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  • 特開-繰出容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183619
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20221206BHJP
   A45D 40/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B65D83/00 C
A45D40/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091035
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰紀
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014AC07
(57)【要約】
【課題】組付点数の削減及びセット性を向上させつつ、商品性の高い繰出容器を提供する。
【解決手段】本発明に係る態様の繰出容器1は、上下方向に延びるとともに、内側螺旋溝26aが形成された内側伝達軸26を有する操作部10と、内側伝達軸26の外側を取り囲み、容器軸O回りに回転可能に設けられたスリーブ11と、スリーブ11の内側にスリーブ11に対する容器軸O回りの回転が規制された状態で、上下方向に移動可能に設けられるとともに、内容物を保持する中皿本体51と、中皿本体51から下方に延び、内側螺旋溝26aに係合する第2係合突起52cを有する可動筒52と、を備えている。スリーブ11及び操作部10のうち、一方の部材には、一方の部材よりも軟材質で形成されるとともに、スリーブ11及び操作部10の相対回転に伴い他方の部材が摺接する摺接部100が固着されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるとともに、螺旋溝が形成された伝達軸を有する操作部と、
前記伝達軸の外側を取り囲み、前記伝達軸の軸線回りに回転可能に設けられたスリーブと、
前記スリーブの内側に前記スリーブに対する前記軸線回りの回転が規制された状態で、上下方向に移動可能に設けられるとともに、内容物を保持する中皿本体と、
前記中皿本体から下方に延び、前記螺旋溝に係合する係合突起を有する可動軸と、を備え、
前記スリーブ及び前記操作部のうち、一方の部材には、前記一方の部材よりも軟材質で形成されるとともに、前記スリーブ及び前記操作部の相対回転に伴い他方の部材が摺接する摺接部が固着されている繰出容器。
【請求項2】
前記操作部には、径方向の外側に向けて開口するとともに、前記軸線回りの全周に亘って延びる周溝が形成され、
前記スリーブには、径方向の内側に向けて突出して前記周溝内に収容される突部が設けられ、
前記摺接部は、前記周溝の内面に一体で固着され、
前記突部は、前記軸線回りの前記スリーブの回転に伴い前記摺接部に摺接しながら前記周溝内を移動する請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記突部は、前記軸線回りに間隔をあけて設けられ、
前記摺接部は、前記軸線回りの全周に亘って延びている請求項2に記載の繰出容器。
【請求項4】
前記操作部は、
有底筒状の外装体と、
前記外装体の底壁に組み付けられた前記伝達軸を有する固定軸部材と、を備え、
前記摺接部は、前記固定軸部材に一体に固着されている請求項2又は請求項3に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
繰出容器は、有底筒状の操作部と、操作部の内側に容器軸回りに回転可能に支持されたスリーブと、スリーブの内側に設けられて内容物を保持する中皿と、を備えている。繰出容器では、操作部とスリーブとを相対回転させると、スリーブの内側で中皿が上下動することで、スリーブを通じて内容物が進退する。
【0003】
