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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183654
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/00 20160101AFI20221206BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20221206BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20221206BHJP
   B60K 6/24 20071001ALI20221206BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20221206BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20221206BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20221206BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20221206BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20221206BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/46 ZHV
B60W10/08 900
B60K6/24
F02D29/02 321B
F02D29/02 321C
F02D17/00 Q
B60L50/61
B60L15/20 S
B60L58/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091091
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 弘享
【テーマコード(参考)】
3D202
3G092
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB07
3D202BB12
3D202BB13
3D202BB19
3D202CC33
3D202CC44
3D202CC52
3D202CC58
3D202DD17
3D202DD25
3D202DD45
3D202EE01
3G092AC02
3G092AC03
3G092AC08
3G092CA01
3G092FA30
3G092FA31
3G092GA01
3G092GA10
3G092HF08Z
3G092HF21Z
3G093AA07
3G093AA16
3G093BA21
3G093BA22
3G093CA02
3G093DA06
3G093DB05
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA04
5H125BC12
5H125BD17
5H125CC01
5H125EE27
5H125EE31
(57)【要約】
【課題】エンジンの回転位置を適正な位置にして、エンジンを始動する。
【解決手段】電動車両1の制御装置は、走行用の第1モータ(走行モータ11)と、バッテリ(高電圧バッテリ23)と、発電用の第2モータ(発電モータ12)と、エンジン(ロータリエンジン3)と、第1コントローラ(エンジンECU25)と、第2コントローラ(モータECU26)と、センサ(電圧/電流センサSN5)と、を備える。第2コントローラは、第2モータを力行運転させることによってエンジンを始動させる始動制御部263と、バッテリが充電されるように第2モータを発電運転させる発電制御部264と、バッテリのSOCが高くなって第2モータの発電運転を終了する場合に、第1コントローラがエンジンを停止したことに引き続いて、第2モータを力行運転させることによってエンジンの停止位置を調整する停止位置制御部265と、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪に機械的に接続された走行用の第1モータと、
前記第1モータに電気的に接続されかつ、前記第1モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリに電気的に接続された発電用の第2モータと、
前記第2モータが機械的に接続されたシャフトを有しかつ、前記第2モータを動かす駆動力を発生するエンジンと、
前記エンジンを運転させる第1コントローラと、
前記第2モータを運転させる第2コントローラと、
前記バッテリのSOCに関係する電気信号を、前記第2コントローラへ出力するセンサと、を備え、
前記第2コントローラは、
前記センサの電気信号に基づいて前記バッテリのSOCが低下した場合に、前記第2モータを力行運転させることによって前記エンジンを始動させる始動制御部と、
