(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183598
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20221206BHJP
F24C 7/04 20210101ALI20221206BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F24C7/02 345J
F24C7/02 H
F24C7/02 320F
F24C7/04 301Z
A47J37/06 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091005
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】京谷 浩平
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 功一
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 深雪
【テーマコード(参考)】
3L086
3L087
4B040
【Fターム(参考)】
3L086AA01
3L086AA12
3L086AA20
3L086CB05
3L086CC02
3L086CC13
3L086DA29
3L087AA01
3L087AA05
3L087AA20
3L087BA03
3L087BB05
3L087BC02
3L087BC12
3L087DA26
4B040AA03
4B040AA08
4B040CA05
4B040CA06
4B040LA11
4B040LA20
(57)【要約】
【課題】食材を柔らかく、かつ雑味なくしあげることが可能な加熱調理器を提供する。
【解決手段】被加熱物を収納する加熱室と、被加熱物を加熱する加熱手段と、加熱手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、操作パネルから指定される調理パターンで前記加熱手段を制御し、たんぱく質を含む食材と、たんぱく質分解酵素を含む調味材と、を同時に調理する過程において、加熱手段を制御してたんぱく質分解酵素が活性化する温度帯に加熱する第1加熱工程と、その後加熱手段を制御してたんぱく質分解酵素が失活する温度にて食材を加熱する第2加熱工程の2段階工程に制御することを特徴とする加熱調理機。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収納する加熱室と、前記被加熱物を加熱する加熱手段と、加熱手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、操作パネルから指定される調理パターンで前記加熱手段を制御し、たんぱく質を含む食材と、たんぱく質分解酵素を含む調味材と、を同時に調理する過程において、前記加熱手段を制御してたんぱく質分解酵素が活性化する温度帯に加熱する第1加熱工程と、その後前記加熱手段を制御してたんぱく質分解酵素が失活する温度にて食材を加熱する第2加熱工程の2段階工程に制御することを特徴とする加熱調理機。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理機であって、
前記第1加熱工程の温度帯は40~60℃であり、前記第2加熱工程の温度帯は80℃以上とされることを特徴とする加熱調理機。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱調理機であって、
前記第1加熱工程における前記加熱手段は、マイクロ波を前記加熱室に放射する手段であることを特徴とする加熱調理機。
【請求項4】
請求項1に記載の加熱調理機であって、
前記第2加熱工程における前記加熱手段は、オーブン加熱、グリル加熱、スチーム加熱のいずれかであることを特徴とする加熱調理機。
【請求項5】
請求項1に記載の加熱調理機であって、
前記第1加熱工程では、たんぱく質を含む食材を、たんぱく質分解酵素を含む調味材に液浸、または、たんぱく質分解酵素を含む調味材を塗布またはふりかけた状態において加熱し、前記第2加熱工程では、たんぱく質を含む食材を非液浸状態において加熱するとともに、前記第1加熱工程が終了したことを報知する報知手段を有することを特徴とする加熱調理機。
【請求項6】
請求項5に記載の加熱調理機であって、
前記第1加熱工程終了後、ドア開閉を検知し、第2加熱工程を開始することを特徴とする加熱調理機。
