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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183649
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】温熱シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/03 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61F7/08 334F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091085
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】山崎 美香
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐佳利
(72)【発明者】
【氏名】久保 省一
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA01
4C099CA19
4C099EA09
4C099GA03
4C099JA04
4C099LA08
4C099LA11
(57)【要約】
【課題】使用時の不快感を和らげることができ剥がれ難くすることができる温熱シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の温熱シート10は、基材1と、基材1の内面に沿って互いに離間して並設した3つの発熱組成物3、4、5と、3つの発熱組成物3、4、5の基材1と反対側に配置した被覆材2と、各発熱組成物3、4、5を囲むように連続した部位で基材1と被覆材2を熱溶着したシール部6と、3つの発熱組成物3、4、5のうちその並び方向の一端に設けた第1の発熱組成物3の一端側の縁に沿って第1の発熱組成物3に重ねて基材1の外面1aに設けた第1の粘着部7aと、第1の粘着部7aとは別に第1の発熱組成物3の一端と反対の他端側の縁に沿って発熱組成物3に重ねて基材1の外面1aに設けた第2の粘着部7cと、を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシート材と、
前記第1のシート材に沿う第1の方向に互いに離間して並設した複数の発熱組成物と、
前記複数の発熱組成物の前記第1のシート材と反対側に配置した第2のシート材と、
前記複数の発熱組成物をそれぞれ囲むように連続した部位で前記第1のシート材と前記第2のシート材を熱溶着したシール部と、
前記複数の発熱組成物のうち前記第1の方向の一端に設けた第1の発熱組成物の前記一端側の縁に沿って前記第1の発熱組成物に重ねて前記第1のシート材の外面に設けた第1の粘着部と、
前記第1の粘着部とは別に前記第1の発熱組成物の前記一端と反対の他端側の縁に沿って前記第1の発熱組成物に重ねて前記第1のシート材の前記外面に設けた第2の粘着部と、
を有する温熱シート。
【請求項2】
前記第1の粘着部の前記第1の方向の幅は、前記第2の粘着部の前記第1の方向の幅より大きい、
請求項1の温熱シート。
【請求項3】
前記複数の発熱組成物のうち前記第1の方向の他端に設けた第2の発熱組成物の前記他端側の縁に沿って前記第2の発熱組成物に重ねて前記第1のシート材の前記外面に設けた第3の粘着部と、
前記第3の粘着部とは別に前記第2の発熱組成物の前記一端側の縁に沿って前記第2の発熱組成物に重ねて前記第1のシート材の前記外面に設けた第4の粘着部と、
をさらに有する請求項1又は請求項2の温熱シート。
【請求項4】
前記第3の粘着部の前記第1の方向の幅は、前記第4の粘着部の前記第1の方向の幅より大きい、
請求項3の温熱シート。
【請求項5】
第1のシート材と、
前記第1のシート材に沿う第1の方向に互いに離間して並設した3つの発熱組成物と、
前記3つの発熱組成物の前記第1のシート材と反対側に配置した第2のシート材と、
前記3つの発熱組成物をそれぞれ囲むように連続した部位で前記第1のシート材と前記第2のシート材を熱溶着したシール部と、
前記3つの発熱組成物のうち前記第1の方向の一端に設けた第1の発熱組成物の前記一端側の縁に沿って前記第1の発熱組成物に重ねて前記第1のシート材の外面に設けた第1の粘着部と、
前記第1の粘着部とは別に前記第1の発熱組成物の前記一端と反対の他端側の縁に沿って前記第1の発熱組成物に重ねて前記第1のシート材の前記外面に設けた第2の粘着部と、
前記3つの発熱組成物のうち前記第1の方向の前記他端に設けた第2の発熱組成物の前記他端側の縁に沿って前記第2の発熱組成物に重ねて前記第1のシート材の前記外面に設けた第3の粘着部と、
前記第3の粘着部とは別に前記第2の発熱組成物の前記一端側の縁に沿って前記第2の発熱組成物に重ねて前記第1のシート材の前記外面に設けた第4の粘着部と、
前記第1の発熱組成物と前記第2の発熱組成物の間の第3の発熱組成物に重ねて前記第1のシート材の前記外面に設けた第5の粘着部と、
を有する温熱シート。
【請求項6】
前記第1の粘着部の前記第1の方向の幅は、前記第2の粘着部の前記第1の方向の幅より大きく、
前記第3の粘着部の前記第1の方向の幅は、前記第4の粘着部の前記第1の方向の幅より大きい、
請求項5の温熱シート。
【請求項7】
第1のシート材と第2のシート材の間に複数の発熱組成物を第1の方向に互いに離間して並設した温熱シートを製造する方法であって、
前記複数の発熱組成物のうち前記第1の方向の一端に設けた第1の発熱組成物の前記一端側の縁に沿って前記第1の発熱組成物に重なる第1の粘着部、前記第1の発熱組成物の前記一端と反対の他端側の縁に沿って前記第1の発熱組成物に重なる第2の粘着部、前記複数の発熱組成物のうち前記第1の方向の前記他端に設けた第2の発熱組成物の前記他端側の縁に沿って前記第2の発熱組成物に重なる第3の粘着部、及び前記第2の発熱組成物の前記一端側の縁に沿って前記第2の発熱組成物に重なる第4の粘着部をその外面に備えた前記第1のシート材を用意し、
前記第1乃至第4の粘着部に合わせて前記第1のシート材の内面に前記複数の発熱組成物を並べて配置し、
前記複数の発熱組成物の前記第1のシート材と反対側に前記第2のシート材を配置し、
前記複数の発熱組成物をそれぞれ囲むように連続した部位で前記第1のシート材と前記第2のシート材を熱溶着する、
温熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、腰や首などに直に貼る温熱シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温熱シートは、例えば、発熱組成物を2枚のシートの間に挟んで、発熱組成物の周りで2枚のシートを熱溶着することにより形成することができる。温熱シートの一方の面には、温熱シートを肌に貼るための粘着剤による層を設けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-062336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、粘着層を温熱シートの略全面に設けると、温熱シートを広い面積で肌に密着させることができ、温熱シートを剥がれ難くすることができる。反面、温熱シートが肌に密着すると、密着した部分の通気性が悪くなることによる蒸れや、身体の動きに温熱シートが追従し辛くなることによる身体の動かし難さから、不快に感じる場合がある。温熱シートの略全面を長時間肌に密着させると、低温やけどを生じるリスクも高くなる。
【0005】
