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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183660
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】揮散装置及び揮散装置キット
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091097
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 孟
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA03
4C180CA06
4C180GG12
4C180GG19
4C180HH10
(57)【要約】
【課題】薬液の揮散効率を低下させることなく見栄えを良くすることができる揮散装置を提供する。
【解決手段】本発明の揮散装置10は、上端に開口27を備え、揮発性を有する薬液Yを収容した容器2と、開口27を介して容器2内に挿入配置され、薬液Yを吸い上げて揮散させる揮散体4と、複数の揮散孔62を備えた筒状の周壁64及びこの周壁64の軸方向の上端65に設けた天壁66を有し、揮散体4を覆うカバー6と、を備える。周壁64の揮散孔62以外の目隠し部分80は、周壁64の上端65と下端67を軸方向に直線状につないで連続した複数の縦部分82と、周壁64の上端65及び下端67から離間した位置で周壁64の周方向の全周にわたって連続した環状の横部分84と、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に開口を備え、揮発性を有する薬液を収容した容器と、
前記開口を介して前記容器内に挿入配置され、前記薬液を吸い上げて揮散させる揮散体と、
複数の揮散孔を備えた筒状の周壁及びこの周壁の軸方向の上端に設けた天壁を有し、前記揮散体を覆うカバーと、を備え、
前記周壁の前記揮散孔以外の目隠し部分が、当該周壁の前記上端と下端を前記軸方向に直線状につないで連続した複数の縦部分と、当該周壁の前記上端及び前記下端から離間した位置で当該周壁の周方向の全周にわたって連続した環状の横部分と、を含む、
揮散装置。
【請求項2】
前記目隠し部分は、第1部分とこの第1部分より小さい第2部分を前記軸方向につなげた連結部分を、前記第1部分と前記第2部分が互い違いになるように前記周方向に複数並べて、前記周方向に隣接する前記第1部分同士を環状につなげた形状を有する、
請求項1の揮散装置。
【請求項3】
前記複数の縦部分は、前記連結部分の前記第1部分及び前記第2部分の一部を含む、
請求項2の揮散装置。
【請求項4】
前記横部分は、前記周方向に並んだ全ての前記第1部分の一部を含む、
請求項2又は請求項3の揮散装置。
【請求項5】
前記横部分は、前記周壁の前記上端と前記下端の間の中心を含む位置にある、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項の揮散装置。
【請求項6】
前記横部分の前記軸方向の幅Wは、前記周壁の前記上端と前記下端の間の長さをTとした場合、
T/8<W<T/3
を満たす幅である、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項の揮散装置。
【請求項7】
前記揮散体は、前記軸方向に延びた板状部材により形成されている、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項の揮散装置。
【請求項8】
前記揮散体は、前記軸方向に延びた2枚の板状部材を十字状に組み合わせて形成されている、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項の揮散装置。
【請求項9】
前記容器は、前記開口を前記上端に備える首部を有し、前記首部の外周部に前記開口を密閉するキャップを螺合するためのネジ山を有する、
請求項1の揮散装置。
【請求項10】
上端に開口を備え、揮発性を有する薬液を収容し、前記開口を着脱可能なキャップにより密閉した容器と、
前記開口を介して前記容器内に挿入配置可能に形成され、前記薬液を吸い上げて揮散させるための揮散体と、
複数の揮散孔を備えた筒状の周壁及びこの周壁の軸方向の上端に設けた天壁を有し、前記揮散体を覆うためのカバーと、を備え、
前記周壁の前記揮散孔以外の目隠し部分は、当該周壁の前記上端と下端を前記軸方向に直線状につないで連続した複数の縦部分と、当該周壁の前記上端及び前記下端から離間した位置で当該周壁の周方向の全周にわたって連続した環状の横部分と、を含む、
揮散装置キット。
【請求項11】
前記容器は、前記開口を前記上端に備える首部を有し、前記首部の外周部に前記キャップを螺合するためのネジ山を有する、
請求項10の揮散装置キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、芳香剤などの揮発性を有する薬液を揮散させる揮散装置及び揮散装置キットに関する。
【背景技術】
【0002】
揮散装置は、例えば、薬液を収容した容器と、容器の開口に挿し込まれる揮散体と、揮散体を覆うカバーと、を備える。この種の揮散装置は、例えば、薬液を収容した容器の開口を密閉するようにキャップを取り付けて、キャップの上からカバーを嵌め、揮散体とともに箱詰めして揮散装置キットとして流通される。
【0003】
この揮散装置の使用を開始する際には、カバー及びキャップを取り外して容器の開口に揮散体を差し込み、揮散体の先端を薬液に浸漬し、開口から突出した揮散体の後端を覆うように容器にカバーを取り付ける。揮散体は、例えば、2枚の厚紙を十字状に組み合わせて組み立てる。カバーは、揮散孔として、例えば、軸方向に延びた複数本のスリットを周方向に等間隔で備える。
