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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183630
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】プレスフィット端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/58 20110101AFI20221206BHJP
【FI】
H01R12/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091059
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】591236301
【氏名又は名称】住鉱テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 政彦
(72)【発明者】
【氏名】片上 健二
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA21
5E223AB18
5E223AB43
5E223BA27
5E223BB12
5E223CB24
5E223CB63
5E223CD01
5E223CD15
5E223DB01
5E223DB08
5E223DB13
(57)【要約】
【課題】十分な保持力を発揮しつつ優れた導電性能が得られ、しかもその場合であってもスルーホールへの挿入力の増大を抑制することができるプレスフィット端子を提供する。
【解決手段】基板のスルーホールに挿入されるプレスフィット端子1であって、アイホール10を挟む一対の弾性片部20を備え、前記一対の弾性片部20のそれぞれには、前記スルーホールに圧接される外縁側に当該スルーホールの軸方向に沿って延びる外縁ストレート部21が形成されているとともに、前記アイホール10に面する内縁側に前記軸方向に沿って延びる内縁ストレート部22が形成されており、前記内縁ストレート部22は、前記外縁ストレート部21よりも端子先端側に片寄って配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のスルーホールに挿入されるプレスフィット端子であって、
アイホールを挟む一対の弾性片部を備え、
前記一対の弾性片のそれぞれには、前記スルーホールに圧接される外縁側に当該スルーホールの軸方向に沿って延びる外縁ストレート部が形成されているとともに、前記アイホールに面する内縁側に前記軸方向に沿って延びる内縁ストレート部が形成されており、
前記内縁ストレート部は、前記外縁ストレート部よりも端子先端側に片寄って配置されている
プレスフィット端子。
【請求項2】
前記外縁ストレート部の形成長の中点と前記アイホールの端子先端側の端縁との間の距離によって特定される前記弾性片部の先端側バネ長のほうが、前記中点と前記アイホールの端子根元側の端縁との間の距離によって特定される前記弾性片部の根元側バネ長よりも、大きくなるように構成されている
請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記一対の弾性片のそれぞれには、前記内縁ストレート部と前記アイホールの端子根元側の端縁とを連続させる根元側内縁湾曲部と、前記内縁ストレート部と前記アイホールの端子先端側の端縁とを連続させる先端側内縁湾曲部と、が形成されており、
前記根元側内縁湾曲部の形成半径のほうが、前記先端側内縁湾曲部の形成半径よりも、小さくなるように構成されている
請求項2に記載のプレスフィット端子。
【請求項4】
前記外縁ストレート部の形成長が0.1mm以上0.5mm以下である
請求項1から3のいずれか1項に記載のプレスフィット端子。
【請求項5】
少なくとも前記外縁ストレート部の形成長の全域にわたって当該外縁ストレート部の断面形状の隅に設けられたR形状部を有しており、
前記R形状部の形成半径/前記スルーホールの穴径≧0.17となるように構成されている
請求項1から4のいずれか1項に記載のプレスフィット端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスフィット端子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用をはじめとする幅広い用途に、はんだレスのプレスフィット端子が用いられている。プレスフィット端子は、アイホールを挟んで対向する一対の弾性片部の弾性変形を利用して、電子機器の配線基板に設けられたスルーホール内への圧入状態の保持と、スルーホール内周面の電極膜との導通接続を、それぞれ実現するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-225701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレスフィット端子については、スルーホール内に圧入された状態において、十分な保持力を発揮しつつ、優れた導電性能が得られるようにすることが求められている。ただし、そのためにプレスフィット端子をスルーホールに挿入する際に要する力が大きくなってしまうことは望ましくない。