粘着剤を温熱シートの表面の一部に塗布して、温熱シートを肌に密着させる粘着層の面積を小さくすると、通気性を改善することができ、不快感を和らげることができる。しかし、粘着層の面積を小さくすると、低温やけどを防いで不快感を和らげることができる反面、温熱シートが剥がれ易くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、使用時の不快感を和らげることができ剥がれ難くすることができる温熱シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温熱シートの一態様は、第1のシート材と、第1のシート材に沿う第1の方向に互いに離間して並設した複数の発熱組成物と、複数の発熱組成物の第1のシート材と反対側に配置した第2のシート材と、複数の発熱組成物をそれぞれ囲むように連続した部位で第1のシート材と第2のシート材を熱溶着したシール部と、複数の発熱組成物のうち第1の方向の一端に設けた第1の発熱組成物の一端側の縁に沿って第1の発熱組成物に重ねて第1のシート材の外面に設けた第1の粘着部と、第1の粘着部とは別に第1の発熱組成物の一端と反対の他端側の縁に沿って第1の発熱組成物に重ねて第1のシート材の外面に設けた第2の粘着部と、を有する。
【0008】
本発明の温熱シートの一態様は、第1のシート材と、第1のシート材に沿う第1の方向に互いに離間して並設した3つの発熱組成物と、3つの発熱組成物の第1のシート材と反対側に配置した第2のシート材と、3つの発熱組成物をそれぞれ囲むように連続した部位で第1のシート材と第2のシート材を熱溶着したシール部と、3つの発熱組成物のうち第1の方向の一端に設けた第1の発熱組成物の一端側の縁に沿って第1の発熱組成物に重ねて第1のシート材の外面に設けた第1の粘着部と、第1の粘着部とは別に第1の発熱組成物の一端と反対の他端側の縁に沿って第1の発熱組成物に重ねて第1のシート材の外面に設けた第2の粘着部と、3つの発熱組成物のうち第1の方向の他端に設けた第2の発熱組成物の他端側の縁に沿って第2の発熱組成物に重ねて第1のシート材の外面に設けた第3の粘着部と、第3の粘着部とは別に第2の発熱組成物の一端側の縁に沿って第2の発熱組成物に重ねて第1のシート材の外面に設けた第4の粘着部と、第1の発熱組成物と第2の発熱組成物の間の第3の発熱組成物に重ねて第1のシート材の外面に設けた第5の粘着部と、を有する。
【0009】
本発明の温熱シートの製造方法は、第1のシート材と第2のシート材の間に複数の発熱組成物を第1の方向に互いに離間して並設した温熱シートを製造する方法であって、複数の発熱組成物のうち第1の方向の一端に設けた第1の発熱組成物の一端側の縁に沿って第1の発熱組成物に重なる第1の粘着部、第1の発熱組成物の一端と反対の他端側の縁に沿って第1の発熱組成物に重なる第2の粘着部、複数の発熱組成物のうち第1の方向の他端に設けた第2の発熱組成物の他端側の縁に沿って第2の発熱組成物に重なる第3の粘着部、及び第2の発熱組成物の一端側の縁に沿って第2の発熱組成物に重なる第4の粘着部をその外面に備えた第1のシート材を用意し、第1乃至第4の粘着部に合わせて第1のシート材の内面に複数の発熱組成物を並べて配置し、複数の発熱組成物の第1のシート材と反対側に第2のシート材を配置し、複数の発熱組成物をそれぞれ囲むように連続した部位で第1のシート材と第2のシート材を熱溶着する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、使用時の不快感を和らげることができ剥がれ難くすることができる温熱シート及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る温熱シートを示す平面図である。
図2図2は、図1の温熱シートをF2-F2に沿って切断した断面図である。
図3図3は、図1の温熱シートの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、図1の温熱シートの使用感に関するアンケート結果を示すグラフである。
図5図5は、図1の温熱シートの粘着力に関するアンケート結果を示すグラフである。
図6図6は、図1の温熱シートの剥がれ難さに関するアンケート結果を示すグラフである。
図7図7は、本発明の第2の実施形態に係る温熱シートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る温熱シート10を基材1の外面1a側から見た平面図を示す。図2は、温熱シート10を人の肩に貼り付けた状態の一例を示し、図1のF2-F2に沿って温熱シート10を切断した断面を示す。
【0013】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係る温熱シート10は、基材1と、被覆材2と、基材1と被覆材2の間に互いに離間して並設した3つの発熱組成物3、4、5と、発熱組成物3、4、5の周囲をそれぞれ囲むように連続した部位で基材1と被覆材2をシールしたシール部6と、基材1の外面1aに設けたストライプ状の7つの粘着部7a、7b、7c、7d、7e、7f、7gと、を有する。
【0014】
基材1と被覆材2は、略長円形の同じ外形を有する。3つの発熱組成物3、4、5は、略長円形の温熱シート10の長手方向(第1の方向)に互いに離間して並んでいる。7つの粘着部7a、7b、7c、7d、7e、7f、7gは、温熱シート10の長手方向に離間して温熱シート10の短手方向に延設されている。3つの発熱組成物3、4、5の外縁を図1に破線で示す。7つの粘着部7a、7b、7c、7d、7e、7f、7gは、3つの発熱組成物3、4、5に重なる破線の内側で基材1の外面1aに設けられている。
【0015】
基材1は、本発明の第1のシート材として機能し、被覆材2は、本発明の第2のシート材として機能する。3つの発熱組成物3、4、5のうち、その並び方向(図示左右方向、第1の方向)の一端(図示左端)の発熱組成物3は本発明の第1の発熱組成物として機能し、並び方向の他端(図示右端)の発熱組成物5は本発明の第2の発熱組成物として機能し、中央の発熱組成物4は本発明の第3の発熱組成物として機能する。
【0016】
7つの粘着部7a、7b、7c、7d、7e、7f、7gのうち、図示左端の粘着部7aは本発明の第1の粘着部として機能し、左から3番目の粘着部7cは本発明の第2の粘着部として機能し、図示右端の粘着部7gは本発明の第3の粘着部として機能し、右から3番目の粘着部7eは本発明の第4の粘着部として機能し、中央の粘着部7dは本発明の第5の粘着部として機能する。
【0017】
温熱シート10は、人の肩、首、お腹などに直に貼り付けて使用するものである。温熱シート10は、衣服に貼り付けて使用することもできる。温熱シート10を例えば肩に貼り付ける場合、図2に示すように、基材1の外面1aが肌に対向し、且つ3つの発熱組成物3、4、5の並び方向が肩の湾曲方向に沿う向きで使用する。
【0018】
温熱シート10の発熱量は、発熱組成物3、4、5の材料の配合割合や量を変えることにより調節することができる。本実施形態では、発熱組成物3、4、5の量を異ならせて、発熱組成物3、4、5の発熱量に違いを持たせている。具体的には、3つの発熱組成物3、4、5の厚みを略同じにして、発熱組成物3、4、5の面積を異ならせている。これにより、発熱組成物3、4、5の並び方向の両端にある発熱組成物3、5の発熱量を中央の発熱組成物4の発熱量より多くしている。
【0019】
発熱組成物3、4、5は、鉄粉、炭素成分、反応促進剤及び水を含有する成形物である。発熱組成物3、4、5に成形性を付与するために、発熱反応に用いられない余剰水を含有させ、若しくは増粘剤を含有させてもよい。発熱組成物3、4、5には、保水剤、吸水性ポリマー、pH調整剤、水素発生抑制剤、骨材、繊維状物、界面活性剤、疎水性高分子化合物、発熱助剤、鉄以外の金属、酸化鉄以外の金属酸化物、酸性物質又はこれらの混合物からなる付加的な成分から選ばれた少なくとも1種を加えてもよい。