ところで、繰出容器では、スリーブと操作部との間に所望の摩擦抵抗を作用させることで、商品性を向上させる構成が採用されている。このような構成として、例えば下記特許文献1には、スリーブと基筒との間にOリングを介在させる構成が開示されている。この構成によれば、スリーブと基筒間のがたつきを抑制しつつ、スリーブを回転させる際に使用者に対して所望の操作感覚を与えることできるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-11948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術にあっては、スリーブと基筒とは別にOリングを準備しておく必要があることから、組付部品の削減が難しかった。
また、繰出容器の組立工程において、スリーブと基筒との間にOリングを介在させるには、基筒にOリングを装着した後、スリーブを基筒に組み付ける必要がある。そのため、Oリングのセット性に関して未だ改善の余地があった。すなわち、Oリングが基筒に装着されているだけの構成であるため、セット時において、スリーブ(及び基筒)に対するOリングの上下方向の位置にばらつきが生じ易い。この場合には、繰出容器の商品毎で摩擦抵抗にばらつきが生じたり、ばらつきを調整するために製造効率が低下したりする可能性があった。また、仮に所望の位置にOリングがセットされたとしても、繰出容器の操作に伴いOリングが上下方向にずれる可能性もある。
【0006】
本発明は、組付点数の削減及びセット性を向上させつつ、商品性の高い繰出容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
本開示の一態様に係る繰出容器は、上下方向に延びるとともに、螺旋溝が形成された伝達軸を有する操作部と、前記伝達軸の外側を取り囲み、前記伝達軸の軸線回りに回転可能に設けられたスリーブと、前記スリーブの内側に前記スリーブに対する前記軸線回りの回転が規制された状態で、上下方向に移動可能に設けられるとともに、内容物を保持する中皿本体と、前記中皿本体から下方に延び、前記螺旋溝に係合する係合突起を有する可動軸と、を備え、前記スリーブ及び前記操作部のうち、一方の部材には、前記一方の部材よりも軟材質で形成されるとともに、前記スリーブ及び前記操作部の相対回転に伴い他方の部材が摺接する摺接部が固着されている。
【0008】
本態様によれば、スリーブと操作部との間に摺接部が介在することで、スリーブと操作部との間に摺接部によって適度な摩擦抵抗を作用させることができる。これにより、スリーブと操作部との間のがたつきを抑制できるとともに、操作部とスリーブとを相対回転させる際に使用者に対して適度な操作感覚を与えることができる。
【0009】
特に、本態様では、摺接部が一方の部材に一体に固着されている構成とした。
この構成によれば、スリーブと操作部とのセット前にスリーブ及び操作部の何れかに対してOリング等を装着させる場合に比べ、繰出容器の組立工程での組付部品を削減できる。
しかも、摺接部が一方の部材に一体に固着されているので、スリーブと操作部とのセット時や繰出容器の操作時において、摺接部がスリーブや操作部に対して位置ずれするのを抑制できる。これにより、繰出容器の商品毎での摩擦抵抗のばらつきを抑制できる。また、ばらつき調整のため労力を軽減できるので、製造効率の向上を図ることができる。
その結果、組付点数の削減及びセット性を向上させつつ、商品性の高い繰出容器を提供できる。
【0010】
上記態様の繰出容器において、前記操作部には、径方向の外側に向けて開口するとともに、前記軸線回りの全周に亘って延びる周溝が形成され、前記スリーブには、径方向の内側に向けて突出して前記周溝内に収容される突部が設けられ、前記摺接部は、前記周溝の内面に一体で固着され、前記突部は、前記軸線回りの前記スリーブの回転に伴い前記摺接部に摺接しながら前記周溝内を移動することが好ましい。
本態様によれば、摺接部と突部との間で適度な摩擦抵抗を作用させることができるとともに、突部と周溝との係合によってスリーブと操作部との上下方向の位置ずれを抑制できる。これにより、例えばOリングとの摺接箇所とは別に上下方向への係合箇所を設ける場合に比べ、繰出容器の上下方向での小型化を図ることができる。
【0011】
上記態様の繰出容器において、前記突部は、前記軸線回りに間隔をあけて設けられ、前記摺接部は、前記軸線回りの全周に亘って延びていることが好ましい。
本態様によれば、摺接部とスリーブとが、スリーブの周方向の位置に関わらず、常に接触する。これにより、スリーブが操作部に安定して保持される。また、摺接部及び突部のそれぞれが全周に亘って延びている構成に比べ、摺接部及び突部間に作用する摩擦抵抗が過大になるのを抑制できる。そのため、スリーブと操作部との間に作用する摩擦抵抗を適度な範囲に調整し易い。
