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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183605
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/65 20180101AFI20221206BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20221206BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20221206BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/61
F24F11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091016
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】高木 元輝
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA02
3L260BA34
3L260CB62
3L260CB67
3L260CB68
3L260DA20
3L260FA02
3L260FA15
3L260FC32
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】複数の室内機で洗浄運転を行う場合において、洗浄運転を行う時間を適切に設定する。
【解決手段】第2環境条件に比べてより多くの水分が各室内熱交換器に付着する条件である第1環境条件に該当する場合(S17:YES)、蒸発器フェーズの重複期間が変更されない第1洗浄処理を実行する(S18)。第2環境条件に該当する場合(S17:NO)、重複期間が変更又は短縮された第2洗浄処理を実行する(S19)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外熱交換器を含む室外機と、
前記室外機に冷媒配管を介して接続されており、第1ファン及び第1室内熱交換器を含む第1室内機と、
前記室外機に前記冷媒配管を介して接続されており、第2ファン及び第2室内熱交換器を含む第2室内機と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1室内熱交換器を蒸発器として機能させて前記第1室内熱交換器に水分を付着させる蒸発器フェーズを含む、前記第1室内機での洗浄運転、及び、前記第2室内熱交換器を蒸発器として機能させて前記第2室内熱交換器に水分を付着させる蒸発器フェーズを含む、前記第2室内機での洗浄運転を実行可能であり、
前記第1室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間と前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間とが重複するような要求があった場合、前記第1室内機が設置された場所又は前記第2室内機が設置された場所の環境条件に応じて、重複期間の長さを変更する空気調和機。
【請求項2】
前記制御部は、第1環境条件が、第2環境条件に比べて、より多くの水分が前記第1室内熱交換器及び前記第2室内熱交換器に付着する条件であるとき、前記第1環境条件において、前記重複期間が第1時間となる第1洗浄処理をし、前記第2環境条件において、前記重複期間が前記第1時間よりも短い第2時間となる第2洗浄処理をする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記重複期間の長さをゼロとする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記蒸発器フェーズの終了直後に、前記第2室内機での前記蒸発器フェーズを開始する請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記重複期間の長さをゼロより大きい値とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記洗浄運転の実行期間と前記第2室内機での前記洗浄運転の実行期間との重複期間の長さをゼロとする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1室内機での前記洗浄運転と前記第2室内機での前記洗浄運転とを同時に開始させるような要求がされた場合、前記第2洗浄処理では、ユーザによって予め設定された順番で前記第1室内機及び前記第2室内機での前記洗浄運転を開始する請求項2~6のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1室内機での前記洗浄運転と前記第2室内機での前記洗浄運転とを同時に開始させるような要求がされた場合、前記第2洗浄処理では、前記第1室内機及び前記第2室内機のうちで優先機として設定された前記室内機での前記洗浄運転を最初に開始する請求項2~6のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1室内機での前記洗浄運転と前記第2室内機での前記洗浄運転とを同時に開始させるような要求がされた場合、前記第2洗浄処理では、前記第1室内機及び前記第2室内機のうちで直近の前記洗浄運転の実行からの経過時間が長い方の前記室内機での前記洗浄運転を最初に開始する請求項2~6のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1室内機での前記洗浄運転と前記第2室内機での前記洗浄運転とを同時に開始させるような要求がされた場合、前記第2洗浄処理では、前記第1室内機及び前記第2室内機のうちで直近の前記洗浄運転の実行からの合計運転時間が長い方の前記室内機での前記洗浄運転を最初に開始する請求項2~6のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項11】
前記第1室内機での前記洗浄運転は、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第1ファンを回転させる送風フェーズと、前記送風フェーズ後に、前記第1室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズとを含んでおり、
前記第2室内機での前記洗浄運転は、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第2ファンを回転させる送風フェーズと、前記送風フェーズ後に、前記第2室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズとを含んでおり、
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記送風フェーズの実行期間と前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間とを重複させるとともに、前記第1室内機での前記送風フェーズを前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの終了までは継続する請求項2~10のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項12】
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記送風フェーズを前記第2室内機での前記送風フェーズの終了とともに終了する請求項11に記載の空気調和機。
【請求項13】
前記第1室内機での前記洗浄運転は、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第1ファンを回転させる送風フェーズとを含んでおり、
前記第2室内機での前記洗浄運転は、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第2ファンを回転させる送風フェーズと、前記送風フェーズ後に、前記第2室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズとを含んでおり、
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記送風フェーズの実行期間と前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間とを重複させるとともに、前記第2室内機での前記送風フェーズの終了後に、前記室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズを実行する請求項2~10のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項14】
前記制御部は、第1環境条件が、第2環境条件に比べて、より多くの水分が前記第1室内熱交換器及び前記第2室内熱交換器に付着する条件であるとき、前記第1環境条件において、前記重複期間が第1時間となる第1洗浄処理をし、前記第2環境条件において、前記重複期間が前記第1時間よりも長い第2時間となる第2洗浄処理をし、
前記第1室内機での前記洗浄運転は、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第1ファンを回転させる送風フェーズと、前記送風フェーズ後に、前記第1室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズとを含んでおり、