【0005】
本発明は、十分な保持力を発揮しつつ優れた導電性能が得られ、しかもその場合であってもスルーホールへの挿入力の増大を抑制することができるプレスフィット端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
基板のスルーホールに挿入されるプレスフィット端子であって、
アイホールを挟む一対の弾性片部を備え、
前記一対の弾性片のそれぞれには、前記スルーホールに圧接される外縁側に当該スルーホールの軸方向に沿って延びる外縁ストレート部が形成されているとともに、前記アイホールに面する内縁側に前記軸方向に沿って延びる内縁ストレート部が形成されており、
前記内縁ストレート部は、前記外縁ストレート部よりも端子先端側に片寄って配置されている
プレスフィット端子が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分な保持力を発揮しつつ優れた導電性能が得られ、しかもその場合であってもスルーホールへの挿入力の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るプレスフィット端子の全体構成の一具体例を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプレスフィット端子の要部構成の一具体例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA-A断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るプレスフィット端子の使用態様の一具体例を示す説明図であり、(a)はスルーホールへの挿入時を示す図、(b)はスルーホールへの挿入後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るプレスフィット端子について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(1)プレスフィット端子の全体構成
まず、本実施形態に係るプレスフィット端子の全体構成について簡単に説明する。
図1は、プレスフィット端子の全体構成の一具体例を示す斜視図である。
【0011】
プレスフィット端子1は、図示せぬ電子機器の配線基板(以下、単に「基板」という。)に設けられたスルーホールに挿入されて用いられるものである。そのために、プレスフィット端子1は、少なくとも、貫通孔として形成されたアイホール10と、そのアイホール10を挟んで対向する一対の弾性片部20と、を備えている。そして、アイホール10を狭める方向に撓む弾性片部20の弾性変形を利用して、スルーホール内への圧入状態の保持と、スルーホール内周面の電極膜との導通接続を、それぞれ実現するように構成されている。
【0012】
このようなプレスフィット端子1は、例えば、導電性を有する金属材料(例えば、銅または銅合金)をプレス加工することによって形成されており、錫メッキ等の表面処理が施されていてもよい。また、プレスフィット端子1は、上述のように少なくともアイホール10と一対の弾性片部20とを備えているが、それ以外の構成要素については特に限定されるものではなく、様々な態様のものを適用し得る。
【0013】
(2)プレスフィット端子の要部構成
続いて、本実施形態に係るプレスフィット端子1の要部構成として、アイホール10および一対の弾性片部20の構成について、さらに詳しく説明する。
図2は、プレスフィット端子の要部構成の一具体例を示す説明図である。
【0014】
図2(a)に示すように、本実施形態に係るプレスフィット端子1において、弾性片部20は、スルーホールに圧接される外縁側が当該スルーホールに向けて膨出する形状に形成されており、その膨出形状の頂部に外縁ストレート部21を有して構成されている。外縁ストレート部21は、スルーホールの軸方向(すなわち、プレスフィット端子1の挿抜方向)に沿って延びる直線状の部分である。つまり、一対の弾性片部20のそれぞれには、スルーホールに圧接される外縁側に、当該スルーホールの軸方向に沿って延びる外縁ストレート部21が形成されている。
【0015】
また、外縁ストレート部21に対応するように、弾性片部20は、アイホール10に面する内縁側に内縁ストレート部22を有して構成されている。内縁ストレート部22は、外縁ストレート部21と平行(平行と見做せる状態を含む。)に延びる直線状の部分である。つまり、一対の弾性片部20のそれぞれには、アイホール10に面する内縁側に、スルーホールの軸方向に沿って延びる内縁ストレート部22が形成されている。