【0012】
上記態様の繰出容器において、前記操作部は、有底筒状の外装体と、前記外装体の底壁に組み付けられた前記伝達軸を有する固定軸部材と、を備え、前記摺接部は、前記固定軸部材に一体に固着されていることが好ましい。
本態様によれば、スリーブと固定軸部材とを組み付けた後に、スリーブ及び操作部をまとめて外装体に組み付けることができる。これにより、突部と摺接部との位置合わせを事前に行うことができるため、繰出容器の商品毎での摩擦抵抗のばらつきを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組付点数の削減及びセット性を向上させつつ、商品性の高い繰出容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る繰出容器の断面図である。
図2】本実施形態に係る繰出容器の使用時における動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示す繰出容器1は、棒状内容物(不図示)を繰り出して使用する。棒状内容物は、例えば化粧料(口紅やリップクリーム、スティックアイシャドー等)や薬剤、糊等が挙げられる。
【0016】
繰出容器1は、操作部(一方の部材)10と、スリーブ(他方の部材)11と、中皿12と、キャップ13と、を備えている。操作部10、スリーブ11及び中皿12は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置する状態で配置されている。なお、繰出容器1の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂を用いた成形品とされている。
【0017】
以下、共通軸を容器軸(軸線)Oといい、容器軸Oに沿う方向を上下方向という。上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。この場合、繰出容器1のうち、上下方向におけるキャップ13の頂壁側を上方といい、操作部10の底壁(外装体21の底壁21a)側を下方という。また、周方向のうち、内容物を上昇させる方向を繰出方向といい、内容物を下降させる方向を収容方向という。
【0018】
操作部10は、繰出容器1下部の外装部分を構成する。操作部10は、全体として容器軸Oと同軸に配置された有底筒状に形成されている。操作部10は、外装体21と、中具22と、繰出部材23と、を備えている。
【0019】
外装体21は、有底筒状に一体形成されている。外装体21の底壁21aには、上方に向けて延びる取付筒21bが形成されている。取付筒21bは、容器軸Oと同軸に配置されている。なお、外装体21は、底壁21aと周壁21fとが別体であってもよい。
【0020】
底壁21aにおいて、取付筒21bに対して径方向の内側に位置する部分には、第1位置決め部21gが設けられている。第1位置決め部21gは、突部21hと、スロープ部21jと、を備えている。
突部21hは、底壁21aから上方に向けて突出している。
スロープ部21jは、周方向の一方側から他方側に向かうに従い底壁21aからの突出高さが漸次高くなるように容器軸Oを中心として螺旋状に延びている。
【0021】
中具22は、外装体21と同軸に配置された筒状に形成されている。中具22は、外装体21の内側に上方から嵌合されている。中具22は、上端部が外装体21から上方に突出した状態で、外装体21に対して周方向に回転不能に設けられている。なお、中具22は、外装体21と一体に形成されていてもよい。また、操作部10は、中具22の内周面が平面視で円形状に形成されていれば、周壁21fの平面視形状は円形状以外の形状であってもよい。
【0022】
繰出部材23は、外装体21の内側において、中皿12を上下動可能に支持する。繰出部材23は、固定軸部材23aと、外側伝達軸23bと、を備えている。
固定軸部材23aは、外装体21に対して周方向に回転不能に設けられている。具体的に、固定軸部材23aは、嵌合筒24と、台座部25と、内側伝達軸(伝達軸)26と、第2位置決め部27と、を備えている。
【0023】
嵌合筒24は、容器軸Oと同軸に配置されている。嵌合筒24の内側には、取付筒21bがアンダーカット嵌合されている。