【0020】
発熱組成物3、4、5の材料の配合割合は、特に限定されるものではないが、鉄粉100質量部に対して、反応促進剤1.0~50質量部であり、水は1.0~60質量部で、炭素成分1.0~50質量部、保水剤0.01~10質量部、吸水性ポリマー0.01~20質量部、pH調整剤0.01~5質量部、水素発生抑制剤0.01~12質量部とすることができる。
【0021】
発熱組成物3、4、5に下記のものを鉄粉100質量部に対して、下記の配合割合で加えてもよい。即ち、鉄以外の金属1.0~50質量部、酸化鉄以外の金属酸化物1.0~50質量部、界面活性剤0.01~5質量部、疎水性高分子化合物、骨材、繊維状物はそれぞれ0.01~10質量部、発熱助剤0.01~10質量部、酸性物質0.01~1質量部である。
【0022】
水の含有量は、発熱組成物3、4、5の7~60質量%、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~50質量%である。
【0023】
炭素成分としては、炭素を成分としたものであれば制限はない。カーボンブラック、黒鉛、活性炭などが一例として挙げられる。ココナツの殻、木材、木炭、石炭、骨炭などから調製された活性炭や、動物産物、天然ガス、脂肪、油及び樹脂のような他の原料から調製されたものも一例として挙げられる。特に、吸着保持能を有する活性炭が好ましい。炭素成分としては、必ずしも単独で存在する必要はなく、炭素成分を含有及び/又は炭素成分で被覆された鉄粉を発熱組成物3、4、5に使用した場合、炭素成分が単独に存在しなくても、発熱組成物3、4、5は炭素成分を含むものとする。
【0024】
反応促進剤としては、発熱組成物3、4、5の反応促進ができるものであれば制限はない。金属ハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、金属硫酸塩類等が一例として挙げられる。金属ハロゲン化物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化第一鉄、臭化第二鉄、沃化ナトリウム、沃化カリウム等が一例として挙げられる。硝酸塩としては硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が一例として挙げられる。酢酸塩としては、酢酸ナトリウム等が一例として挙げられる。炭酸塩としては、炭酸第一鉄等が一例として挙げられる。金属硫酸塩類としては、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等が一例として挙げられる。
【0025】
保水剤としては、保水できれば制限はない。木粉、パルプ粉、活性炭、おがくず、多くの綿毛を有する綿布、綿の短繊維、紙屑、植物質材料及び他の大きい毛細管機能と親水性とを有する植物性多孔質材料、活性白土、ゼオライト等の含水ケイ酸マグネシウム質粘土鉱物、パーライト、バーミキュライト、シリカ系多孔質物質、珊瑚化石、火山灰系物質(テラバルーン、シラスバルーン、タイセツバルーン等)等が一例として挙げられる。尚、これら保水剤の保水力を増加するため、焼成及び/又は粉砕等の加工処理をしたものであってもよい。
【0026】
吸水性ポリマーは、架橋構造を有し、かつ自重に対するイオン交換水の吸水倍率が3倍以上の樹脂であれば特に限定されるものではない。また、表面を架橋したものでもよい。吸水性ポリマーは、市販のものを用いることができる。
【0027】
吸水性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン-ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン-ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール-アクリル酸グラフト共重合体、ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合体等が一例として挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
吸水性ポリマー中の生分解性を有する吸水性ポリマーとしては、生分解性を有する吸水性ポリマーであれば制限はない。このような吸水性ポリマーとして、ポリエチレンオキシド架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、カルボキシメチルセルロース架橋体、アルギン酸架橋体、澱粉架橋体、ポリアミノ酸架橋体、ポリ乳酸架橋体などが一例として挙げられる。
【0029】
pH調整剤としては、pHが調整できれば制限はない。アルカリ金属の弱酸塩、水酸化物など、或いは、アルカリ土類金属の弱酸塩、水酸化物などがあり、NaCO、NaHCO、NaPO、NaHPO、Na10、NaOH、KOH、Ca(OH)、Mg(OH)、Ca(POなどが一例として挙げられる。
【0030】
水素発生抑制剤としては、水素の発生を抑制するものであれば制限はない。イオウ化合物、酸化剤、アルカリ性物質、イオウ、アンチモン、セレン、リン及びテルルからなる群より選ばれた少なくとも1種又は2種以上からなるものが一例として挙げられる。尚、イオウ化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属との化合物で、硫化カルシウム等の金属硫化物、亜硫酸ナトリウム等の金属亜硫酸塩やチオ硫酸ナトリウム等金属チオ硫酸塩等が一例として挙げられる。
【0031】
酸化剤としては、硝酸塩、酸化物、過酸化物、ハロゲン化酸素酸塩、過マンガン酸塩、クロム酸塩等が一例として挙げられる。
【0032】
骨材としては、充填剤として有用であり、及び/又は、発熱組成物3、4、5の多孔質化に有用であれば制限はない。化石サンゴ(サンゴ化石、風化造礁サンゴ等)、竹炭、備長炭、シリカ-アルミナ粉、シリカ-マグネシア粉、カオリン、結晶セルロース、コロイダルシリカ、軽石、シリカゲル、シリカ粉、マイカ粉、クレー、タルク、合成樹脂の粉末やペレット、発泡ポリエステル及びポリウレタンのような発泡合成樹脂、藻土、アルミナ、繊維素粉末等が骨材の一例として挙げられる。尚、カオリン及び結晶セルロースは、発熱組成物3、4、5には含まないものとする。
【0033】
繊維状物としては、無機系の繊維状物及び/又は有機系の繊維状物である、ロックウール、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維、パルプ、紙、不織布、織物、綿や麻等の天然繊維、レーヨン等再生繊維、アセテート等の半合成繊維、合成繊維及びそれらの粉砕品が一例として挙げられる。
【0034】
界面活性剤は、アニオン、カチオン、ノニオン、両性イオンを含む界面活性剤を包含する。特に、ノニオン界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルフェノール・エチレンオキサイド付加物、高級アルコール燐酸エステル等が界面活性剤の一例として挙げられる。
【0035】
疎水性高分子化合物としては、組成物中の水抜けをよくするため、水との接触角が40°以上、より好ましくは50°以上、更に好ましくは60°以上の高分子化合物であれば制限はない。形状も制限はなく、粉体、顆粒、粒、錠等が一例として挙げられる。ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が一例として挙げられる。
【0036】
発熱助成剤としては、金属粉、金属塩、金属酸化物などがあり、Cu、Mn、CuCl、FeCl、二酸化マンガン、酸化第二銅、四三酸化鉄等やそれらの混合物等が一例として挙げられる。酸化鉄以外の金属酸化物としては、二酸化マンガン、酸化第二銅等が一例として挙げられる。
