GSE管制22が作成する地上支援スケジュールに含まれるデータの種類は、
図10に示したものに限定されず適宜変更が可能である。地上支援スケジュールは、例えば、作業開始時刻・終了予定時刻などを含んでいてもよい。
【0036】
GSE管制22は、地上支援スケジュールを作成すると、GSE13と作業者端末15にそれぞれのスケジュールを送信する。
図11に作業者端末15へ送信される地上支援スケジュールを示す。本実施形態では、それぞれの作業者が有する作業者端末15へ送信される地上支援スケジュールは、その作業者が担当する作業に関する情報のみである。また、
図12にGSE13へ送信される地上支援スケジュールを示す。本実施形態では、それぞれのGSE13には、そのGSE13が担当する作業に関する情報のみを送信している。さらに、
図12の地上支援スケジュールには作業者IDが含まれているため、GSE13のID取得部に、乗車した作業者が作業者IDを入力することで、スケジュール通りの作業者が乗車しているかを確認することが可能である。
【0037】
(GSE管制22による運行管理の流れ)
図13は、空港システム10によるGSE13の運行管理の流れを示すフローチャートである。GSE管制22は、航空管制21から事前(例えば前日)にフライトスケジュールを受信する(ステップS201)。GSE管制22は、フライトスケジュールを受信すると、フライトスケジュールに基づいて地上支援スケジュールを作成する(ステップS202)。GSE管制22が地上支援スケジュールを作成する際には、フライトスケジュール、作業者関連データ及びGSE関連データ以外のデータを参照してもよい。GSE管制22は、フライトスケジュール、作業者関連データ及びGSE関連データに基づいて、各フライトに対して必要な作業を特定するとともに、各作業を担当する作業者及び使用されるGSE13を決定し、地上支援スケジュールを作成する。GSE管制22は、地上支援スケジュールを作成すると(ステップS202)、地上支援スケジュールに含まれる少なくとも一部のデータを作業者端末15及びGSE13に送信する(ステップS203)。
【0038】
作業者は、GSE管制22から地上支援スケジュールのデータを受信すると(ステップS101)、地上支援スケジュールに従って作業を行う。まず、作業者は、地上支援スケジュールで決められているGSE13まで移動する。GSE管制22での地上支援スケジュールの作成時に、例えば、作業するゲート3または作業エリア102の最も近くにあるGSE13を利用するようにするなど、GSE13の位置情報取得部42が取得した現在位置を用いることで、GSE13の移動距離を最適化してもよい。GSE13に到着すると、作業者はID取得部45に作業者IDを読み取らせる。問題なければ、後述する案内経路設定システム23と接近経路設定システム24、GSE13の走行制御部により、GSE13を作業場所まで自動運転により到着させた後、作業者は所定の作業を行う。なお、GSE13は、自動運転ではなく作業者による手動で運転してもよい。
【0039】
作業中又は作業完了後の適宜のタイミングで、作業者が作業進捗データをGSE管制22に送信する(ステップS102)とともに、GSE13が車両状態データをGSE管制22に送信する(ステップS302)。GSE管制22は、作業進捗データ及び車両状態データを受信すると(ステップS204)、受信した作業進捗データ及び車両状態データから作業の進捗状況や何らかの異常が発生していないかどうかを確認する。そして、必要に応じて地上支援スケジュールの再作成(以下、リスケジュールと言う)を実行する(ステップS205)。どういう場合にリスケジュールを実行するかについては、後で詳細に説明する。リスケジュールを行った場合は、再作成された地上支援スケジュールに含まれる少なくとも一部のデータを作業者端末15及びGSE13に送信する(ステップS206)。
【0040】
その後は、上述の内容が繰り返される。すなわち、作業者は、再作成された地上支援スケジュールのデータを受信すると(ステップS103)、地上支援スケジュールに従って作業を行い、適宜のタイミングで作業進捗データをGSE管制22に送信する(ステップS104)。GSE13は、再作成された地上支援スケジュールのデータを受信すると(ステップS303)、作業者IDを用いて正しい作業者であるかどうかの判定ができるようになる。GSE13は、適宜のタイミングで車両状態データをGSE管制22に送信する(ステップS304)。GSE管制22は、作業進捗データ及び車両状態データを受信すると(ステップS207)、必要に応じてリスケジュールを実行する(ステップS208)。
【0041】
(リスケジュールの要否判断)
GSE管制22は、予め決められた所定時間(ここではn分)が経過すると、リスケジュールが必要かどうかを判定する。リスケジュールが必要かどうかは、作業者端末15から送信された作業進捗データ及びGSE13から送信された車両状態データに基づいて判定する。例えば、作業の遅れ時間が所定の閾値以上となっている場合にはリスケジュールが必要と判定し、リスケジュールを実行する。また、n分経過していない場合でも、フライトスケジュールに変更があったり(フライトの変更(着陸時刻の変更、離陸時刻の変更、欠航)、ゲート番号の変更、滑走路の変更、飛行機の機種変更など)、GSE13に異常が発生したり(作業者端末15から送信された作業進捗データ又はGSE13から送信された車両状態データに、GSE13の異常を示すデータが含まれている場合)、作業者に異常が発生したり(作業者端末15から送信された作業進捗データに、作業者の異常を示すデータが含まれている)した場合には、リスケジュールが必要かどうかを判定することなく、即時にリスケジュールを実行する。なお、GSE13の異常発生に伴って、それに対応するための作業者、レッカー車両、救急車両が必要となる場合は、GSE管制22がそれらの手配も同時に行うことが好ましい。また、作業者の異常発生に伴って、それに対応するための作業者や救急車両が必要となる場合は、GSE管制22がそれらの手配も同時に行うことが好ましい。
【0042】
以上のように、本実施形態に係るGSE管制22では、事前に航空管制21から入手可能なフライトスケジュールに基づいて、GSE管制22が地上支援スケジュールを作成する。このため、作業者が自らフライトスケジュールを確認して地上支援スケジュールを作成する必要がなく、作業者の負担を軽減することができる。また、GSE13の少なくとも一部が電動式であってもよい。この場合、GSE13からGSE管制22に送信される車両状態データに、GSE13が充電中か否かを示すデータやGSE13の残電量に関するデータを含むようにするとよい。さらに、GSE13の充電のタイミングをGSE管制22の地上支援スケジュール作成時に考慮することで、効率よくGSE13を運用することが可能である。GSE管制11にGSE13の車両状態データや残電量、位置情報等を含む車両の運行データを保存し、このデータを基に、GSE13のメンテナンス時期の予測や故障検知、故障予測を行ってもよい。これらの予知保全や故障検知には、ディープラーニングや機械学習を用いてもよい。また、GSE13の位置情報を一定時間ごとに記録しておき、GSE13の空港内での運行経路等を分析することで、GSE管制22での地上支援スケジュール作成のアルゴリズムを最適化することも可能である。
【0043】
(案内経路設定システム)
上述したように、GSE管制22は、案内経路設定システム23を含む。以下、案内経路設定システム23について説明する。案内経路設定システム23は、
図2に示すように、通信部230、作業位置決定部231、現在位置取得部232、経路設定部233、予約領域設定部234を有している。案内経路設定システム23は、通信部230を介して、GSE管制22の他の機能部、複数のGSE13及び作業者端末15と通信可能である。作業位置決定部231は、航空機100の停止位置及び機種情報等に基づいて、作業エリア102内における各GSE13の作業位置を決定する。なお、作業エリア102には予め