前記第2室内機での前記洗浄運転は、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第2ファンを回転させる送風フェーズと、前記送風フェーズ後に、前記第2室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズとを含んでおり、
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間内に前記第2室内機での前記蒸発器フェーズを開始させるとともに、前記第1室内機での前記蒸発器フェーズを前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの終了時まで実行する請求項1に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の水分を室内熱交換器の表面に結露又は着霜させ、その水分で室内熱交換器を洗浄処理する空気調和機が知られている。また、特許文献1には、1台の室外機と複数台の室内機とを有するマルチ型空気調和機において、所定の条件が成立すると、複数の室内機での洗浄処理を行う時間帯の少なくとも一部を重ねることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6786019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように複数の室内機で同時に洗浄処理(洗浄運転)を実行すると、室内機が設置された場所の湿度を含む環境条件によっては、室内熱交換器の表面に結露又は着霜する単位時間当たりの水分量が少量となることがある。このような場合、所望の洗浄効果が得られなくなることが懸念される。
【0005】
本開示の目的は、複数の室内機で洗浄運転を行う場合において、洗浄運転を行う時間を適切に設定できる空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る空調室内機は、室外熱交換器を含む室外機と、前記室外機に冷媒配管を介して接続されており、第1ファン及び第1室内熱交換器を含む第1室内機と、前記室外機に前記冷媒配管を介して接続されており、第2ファン及び第2室内熱交換器を含む第2室内機と、制御部と、を備えている。前記制御部は、前記第1室内熱交換器を蒸発器として機能させて前記第1室内熱交換器に水分を付着させる蒸発器フェーズを含む、前記第1室内機での洗浄運転、及び、前記第2室内熱交換器を蒸発器として機能させて前記第2室内熱交換器に水分を付着させる蒸発器フェーズを含む、前記第2室内機での洗浄運転を実行可能であり、前記第1室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間と前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間とが重複するような要求があった場合、前記第1室内機が設置された場所又は前記第2室内機が設置された場所の環境条件に応じて、重複期間の長さを変更する。
【0007】
本開示によると、重複期間の長さを環境条件に応じた適切な長さとすることができる。
【0008】
前記制御部は、第1環境条件が、第2環境条件に比べて、より多くの水分が第1室内熱交換器及び第2室内熱交換器に付着する条件であるとき、前記第1環境条件において、前記重複期間が第1時間となる第1洗浄処理をし、前記第2環境条件において、前記重複期間が前記第1時間よりも短い第2時間となる第2洗浄処理をしてよい。これにより、各室内機の室内熱交換器に結露又は着霜する水分量の減少を抑制することができる。
【0009】
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記重複期間の長さをゼロとしてよい。これにより、第2洗浄処理で各室内機の室内熱交換器に付着する水分量不足がより生じにくくなる。
【0010】
さらに、このとき、前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記蒸発器フェーズの終了直後に、前記第2室内機での前記蒸発器フェーズを開始してよい。これにより、第2洗浄処理の所要時間を短縮できる。
【0011】
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記重複期間の長さをゼロより大きい値としてよい。これにより、後から開始される洗浄運転の開始時点が遅れるのを抑制できる。
【0012】
前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記洗浄運転の実行期間と前記第2室内機での前記洗浄運転の実行期間との重複期間の長さをゼロとしてよい。
【0013】
本開示の空気調和機において、前記制御部は、前記第1室内機での前記洗浄運転と前記第2室内機での前記洗浄運転とを同時に開始させるような要求がされた場合、前記第2洗浄処理では、ユーザによって予め設定された順番で前記第1室内機及び前記第2室内機での前記洗浄運転を開始してよい。これにより、ユーザの要望に沿った順番で洗浄運転を実行できる。
【0014】
前記制御部は、前記第1室内機での前記洗浄運転と前記第2室内機での前記洗浄運転とを同時に開始させるような要求がされた場合、前記第2洗浄処理では、前記第1室内機及び前記第2室内機のうちで優先機として設定された前記室内機での前記洗浄運転を最初に開始してもよい。これにより、優先機から洗浄運転を実行できる。
【0015】
前記制御部は、前記第1室内機での前記洗浄運転と前記第2室内機での前記洗浄運転とを同時に開始させるような要求がされた場合、前記第2洗浄処理では、前記第1室内機及び前記第2室内機のうちで直近の前記洗浄運転の実行からの経過時間が長い方の前記室内機での前記洗浄運転を最初に開始してもよい。これにより、より多くの汚れが付着している室内機を優先して洗浄運転を実行できる。
【0016】
前記制御部は、前記第1室内機での前記洗浄運転と前記第2室内機での前記洗浄運転とを同時に開始させるような要求がされた場合、前記第2洗浄処理では、前記第1室内機及び前記第2室内機のうちで直近の前記洗浄運転の実行からの合計運転時間が長い方の前記室内機での前記洗浄運転を最初に開始してもよい。これにより、より多くの汚れが付着している室内機を優先して洗浄運転を実行できる。
【0017】
前記第1室内機での前記洗浄運転が、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第1ファンを回転させる送風フェーズと、前記送風フェーズ後に、前記第1室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズとを含んでおり、前記第2室内機での前記洗浄運転が、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第2ファンを回転させる送風フェーズと、前記送風フェーズ後に、前記第2室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズとを含んでいるとき、前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記送風フェーズの実行期間と前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間とを重複させるとともに、前記第1室内機での前記送風フェーズを前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの終了までは継続してよい。これにより、第2室内機での蒸発器フェーズ中に第1室内機での凝縮器フェーズが開始されないようにできる。
【0018】
このとき、前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記送風フェーズを前記第2室内機での前記送風フェーズの終了とともに終了してもよい。これにより、凝縮器フェーズを同時に開始することができる。
【0019】
前記第1室内機での前記洗浄運転が、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第1ファンを回転させる送風フェーズとを含んでおり、前記第2室内機での前記洗浄運転が、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第2ファンを回転させる送風フェーズと、前記送風フェーズ後に、前記第2室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズとを含んでいるとき、前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記送風フェーズの実行期間と前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間とを重複させるとともに、前記第2室内機での前記送風フェーズの終了後に、前記室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズを実行する。これにより、先に送風フェーズを開始した第1室内機の凝縮器フェーズが第2室内機の蒸発器フェーズと衝突する可能性を排除することができる。
【0020】