前記エンジンの始動後に、前記バッテリが充電されるように前記第2モータを発電運転させる発電制御部と、
前記センサの電気信号に基づき前記バッテリのSOCが高くなって前記第2モータの発電運転を終了する場合に、前記第1コントローラが前記エンジンを停止したことに引き続いて、前記第2モータを力行運転させることによって前記エンジンの停止位置を調整する停止位置制御部と、を有している、
電動車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両の制御装置において、
前記第1コントローラと前記第2コントローラとは通信線を介して互いに接続され、
前記第1コントローラは、前記エンジンの位置情報を、前記通信線を介して前記第2コントローラへ送信し、
前記第2コントローラは、前記第1コントローラからの前記位置情報に基づいて、前記エンジンの停止位置を調整する、
電動車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両の制御装置において、
前記第2コントローラは、前記第2モータが発電運転をしている最中の前記エンジンの位置情報を、前記第1コントローラから受信する、
電動車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電動車両の制御装置において、
前記エンジンはロータリエンジンであり、
前記第2コントローラは、前記ロータリエンジンの前記シャフトを正回転方向へ回転させることによって、前記エンジンの停止位置を調整する、
電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車が記載されている。この電気自動車には、発電モータと、発電モータを動かすエンジンとが搭載されている。発電モータは、バッテリのSOCが低下した場合に力行運転することによって、エンジンを始動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-52500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンを始動する際にエンジンの回転位置が適正でないと、エンジンに供給した燃料が着火しなかったり、始動完了までに時間がかかったりする。そこで、エンジンを始動する前に、エンジンの始動に用いるモータを使って、エンジンの回転位置を適正な位置に調整することが考えられる。しかしながら、エンジンの始動前はバッテリのSOCが低下しているため、回転位置の調整のために、バッテリの電力を消費することは好ましくない。
【0005】
ここに開示する技術は、エンジンの回転位置を適正な位置にして、エンジンを始動する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する技術は、電動車両の制御装置に係る。この電動車両の制御装置は、
車両の駆動輪に機械的に接続された走行用の第1モータと、
前記第1モータに電気的に接続されかつ、前記第1モータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリに電気的に接続された発電用の第2モータと、
前記第2モータが機械的に接続されたシャフトを有しかつ、前記第2モータを動かす駆動力を発生するエンジンと、
前記エンジンを運転させる第1コントローラと、
前記第2モータを運転させる第2コントローラと、
前記バッテリのSOCに関係する電気信号を、前記第2コントローラへ出力するセンサと、を備え、
前記第2コントローラは、
前記センサの電気信号に基づいて前記バッテリのSOCが低下した場合に、前記第2モータを力行運転させることによって前記エンジンを始動させる始動制御部と、
前記エンジンの始動後に、前記バッテリが充電されるように前記第2モータを発電運転させる発電制御部と、
前記センサの電気信号に基づき前記バッテリのSOCが高くなって前記第2モータの発電運転を終了する場合に、前記第1コントローラが前記エンジンを停止したことに引き続いて、前記第2モータを力行運転させることによって前記エンジンの停止位置を調整する停止位置制御部と、を有している。
【0007】
この構成によると、電動車両は、第1モータ、第2モータ、及び、エンジンを備えている。第1モータは、電動車両の走行用のモータである。第2モータは、発電用のモータであり、エンジンが運転することによって、第2モータは発電をする。また、第2モータとエンジンとは機械的に接続されていて、第2モータは、エンジンを始動させる際には、力行運転する。
【0008】
エンジンを運転させる第1コントローラと、第2モータを運転させる第2コントローラとは互いに独立している。第2コントローラは、始動制御部と、発電制御部と、停止位置制御部とを有している。バッテリのSOCが低下すると、始動制御部は、第2モータを使ってエンジンを始動させる。発電制御部は、第2モータを発電運転させる。このことによって、バッテリが充電される。
【0009】