【請求項7】
請求項5に記載の加熱調理機であって、
前記第1加熱工程終了後、たんぱく質を含む食材とたんぱく質分解酵素を含む調味材の重量を検知し、第2加熱工程を開始することを特徴とする加熱調理機。
【請求項8】
請求項1に記載の加熱調理機であって、
下面に発熱体を有した容器内に食材が入っている場合は、第二加熱工程において、マイクロ波による加熱と、オーブン加熱またはグリル加熱を交互または順に切り替えることを特徴とする加熱調理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,家庭用オーブン電子レンジなどの加熱調理器においては,食品の温度に応じて工程を切り替えることによって,食品に最適な加熱調理を行っている。
【0003】
例えば,鶏肉等の調理においては、被加熱物中のうまみ成分を増やすために適した温度帯で調理を行っている。特許文献1では「被加熱物の内部温度Tの昇温過程において,被加熱物のうまみ成分を分解する酵素が活性化しはじめる温度をT0,被加熱物のうまみ成分を分解する酵素が失活する温度をT1,被加熱物のたんぱく質を分解してうまみ成分を生成する酵素が失活する温度をT2とし,うまみ成分が増減しない範囲T<T0を通過する時間t(01)と,うまみ成分が分解される温度範囲T0<T<T1を通過する時間t(-)と,うまみ成分が生成される温度範囲T1<T<T2を通過する時間t(+)と,うまみ成分が増減しない温度範囲T2<Tを通過する時間t(02)において,該時間t(-)よりも該時間t(+)が長くなるように,該時間t(01),該時間t(+),該時間t(-),該時間t(02)のそれぞれにおいて該制御手段によって加熱手段を切り替える」ことで、被加熱物中のうまみ成分を増やしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たんぱく質を含む牛肉、豚肉、鶏肉や魚介類等の食材は、その調理の前段階(前処理)において、たんぱく質分解酵素を含む調味材に漬け込むことによって、食材を柔らかくできることが知られている。たんぱく質分解酵素が活性化する温度帯は40~60℃であり、この温度帯で長時間食材を漬け込むことで、食材をやわらかくすることができる。
【0006】
特許文献1では、うまみ成分が分解される温度範囲40~55℃を通過する時間t(-)と,うまみ成分が生成される温度範囲55~80℃を通過する時間t(+)において、該時間t(-)よりも該時間t(+)が長くなるように加熱手段を切り替えるとあるが、この温度帯ではたんぱく質分解酵素によるたんぱく質分解効果を得られがたく、食材をやわらかくできない懸念がある。また、55~80℃の温度範囲で、長時間食材を漬け込んだ場合、食材の表面付近のたんぱく質が酵素により食感を損ねるほど、どろっと感じるほど分解され、あるいは表面付近のみ食材に熱が入りすぎて、食材が固くなってしまう、あるいはたんぱく質分解酵素が失活し食材が分解されず硬いままとなってしまう懸念がある。
【0007】
以上のことから本発明においては、食材を柔らかく、かつ雑味なく仕上げることが可能な加熱調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
被加熱物を収納する加熱室と、被加熱物を加熱する加熱手段と、加熱手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、操作パネルから指定される調理パターンで前記加熱手段を制御し、たんぱく質を含む食材と、たんぱく質分解酵素を含む調味材と、を同時に調理する過程において、加熱手段を制御してたんぱく質分解酵素が活性化する温度帯に加熱する第1加熱工程と、その後加熱手段を制御してたんぱく質分解酵素が失活する温度にて食材を加熱する第2加熱工程の2段階工程に制御することを特徴とする加熱調理機。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食材を柔らかく、かつ雑味なく仕上げることができる。例えばたんぱく質を含む牛肉、豚肉、鶏肉等の食材を、たんぱく質分解酵素を含む調味材に漬け込む調理の前段階において、適切な温度帯である40~60℃で食材を漬け込むことにより、食材をやわらかくすることができる。その後たんぱく質分解酵素が失活する温度である80℃以上の温度にて食材を焼成することで、たんぱく質分解酵素の雑味を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係る加熱調理器の一例であるオーブンレンジの立体図。