図7のような平面グリッドGが割り当てられており、航空機100の停止位置は、平面グリッドG上にて、GSE管制22から送られてきた空港の地図情報や機種情報等から決められる。現在位置取得部232は、各GSE13の現在位置を各GSE13の位置情報取得部42から取得する。経路設定部233は、各GSE13の現在位置から作業位置に至るまでの案内経路を設定する。予約領域設定部234は、各GSE13の少なくとも進行方向前方に他のGSE13が進入できない予約領域を随時設定する。以下では、案内経路設定システム23によって具体的にどのような処理を行うかについて説明する。
【0044】
図14は、GSE13を作業位置まで移動させる際の一連の処理を示すフローチャートである。まず、案内経路設定システム23の作業位置決定部231は、
図7に示すように、作業エリア102に平面グリッドGを設定する(ステップS1001、平面グリッド設定ステップ)。平面グリッドGを設定する際には、GSE管制22から送られてきた空港の地図情報や航空機100の機種情報等から航空機100の停止位置が求められる。そして、ゲート3に停止している航空機100を含む作業エリア102に格子状の平面グリッドGが設定される。平面グリッドGの大きさやマスの細かさは、例えば航空機100の大きさに応じて変更するようにしてもよい。また、平面グリッドGは予め固定的に設定されていてもよい。
【0045】
続けて、案内経路設定システム23の作業位置決定部231は、各GSE13の作業位置を決定する(ステップS1002、作業位置決定ステップ)。
図15には、作業位置の一例として、給油車13aの作業位置P1及びハイリフトローダ13dの作業位置P2を図示している。作業位置P1、P2は、航空機100の停止位置及び機種情報等に基づいて、平面グリッドGのマス単位で設定される。また、案内経路設定システム23の現在位置取得部232は、地上支援作業を行う各GSE13の現在位置を取得する(ステップS1003、現在位置取得ステップ)。
【0046】
次に、案内経路設定システム23の経路設定部233は、地上支援作業を行う各GSE13の現在位置から作業位置までの案内経路を設定し、各GSE13に送信する(ステップS1004、経路設定ステップ)。
図16には、案内経路の一例として、給油車13aの案内経路R1及びハイリフトローダ13dの案内経路R2を図示している。案内経路R1、R2は、平面グリッドGの設定エリアの外側においては、基本的に、作業エリア102の周りに設定されている通行路103(
図16参照)を通るように設定される。また、平面グリッドGの設定エリア内では、案内経路R1、R2はマス単位(
図16のハッチング参照)で設定される。
【0047】
自車の案内経路を受信した各GSE13は、設定された案内経路に沿って走行を開始する(ステップS2001)。このとき、一斉に各GSE13が移動を開始すると、GSE13同士が干渉することがあるので、経路設定部233は、各GSE13の案内経路の設定時に各GSE13を移動させる順番も決定するのが好ましい。例えば、最初に給油車13aを移動させ、給油車13aが平面グリッドG内に進入したタイミングで、ハイリフトローダ13dの移動を開始させるようにすれば、給油車13aとハイリフトローダ13dの干渉を防止できる。
【0048】
各GSE13の走行制御部44は、通行路103を走行している間は、走行レーンを示す白線等を認識することによって、一般的な手法で自動運転を実現することができる。しかしながら、作業エリア102には走行レーンを示す白線やマーカーはないし、航空機100の停止位置や機種によって案内経路は毎回変わるため、一般的な自動運転の手法を採用することは難しい。そこで、各GSE13は作業エリア102内、すなわち、平面グリッドGの設定エリア内に入ると、次のようにして自動運転を行う。
【0049】
各GSE13は、案内経路設定システム23から案内経路に関する情報を受け取る際に、平面グリッドGの座標情報も一緒に受け取る。各GSE13の走行制御部44は、平面グリッドGの設定エリア内を走行する際には、随時、自車の現在位置を取得し、平面グリッドGのどのマスにいるかを把握する。そして、次に進むべきマスを確認しながら案内経路に沿った走行を行う。
【0050】
平面グリッドGの設定エリア内でのGSE13同士の衝突を避けるため、案内経路設定システム23の予約領域設定部234は、各GSE13の少なくとも進行方向前方に他のGSE13が進入できない予約領域をマス単位で設定し、全てのGSE13に送信する(ステップS1005)。
図17には、予約領域の一例として、給油車13aの予約領域S1及びハイリフトローダ13dの予約領域S2をハッチングで図示している。予約領域S1、S2は、進行方向の側方及び後方にも設定されているが、予約領域は少なくとも進行方向の前方に設定されていればよい。予約領域設定部234は、各GSE13の走行に応じて予約領域を随時更新し、その都度、全てのGSE13に更新された予約領域を送信する。
【0051】
各GSE13の走行制御部44は、平面グリッドGの設定エリア内の走行時に、自車の予約領域が他のGSE13の予約領域と重複していないかを確認する(ステップS2002)。予約領域が重複していない場合は(ステップS2002でNO)、案内経路に沿って走行を継続する(ステップS2003)。一方、予約領域が重複している場合は(ステップS2002でYES)、一時停止し(ステップS2004)、他のGSE13との予約領域の重複が解消されるまで待機する。ここで、予約領域が重複した場合にどちらのGSE13を優先的に走行させるかは事前に決めておくことが好ましい。例えば、経路設定部233が優先順位を決めておくようにしてもよいし、走行速度が速いほうを先に走行させるようにしてもよい。なお、予約領域が重複した場合に、一時停止ではなく案内経路を再設定するようにしてもよい。
【0052】
各GSE13の優先順位について補足説明する。経路設定部233は、各GSE13に優先順位をつけることで、各GSE13を作業位置に移動させる順番を決定してもよい。例えば、次の作業エリア102まですぐに移動する必要があるGSE13の優先順位を高く設定してもよいし、道幅や車両の大きさ、他のGSE13の配置、作業手順の関係等から、先に作業位置へ向かう必要があるGSE13は優先順位を高く設定しておくことで、他のGSE13よりも優先的に作業位置へ向かうことが可能となる。また、複数種類のGSE13による共同作業(例えばハイリフトローダやコンテナローダと、貨物ドーリーを牽引しているトーイングトラクタとを用いた、航空機への貨物搬出入等)を行う場合は、先にどちらか一方のGSE13が作業位置に到着していたとしても、共同で作業を行うGSE13が到着しない限り、作業を開始できない場合がある。そのため、共同で作業を行うGSE13は優先順位を高く設定しておくことが好ましい。
【0053】
さらに、先に作業位置で作業していたGSE13が作業位置から退場しない限り、次に作業予定のGSE13が作業位置に到着できない場合(例えば、次に作業予定のパッセンジャーステップが、コンテナローダが作業位置から退場しないと航空機の乗客乗降口に接近できない場合)、先に作業位置にいたGSE13の優先順位を高く設定し、速やかに退場できるようにしておくとよい。このほかにも、遠くの作業エリア102から次の作業エリア102へ移動する必要があるGSE13は、優先順位を高く設定しておいてもよい。
【0054】
また、GSE13に乗車する予定の作業者または乗車中の作業者によって、優先順位を設定してもよい。例えば、航空機への貨物の積み込み等の作業監督者のように、その作業者が作業位置にいないと作業が始められない人物が乗車中のGSE13は、優先順位を高く設定してもよい。このように、優先順位を割り振っておくことで、フライトスケジュールの変更や遅れの発生により、GSE管制22がGSE13と作業者のスケジュールを変更した場合に、GSE13の案内経路でGSE13同士がデッドロックを起こしたり、渋滞のような状態になってしまい、スケジュール通りにGSE13が運行できないような事態が生じたりすることを防ぐことができる。