【0016】
外縁ストレート部21と内縁ストレート部22とは、プレスフィット端子1の挿抜方向(すなわち、プレスフィット端子1の長手方向)において、それぞれがオフセットして配置されている。具体的には、内縁ストレート部22は、外縁ストレート部21よりも端子先端側に片寄って配置されている。
ここで、端子先端側とは、スルーホールにプレスフィット端子1を挿入する際の当該プレスフィット端子1の先端側のことをいう。また、端子先端側と対向する側、すなわちスルーホールにプレスフィット端子1を挿入する際の当該プレスフィット端子1の根元側のことを、以下端子根元側という。
端子先端側に片寄って配置されているとは、プレスフィット端子1の長手方向において、外縁ストレート部21の形成長aの中点の位置と内縁ストレート部22の形成長bの中点の位置とが一致しておらず、内縁ストレート部22の形成長bの中点が端子先端側に寄っており、これに伴い外縁ストレート部21の端子根元側の端縁よりも内縁ストレート部22の端子根元側の端縁が端子先端側に位置していることをいう。
【0017】
このように、本実施形態に係るプレスフィット端子1では、内縁ストレート部22が外縁ストレート部21よりも端子先端側に片寄って配置されている。これにより、一対の弾性片部20のそれぞれについては、端子根元側の形成幅cのほうを端子先端側の形成幅dよりも大きくすることが可能となる。つまり、形成幅cを大きくして端子根元側の弾性片部20のバネ定数を高めつつ、端子先端側についてはバネ定数の増大を抑制することが実現可能となる。
【0018】
また、内縁ストレート部22が外縁ストレート部21よりも端子先端側に片寄って配置されていることは、弾性片部20が弾性変形する際のバネ長にも影響を及ぼす。例えば、アイホール10の端子根元側の端縁11と端子先端側の端縁12との間を、弾性片部20が弾性変形する際の全バネ長として考える。その場合に、内縁ストレート部22が外縁ストレート部21よりも端子先端側に片寄っていることで、全バネ長のうち、外縁ストレート部21の形成長aの中点とアイホール10の端子先端側の端縁11との間の距離によって特定される弾性片部20の先端側バネ長eのほうが、外縁ストレート部21の形成長aの中点とアイホール10の端子根元側の端縁12との間の距離によって特定される弾性片部20の根元側バネ長fよりも、大きくなるようにすることが可能となる。具体的には、例えば、根元側バネ長fに対して、先端側バネ長eを120%以上とすることが考えられる。
【0019】
このように、本実施形態に係るプレスフィット端子1では、先端側バネ長eのほうが根元側バネ長fよりも大きい。これにより、一対の弾性片部20のそれぞれについては、先端側バネ長eと根元側バネ長fとの違いに起因して、端子根元側のバネ定数を高めつつ、端子先端側についてはバネ定数の増大を抑制することが実現可能となる。特に、根元側バネ長fに対して先端側バネ長eが120%以上であれば、それぞれのバネ定数の違いを顕在化させることができる。
しかも、一対の弾性片部20の外縁同士がなす角度については、それぞれのバネ長e,fの違いに起因して、端子先端側における角度gのほうが、端子根元側における角度hよりも、小さくなるようにすることが可能となる。具体的には、例えば、角度g<角度hを満足しつつ、角度gを30°以下とすることが考えられる。このように、端子先端側における角度gを小さくすることで、プレスフィット端子1をスルーホールへ挿入する際の負荷低減を図ることが実現可能となる。
【0020】
一対の弾性片部20の内縁側(すなわち、アイホール10に面する側)において、内縁ストレート部22の端子根元側には、当該内縁ストレート部22とアイホール10の端子根元側の端縁11とを連続させる根元側内縁湾曲部23が形成されている。一方、内縁ストレート部22の端子先端側には、当該内縁ストレート部22とアイホール10の端子先端側の端縁12とを連続させる先端側内縁湾曲部24が形成されている。つまり、弾性片部20の内縁側には、内縁ストレート部22の他に、根元側内縁湾曲部23と、先端側内縁湾曲部24と、が形成されている。
【0021】
根元側内縁湾曲部23および先端側内縁湾曲部24は、いずれも、円弧状に湾曲した部分であるが、本実施形態に係るプレスフィット端子1では、根元側内縁湾曲部23の形成半径r1のほうが、先端側内縁湾曲部24の形成半径r2よりも、小さくなるように構成されている。つまり、根元側内縁湾曲部23のほうが湾曲の曲がり具合(曲率)がきつく、先端側内縁湾曲部24のほうが湾曲の曲がり具合が緩くなっている。
【0022】