【0037】
酸性物質としては、無機酸、有機酸、及び酸性塩の何れでもよく、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、クロル酢酸、塩化鉄、硫酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄、塩化アルミニウム、塩化アンモニウム、次亜塩素酸等が一例として挙げられる。
【0038】
鉄粉は、通常の鉄粉だけでなく、鉄合金粉や鉄粉の表面の少なくとも一部に酸素含有皮膜を有する鉄粉又は鉄合金粉等も含む。鉄粉として、鋳鉄鉄粉、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉、還元鉄粉、スポンジ鉄粉及びそれらの鉄合金粉や混合粉等が一例として使用できる。更に、これら鉄粉が炭素や酸素を含有していてもよく、また、鉄を50%以上含む鉄で、他の金属を含んでいてもよい。合金等として含まれる金属の種類は、鉄成分が発熱組成物3、4、5の成分として働けば特に制限はないが、アルミニウム、マンガン、銅、ニッケル、ケイ素、コバルト、パラジウム及びモリブデン等の金属、半導体が一例として挙げられる。これらの金属及び合金は表面のみ又は内部のみに有していても表面と内部との両方に有していてもよい。
【0039】
発熱組成物3、4、5は、温度の立ち上がり特性に影響しない範囲において、水溶性高分子、凝集助剤、凝集化助剤、集塊補助剤、乾燥結合材、乾燥結合剤、乾燥バインダ、粘着素材、増粘剤、賦形剤、凝集剤、可溶性粘着性素材を含有することができる。
【0040】
発熱組成物3、4、5は、非通気性の収納袋である外袋(図示せず)に収納して長期保存可能な状態にして流通されるので、水素発生抑制剤を含有することが好ましい。
【0041】
発熱組成物3、4、5の形状は、角部にアールを設け、角部を曲線状や曲面状にしてもよいし、中央部等に凹部があってもよい。発熱組成物3、4、5の大きさ(すなわち発熱量)は、並び方向の端部にある発熱組成物3、5より中央にある発熱組成物4が小さくされている。中央にある発熱組成物4が小さくされていることにより、温熱シート10を発熱組成物3、4、5の並び方向が肩の前面から背面にかけて湾曲に沿うよう貼り付けて使用したとき、温熱シート10を肩にフィットさせることができる。また、並び方向端部の発熱組成物3、5より中央の発熱組成物4の方が冷え難く保温され易いので、3つの発熱組成物3、4、5を一定時間同じ温度にすることができる。
【0042】
これらの発熱組成物3、4、5は、型成形により、収納用ポケットを有しない基材1の内面上に積層される。そして、この上に被覆材2を被せ、発熱組成物3、4、5をそれぞれ囲む部位で基材1と被覆材2を熱溶着する。このため、基材1と被覆材2の少なくとも一方は、熱可塑性樹脂により形成した繊維状物と熱可塑性樹脂により形成したフィルム状物との積層体を使用することが好ましい。フィルム状物とは、基材1や被覆材2の構成層となる少なくとも一層をフィルム状にしたもので、繊維状物としては、不織布や織布等が一例として挙げられる。
【0043】
発熱組成物3、4、5にある程度の成形性があると、発熱組成物3、4、5が少なくとも被覆材2によって覆われて、基材1と被覆材2の間にシール部6が形成されるまで、発熱組成物3、4、5の形状が維持される。このため、発熱組成物3、4、5は、所望の形状でその周縁部の外縁側をシールすることができ、シール部6に発熱組成物3、4、5の崩れ片であるいわゆるゴマが散在しないので、シール切れがなく良好なシールができる。
【0044】
また、基材1としては、例えば、オレフィン系フィルム等を使用することができる。被覆材2としては、例えば、PETスパンレース等を使用することができる。尚、通気性を有する部位は、基材1側であっても、被覆材2側であっても、また、両方であってもよい。
【0045】
通気性としては、発熱が維持できれば制限はない。通常の発熱に使用される場合、通気性はリッシー法(Lyssy法)による透湿度が、通常は50~10,000g/m/24hrであり、好ましくは70~5,000g/m/24hrであり、より好ましくは100~2,000g/m/24hr、更に好ましくは100~700g/m/24hrである。
【0046】
透湿度は、50未満であると発熱量が少なくなり、十分な温熱効果が得られないので好ましくない。一方、透湿度は、10,000g/m/24hrを超えると発熱温度が高くなって安全性に問題が生じる虞れがある。ただし、用途によっては10,000g/m/24hrを超えたり、場合によっては開放系に近い透湿度で使用することも制限されない。
【0047】
また、基材1の伸張率(準拠JIS規格:L1096 8.14)は、幅60mmの試料でTD方向で2.5%、MD方向で2%程度の材料を例えば使用することができる。また、被覆材2の伸張率(準拠JIS規格:L1096 8.14)は、幅60mmの試料で、TD方向で4.1%、MD方向で2%程度の材料を使用することができる。
【0048】
基材1及び被覆材2(以下、「包材」ともいう。)の少なくともどちらか一方は、好ましくは400g/mm以上、より好ましくは500g/mm以上、更に好ましくは1000g/mm以上、更に好ましくは2000g/mm以上の破断強度を有する素材から構成する。また、包材の厚みは、破断強度を確保すれば制限はないが、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは10~500μmであり、更に好ましくは10~300μmであり、更に好ましくは10~250μmであり、更に好ましくは50~250μmである。
【0049】
包材として、不織布と熱可塑性樹脂のフィルム状物との積層体が好ましい一例として挙げられる。少なくとも1つの包材は繊維状物とフィルム状物との積層体で、ヒートシール可能で、可撓性の素材である。基材1又は被覆材2の少なくとも1種に前記包材を使用する温熱シート10は、発熱組成物3、4、5を実質的に平面状の基材1上に積層し、それに被覆材2を被せ、発熱組成物3、4、5の周縁部をヒートシールし、シール部6が形成されるが、一例として被覆材2に前記包材を使用した場合、可撓性で、腰があって、発熱組成物3、4、5を確実に覆うことができる。更にヒートシール時に、ヒートシール時の温度により被覆材2は破断することなく、シール切れもなく、確実なヒートシール部を形成できる。
【0050】
ヒートシール層を構成するヒートシール材としては、単独素材でもよく、ヒートシール層を有する複合素材でもよく、加熱によって少なくともその一部が接合しうるものであれば制限はない。一例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやオレフィン共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-イソブチルアクリレート共重合樹脂などのエチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂等のエチレン系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、ブチラール系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリメチルメタクリレート系ホットメルト樹脂、ポリビニルエーテル系ホットメルト樹脂、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリカーボネート系ホットメルト樹脂、酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のホットメルト系樹脂及びそのフィルムやシートが一例として挙げられる。また、ホットメルト系樹脂及びそのフィルムやシートには、種々の酸化防止剤等添加剤を配合したものも使用することができる。特に、低密度ポリエレン、メタロセン触媒使用のポリエチレンが有用である。