【0055】
各GSE13は作業位置に到着したかどうかを確認し(ステップS2005)、作業位置に到着したら(ステップS2005でYES)、走行を停止して地上支援作業を開始する。一方、到着していなかったら(ステップS2005でNO)、ステップS2002~S2005を繰り返しながら作業位置まで走行を継続する。
【0056】
以上のように、本実施形態の案内経路設定システム23によれば、航空機100の停止位置及び機種情報に基づいてGSE13の作業位置が決定されるとともに、作業位置までの案内経路が自動で設定されるので、GSE13を正確且つ迅速に作業位置まで移動させることができる。したがって、円滑な地上支援作業の遂行が可能となる。
【0057】
本実施形態の案内経路設定システム23は、GSE管制22と通信可能である。このため、航空管制21からフライトスケジュールの変更を受け取ったGSE管制22は、滑走路やゲート3(作業エリア102)、航空機の機種変更、スケジュールの遅れ、作業内容の変更等に対し、都度GSE13や作業者のスケジューリングを行う。これによって、刻々と移り変わる空港内の状況に対して迅速に対応することが可能となる。また、GSE13のスケジュールも刻々と変化するが、本実施形態の案内経路設定システム23はGSE管制22と通信可能であるため、GSE管制22が作成、再検討したスケジュールを基に、GSE13の案内経路を状況に合わせて再検討することができる。また、GSE13の案内経路を検討する際、案内経路設定システム23側で作業者をどこで乗車・降車させるかについても検討してもよい。
【0058】
また、案内経路設定システム23の機能部230~234が物理的にどこに設けられているかについて制限はなく、機能部230~234の少なくとも一部がGSE管制22やGSE13に組み込まれていてもよい。例えば、案内経路設定システム23全体が、GSE管制22の一部を構成するようにしてもよい。さらに、予約領域設定部234の機能を、GSE13の走行制御部44に持たせるようにしてもよい。この場合、各GSE13で設定された予約領域は、案内経路設定システム23を介して他のGSE13に送信されてもよいし、GSE13同士で直接送受信できるようにしてもよい。
【0059】
また、航空機100やボーディングブリッジ4と重複するマスを予約領域として設定するとよい。ただし、航空機100の翼の下やボーディングブリッジ4の下をGSE13が走行可能な場合はこの限りではない。この場合、案内経路設定システム23が、各GSE13の高さ情報(パッセンジャーステップ、ベルトローダ、ハイリフトローダ等のように高さが変化するGSEの場合は現在の高さ情報)、ボーディングブリッジ4の高さ情報、及び、航空機100の翼の高さ情報等を把握し、各GSE13が航空機100の翼の下やボーディングブリッジ4の下を走行可能か否か判断するようにしてもよい。また、航空機100の翼や胴体部の下に給油口や電源口がある場合、給油車や空港電源車は必要に応じて航空機100の下を走行可能としておいてもよい。
【0060】
また、貨物を搬送するトーイングトラクタのように、1~数台のドーリーを牽引するGSE13は、牽引しているドーリーの動作を車両後部のレーザセンサ等で監視しておき、平面グリッドGにドーリーの動作を反映しても、ドーリーに対しても予約領域を設定するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、予約領域の情報をすべてのGSE13で共有することとしたが、予約領域を設定されたGSE13から所定距離内のGSE13のみと情報を共有しても、同じ作業エリア102内のGSE13のみと情報を共有するようにしてもよい。
【0062】
(接近経路設定システム)
上述したように、GSE管制22は、接近経路設定システム24を含む。以下、接近経路設定システム24について説明する。接近経路設定システム24は、
図2に示すように、通信部240、出入口位置予測部241、出入口位置検出部242、接近経路設定部243、現在位置取得部244、重量取得部245、傾き取得部246、シミュレーション部247、スケジュール取得部248、作業進捗データ取得部249を有する。接近経路設定システム24は、通信部240を介して、GSE管制22の他の機能部、案内経路設定システム23、複数のGSE13及び作業者端末15と通信可能である。
【0063】
出入口位置予測部241は、GSE管制22の機種情報取得部222によって取得された機種情報に基づいて、各GSE13に対応する作業用出入口14の、GSE13に対する相対位置を予測する。より詳細には、出入口位置予測部241は、機種情報に含まれる情報であって、航空機100の積載物の重量が所定の基準重量であるときの作業用出入口14の高さである基準高さの位置情報に基づいて、各GSE13の接続部分46(
図6参照)の高さに対する作業用出入口14の鉛直方向の相対高さ位置を予測する。なお、「積載物」には、貨物や手荷物のみならず、水、燃料、乗員・乗客等の航空機100の機内に積載されているものが含まれる。また、本実施形態において、「所定の基準重量」とは、例えば、0でもよく、空港1に着陸する直前の航空機100の積載物の重量でもよい。所定の基準重量をどのような値とするかについては予め設定される。また、出入口位置予測部241は、機種情報に含まれる情報であって、航空機100を平面視した場合の平面における作業用出入口14の平面位置情報に基づいて、各GSE13の現在位置に対する作業用出入口14の水平方向の相対水平位置を予測する。
【0064】
出入口位置検出部242は、GSE13のレーザ照射部43(前述)によって作業用出入口14にレーザを照射させることで、GSE13の現在位置に対する作業用出入口14の正確な相対水平位置を検出する。より詳細には、出入口位置検出部242は、出入口位置予測部241によって予測された相対高さ位置及び相対水平位置を参照して、レーザ照射部43によって航空機100の作業用出入口14付近の位置にレーザを照射させる。そして、出入口位置検出部242は、レーザ照射部43によって、水平方向に沿ってレーザの照射方向を変動させ、開口した作業用出入口14による航空機100の凹凸を検出することで、作業用出入口14の正確な相対水平位置を検出する。
【0065】
接近経路設定部243は、出入口位置予測部241によって予測された作業用出入口14の相対高さ位置に基づいて、接続部分46を高さ調整によって作業用出入口14まで接近させる接近経路を設定する。また、接近経路設定部243は、出入口位置検出部242によって検出された作業用出入口14の相対水平位置に基づいて、GSE13を所定位置から移動させることによって接続部分46を作業用出入口14に接近させる接近経路を設定する。現在位置取得部244は、各GSE13の現在位置を各GSE13の位置情報取得部42から取得する。
【0066】
スケジュール取得部248は、各GSE13の作業スケジュールであって、各GSE13によって航空機100に搬入される積載物の搬入重量と、航空機100から搬出される積載物の搬出重量と、航空機100内における積載物の積載位置とに関する情報を含む作業スケジュールを取得する。地上支援スケジュールは、補給予定の燃料の量、給排水量、乗客の座席予約状況、乗客の手荷物や貨物の重量、積載位置並びに搬出及び搬入のタイミングなどに基づいて設定される。スケジュール取得部248は、例えば、前述のスケジュール作成部221によって作成された地上支援スケジュールを受信することで作業スケジュールを取得するものでもよく、スケジュール作成部221とは独立して作業スケジュールを作成するものでもよい。
【0067】