バッテリのSOCが高くなれば、第2モータは発電運転を終了する。停止位置制御部は、第1コントローラがエンジンを停止したことに引き続いて、第2モータを力行運転させる。このことによって、停止位置制御部は、エンジンの停止位置を調整する。エンジンは、次回の始動時に、適正な回転位置から始動できる。エンジンが速やかに始動すると共に、燃費性能の低下及び排気エミッション性能の低下が抑制できる。
【0010】
停止位置制御部はまた、エンジンが発電のための運転を終了したタイミングで、エンジンの回転位置を調整する。このタイミングでは、バッテリのSOCが高いため、回転位置の調整のためにバッテリの電力を消費することが許容できる。
【0011】
前記第1コントローラと前記第2コントローラとは通信線を介して互いに接続され、
前記第1コントローラは、前記エンジンの位置情報を、前記通信線を介して前記第2コントローラへ送信し、
前記第2コントローラは、前記第1コントローラからの前記位置情報に基づいて、前記エンジンの停止位置を調整する、としてもよい。
【0012】
エンジンと第2モータとは機械的に接続されているため、エンジンの回転位置と第2モータの回転位置との相対位置関係は、常に一定である。第2コントローラは、第1コントローラからの、エンジンの位置情報に基づいて、エンジン及び第2モータの位置情報を取得することができる。第2コントローラが、第1コントローラからの前記位置情報に基づいてエンジンの停止位置を調整することによって、第2コントローラは、エンジンの運転が終了した後に、エンジンの回転位置を、適正な位置に調整できる。
【0013】
前記第2コントローラは、前記第2モータが発電運転をしている最中の前記エンジンの位置情報を、前記第1コントローラから受信する、としてもよい。
【0014】
第2モータが発電運転をしている最中は、エンジンは安定的に回転している。第2コントローラは、第1コントローラから、エンジンの、正確な位置情報を取得できる。第2コントローラは、第2モータの発電運転中に取得したエンジンの位置情報に基づいて、停止したエンジンの位置情報を正確に把握できる。第2コントローラは、エンジンの運転が終了した後に、エンジンの回転位置を、適正な位置に調整できる。
【0015】
前記エンジンはロータリエンジンであり、
前記第2コントローラは、前記ロータリエンジンの前記シャフトを正回転方向へ回転させることによって、前記エンジンの停止位置を調整する、としてもよい。
【0016】
ロータリエンジンを逆回転させると、ロータに取り付けられたサイドシールの端と吸気ポートの開口部とが干渉して、サイドシールが破損してしまう恐れがある。
【0017】
第2コントローラは、ロータリエンジンの回転位置を調整する場合に、シャフトを正回転方向へ回転させる。これにより、サイドシールの破損が回避できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、前記の電動車両の制御装置は、エンジンの回転位置を適正な位置にして、エンジンを始動できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、例示的な電動車両の制御システムを示す。
図2図2は、例示的なロータリエンジンを示す。
図3図3は、例示的なバッテリ管理の手順を示す。
図4図4は、例示的なエンジン制御の手順を示す。
図5図5は、例示的なモータ制御の手順を示す。
図6図6は、例示的なロータリエンジンのサイドシールと吸気ポートとの干渉状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、電動車両の制御装置の実施形態が、図面を参照しながら説明される。ここで説明される電動車両の制御装置は、例示である。
【0021】
(電動車両の全体構成)
図1は、電動車両の制御システムを示している。電動車両1は、走行用の走行モータ11を備えている。走行モータ11は、減速機13を介して、駆動輪14、14に、機械的に接続されている。減速機13は、走行モータ11の出力を減速させる。駆動輪14、14に走行モータ11の出力が伝達されると、電動車両1が走行する。
【0022】
電動車両1は、高電圧バッテリ23を備えている。高電圧バッテリ23は、走行用の電力を蓄積する。高電圧バッテリ23は、例えばリチウムイオン電池である。
【0023】
走行モータ11は、第1インバータ21を介して、高電圧バッテリ23に、電気的に接続されている。走行モータ11と第1インバータ21とは、図1に破線で示すハーネス線を介して電気的に接続され、第1インバータ21と高電圧バッテリ23とは、ハーネス線を介して電気的に接続されている。走行モータ11は、高電圧バッテリ23からの電力供給を受けて力行運転する。走行モータ11はまた、電動車両1の減速時には発電運転をする。第1インバータ21は、走行モータ11の回生電力を、高電圧バッテリ23に供給する。高電圧バッテリ23は、走行モータ11の回生電力によって充電される。
【0024】
