(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183611
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】構造用面材
(51)【国際特許分類】
E04C 2/30 20060101AFI20221206BHJP
E04C 2/20 20060101ALI20221206BHJP
E04C 2/24 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E04C2/30 J
E04C2/20 L
E04C2/24 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091026
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】稲木 祐子
【テーマコード(参考)】
2E162
【Fターム(参考)】
2E162CB07
2E162CB24
2E162CC05
2E162CD03
2E162CD09
2E162CD10
2E162CE05
2E162CE09
(57)【要約】
【課題】建物の内部の通気効率を向上させることができる構造用面材を提供することを目的とする。
【解決手段】基板10と、基板10上に設けられた複数の突部12と、を備える構造用面材1において、複数の突部12は、それぞれ菱形柱状であり、かつ、基板10の厚さ方向の突部12側から見た菱形の先端面12aの長い方の対角線を縦方向、短い方の対角線を横方向として斜め格子状に配列されており、隣り合う突部12の間の溝14は幅を30mm以上60mm以下、深さを8mm以上20mm以下とし、横方向に隣り合う突部12同士の間隔を70mm以上160mm以下とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に用いられる構造用面材であって、
基板と、前記基板上に設けられた複数の突部と、を備え、
前記複数の突部は、それぞれ菱形柱状であり、かつ、前記基板の厚さ方向の前記突部側から見た菱形の先端面の長い方の対角線を縦方向、短い方の対角線を横方向として斜め格子状に配列されており、
隣り合う前記突部の間の溝は幅が30mm以上60mm以下、深さが8mm以上20mm以下であり、
横方向に隣り合う前記突部同士の間隔が70mm以上160mm以下である、構造用面材。
【請求項2】
前記突部の前記先端面の短い方の対角線の長さに対する長い方の対角線の長さの比が1.5以上2.5以下である、請求項1に記載の構造用面材。
【請求項3】
前記基板と前記複数の突部がパーティクルボードからなる、請求項1又は2に記載の構造用面材。
【請求項4】
前記基板の前記複数の突部が設けられた側とは反対側に断熱ボードが積層されている、請求項3に記載の構造用面材。
【請求項5】
前記基板と前記複数の突部がポリスチレンフォームからなり、前記基板の前記複数の突部が設けられた側とは反対側に板状のフェノールフォームが積層されている、請求項1又は2に記載の構造用面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造用面材、特に外張り工法によって建物の壁、屋根、天井等に施工され得る構造用面材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば住宅等の建物における外張り断熱工法に用いる断熱材として、基板の片面に複数の突部が形成されており、突部間の溝が通気路として機能する構造用面材が知られている。特許文献1には、建物の壁、屋根、天井等に施工される構造用面材として、フェノールフォームとポリスチレンフォームとが積層され、ポリスチレンフォームの表面に厚さ方向から見た形状が正方形である複数の突部が形成された複合断熱ボードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造用面材における突部間の溝内の通気の流速や流量を高めることができれば、建物の内部の通気効率を向上させることができる。
本発明は、建物の内部の通気効率を向上させることができる構造用面材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]建物に用いられる構造用面材であって、基板と、前記基板上に設けられた複数の突部と、を備え、前記複数の突部は、それぞれ菱形柱状であり、かつ、前記基板の厚さ方向の前記突部側から見た菱形の先端面の長い方の対角線を縦方向、短い方の対角線を横方向として斜め格子状に配列されており、隣り合う前記突部の間の溝は幅が30mm以上60mm以下、深さが8mm以上20mm以下であり、横方向に隣り合う前記突部同士の間隔が70mm以上160mm以下である、構造用面材。
[2]前記突部の前記先端面の短い方の対角線の長さに対する長い方の対角線の長さの比が1.5以上2.5以下である、[1]に記載の構造用面材。