作業進捗データ取得部249は、各GSE13による作業スケジュールの進捗状況に関する作業進捗データを取得する。作業進捗データ取得部249は、例えば、各GSE13の位置情報取得部42や接続部分46、作業者端末15と通信することによって、作業進捗データを取得する。また、作業進捗データ取得部249は、乗客のゲート3の通過状況に基づいて、作業進捗データを取得してもよい。さらに、航空機100内への搬入及び搬出が行われるときに積載物に付されたIDを読み取る読み取り装置(不図示)がGSE13に取り付けられている場合、作業進捗データ取得部249は、読み取り装置に読み取られたID情報に基づいて、作業進捗の状況に関する作業進捗データを取得してもよい。さらに、給油や給水及び排水を行うGSE13において流量計(不図示)が設けられている場合、作業進捗データ取得部249は、流量計によって計測された給油量や給水量及び排水量に基づいて、作業進捗の状況に関する作業進捗データを取得してもよい。
【0068】
重量取得部245は、出入口位置予測部241による相対高さ位置の予測時における航空機100の積載物の重量である予測時重量を取得する。本実施形態において、重量取得部245は、作業スケジュールと作業進捗データとの比較に基づいて、出入口位置予測部241による相対高さ位置の予測時における積載物の搬入重量と搬出重量とを算出する。そして、重量取得部245は、算出された積載物の搬入重量と搬出重量との差から、予測時重量を算出する。
【0069】
傾き取得部246は、出入口位置予測部241による相対高さ位置の予測時における航空機100の基準面に対する傾き量である予測時傾き量を取得する。基準面とは、例えば、水平面であってもよく、航空機100が着陸する空港1の傾斜面と平行な面でもよい。基準面は、予め設定される。本実施形態において、傾き取得部246は、作業スケジュールと作業進捗データとの比較に基づいて、出入口位置予測部241による相対高さ位置の予測時における積載物の搬入重量及び搬出重量、並びに、航空機100内の積載物の積載位置を算出する。そして、算出された積載物の搬入重量、搬出重量及び積載位置から、予測時傾き量を算出する。より詳細に説明すると、傾き取得部246は、相対高さ位置の予測時における積載物の搬入重量、搬出重量及び積載位置から、モーメントが0となる航空機100の重心位置を算出する。そして、傾き取得部246は、相対高さ位置の予測時における航空機100の重心位置を参照にして、作業用出入口14の基準面に対する傾き量である予測時傾き量を算出する。
【0070】
シミュレーション部247は、接近経路設定部243によって設定された接近経路に沿ってGSE13及び当該GSE13の接続部分46を作業用出入口14まで接近させる接近動作のシミュレーションを実行する。シミュレーション部247によるシミュレーションは、GSE13の接近動作が実際に行われる前に予め実行される。
【0071】
シミュレーション部247によるシミュレーションの具体的な方法の一例について以下に説明する。シミュレーション部247には、航空機100の3Dデータと、GSE13の3Dデータとが予め入力される。シミュレーション部247は、接近経路設定部243によって接近経路が設定されたときに、航空機100とGSE13との位置関係をシステム上で再現する。そして、シミュレーション部247は、当該システム上において、GSE13の3Dデータを航空機100の3Dデータに接近させる接近動作のシミュレーションを実行する。
【0072】
以下、接近経路設定システム24を含む空港システム10によって具体的にどのような処理が行われるか、
図3~
図5を参照しつつ説明する。
図3及び
図4は、GSE13を航空機100の作業用出入口14に接近させる際の一連の処理を示すフローチャートである。
図5は、後述するステップS17において作業用出入口14の相対高さ位置の予測が行われるときの一連の処理を示すフローチャートである。まず、GSE管制22のスケジュール作成部221は、上述したように、航空管制21から事前(例えば前日)に送信されたフライトスケジュールに基づいて、GSE13の地上支援スケジュールを作成する(ステップS11)。地上支援スケジュールには、例えば、作業者関連データ(
図9(a)参照)、GSE関連データ(
図9(b)参照)、使用されるGSE13、担当の作業者、GSE13の運行スケジュール、担当作業者の作業スケジュール等が含まれる。
【0073】
続いて、機種情報取得部222は、上記フライトスケジュールにおいて地上支援作業が行われる航空機100の機種情報を取得する(ステップS12)。機種情報には、航空機100における各作業用出入口14の位置情報、航空機100の空港1における停止位置情報、航空機100の積載物の重量が所定の基準重量であるときの各作業用出入口14の高さである基準高さの位置情報等が含まれる。案内経路設定システム23と接近経路設定システム24は、通信部230、通信部240を介して、機種情報取得部222によって取得された機種情報を受信する。すなわち、本実施形態における通信部230が案内経路設定システム23の機種情報取得部の役割を担っており、通信部240が本発明の接近経路設定システム24における機種情報取得部の役割を担っている。なお、案内経路設定システム23または接近経路設定システム24が機種情報を直接取得するための機種情報取得部を別途有していてもよい。
【0074】
次に、案内経路設定システム23は、
図7に示すように、航空機100を含み、複数のGSE13によって地上支援作業が行われる空港1内のエリアである作業エリア102に、平面グリッドGを設定する(ステップS13)。平面グリッドGを設定する際には、GSE管制22に記憶されている空港1の地図情報や、航空機100の機種情報が参照される。そして、所定のゲート3に停止している航空機100を含む作業エリア102に格子状の平面グリッドGが設定される。このとき、平面グリッドG上には、航空機100の周囲の領域であって、GSE13を低速で走行させる低速エリアE1と、航空機100の周囲の領域のうちの低速エリアE1よりもさらに航空機100に近い領域であって、GSE13を低速エリアE1の走行速度よりも低速で走行させる微速エリアE2と、航空機100の周囲の領域のうちの微速エリアE2よりもさらに航空機100に近い領域であって、GSE13を微速エリアE2の走行速度よりも低速で走行させる超微速エリアE3と、を予め規定する。この構成によると、走行制御部44によってGSE13を平面グリッドGに基づいて走行させる場合に、GSE13が航空機100に接近するにつれて低速となるように走行させることができる。これにより、GSE13を航空機100に接近させる際に安全に走行制御を行うこと可能となり、ひいては、GSE13と航空機100との接触を回避することにつながる。
【0075】
低速エリアE1、微速エリアE2、超微速エリアE3、及び、それぞれのエリアの制限速度は、例えば、IATA(国際航空運送協会)が推奨するISAGO(IATA Safety Audit for Ground Operations)規格に従って設定される。具体的には、低速エリアE1は、航空機100から4m離れた位置から8m離れた位置までの領域である。微速エリアE2は、航空機100から2m離れた位置から4m離れた位置までの領域である。超微速エリアE3は、航空機100から2m離れた位置までの領域である。低速エリアE1の制限最高速度は5km/hであり、微速エリアE2の制限最高速度は2km/hであり、超微速エリアE3の制限最高速度は0.7km/hである。なお、
図7において、超微速エリアE3は航空機100の周囲の領域のうちの航空機100に最も近い斜線部分であって、微速エリアE2は超微速エリアE3の外側の斜線部分であって、低速エリアE1は微速エリアE2の外側の斜線部分である。平面グリッドGの大きさやマスの細かさは、例えば航空機100の大きさや低速エリアE1、微速エリアE2及び超微速エリアE3の範囲に応じて変更するようにしてもよい。また、平面グリッドGは予め固定的に設定されていてもよい。
