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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183610
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】エンジンのスロットル制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 11/10 20060101AFI20221206BHJP
   F02D 9/00 20060101ALI20221206BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20221206BHJP
   F02D 9/10 20060101ALI20221206BHJP
   F02D 41/06 20060101ALI20221206BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F02D11/10 G
F02D9/00 A
F02D9/02 305B
F02D9/02 351M
F02D9/10 G
F02D41/06
F02D45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091025
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶間 弘和
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
【テーマコード(参考)】
3G065
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G065CA26
3G065CA34
3G065DA06
3G065EA01
3G065GA01
3G065GA10
3G301KA01
3G301LA01
3G301PA07Z
3G301PE01Z
3G384BA05
3G384CA01
3G384DA04
3G384EF03
3G384EG04
3G384FA08Z
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】スロットル装置のステップモータに機械的な誤差があってもエンジン始動時の応答性と安定性を向上させること。
【解決手段】エンジン1のスロットル制御装置は、エンジン1の吸気通路4を流れる吸気量を調節するためにステップモータ8を駆動源として開閉動作するスロットル装置7と、エンジン1の運転状態に応じてスロットル装置7を制御するためにステップモータ8をステップ数により制御する電子制御装置(ECU)50とを備える。ECU50は、エンジン1の始動時に、所定の始動ステップ数に、ステップモータ8が最大に脱調したときの脱調分のステップ数を加算することにより目標ステップ数を算出し、その目標ステップ数に基いてステップモータ8を制御する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気通路に設けられ、前記吸気通路を流れる吸気量を調節するためにステップモータを駆動源として開閉動作するスロットル装置と、
前記エンジンの運転状態に応じて前記スロットル装置を制御するために前記ステップモータをステップ数に基いて制御する制御手段と
を備えたエンジンのスロットル制御装置において、
前記制御手段は、前記エンジンの始動時に、所定の始動ステップ数に、前記ステップモータが最大に脱調したときの脱調分のステップ数を加算することにより目標ステップ数を算出し、前記目標ステップ数に基いて前記ステップモータを制御する
ことを特徴とするエンジンのスロットル制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンのスロットル制御装置において、
前記エンジンの回転数を検出するための回転数検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記エンジンの始動後に、検出される前記回転数が最大となるときの最大回転数を、前記ステップモータが脱調しているときに到達する脱調回転数と比較することにより前記脱調の有無を判断し、前記脱調が有ると判断した場合に、前記目標ステップ数から前記脱調分のステップ数を減算することにより前記目標ステップ数を補正する
ことを特徴とするエンジンのスロットル制御装置。
【請求項3】
単気筒で構成されるエンジンの吸気通路に設けられ、前記吸気通路を流れる吸気量を調節するためにステップモータを駆動源として開閉動作するスロットル装置と、
前記エンジンの運転状態に応じて前記スロットル装置を制御するために前記ステップモータをステップ数に基いて制御する制御手段と
を備えたエンジンのスロットル制御装置において、
前記スロットル装置より下流の前記吸気通路における吸気圧力を検出するための吸気圧力検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記エンジンのクランキング中に、前記エンジンの1サイクル毎に前記吸気圧力検出手段により検出される最小吸気圧力が、前記エンジンの始動に必要な所定の始動吸気圧力となるよう前記スロットル装置の開度を増減するために前記ステップモータを制御するための前記ステップ数を補正する