[3]前記基板と前記複数の突部がパーティクルボードからなる、[1]又は[2]に記載の構造用面材。
[4]前記基板の前記複数の突部が設けられた側とは反対側に断熱ボードが積層されている、[3]に記載の構造用面材。
[5]前記基板と前記複数の突部がポリスチレンフォームからなり、前記基板の前記複数の突部が設けられた側とは反対側に板状のフェノールフォームが積層されている、[1]又は[2]に記載の構造用面材。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、建物の内部の通気効率を向上させることができる構造用面材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の構造用面材を突部側から見た正面図である。
【
図3】
図1の構造用面材の複数の突部を拡大して示した図である。
【
図6】例1のシミュレーションにおける溝内の空気の流速分布である。
【
図7】例2のシミュレーションにおける溝内の空気の流速分布である。
【
図8】例3のシミュレーションにおける溝内の空気の流速分布である。
【
図9】例4のシミュレーションにおける溝内の空気の流速分布である。
【
図10】例1のシミュレーションにおける溝内の圧力分布である。
【
図11】例2のシミュレーションにおける溝内の圧力分布である。
【
図12】例3のシミュレーションにおける溝内の圧力分布である。
【
図13】例4のシミュレーションにおける溝内の圧力分布である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の構造用面材は、建物に用いられる構造用面材であって、特に外張り工法による建物の壁、屋根、天井等に施工され得る。以下、本発明の構造用面材の一例を示し、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0009】
図1~3に示すように、本実施形態の構造用面材1は、基板10と、基板10上に設けられた複数の突部12と、を備えている。便宜上、構造用面材1を厚さ方向の突部12側から見て、横方向(
図1の右から左に向かう方向)をx軸方向、縦方向(
図1の上に向かう方向)をy軸方向、厚さ方向(
図1の紙面の裏側から表側に向かう方向)をz軸方向とする。
【0010】
複数の突部12はそれぞれ菱形柱状であり、基板10の厚さ方向(z軸方向)の突部12側から見た先端面12aの形状が菱形になっている。また、
図1及び
図3に示すように、構造用面材1では、複数の突部12は菱形の先端面12aの長い方の対角線aを縦方向(y軸方向)、短い方の対角線bを横方向(x軸方向)として斜め格子状に配列されている。
【0011】
隣り合う突部12の間は溝14になっている。構造用面材1を厚さ方向の突部12側から正面視したときには、斜め格子状に配列された複数の突部12によって、縦方向(y軸方向)に対して右斜めに傾斜した直線状に延びる複数本の溝14と、縦方向(y軸方向)に対して左斜めに傾斜した直線状に延びる複数本の溝14とが互いに交差するように形成されている。
【0012】
この例の基板10と複数の突部12はパーティクルボードからなる。すなわち、構造用面材1は木質面材である。
構造用面材1の厚さ方向の突部12側から見た正面視形状は、用途に応じて適宜設定すればよく、この例では矩形である。
構造用面材1の寸法は、特に限定されず、用途に応じて適宜設定でき、例えば縦900mm以上3500mm以下、横300mm以上1500mm以下とすることができる。
【0013】
基板10の厚さ、すなわち基板10の突部12が形成されていない部分(溝14の部分)の厚さは、8mm以上24mm以下が好ましく、上限値に近いほど、壁倍率も高くなる。
なお、基板10の厚さは、基板10の突部12が形成されていない部分における任意の10箇所で測定した厚さの平均値とする。
【0014】
溝14をその長さ方向に垂直な方向に切断したときの断面形状は、この例では矩形である。なお、溝14の断面形状は矩形には限定されず、例えば、矩形の底側の両方の隅部が円弧状になっている形状であってもよく、開口側の幅に比べて底側の幅が狭い台形状であってもよい。
【0015】
溝14の幅は、30mm以上60mm以下であり、35mm以上45mm以下が好ましい。溝14の幅が前記範囲内であれば、構造用面材1の縦方向(y軸方向)の一方の端から他方の端まで溝14内を空気が流通する際の流速や流量が高まるため、構造用面材1を施工した建物の通気効率が高くなる。
なお、溝14の幅は、溝14の長さ方向に垂直な断面における溝14の開口端同士の距離(溝14の開口の幅)を任意の10箇所で測定した値の平均値とする。
【0016】