嵌合筒24の下端部には、径方向の外側に張り出す張出部24bが形成されている。嵌合筒24の上部には、周溝24cが形成されている。周溝24cは、嵌合筒24の外周面上で開口するとともに、嵌合筒24の外周面上を周方向の全周に亘って延びている。
【0024】
台座部25は、嵌合筒24の上端開口縁から径方向の内側に張り出している。台座部25は、容器軸Oと同軸に配置された円環状に形成されている。台座部25の内周部分は、取付筒21bの上端縁が下方から近接又は当接している。
【0025】
内側伝達軸(伝達軸)26は、台座部25の内周縁から上方に延びている。内側伝達軸26は、容器軸Oと同軸に配置された筒状に形成されている。内側伝達軸26の外周面には、内側螺旋溝(螺旋溝)26aが形成されている。内側螺旋溝26aは、繰出方向に向かうに従い上方に向けて螺旋状に延びている。本実施形態において、内側螺旋溝26aは、二条形成されている。但し、内側螺旋溝26aは、一条であっても、三条以上であってもよい。
【0026】
第2位置決め部27は、容器軸Oと同軸に配置された筒状に形成されている。第2位置決め部27における周方向の一部には、第2位置決め部27を周方向に分断する凹部27aが形成されている。第2位置決め部27は、周方向の一方側から他方側に向かうに従い台座部25からの突出高さが漸次低くなっている。嵌合筒24が取付筒21b内に嵌合された状態において、スロープ部21jと第2位置決め部27とが上下方向に近接又は当接し、かつ突部21hが凹部27a内に収容される。これにより、固定軸部材23aと外装体21とが上下方向及び周方向に位置決めされた状態で、固定軸部材23a及び外装体21が組み付けられている。
【0027】
外側伝達軸23bは、内側伝達軸26の外側で内側伝達軸26の周囲を取り囲んでいる。外側伝達軸23bの下端部には、径方向の内側に突出する第1係合突起31が形成されている。第1係合突起31は、内側伝達軸26の内側螺旋溝26a内に収容(係合)されている。外側伝達軸23bは、内側伝達軸26に対する周方向の回転に伴い、第1係合突起31が内側螺旋溝26a内を螺旋状に移動することで、内側伝達軸26に対して上下動する。本実施形態において、第1係合突起31は、内側螺旋溝26aの条数に合わせて周方向に間隔をあけて2つ設けられている。各第1係合突起31は、内側螺旋溝26aに沿って傾斜して延びている。
【0028】
外側伝達軸23bの外周面には、外側螺旋溝32が形成されている。外側螺旋溝32は、繰出方向に向かうに従い上方に向けて螺旋状に延びている。本実施形態において、外側螺旋溝32は、二条形成されている。但し、外側螺旋溝32は、一条であっても、三条以上であってもよい。
【0029】
スリーブ11は、操作部10の内側において、操作部10に対して周方向に回転可能に設けられている。スリーブ11は、容器軸Oと同軸に配置された二重筒状に形成されている。具体的に、スリーブ11は、外スリーブ11aと、内スリーブ11bと、を備えている。
【0030】
外スリーブ11aは、中具22の内側において、中具22と台座部25との間を通じて操作部10に挿入されている。したがって、外スリーブ11aは、内側伝達軸26の周囲を取り囲んでいる。外スリーブ11aの下端縁は、張出部24bに下方から支持されている。外スリーブ11aの上端縁は、操作部10よりも上方において、容器軸Oに対して傾斜している。なお、外スリーブ11aは、金属材料等により形成されていてもよい。
【0031】
外スリーブ11aには、下突部(突部)11c及び上突部11dが形成されている。
下突部11cは、外スリーブ11aの下端部において径方向の内側に突出している。下突部11cは、周溝24c内に収容された状態で、周溝24cの上端開口縁及び下端開口縁に係合する。これにより、外スリーブ11aは、操作部10に対する上下方向への移動が規制された状態で、周方向に回転可能に固定軸部材23aに支持されている。
上突部11dは、外スリーブ11aの中間部分(中具22の上端縁よりも下方であって、下突部11cよりも上方に位置する部分)から径方向の内側に突出している。
【0032】
内スリーブ11bは、外スリーブ11aに対して周方向の回転が規制された状態で、外スリーブ11aに対して上下動可能に設けられている。内スリーブ11bの上下寸法は、外スリーブ11aの上下寸法よりも短い。内スリーブ11bは、最下端位置にあるとき、台座部25の外周部に上方から近接又は当接している。
【0033】