ことを特徴とするエンジンのスロットル制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、例えば、小型電動移動体に搭載される発電用エンジンに使用されるスロットル装置に係り、このスロットル装置を制御するためのエンジンのスロットル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の関連技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される技術(内燃機関のアイドル回転数制御装置)が知られている。この制御装置は、内燃機関(エンジン)のアイドル回転数を制御するために、アイドル吸気通路(吸気通路)と、その吸気通路の開度を調節するアイドル調整弁(スロットル装置)と、スロットル装置を開閉動作させるステップモータと、ステップモータを制御するコントローラとを備える。コントローラは、ステップモータの回転位置をスロットル装置の目標開度に対応した回転位置に一致させるようになっている。また、コントローラは、アイドルが安定した定常状態にあるときのステップモータの回転位置を現在位置ステップ数として記憶し、その現在位置ステップ数と、ステップモータの目標位置を代表する目標位置ステップ数とに基きステップモータを駆動制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-97320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の制御装置では、ステップモータが、その特性上、脱調を起こすことがあり、脱調により現在位置ステップ数と目標位置ステップ数との間に誤差が生じることがある。このため、ステップモータがスロットル装置の開き側に脱調した場合は、コントローラが、前回記憶した現在位置ステップ数に基きステップモータを制御したても、スロットル装置が狙いの開度にならず、アイドル時に吸気通路を流れる吸気量が狙いの吸気量にならなくなる。特に、エンジンの始動時にステップモータが脱調していた場合は、アイドル時の吸気量が不足し、始動後にエンジンがアイドル安定状態になるまでに時間がかかってしまう。脱調以外の機械的な誤差がステップモータやスロットル装置にある場合も同様である。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、スロットル装置のステップモータに機械的な誤差があってもエンジン始動時の応答性と安定性を向上させることを可能としたエンジンのスロットル制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、エンジンの吸気通路に設けられ、吸気通路を流れる吸気量を調節するためにステップモータを駆動源として開閉動作するスロットル装置と、エンジンの運転状態に応じてスロットル装置を制御するためにステップモータをステップ数に基いて制御する制御手段とを備えたエンジンのスロットル制御装置において、制御手段は、エンジンの始動時に、所定の始動ステップ数に、ステップモータが最大に脱調したときの脱調分のステップ数を加算することにより目標ステップ数を算出し、目標ステップ数に基いてステップモータを制御することを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、制御手段は、エンジンの始動時に、所定の始動ステップ数に、ステップモータが最大に脱調したときの脱調分のステップ数を加算することにより目標ステップ数を算出し、目標ステップ数に基いてステップモータを制御する。従って、エンジンの始動時に、ステップモータの脱調分を考慮してステップモータが制御されるので、脱調によるスロットル装置の開閉誤差が調整され、エンジン始動時の安定性が向上する。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、エンジンの回転数を検出するための回転数検出手段を更に備え、制御手段は、エンジンの始動後に、検出される回転数が最大となるときの最大回転数を、ステップモータが脱調しているときに到達する脱調回転数と比較することにより脱調の有無を判断し、脱調が有ると判断した場合に、目標ステップ数から脱調分のステップ数を減算することにより目標ステップ数を補正することを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、制御手段は、エンジンの始動後に、検出される回転数が最大となるときの最大回転数を、ステップモータが脱調しているときに到達する脱調回転数と比較することにより脱調の有無を判断する。そして、制御手段は、脱調が有ると判断した場合に、目標ステップ数から脱調分のステップ数を減算することにより目標ステップ数を補正する。従って、エンジンの始動後は、目標ステップ数から脱調分のステップ数が減算されるので、その分だけスロットル装置により調節される吸気量が減少し、エンジンの最大回転数から目標アイドル回転数への収束が速くなる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、単気筒で構成されるエンジンの吸気通路に設けられ、吸気通路を流れる吸気量を調節するためにステップモータを駆動源として開閉動作するスロットル装置と、エンジンの運転状態に応じてスロットル装置を制御するためにステップモータをステップ数に基いて制御する制御手段とを備えたエンジンのスロットル制御装置において、スロットル装置より下流の吸気通路における吸気圧力を検出するための吸気圧力検出手段を更に備え、制御手段は、エンジンのクランキング中に、エンジンの1サイクル毎に吸気圧力検出手段により検出される最小吸気圧力が、エンジンの始動に必要な所定の始動吸気圧力となるようスロットル装置の開度を増減するためにステップモータを制御するためのステップ数を補正することを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、制御手段は、エンジンのクランキング中に、エンジン行程の1サイクル毎に検出される最小吸気圧力が所定の始動吸気圧力となるようスロットル装置の開度を増減するためにステップモータを制御するためのステップ数を補正する。従って、ステップモータやスロットル装置に脱調や公差分の誤差があっても、その誤差に伴うスロットル装置の開度のバラツキが補正され、エンジンへ流れる吸気量の過不足が調整される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の技術によれば、スロットル装置のステップモータに機械的誤差である脱調があってもエンジン始動時の応答性と安定性を向上させることができる。
【0013】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、エンジン始動時にクランキングからアイドルへの移行応答性を向上させることができる。
【0014】