溝14の深さは、8mm以上20mm以下であり、10mm以上15mm以下が好ましい。溝14の深さが前記範囲内であれば、構造用面材1の縦方向(y軸方向)の一方の端から他方の端まで溝14内を空気が流通する際の流速や流量が高まるため、構造用面材1を施工した建物の通気効率が高くなる。
なお、溝14の深さは、溝14の長さ方向に垂直な断面における溝14の開口端と最深部との厚さ方向(z軸方向)の距離を任意の10箇所で測定した値の平均値とする。
【0017】
横方向(x軸方向)に隣り合う突部12同士の間隔P1(
図3)は、160mm以下である。突部12同士の間隔P1が前記上限値以下であれば、構造用面材1を建物の壁、屋根、天井等に施工する際、構造用面材1の周縁部分の突部12が位置する部分に、溝14を避けつつ釘を等間隔(例えば150mm間隔)に打ち付けてしっかりと固定することができる。突部12同士の間隔P1は、構造用面材1の施工時の釘打ちの間隔に応じて設定することができ、70mm以上160mm以下が好ましく、140mm以上151.5mm以下がより好ましい。
なお、突部12同士の間隔P1は、横方向(x軸方向)に隣り合う突部12の菱形の先端面12aの対角線aと対角線bの交点同士の距離を任意の10箇所で測定した値の平均値とする。
【0018】
縦方向(y軸方向)に隣り合う突部12の互いに向き合う先端同士の間隔P2(
図3)は、150mm以下が好ましい。間隔P2が前記上限値以下であれば、構造用面材1を建物の壁、屋根、天井等に施工する際、構造用面材1の周縁部分の突部12が位置する部分に、溝14を避けつつ釘を等間隔(例えば150mm間隔)に打ち付けてしっかりと固定することが容易になる。間隔P2は、構造用面材1の施工時の釘打ちの間隔に応じて設定することができ、60mm以上140mm以下が好ましく、85mm以上95mm以下がより好ましい。
なお、間隔P2は、縦方向(y軸方向)に隣り合う突部12の互いに向き合う先端同士の距離を任意の10箇所で測定した値の平均値とする。
【0019】
突部12の菱形の先端面12aの短い方の対角線bの長さに対する長い方の対角線aの長さの比(a/b)は、1.5以上2.5以下が好ましく、1.8以上2.2以下がより好ましい。比(a/b)が前記範囲内であれば、構造用面材1の縦方向(y軸方向)の一方の端から他方の端まで溝14内を空気が流通する際の流速や流量が高まるため、構造用面材1を施工した建物の通気効率が高くなる。
【0020】
突部12の菱形の先端面12aの長い方の対角線aの長さは、80mm以上220mm以下が好ましく、210mm以上216mm以下がより好ましい。
突部12の菱形の先端面12aの短い方の対角線bの長さは、40mm以上110mm以下が好ましく、103mm以上110mm以下がより好ましい。
【0021】
構造用面材1における各々の突部12の先端面12aの菱形の寸法は、すべて同一であることが好ましい。これにより、構造用面材1の全体にわたって均等に縦方向の通気性を確保できるため、構造用面材1を施工した建物の通気効率が高くなる。なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、複数の突部12には先端面12aの菱形の寸法が異なるものが含まれていてもよい。
【0022】
構造用面材1の縦方向の一方の端から各々の溝14に空気を流入させ、空気の流入部に0.021Paの圧力を与えた場合、空気の最大流速は0.8×10-2m/s以上であることが好ましく、空気の最大流量は1.3L/min以上であることが好ましい。溝14の幅及び深さ、突部12同士の間隔P1及び間隔P2、比(a/b)等を調節することによって、溝14を流通する空気の最大流速及び最大流量を調節することができる。
【0023】
構造用面材1の製造方法は、特に限定されず、例えば、パーティクルボードの一方の面に対して切削により各々の溝14を形成することによって、基板10上に複数の突部12が設けられた構造用面材1を製造する方法を例示できる。
【0024】
構造用面材1は、例えば、後述のように施工現場において基板10の突部12が設けられている側とは反対側に断熱ボードを貼り付けた状態で、外張り工法によって建物の壁、屋根、天井等に施工することができる。具体的には、例えば建物の壁に施工する場合、構造用面材1における基板10の突部12が設けられている側とは反対側に断熱ボードを貼り付けた状態で、構造用面材1の縦方向を上下方向として突部12の先端面12aを柱や間柱に当接させ、
図1に示す釘打ち位置40に釘を縦横に等間隔に打ち込んで柱や間柱に固定する。複数枚を並べて建て込む際の断熱ボードを貼り付けた構造用面材1同士の接合部は、防水テープで塞ぐ等の防水処理を行って浸水を防止することが好ましい。このような態様では、構造用面材1の各々の溝14が通気路として機能することで、床下から壁内を通して建物全体に空気を動かすことができる。そのため、建物内の湿度や温度を快適に維持することが容易になり、また木造建築においては柱等の躯体を空気に触れさせることによって木材の乾燥状態を保ちやすくなるため、建物躯体の長寿命化が図れる。なお、構造用面材1は建物の天井や床等に使用してもよい。