内スリーブ11bには、外周面上で開口する第1規制溝11fが形成されている。第1規制溝11fは、内スリーブ11bのうち上突部11dと径方向で向かい合う位置に上下方向に延びている。第1規制溝11f内には、上突部11dが収容されている。内スリーブ11bは、第1規制溝11f内において上突部11dの周方向への移動を規制しつつ、上下方向への移動を案内する。本実施形態において、第1規制溝11fは、内スリーブ11bの上端縁で開放される一方、内スリーブ11bの下端縁では開放されていない。したがって、内スリーブ11bが上昇した際、上突部11dが第1規制溝11fの下端面に上方から当接することで、上突部11dが第1規制溝11fから脱落するのを規制する。
【0034】
内スリーブ11bの上端部には、径方向の内側に突出するストッパ突部11gが形成されている。
内スリーブ11bにおいて、ストッパ突部11gと周方向で異なる位置には、内スリーブ11bの内周面上で開口する第2規制溝11hが形成されている。第2規制溝11hは、上下方向に延びるとともに、内スリーブ11bの上下両端縁上で開放されている。
【0035】
中皿12は、スリーブ11内において、スリーブ11(内スリーブ11b)に対する周方向の回転が規制された状態で、スリーブ11に対して上下方向に移動可能に設けられている。中皿12は、中皿本体51と、可動筒(可動軸)52と、を備えている。
中皿本体51は、容器軸Oと同軸の有底筒状に形成されている。中皿本体51は、外スリーブ11aの内側において、内側伝達軸26の上方に位置する部分に収容されている。中皿本体51には、内容物が充填される。内容物は、中皿本体51から上方に突出した状態で充填される。
【0036】
可動筒52は、中皿本体51に一体形成されている。可動筒52は、中皿本体51の底壁から下方に延びている。可動筒52は、内スリーブ11bの内側に挿入されて、外側伝達軸23bの周囲を取り囲んでいる。可動筒52には、径方向の外側に突出する突条部52aが形成されている。突条部52aは、可動筒52の外周面上を上下方向に延びている。突条部52aは、第2規制溝11h内に収容されている。中皿12は、突条部52aが第2規制溝11hの内面に周方向で当接することで、内スリーブ11bに対する上下動が許容された状態で、内スリーブ11bに対する回転が規制されている。
【0037】
可動筒52の下端部において、突条部52aと周方向で異なる位置には、径方向の外側に突出するストッパ突部52bが形成されている。ストッパ突部52bは、内スリーブ11bのストッパ突部11gと上下方向で向かい合っている。中皿12は、ストッパ突部52bが内スリーブ11bのストッパ突部11gに下方から当接することで、内スリーブ11bに対する上方への移動が規制されている。
【0038】
可動筒52の下端部には、径方向の内側に突出する第2係合突起(係合突起)52cが形成されている。第2係合突起52cは、外側螺旋溝32内に収容(係合)されている。可動筒52は、外側伝達軸23bに対する周方向の回転に伴い、第2係合突起52cが外側螺旋溝32内を螺旋状に移動することで、外側伝達軸23bに対して上下動する。本実施形態において、第2係合突起52cは、外側螺旋溝32の条数に合わせて周方向に間隔をあけて2つ設けられている。各第2係合突起52cは、外側螺旋溝32に沿って傾斜して延びている。
【0039】
キャップ13は、容器軸Oと同軸に配置された有頂筒状に形成されている。キャップ13には、スリーブ11(外スリーブ11a)の上部が挿通された状態で、中皿12が着脱可能に装着される。
【0040】
ここで、上述した固定軸部材23aには、摺接部100が一体に固着されている。摺接部100は、固定軸部材23aの材質(例えば、PP等)よりも軟らかい軟材質であって、固定軸部材23aよりも弾性率が高く、かつ固定軸部材23aよりも摩擦係数の高い材質により形成されている。このような材質として、例えばエラストマ等の熱可塑性樹脂が挙げられる。摺接部100は、インサート成形によって固定軸部材23aに一体に固着される。また、摺接部100は、固定軸部材23aとともに二色成形することによって固定軸部材23aと一体に形成してもよい。
【0041】
摺接部100は、周溝24c内に埋め込まれている。上下方向に沿う縦断面視において、摺接部100は、周溝24cの内面のうち上下方向で向かい合う側面、及び径方向の内側に位置する底面に亘って固着されている。摺接部100の外面のうち径方向の外側を向く外周面100aは、嵌合筒24の外周面に対して径方向の内側に位置している。