請求項3に記載の技術によれば、スロットル装置のステップモータに機械的誤差があってもエンジン始動時の応答性と安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係り、ガソリンエンジンシステムを示す概略構成図。
図2】第1実施形態に係り、モータステップ数算出処理の内容を示すフローチャート。
図3】第1実施形態に係り、エンジン温度に応じた始動補正値及びアイドル補正値を求めるために参照される補正値マップ。
図4】第1実施形態に係り、ホットアイドル学習制御の内容を示すフローチャート。
図5】第1実施形態に係り、アイドルステップ数補正制御の内容を示すフローチャート。
図6】第1実施形態に係り、エンジン温度に応じた脱調なし判定回転数及び脱調1判定回転数を求めるために参照される脱調判定回転数マップ。
図7】第1実施形態に係り、エンジンの始動時におけるエンジン回転数及びモータステップ数の変化を示すタイムチャート。
図8】第1実施形態に係り、エンジン始動時におけるエンジン回転数、クランキングステップ数及びアイドルステップ数の変化を示すタイムチャート。
図9】第2実施形態に係り、スロットル始動制御の内容を示すフローチャート。
図10】第2実施形態に係り、エンジンの1サイクル毎のクランク角度の変化を示すタイムチャート。
図11】第2実施形態に係り、エンジン回転数に応じたクランキング吸気圧力を求めるために参照されるクランキング吸気圧力マップ。
図12】第2実施形態に係り、クランキング中の吸気圧力及びスロットル装置の開弁量の変化を示すタイムチャート。
図13】第2実施形態に係り、クランキング中の吸気圧力及びスロットル装置の開弁量の変化を示すタイムチャート。
図14】第2実施形態に係り、エンジンの始動時におけるエンジン回転数及びモータステップ数の変化を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、エンジンのスロットル制御装置をガソリンエンジンシステムに具体化した第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[エンジンシステムについて]
図1に、この実施形態におけるガソリンエンジンシステム(以下、単に「エンジンシステム」という。)を概略構成図により示す。この実施形態では、シリーズ方式のハイブリッド小型モビリティ(HV小型モビリティ:例えば、ドローンや無人台車等)に搭載される発電用のエンジンシステムについて説明する。周知のように、シリーズ方式のHV小型モビリティは、基本的にはバッテリの電力でモータを駆動して移動し、バッテリの電力が少なくなるとエンジンで発電機を駆動して発電し、その電力でモータを駆動して移動する仕組みを有する。
【0018】
このHV小型モビリティに搭載されるエンジンシステムは、図1に示すように、単気筒で構成されるエンジン1を備える。エンジン1は、4サイクルのレシプロエンジンであり、燃焼室を含む1つの気筒2及びクランクシャフト3の他、周知の構成要素を含む。エンジン1には、気筒2に吸気を導入するための吸気通路4と、気筒2から排気を導出するための排気通路5とが設けられる。吸気通路4の入口には、エアクリーナ6が設けられる。吸気通路4の途中には、サージタンク4aが設けられ、そのサージタンク4aの上流側にはスロットル装置7が設けられる。スロットル装置7は、エンジン1に吸入される吸気を調節するポペット式弁より構成され、弁座に対し往復駆動する弁体と、その弁体を開度可変に駆動するためのステップモータ8とを含む。この実施形態のエンジンシステムには、弁体の開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルセンサが設けられていない。スロットル装置7は、弁体により流路を開閉させることにより、吸気通路4を流れる吸気量を調節するようになっている。一方、排気通路5には、排気を浄化するための触媒9が設けられる。
【0019】
吸気通路4には、同通路4に燃料を噴射するための1つのインジェクタ10が設けられる。インジェクタ10は、燃料供給装置(図示略)から供給される燃料(ガソリン)を噴射するように構成される。吸気通路4では、吸気行程で導入される吸気と、インジェクタ10から吸気通路4に噴射された燃料により可燃混合気が形成される。
【0020】
エンジン1には、気筒2に対応して1つの点火プラグ11とイグニションコイル12が設けられる。点火プラグ11は、イグニションコイル12から出力される点火信号を受けてスパーク動作する。両部品11,12は、気筒2にて可燃混合気に点火するための点火装置を構成する。気筒2において、可燃混合気は、圧縮行程で点火プラグ11のスパーク動作により爆発・燃焼し、爆発行程が経過する。燃焼後の排気は、排気行程で気筒2から排気通路5へ排出され、触媒9を流れて浄化され、外部へ排出される。これら一連の行程を繰り返すことで、エンジン1のクランクシャフト3が回転し、エンジン1に出力が得られる。
【0021】
エンジン1に対応して設けられる各種センサ等42,43,45は、エンジン1の運転状態を検出するための手段を構成する。エンジン1に設けられたエンジン温センサ42は、エンジン1のシリンダブロックの温度をエンジン温度THEとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。エンジン1に設けられた回転数センサ43は、クランクシャフト3の回転数をエンジン回転数NEとして検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。サージタンク4aに設けられた吸気圧センサ45は、サージタンク4a(吸気通路4)における吸気圧力PMを検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する。ここで、各種センサ等42,43,45のうち、回転数センサ43は、この開示技術における回転数検出手段の一例に相当し、吸気圧センサ45は、この開示技術における吸気圧力検出手段の一例に相当する。
【0022】