【0025】
以上説明したように、構造用面材1では、基板10上に菱形柱状の複数の突部12が斜め格子状に設けられており、溝14の幅及び深さ、突部12同士の間隔P1が特定の範囲に制御されている。構造用面材1を基板10の厚さ方向の突部12側から見ると、右斜めに傾斜した直線状に延びる溝14と左斜めに傾斜した直線状に延びる溝14とが互いに交差している。このような態様の構造用面材1では、理由は明らかではないが、構造用面材1の縦方向(各突部12の菱形の先端面12aの長い方の対角線aが延びる方向)に空気を流通させる際に、特に2本の溝14が交差する部分で空気の流速及び流量が向上する。そのため、構造用面材1を用いることで建物の内部の通気効率が向上し、建物内の湿度や温度を快適に維持しやすくなるうえ、建物躯体のさらなる長寿命化が図れる。
【0026】
なお、本発明の構造用面材は、前記した構造用面材1には限定されない。例えば、本発明の構造用面材は、
図4に例示した構造用面材2であってもよい。
図4における
図2と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
構造用面材2は、基板10の複数の突部12が設けられた側とは反対側に断熱ボード20が積層されている以外は、構造用面材1と同様の態様である。
【0027】
断熱ボード20としては、特に限定されず、公知の断熱ボードを使用することができ、例えば、板状のポリスチレンフォーム、フェノールフォームを例示できる。なかでも、断熱ボード20としては、断熱性能に優れる点から、板状のフェノールフォームが好ましい。断熱ボード20としては、単層からなる断熱ボードであってもよく、複数層からなる断熱ボードであってもよい。
【0028】
断熱ボード20の厚さは、10mm以上90mm以下が好ましく、30mm以上90mm以下がより好ましい。前記範囲の中で断熱ボード20の厚みが大きくなるほど、優れた断熱性能が得られやすい。
なお、断熱ボード20の厚さは、断熱ボード20における任意の10箇所で測定した厚さの平均値とする。
【0029】
基板10の複数の突部12が設けられた側とは反対側に断熱ボード20を積層する方法は、特に限定されず、例えば、接着材によって断熱ボード20を基板10に貼り合わせる方法を例示できる。断熱ボード20を貼り合わせる接着材としては、特に限定されず、例えば、公知のゴム系接着材、酢酸ビニル系接着材を例示できる。
【0030】
断熱ボード20の片面又は両面にはシート状の皮材が設けられていてもよい。
皮材としては、例えば、アルミニウム箔、不織布等を例示できる。断熱ボード20の基板10とは反対側の表面が外張り工法の外面側となる場合、当該表面に皮材として防水性を有するものを貼り付けてもよい。
【0031】
断熱ボード20の表面に皮材を設ける方法としては、特に限定されず、例えば、接着材によって貼り付ける方法を例示できる。皮材を貼り合わせる接着材としては、特に限定されず、例えば、公知のゴム系接着材、酢酸ビニル系接着材を例示できる。断熱ボード20をフェノールフォームとしてその両面に皮材を設ける場合、一対の皮材を互いの面が対向するように平行に配置し、それら一対の皮材の間に押し出し金型からフェノールを注入して加熱発泡させる方法を採用してもよい。
【0032】
断熱ボード20における外張り工法の外面側となる表面に設けた皮材上には、さらに防水層を設けてもよい。防水層としては、例えば、不織布、アルミニウム箔等の他、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)等の合成樹脂シート、樹脂プレート、ステンレス等の金属プレートを例示できる。また、防水層は、ウレタン系樹脂塗膜等の防水塗膜であってもよい。
【0033】
建物の壁、屋根、天井等への施工においては、予め構造用面材1と断熱ボード20を別々に製造して施工現場に運び、施工現場で構造用面材1の基板10に断熱ボード20を貼り合わせて構造用面材2としてもよく、予め構造用面材2を製造して施工現場に運んで使用してもよい。
【0034】
構造用面材2も構造用面材1と同様に、構造用面材1の縦方向に空気を流通させる際に、特に2本の溝14が交差する部分で空気の流速及び流量が向上するため、建物の内部の通気効率を向上させることができる。また、構造用面材1、2のように、基板と複数の突部がパーティクルボードからなる構造用面材は、それらが発泡樹脂からなる構造用面材に比べて壁倍率が高く、建物の耐震性が向上する点で有利である。
【0035】
本発明の構造用面材は、
図5に例示した構造用面材3であってもよい。
図5における
図2と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
構造用面材3は、基板10Aと複数の突部12Aを有するポリスチレンフォーム30と、基板10Aの複数の突部12Aが設けられた側とは反対側に積層された板状のフェノールフォーム32と、を備えている。