電動車両1には、レンジエクステンダ装置30が搭載されている。レンジエクステンダ装置30は、発電用の発電モータ12と、発電モータ12を運転する内燃機関とを備えている。ここに例示する電動車両1において、内燃機関は、ロータリエンジン3である。
【0025】
ロータリエンジン3のシャフトは、発電モータ12に機械的に接続されている。ロータリエンジン3が運転すると、発電モータ12は、発電運転をする。尚、ロータリエンジン3の構成は、後で詳述される。
【0026】
発電モータ12は、第2インバータ22を介して、高電圧バッテリ23に接続されている。発電モータ12と第2インバータ22とは、図1に破線で示すハーネス線を介して電気的に接続され、第2インバータ22と高電圧バッテリ23とは、ハーネス線を介して電気的に接続されている。第2インバータ22は、発電モータ12の発電電力を、高電圧バッテリ23へ供給する。高電圧バッテリ23は、発電モータ12の発電電力によって充電される。尚、後述するように、発電モータ12は、高電圧バッテリ23からの電力供給を受けて力行運転する場合もある。発電モータ12は、スタータとしても機能する。発電モータ12は、クランキングトルクをロータリエンジン3に付与することによってロータリエンジン3を始動させる。
【0027】
電動車両1は、エンジンECU(Electric Control Unit)25と、モータECU26と、バッテリECU27と、を備えている。エンジンECU25、モータECU26、及び、バッテリECU27はそれぞれ、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラである。各ECUは、中央演算処理装置(Central Processing Unit: CPU)と、メモリと、I/F回路と、を備えている。CPUは、プログラムを実行する。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成される。メモリはプログラム及びデータを格納する。I/F回路は、電気信号を入出力する。
【0028】
エンジンECU25、モータECU26、及び、バッテリECU27は、CAN(Car Area Network)通信線28を介して互いに接続されている。エンジンECU25、モータECU26、及び、バッテリECU27は、CAN通信線28を介して、相互に、信号を送信及び受信できる。
【0029】
エンジンECU25は、ロータリエンジン3に対して、二点鎖線で示す信号線を介して、電気的に接続されている。エンジンECU25は、ロータリエンジン3を制御する。エンジンECU25には、エキセン角センサSN1が接続されている。エキセン角センサSN1は、ロータリエンジン3の出力軸であるエキセントリックシャフト35の回転に関係する信号を出力する。エンジンECU25は、エキセン角センサSN1の信号に基づいて、ロータリエンジン3の回転位置の情報を取得できる。
【0030】
エンジンECU25は、機能ブロックとして、エンジン動作点設定部251及びエンジン制御部252を有している。エンジンECU25によるロータリエンジン3の制御の詳細は、後述する。
【0031】
モータECU26は、第1インバータ21及び第2インバータ22に対して、二点鎖線で示す信号線を介して、電気的に接続されている。モータECU26は、第1インバータ21を通じて、走行モータ11を制御する。モータECU26は、第2インバータ22を通じて、発電モータ12を制御する。
【0032】
モータECU26には、アクセル開度センサSN2、車速センサSN3、及び、モータ回転センサSN4が接続されている。アクセル開度センサSN2は、アクセルペダルの踏み込み量に対応する信号を、モータECU26に出力する。車速センサSN3は、電動車両1の速度に対応する信号を、モータECU26に出力する。
【0033】
モータ回転センサSN4は、発電モータ12の回転に関係する信号を、モータECU26に出力する。モータECU26は、モータ回転センサSN4の信号に基づいて、発電モータ12が機械的に接続された、ロータリエンジン3のエキセントリックシャフト35の回転角度を把握できる。
【0034】
モータ回転センサSN4はまた、走行モータ11の回転に関する信号を、モータECU26に出力する。
【0035】
モータECU26は、機能ブロックとして、発電モータ制御部261及び走行モータ制御部262を有している。発電モータ制御部261は、始動制御部263、発電制御部264、及び、停止位置制御部265を有している。発電モータ制御部261による発電モータ12の制御の詳細は、後述する。
【0036】
走行モータ制御部262は、アクセル開度センサSN2、車速センサSN3及びモータ回転センサSN4の信号に基づいて、走行モータ11を制御する。それによって、電動車両1は、運転者のアクセルペダルの操作に応じた加速又は減速を行う。
【0037】