このエンジンシステムは、エンジン1の運転を制御するための電子制御装置(ECU)50を備える。ECU50には、各種センサ等42,43,45がそれぞれ接続される。また、ECU50には、スロットル装置7のステップモータ8、各インジェクタ10及びイグニションコイル12がそれぞれ接続される。ECU50は、この開示技術における制御手段の一例に相当する。周知のようにECU50は、中央処理装置(CPU)、各種メモリ、外部入力回路及び外部出力回路等を含む。
【0023】
この実施形態で、ECU50は、エンジン1を運転するために、各種センサ等42,43,45からの電気信号に基いてスロットル装置7(ステップモータ8)、各インジェクタ10及びイグニションコイル12をそれぞれ制御するようになっている。また、ECU50は、スロットルセンサを用いずにスロットル装置7を好適に制御するために所定のスロットル制御を実行するようになっている。
【0024】
この実施形態のHV小型モビリティは、図1に示すように、上記したエンジンシステムの他に、発電機31,インバータ32、バッテリ33及び駆動用モータ34を更に備える。そして、このモビリティは、エンジン1により発電機31を駆動させて発電し、その電力をインバータ32を介してバッテリ33に充電すると共に、その電力を駆動用モータ34に供給し、駆動体(図示略)を駆動させて小型モビリティを移動させるようになっている。
【0025】
[スロットル制御について]
次に、この実施形態のスロットル制御について説明する。シリーズ方式のHV小型モビリティでは、エンジン1が駆動軸に直結していないことから、FMVSS要求緩和(戻り性の緩和)とOR要求緩和(スロットル開度監視不要)が可能となる。また、エンジン1をバッテリ33の充電に特化して使用することから、エンジン1の応答性に対する要求を緩和することが可能となる。そのため、この実施形態では、スロットルセンサを設けることなくスロットル制御を実行することが可能となり、エンジンシステムのコストダウンが可能となる。しかしながら、スロットルセンサがないことで実際のスロットル開度を監視することができない。そのため、スロットル装置7の駆動源であるステップモータ8に誤差(機械的な差、経年変化等を含む。)がある場合に、その誤差に対処してステップモータ8を制御する必要がある。例えば、エンジン1の始動に際しては、ステップモータ8の誤差にかかわらず、エンジン1のクランキングを遅れなく実行し、クランキングから速やかにアイドル安定状態へ移行させる必要がある。そこで、この実施形態では、エンジン1の始動のために次のような各種処理及び制御を実行するようになっている。
【0026】
[クランキング及びアイドリングのためのモータステップ数算処理について]
図2に、この実施形態における、クランキング及びアイドリングのためのモータステップ数算出処理の内容をフローチャートにより示す。ECU50は、このフローチャートに示す処理をエンジン1のクランキング前に実行するようになっている。
【0027】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ100で、ECU50は、エンジン1の始動要求があるか否かを判断する。例えば、ECU50は、バッテリ33の充電容量が基準値を下回っている場合に、エンジン1の始動要求があると判断することができる。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ110へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ100へ戻す。
【0028】
ステップ110では、ECU50は、前回学習されたホットアイドル時(安定したアイドル時)のステップ数をホットアイドル学習値HISとして取り込む。このホットアイドル学習値HISの学習制御については後述する。
【0029】
次に、ステップ120で、ECU50は、エンジン温センサ42の検出値に基き、現在のエンジン温度THEを取り込む。
【0030】
次に、ステップ130で、ECU50は、クランキングに関する始動補正値β1とアイドリングに関するアイドル補正値β2を算出する。ECU50は、例えば、図3に示すような補正値マップを参照することにより、エンジン温度THEに応じた始動補正値β1及びアイドル補正値β2を求めることができる。図3に示すように、エンジン温度THEが「10℃~25℃」の範囲で高くなるほど、始動補正値β1は「6~3」の範囲で減少し、アイドル補正値β2は「4~1」の範囲で減少する。図3に示すように、エンジン温度THEが「25℃~35℃」となる範囲では、始動補正値β1は「3」で一定となり、アイドル補正値β2は「1」で一定となる。また、図3に示すように、エンジン温度THEが「35℃~45℃」の範囲で高くなるほど、始動補正値β1は「3~2」の範囲で減少し、アイドル補正値β2は「1~0」の範囲で減少する。更に、図3に示すように、エンジン温度THEが「40℃~50℃」となる範囲では、始動補正値β1は「2」で一定となり、アイドル補正値β2は「0」で一定となる。
【0031】
次に、ステップ140で、ECU50は、ホットアイドル学習値HISに始動補正値β1と「2」を加算することにより、クランキング時のステップモータ8のためのステップ数(クランキングステップ数)CSを算出する。ここで、「2」は、ステップモータ8の誤差を見越して加算されるステップ数であり、ステップモータ8が最大に脱調したときの脱調分のステップ数に相当する。
【0032】
次に、ステップ150で、ECU50は、ホットアイドル学習値HISにアイドル補正値β2と「2」を加算することにより、アイドル時のステップモータ8のためのステップ数(アイドルステップ数)ISを算出する。ここでも、「2」は、ステップモータ8の誤差を見越して加算されるステップ数であり、ステップモータ8が最大に脱調したときの脱調分のステップ数に相当する。その後、ECU50は、処理をステップ100へ戻す。
【0033】
上記したステップ150では、アイドルステップ数ISを算出するために、ホットアイドル学習値HISを、アイドル補正値β2を加算することで補正し、更に「2」を加算することで補正している。これは、仮に、エンジン始動時に、ステップモータ8が、2ステップ開弁側(スロットル装置7の開弁側)へ脱調した状態でホットアイドル学習値HISを学習して、次のエンジン始動時に脱調しなかった場合、学習した位置より2ステップ閉弁側(スロットル装置7の閉弁側)でエンジン1を始動することになり、スロットル装置7の開度が不十分となり、エンジン1の始動性が悪化するおそれがあるからである。ステップ140のクランキングステップ数CSに関する「2」の加算についても同様である。