【0076】
続いて、接近経路設定システム24の現在位置取得部244は、GPS信号を受信して取得した自車の位置情報を取得した各GSE13の位置情報取得部42と通信することにより、各GSE13の現在位置を取得する(ステップS14)。以下のフローにおいて、各GSE13の現在位置の取得は随時行われる。なお、現在位置取得部244は、接近経路設定システム24に含まれていなくてもよい。この場合、接近経路設定システム24は、GSE管制22の現在位置取得部223又は案内経路設定システム23の現在位置取得部233によって取得された各GSE13の現在位置を、通信部240を介して受信することによって取得する。すなわち、この場合、接近経路設定システム24において、通信部240が、現在位置取得部として機能する。
【0077】
案内経路設定システム23の経路設定部233は、GSE管制22の機種情報取得部222によって取得された機種情報に含まれる航空機100の停止位置情報及び各作業用出入口14の位置情報と現在位置取得部232によって取得されたGSE13の現在位置とに基づいて、各GSE13を、GSE13と対応する作業用出入口14まで接近させる案内経路を設定し、各GSE13に送信する(ステップS15)。なお、本実施形態では、GSE13と作業用出入口14が所定値となる所定位置までGSE13が接近すると、一旦停止するようにしている。本実施形態において、所定位置とは、GSE13と対応する作業用出入口14との間の距離が2mであって且つ微速エリアE2と超微速エリアE3との境界の位置のことである。
【0078】
自車の案内経路を受信した各GSE13は、経路設定部233から送信された案内経路に沿って走行を開始する(ステップS31)。このとき、各GSE13は、ステップS11において作成された地上支援スケジュールに含まれる各GSE13の運行スケジュールに従って、順に走行を開始する。
【0079】
各GSE13の走行制御部44は、各GSE13を、案内経路に沿って所定位置まで案内する。走行制御部44は、GSE13が作業エリア102に到達するまでは、空港1内においてGSE13の走行レーン(不図示)を示す白線やマーカー等を認識することによって、一般的な手法で自動運転を実現することができる。しかし、作業エリア102には走行レーンを示す白線やマーカーはなく、障害物となり得る他のGSE13や機材の位置、航空機100の停止位置や案内経路は、機種によって毎回変わるため、一般的な自動運転の手法を採用することは難しい。そこで、各GSE13が作業エリア102内、すなわち、平面グリッドGが設定されたエリア内に入ると、次のようにして自動運転を行う。
【0080】
各GSE13は、経路設定部233から案内経路に関する情報を受信する際に、平面グリッドGの座標情報も一緒に受信する。各GSE13の走行制御部44は、平面グリッドGの設定エリア内を走行する際には、随時、自車の現在位置を取得し、平面グリッドGのどのマスにいるか把握する。そして、次に進むべきマスを確認しながら案内経路に沿って走行を行う。なお、平面グリッドGの座標情報は必ずしも上記のタイミングで受信する必要はなく、予め受信しておいてもよい。
【0081】
各GSE13の走行制御部44は、自車の現在位置が平面グリッドG上に設定された低速エリアE1に到達したとき(ステップS32:YES)、自車の走行速度が低速エリアE1の制限最高速度である5km/h以下となるように走行を制御する(ステップS33)。各GSE13の走行制御部44は、自車の現在位置が平面グリッドG上に設定された低速エリアE1に到達していないときは(ステップS32:NO)、低速エリアE1に到達するまで任意の速度で自車を走行させる。
【0082】
各GSE13の走行制御部44は、自車の現在位置が平面グリッドG上に設定された微速エリアE2に到達したとき(ステップS34:YES)、自車の走行速度が微速エリアE2の制限最高速度である2km/h以下となるように走行を制御する(ステップS35)。各GSE13の走行制御部44は、自車の現在位置が平面グリッドG上に設定された微速エリアE2に到達していないときは(ステップS34:NO)、微速エリアE2に到達するまで5km/h以下の速度で自車を走行させる。
【0083】
続いて、
図4に示すように、各GSE13の走行制御部44は、自車の現在位置が平面グリッドG上に設定された超微速エリアE3に到達したとき(ステップS36:YES)、自車の走行を一旦停止し、作業用出入口14の開口を要求する信号をGSE管制22に送信する(ステップS37)。なお、上述したように、本実施形態のGSE13は、超微速エリアE3に到達したときの位置(各GSE13と対応する作業用出入口14との間の距離が2mとなる所定位置)まで走行すると、一旦停止するように制御されている。各GSE13の走行制御部44は、自車の現在位置が平面グリッドG上に設定された超微速エリアE3に到達していないときは(ステップS36:NO)、超微速エリアE3に到達するまで2km/h以下の速度で自車を走行させる。なお、本実施形態では、超微速エリアE3は、航空機100から2m離れた位置までの領域としたが、作業用搬出入口14または航空機100までの距離に制限はなく、航空機100の機種や各GSE13に合わせて変更してもよい。
【0084】
作業用出入口14の開口を要求する信号を受信したGSE管制22は、信号を送信したGSE13に対応する作業用出入口14を開口するよう、作業用出入口14の開閉を担当する作業者が有する作業者端末15へ通知を送信する(ステップS16)。この通知は、作業開始前や作業開始時に予め作業者端末15へ送信しておいてもよい。そして、接近経路設定システム24の出入口位置予測部241は、機種情報取得部222に取得された機種情報に含まれる基準高さの位置情報に基づいて、GSE13の接続部分46の高さに対する作業用出入口14の鉛直方向の相対高さ位置を予測する(ステップS17)。
【0085】
ここで、ステップS17において、作業用出入口14の相対高さ位置の予測が行われるときに出入口位置予測部241、重量取得部245、傾き取得部246によって実行される一連の処理について、
図5を参照しつつ以下に説明する。
【0086】
出入口位置予測部241は、まず、機種情報に含まれる基準高さの位置情報に基づいて、作業用出入口14の相対高さ位置を予測する(ステップS171)。重量取得部245は、出入口位置予測部241による作業用出入口14の相対高さ位置の予測時における航空機100の積載物の重量である予測時重量を取得する(ステップS271)。そして、重量取得部245は、取得した予測時重量を出入口位置予測部241に送信する(ステップS272)。また、傾き取得部246は、出入口位置予測部241による作業用出入口14の相対高さ位置の予測時における航空機100の基準面に対する傾き量である予測時傾き量を取得する(ステップS371)。そして、傾き取得部246は、取得した予測時傾き量を出入口位置予測部241に送信する(ステップS372)。
【0087】
出入口位置予測部241は、重量取得部245から送信された予測時重量を受信し(ステップS172)、傾き取得部246から送信された予測時傾き量を受信する(ステップS173)。そして、出入口位置予測部241は、機種情報に含まれる基準重量と予測時重量との比較、及び、予測時傾き量に基づいて、航空機100のタイヤの沈み込み量を算出し、相対高さ位置の予測値を補正する(ステップS174)。以上の一連の処理によって、作業用出入口14の相対高さ位置の予測が行われる。
【0088】
続いて、出入口位置予測部241は、現在位置取得部244によって取得された各GSE13の現在位置と、機種情報取得部222によって取得された機種情報に含まれる航空機100の停止位置情報及び作業用出入口14の平面位置情報とに基づいて、GSE13の現在位置に対する作業用出入口14の水平方向の相対水平位置を予測する(ステップS18)。接近経路設定システム24は、GSE管制22の機種情報取得部222が取得した機種情報を、通信部240を介して取得している。なお、本実施形態において航空機100を平面視した場合の平面とは、例えば、