【0042】
上述した下突部11cは、周溝24c内に収容された状態において、摺接部100の外周面100aに対して径方向で当接している。下突部11cは、外スリーブ11aが操作部10(固定軸部材23a)に対して軸線O回りに回転する際に、摺接部100の外周面100a上を摺接しながら、周溝24c内を移動する。すなわち、摺接部100の外周面100aは、固定軸部材23aに対して外スリーブ11aが回転する際に下突部11cの頂部が摺接する摺接面として機能する。図示の例において、摺接部100の外周面100aは、上下方向に直線状に延びる平坦面に形成されている。但し、外周面100aは、例えば下突部11cの外面形状に倣った曲面状等であってもよい。
【0043】
摺接部100は、周溝24c内において、周方向の全周に亘って設けられている。上述した下突部11cは、外スリーブ11aにおいて周方向に間隔をあけて設けられている。但し、摺接部100が周方向に間隔をあけて設けられ、下突部11cが周方向の全周に亘って延びる構成であってもよい。また、摺接部100と下突部11cとが周方向の一部で接触する構成等であってもよい。
【0044】
上述した繰出容器1は、外装体21及び中具22が組み合わされた外装モジュールと、スリーブ11、中皿12及び繰出部材23が組み合わされた中皿モジュールと、を組み付けることにより製造される。すなわち、繰出容器1の組立工程において、中皿モジュールを外装モジュール内に進入させると、嵌合筒24内に取付筒21bが嵌合されるとともに、第2位置決め部27の凹部27a内に第1位置決め部21gの突部21hが係合される。これにより、上述した繰出容器1が製造される。
【0045】
次に、上述した繰出容器1の作用について説明する。以下の説明では、まず繰出容器1の使用方法について説明し、その後繰出容器1の組付方法について説明する。
繰出容器1を使用する際には、まずキャップ13を操作部10から取り外す。次に、外スリーブ11a及び外装体21(周壁21f)をそれぞれ把持し、操作部10及びスリーブ11を繰出方向に相対回転させる。このとき、中具22及び固定軸部材23aは、外装体21にそれぞれ相対回転不能に取り付けられているため、外装体21、中具22及び固定軸部材23aが一体に回転する。一方、外スリーブ11a及び内スリーブ11b同士、並びに内スリーブ11b及び中皿12同士は、それぞれ相対回転不能に取り付けられているため、スリーブ11及び中皿12が一体に回転する。
【0046】
操作部10及びスリーブ11を相対回転させると、内側伝達軸26及び外側伝達軸23bが一体となって可動筒52に対して回転するか、或いは、内側伝達軸26が外側伝達軸23bに対して回転するか、の少なくとも一方の動作が生じる。
【0047】
内側伝達軸26及び外側伝達軸23bが一体となって可動筒52に対して回転する場合には、第2係合突起52cが外側螺旋溝32内に係合した状態で、外側螺旋溝32内を螺旋状に移動することで、可動筒52(中皿12)が繰出部材23に対して上昇する。このように、繰出部材23と可動筒52とが繰出方向に相対回転することで中皿12が上昇する動作を、本明細書では「第1動作」という。
【0048】
内側伝達軸26が外側伝達軸23bに対して回転する場合には、第1係合突起31が内側螺旋溝26a内に係合した状態で、内側螺旋溝26a内を螺旋状に移動することで、外側伝達軸23bが内側伝達軸26に対して上昇する。このとき、外側螺旋溝32の内面を介して第2係合突起52cが押し上げられることで、中皿12が外側伝達軸23bとともに上昇する。このように、内側伝達軸26と外側伝達軸23bとが繰出方向に相対回転することで、中皿12が外側伝達軸23bとともに上昇する動作を、本明細書では「第2動作」という。
【0049】
つまり、図1図2に示すように、操作部10及びスリーブ11を繰出方向に相対回転させると、第1動作及び第2動作の少なくとも一方の動作により中皿12が上昇する。これにより、内容物がスリーブ11から上方に繰り出される。第1動作及び第2動作のうちどちらが生じるかは、各部材間の摩擦抵抗等によって変動する。但し、何れの動作が優先的に行われるとしても、内容物が繰り出されるため、使用者は内容物を使用することができる。なお、第1動作及び第2動作の双方が同時に生じてもよい。