【0034】
上記のモータステップ数算出処理によれば、ECU50は、エンジン1の始動時に、所定の始動ステップ数に、ステップモータ8が最大に脱調したときの脱調分のステップ数である「2」を加算することにより目標ステップ数を算出し、その目標ステップ数に基いてステップモータ8を制御するようになっている。ここで、上記したクランキングステップ数CSとアイドルステップ数ISは、それぞれこの開示技術における目標ステップ数に相当する。また、ホットアイドル学習値HISに始動補正値β1を加算した値が、クランキングステップ数CSを算出するための、この開示技術における所定の始動ステップに相当し、ホットアイドル学習値HISにアイドル補正値β2を加算した値が、アイドルステップ数ISを算出するための、この開示技術における所定の始動ステップに相当する。
【0035】
そして、エンジン1のクランキング中には、ECU50は、算出されたクランキングステップ数CSに基きステップモータ8を制御することで、スロットル装置7の開度を制御するようになっている。
【0036】
[ホットアイドル学習制御について]
図4に、この実施形態において、ホットアイドル学習値HISを学習するためのホットアイドル学習制御の内容をフローチャートにより示す。ECU50は、このフローチャートに示す処理を、エンジン1を停止する直前のアイドル時に実行するようになっている。
【0037】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ200で、ECU50は、エンジン1の停止要求があるか否かを判断する。例えば、ECU50は、バッテリ33の充電容量が基準値以上となっている場合に、エンジン1の停止要求があると判断することができる。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ210へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ200へ戻す。
【0038】
ステップ210では、ECU50は、エンジン1がアイドル中であるか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ220へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ200へ戻す。
【0039】
ステップ220では、ECU50は、エンジン温センサ42の検出値に基き、現在のエンジン温度THEを取り込む。
【0040】
次に、ステップ230で、ECU50は、エンジン温度THEが所定の判定温度THJより高いか否かを判断する。ここで、判定温度THJは、エンジン1が十分に暖機していることを示す温度に相当し、一例として「80℃」を採用することができる。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ240へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ200へ戻す。
【0041】
ステップ240では、ECU80は、現在のステップモータ8のステップ数を現在ステップ数CRSとして取り込む。
【0042】
次に、ステップ250で、ECU50は、現在ステップ数CRSを、ホットアイドル時のステップ数、すなわちホットアイドル学習値HISとしてメモリに記憶する。その後、ECU80は、処理をステップ200へ戻す。
【0043】
上記したホットアイドル学習制御によれば、ECU50は、エンジン1が停止する直前のアイドル中であってエンジン1が十分に暖機している状態(ホットアイドル中)におけるステップモータ8のステップ数(現在ステップ数CRS)を学習値(ホットアイドル学習値HIS)として記憶するようになっている。
【0044】
[アイドルステップ数補正制御について]
次に、アイドルステップ数ISを補正するためのアイドルステップ数補正制御について説明する。図5に、このアイドルステップ数補正制御の内容をフローチャートにより示す。ECU50は、このフローチャートに示す処理をエンジン1のクランキング後アイドル移行前に実行するようになっている。
【0045】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ300で、ECU50は、エンジン1の始動が完了したか否かを判断する。すなわち、ECU50は、エンジン1のクランキングが完了した場合に、エンジン1の始動が完了したと判断することができる。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ310へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ300へ戻す。
【0046】
ステップ310では、ECU50は、始動時の吹き上がりがピークか否かを判断する。すなわち、ECU50は、始動時のエンジン回転数NEの増加がピーク(最大回転数NEmax)に達したか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ320へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ300へ戻す。
【0047】
ステップ320では、ECU50は、エンジン温センサ42の検出値に基き、エンジン温度THEを取り込む。
【0048】
次に、ステップ330で、ECU50は、エンジン温度THEに応じた脱調なし判定回転数NES0及び脱調1判定回転数NES1をそれぞれ算出する。ECU50は、例えば、図6に示すような脱調判定回転数マップを参照することにより、エンジン温度THEに応じた脱調なし判定回転数NES0及び脱調1判定回転数NES1を求めることができる。このマップにおいて、各判定回転数NES0,NES1は、エンジン温度THEが高くなるほど低くなるように設定される。
【0049】