図7の紙面と平行な平面である。また、作業用出入口14の平面位置情報とは、例えば、空港1全体における作業用出入口14の座標情報でもよく、航空機100に対する作業用出入口14の相対的な座標情報でもよい。
【0089】
接近経路設定システム24の出入口位置検出部242は、出入口位置予測部241によって予測された作業用出入口14の相対高さ位置及び相対水平位置を参照して、各GSE13のレーザ照射部43によって航空機100の作業用出入口14付近の位置に向かってレーザを照射させる。そして、出入口位置検出部242は、レーザ照射部43によって、水平方向に沿ってレーザの照射方向を変動させ、開口した作業用出入口14による航空機100の凹凸を検出することで、作業用出入口14の正確な相対水平位置を検出する(ステップS19)。例えば、パッセンジャーステップ13e(GSE13)のレーザ照射部43が、乗降口14b(作業用出入口14)に向かってレーザを照射する様子を
図18に示す。接近経路設定システム24の出入口位置検出部242は、まず、出入口位置予測部241によって予測された乗降口14bの、パッセンジャーステップ13eに対する相対高さ位置及び相対水平位置を参照して、乗降口14b付近の位置に向かって、パッセンジャーステップ13eのレーザ照射部43からレーザを照射させる。そして、出入口位置検出部242は、パッセンジャーステップ13eのレーザ照射部43によって、水平方向(
図18の実線矢印)に沿ってレーザの照射方向を変動させ(照射されるレーザは
図18の破線矢印)、開口した乗降口14bによる航空機100の凹凸を検出することで、パッセンジャーステップ13eに対する乗降口14bの正確な相対水平位置を検出する。
【0090】
次に、接近経路設定システム24の接近経路設定部243は、出入口位置予測部241によって予測された作業用出入口14の相対高さ位置に基づいて、GSE13の接続部分46を高さ調整によって作業用出入口14まで接近させる鉛直方向の接近経路を設定する(ステップS20)。また、接近経路設定部243は、GSE13の現在位置と、出入口位置検出部242によって検出された作業用出入口14の相対水平位置とに基づいて、各GSE13を所定位置から移動させることによって接続部分46を作業用出入口14まで接近させる水平方向の接近経路を設定する(ステップS20)。
【0091】
続いて、シミュレーション部247は、接近経路設定部243によって設定された接近経路に沿ってGSE13及び接続部分46を作業用出入口14まで接近させる接近動作のシミュレーションを実行する(ステップS21)。シミュレーション部247によるシミュレーションによって接近経路を走行するGSE13と航空機100とが接触する可能性があると判断された場合(S22:YES)、ステップS17に戻る。なお、ステップS17に戻った場合において、シミュレーションの結果に応じて、ステップS17~ステップS19のうち、必要なステップのみ行われてもよい。具体的には、シミュレーションの結果、相対高さ位置のみがずれていた場合は、ステップS17のみ行われてもよい。また、シミュレーションの結果、相対水平位置のみがずれていた場合は、ステップS18及びステップS19のみが行われてもよい。シミュレーションによって接近経路を走行するGSE13と航空機100とが接触する可能性がないと判断された場合(S22:NO)、接近経路を各GSE13に送信する(ステップS23)。
【0092】
自車の接近経路を受信した各GSE13の走行制御部44は、接近経路設定部243から送信された接近経路に沿って、GSE13を対応する作業用出入口14まで接近させる(ステップS38)。このとき、走行制御部44は、自車の走行速度が超微速エリアE3の制限最高速度である0.7km/h以下となるように走行を制御する。以上により、接近経路設定システム24を含む空港システム10を活用して、GSE13を航空機100の作業用出入口14に接近させる際の一連の処理が終了する。
【0093】
(効果)
以上のように、本実施形態の接近経路設定システム24を含む空港システム10では、出入口位置予測部241は、機種情報に含まれる所定の基準重量と、重量取得部245によって取得された予測時重量とに基づいて、相対高さ位置の予測値を補正している。このため、航空機100の積載物の増減に伴って作業用出入口14の高さが変位したとしても、当該変位に対応して、接続部分46を高さ調整によって作業用出入口14に接近させるための正確な接近経路を設定することができる。これにより、航空機100の作業用出入口の高さが変位したとしても、GSE13に設けられた接続部分46の高さの調整を容易に行うことができる。
【0094】
本実施形態では、出入口位置検出部242は、GSE13の現在位置に対する作業用出入口14の水平方向の相対水平位置を検出する。これによれば、機種ごとに異なる作業用出入口14の相対水平位置は、出入口位置検出部242によって検出される。そして、検出された相対水平位置に基づいて設定された接近経路に沿って、GSE13を移動させることによって接続部分46を作業用出入口14に接近させることができる。これにより、GSE13を作業用出入口14に容易に接近させることができる。
【0095】
本実施形態では、シミュレーション部247は、接近経路に沿ってGSE13及び接続部分46を作業用出入口14まで接近させる接近動作のシミュレーションを、GSE13の接近動作が実際に行われる前に予め実行する。そして、シミュレーションによってGSE13と航空機100とが接触する可能性があると判断された場合接近経路設定部243は接近経路の設定を再度実行する。このため、GSE13を、航空機100との接触をより確実に回避しつつ作業用出入口14に接近させる接近経路を設定することができる。よって、接近経路の設定後に作業の遅れや装置トラブルなどが発生した場合や、機種情報のミスなどにより接近経路に誤差があった場合でも、GSE13と航空機100とが接触することを防ぐことができる。
【0096】
本実施形態では、出入口位置予測部241は、傾き取得部246によって取得された予測時傾き量を用いて、相対高さ位置の予測値を補正している。このため、航空機100の積載物の増減などに伴って航空機100の基準面に対する傾きが生じたとしても、当該傾きに対応して、接続部分46を高さ調整によって作業用出入口14に接近させるための正確な接近経路を設定することができる。これにより、航空機100の作業用出入口14の高さが変位したとしても、GSE13に設けられた接続部分46の高さの調整をより容易に行うことができる。
【0097】
本実施形態では、重量取得部245は、作業スケジュールと作業進捗データとの比較に基づいて算出された相対高さ位置の予測時における積載物の搬入重量と搬出重量との差から、予測時重量を算出する。また、傾き取得部246は、作業スケジュールと作業進捗データとの比較に基づいて算出された相対高さ位置の予測時における積載物の搬入重量、搬出重量及び積載位置から、予測時傾き量を算出する。このため、航空機100の積載物の重量や航空機100の傾き量を直接検知するための装置を航空機100に別途設けることなく、予測時重量及び予測時傾き量を取得することができる。これにより、システム全体として簡素化でき、低コスト化が実現できる。
【0098】
(変形例)
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、これらの例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0099】