バッテリECU27には、電圧/電流センサSN5が接続されている。電圧/電流センサSN5は、高電圧バッテリ23の出力電圧及び出力電流に関係する信号を、バッテリECU27に出力する。バッテリECU27は、機能ブロックとして、SOC算出部271及び発電電力算出部272を有している。SOC算出部271は、電圧/電流センサSN5からの信号に基づいて、高電圧バッテリ23のSOC(State Of Charge)を算出する。発電電力算出部272は、高電圧バッテリ23のSOCに基づいて、高電圧バッテリ23の充電が必要な場合、目標の発電量を算出する。
【0038】
(ロータリエンジンの構成)
図2は、ロータリエンジン3を例示している。図2は、ロータリエンジン3を前から見た場合の内部構成を例示している。ロータリエンジン3の前後方向は、エキセントリックシャフト35が軸方向であって、図2の紙面に直交する方向である。
【0039】
ロータリエンジン3は、一つのロータ34と、ロータ収容室31とを有している。ロータ収容室31は、ロータハウジング32と、サイドハウジング33とによって形成されている。ロータハウジング32は、トロコイド内周面321を有している。ロータ34は、ロータ収容室31に、収容されている。ロータ34は、概略三角形状である。ロータ収容室31は、ロータ34によって、第1室361、第2室362、及び、第3室363の3つの作動室に区画される。
【0040】
エキセントリックシャフト35は、ロータ収容室31を貫通するように設けられている。ロータ34は、エキセントリックシャフト35に対して、遊星回転運動するように支持されている。ロータ34は、三つの頂部がトロコイド内周面321に沿って移動するようにエキセントリックシャフト35の周囲を回転する。
【0041】
図6に拡大して示すように、ロータ34の各頂部には、アペックスシール341が取り付けられている。また、各アペックスシール341の前後両端部には、略円柱状のコーナーシール342が設けられている。さらに、ロータ34の前後両側面には、サイドシール343が設けられている。サイドシール343は、コーナーシール342同士をロータ34の外周縁と略平行に連結する。
【0042】
アペックスシール341は、ロータハウジング32のトロコイド内周面321に当接する。このことによって、アペックスシール341は、作動室の気密を保つ。サイドシール343は、サイドハウジング33に当接する。このことによって、サイドシール343は、作動室の気密を保つ。コーナーシール342は、サイドシール343とアペックスシール341との接合部分の気密を保つ。
【0043】
図2に矢印で示すロータ34の回転に伴い、第1室361、第2室362、及び、第3室363がエキセントリックシャフト35の回りに変移し、第1室361、第2室362、及び、第3室363のそれぞれにおいて吸気、圧縮、膨張、及び排気の各行程が行われる。このことによって発生する回転力が、エキセントリックシャフト35から出力される。
【0044】
より詳細に、ロータ34は、図2における時計回り方向に回転する。ロータ収容室31は、回転軸心Xを通る長軸Y及び短軸Zにより、左上側領域、右上側領域、右下側領域、及び、左下側領域に分けられる。各作動室は、左上側領域において概ね吸気行程を行い、右上側領域において概ね圧縮行程を行い、右下側領域において概ね膨張行程を行い、左下側領域において概ね排気行程を行う。
【0045】
ロータハウジング32には、インジェクタ37、第1点火プラグ381、及び、第2点火プラグ382が取り付けられている。インジェクタ37は、ロータハウジング32の頂部に取り付けられている。インジェクタ37は、吸気行程中、又は、圧縮行程中の作動室内に燃料を噴射する。
【0046】
第1点火プラグ381は、ロータハウジング32の右側壁部に取り付けられている。第2点火プラグ382も、ロータハウジング32の右側壁部に取り付けられている。第2点火プラグ382は、第1点火プラグ381よりも、ロータ34の進み側に位置している。第1点火プラグ381及び第2点火プラグ382はそれぞれ、圧縮行程中に、作動室内の混合気に点火する。
【0047】
サイドハウジング33には、吸気ポート391及び排気ポート392が開口している。吸気ポート391の開口部は、ロータ収容室31の左上側領域に位置している。吸気ポート391は、サイドハウジング33の内部を、この開口部から水平方向左方に向かって略直線状に延びている。吸気ポート391の開口部は、ロータ34の回転に伴って開閉する。吸気ポート391は、吸気行程中の作動室内に連通する。吸気ポート391は、吸気通路に接続されている。吸気通路には、スロットル弁394が配設されている。スロットル弁394は、ロータリエンジン3に供給する空気量を調整する絞り弁である。
【0048】
排気ポート392の開口部は、ロータ収容室31の左下側領域に位置している。排気ポート392の開口部は、吸気ポート391の開口部の下方に位置している。排気ポート392は、サイドハウジング33の内部を、この開口部から水平方向左方に向かって略直線状に延びている。排気ポート392の開口部は、ロータ34の回転に伴って開閉する。排気ポート392は、排気行程中の作動室内に連通する。