次に、ステップ340で、ECU50は、回転数センサ43の検出値に基き、吹き上がりピーク時の最大回転数NEmaxを取り込む。
【0050】
次に、ステップ350で、ECU50は、取り込まれた最大回転数NEmaxが、脱調なし判定回転数NES0以下であるか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ360へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ370へ移行する。
【0051】
ステップ360では、ECU50は、ステップモータ8に脱調なしと判定した後、処理をステップ300へ戻す。
【0052】
一方、ステップ370では、ECU50は、取り込まれた最大回転数NEmaxが、脱調なし判定回転数NES0より高く、かつ、脱調1判定回転数NES1以下であるか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ380へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ400へ移行する。
【0053】
ステップ380では、ECU50は、ステップモータ8に1ステップの脱調があると判定する。
【0054】
次に、ステップ390で、ECU50は、クランキング前にてモータステップ数算出処理により求められたアイドルステップ数ISを補正する。すなわち、ECU50は、アイドルステップ数ISから「1」を減算することでアイドルステップ数ISを補正する。その後、ECU50は、処理をステップ300へ戻す。
【0055】
また、ステップ400では、ECU50は、取り込まれた最大回転数NEmaxが脱調1判定回転数NES1より高いか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ410へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ300へ戻す。
【0056】
ステップ410では、ECU50は、ステップモータ8に2ステップの脱調があると判定する。
【0057】
次に、ステップ420で、ECU50は、クランキング前にてモータステップ数算処理により求められたアイドルステップ数ISを補正する。すなわち、ECU50は、アイドルステップ数ISから「2」を減算することでアイドルステップ数ISを補正する。その後、ECU50は、処理をステップ300へ戻す。
【0058】
上記アイドルステップ数補正制御によれば、ECU50は、エンジン1の始動直後に、エンジン1が吹き上がり、検出されるエンジン回転数NEが最大となるときの最大回転数NEmaxを、ステップモータ8が脱調しているときに到達する脱調1判定回転数NES1及び脱調2判定回転数NES2(脱調回転数)と比較することにより脱調の有無を判断し、脱調が有ると判断した場合に、アイドルステップ数IS(目標ステップ数)から脱調分のステップ数としての「1又は2」を減算することにより、アイドルステップ数IS(目標ステップ数)を補正するようになっている。換言すると、ECU50は、エンジン1の始動直後にエンジン1が吹き上がったときの最大回転数NEmaxに応じ、アイドルステップ数ISの脱調見込み分を減少させるようになっている。
【0059】
すなわち、ECU50は、エンジン1の始動時に、スロットル装置7をステップ数で「2」だけ開弁側へ大きく制御することでエンジン1を始動させ、始動直後のエンジン回転数NEの吹き上がりの大きさに基いてステップモータ8が実際に脱調したステップ数を判断し、アイドル直前に、その脱調したステップ数だけアイドルステップ数ISを減算補正するようになっている。
【0060】
そして、エンジン1のアイドル中に、ECU50は、補正された又は補正されなかったアイドルステップ数ISに基きステップモータ8を制御することで、スロットル装置7の開度を制御するようになっている。
【0061】
[エンジンのスロットル制御装置の作用及び効果について]
以上説明したように、この実施形態におけるエンジンのスロットル制御装置の構成によれば、次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、図7には、この実施形態において、エンジン1の始動時における(a)エンジン回転数NEと、(b)スロットル装置7(ステップモータ8)を制御するためのモータステップ数の変化をタイムチャートにより示す。図7に示すように、エンジン1の始動時に、エンジン回転数NEは、あるピークを伴って増減し、モータステップ数は、目標ステップ数であるクランキングステップ数CSで始まり、目標ステップ数であるアイドルステップ数ISへ移行する。ここで、時刻t0~t1ではクランキングCKが行われ、時刻t2では、エンジン始動判定ESTJが行われ、時刻t3では、エンジン回転数NEが最大回転数NEmaxに達すると脱調判定SOJが行われ、時刻t4で、クランキングステップ数CSからアイドルステップ数ISへ移行し、時刻t5で、アイドルIDとスロットル装置7のフィードバック制御FBCが開始する。
【0062】
この実施形態のスロットル制御におけるモータステップ数算出処理によれば、ECU50は、エンジン1の始動時に、所定の始動ステップ数に、ステップモータ8が最大に脱調したときの脱調分のステップ数を加算することにより目標ステップ数を算出する。すなわち、ECU50は、ホットアイドル学習値HISに始動補正値β1を加算し、更に脱調分の「2」を加算することにより、クランキングステップ数CS(目標ステップ数)を算出すると共に、ホットアイドル学習値HISにアイドル補正値β2を加算し、更に脱調分の「2」を加算することにより、アイドルステップ数IS(目標ステップ数)を算出する。そして、ECU50は、それらクランキングステップ数CS及びアイドルステップ数ISに基いてステップモータ8を制御する。従って、エンジン1の始動時に、ステップモータ8の脱調分を考慮してステップモータ8が制御されるので、エンジン1のクランキング時及びアイドル時に、脱調によるスロットル装置7の開閉誤差が調整され、エンジン始動時の安定性が向上する。このため、スロットル装置7のステップモータ8に機械的誤差である脱調があってもエンジン始動時の応答性と安定性を向上させることができる。