上記実施形態では、出入口位置検出部242は、レーザ照射部43によってレーザを照射させることで、GSE13に対する作業用出入口14の相対水平位置を検出している。しかしながら、作業用出入口14の検出はレーザの照射による方法に限らない。例えば、指向性・直進性を有しない光を用いてもよく、超音波センサによって作業用出入口14の位置を検出してもよく、カメラによって撮影することで作業用出入口14の位置を検出してもよい。また、これら以外の方法によって作業用出入口14の位置を検出してもよい。また、カメラとレーザの両方を用いて作業用出入口14の位置又はGSE13に対する作業用出入口14の相対水平位置を検出してもよい。この場合、カメラで作業用出入口14の位置を検出し、レーザは距離センサとして活用することも可能である。
【0100】
上記実施形態では、各GSE13の走行制御部44は、各GSE13が案内経路、接近経路に沿って走行するように自車の自動運転を行っている。しかしながら、各GSE13は、作業者によって手動で操作されていてもよい。この場合、例えば、経路設定部233によって設定された案内経路、接近経路設定部243によって設定された接近経路は、ナビゲーション装置に送信され、ナビゲーション装置が作業者にナビゲーションを行うようにしてもよい。ナビゲーション装置は各GSE13に備え付けられていてもよく、別の装置でもよい。また、案内経路及び接近経路は作業者端末に送信され、作業者端末をナビゲーション装置として活用してもよい。
【0101】
上記実施形態では、GSE管制22によって、低速エリアE1、微速エリアE2、超微速エリアE3が規定された平面グリッドGが作業エリア102に予め設定される。そして、各GSE13の走行制御部44は、所定の位置に待機している各GSE13を案内経路に沿って所定位置まで案内するまでの間、予め作業エリア102に設定された平面グリッドG上における自車の現在位置に応じて、走行速度の制御を行っている。しかしながら、平面グリッドGは設定されていなくてもよい。この場合、例えば、各GSE13のレーザ照射部43によって航空機100にレーザを照射することで、案内経路に沿って走行する各GSE13と航空機100との間の距離を連続的に検出する。そして、各GSE13の走行制御部44は、レーザ照射部43によって検出された各GSE13と航空機100との間の距離に応じて、自車の走行速度を制御する。具体的には、例えば、各GSE13の走行制御部44は、GSE13と航空機100との間の距離が8mとなったとき、すなわち、GSE13が上述のISAGO規格によって規定された低速エリアE1に到達したとき、走行速度が5km/h以下となるように自車の走行を制御する。なお、このときに使用されるレーザ照射部は、上記実施形態において作業用出入口14の相対水平位置を検出するためにレーザを照射するレーザ照射部43と同じものでもよく、別のものでもよい。また、レーザ照射部43による各GSE13と航空機100との間の距離の検出は、各GSE13が走行を開始した直後から行われてもよく、各GSE13が所定の位置(例えば作業エリア102)に到達した後から行われてもよい。また、平面グリッドGのようにマス目を利用するのではなく、平面座標系を用いてもよい。
【0102】
上記実施形態では、各GSE13の走行制御部44は、自車の現在位置が超微速エリアE3(且つ所定位置)に到達したとき、自車の走行を一旦停止している。しかしながら、各GSE13の走行制御部44は、自車の現在位置が超微速エリアE3(且つ所定位置)に到達したとき、自車の走行を停止しなくてもよい。この場合、GSE13が作業用出入口14に向かって超微速エリアE3を0.7km/h以下の速度で走行しているときに、ステップS27、ステップS16~S19が並行して行われる。
【0103】
上記実施形態では、出入口位置予測部241は、GSE13の接続部分46の高さに対する作業用出入口14の鉛直方向の相対高さ位置と、GSE13に対する作業用出入口14の水平方向の相対水平位置とを予測している。しかしながら、出入口位置予測部241は、相対高さ位置の予測のみを行うものでもよい。この場合、出入口位置検出部242は、出入口位置予測部241によって予測された相対高さ位置のみを参照して、レーザ照射部43によって航空機100にレーザを照射させる。
【0104】
また、上記実施形態において、出入口位置検出部242は、設けられていなくてもよい。この場合、接近経路設定部243は、出入口位置予測部241によって予測された相対高さ位置及び相対水平位置に基づいて、接近経路を設定する。
【0105】
上記実施形態では、出入口位置検出部242は、作業用出入口14の相対水平位置のみを検出している。しかしながら、出入口位置検出部242は、作業用出入口14の相対高さ位置及び相対水平位置の両方を検出するものでもよい。この場合、出入口位置検出部242は、各GSE13のレーザ照射部43によって、鉛直方向及び水平方向の両方に沿ってレーザを照射させることで相対高さ位置及び相対水平位置の正確な位置を検出する。
【0106】
上記実施形態では、出入口位置検出部242は、開口した作業用出入口14による航空機100の凹凸を検出することで、各GSE13に対する作業用出入口14の相対水平位置を検出している。しかしながら、作業用出入口14を開口させていなくてもよい。この場合、例えば、出入口位置検出部242は、作業用出入口14の固有の色や、作業用出入口14の外枠の微小な凹凸などを検出することで、各GSE13に対する作業用出入口14の相対水平位置を検出する。
【0107】
上記実施形態では、出入口位置予測部241による作業用出入口14の相対高さ位置及び相対水平位置の予測、及び、出入口位置検出部242による作業用出入口14の相対水平位置の検出が行われるとき、GSE13は一旦停止している。そして、GSE13が停止しているときに、接近経路設定部243による接近経路の設定、及び、シミュレーション部247によるシミュレーションが実行される。しかしながら、出入口位置予測部241による作業用出入口14の相対高さ位置及び相対水平位置の予測は、各GSE13の走行中において、連続的又は所定の時間おきに行われていてもよい。また、出入口位置検出部242による作業用出入口14の相対水平位置の検出は、各GSE13の走行中において、連続的又は所定の時間おきに行われていてもよい。この場合、接近経路設定部243によって設定される接近経路は、走行している各GSE13の現在位置と各GSE13に対する作業用出入口14の相対水平位置とに基づいて適宜、最新版に更新され、更新されるたびに各GSE13に送信される。また、シミュレーション部247によるシミュレーションは、各GSE13の走行中において、接近経路の更新に対応して適宜実行される。この場合において、シミュレーションによってGSE13と航空機100とが接触する可能性があると判断されたとき、当該GSE13の走行を停止させてもよい。
【0108】
上記実施形態において、接近経路設定システム24又は接近経路設定システム24を含む空港システム10は、作業用出入口14への貨物等の搬出入を行うための装置であって、GSE13に設けられた荷役装置に、航空機100と所定の圧力で接触するホイールをさらに備えていてもよい。荷役装置は、接続部分46を含む。ホイールは回転可能であって、ホイールの回転方向によって航空機100の機体の高さ位置の上下変化を検知可能である。GSE13による地上支援作業に伴って、航空機100に貨物を搬出入したり、乗員及び乗客が乗り降りしたりすると、航空機100の機体の重量が変化し、機体の高さ位置が上下することがある。このような場合に、GSE13によって地上支援作業が行われている最中において、ホイールの回転方向によって航空機100の機体の上下を検知し、GSE13の接続部分46の高さ位置を調整することができる。
【0109】
また、上記ホイールが航空機100に接触する際の圧力が所定範囲内となるように、GSE13の荷役装置を航空機100に向かって前進及び後退させる構成でもよい。具体的には、圧力が大きすぎる場合は荷役装置を後退させ、圧力が0又は小さすぎる場合は荷役装置を前進させる。
【0110】