前記制御部は、第1環境条件が、第2環境条件に比べて、より多くの水分が前記第1室内熱交換器及び前記第2室内熱交換器に付着する条件であるとき、前記第1環境条件において、前記重複期間が第1時間となる第1洗浄処理をし、前記第2環境条件において、前記重複期間が前記第1時間よりも長い第2時間となる第2洗浄処理をし、前記第1室内機での前記洗浄運転が、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第1ファンを回転させる送風フェーズと、前記送風フェーズ後に、前記第1室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズとを含んでおり、前記第2室内機での前記洗浄運転が、前記蒸発器フェーズと、前記蒸発器フェーズ後に、前記第2ファンを回転させる送風フェーズと、前記送風フェーズ後に、前記第2室内熱交換器を凝縮器として機能させる凝縮器フェーズとを含んでいるとき、前記制御部は、前記第2洗浄処理において、前記第1室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間内に前記第2室内機での前記蒸発器フェーズを開始させるとともに、前記第1室内機での前記蒸発器フェーズを前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの終了時まで実行してもよい。これにより、送風フェーズ及び凝縮器フェーズを同時に開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の一実施形態に係るマルチ型空気調和機の構成図である。
図2図1に示す室内機の斜め下方から見た外観図である。
図3図1に示すマルチ型空気調和機のブロック図である。
図4】洗浄運転のフローチャートである。
図5図1に示すマルチ型空気調和機において、洗浄運転の要求があったときの動作を説明するフローチャートである。
図6図5に示す第2洗浄処理の詳細を説明するフローチャートである。
図7A】第1環境条件時に2つの室内機において実行される第1洗浄処理の一例を示すタイムチャートである。
図7B】第2環境条件時に2つの室内機において実行される第2洗浄処理の第1例を示すタイムチャートである。
図7C】第2環境条件時に2つの室内機において実行される第2洗浄処理の第2例を示すタイムチャートである。
図7D】第2環境条件時に2つの室内機において実行される第2洗浄処理の第3例を示すタイムチャートである。
図8A】第2環境条件時に2つの室内機において実行される第2洗浄処理の第4例を示すタイムチャートである。
図8B】第2環境条件時に2つの室内機において実行される第2洗浄処理の第5例を示すタイムチャートである。
図8C】第2環境条件時に2つの室内機において実行される第2洗浄処理の第6例を示すタイムチャートである。
図9A】第2環境条件時に2つの室内機において実行される第2洗浄処理の第7例を示すタイムチャートである。
図9B】第2環境条件時に2つの室内機において実行される第2洗浄処理の第8例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(全体構造)
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1には、本開示の一実施形態に係るマルチ型空気調和機1の構成図が示されている。マルチ型空気調和機1は、図1に示すように、室外機10と、3つの室内機20A、20B、20Cとを含んでおり、各室内機20A、20B、20Cが、冷媒が通過する冷媒配管を介して室外機10と接続されている。室内機20Aは、A室熱交換器24A及びA室ファン25Aを有している。室内機20Bは、B室熱交換器24B及びB室ファン25Bを有している。室内機20Cは、C室熱交換器24C及びC室ファン25Cを有している。なお、本実施形態では、室内機を3台としているが、室内機の台数は2台以上の任意の数とすることができる。また、以下の説明において、室内機20Aが設置された部屋をA室、20Bが設置された部屋をB室、20Cが設置された部屋をC室と称することとする。
【0023】
室外機10は、圧縮機11と、四路切換弁12と、室外熱交換器13と、室外ファン15と、アキュムレータ16と、3つの電動膨脹弁EVA、EVB、EVCとを含んでいる。四路切換弁12の4つのポートの1つが圧縮機11の吐出側に接続され、別の1つが室外熱交換器13の一端に接続され、さらに別の1つがアキュムレータ16の一端に接続され、さらに別の1つが3つの冷媒配管接続部18A、18B、18Cを介してA室熱交換器24A、B室熱交換器24B及びC室熱交換器24Cの一端に接続されている。室外熱交換器13の他端は、3つの電動膨脹弁EVA、EVB、EVCの一端に接続されている。3つの電動膨脹弁EVA、EVB、EVCの他端は、それぞれ、3つの冷媒配管接続部17A、17B、17Cを介して、A室熱交換器24A、B室熱交換器24B及びC室熱交換器24Cの他端に接続されている。アキュムレータ16の他端は、圧縮機11の吸入側に接続されている。A室熱交換器24A、B室熱交換器24B、C室熱交換器24Cの近傍には、A室ファン25A、B室ファン25B、C室ファン25Cがそれぞれ配置されている。A室ファン25Aは、A室ファンモータ26A(図3参照)によって駆動される。B室ファン25B、C室ファン25Cも、それぞれ図示しない室内ファンモータによって駆動される。
【0024】
圧縮機11と、四路切換弁12と、室外熱交換器13と、電動膨脹弁EVA、EVB、EVCと、A室熱交換器24A、B室熱交換器24B及びC室熱交換器24Cと、アキュムレータ16とが、冷媒配管によって接続されて冷媒回路3が形成されている。この冷媒回路3には、冷媒として例えば微燃性のR32が用いられている。
【0025】
圧縮機11の吐出側には、吐出管温度センサ31が配置されている。また、室外熱交換器13には室外熱交換器温度を検出する室外熱交換器温度センサ32が配置されていると共に、室外熱交換器13の近傍には室外温度を検出する室外温度センサ33が配置されている。
【0026】
A室熱交換器24Aには、室内熱交換器温度を検出するA室熱交換器温度センサ45Aが配置され、A室熱交換器24Aの近傍には、室内温度を検出するA室温度センサ46A及び室内湿度を検出するA室湿度センサ47Aが配置されている。B室熱交換器24Bには、室内熱交換器温度を検出するB室熱交換器温度センサ45Bが配置され、B室熱交換器24Bの近傍には、室内温度を検出するB室温度センサ46B及び室内湿度を検出するB室湿度センサ47Bが配置されている。また、C室熱交換器24Cには、室内熱交換器温度を検出するC室熱交換器温度センサ45Cが配置され、C室熱交換器24Cの近傍には、室内温度を検出するC室温度センサ46C及び室内湿度を検出するC室湿度センサ47Cが配置されている。
【0027】
図2は、室内機20Aを斜め下方から見た斜視図である。室内機20Aは、天井カセットタイプ(天井埋め込み型)の室内機である。なお、本実施形態において、3つの室内機20A、20B、20Cはすべて天井カセットタイプの室内機であるが、一部又は全部が壁掛型や床置き型の室内機であってもよい。
【0028】
室内機20Aは、図2に示すように、ケーシング本体101と、ケーシング本体101の下側に取り付けられた矩形状のパネル102と、パネル102に着脱可能に取り付けられたグリル103とを含んでいる。なお、図2では図示省略しているが、パネル102の表面には、発光ダイオード(LED)を有しており、光や文字、図形などによってユーザへの報知を行うA室表示部28A(図3参照)が設けられている。
【0029】
パネル102の長手方向の一方に、パネル102の短辺に沿って吹出口110が設けられている。また、パネル102には、フラップ120が取り付けられている。フラップ120は、A室フラップ駆動モータ27A(図3参照)によって駆動されることで所定角度範囲内でパネル102に対して回転可能であり、これによって吹出口110を開閉できる。図3は、フラップ120により吹出口110が閉じられた状態を示す。
【0030】
ケーシング本体101の側壁からは、ドレンソケット107が突出している。ドレンソケット107には外部からドレンホース(図示せず)が接続される。さらに、ケーシング本体101の側壁からは、配管接続部105、106が突出している。配管接続部105、106には、外部から冷媒配管(図示せず)が接続される。ケーシング本体101からは、吊り金具111~113が側方に突出している。また、ケーシング本体101の近傍には、電装品部108が配置されている。
【0031】
(制御系統)
次に、マルチ型空気調和機1の制御系統について説明する。図3は、本実施形態に係る空気調和機1のブロック図である。なお、本実施形態において3台の室内機20A、20B、20Cは同じ構造を有しているため、ここでは室内機20Aを中心に説明することとする。また、図3において室内機20B、20Cの図示を簡略化している。
【0032】
室外機10は、演算装置と記憶装置とを含むマイクロコンピュータ及び入出力回路などからなる室外制御部51を含んでいる。室内機20A、20B、20Cは、それぞれ、演算装置と記憶装置とを含むマイクロコンピュータ及び入出力回路などからなる室内制御部52A、52B、52Cを含んでいる。室外制御部51と室内制御部52Aとは通信線LAによって接続され、室外制御部51と室内制御部52Bとは通信線LBによって接続され、室外制御部51と室内制御部52Cとは通信線LCによって接続されている。室外制御部51と3つの室内制御部52A、52B、52Cとが通信線LA、LB、LCを介して通信を行うことによって、室外制御部51及び室内制御部52A、52B、52Cがマルチ型空気調和機1の制御部50として動作する。