【0051】
不織布としては、パルプ、麻、綿、レーヨン、アセテートなどの植物繊維、或いは、ポリエチレンなどを原料とした合成パルプ、及びポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンやエチレンを主体とする共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン三元ランダム共重合体等の自己接合型を狙ったポリオレフィン系、ナイロン6等のポリアミド系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、などの熱可塑性高分子物質の単繊維及び複合繊維、更にこれらの混合繊維、更にセルロース繊維パルプ等を混合したものが用いられる。不織布は短繊維不織布、長繊維不織布、連続フィラメント不織布でも使用可能であるが、機械的性質の点から長繊維不織布や連続フィラメント不織布が好ましい。
【0052】
また、温熱シート10を構成する、基材1など、人体の皮膚に接触する側のフィルムには汗等の分泌物を吸収するための吸水性を備えるようにしてもよいし、予め水分等を含ませて、皮膚に水分等を補給できるようにしてもよい。具体的には、フィルムの中間層に吸水性を有する紙、織布、不織布、或いは、発泡シートを積層したもの、或いは吸水性ポリマーやベントナイト等の保水剤を担持させた紙、織布、不織布、或いは、発泡シートを積層したもの等がフィルムの一例として挙げられる。
【0053】
基材1及び被覆材2は、透明、不透明、着色、無着色等如何なるものでもよい。また、基材1及び被覆材2の外面には、記号、絵、写真、図、模様等を設けてもよい。温熱シート10が皮膚と接触する基材1の外面1a側に温熱緩和シートを設けてもよい。
【0054】
また、温熱シート10は気密性の非通気性収納袋(外袋)に封入され、保管、輸送される、その一例として、製造された温熱シート10を2枚の非通気性フィルム又はシートの間に介在させ、この介在と同時に、又は、この介在後に、2枚のフィルム又はシートを温熱シート10より大きいサイズに打ち抜き、この打ち抜きと同時に、若しくは打ち抜き前に、温熱シート10のサイズを超える周辺部において、2枚のフィルム又はシートを封着した温熱シート10が挙げられる。
【0055】
外袋は非通気性のものであればそのほかの制限はなく、ラミネートされているものでもよく、通常非通気性素材から作成されたものを使用する。尚、温熱シート10は発熱組成物3、4、5の間で折り畳み、或いは、まるめて、外袋に封入すると非常にコンパクトになり、外袋の節約、優れた携帯性等が生まれ、都合がよい。
【0056】
温熱シート10の基材1は、その外面1aに、皮膚や衣服に貼着するために粘着部7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g(以下、総称して粘着部7とする場合もある)を備える。粘着部7を構成する材料としては、身体又は衣服に温熱シート10を貼付できるものであれば特に制限するものではないが、例えば、SIS系粘着剤(厚さ:38μm)等を使用することができる。また、粘着強度についても特に制限はないが、例えば、0.18~2.5kgf/25mmの範囲にすることができる。
【0057】
本実施形態の温熱シート10の使用方法については特に制限はないが、肩こり、腰痛、筋肉疲労等の症状を緩和し、気血の流れを阻害する筋肉やすじの緊張を解きほぐすために使用できる。また、温熱シート10に磁石等の磁気物質を含有させて、磁気効果による血行向上や肩こりの改善などの機能を持たせてもよい。
【0058】
また、発熱組成物3、4、5、基材1、及び被覆材2の少なくとも1種の全面又はその一部に加圧処理等をしたり、また、凹凸を形成したりしてもよい。これらにより、基材1と被覆材2の間での発熱組成物3、4、5の移動を防止してもよい。
【0059】
粘着部7は、保水剤、吸水性ポリマー、pH調整剤、界面活性剤、有機ケイ素化合物、疎水性高分子化合物、酸化防止剤、骨材、繊維状物、保湿剤、機能性物質又はこれらの混合物からなる付加的な成分から選ばれた少なくとも1種を含有してもよい。粘着部7は、非親水性粘着剤、混合粘着剤、親水性粘着剤(ジェル等)に分類される。
【0060】
粘着部7を構成する粘着剤としては、皮膚や衣服に付着するのに必要な粘着力を有するものであれば、制限はなく、溶剤系、水性系、エマルジョン型、ホットメルト型、反応性、感圧系、或いは、非親水性粘着剤、親水性粘着剤などの各種形態が用いられる。非親水性粘着剤層が吸水性ポリマーや保水剤を含有して吸水性を改良したものは非親水性粘着剤層として扱う。親水性粘着剤層と基材1との間にホットメルト系の粘着剤を設けてもよい。また、親水性粘着剤を発熱体に設ける場合の制限はなく、シール部6を設けた後に親水性粘着剤層を温熱シート10に設けてもよい。
【0061】
非親水性粘着剤層を構成する粘着剤として、アクリル系粘着剤、酢酸ビニル系粘着剤(酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル樹脂系ホットメルト粘着剤)、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルアセタール系粘着剤、塩化ビニル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ポリエチレン系粘着剤、セルロース系粘着剤、クロロプレン(ネオプレン)系粘着剤、ニトリルゴム系粘着剤、ポリサルファイド系粘着剤、ブチルゴム系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、スチレン系粘着剤(例えば、スチレン系ホットメルト粘着剤)、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が一例として挙げられる。これらのうち、粘着力が高く、安価で、長期安定性が良く、しかも温熱を与えても粘着力の低下が少ない、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、又はホットメルト系高分子物質を含有する粘着剤を使用することが望ましい。
【0062】
粘着部7の粘着剤に、他の成分、例えば、ロジン類、クマロンインデン樹脂、水添石油樹脂、無水マレイン酸変性ロジン、ロジン誘導体類又はC5系石油樹脂等の脂環族系石油樹脂に代表される石油樹脂類等の粘着付与剤やテルペンフェノール系樹脂、ロジンフェノール系樹脂、アルキルフェノール系樹脂等のフェノール系粘着付与剤(特にアニリン点が50℃以下の粘着付与剤)、ヤシ油、ヒマシ油、オリーブ油、ツバキ油、流動パラフィン等の軟化剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、骨材、粘着調整剤、粘着改良剤、着色剤、消泡剤、増粘剤、改質剤等を適宜配合し、ナイロン製衣類や混紡布製衣類への粘着性を向上させてもよい。
【0063】
ホットメルト系の粘着剤としては、粘着性を付与した公知のホットメルト系粘着剤が挙げられ、具体的には、例えば、SIS、SBS、SEBS又はSIPS等のA-BA型ブロック共重合体をベースポリマーとするスチレン系粘着剤、塩化ビニル樹脂をベースポリマーとする塩化ビニル系粘着剤、ポリエステルをベースポリマーとするポリエステル系粘着剤、ポリアミドをベースポリマーとするポリアミド系粘着剤、アクリル樹脂をベースポリマーとするアクリル系粘着剤、ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-αオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィンをベースポリマーとするポリオレフィン系粘着剤、1、2-ポリブタジエンをベースポリマーとする1、2-ポリブタジエン系粘着剤又はポリウレタンをベースポリマーとするポリウレタン系粘着剤、或いは、接着性の改善や安定性等を変えたこれらの変性体からなる粘着剤、若しくはこれらの粘着剤の2種以上の混合物が挙げられる。また、発泡させた粘着剤や架橋された粘着剤も使用できる。