このように、本実施形態に係るプレスフィット端子1では、内縁ストレート部22が外縁ストレート部21よりも端子先端側に片寄って配置されていることに加えて、根元側内縁湾曲部23の形成半径r1のほうが先端側内縁湾曲部24の形成半径r2よりも小さくなっている。これにより、一対の弾性片部20のそれぞれについては、端子根元側の形成幅cのほうを端子先端側の形成幅dよりも大きくすることについて、より一層顕著なものとすることが可能となる。
【0023】
また、本実施形態に係るプレスフィット端子1では、根元側内縁湾曲部23と先端側内縁湾曲部24との間に内縁ストレート部22が介在するように、当該内縁ストレート部22が配置されている。このように、内縁ストレート部22が介在していることで、根元側内縁湾曲部23および先端側内縁湾曲部24が円弧状に湾曲している場合であっても、これらの接線上に内縁ストレート部22を位置させることで、根元側内縁湾曲部23と先端側内縁湾曲部24との間に稜線部分や段差部分等を生じさせずに、これらを連続させることが可能となる。つまり、弾性片部20を弾性変形させた場合に応力集中が生じ得る箇所(稜線部分や段差部分等)を、当該弾性片部20に存在させないようにすることが可能となる。
【0024】
一方、一対の弾性片部20の外縁側には、膨出形状の頂部に外縁ストレート部21が配置されている。そのため、プレスフィット端子1が基板のスルーホールに挿入されると、外縁ストレート部21がスルーホール内周面の電極膜と接触することになる。これにより、本実施形態に係るプレスフィット端子1では、外縁ストレート部21がなく弾性片の外縁側が円弧状に湾曲している場合に比べると、スルーホール内周面の電極膜への接触面積が増大することから、当該電極膜への接触圧を抑えることができ、また、当該電極膜との間の電気抵抗を低減させることもできる。さらには、例えばスルーホールに挿入されたプレスフィット端子1に対して、これを傾ける方向に作用する外力が加わった場合であっても、その外力に対する耐性を増大させることができる。
【0025】
ただし、外縁ストレート部21に関しては、当該外縁ストレート部21としての領域部分を確保しつつ、その形成長aを小さくすることが望ましい。具体的には、外縁ストレート部21の形成長aを、例えば、0.1mm以上0.5mm以下、好ましくは0.3mm±0.1mmとする。形成長aが0.1mm以上であれば、外縁ストレート部21としての領域部分を確保できるので、上述したような外縁ストレート部21が配置されていることによる作用を得ることができる。また、形成長aが0.5mm以下であれば、例えばスルーホールを有する基板の厚さが変更された場合であっても、その影響に受けずに外縁ストレート部21の全域をスルーホール内周面の電極膜に接触させることが可能となる。つまり、基板厚の変更によっては、弾性片部20のスルーホール内周面への接触圧力に影響が及ばないようにすることができる。
【0026】
なお、外縁ストレート部21の形成長aについては、電極膜への接触圧を考慮して定めるようにしてもよい。例えば、外縁ストレート部21の電極膜への接触圧には、弾性片部20の形成材料や表面処理状態、スルーホール内周面の電極膜形成材料や表面処理状態等に応じて、電極膜の損傷を防ぐために許容される圧力範囲が想定される。そこで、その圧力範囲から接触圧が外れないように、外縁ストレート部21と電極膜との接触面積を特定する要素である形成長aを定めることが考えられる。その場合であっても、外縁ストレート部21の形成長aは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下の範囲内に属することが望ましい。
【0027】
また、図2(b)に示すように、本実施形態に係るプレスフィット端子1において、弾性片部20には、少なくとも外縁ストレート部21の形成長aの全域にわたって、当該外縁ストレート部21の断面形状の隅にR形状部25が設けられている。したがって、一対の弾性片部20においては、断面形状の四隅のそれぞれにR形状部25が設けられていることになる。R形状部25は、外縁ストレート部21の断面形状の隅を円弧状に湾曲させるように形成された部分である。R形状部25の円弧部分の形成半径は、四隅とも同一とすることが考えられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0028】
R形状部25の円弧部分の形成半径については、四隅のいずれの部分も、以下の条件を満足しているものとする。すなわち、R形状部25は、
R形状部25の形成半径/基板のスルーホールの穴径≧0.17
となるように構成されている。したがって、例えば、スルーホールの穴径がφ1.0mmである場合には、R形状部25の形成半径が0.17mm以上であれば、上記の条件を満足することになる。
【0029】