【0033】
室外制御部51には、吐出管温度センサ31、室外熱交換器温度センサ32、及び、室外温度センサ33からの温度検出信号が供給される。また、室外制御部51は、圧縮機11、四路切換弁12、室外ファンモータ14、及び、電動膨脹弁EVA、EVB、EVCなどを制御する。
【0034】
室内制御部52Aには、A室熱交換器温度センサ45A、A室温度センサ46A及びA室湿度センサ47Aからの検出信号が供給される。また、室内制御部52Aは、A室ファンモータ26A、A室フラップ駆動モータ27A、A室表示部28A及びA室通信ユニット29Aなどを制御する。A室通信ユニット29Aは、ユーザによる操作可能な図示しないリモートコントローラ(以下、「リモコン」と言う)との間で無線通信を行う。制御部50は、リモコンからの指令を受けて空気調和機1の動作を制御する。空気調和機1の一部であるリモコンは液晶表示ユニット又は発光ダイオード(LED)を有しており、光や文字、図形などによってユーザへの報知を行うことができる。なお、リモコンは、液晶表示ユニット又は発光ダイオードに加えて又はこれらに代えて、音でユーザに報知するスピーカを有していてもよい。以下において、A室表示部28A及びA室のリモコンのスピーカ等をまとめて報知部と称することがある。また、空気調和機用の制御アプリケーションがインストールされたスマートフォンなどの携帯端末を、空気調和機1の一部であるリモコンとして用いることも可能である。この場合には、携帯端末を報知部として機能させることができる。
【0035】
本実施形態において、各リモコンは、3台の室内機20A、20B、20Cの洗浄運転を同時に開始させる命令を室外機10に送信するボタン(一括洗浄ボタン)を有している。また、室外制御部51の記憶装置には、洗浄運転を同時に開始させない場合に、洗浄運転を開始させる順番に関する情報が記憶されている。ユーザはリモコンを操作してこの情報を変更できる。
【0036】
本実施形態に係るマルチ型空気調和機1において、制御部50は、各室内機において、冷房運転及び暖房運転を含む空調運転、A室ファン25A、B室ファン25B及びC室ファン25Cを回転させる送風運転のほか、後述する洗浄運転を実行できる。
【0037】
本実施形態に係るマルチ型空気調和機1において、室内機20Aで冷房運転を行う場合、室外制御部51は、四路切換弁12を図1に示す点線の位置に切り換えて、圧縮機11の運転を開始する。このとき、室外制御部51は、電動膨脹弁EVAを所定の開度に開く一方で、電動膨脹弁EVB、EVCは閉じた状態とする。そして、圧縮機11から吐出した高温高圧のガス冷媒は、室外制御部51が室外ファン15を回転させることで、凝縮器として機能する室外熱交換器13において室外空気との熱交換により凝縮して液冷媒となる。次に、室外熱交換器13からの液冷媒は、電動膨脹弁EVAで減圧された後、A室熱交換器24Aに到達する。室内制御部52AがA室ファン25Aを運転することで、減圧された液冷媒は、蒸発器として機能するA室熱交換器24Aにおいて室内空気との熱交換により蒸発してガス冷媒となり、圧縮機11の吸入側に戻る。また、室内制御部52Aがフラップ120を吹出口110が開く位置に移動させることにより、A室熱交換器24Aによって冷やされた空気が吹出口110から排出される。
【0038】
一方、室内機20Aで暖房運転を行う場合、室外制御部51は、四路切換弁2を図1に示す実線の位置に切り換えて、圧縮機11の運転を開始する。このとき、室外制御部51は、すべての電動膨脹弁EVA、EVB、EVCをそれぞれ所定の開度に開く。したがって、室内機20Aで暖房運転を行うと、それ以外の室内機20B、20Cにも高温冷媒が流れ込む。これは暖房運転を実行しない室内機20B、20C及びその前後の冷媒配管内に冷媒が滞留しないようにするためである。そして、圧縮機11から吐出した高温高圧のガス冷媒は、室内制御部52AがA室ファン25Aを運転することで、凝縮器として機能するA室熱交換器24Aで室内空気との熱交換により凝縮して液冷媒となる。次に、A室熱交換器24A、B室熱交換器24B及びC室熱交換器24Cからの冷媒は、電動膨脹弁EVA、EVB、EVCで減圧された後、室外熱交換器13に到達する。室外制御部51が室外ファン15を回転させることで、減圧された冷媒は、蒸発器として機能する室外熱交換器13において室外空気との熱交換により蒸発してガス冷媒となり、圧縮機11の吸入側に戻る。また、室内制御部52Aがフラップ120を吹出口110が開く位置に移動させることにより、A室熱交換器24Aによって暖められた空気が吹出口110から排出される。
【0039】
制御部50による室外機10及び室内機20A、20B、20Cの制御内容は、リモコンからの指令によって変更される。ユーザは、リモコンを操作することで、暖房運転と冷房運転の選択、運転開始、運転停止、室内温度及び風量の設定、洗浄運転の開始と停止をマルチ型空気調和機1に対して要求できる。
【0040】
(洗浄運転)
次に、本実施形態においてマルチ型空気調和機1が実行する洗浄運転の詳細について、図4をさらに参照しつつ説明する。なお、以下の説明は、すべての室内機が運転を停止した状態で1台の室内機20Aに対して洗浄運転が要求され、洗浄運転が終了するまで他の室内機20B、20Cに対して空調運転及び洗浄運転が要求されないことを前提としている。
【0041】
まず、室内機20Aのリモコンが操作されて、室内機20Aに対して洗浄運転が要求されると、ステップS1において、制御部50は、洗浄運転の蒸発器フェーズを実行する。詳細には、四路切換弁12を図1に示す点線の位置に切り換えて圧縮機11の運転を開始する。また、制御部50は、A室ファンモータ26Aを駆動してA室ファン25Aを所定回転数で回転させ、A室フラップ駆動モータ27Aを駆動してフラップ120を吹出口110が開く位置に移動させる。なお、このとき吹出口110を閉じる位置にフラップ120を位置させてもよい。このとき、制御部50は、電動膨脹弁EVAを所定の開度に開く一方で、電動膨脹弁EVB、EVCは閉じた状態とする。これによって、冷房運転時と同様に、A室熱交換器24Aが蒸発器として機能し、洗浄運転の蒸発器フェーズが開始する。A室熱交換器24Aの温度が0℃よりも高く露点温度以下になると、A室熱交換器24Aの表面に空気中の水分が結露し始める。この結露水によってA室熱交換器24Aの表面に付着した汚れを洗浄できる。なお、このときA室熱交換器24Aの温度が氷点以下となるようにして、A室熱交換器24Aの表面に空気中の水分を着霜させてもよい。本実施形態において、蒸発器フェーズの長さは、所定時間としている。蒸発器フェーズの長さは、制御部50が環境条件(A室の室内温度と湿度、室外温度のうちの1つ以上)から計算して求めた、洗浄に必要な量の水分がA室熱交換器24A上に結露又は着霜するまでの時間であってもよい。蒸発器フェーズが終わると、制御部50は、圧縮機11の運転を停止させる。
【0042】
次に、ステップS2において、制御部50は、洗浄運転の送風フェーズを実行する。詳細には、ステップS1から引き続いて、A室ファンモータ26Aを駆動してA室ファン25Aを回転させる。そして、フラップ120の位置をステップS1時と同じ位置に維持する。送風フェーズでは、圧縮機11が停止しているため、A室熱交換器24Aの温度が蒸発器フェーズにおけるA室熱交換器24Aの温度よりも上昇している。そして、通常、A室熱交換器24Aの温度は露点温度を超える。A室ファン25Aを回転させることによって、A室熱交換器24A上に結露した水分の蒸発を促進できる。本実施形態において、A室ファン25Aの回転数及び送風時間(送風フェーズの長さ)は、一定値に固定されている。なお、送風フェーズでは、A室熱交換器24Aの温度が蒸発器フェーズにおけるA室熱交換器24Aの温度よりも上昇していれば、圧縮機11を停止させなくてもよい。
【0043】
ステップS3において、制御部50は、洗浄運転の凝縮器フェーズを実行する。詳細には、四路切換弁12を図1に示す実線の位置に切り換えて圧縮機11の運転を開始する。また、制御部50は、ステップS2から引き続いて、A室ファンモータ26Aを駆動してA室ファン25Aを所定回転数で回転させ、そして、フラップ120の位置をステップS1時と同じ位置に維持する。このとき、制御部50は、すべての電動膨脹弁EVA、EVB、EVCをそれぞれ所定の開度に開く。これによって、暖房運転時と同様に、A室熱交換器24Aが凝縮器として機能し、洗浄運転の凝縮器フェーズが開始する。凝縮器フェーズにおいては、A室熱交換器24Aの温度が送風フェーズにおけるA室熱交換器24Aの温度よりも上昇している。そのため、A室熱交換器24Aの表面に残っている水分の蒸発をより一層促進できる。凝縮器フェーズの長さは、所定時間であってよい。凝縮器フェーズが終わると、制御部50は、圧縮機11及びA室ファン25Aを停止させ、A室フラップ駆動モータ27Aを駆動してフラップ120を吹出口110が閉じる位置に移動させる。なお、凝縮器フェーズは、例えばステップS2の送風フェーズを十分に長くした場合には省略できる。
【0044】
(洗浄運転要求時の動作)
次に、本実施形態に係るマルチ型空気調和機1において、A室に設置された室内機20Aでの洗浄運転が要求されたときの動作について、図5のフローチャートをさらに参照して説明する。以下の各ステップは制御部50によって実行される。
【0045】