【0064】
ホットメルト粘着剤には、非芳香族ホットメルト粘着剤と芳香族ホットメルト粘着剤がある。非芳香族系ホットメルト系粘着剤は、ベースポリマーが芳香族環を含有しないホットメルト系粘着剤であればよく制限はない。オレフィン系ホットメルト系粘着剤やアクリル系ホットメルト系粘着剤等が一例として挙げられる。芳香族環を含有しないベースポリマーである非芳香族系ポリマーとは、オレフィンやジエン等のポリマーやコポリマーが挙げられる。一例としてオレフィン系ポリマーが挙げられる。オレフィン系ポリマーは、エチレン、αオレフィンの重合体又は共重合体である。また、他のモノマーとしてブタジエン、イソプレン等のジエンを加えたものもよい。αオレフィンとしては、二重結合が末端にあるモノマーであれば制限はなく、プロピレン、ブテン、ヘプテン、ヘキセン、オクテン等が一例として挙げられる。
【0065】
芳香族系ホットメルト系粘着剤とは、ベースポリマーが芳香族環を含有するホットメルト系粘着剤であり、A-B-A型ブロック共重合体に代表されるスチレン系のホットメルト系粘着剤等が一例として挙げられる。A-B-A型ブロック共重合体において、Aブロックはスチレン、メチルスチレン等のモノビニル置換芳香族化合物Aで、非弾性重合体ブロックであり、Bブロックはブタジエン、イソプレン等の共役ジエンの弾性重合体ブロックであり、具体的には、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、又はこれらの水添タイプ(SEBS、SIPS)等が挙げられ、また、これらを混合して用いてもよい。
【0066】
非親水性粘着剤層の水分増加による粘着力低下防止対策として非親水性粘着剤に更に吸水性ポリマーが配合された粘着剤層も使用できる。親水性粘着剤層を構成する親水性粘着剤としては、親水性ポリマーや水溶性ポリマーを主成分として、粘着性を有し、粘着剤として親水性であれば特に制限はない。
【0067】
親水性粘着剤の構成成分としては、ポリアクリル酸等の親水性ポリマーやポリアクリル酸ナトリウムやポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマー、乾燥水酸化アルミニウムやメタケイ酸アルミン酸金属塩等の架橋剤類、グリセリンやプロピレングリコール等の軟化剤類、また、軽質流動パラフィンやポリブテン等の高級炭化水素やミリスチン酸イソプロピル等の一級アルコール脂肪酸エステル、シリコーン油等の含ケイ素化合物、モノグリセリド等の脂肪酸グリセリンエステル、オリーブ油等の植物油等の油性成分、また、パラオキシ安息香酸メチルやパラオキシ安息香酸プロピル等の防腐剤、N-メチル-2-ピロリドン等の溶解剤、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油やソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤、酒石酸等のオキシカルボン酸、軽質無水ケイ酸、吸水性ポリマー、カオリン等の賦形剤、D-ソルビトール等の保湿剤、エデト酸ナトリウムやパラオキシ安息香酸エステルや酒石酸等の安定化剤、架橋型吸水性ポリマー、ホウ酸等のホウ素化合物、水等が一例として挙げられる。また、親水性粘着剤は、これらの任意の組み合わせから構成されてもよい。
【0068】
粘着部7を親水性粘着剤により形成した場合、親水性粘着剤と発熱組成物3、4、5との間に水分保持力の差があると、その間にある基材1を介して、水分の移動が起こり、双方に取って、不都合が起こる。特に、このような不都合は、温熱シート10の保存中に多く起こる。これを防止するために、これらの間に介在する基材1は、透湿度が、少なくとも、リッシー法(Lyssy法)による透湿度で、2g/m/day以下であることが好ましい。このような基材1を使用することにより、温熱シート10を非通気性収納袋である外袋に収納し保存する場合、水分移動を防ぐことができる。
【0069】
粘着部7に親水性粘着剤を使用した場合、発熱組成物3、4、5と粘着部7との間に設けられた基材1の透湿度は、大気圧下、40℃、90%RHという条件下で、発熱性能に影響しない範囲で、水分の移動が防止できれば制限はないが、リッシー法(Lyssy法)による透湿度で、通常、2.0g/m/day以下であり、好ましくは1.0g/m/day以下であり、より好ましくは0.5g/m/day以下であり、更に好ましくは0.01~0.5g/m/dayである。尚、防湿性包装材は基材1や被覆材2として使用してもよく、基材1や被覆材2等に積層してもよい。
【0070】
防湿性の基材1は、発熱組成物3、4、5と粘着部7の間の水分移動が防止できれば、制限はないが、金属蒸着フィルム、金属酸化物の蒸着フィルム、金属箔ラミネートフィルム、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合物、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物)系フィルム、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニリデンコートフィルム、ポリ塩化ビニリデンをポリプロピレン等の基材フィルムに塗布してなるポリ塩化ビニリデンコートフィルム、アルミニウム箔等の金属箔、ポリエステルフィルム基材にアルミニウム等の金属を真空蒸着やスパッタリングしてなる非通気性包材、可撓性プラスチック基材の上に、酸化ケイ素、酸化アルミニウムを設けた構造の透明バリア性フィルムを使用した包装用積層体が一例として挙げられる。このようなフィルムは、外袋等に使用されている非通気性包材にも使用できる。
【0071】
水含有の親水性粘着剤(ジェル等)により粘着部7を形成する場合、発熱組成物3、4、5と親水性粘着剤の水分平衡を調整するために、発熱組成物3、4、5の中の塩化ナトリウム等の反応促進剤や吸水性ポリマー等の水分確保力のある物質の含有量を発熱組成物3、4、5に対して、臨界湿度の差異が2%以下の範囲で調整してもよい。
【0072】
ここで、臨界湿度とは、30±3℃で、任意に湿度を設定した環境下において、親水性粘着剤(ジェル等)及び発熱組成物3、4、5が水分平衡になる湿度のことである。つまり、臨界湿度の差異が2%以下とは、親水性粘着剤及び発熱組成物3、4、5について得られる水分平衡となる湿度につき、その差異が2%以下であることの意である。
【0073】
また、透湿性がよく、皮膚への刺激性が低い粘着剤としては、含水粘着剤(親水性粘着剤、ジェル)やホットメルト塗工できる粘着剤やゴム系粘着剤も有用である。
【0074】
本実施形態の温熱シート10は、各種形状、厚み、温度帯のものが得られるため、通常の身体採暖用のほか、関節用、美顔用、目用、温熱湿布用、薬剤カイロ用、頚部用、腰用、手袋用、痔瘻用、或いは、肩痛、筋肉痛、生理痛等の症状緩和用、腹部用等の各用途に用いることができる。更に、ペット等への加温・保温用等へ利用できる。
【0075】
例えば、症状緩和用として使用する場合は、本実施形態の温熱シート10を身体の必要部位に直接あてるか、衣類、布等を介して間接的にあてる。
【0076】
尚、筋肉や骨格等の痛みとは、急性筋肉痛、急性骨格痛、急性関連痛、既往筋肉痛、既往骨格痛、慢性関連痛、膝や肘等の関節痛等が一例として挙げられる。