【
図2】本発明の実施例に係る加熱調理器の一例であるオーブンレンジの断面図。
【
図3】食材をたんぱく質分解酵素に浸す容器の一例を示す図。
【
図4】本発明に係る加熱調理器の調理フローの一例を示す図。
【
図5】第1加熱工程と第2加熱工程の処理の流れを示すタイムチャート。
【
図6】本発明の実施例2に係る加熱調理器の一例であるオーブンレンジの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例0012】
図1は本発明の実施例に係る加熱調理器の一例であるオーブンレンジの立体図であり,
図2はオーブンレンジ1の断面図である。
【0013】
これらの図に示すように、オーブンレンジ1は加熱室3と機械室8をキャビネット2で囲った構造である。加熱室3内にはテーブル31が配置されており,このテーブル31に被加熱物を載置して加熱調理を行う。
【0014】
加熱室3の下部に配置された機械室8には,制御手段81やマグネトロン82または半導体固体素子(図示せず)が収納されている。本実施例ではマイクロ波の放射手段としてマグネトロン82を用いて説明するが、マグネトロンの代替として半導体固体素子を用いてもよい。マイクロ波を照射する加熱の場合(レンジ加熱と呼ぶ),機械室8に設置されたマグネトロン82から放射されるマイクロ波は
図2の回転モータ84によって回転される回転アンテナ83によって加熱室3内に撹拌されながら放射されることで,ムラを抑えて被加熱物を加熱する。
【0015】
加熱室3の上方に設置された上ヒータ61を用いた加熱の場合(グリル加熱と呼ぶ),上ヒータ61の輻射熱によって被加熱物が加熱される。
【0016】
加熱室後方に設置された
図2の熱風ヒータ62を用いた加熱の場合(オーブン加熱と呼ぶ),モータ22によって回転されるファン23によって,熱風ヒータ62によって加熱された空気が庫内に循環する。
【0017】
加熱室3側面の外側面に取り付けられた
図2のスチーム発生手段63とポンプ(図示せず)からなるスチームユニットによる加熱の場合(スチーム加熱と呼ぶ)、スチーム発生手段63への水の供給はポンプの駆動によって水タンク11から供給される。スチーム発生手段63にはシーズヒータが埋め込んであり、短時間で水を沸騰し、スチーム噴出口63fから加熱室3の内部に噴出され、被加熱物7が加熱される構造である。
【0018】
このレンジ加熱,グリル加熱,オーブン加熱、スチーム加熱の4つの加熱手段は,制御手段81によって自由に制御,駆動できる。例えば,複数の加熱手段を組み合わせて同時に駆動し,あるいは複数の加熱手段を交互に駆動することも可能である。
【0019】
加熱室3の正面はドア5によって開閉できる構造であり,ドア5にはドア5を閉じた状態でも内部の被加熱物の状態を確認できるファインダ51が設置されている。また、オーブンレンジ1は、ドア5の開閉を検知するドア開閉検知部(図示せず)を備えている。
【0020】
加熱室3の側面には光照射手段4が設置されており,テーブル31上に載置された被加熱物にむけて光を照射している。ここで,光照射手段4は反射板41によって囲まれており,光照射手段4から照射される光は反射板41によって反射されて加熱室3内に入り,被加熱物に照射される。光照射手段4には可視光を照射するランプを用いることで,加熱室3内を明るくし,使用者にとって被加熱物の様子を見やすくすることができる。
【0021】
加熱室3天面には
図2の赤外線ユニット70が設けられている。赤外線ユニット70には赤外センサ(図示せず)やレンズ(図示せず)からなり、被加熱物や、テーブル31全面の表面温度を検出することができる。
【0022】
テーブル31を支持する重量センサ9は被加熱物の重量を測定することができる。
この測定重量と,赤外線ユニット70で検出した表面温度から,温度推測手段によって、被加熱物の内部温度変化のための加熱パターンに追従する適切な制御パターンを計算し,また被加熱物の内部温度を推測することができる。なお、重量センサ9を備えていない場合は、赤外線ユニット70による被加熱物の表面温度の時間変化と加熱量から、被加熱物の内部温度を推定してもよい。