室内機20Aでの洗浄運転が要求されると、ステップS11において、制御部50は、B室及びC室に設置された室内機20B、20Cの少なくともいずれかが空調運転中又は洗浄運転中であるかを判断する。ステップS11において、制御部50は、室内機20Aでの洗浄運転と、室内機20B、20Cの少なくともいずれかでの空調運転又は洗浄運転とが、同時に要求(運転同時要求)されたかについても判断する。ここでの「同時」は、同じ時刻に行われた場合だけではなく、室内機20B、20Cが空調運転又は洗浄運転の運転開始前の準備状態になっている場合も含む。なお、洗浄運転が要求された時点で、室内機20Aでは空調運転が実行されていてもよいし、いずれの運転も実行されていなくてもよい。以下の説明においては、洗浄運転が要求された時点で、室内機20Aはいずれの運転も実行していない休止状態であったと仮定している。
【0046】
ステップS11の条件に該当しない場合(S11:NO)、室内機20B、20Cはいずれも運転しておらず、運転同時要求もされていない。制御部50は、ステップS12において、室内機20Aの洗浄運転を開始する。詳細には、四路切換弁2を図1に示す点線の位置に切り換えて、圧縮機11の運転を開始し、電動膨脹弁EVAを所定の開度に開く。さらに、室内機20Aのフラップ120を吹出口110が開く位置に移動させる。この後、マルチ型空気調和機1は図4で説明した洗浄運転の送風フェーズ(S2)、凝縮器フェーズ(S3)へと順次移行する。そして、凝縮器フェーズが終了すると、マルチ型空気調和機1は休止状態となる。
【0047】
この条件に該当する場合(S11:YES)、ステップS13に進む。制御部50は、ステップS13において、室内機20B、20Cの少なくともいずれかが暖房運転中(暖房運転の運転同時要求を含む)又は洗浄運転の凝縮器フェーズの実行中であるかを判断する。この条件に該当する場合(S13:YES)、ステップS14に進む。以下では、室内機20Cは休止状態で運転されておらず、室内機20Bだけが運転中であると仮定して説明する。制御部50は、ステップS14において、室内機20Bでの暖房運転又は凝縮器フェーズを継続又は開始する。この場合、室内機20Aでの洗浄運転の蒸発器フェーズを実行できないので、制御部50は、ステップS14において、A室表示部28A又はA室のリモコンにより、「他室とのモードバッティングにより洗浄運転できない」旨のユーザへの報知を行う。
【0048】
ステップS13の条件に該当しない場合(S13:NO)、ステップS15に進む。このとき、室内機20Bは、冷房運転、送風運転、又は、洗浄運転の蒸発器フェーズ若しくは送風フェーズの実行中(送風フェーズ以外の運転同時要求を含む)である。ステップS15において、制御部50は、室内機20Bで洗浄運転の蒸発器フェーズが実行中(洗浄運転の運転同時要求を含む)であるかを判断する。この条件に該当しない場合(S15:NO)、ステップS16に進む。
【0049】
このとき、室内機20Bは、冷房運転、送風運転、又は、洗浄運転の送風フェーズの実行中(送風フェーズ以外の運転同時要求を含む)である。制御部50は、ステップS16において、室内機20Aの洗浄運転を開始するとともに、室内機20Bでの冷房運転、送風運転、又は、洗浄運転の送風フェーズを継続又は開始する。なお、室内機20Aでの洗浄運転の凝縮器フェーズが開始する時点でB室の冷房運転が終了していなかった場合は、事前に設定された一方が実行され、他方が実行されない。
【0050】
ステップS15の条件に該当する場合(S15:YES)、ステップS17に進む。ステップS17において、制御部50は、A室及びB室の室温、湿度、室外温度を含む環境条件が「第1環境条件」に該当するかを判断する。本実施形態において、「第1環境条件」は、室内熱交換器に比較的多くの水分を付着させることができる条件である。「第1環境条件」に該当する場合、2つの室内機20A、20Bでの蒸発器フェーズの実行期間が開始から終了まで完全に重複していても、十分な洗浄効果を得るために必要な下限量以上の水分を所定時間内にA室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bに結露又は着霜させることができると推定される。「第1環境条件」は、A室の湿度とB室の湿度の両方を含む条件、A室の湿度を含みB室の湿度を含まない条件、又は、B室の湿度を含みA室の湿度を含まない条件のいずれかであってもよい。例えば制御部50は、A室の湿度が所定湿度以上であれば第1環境条件に該当すると判断してもよい。「第1環境条件」は、蒸発器フェーズが同時に実行される室内機の数によって変更されてよい。
【0051】
別の例において、「第1環境条件」は、マルチ型空気調和機1において、単位時間の重複した蒸発器フェーズにより室内機20AのA室熱交換器24Aに付着する水分量が第1所定量よりも多く且つ室内機20BのB室熱交換器24Bに付着する水分量が第2所定量よりも多いとすることが可能な環境条件であってもよい。一例として、第1所定量と第2所定量は室内機の空調能力によって決定される量であってもよく、室内機20Aと室内機20Bが同じ機種であれば同じ量である。このとき制御部50は、各室内機20A、20Bの風量が蒸発器フェーズの実行時に選択される所定風量であると仮定して、例えばA室の湿度が所定湿度以上か否かに基づいて上記の判断をする。湿度が高いほど各室内熱交換器に付着する水分量が増加し、「第1環境条件」に該当する可能性が高くなる。また別の例として、第1所定量と第2所定量はそれぞれゼロであってもよい。
【0052】
ステップS17の条件に該当する場合(S17:YES)、ステップS18に進む。ステップS18において、制御部50は、第1洗浄処理を行う。本実施形態において、第1洗浄処理は、2つの室内機の蒸発器フェーズを洗浄処理が要求された時点から開始し、各室内機での蒸発器フェーズの実行期間の長さが重複期間のない場合と同じ長さであって蒸発器フェーズの重複期間の長さが変更されない処理、つまり洗浄スケジュールが変更されない処理である。本実施形態の第1洗浄処理について、図7Aをさらに参照しつつ説明する。
【0053】
図7Aにおいて、先行して洗浄運転を開始したB室の室内機20Bでは、時点TB1から時点TB2まで蒸発器フェーズが実行され、時点TB2から時点TB3まで送風フェーズが実行され、時点TB3から時点TB4まで凝縮器フェーズが実行される。なお、時点TB1は、ステップS18の第1洗浄処理の開始前の時点でもよいし、第1洗浄処理の開始時点以降でもよい。室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点から室内機20Aでの蒸発器フェーズの開始(S18)までのタイムラグをゼロと仮定すると、A室の室内機20Aでは、室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1から時点TA2まで蒸発器フェーズが実行され、時点TA2から時点TA3(時点TB3と同じ)まで送風フェーズが実行され、時点TA3から時点TA4(時点TB4と同じ)まで凝縮器フェーズが実行される。室内機20Bでの送風フェーズは室内機20Aでの送風フェーズよりも長く、室内機20Bでの凝縮器フェーズは室内機20Aでの凝縮器フェーズと同じ長さである。なお、2つの室内機20A、20Bでの洗浄処理が同時に要求された場合には、室内機20Aと室内機20Bが同時に蒸発器フェーズを開始し、同時に蒸発器フェーズを終了してもよい。ここまでの説明で理解できるように、本開示において、「前記第1室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間と前記第2室内機での前記蒸発器フェーズの実行期間とが重複するような要求があった場合」は、第1室内機での蒸発器フェーズが先に要求された場合、第2室内機での蒸発器フェーズが先に要求された場合、及び、第1室内機での蒸発器フェーズと第2室内機での蒸発器フェーズとが同時に要求された場合をすべて含んでいる。また、「重複」は部分的な重複であってもよいし、全体の重複であってもよい。
【0054】
本実施形態では、2つの室内機20A、20Bでの蒸発器フェーズの実行期間の長さが同じ((TB1-TB2)=(TA1-TA2))である。時点TA1から時点TB2までは、2つの室内機20A、20Bの蒸発器フェーズの実行期間が重複する重複期間となっている。室内機20Bにおける蒸発器フェーズの開始時点及び終了時点は、室内機20Aの蒸発器フェーズとの重複期間による影響を受けない。また、室内機20Aにおける蒸発器フェーズの開始時点及び終了時点は、室内機20Bの蒸発器フェーズとの重複期間による影響を受けない。1つの室内機20A、20Bだけで蒸発器フェーズが実行されている期間(TB1-TA1,TB2-TA2)におけるA室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bへの単位時間当たりの水分付着量は、2つの室内機20A、20Bの蒸発器フェーズの重複期間(TA1-TB2)におけるA室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bへの単位時間当たりの水分付着量よりも多くなる。
【0055】
ステップS17の条件に該当しない場合(S17:NO)、ステップS19に進む。本実施形態において、「第1環境条件」に該当しない環境条件を「第2環境条件」と称する。ステップS19において、制御部50は、第2洗浄処理を行う。本実施形態において、第2洗浄処理は、2つの室内機の蒸発器フェーズの重複期間の長さが、図7Aに示した重複期間(TA1-TB2)から変更される処理である。以下に説明するように、本開示において、「重複期間の長さを変更」は、重複期間の長さを短くすることだけでなく、長くすることも含まれる。以下、第2洗浄処理の第1~8例について説明する。