このように、本実施形態に係るプレスフィット端子1では、外縁ストレート部21の断面形状の隅にR形状部25が設けられているので、当該R形状部25がない場合に比べると、プレスフィット端子1が基板のスルーホールに挿入された際のスルーホール内周面に対する負荷を低減させることが可能となる。特に、R形状部25の形成半径/基板のスルーホールの穴径≧0.17となるようにR形状部25が構成されていれば、スルーホールがどのような穴径であっても、確実にスルーホール内周面への負荷を低減させ得るようになる。
【0030】
(3)プレスフィット端子の使用態様
次に、本実施形態に係るプレスフィット端子1の使用態様について説明する。
図3は、プレスフィット端子の使用態様の一具体例を示す説明図である。
【0031】
プレスフィット端子1は、基板2のスルーホール2aに挿入されて用いられる。スルーホール2aへの挿入は、図3(a)に示すように、プレスフィット端子1を端子先端側からスルーホール2a内に差し込むことによって行う(図中矢印参照)。
【0032】
このとき、プレスフィット端子1における一対の弾性片部20には弾性変形が生じていないので(すなわち、一対の弾性片部20の外縁同士の幅がスルーホール2aの直径よりも大きい状態なので)、スルーホール2a内に差し込むと、まず、当該弾性片部20における外縁ストレート部21よりも端子先端側の部分がスルーホール2aの内周面に接触する。外縁ストレート部21よりも端子先端側の部分は、外縁同士がなす角度gが小さくなっていることから、挿入時の負荷(挿入力)の低減が図れる。また、外縁ストレート部21よりも端子先端側の部分は、先端側バネ長eを構成する部分であるが、先端側バネ長eが大きいことからバネ定数の増大が抑制されており、この点によっても挿入時の負荷(挿入力)の低減が図れる。つまり、本実施形態に係るプレスフィット端子1によれば、スルーホール2aへの挿入力の増大を抑制することができる。
【0033】
そして、さらにスルーホール2aへの圧入を続けると、プレスフィット端子1は、一対の弾性片部20がアイホール10を狭める方向に弾性変形する。
【0034】
その後、図3(b)に示すように、プレスフィット端子1が所定深さまで圧入されると、一対の弾性片部20の弾性変形によって生じる反力を作用させた状態で、その弾性片部20における外縁ストレート部21と、スルーホール2aの内周面の電極膜とが、互いに接触することになる。このとき、外縁ストレート部21が接触していることから、外縁ストレート部21がなく弾性片の外縁側が円弧状に湾曲している場合に比べると、弾性片部20の電極膜への接触圧を抑えることができ、これにより弾性片部20が電極膜に損傷等を与えてしまうのを防止することができる。また、弾性片部20と電極膜との間の電気抵抗の低減が図れることから、優れた導電性能が得られるようになる。
【0035】
プレスフィット端子1が所定深さまで挿入された状態では、外縁ストレート部21がスルーホール2aの内周面と接触していることから、例えばプレスフィット端子1を傾ける方向に作用する外力が加わった場合であっても、その外力に対する耐性を増大させることができる。つまり、プレスフィット端子1について、スルーホール2a内に圧入された状態において、その保持状態を良好に維持することができる。
【0036】
スルーホール2a内に圧入された状態では、プレスフィット端子1は、一対の弾性片部20の弾性変形を利用して保持力を発揮させる。このとき、外縁ストレート部21と内縁ストレート部22とがオフセット配置されており、これにより端子先端側のバネ定数の増大を抑制しつつも端子根元側についてはバネ定数を高めることが実現可能となるので、必要十分な保持力を発揮させることが可能となる。つまり、本実施形態に係るプレスフィット端子1によれば、スルーホール2aへの挿入力の増大を抑制しつつ、その場合であってもスルーホール2a内に圧入された状態において十分な保持力を発揮させ得るようになる。
【0037】
また、外縁ストレート部21の断面形状の隅にはR形状部25が設けられているので、スルーホール2a内に圧入された状態では、そのR形状部25がスルーホール2aの内周面と接触することになる。そのため、例えばR形状部25がない場合のように角の頂点が接触することがなく、スルーホール2aの内周面に対する負荷を低減させることが可能となる。さらには、角の頂点が接触する場合に比べると、負荷低減に加えて、電気抵抗の低減も図れるようになり、これにより優れた導電性能が得られるようになる。
【0038】
さらに、スルーホール2aの内周面と接触する外縁ストレート部21は、形成長aが例えば0.1mm以上0.5mm以下といったように、所定の寸法範囲に属するように形成されている。そのため、スルーホール2aを有する基板2の厚さの影響に受けずに(どのような厚さ寸法であっても)、外縁ストレート部21の全域をスルーホール2aの内周面の電極膜に接触させることが可能となる。つまり、スルーホール2aを有する基板2の厚さの影響に受けずに、十分な保持力を発揮しつつ優れた導電性能が得られるようになる。