図3は食材をたんぱく質分解酵素に浸す容器を示している。容器本体10aと上蓋10bからなる容器10は、耐熱性樹脂、セラミック、結晶化ガラス、シリコンなどで製作されており、その内部に食材を収納する。上蓋10bにはチェックバルブ付排気口12が設けられている。上蓋10bの内面にはシール部材13が設けられており、容器本体10aに上蓋10bをした際に、容器本体10aはシール部材に押し付けられて、容器は密閉される。使用者は、容器9に食材、調味液を入れて上蓋10bをしたのちに、チェックバルブ付排気口12から手動または電動ポンプで容器内の気体を吸引して、容器10内を減圧することができる。容器10内を減圧することで、食材の内部に調味液が浸透しやすくなり、より食材をやわらかくすることができる。
【0023】
図4は、本発明に係る加熱調理器の調理フローを示しており、以下
図4を用いて,オーブンレンジ1を用いて調理を行う過程を説明する。
【0024】
まず使用者は,処理ステップS0においてオーブンレンジ1のドア5を開けて加熱室3内のテーブル31の上に被加熱物を載置する。この場合の被加熱物は、食材を載置した深皿などであり、あるいは食材を収納した
図3の容器10である。
【0025】
その後使用者はドア5を閉め,処理ステップS1においてドア5上に配置された操作パネル(図示せず)を用いて食品の種類を選択し,スタートボタンを押すことで調理開始を指示する。その際に、この場合の調理が、食材の柔らか調理を行うものであることが、処理ステップS1において別途指示入力され、通常の加熱とは異なる方式での加熱であることを明確に指示される方式とするのがよい。
【0026】
調理開始を指示すると,オーブンレンジ1の制御手段81は操作パネルで指定された食品に応じてマグネトロン82,上ヒータ61,熱風ヒータ62、スチーム発生手段63の加熱手段を制御し,被加熱物に応じて加熱を行うが、このときに制御手段81は処理ステップS2においてこれらの加熱手段による加熱パターンを計算し、以降このパターンに応じた加熱工程の制御を実行する。ここでの加熱工程は、第1加熱工程と第2加熱工程に分けて実行される。
【0027】
ここでは、第1加熱工程と第2加熱工程の詳細について、牛肉と、たんぱく質分解酵素を含む調味材とを、同時に加熱調理する例を示して詳細に説明する。
【0028】
図5は、第1加熱工程と第2加熱工程の処理の流れを示すタイムチャートである。
図5において、加熱工程は、牛肉の内部温度が、たんぱく質分解酵素が活性化する温度である40~60℃となるように加熱する第1加熱工程と、その後たんぱく質分解酵素が失活する温度である80℃以上の温度にて食材を焼成する第2加熱工程に分かれる。使用者は,オーブンレンジ1のドア5を開けて加熱室3内のテーブル31の上に、たんぱく質分解酵素を含む調味液に浸された牛肉を容器10ごと載置し,ドア5上に配置された操作パネル(図示せず)を用いて調理の種類を選択し,スタートボタンを押すことで調理開始を指示する。
【0029】
これに応じて、赤外線ユニット70で検出した牛肉の表面温度と、重量センサ9によって測定された牛肉の重量から温度推測手段によって、牛肉の内部温度がたんぱく質分解酵素が活性化する40~60℃の温度帯となるように第1の加熱工程に適切な制御パターンを計算する。この処理が、
図4の処理ステップS2に相当する。
【0030】
計算された第1加熱工程の加熱パターンが渡されることで,制御手段81は第1加熱工程を制御する。この第1加熱工程は、たんぱく質分解酵素を含む調味液に浸された牛肉を容器10内に液浸状態として加熱するものであり、牛肉の内部温度がたんぱく質酵素が活性化する40~60℃の温度帯となるように加熱されることで、牛肉のたんぱく質分解が促進されやわらかく仕上がる。
【0031】
また、第1加熱工程では40~60℃の温度帯で加熱することで、長時間の加熱による食材の硬化を回避することができる。また、熱による食材の硬化を回避するためにより好ましくは、温度帯は40~50℃とされるのがよい。第1加熱工程の運転時間は、牛肉表面の食感を損ねない30分程度が好ましいが、やわらかさを重視して、1時間程度であっても良い。
【0032】
また、第1加熱工程においては、加熱手段としてマイクロ波によるレンジ加熱がより好ましい。マイクロ波の発生は、マグネトロン82または半導体固体素子(図示せず)が利用可能である。レンジ加熱は食材の芯温を短時間で上げやすく、食材内部に浸透したたんぱく質分酵素を短時間で活性化することで、食材の内部までたんぱく質を分解し、食材を軟化しやすい利点がある。
【0033】
第1加熱工程が終了すると、第1加熱工程が終了したことをディスプレイに表示、アラーム音等によって使用者に報知する。これが
図4の処理ステップS4における報知処理である。
【0034】
使用者は第1加熱工程の終了を受けて、