【0056】
第2洗浄処理の第1例を図7Bに示す。図7Bにおいて、先行して洗浄運転を開始したB室の室内機20Bでは、時点TB1から時点TB21まで蒸発器フェーズが実行され、時点TB21から時点TB31まで送風フェーズが実行され、時点TB31から時点TB41まで凝縮器フェーズが実行される。なお、時点TB1は、ステップS19の第2洗浄処理の開始前の時点でもよいし、第2洗浄処理の開始時点以降でもよい。時点TB1から時点TB21の間の時点TA1において室内機20Aへの洗浄運転が要求されたとすると、A室の室内機20Aは、室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1から時点TA11まで蒸発器フェーズが実行されない待機状態となり、蒸発器フェーズの重複期間の長さが短縮されてゼロとなっている。室内機20Aでは、時点TA11から時点TA21まで蒸発器フェーズが実行され、時点TA21から時点TA31まで送風フェーズが実行され、時点TA31から時点TA41まで凝縮器フェーズが実行される。なお、時点TA1は時点TB1と同時であってもよい。これは、以下に説明する第2例以下でも同様である。
【0057】
第2洗浄処理における室内機20Aでの蒸発器フェーズの実行期間TA11-TA21の長さは、第1洗浄処理における室内機20Aでの蒸発器フェーズの実行期間TA1-TA2の長さと同じである(以下に説明する第2、3、5~8例においても同様)。室内機20Bについても同様である。また、図7Bに示すように、室内機20Bでの蒸発器フェーズが時点TB21で終了した直後に、室内機20Aでの蒸発器フェーズを開始している。このように蒸発器フェーズの重複期間の長さをゼロとしているので、水分が結露又は着霜しにくい第2環境条件ではあるが、第2洗浄処理における各室内機20A、20Bでの蒸発器フェーズにおけるA室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bへの単位時間当たりの水分付着量は、第1洗浄処理の重複期間TA1-TB2におけるA室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bへの単位時間当たりの水分付着量よりも多い。したがって、A室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bにおいて、十分な洗浄効果を得るために必要な下限量の水分付着量を得ることができる。これは、以下に説明する第2、6~8例においても同様である。
【0058】
また、図7Bに示す例では、室内機20Bでの送風フェーズの終了時点TB31が、室内機20Aでの送風フェーズの終了時点TA31と同じである。そして、室内機20Aでの凝縮器フェーズの終了時点TA41は、室内機20Bでの凝縮器フェーズの終了時点TB41と同じである。
【0059】
第1例において、第2洗浄処理における室内機20A、20Bでの蒸発器フェーズの実行期間TA11-TA21、TB1-TB21を、第1洗浄処理における室内機20A、20Bでの蒸発器フェーズの実行期間TA1-TA2、TB1-TB2よりもそれぞれ短くしてもよい。ただし、これは、十分な洗浄効果を得るために必要な下限量以上の水分を、短縮後の蒸発器フェーズの実行期間内にA室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bに結露又は着霜させることができる環境条件に該当する場合に限られる。これは、以下に説明する第2~8例においても同様である。
【0060】
第1例において、第2洗浄処理における室内機20A、20Bでの蒸発器フェーズの実行期間TA11-TA21、TB1-TB21を、第1洗浄処理における室内機20A、20Bでの蒸発器フェーズの実行期間TA1-TA2、TB1-TB2よりもそれぞれ長くしてもよい。これが行われるのは、低温・低湿で水分が結露又は着霜しにくく、重複期間の長さをゼロとしても、十分な洗浄効果を得るために必要な下限量以上の水分を所定時間内にA室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bに結露又は着霜させることができない環境条件に該当する場合である。これは、以下に説明する第2、3、5~8例においても同様である。
【0061】
第2洗浄処理の第2例を図7Cに示す。図7Cにおいて、後から洗浄運転が要求された室内機20Aが、先行して洗浄運転を開始した室内機20Bでの送風フェーズ中(TB22-TB32)の時点TA12に蒸発器フェーズを開始する。室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1は、室内機20Bへの洗浄運転が要求された時点と同時でもよいし、室内機20Bでの蒸発器フェーズ中(TB1-TB22)でもよい。いずれにしても、室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1から時点TA12まで、室内機20Aは待機状態となるため、蒸発器フェーズの重複期間の長さが短縮されてゼロとなっている。
【0062】
第2例において、室内機20Bでの送風フェーズの終了時点TB32が、室内機20Aでの蒸発器フェーズの終了時点TA22と同じである。これは、室内機20Aでの蒸発器フェーズ中に室内機20Bでの凝縮器フェーズが実行されないようにするためである。期間TA12-TA22が期間TA1-TA2よりも短く、また、期間TB1-TB22が期間TB1-TB2よりも短い。また、室内機20Aでは送風フェーズが実行されず、凝縮器フェーズが蒸発器フェーズの終了時点TA22から時点TA32まで実行される。室内機20Bでの凝縮器フェーズの終了時点TB42は、室内機20Aでの凝縮器フェーズの終了時点TA32と同じである。
【0063】
第2洗浄処理の第3例を図7Dに示す。図7Dにおいて、後から洗浄運転が要求された室内機20Aが、先行して洗浄運転を開始した室内機20Bでの蒸発器フェーズ中(TB1-TB23)の時点TA13に蒸発器フェーズを開始する。室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1は、室内機20Bへの洗浄運転が要求された時点と同時でもよいし、室内機20Bでの蒸発器フェーズ中(TB1-TB23)でもよい。A室の室内機20Aは、室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1から時点TA13まで蒸発器フェーズが実行されない待機状態となり、蒸発器フェーズの重複期間が短縮される。第3例では、重複期間の長さはゼロよりも大きい値であるが、室内機20A、20Bにおいて重複期間に対する非重複期間の比率が図7Aの場合よりも大きい。そのため、A室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bにおいて、十分な洗浄効果を得るために必要な下限量の水分付着量を得ることができる。これは、以下に説明する第5例においても同様である。第3例において、室内機20Aでの蒸発器フェーズの終了時点TA23よりも後に、室内機20Bでの送風フェーズが時点TB33で終了する。室内機20Bでの凝縮器フェーズは実行されず、室内機20Aでの凝縮器フェーズが時点TA33から時点TA43まで実行される。
【0064】
第2洗浄処理の第4例を図8Aに示す。図8Aにおいて、後から洗浄運転が要求された室内機20Aが、先行して洗浄運転を開始した室内機20Bでの蒸発器フェーズ中(TB1-TB24)の時点TA14に蒸発器フェーズを開始する。時点TA14は、室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1と同じであるが、変形例としてはそれよりも後であってもよい。
【0065】
室内機20Aの蒸発器フェーズが時点TA24で終了すると同時に、室内機20Bの蒸発器フェーズが終了(時点TB24)する。そして、室内機20A、20Bは同時に送風フェーズを開始し(TA24,TB24)、同時に送風フェーズを終了する(TA34,TB34)。さらに、この時点から同時に凝縮器フェーズを開始して、同時に凝縮器フェーズを終了する(TA44,TB44)。
【0066】
第2洗浄処理の第4例における室内機20Aでの蒸発器フェーズの実行期間TA14-TA24は、第1洗浄処理における室内機20Aでの蒸発器フェーズの実行期間TA1-TA2(図7A)よりも長くなっている。これは、第2環境条件において水分が第1環境条件よりも結露又は着霜しにくく、室内機20Aでの蒸発器フェーズの開始時点を遅延させていないために重複期間に対する非重複期間の比率を低下させることもできないからである。また、先行して洗浄運転を開始した室内機20Bでの蒸発器フェーズの実行期間TB1-TB24は、室内機20Aでの蒸発器フェーズの実行期間TA14-TA24よりも長い。これは、室内機20Bでの蒸発器フェーズの実行期間を、十分な洗浄効果を得るために必要な下限量の水分付着量を得るための最小時間よりも延長して、室内機20Aでの蒸発器フェーズ中に室内機20Bでの凝縮器フェーズが開始されないようにするためである。このように、2つの室内機20A、20Bでの蒸発器フェーズの重複期間が、図7Aに示した第1洗浄処理での重複期間よりも長い。そのため、A室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bにおいて、十分な洗浄効果を得るために必要な下限量の水分付着量を得ることができる。