【0049】
(電動車両の発電制御)
次に、図3図5を参照しながら、電動車両1の発電制御を説明する。図3のフローチャートは、バッテリECU27が実行する高電圧バッテリ23の管理手順を示す。
【0050】
先ずスタート後のステップS51において、バッテリECU27のSOC算出部271は、電圧/電流センサSN5の信号に基づいて、高電圧バッテリ23のSOCを算出する。続くステップS52において、バッテリECU27は、算出したSOCが、第1基準SOC1未満であるか否かを判断する。ステップS52がYESの場合、プロセスはステップS53へ進む。バッテリECU27は、高電圧バッテリ23の充電が必要と判断する。ステップS52がNOの場合、プロセスはステップS51へ戻る。
【0051】
ステップS53において、バッテリECU27は、SOCの減少率を算出し、続くステップS54において、バッテリECU27の発電電力算出部272は、算出したSOCの減少率に応じて目標発電量を算出する。バッテリECU27は、減少率が高いほど目標発電量を大にする。
【0052】
目標発電量を算出すれば、バッテリECU27は、ステップS55において、CAN通信線28を通じて、エンジンECU25及びモータECU26のそれぞれに、発電要求を出力する。
【0053】
ステップS56において、バッテリECU27は、エンジンECU25からの情報に基づき、ロータリエンジン3が始動したか否かを判断する。ロータリエンジン3の始動が完了するまで、プロセスはステップS56を繰り返し、ロータリエンジン3の始動が完了すれば、プロセスはステップS57に進む。
【0054】
ロータリエンジン3が始動して、発電モータ12による発電が開始されれば、バッテリECU27のSOC算出部271は、ステップS57において、高電圧バッテリ23のSOCを算出する。続くステップS58において、バッテリECU27は、算出したSOCが、第2基準SOC2を超えた否かを判断する。ステップS58がNOの場合、プロセスはステップS57に戻り、バッテリECU27は、発電を継続させる。ステップS58がYESの場合、プロセスはステップS59に進む。ステップS59において、バッテリECU27は、高電圧バッテリ23の充電が完了したとして、CAN通信線28を通じて、エンジンECU25及びモータECU26のそれぞれに、発電終了を出力する。
【0055】
図4は、エンジンECU25が実行する、ロータリエンジン3の制御手順を示す。先ずスタート後のステップS61において、エンジンECU25は、バッテリECU27からの発電要求があったか否かを判断する。発電要求がない場合、プロセスはステップS61を繰り返し、発電要求があった場合、プロセスはステップS62へ進む。
【0056】
ステップS62において、エンジンECU25は、バッテリECU27が算出した目標発電量を読み込み、続くステップS63において、エンジンECU25のエンジン動作点設定部251は、目標発電量に基づいて、ロータリエンジン3の動作点を設定する。また、エンジンECU25のエンジン制御部252は、ステップS64において、設定した動作点においてロータリエンジン3が運転するよう、スロットル弁394の開度及び燃料噴射量を設定する。
【0057】
ステップS65において、エンジン始動制御が実行される。このエンジン始動制御は、発電モータ12をスタータとして用いて実行される。従って、エンジン始動制御は、エンジンECU25及びモータECU26の協調により実行される。モータECU26の始動制御部263は、発電モータ12を力行運転させる。ロータリエンジン3には、クランキングトルクが付与される。
【0058】
ステップS66において、エンジンECU25は、ロータリエンジン3の始動が完了したか否かを判断する。始動が完了していない場合、プロセスはステップS65に戻り、始動が完了した場合、プロセスはステップS67に進む。
【0059】
ステップS67において、エンジンECU25のエンジン制御部252は、ロータリエンジン3を、設定した動作点において運転させる。続くステップS68において、エンジンECU25は、発電停止が指示されたか否かを判断する。発電停止が指示されない間、プロセスはステップS67へ戻り、エンジン制御部252は、ロータリエンジン3の運転を継続する。発電停止が指示されれば、プロセスはステップS68からステップS69へ進む。ステップS69において、エンジンECU25は、ロータリエンジン3を停止する。
【0060】
(発電時のモータ制御)
図5のフローチャートは、モータECU26が実行する、発電時の発電モータ12の制御手順を示す。先ずスタート後のステップS41において、モータECU26は、バッテリECU27からの発電要求による発電中であるか否かを判断する。発電中でない場合、プロセスはステップS41を繰り返し、発電中である場合、プロセスはステップS42へ進む。
【0061】