図3の容器10の上蓋10bを取り外して、調味液を排出し、再度加熱室3内のテーブル31の上に載置する。これが
図4の処理ステップS5における調味液排出処理である。これにより、以降に実施される第2加熱工程での加熱は非液浸状態での加熱とされる。制御手段81は、処理ステップS6において第1加熱工程の終了後、ドア開閉検知部(図示せず)によるドア5の開および閉を検知して、これを条件として以降の第2加熱工程を開始することができる。また、この際、重量センサ9による調味液排出による重量減を検知し、これを新たな第2加熱工程の開始条件にすると、第2工程の加熱量を精度よく制御可能となる。
【0035】
なお、手動または電動ポンプで容器10内の気体を吸引して容器10内を減圧した場合、チェックバルブ付き排気口12を開くことで、容器10内を大気圧に復圧することで、容器10の上蓋10bを容易に取り外すことができる。
【0036】
処理ステップS7の第2加熱工程では、牛肉を容器10内に非液浸状態として加熱するものであり、牛肉の内部温度がたんぱく質分解酵素が失活する80℃以上の温度となるように加熱されることで、たんぱく質分解酵素の雑味を取り除くことができる。第2加熱工程の加熱手段としては、グリル加熱、オーブン加熱、スチーム加熱のいずれかが好ましい。グリル加熱、オーブン加熱、スチーム加熱は食材表面の温度を上げやすく、食材表面のメイラード反応を促進して香ばしく食材を仕上げることができる。また、食材表面を高温短時間で仕上げることができるため、食材の芯の過加熱を抑制し、食材の硬化を回避することができる。第2加熱工程の終了後は、処理ステップS8において、一連の調理課程を終了する。
なお、第1の加熱工程において食材の芯までやわらかく仕上げるためには、内部温度を推測し、内部温度がたんぱく質分解酵素が活性化する40~60℃となるように加熱することが、食材内部までたんぱく質分解酵素を活性化させ、より好ましい。しかしながら、被加熱物の内部温度推測が難しい際や、食材表面の食感を優先する際は、赤外線ユニット70を用いて、食材の表面温度が40~60℃となるように加熱すればよい。この場合、食材の表面付近のたんぱく質が酵素により食感を損ねるほど、どろっと感じるほど分解されるのを防いだり、あるいは表面付近のみ食材に熱が入りすぎて、食材が固くなってしまうのを防ぐことができる。
【0037】
ここで、肉類と野菜、あるいは魚介類と野菜を一度に柔らかく調理することも可能である。例えば、肉類のたんぱく質分解酵素と、野菜の細胞壁を分解や壊す酵素とを混ぜた調味液を肉類と野菜を入れた容器に注ぎ、第1加熱工程の温度帯で食材に酵素を反応させ、第2加熱工程で食材を仕上げるようにすればよい。この時、野菜と反応させる酵素は、肉と反応させる酵素と同程度の温度帯でも反応効果を得られる酵素を用いることで、肉類の軟化のし過ぎや、硬化を抑制することが可能である。
【0038】
本実施例では、食材をたんぱく質分解酵素を含む調味液に浸漬する構成を示したが、この限りではない。食材にたんぱく質分解酵素を含む調味粉末を塗布するものであっても構わない。また、調味液、調味粉末等に限らず、玉ねぎや、パイナップル、まいたけ、塩麹等、たんぱく質分解酵素を含む食材であっても構わない。
【0039】
本実施例では、食材をたんぱく質分解酵素を含む調味液に浸漬する構成を示し、第1加熱工程と第2加熱工程との間に、調味液を排出する調理フロー(処理ステップS5)を示したが、この限りではない。例えば、たんぱく質分解酵素を含む調味材には、第2加熱工程前に食材からの除去が不要なものがある。また、塩麹等に関しても同様で、除去は不要である。この場合、調味液排出工程(処理ステップS5)および第2加熱工程への移行判定(処理ステップS6)は不要であり、自動的に第2加熱工程に移行しても良い。同様に、食材をたんぱく質分解酵素を含む調味液とともに煮込むような調理の場合も、調味液排出工程(処理ステップS5)および第2加熱工程への移行判定(処理ステップS6)は不要である。これらの場合に備えて、調味材を除去する調理コースと、調味材を除去しない調理コースの2つの調理コースを設けておくのがよい。なお、第2加熱工程は、非液浸状態での加熱となるが、非液浸状態の加熱とは、除去不要のたんぱく質分解酵素を含む調味粉末を食材に塗布またはふりかけた状態での加熱も含む。
【0040】
なお、本実施例では、加熱手段としてレンジ加熱、オーブン加熱、グリル加熱、スチーム加熱を有するオーブンレンジを例に記載したが、この限りではない。例えば、オーブン加熱、グリル加熱のみを有する加熱調理機であってもよい。