【0050】
第1動作又は第2動作によって中皿12が上昇する初期段階において、中皿12は内スリーブ11bに対して上昇する(第1上昇過程)。具体的に、第1上昇過程では、突条部52aが第2規制溝11hに案内されることで、内スリーブ11bに対する中皿12の回転が規制された上で、中皿12が内スリーブ11bに対して上昇する。第1上昇過程において、中皿12のストッパ突部52bが内スリーブ11bのストッパ突部11gに下方から当接する。これにより、内スリーブ11bに対する中皿12の上昇が規制される。
【0051】
第1上昇過程の後、第1動作又は第2動作により、さらに中皿12が上昇しようとすると、ストッパ突部11g,52bを介して内スリーブ11bが上方に押し上げられる。これにより、中皿12は、内スリーブ11bとともに外スリーブ11aに対して上昇する(第2上昇過程)。第2上昇過程では、規制溝11f内に上突部11dが収容されていることから、外スリーブ11aに対する内スリーブ11bの回転が規制された上で、内スリーブ11bが外スリーブ11aに対して上昇する。第2上昇過程において、規制溝11fの下端面が上突部11dに下方から当接することで、外スリーブ11aに対する内スリーブ11bの上昇が規制される。これにより、中皿12が最上端位置に到達する。なお、本実施形態では、第1上昇過程の後に第2上昇過程が生じる構成について説明したが、第2上昇過程の後に第1上昇過程が生じてもよく、第1上昇過程と第2上昇過程が同時に生じてもよい。
【0052】
中皿12を下降させる際には、操作部10及びスリーブ11を収容方向に相対回転させる。すると、内側伝達軸26及び外側伝達軸23bが一体となって可動筒52に対して回転するか、或いは、内側伝達軸26が外側伝達軸23bに対して回転するか、によってスリーブ11に対して中皿12が下降する。中皿12の下降に伴い、内スリーブ11bが自重によって中皿12とともに下降する。そして、内スリーブ11bの下端縁が台座部25に当接することで、外スリーブ11aに対する内スリーブ11bの下降が規制される。その後、中皿12がさらに下降することで、中皿12は外スリーブ11a及び内スリーブ11bに対して下降する。
【0053】
ここで、本実施形態では、操作部10を構成する固定軸部材23aに、スリーブ11及び操作部10の相対回転に伴いスリーブ11a(下突部11c)に摺接するとともに、固定軸部材23aよりも軟材質で形成された摺接部100が固着されている構成とした。
この構成によれば、スリーブ11と固定軸部材23aとの間に摺接部100が介在することで、スリーブ11と固定軸部材23aとの間に摺接部100によって適度な摩擦抵抗を作用させることができる。これにより、スリーブ11と固定軸部材23aとの間のがたつきを抑制できるとともに、操作部10とスリーブ11とを相対回転させる際に使用者に対して適度な操作感覚を与えることができる。
【0054】
特に、本実施形態では、摺接部100が固定軸部材23aに一体に固着されている構成とした。
この構成によれば、スリーブ11と固定軸部材23aとのセット前にスリーブ11及び固定軸部材23aの何れかに対してOリング等を装着させる場合に比べ、繰出容器1の組立工程での組付部品を削減できる。
しかも、摺接部100が固定軸部材23aに一体に固着されているので、スリーブ11と固定軸部材23aとのセット時や繰出容器1の操作時において、摺接部100がスリーブ11や固定軸部材23aに対して位置ずれするのを抑制できる。これにより、繰出容器1の商品毎での摩擦抵抗のばらつきを抑制できる。また、ばらつき調整のため労力を軽減できるので、製造効率の向上を図ることができる。
その結果、組付点数の削減及びセット性を向上させつつ、商品性の高い繰出容器1を提供できる。
【0055】
本実施形態において、摺接部100は周溝24cの内面に一体に固着され、外スリーブ11aには周溝24c内に収容されるとともに、外スリーブ11aの回転に伴い周溝24c内を移動する下突部11cが形成されている構成とした。
この構成によれば、摺接部100と下突部11cとの間で適度な摩擦抵抗を作用させることができるとともに、下突部11cと周溝24cとの係合によって外スリーブ11aと固定軸部材23aとの上下方向の位置ずれを抑制できる。これにより、例えばOリングとの摺接箇所とは別に上下方向への係合箇所を設ける場合に比べ、繰出容器1の上下方向での小型化を図ることができる。