【0039】
(4)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果が得られる。
【0040】
(a)本実施形態に係るプレスフィット端子1は、アイホール10を挟む一対の弾性片部20のそれぞれに外縁ストレート部21と内縁ストレート部22とが形成されており、内縁ストレート部22が外縁ストレート部21よりも端子先端側に片寄って配置されている。このように、外縁ストレート部21と内縁ストレート部22とがオフセット配置されていることで、端子先端側に比べて端子根元側の剛性を高くすること、より具体的には端子先端側のバネ定数の増大を抑制しつつも端子根元側についてはバネ定数を高めることが実現可能となる。したがって、プレスフィット端子1のスルーホール2a内への挿入後の状態において、そのプレスフィット端子1に必要十分な保持力を発揮させることが可能となる。しかも、外縁ストレート部21が接触していることから、弾性片部20と電極膜との間の電気抵抗の低減により、優れた導電性能を得ることが可能となる。また、スルーホール2a内への挿入時には、その挿入力の増大を抑制することが可能である。
つまり、本実施形態に係るプレスフィット端子1によれば、スルーホール2a内への挿入後の状態において十分な保持力を発揮しつつ優れた導電性能が得られ、しかもその場合であってもスルーホール2aへの挿入力の増大を抑制することができる。
【0041】
(b)本実施形態に係るプレスフィット端子1は、外縁ストレート部21と内縁ストレート部22とのオフセット配置により、先端側バネ長eのほうが根元側バネ長fよりも大きくなるように構成されている。このように、根元側バネ長fよりも先端側バネ長eを大きくすることで、端子先端側のバネ定数の増大を抑制しつつも端子根元側についてはバネ定数を高めることが実現可能となり、さらには端子先端側における角度gを端子根元側における角度hよりも小さくすることが可能となる。したがって、スルーホール2a内への挿入後の状態において十分な保持力を発揮しつつ優れた導電性能が得られ、しかもその場合であってもスルーホール2aへの挿入力の増大を抑制する上で、非常に好ましいものとなる。
【0042】
(c)本実施形態に係るプレスフィット端子1は、外縁ストレート部21と内縁ストレート部22とのオフセット配置に加えて、根元側内縁湾曲部23の形成半径r1のほうが先端側内縁湾曲部24の形成半径r2よりも小さくなるように構成されている。このように、形成半径r1を形成半径r2よりも小さくすることで、端子先端側に比べて端子根元側の剛性を高くすることについて、より一層顕著なものとすることが可能となる。したがって、スルーホール2a内への挿入後の状態において十分な保持力を発揮しつつ優れた導電性能が得られ、しかもその場合であってもスルーホール2aへの挿入力の増大を抑制する上で、非常に好ましいものとなる。
【0043】
(d)本実施形態で説明したように、外縁ストレート部21の形成長aが0.1mm以上0.5mm以下であれば、スルーホール2aを有する基板2の厚さの影響に受けずに、外縁ストレート部21の全域をスルーホール2aの内周面の電極膜に接触させることが可能となり、これにより十分な保持力を発揮しつつ優れた導電性能が得られるようになる。
【0044】
(e)本実施形態で説明したように、外縁ストレート部21の断面形状の隅にR形状部25が設けられており、R形状部25の形成半径/基板のスルーホールの穴径≧0.17となるように構成されていれば、プレスフィット端子1が挿入されるスルーホール2aの穴径によらずに、そのスルーホール2aの内周面に対する負荷を確実に低減させることが可能となる。したがって、スルーホール2a内への挿入後の状態において、十分な保持力を発揮しつつ優れた導電性能が得られるようにする上で、非常に好ましいものとなる。
【0045】
(5)変形例等
以上に、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
上述の実施形態では、具体的な寸法値等を挙げて説明している箇所があるが、必ずしも本発明が当該寸法値等に限定されることはなく、必要に応じて適宜変更するようにしても構わない。
【0047】
また、上述の実施形態において、プレスフィット端子1は、車載用の電子機器の基板との電気的接続のために用いることが考えられるが、必ずしもこれに限定されることはなく、幅広い用途に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…プレスフィット端子、2…基板、2a…スルーホール、10…アイホール、11,12…端縁、20…弾性片部、21…外縁ストレート部、22…内縁ストレート部、23…根元側内縁湾曲部、24…先端側内縁湾曲部、25…R形状部
図1
図2
図3