【0067】
第2洗浄処理の第5例を図8Bに示す。図8Bにおいて、後から洗浄運転が要求された室内機20Aが、先行して洗浄運転を開始した室内機20Bでの蒸発器フェーズ中(TB1-TB25)の時点TA15に蒸発器フェーズを開始する。室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1は、室内機20Bへの洗浄運転が要求された時点と同時でもよいし、室内機20Bでの蒸発器フェーズ中(TB1-TB25)でもよい。A室の室内機20Aは、室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1から時点TA15まで蒸発器フェーズが実行されない待機状態となり、蒸発器フェーズの重複期間が短縮される。
【0068】
室内機20Aの蒸発器フェーズが時点TA25で終了する前に、室内機20Bの蒸発器フェーズが終了(時点TB25)する。そして、室内機20Bは室内機20Aよりも先に時点TB25から送風フェーズを開始する。室内機20Bは、時点TB35aで送風フェーズが終了すると待機状態に入る。そして、室内機20Aの送風フェーズが時点TA35で終了すると同時に、室内機20A、20Bは同時に凝縮器フェーズを開始して(TA35,TB35b)、同時に凝縮器フェーズを終了する(TA45,TB45)。
【0069】
第2洗浄処理の第6例を図8Cに示す。図8Cにおいて、後から洗浄運転が要求された室内機20Aが、先行して洗浄運転を開始した室内機20Bでの凝縮器フェーズ(TB36-TB46)の終了時点TB46に蒸発器フェーズを開始する(時点TA16)。室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1は、室内機20Bへの洗浄運転が要求された時点と同時でもよいし、室内機20Bでの蒸発器フェーズ中(TB1-TB26)でもよい。いずれにしても、室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1から時点TA16まで、室内機20Aは待機状態となるため、蒸発器フェーズの重複期間の長さが短縮されてゼロとなっている。
【0070】
第6例において、室内機20Aでは、時点TA16から時点TA26まで蒸発器フェーズが実行され、時点TA26から時点TA36まで送風フェーズが実行され、時点TA36から時点TA46まで凝縮器フェーズが実行される。本例では、2つの室内機の洗浄運転のいずれのフェーズにも重複期間がなく、洗浄運転の実行期間同士の重複期間の長さがゼロとなっている。
【0071】
第2洗浄処理の第7例を図9Aに示す。図9Aにおいて、後から洗浄運転が要求された室内機20Aが、先行して洗浄運転を開始した室内機20Bでの送風フェーズ(TB27-TB37a)の終了時点TB37aに蒸発器フェーズを開始する(時点TA17)。室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1は、室内機20Bへの洗浄運転が要求された時点と同時でもよいし、室内機20Bでの蒸発器フェーズ中(TB1-TB27)でもよい。いずれにしても、室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点TA1から時点TA17まで、室内機20Aは待機状態となるため、蒸発器フェーズの重複期間の長さが短縮されてゼロとなっている。
【0072】
室内機20Bは、時点TB37aで送風フェーズが終了すると待機状態に入る。そして、室内機20Aの送風フェーズが時点TA37で終了すると同時に、室内機20A、20Bは同時に凝縮器フェーズを開始して(TA37,TB37b)、同時に凝縮器フェーズを終了する(TA47,TB47)。
【0073】
第2洗浄処理の第8例を図9Bに示す。図9Bにおいて、B室の室内機20Bでは、時点TB18aから蒸発器フェーズが実行される。室内機20Bへの洗浄運転が要求された時点と同時又は室内機20Bでの蒸発器フェーズ中(TB18a-TB18b)の時点TA1に室内機20Aへの洗浄運転が要求されると、室内機20Aの待機状態を経て又は直ちに、室内機20Bの蒸発器フェーズが中断され(TB18b)これと同時に室内機20Aでの蒸発器フェーズが開始される(TA18)。そして、時点TA28で室内機20Aの蒸発器フェーズが終了すると同時に、室内機20Bでの蒸発器フェーズが再開される(TB18c)。室内機20Aが時点TA28から時点TA38まで送風フェーズが実行されている間に、時点TB28で室内機20Bの蒸発器フェーズが終了し、同時に室内機20Bの送風フェーズが開始される。室内機20Bでの送風フェーズの終了時点TB38は、室内機20Aでの送風フェーズの終了時点TA38と同じである。室内機20Aでの凝縮器フェーズの終了時点TA48は、室内機20Bでの凝縮器フェーズの終了時点TB48と同じである。本例では、室内機20Aでの蒸発器フェーズ中に室内機20Bの蒸発器フェーズが中断されて室内機20Bは待機状態となるため、蒸発器フェーズの重複期間の長さが短縮されてゼロとなっている。
【0074】
次に、第2洗浄処理の詳細について図6をさらに参照して説明する。以下においては、図7Bに示す第2洗浄処理の第1例に基づいて説明する。なお、制御部50内には図示しないタイマーが含まれており、以下に説明する計時を要する処理は、タイマーを用いて行われる。まず、ステップS191において、制御部50は、例えば上述したリモコンの一括洗浄ボタンが操作されることによって、3つの室内機20A、20B、20Cでの洗浄運転の運転同時要求がされたかを判断する。なお、以下では室内機20Cについての説明を省略する。この条件に該当しない場合(S191:NO)、ステップS192に進む。この場合、先行して洗浄運転を開始した室内機20Bが蒸発器フェーズ中であるときに、室内機20Aでの洗浄運転が要求されたことになる。ステップS192では、室内機20Aの蒸発器フェーズの開始時点を決定する。図7Bを例に取ると、室内機20Bでの蒸発器フェーズの終了時点TB21を環境条件に基づいて導出し、その時点TB21を室内機20Aの蒸発器フェーズの開始時点TA11に決定する。そして、制御部50は、ステップS193において、タイマーのカウント値に基づいて室内機20Aの蒸発器フェーズの開始時点になるのを待ち、ステップS194において、室内機20Bの蒸発器フェーズを終了すると同時に室内機20Aの蒸発器フェーズを開始する。タイマーは、蒸発器フェーズ開始と同時に、蒸発器フェーズの終了時点となったことを判断するための新たなカウントを開始する。
【0075】
そして、制御部50は、ステップS195において、室内機20Aでの蒸発器フェーズ終了時点を環境条件に基づいて決定し、さらに室内機20Aでの送風フェーズの終了時点を決定する。そして、室内機20Bでの送風フェーズの終了時点を、室内機20Aでの送風フェーズの終了時点と同じ時点に決定する。図7Bを例に取ると、室内機20Aでの蒸発器フェーズの終了時点TA21を決定し、時点TA21から所定時間経過した時点を送風フェーズの終了時点TA31に決定し、その時点TA31を室内機20Bの送風フェーズの終了時点TB31に決定する。そして、制御部50は、ステップS196において、タイマーのカウント値に基づいて室内機20Aの蒸発器フェーズの終了時点になるのを待ち、ステップS197において、室内機20Aの蒸発器フェーズを終了すると同時に室内機20A、20Bの送風フェーズを開始する。以下同様にして、本実施形態では、タイマーを用いた管理が行われる。
【0076】
制御部50は、ステップS198において、室内機20A、20Bの送風フェーズの終了時点になるのを待ち、ステップS199において、室内機20A、20Bの送風フェーズを終了し、室内機20A、20Bの凝縮器フェーズを開始する。そして、制御部50は、ステップS200において、室内機20A、20Bの凝縮器フェーズの終了時点になるのを待ち、ステップS201において、室内機20A、20Bの凝縮器フェーズを終了する。
【0077】
ステップS191の条件に該当する場合(S191:YES)、ステップS202に進む。この場合、室内機20Aでの洗浄運転と室内機20Bでの洗浄運転とを同時に開始させる要求がされたことになるが、第2洗浄処理では両方の洗浄運転を同時に開始することはできず、どちらかの室内機の洗浄運転を先に開始するかを決定する必要がある。ステップS202では、先行して洗浄運転を開始する室内機(先行機)を室内機20A及び室内機20Bのいずれかにするかを決定し、先行機の洗浄運転を開始する。
【0078】
ステップS202において、制御部50は、ユーザによって予め設定されて室外制御部51の記憶装置に記憶された洗浄運転を開始させる順番に関する情報に基づいて先行機を決定する。この情報として例えば(1番:20B、2番:20A、3番:20C)という順番に関する情報が記憶されていれば、先行機を室内機20Bとする。
【0079】
以下、ステップS202での先行機の決定手順に関する幾つかの変形例を説明する。制御部50は、優先機として設定された室内機を先行機に決定してもよい。優先機は、複数の室内機のうちで冷房運転と暖房運転といった同時空調運転できない要求があったときに優先される室内機であり、リモコン操作でユーザによって指定される。また、室外機10の3つの冷媒配管接続部17A、17B、17Cに優先順位が付けられている場合、制御部50は、同時洗浄運転が要求された複数の室内機の中で優先順位の最も高い冷媒配管接続部17A、17B、17Cに接続された室内機を先行機に決定してもよい。
【0080】