【0036】
構造用面材3における基板10A及び複数の突部12Aは、材質がポリスチレンフォームである以外は構造用面材1における基板10及び複数の突部12と同じ態様であり、好ましい態様も同じである。
ポリスチレンフォーム30は、例えばビーズ法等の型発泡成形によって板状に成形することによって得られる。ポリスチレンフォーム30は成形性に優れているため、基板10A上に複数の突部12Aが設けられた形状に成形しやすい。
【0037】
フェノールフォーム32は、例えば押し出し成形によって得られる。フェノールフォーム32は優れた断熱性能を有している。そのため、構造用面材3をポリスチレンフォーム30とフェノールフォーム32の積層体とすることで、ポリスチレンフォームのみで構成される構造用面材に比べて薄い構造用面材3でも十分な断熱性能が得られやすい。
【0038】
フェノールフォーム32の片面又は両面にはシート状の皮材が設けられていてもよい。皮材としては、例えば、構造用面材2において例示したものと同じものを例示できる。フェノールフォーム32に皮材を設ける方法としては、特に限定されず、例えば、構造用面材2の断熱ボード20に皮材を設ける方法と同じ方法を例示できる。
フェノールフォーム32における外張り工法の外面側となる表面に設けた皮材上には、さらに防水層を設けてもよい。防水層としては、例えば、構造用面材2において例示したものと同じものを例示できる。
【0039】
構造用面材3も構造用面材1と同様に、構造用面材1の縦方向に空気を流通させる際に、特に2本の溝14が交差する部分で空気の流速及び流量が向上するため、建物の内部の通気効率を向上させることができる。また、構造用面材3を用いれば、断熱性能のみならず、遮音性の面でも有利である。
【0040】
本発明の効果を損なわない範囲であれば、基板の厚さ方向の突部側から見たときの突部の先端面の形状は、菱形の4つの角のうちの1つ以上が丸みを帯びた形状になっていてもよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0041】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0042】
[例1]
図1~3に例示した構造用面材1と同様の形態の構造用面材について、Ansys Fluentを用いてシミュレーションを実施し、構造用面材の縦方向(y軸方向)の最下面から各々の溝に空気を流入させ、空気の流入部に0.021Paの圧力を与えたときの空気の最大流速と最大流量を求めた。また、溝の空気の流入部の空気の流速を0.8cm/sとしたときの流入部にかかる圧力を求めた。
シミュレーションにおいては、構造用面材の縦方向(y軸方向)のもう一方の端(最上面)は、流出部として大気圧がかかっているものとし、残りの面(x軸方向の両側)はすべて壁面と仮定して摩擦はないものとした。構造用面材の寸法は、縦3033mm、横909mm、基材の厚み21mmとし、構造用面材における隣り合う突部の間の溝の幅を30mm、深さを12mm、突部同士の間隔P1を75.75mm、突部同士の間隔P2を67.08mm、突部の菱形の先端面の短い方の対角線bの長さを42.21mm、長い方の対角線aの長さを84.42mm、比(a/b)を2.0とした。
【0043】
[例2、3]
突部及び溝の寸法を表1に示すとおりに変更した以外は、例1と同様にして空気の最大流速と最大流量を求めた。
【0044】
[例4]
各々の突部を正方形の柱状とし、突部及び溝の寸法を表1に示すとおりに変更した以外は、例1と同様にして空気の最大流速と最大流量を求めた。
【0045】
各例の条件とシミュレーション結果を表1に示す。表1における「最大流速の増加倍率」は、例4の最大流速を基準とした各例の最大流速の増加倍率(百分率)である。表1における「最大流量の増加倍率」は、例4の最大流量を基準とした各例の最大流量の増加倍率(百分率)である。表1における「圧力の増加倍率」は、例4の流入部の圧力を基準とした各例の流入部の圧力の増加倍率(百分率)である。
例1~4のシミュレーションで得られた溝内の空気の流速分布をそれぞれ
図6~9に示す。例1~4のシミュレーションで得られた溝内の圧力分布をそれぞれ
図10~13に示す。
【0046】
【0047】
表1に示すように、菱形柱状の複数の突部を設け、溝の幅と深さ、及び間隔P1を特定の範囲に制御した例1~3では、先端面が正方形の柱状の複数の突部を設けた例4に比べて、溝14を流通する空気の最大流速及び最大流量が増加した。
図6~9に示すように、例1~3では、例4に比べて2本の溝が交差する部分で流速及び流量が特に増加した。また、表1及び
図10~13に示すように、例1~3では、例4に比べて溝の流入部における圧力も低下しており、同じ流速で空気を流す場合に抵抗がより少ないことが分かった。