上記実施形態において、接近経路設定システム24又は接近経路設定システム24を含む空港システム10は、GSE13の荷役装置に取り付けられ、荷役装置と航空機100との接触を検知するバンパーセンサを有していてもよい。この場合、各GSE13の走行制御部44は、接近経路に沿って自車を作業用出入口14に接近させている途中で、バンパーセンサによってGSE13の荷役装置と航空機100との接触が検知された場合、自車の走行を停止させる。これにより、接近経路が、各GSE13が作業用出入口14に接近する過程で航空機100と接触することのない経路であるにもかかわらず、何らかの動作トラブル等によってGSE13と航空機100とが接触してしまった場合に、速やかにGSE13の走行を停止することができる。
【0111】
また、上記実施形態において、接近経路設定システム24又は接近経路設定システム24を含む空港システム10は、航空機100の機種ごとに、各GSE13の対応する作業用出入口14への接近位置を記憶する記憶部を有していてもよい。この場合、各GSE13の走行制御部44は、過去に各GSE13の各作業用出入口14への接近制御を行ったことのある機種の航空機100について、記憶部に記憶された機種ごとの各GSE13の各作業用出入口14への接近位置に基づいて、各GSE13を対応する作業用出入口14に接近させる。これにより、GSE13を速やかに航空機100に接近させることができる。記憶部は、各GSE13に搭載されていてもよく、接近経路設定システム24に含まれていてもよく、空港システム10における他のシステム(GSE管制22、案内経路設定システム23、又は、その他のシステムなど)に含まれていてもよい。
【0112】
また、上記実施形態において、案内経路設定システム23の経路設定部233、予約領域設定部234は、GSE13に設けられてもよい。さらに、接近経路設定システム24の一部または全ての構成をGSE13に設けてもよい。また、接近経路設定システム24の機能部240~249が物理的にどこに設けられているかについて制限はなく、機能部240~249の少なくとも一部がGSE管制22とは別の管制やGSE13に組み込まれていてもよい。この場合、GSE管制22や案内経路設定システム23が、本発明の接近経路設定システムとしても機能する。
【0113】
また、航空機100の機種によっては、作業用出入口14の開閉スイッチ位置が高く、通常の作業時のように作業者が脚立等に登り、作業用出入口14を開閉できない場合がある。このような機種の場合は、GSE13を航空機100に予め接近させ、GSE13に乗車している作業者が、荷役装置に登って作業用出入口14を開閉し、再度GSE13を航空機100から離間させ、接近経路設定システム24によって作業用出入口14へ接近するようにしてもよい。なお、作業用出入口14を開閉するためにGSE13を接近させる場合の接近距離は、適宜設定することができる。また、案内経路設定システム23は、GSE管制22から予め航空機100の機種情報を取得しているため、上記のように作業用出入口14を開閉する必要がある機種にGSE13を誘導する場合、作業用出入口14の開閉スイッチ位置にGSE13を誘導するようにしてもよい。
【0114】
また、接近経路設定システム24は、案内経路に沿って走行するGSE13と作業用出入口14との間の距離が所定値となる所定位置に到達したか否か判定する判定部をさらに有するようにしてもよい。そして、判定部によってGSE13が所定位置に到達したと判定されたときに、各GSE13の走行制御部44は作業用出入口14の開口を要求する信号をGSE管制22に送信し、接近経路設定システム24はステップS17以降のステップを実行する。これによれば、出入口位置予測部241は、GSE13が所定位置に到達したと判定されてから相対高さ位置及び相対水平位置の予測を行う。また、出入口位置検出部242は、GSE13が所定位置に到達したと判定されてから相対水平位置の検出を行う。このため、GSE13が所定位置に到達したと判定される前に作業用出入口14の相対高さ位置又は相対水平位置の予測や検出を行う場合と比べて、より限定された範囲において相対高さ位置又は相対水平位置の予測や検出を行うことができる。このため、相対高さ位置及び相対水平位置の予測や検出を効率的に行うことができる。
【0115】
さらに、接近経路設定システム24の通信部240は、案内経路設定システム23によって設定された平面グリッドGの座標情報を受信し、出入口位置予測部241は平面グリッドGの座標情報に基づいて、作業用出入口14の相対水平位置を予測してもよい。
【0116】
重量取得部245及び傾き取得部246は、上記実施形態の構成に限られない。重量取得部245は、例えば、航空機100の積載物の重量を直接検知可能な重量センサを有するものでもよい。また、傾き取得部246は、例えば、航空機100の基準面に対する傾き量を直接検知可能な傾き検知センサを有するものでもよく、外部カメラによって撮影された航空機100の全体像から航空機100の基準面に対する傾き量を取得するような構成でもよい。
【0117】
上記実施形態において、接近経路設定システム24は、出入口位置予測部241による相対高さ位置の予測時における航空機100のタイヤの予測時厚さ(摩耗)やタイヤの予測時圧力を取得可能でもよい。この場合、出入口位置予測部241は、タイヤの予測時厚さと基準厚さとの比較、及び、タイヤの予測時圧力と基準圧力との比較に基づいて、作業用出入口14の相対高さ位置の予測値を補正する。タイヤの厚さの所定の基準値である基準厚さ及びタイヤの圧力所定の基準値である基準圧力は、例えば、機種情報に含まれている。基準厚さは、例えば、航空機100のタイヤの交換時のタイヤの厚さである。また、基準圧力は、例えば、所定の地域における航空機100のタイヤの交換時の圧力であって、予め設定される。
【0118】
上記実施形態において、一のGSE13の接近経路の設定時に、他のGSE13によって積載物の搬入又は搬出が継続して行われている場合、シミュレーション部247は、当該一のGSE13の接近動作中の航空機100の沈み込み量の変化を考慮してシミュレーションを行ってもよい。より詳細に説明すると、他のGSE13によって積載物の搬入又は搬出が継続して行われている場合、一のGSE13の接近動作中でも航空機100の沈み込み量は変化する。このため、シミュレーション部247は、一のGSE13の接近動作の開始から終了までの間における航空機100の沈み込み量の変化を考慮しつつ、GSE13と航空機100とが接触する可能性があるか否かを判断する。
【0119】
本発明において、GSE13は、GSE13に含まれる制御部が、接続部分46の高さ調整を行うものでもよい。この場合において、例えば、GSE13の通信部41は、本発明の接近経路設定システム24によって設定された接近経路を受信する。また、位置情報取得部42は、自車の現在の位置情報を取得する。そして、制御部は、位置情報取得部42によって取得された現在の位置情報と、接近経路とに基づいて、接続部分46の高さの調整を行う。制御部は、例えば、走行制御部44でもよく、航空管制21やGSE管制22からの遠隔操作信号を受信して、当該信号に基づいてGSE13の走行制御を行うものでもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 空港
10 空港システム
13 GSE
14 作業用出入口
15 作業者端末
21 航空管制
22 GSE管制
23 案内経路設定システム
24 接近経路設定システム
41 通信部
42 位置情報取得部
43 レーザ照射部
44 走行制御部
45 ID取得部
100 航空機
222 機種情報取得部
240 通信部
241 出入口位置予測部
242 出入口位置検出部
243 接近経路設定部
244 現在位置取得部
245 重量取得部
246 傾き取得部
247 シミュレーション部
248 スケジュール取得部
249 作業進捗データ取得部
E1 低速エリア
E2 微速エリア
E3 超微速エリア