また、制御部50は、各室内機における直近の洗浄運転の実行からの経過時間を制御部50内のタイマーでカウントし、同時洗浄運転が要求された複数の室内機の中で、直近の洗浄運転の実行からの経過時間が最も長い室内機を先行機に決定してもよい。さらに、制御部50は、各室内機における直近の洗浄運転の実行からの冷房、暖房、送風の合計運転時間を制御部50内のタイマーでカウントし、同時洗浄運転が要求された複数の室内機の中で、直近の洗浄運転の実行からの合計運転時間が最も長い室内機を先行機に決定してもよい。或いは、制御部50は、同時洗浄運転が要求された複数の室内機の中で、蒸発器フェーズの実行期間が最も長い室内機(室内熱交換器が大きく必要な結露量が最も多い)を先行機に決定してもよい。例えば、外出前に洗浄運転を開始させて、蒸発器フェーズの実行期間が最も長い室内機の洗浄を不在中に終わらせたい場合に有効である。また、制御部50は、同時洗浄運転が要求された複数の室内機の中で、蒸発器フェーズの実行期間が最も短い室内機(室内熱交換器が小さく必要な結露量が最も少ない)を先行機に決定してもよい。これにより、洗浄運転によって家中が急速に冷えてしまうのを抑制できる。
【0081】
ステップS203からステップS212の各ステップは、先行機が室内機20Bで後続機が室内機20Aに特定されていないことを除いて、上述したステップS192からステップS201の各ステップと同じであるので、詳細を省略する。
【0082】
(実施形態の効果)
上述のように、本実施形態では、湿度を含む環境条件に応じて重複期間の長さを変更している。例えば、第1環境条件に比べてより少ない水分が室内熱交換器に付着する第2環境条件であるとき、第1洗浄処理での重複期間よりも重複期間が短い第2洗浄処理を実行するので、室内熱交換器に結露又は着霜する水分量の減少を抑制することができる。したがって、洗浄運転時に室内熱交換器に付着する水分量不足が生じにくくなる。
【0083】
また、本実施形態のいくつかの例では、蒸発器フェーズの重複期間の長さをゼロとしているので(図7B、7C、8C、9A、9B)、第2洗浄処理で室内機20A、20BのA室熱交換器24A及びB室熱交換器24Bに付着する水分量不足がより生じにくくなる。
【0084】
本実施形態の一例では、先に開始した室内機20Bの蒸発器フェーズを中断して室内機20Aの蒸発器フェーズを開始している(図9B)。この例によると、ユーザの洗浄運転への要望が先に洗浄した室内機20Bよりも大きいと考えられる室内機20Aの洗浄運転を室内機20Bの蒸発器フェーズの途中に割り込んで開始することができる。
【0085】
本実施形態の別の一例では、室内機20Bでの蒸発器フェーズの終了直後に、室内機で20Aの蒸発器フェーズを開始している(図7B)。この例によると、第2洗浄処理の所要時間を短縮できる。
【0086】
本実施形態のさらなる別の一例では、第2洗浄処理において、重複期間の長さをゼロよりも大きい値としている(図7D、8B)。この例によると、後から開始される洗浄運転の開始時点が遅れるのを抑制できる。
【0087】
また、本実施形態のさらなる別の一例では、第2洗浄処理において、室内機20Bでの洗浄運転の実行期間と室内機20Aでの洗浄運転の実行期間との重複期間の長さをゼロとしている(図8C)。この例によると、2つの室内機20A、20Bで実行される洗浄運転が互いの影響を受けないようにできる。
【0088】
また、本実施形態では、室内機20A及び室内機20Bでの洗浄運転の運転同時要求がされた場合に、ユーザによって予め設定された順番で室内機20A及び室内機20Bでの洗浄運転を開始する。したがって、ユーザの要望に沿った順番で洗浄運転を実行できる。また、別の一例では、優先機から洗浄運転を実行できる。さらなる別の一例では、直近の洗浄運転の実行からの経過時間が長い方の室内機での洗浄運転を最初に開始する。さらなる別の一例では、直近の洗浄運転の実行からの合計運転時間が長い方の室内機での洗浄運転を最初に開始する。これらの例では、より多くの汚れが付着している室内機を優先して洗浄運転を実行できる。
【0089】
また、本実施形態のいくつかの例では、先行して洗浄運転を開始した室内機20Bでの送風フェーズが後から洗浄運転を開始した室内機20Aでの蒸発器フェーズと重複しており、室内機20Bの送風フェーズの終了時点を室内機20Aでの蒸発器フェーズ終了時点以降としているので(図7B、7C、7D、8B)、室内機20Aでの蒸発器フェーズ中に室内機20Aでの凝縮器フェーズが開始されないようにできる。
【0090】
さらに、この中の一例では、室内機20Bでの送風フェーズを室内機20Aでの送風フェーズの終了とともに終了するので(図7B)、2つの室内機20A、20Bの凝縮器フェーズを同時に開始することができる。
【0091】
さらに、この中の一例では、室内機20Bでの送風フェーズの終了後に凝縮器フェーズを実行しないので(図7D)、室内機20Bの凝縮器フェーズが室内機20Aの蒸発器フェーズと衝突する可能性を排除することができる。
【0092】
また、本実施形態の一例では、先行して洗浄運転を開始した室内機20Bでの蒸発器フェーズが後から洗浄運転を開始した室内機20Aでの蒸発器フェーズと重複しており、室内機20Bでの蒸発器フェーズを室内機20Aでの蒸発器フェーズの終了時点まで実行しているので(図8A)、送風フェーズ及び凝縮器フェーズを同時に開始することができる。
【0093】
(変形例)
3台の室内機20A、20B、20Cでの蒸発器フェーズの実行期間が重複するような要求があった場合の変形例について説明する。この場合も上述した実施形態で説明した2台のときと同様に、環境条件に応じて重複期間の長さを変更する。第1環境条件における3台の室内機での蒸発器フェーズの重複期間を第1時間としたとき、第1環境条件におけるよりも室内熱交換器に付着する水分量が少ない第2環境条件における3台の室内機での蒸発器フェーズの重複期間である第2時間を、第1時間よりも短く又は長くなるように変更する。例えば、2台の室内機での蒸発器フェーズの実行中に、3台目の室内機での洗浄処理が要求された場合、第1環境条件に該当すれば3台目の室内機の蒸発器フェーズを開始するが、第2環境条件に該当すれば、3台目の室内機の蒸発器フェーズの開始を遅らせてよい。このとき、実行中の2台の室内機での蒸発器フェーズが終了してから3台目の室内機の蒸発器フェーズを開始させてもよい。別の変形例として、3台目の2台の室内機での蒸発器フェーズの実行中に、3台目の室内機での洗浄処理が要求された場合、第1環境条件に該当するか否かを判断することなく、実行中の2台の室内機での蒸発器フェーズの少なくともいずれか一方が終了するのを待って、3台目の室内機の蒸発器フェーズを開始させてもよい。
【0094】
次に、報知部が行う報知の変形例について説明する。上述した実施形態では、ステップS14において、A室表示部28A又はA室のリモコンにより、「他室とのモードバッティングにより洗浄運転できない」旨をA室のユーザに報知している。本変形例では、これに加えて、洗浄運転中にも報知部がユーザに報知することがある。詳細には、図4で説明した標準洗浄動作(洗浄運転の要求があった直後から、蒸発器フェーズ、送風フェーズ、凝縮器フェーズの順序で、これら3つのフェーズを中断なく実行する洗浄動作)とは異なる洗浄動作を室内機がするときに、ユーザに報知される。標準洗浄動作とは異なる洗浄動作としては、蒸発器フェーズの開始時点の遅れ、送風フェーズ又は凝縮器フェーズの不実行、あるフェーズの終了から次のフェーズの開始までの洗浄動作の中断、及び、いずれかのフェーズ実行中における中断が挙げられる。
【0095】
例えば、図7Bに示した第2洗浄処理の第1例においては、室内機20Aへの洗浄運転が要求された時点の直後に室内機20Aでの蒸発器フェーズが開始されず、時点TA11まで蒸発器フェーズが実行されない待機状態となるので、A室表示部28A又はA室のリモコンにより、洗浄運転の開始までしばらく待って欲しい旨の表示(例えばA室表示部28AのLED点滅、携帯端末の表示部による表示)又は音声(例えば携帯端末のスピーカからの発音)での報知を行う。また、図7Cに示した第2例では、A室表示部28A又はA室のリモコンにより、室内機20Aでは送風フェーズが実行されない旨の表示又は音声での報知を行う。図7Dに示した第3例では、B室表示部又はB室のリモコンにより、室内機20Bでは蒸発器フェーズが実行されない旨の表示又は音声での報知を行う。また、図8Bに示した第5例では、B室表示部又はB室のリモコンにより、室内機20Bでの送風フェーズの終了時点から洗浄運転を中断し、その後凝縮器フェーズを開始する旨の表示又は音声での報知を行う。
【0096】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0097】
3 冷媒回路
10 室外機
11 圧縮機
12 四路切換弁
13 室外熱交換器
16 アキュムレータ
17A、17B、17C 冷媒配管接続部
18A、18B、18C 冷媒配管接続部
20A、20B、20C 室内機
24A A室熱交換器
24B B室熱交換器
24C C室熱交換器
25A A室ファン
25B B室ファン
25C C室ファン
31 吐出管温度センサ
32 室外熱交換器温度センサ
33 室外温度センサ
45A A室熱交換器温度センサ
45B B室熱交換器温度センサ
45C C室熱交換器温度センサ
46A A室温度センサ
46B B室温度センサ
46C C室温度センサ
EVA、EVB、EVC 電動膨脹弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B