【0077】
温熱シート10を身体の必要部位に直接あてる場合、持続時間に制限はないが、好ましくは1~24時間であり、より好ましくは3~20時間である。持続温度に制限はないが、好ましくは30~50℃であり、より好ましくは35~45℃である。
【0078】
温熱シート10は、7つの粘着部7a、7b、7c、7d、7e、7f、7gの部位で肌に密着する。粘着部7の面積を大きくすると、温熱シート10が剥がれ難くなるが、通気性が悪くなったり身体を動かし難くなったりして不快に感じる可能性がある。粘着部7の面積を小さくすると、通気性が良くなり、不快感を和らげることができるが、温熱シート10が剥がれ易くなってしまう。このため、本実施形態では、使用時の不快感を和らげるとともに、剥がれ難くするように、粘着部7の形状及びレイアウトを工夫した。
【0079】
例えば、温熱シート10を肩に貼ると、肩の表面に沿って温熱シート10が図2に示すように湾曲する。3つの発熱組成物3、4、5は一定の厚みを有するため、発熱組成物3、4、5が無いシール部6(基材1と被覆材2を重ねて溶着した部分)より発熱組成物3、4、5の部位が曲がり難い。また、発熱組成物3、4、5は、経時的に酸化すると固くなる。このため、図示のように温熱シート10を肩に貼ると、シール部6が曲がり易いのに対して、発熱組成物3、4、5を設けた部分が曲がり難く、発熱組成物3、4、5の曲がり方向の両端が肌から浮き上がり易い。
【0080】
このため、本実施形態では、この肌から浮き上がり易い部位に粘着部7a、7c、7e、7gを設けて温熱シート10を肌から剥がれ難くした。7つの粘着部7a、7b、7c、7d、7e、7f、7gは、発熱組成物3、4、5の並び方向(図示左右方向)と直交する温熱シート10の短手方向(図示上下方向)に延び、温熱シート10の長手方向に互いに離間してストライプ状に互いに略平行に設けられている。
【0081】
温熱シート10の長手方向に沿った図示左端の粘着部7aは、温熱シート10の長手方向の図示左端にある発熱組成物3の図示左端縁に沿って発熱組成物3に重なる位置に設けられている。左から3番目の粘着部7cは、左端の発熱組成物3の図示右端縁に沿って発熱組成物3に重なる位置に設けられている。粘着部7aと粘着部7cの間の粘着部7bは、粘着部7a及び粘着部7cからそれぞれ離間して発熱組成物3に重なる位置に設けられている。温熱シート10の3つの粘着部7a、7b、7cの短手方向の両端(図1で上下端)は、発熱組成物3の外縁まで延びている。言い換えると、3つの粘着部7a、7b、7cは、短手方向に延びた2本の所定幅の線によって発熱組成物3を3つに分断した形状を有する。
【0082】
温熱シート10の長手方向に沿った図示右端の粘着部7gは、温熱シート10の長手方向の図示右端にある発熱組成物5の図示右端縁に沿って発熱組成物5に重なる位置に設けられている。右から3番目の粘着部7eは、右端の発熱組成物5の図示左端縁に沿って発熱組成物5に重なる位置に設けられている。粘着部7eと粘着部7gの間の粘着部7fは、粘着部7e及び粘着部7gからそれぞれ離間して発熱組成物5に重なる位置に設けられている。温熱シート10の3つの粘着部7e、7f、7gの短手方向の両端(図1で上下端)は、発熱組成物5の外縁まで延びている。言い換えると、3つの粘着部7e、7f、7gは、短手方向に延びた2本の所定幅の線によって発熱組成物5を3つに分断した形状を有する。
【0083】
温熱シート10の長手方向の中央にある粘着部7dは、温熱シート10の長手方向の中央にある発熱組成物4の幅方向の中央に重なる位置に設けられている。粘着部7dの短手方向の両端(図示上下端)は、発熱組成物4の外縁まで延びている。温熱シート10は、この発熱組成物4の中心を通る短手方向に延びた線(図示せず)を中心に略左右対称な外形を有する。温熱シート10は、発熱組成物3と発熱組成物4の間のシール部6、及び発熱組成物4と発熱組成物5の間のシール部6で折り畳むことができる。
【0084】
温熱シート10の長手方向に沿った各粘着部7の幅、及び複数の粘着部7の間の距離は、温熱シート10を剥れ難くすることができるとともに、使用時の不快感を和らげることができる値に設定されている。本実施形態では、図示左端の粘着部7aの幅を11mmに設定し、左から2番目の粘着部7bの幅を10mmに設定し、左から3番目の粘着部7cの幅を9mmに設定し、中央の粘着部7dの幅を10mmに設定し、右から3番目の粘着部7eの幅を9mmに設定し、右から2番目の粘着部7fの幅を10mmに設定し、図示右端の粘着部7gの幅を11mmに設定した。
【0085】
また、本実施形態では、図示左端の粘着部7aと2番目の粘着部7bの間の距離を7.5mmに設定し、左から2番目の粘着部7bと3番目の粘着部7cの間の距離を6.5mmに設定し、左から3番目の粘着部7cと中央の粘着部7dの間の距離を10mmに設定し、中央の粘着部7dと右から3番目の粘着部7eの間の距離を10mmに設定し、右から3番目の粘着部7eと右から2番目の粘着部7fの間の距離を6.5mmに設定し、右から2番目の粘着部7fと図示右端の粘着部7gの間の距離を7.5mmに設定した。
【0086】
本実施形態の温熱シート10は、例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、上述した形状の粘着部7を外面1aに設けた基材1を用意する(図3;ステップ1)。ストライプ状の粘着部7は、基材1を所定方向に一定速度で搬送しながら、その一面に所定幅の粘着剤を所定間隔で塗布することによって形成される。
【0087】
次に、粘着部7を外面1aに設けた基材1をその内面を上にして、3つの発熱組成物3、4、5の形の3つの貫通孔を有する図示しない成形型を基材1の内面上に載せる。このとき、発熱組成物3、4、5のエッジに粘着部7が対向するように、貫通孔を粘着部7の形状に合わせて成形型を基材1に位置合わせする。そして、成形型内に発熱組成物を入れ、成形型からあふれた発熱組成物をすり切る(ステップ2)。
【0088】
さらに、成形型を取り除いた後、基材1の内面上に所定の間隔をおいて配置された発熱組成物3、4、5の上から被覆材2を被せて、各発熱組成物3、4、5の周囲をヒートシールにより熱溶着してシール部6を形成する(ステップ3)。このとき、粘着部7の一部がシール部6に重なる。言い換えると、本実施形態のように、粘着部7を設けた後にシール部6を形成することで、粘着部7の縁の形状をシール部6の形状に沿った形状にすることができる。
【0089】
この後、基材1及び被覆材2を所定位置で所定形状に切り抜き、温熱シート10を得る(ステップ4)。このとき、同時に、3つの発熱組成物3、4、5の間に切り込み(ここでは図示せず)を設けることもできる。
【0090】
以上のように、本実施形態によると、基材1の外面1aにストライプ状の粘着部7を設けたため、温熱シート10の通気性を良くするとともに温熱シート10を身体に追従し易くすることができ、使用時の不快感を和らげることができる。なお、粘着部7を延設する方向は、温熱シート10を貼る部位に応じて適切な方向にすることが望ましい。本実施形態の温熱シート10は、肩やお腹に貼る使用方法を想定したものであり、温熱シート10をその長手方向に湾曲させて使用するため、粘着部7を温熱シート10の短手方向に延設した。
【0091】
また、本実施形態によると、温熱シート10の湾曲方向、すなわち長手方向に沿った発熱組成物3、4、5の両端縁に重なる位置に粘着部7を設けたため、温熱シート10が肌から浮き上がり易い部位を剥がれ難くすることができ、温熱シート10を剥がれ難くすることができる。例えば、図2の左から3番目の粘着部7cに着目すると、発熱組成物3の発熱組成物4側のエッジに重なる肌から浮き上がり易い位置に設けられており、この部位の粘着力を良くしている。温熱シート10の肌から浮き上がり易い部位に重ねて設けた粘着部7は、この他に、粘着部7a、7e、7gである。