ステップS42において、モータECU26の発電制御部264は、バッテリECU27が算出した目標発電量を読み込み、続くステップS43において、発電制御部264は、目標発電量に基づいて、発電モータ12の動作点を設定する。また、発電制御部264は、ステップS44において、設定した動作点において発電モータ12が動作するよう、第2インバータ22を制御する。
【0062】
ステップS45において、モータECU26は、エンジンECU25からロータリエンジン3の回転位置情報を入手する。モータECU26は、ステップS46において、入手した回転位置情報に基づきロータリエンジン3及び発電モータ12の回転が安定しているか否かを判定する。回転が安定していない場合、プロセスはステップS45に戻り、回転が安定している場合、プロセスはステップS47に進む。
【0063】
ステップS47において、モータECU26は、ロータリエンジン3の回転位置と発電モータ12の回転位置との相対位置関係を確定する。そして、ステップS48において、モータECU26は、エンジンECU25のサンプリング周波数と、モータECU26のサンプリング周波数との差、及び、発電モータ12の回転数に基づいて、ロータリエンジン3の回転位置と発電モータ12の回転位置との相対位置関係の補正を行う。一般的に、エンジンECU25のサンプリング周波数は低く、モータECU26のサンプリング周波数は高い。サンプリング周波数の差に対応する補正を行うことにより、モータECU26は、ロータリエンジン3の回転位置と発電モータ12の回転位置との相対位置関係を精度良く確定できる。
【0064】
続くステップS49において、モータECU26は、CAN通信線28を通じた通信の遅延時間に基づいて、ロータリエンジン3の回転位置と発電モータ12の回転位置との相対位置関係を補正する。これにより、モータECU26は、ロータリエンジン3の回転位置と発電モータ12の回転位置との相対位置関係を、さらに精度良く確定できる。
【0065】
そして、ステップS410においてモータECU26は、モータ回転センサSN4の出力信号に基づいて、ロータリエンジン3の回転位置をモニタリングする。ロータリエンジン3と発電モータ12とは機械的に接続されていると共に、前述したステップS47~S49において、ロータリエンジン3の回転位置と発電モータ12の回転位置との相対位置関係が確定されている。このため、モータECU26は、モータ回転センサSN4の出力信号に基づいて、ロータリエンジン3の回転位置を、精度良くモニタリングすることができる。
【0066】
ステップS411において、モータECU26の発電制御部264は、発電停止が指示されたか否かを判断する。発電停止が指示されない間、プロセスはステップS411を繰り返す。発電モータ12は、発電運転を継続する。発電停止が指示されれば、プロセスはステップS412へ進む。ステップS412において、発電制御部264は、インバータ制御を停止する。
【0067】
ステップS413において、モータECU26は、ロータリエンジン3及び発電モータ12の回転が停止したか否かを判定する。ロータリエンジン3及び発電モータ12の回転が停止するまで、プロセスはステップS413を繰り返す。ロータリエンジン3及び発電モータ12の回転が停止すれば、プロセスはステップS414へ移行する。
【0068】
ステップS414において、モータECU26は、ロータリエンジン3の停止位置を確認する。このとき、モータECU26は、ロータリエンジン3及び発電モータ12が停止に至るまでの間に出力された、モータ回転センサSN4の信号に基づいて、ロータリエンジン3の停止位置を確認する。前述したように、ロータリエンジン3及び発電モータ12が安定的に回転をしている間に、ロータリエンジン3の回転位置と発電モータ12の回転位置との相対位置関係が確定されているため、モータECU26は、モータ回転センサSN4の信号に基づいて、ロータリエンジン3の停止位置を確認できる。ロータリエンジン3の停止直前は、エキセン角センサSN1の出力が安定しないため、エンジンECU25が出力するエンジンの回転位置の情報は精度が低い。ロータリエンジン3の回転位置と発電モータ12の回転位置との相対位置関係が、予め確定されることによって、モータECU26は、モータ回転センサSN4の信号に基づいて、ロータリエンジン3の停止位置を、正確に把握できる。
【0069】
ステップS415において、モータECU26の停止位置制御部265は、停止したロータリエンジン3の回転位置と、ロータリエンジン3の適正な停止位置との差を算出する。ここで、ロータリエンジン3の適正な停止位置とは、次回、ロータリエンジン3を始動させる際に、排気エミッション性能が低下せずに、少ない燃料量によってロータリエンジン3が速やかに始動完了するような停止位置を意味する。つまり、停止しているロータリエンジン3の回転位置が適正な停止位置からずれていると、作動室に噴射した燃料が燃焼しない、又は、ほとんど燃焼しないで、排出されることにより、排気エミッション性能が低下してしまう。また、噴射した燃料が燃焼しない分、燃料が無駄になると共に、ロータリエンジン3の始動完了も遅れてしまう。