【0056】
本実施形態において、摺接部100は周溝24c内を周方向の全周に亘って設けられ、下突部11cは外スリーブ11aに周方向に間隔をあけて設けられている構成とした。
この構成によれば、摺接部100と外スリーブ11aとが、外スリーブ11aの周方向の位置に関わらず、常に接触する。これにより、外スリーブ11aが固定軸部材23aに安定して保持される。また、摺接部100及び下突部11cのそれぞれが全周に亘って延びている構成に比べ、摺接部100及び下突部11c間に作用する摩擦抵抗が過大になるのを抑制できる。そのため、スリーブ11と固定軸部材23aとの間に作用する摩擦抵抗を適度な範囲に調整し易い。
【0057】
本実施形態において、操作部10は、有底筒状の外装体21と、外装体21の底壁21aに組み付けられた固定軸部材23aと、を備えている。
この構成によれば、外スリーブ11aと固定軸部材23aとを組み付けた後に、外スリーブ11a及び固定軸部材23aをまとめて外装体21に組み付けることができる。これにより、下突部11cと摺接部100との位置合わせを事前に行うことができるため、繰出容器1の商品毎での摩擦抵抗のばらつきを抑制できる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、操作部10のうち、外装体21と固定軸部材23aとが別体で形成された構成について説明したが、この構成に限られない。操作部10は、外装体21と固定軸部材23aとが一体で形成されていてもよい。
上述した実施形態では、スリーブ11と固定軸部材23aとの間に摺接部100が介在する構成について説明したが、この構成に限られない。摺接部100は、スリーブ11と外装体21との間に介在していてもよい。
上述した実施形態では、摺接部100が固定軸部材23a(操作部10)に固着された構成について説明したが、この構成に限られない。摺接部100は、スリーブ(一方の部材)11に固着されていてもよい。
【0059】
上述した実施形態では、摺接部100がインサート成形や二色成形により一方の部材としての固定軸部材23aに一体に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。摺接部100は、接着剤等によって一方の部材に固着されていてもよい。
上述した実施形態では、周溝24c内において、嵌合筒24の外周面に対して窪んだ位置に摺接部100が設けられた構成について説明したが、この構成に限られない。摺接部100は、例えば嵌合筒24の外周面に対して突出していてもよい。
上述した実施形態では、外装体21が有底筒状に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。外装体21は、繰出容器1の操作時において使用者によって回転操作可能な把持部分が少なくとも外部に露出していればよい。
上述した実施形態では、摺接部100が操作部10とスリーブ11との間に径方向に挟まれる構成について説明したが、この構成に限られない。摺接部100は、操作部10とスリーブ11との間に上下方向で挟まれる構成等であってもよい。
【0060】
上述した実施形態では、繰出部材23が内側伝達軸26及び外側伝達軸23bを備える構成について説明したが、この構成に限られない。繰出部材23は、内側伝達軸26を少なくとも有していればよい。
上述した実施形態では、操作筒部として外装体21及び中具22を備える構成について説明したが、この構成に限られない。操作筒部は、外装体21のみを備えていてもよい。
上述した実施形態では、伝達軸の外周面に螺旋溝が形成され、可動軸が伝達軸の外側を取り囲む構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、筒状の伝達軸の内周面に螺旋溝が形成され、係合突起を有する可動軸が伝達軸の内側に配置される構成であってもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1:繰出容器
10:操作部(一方の部材、他方の部材)
11:スリーブ(他方の部材、一方の部材)
11c:下突部(突部)
12:中皿
21:外装体
21a:底壁
23a:固定軸部材
24c:周溝
26:内側伝達軸(伝達軸)
26a:内側螺旋溝(螺旋溝)
51:中皿本体
52:可動筒(可動軸)
52c:第2係合突起(係合突起)
100:摺接部
図1
図2