【0063】
また、この実施形態のスロットル制御におけるアイドルステップ数補正制御によれば、ECU50は、エンジン1の始動直後に、エンジン1が吹き上がり、検出されるエンジン回転数NEが最大となるときの最大回転数NEmaxを、ステップモータ8が脱調しているときに到達する脱調1判定回転数NES1及び脱調2判定回転数NES2(脱調回転数)と比較することにより脱調の有無を判断する。そして、ECU50は、脱調が有ると判断した場合に、アイドルステップ数IS(目標ステップ数)から脱調分のステップ数としての「1又は2」を減算することにより、アイドルステップ数ISから脱調分のステップ数としての「1又は2」を減算することによりアイドルステップ数ISを補正する。従って、エンジン1の始動直後は、アイドルステップ数ISから脱調分のステップ数が減算されるので、その分だけスロットル装置7により調節される吸気量Gaが減少し、エンジン1の最大回転数NEmaxから目標アイドル回転数NETへの収束が速くなる。このため、エンジン始動時にクランキングからアイドルへの移行応答性を向上させることができる。
【0064】
図8に、エンジン始動時における(a)エンジン回転数NE及び(b)クランキングステップ数CS及びアイドルステップ数ISの変化をタイムチャートにより示す。図8(a),(b)において、実線SLは、クランキングステップ数CS及びアイドルステップ数ISにつき、脱調分を見込んだ補正無しの場合を示し、太線TL1は、クランキングステップ数CS及びアイドルステップ数ISにつき、脱調分を見込んだ補正とフィードバック制御FBCが有る場合(本実施形態)を示す。脱調分を見込んだ補正とフィードバック制御FBCが有る場合でも、実際の脱調分の減算補正をしない場合の違いは破線BL3で示し、実際の脱調分の減算補正をしない場合の違いは破線BL3で示す。脱調分を見込んだ補正が有る場合でも、実際の脱調分の減算補正もフィードバック制御FBCもない場合の違いは1点鎖線DL1で示す。
【0065】
この実施形態のスロットル制御によれば、図8(a)及び(b)に太線TL1で示すように、エンジン1の始動時に、エンジン1の吹き上がりにより、エンジン回転数NEが最大回転数NEmaxに達した後、時刻t1~t2にて、アイドルステップ数ISから実際の脱調分のステップ数が減算補正され、時刻t2にて、フィードバック制御FBCが開始されることで、エンジン回転数NEが早期(時刻t2)に目標アイドル回転数NETに達することがわかる。
【0066】
<第2実施形態>
次に、エンジンのスロットル制御装置をガソリンエンジンシステムに具体化した第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0067】
[スロットル制御について]
次に、この実施形態のスロットル制御について説明する。第1実施形態の場合と同様、この実施形態のエンジンシステムでも、スロットルセンサがないことで実際のスロットル開度を監視することができない。そのため、エンジン始動時には、スロットル装置7の開弁量(開度)が機差(ギアギャップ、部品公差等)によってばらつくおそれがある。例えば、スロットル装置7の弁体を開閉させるギア機構に「0.2mm」のギアギャップがあり、ステップモータ8が1ステップ当たり「0.04mm」のストロークで弁体を移動させる場合、スロットル装置7を閉弁状態から開弁させるときには、ステップモータ8が「5ステップ」空回りしてしまう。従って、ステップモータ8を「10ステップ」動作させたつもりでも、実際の挙動が「5ステップ」の動作となり、更に公差分の誤差が乗せされてしまう。そこで、この実施形態では、エンジン1の始動時に次のようなスロットル始動制御を実行するようになっている。
【0068】
[スロットル始動制御について]
次に、スロットル始動制御について説明する。図9に、このスロットル始動制御の内容をフローチャートにより示す。ECU50は、このフローチャートに示す処理をエンジン1の始動開始時に実行するようになっている。
【0069】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ500で、ECU50は、エンジン1のクランク角度が圧縮行程中のBTDC90℃A(上死点前90℃A)か否かを判断する。ECU50は、回転数センサ43の検出値に基きこの判断を実行することができる。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ510へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ500へ戻す。
【0070】
ステップ510では、ECU50は、回転数センサ43の検出値に基き、エンジン回転数NEを取り込む。
【0071】
次に、ステップ520で、ECU50は、吸気圧センサ45の検出値に基き、今回最小となる吸気圧力(最小吸気圧力)PMminを取り込む。ECU50は、例えば、図10に示すように、エンジン1の吸気、圧縮、膨張及び排気の一連の行程が進行する時刻t0~t2の間において、吸気行程から圧縮行程の途中までの時刻t0~t1の間で最小吸気圧力PMminを取り込む。ECU50は、圧縮行程途中から排気行程終了までの時刻t1~t2の間で、スロットル装置7を開閉できるようになっている。図10は、エンジン1の1サイクル毎のクランク角度の変化を示すタイムチャートである。
【0072】
次に、ステップ530で、ECU50は、エンジン回転数NEに応じたクランキング吸気圧力PMcを算出する。ECU50は、例えば、図11に示すようなクランキング吸気圧力マップを参照することにより、エンジン回転数NEに応じたクランキング吸気圧力PMcを求めることができる。このマップでは、エンジン回転数NEが高くなるほどクランキング吸気圧力PMcが小さくなるように設定される。図11において、太線TLはクランキング吸気圧力PMcを示し、その上側の破線BL1は、クランキング吸気圧力PMcに許容誤差BFを加算した値の変化を示し、その下側の破線BL2は、クランキング吸気圧力PMcから許容誤差BFを減算した値の変化を示す。
【0073】