【0092】
また、本実施形態によると、温熱シート10の湾曲方向、すなわち長手方向の端部にある発熱組成物3、5に重ねて設けた粘着部7a、7b、7c、7e、7f、7gの幅を、内側から外側に向かうに連れて徐々に大きくした。例えば、図1で左端の発熱組成物3に重ねた粘着部7a、7b、7cに着目すると、最も外側の粘着部7aの幅を11mmに形成し、その内側の粘着部7bの幅を10mmに形成し、最も内側の粘着部7cの幅を9mmに形成した。
【0093】
このように、外側の粘着部7の幅を内側の粘着部7より大きくすることにより、温熱シート10のより剥がれ易い外側部分の粘着力を(内側部分より)強くすることができ、温熱シート10をより剥がれ難くすることができる。粘着部7b、7fは、それぞれ、発熱組成物3、5の幅方向のエッジに設けたものではないが、その両側の粘着部7a、7c、7e、7gの粘着力を補うものであり、温熱シート10の使用時における不快感を和らげるとともに温熱シート10を剥がれ難くするためのものである。
【0094】
また、本実施形態によると、予め粘着部7を設けた基材1を用意して温熱シート10を製造したため、粘着部7に部分的に重なる位置で基材1と被覆材2を熱溶着している。これにより、各粘着部7の短手方向の両端を発熱組成物3、4、5の外縁のギリギリまで設けることができ、段差ができ易い温熱シート10の部位をより効果的に肌に密着させることができる。発熱組成物3、4、5は所定の厚さを有するため、発熱組成物3、4、5の外縁近くに段差が生じる。このため、本実施形態のように、発熱組成物3、4、5のエッジのギリギリのところに粘着部7を設けることが有効である。
【0095】
図4は、本実施形態の温熱シート10の使用感に関するアンケート結果を示すグラフである。比較のため、7つの粘着部7a、7b、7c、7d、7e、7f、7gのうち2つの粘着部7c、7eを省略した比較品Pを作成し、本実施形態の温熱シート10(発明品Q)とともに40人の被験者がその使用感を5段階で評価した。
【0096】
アンケートの結果、比較品Pの方が発明品Qより使用感が「よかった」と答えた被験者の割合は7.5%であり、比較品Pの方が発明品Qより使用感が「ややよかった」と答えた被験者の割合は12.5%であり、「どちらともいえない」と答えた被験者の割合は32.5%であり、発明品Qの方が比較品Pより使用感が「ややよかった」と答えた被験者の割合は27.5%であり、発明品Qの方が比較品Pより使用感が「よかった」と答えた被験者の割合は20%であった。
【0097】
つまり、比較品Pより発明品Qの方が使用感が「よい」と感じた被験者の割合は全体の47.5%であった。
【0098】
図5は、本実施形態の温熱シート10の粘着力に関するアンケート結果を示すグラフである。比較のため、7つの粘着部7a、7b、7c、7d、7e、7f、7gのうち2つの粘着部7c、7eを省略した比較品Pを作成し、本実施形態の温熱シート10(発明品Q)とともに40人の被験者がその粘着力を5段階で評価した。
【0099】
アンケートの結果、比較品Pの方が発明品Qより粘着力が「よかった」と答えた被験者の割合は5.5%であり、比較品Pの方が発明品Qより粘着力が「ややよかった」と答えた被験者の割合は12.5%であり、「どちらともいえない」と答えた被験者の割合は37.5%であり、発明品Qの方が比較品Pより粘着力が「ややよかった」と答えた被験者の割合は22.5%であり、発明品Qの方が比較品Pより粘着力が「よかった」と答えた被験者の割合は22.5%であった。
【0100】
つまり、比較品Pより発明品Qの方が粘着力が「よい」と感じた被験者の割合は全体の45%であった。
【0101】
図6は、本実施形態の温熱シート10の剥がれ難さに関するアンケート結果を示すグラフである。比較のため、7つの粘着部7a、7b、7c、7d、7e、7f、7gのうち2つの粘着部7c、7eを省略した比較品Pを作成し、本実施形態の温熱シート10(発明品Q)とともに40人の被験者がその剥がれ難さを5段階で評価した。
【0102】
アンケートの結果、比較品Pの方が発明品Qより剥がれ難さが「よかった」と答えた被験者の割合は5%であり、比較品Pの方が発明品Qより剥がれ難さが「ややよかった」と答えた被験者の割合は17.5%であり、「どちらともいえない」と答えた被験者の割合は30%であり、発明品Qの方が比較品Pより剥がれ難さが「ややよかった」と答えた被験者の割合は22.5%であり、発明品Qの方が比較品Pより剥がれ難さが「よかった」と答えた被験者の割合は25%であった。
【0103】
つまり、比較品Pより発明品Qの方が剥がれ難さが「よい」と感じた被験者の割合は全体の47.5%であった。
【0104】
図7は、第2の実施形態に係る温熱シート20を示す平面図である。
温熱シート20は、基材21、被覆材22、及び4つの発熱組成物23、24、25、26を備え、これら4つの発熱組成物23、24、25、26に重ならない位置に粘着部31、32を備える。これ以外の構成は、上述した第1の実施形態の温熱シート10と同様の構造を有する。
【0105】
この温熱シート20は、その長手方向(図示左右方向)に互いに離間して並んだ4つの発熱組成物23、24、25、26を備え、8つの粘着部27a、27b、27c、27d、27e、27f、31、32を備える。
【0106】
図示左端にある発熱組成物23(第1の発熱組成物)の図示左端に沿って発熱組成物23に重なる位置に粘着部27a(第1の粘着部)が設けられ、発熱組成物23の図示右端に沿って発熱組成物23に重なる位置に粘着部27b(第2の粘着部)が設けられている。また、図示右端にある発熱組成物26(第2の発熱組成物)の図示右端に沿って発熱組成物26に重なる位置に粘着部27f(第3の粘着部)が設けられ、発熱組成物26の図示左端に沿って発熱組成物26に重なる位置に粘着部27e(第4の粘着部)が設けられている。
【0107】
これら4つの粘着部27a、27b、27e、27fは、それぞれ、温熱シート20が肌から浮き上がり易い部位に設けられており、温熱シート20を剥がれ難くしている。中央の2つの発熱組成物24、25(第3の発熱組成物)にそれぞれ重なる粘着部27c、27dは、第5の粘着部として機能する。
【0108】
以上のように、第2の実施形態の温熱シート20も、第1の実施形態の温熱シート10と同様の効果を奏することができる。
【0109】
本実施形態の温熱シート20は、例えば背中や腰など比較的広い体の部位に貼ることを想定したものであり、温熱シート10より一回り大きいサイズのものである。このため、その長手方向の両端近くで発熱組成物に重ならない部位に粘着部31、32を備えている。
【0110】
この温熱シート20は、例えば、その長手方向の中央に切取線Lを備えてもよく、切取線Lで2つに分割可能としてもよい。この場合、例えば図示左側の1/2の部分に着目すると、切取線Lで切り取った部位がこの部分の右端となり、比較的剥がれ易い部位となる。しかし、切取線Lの近傍に粘着部27cを備えるため、この部位が剥がれ易くなることはない。
【0111】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、上述した実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0112】
1…基材、 1a…外面、 2…被覆材、 3、4、5…発熱組成物、 6…シール部、 7、7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g…粘着部、 10、20…温熱シート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7