【0070】
続くステップS416において、停止位置制御部265は、ロータリエンジン3の停止位置と、ロータリエンジン3の適正な停止位置との差がなくなるように、発電モータ12を力行運転させ、それによって、ロータリエンジン3の停止位置を変更する。高電圧バッテリ23の充電が完了したタイミングで、発電モータ12を使ってロータリエンジン3の停止位置が変更されるため、停止位置の調整のために高電圧バッテリ23の電力を消費することが許容できる。
【0071】
尚、ロータリエンジン3の停止位置と、ロータリエンジン3の適正な停止位置との差がない場合、停止位置制御部265は、ロータリエンジン3の停止位置の変更ステップをスキップする。
【0072】
ロータリエンジン3の停止位置の調整に際し、停止位置制御部265は、ロータリエンジン3が正回転の方向に回転するよう、発電モータ12を力行運転させる。これは、ロータリエンジン3を逆回転の方向に回転させると、サイドシール343の端と吸気ポート391の開口部とが干渉することにより、サイドシール343が破損する恐れがあるためである。
【0073】
図6は、サイドシール343の端と、吸気ポート391の開口部との干渉状態を例示している。サイドシール343は、ロータ34の側面に取り付けられている。サイドシール343は、概略三角形状のロータ34の頂部と頂部とを掛け渡すように、三角形状のロータ34の外周縁に沿って配設されている。
【0074】
ロータリエンジン3が正回転をしている場合の、サイドシール343の先端の軌跡は、図6の上図に二点鎖線の矢印で例示するように、吸気ポート391の開口部の縁に交差する軌跡にならない。ロータリエンジン3が正回転をしている場合、サイドシール343の先端と吸気ポート391の開口部とは干渉しない。しかしながら、ロータリエンジン3が逆回転をしている場合の、サイドシール343の先端の軌跡は、図6の上図に一点鎖線の矢印で例示するように、吸気ポート391の開口部の縁に交差する軌跡になる。尚、ロータ34が逆回転をしている場合のサイドシール343の先端は、正回転をしている場合のサイドシール343の先端に対して逆側の端である。
【0075】
図6の下図は、上図のA-A断面図である。図6の下図に例示するように、ロータ34の側面には、溝344が形成されている。この溝344内に配設されたスプリング345が、サイドシール343をサイドハウジング33の方へ押している。このため、サイドシール343の先端が、吸気ポート391の開口部と重なると、サイドシール343の先端は、スプリング345に押されて吸気ポート391の内方、つまり、図6の下図において紙面の上方へ突き出る。
【0076】
そのため、ロータ34の逆回転によって、サイドシール343の先端の軌跡が、吸気ポート391の開口部の縁に交差すると、突き出たサイドシール343の先端が、吸気ポート391の開口部の縦壁393に衝突して、サイドシール343が破損する恐れがある。
【0077】
そこで、モータECU26の停止位置制御部265は、ロータリエンジン3の停止位置を調整する場合、ロータ34が正回転の方向へ回転するよう、発電モータ12を力行運転させる。これにより、サイドシール343の破損が回避される。
【0078】
尚、ロータ34が正回転をしている場合にも、サイドシール343の後端は、吸気ポート391の開口部と重なると、スプリング345に押されて吸気ポート391の内方へ突き出る。しかしながらこの場合、サイドシール343の後端は、図6の下図において紙面の左から右へ移動するようになるから、サイドシール343の後端が、吸気ポート391の開口部の縁と衝突することはない。
【0079】
尚、前述した各フローは、ステップの順番を定めているとは限らない。ステップの順番は、可能な範囲で、入れ替えることができ、複数のステップの処理が、同時に実行できる場合もある。また、各フローにおいて、一部のステップを省略することができ、新たなステップを追加することもできる。
【0080】
また、図1に示すシステムは一例であり、ここに開示する技術が適用可能なシステムは、図1のシステムに限定されない。また、ここに開示する技術は、ロータリエンジンの制御システムに広く適用が可能であり、ロータリエンジンの構造は、図2の構造に限定されない。
【0081】
また、電動車両1には、内燃機関としてレシプロエンジンが搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 電動車両
11 走行モータ(第1モータ)
12 発電モータ(第2モータ)
14 駆動輪
23 高電圧バッテリ
25 エンジンECU(第1コントローラ)
26 モータECU(第2コントローラ)
263 始動制御部
264 発電制御部
265 停止位置制御部
28 CAN通信線
3 ロータリエンジン
35 エキセントリックシャフト
SN5 電圧/電流センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6