次に、ステップ540で、ECU50は、最小吸気圧力PMminが、クランキング吸気圧力PMcから許容誤差BFを減算した値以上、かつ、クランキング吸気圧力PMcに許容誤差BFを加算した値以下となるか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ550へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ560へ移行する。
【0074】
ステップ550では、ECU50は、吸気圧力フィードバック(F/B)制御が完了したことを示すフィードバック完了フラグXFBを「1」に設定した後、処理をステップ500へ戻す。
【0075】
一方、ステップ560では、ECU50は、最小吸気圧力PMminが、クランキング吸気圧力PMcから許容誤差BFを減算した値より低いか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ570へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ580へ移行する。
【0076】
ステップ570では、ECU50は、スロットル装置7を1ステップ開弁制御(ステップモータ8を1ステップ開弁方向へ制御)した後、処理をステップ500へ戻す。
【0077】
また、ステップ580では、ECU50は、最小吸気圧力PMminが、クランキング吸気圧力PMcに許容誤差BFを加算した値より高いかか否かを判断する。ECU50は、この判断結果が肯定となる場合は処理をステップ590へ移行し、この判断結果が否定となる場合は処理をステップ500へ戻す。
【0078】
ステップ590では、ECU50は、スロットル装置7を1ステップ閉弁制御(ステップモータ8を1ステップ閉弁方向へ制御)した後、処理をステップ500へ戻す。
【0079】
上記したスロットル始動制御によれば、ECU50は、エンジン1のクランキング中に、エンジン1の1サイクル毎に吸気圧センサ45により検出される最小吸気圧力PMmin(最低の吸気圧力)が、クランキング吸気圧力PMc(エンジン1の始動に必要な所定の始動吸気圧力)となるようにスロットル装置7の開度を増減するためにステップモータ8を制御するためのステップ数を補正するようになっている。
【0080】
[エンジンのスロットル制御装置の作用及び効果について]
以上説明したように、この実施形態におけるエンジンのスロットル制御装置の構成によれば、次のような作用及び効果を得ることができる。すなわち、この実施形態のスロットル制御におけるスロットル始動制御によれば、ECU50は、エンジン1のクランキング中に、エンジン行程の1サイクル毎に検出される最小吸気圧力PMminがクランキング吸気圧力PMc(所定の始動吸気圧力)となるようスロットル装置7の開度を増減するためにステップモータ8のステップ数による制御を補正する。
【0081】
すなわち、図12(a)に示すように、クランキング中に検出される最小吸気圧力PMminがクランキング吸気圧力PMcより低い場合(2点鎖線円で囲んで示す)は、図12(b)に示すように、スロットル装置7の開弁量が1ステップ分だけ増加することで、最小吸気圧力PMminがクランキング吸気圧力PMcに調整される。また、図13(a)に示すように、クランキング中に検出される最小吸気圧力PMminがクランキング吸気圧力PMcより高い場合(2点鎖線円で囲んで示す)は、図13(b)に示すように、スロットル装置7の開弁量が1ステップ分だけ減少することで、最小吸気圧力PMminがクランキング吸気圧力PMcに調整される。図12及び図13は、それぞれクランキング中の(a)吸気圧力PM及び(b)スロットル装置の開弁量の変化を示すタイムチャートである。
【0082】
従って、このスロットル始動制御によれば、ステップモータ8やスロットル装置7に脱調や公差分の誤差があっても、その誤差に伴うスロットル装置7の開度のバラツキが補正され、エンジン1へ流れる吸気量の過不足が調整される。このため、スロットル装置7のステップモータ8に機械的誤差があってもエンジン始動時の応答性と安定性を向上させることができる。
【0083】
図14に、この実施形態において、エンジン1の始動時における(a)エンジン回転数NE及び(b)モータステップ数の変化をタイムチャートにより示す。図14に示すように、エンジン1の始動時に、エンジン回転数NEは、あるピークを伴って増減し、モータステップ数は、クランキングステップ数CSで始まりアイドルステップ数ISへ移行する。この実施形態のスロットル始動制御によれば、図14(b)に示すように、時刻t0~t1の間のクランキングCK中に、上記したように吸気圧力PMに基くフィードバック制御FBCによりモータステップ数が調整される。このため、図14(a)に実線で示すように、吹き上がりを伴うエンジン回転数NEの変化は、破線で示すようにばらつくことがなく、速やかに安定したアイドル状態へ移行する。
【0084】
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0085】
前記各実施形態では、この開示技術におけるエンジンのスロットル制御装置を、シリーズ方式のハイブリッド小型モビリティ(HV小型モビリティ:例えば、ドローンや無人台車等)に搭載される発電用のエンジンシステムに具体化したが、その他の各種エンジンシステムにも具体化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
この開示技術は、ハイブリッド小型モビリティ(HV小型モビリティ:例えば、ドローン)などの簡易エンジンシステムに適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 エンジン
4 吸気通路
7 スロットル装置
8 ステップモータ
43 回転数センサ(回転数検出手段)
45 吸気圧センサ(吸気圧力検出手段)
50 ECU(制御手段)
NEmax 最大回転数
PMmin 最小吸気圧力
PMc クランキング吸気圧力(始動吸気圧力)
CS クランキングステップ数(目標ステップ数)
IS アイドルステップ数(目標ステップ数)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14