【0004】
容器に収容した薬液は、揮散体によって開口を介して容器の外へ吸い上げられる。揮散体によって吸い上げられた薬液は、カバーの複数本のスリットを介して揮散装置の外部へ揮散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-99194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カバーのスリットの本数を多くしたりスリットの幅を広げたりして揮散孔の開口面積を大きくすると、揮散体に接触して流れる空気の量を多くすることができ、薬液の揮散効率を高めることができる。反面、スリットの本数を多くしたりスリットの幅を広げたりすると、揮散体が揮散装置の外から見え易くなり、揮散装置の見栄えが悪くなる。
【0007】
また、上述した揮散装置キットのように、容器の開口をキャップで塞いだ状態で流通させる場合、キャップを取り外した後、容器の首部の外周にあるネジ山が露出する。このため、カバーのスリットの本数を多くしたりスリットの幅を広げたりすると、ネジ山が見え易くなり、揮散装置の見栄えが悪くなる。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、薬液の揮散効率を低下させることなく見栄えを良くすることができる揮散装置及び揮散装置キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の揮散装置の一態様は、上端に開口を備え、揮発性を有する薬液を収容した容器と、開口を介して容器内に挿入配置され、薬液を吸い上げて揮散させる揮散体と、複数の揮散孔を備えた筒状の周壁及びこの周壁の軸方向の上端に設けた天壁を有し、揮散体を覆うカバーと、を備える。周壁の揮散孔以外の目隠し部分は、周壁の上端と下端を軸方向に直線状につないで連続した複数の縦部分と、周壁の上端及び下端から離間した位置で周壁の周方向の全周にわたって連続した環状の横部分と、を含む。
【0010】
本発明の揮散装置キットの一態様は、上端に開口を備え、揮発性を有する薬液を収容し、開口を着脱可能なキャップにより密閉した容器と、開口を介して容器内に挿入配置可能に形成され、薬液を吸い上げて揮散させるための揮散体と、複数の揮散孔を備えた筒状の周壁及びこの周壁の軸方向の上端に設けた天壁を有し、揮散体を覆うためのカバーと、を備える。周壁の揮散孔以外の目隠し部分は、周壁の上端と下端を軸方向に直線状につないで連続した複数の縦部分と、周壁の上端及び下端から離間した位置で周壁の周方向の全周にわたって連続した環状の横部分と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、薬液の揮散効率を低下させることなく見栄えを良くすることができる揮散装置及び揮散装置キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る揮散装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1の揮散装置の組み立てキットの構成部品を示す斜視図である。
図3図3は、図1の揮散装置をF3-F3で切断した断面図である。
図4図4は、図1の揮散装置の揮散体を示す分解図である。
図5図5は、図1の揮散装置のカバーの周壁を平面状に展開した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1乃至図3に示すように、揮散装置10は、容器2、揮散体4、及びカバー6を備える。図2に示す揮散装置キット10´は、容器2、揮散体4、及びカバー6の他に、キャップ8を備える。
【0014】
容器2は、芳香剤などの揮発性を有する所定量の薬液Yを収容する。揮散体4は、薬液Yを容器2の外まで吸い上げて揮散させる。カバー6は、揮散体4の後端にある幅広部46及び垂片部48を覆う。カバー6は、複数の揮散孔62を有する。キャップ8は、薬液Yを収容した容器2の開口27を密閉する。揮散装置10を組み立てた後、キャップ8は不要となる。
【0015】
容器2は、胴部22、肩部24、及び首部26を有するいわゆるボトル状の容器である。容器2は、例えばガラス製である。容器2は、樹脂などの他の材料により形成することができる。胴部22は、略円筒状の周壁22a、及び周壁22aの軸方向の下端を塞いだ略円板状の底壁22bを一体に有する。
【0016】
首部26は、略円筒状であり、その上端に略円形の開口27を有する。首部26は、その外周面に、キャップ8を螺合するためのネジ山28を備える。肩部24は、首部26の下端と胴部22の上端の間に一体に設けられている。肩部24は、略円板状であり、首部26の下端と胴部22の上端をつなぐ。肩部24は、径方向外側に向けて下方に傾斜している。胴部22の上端と肩部24の間の外面側には、カバー6を取り付けるための略円環状の係合段部23が設けられている。
【0017】
図4に示すように、揮散体4は、例えば厚紙により形成した2枚の板状の吸液部材41、42(板状部材)を十字状に組み合わせることで組み立てることができる。組み立てた状態の揮散体4を図2に示す。吸液部材41、42は、切込み41a、42aの位置及び形状が異なる以外、略同じ構造を有する。よって、ここでは、一方の吸液部材41について主に説明し、同様に機能する構成に同一符号を付し、他方の吸液部材42の説明を省略する。
【0018】
吸液部材41は、容器2の上端にある開口27を介して容器2内に挿入可能な略矩形の軸部44、軸部44の上端に一体に設けた略矩形の幅広部46、及び幅広部46の下端に一体に設けた2つの略矩形の垂片部48、48を有する。また、吸液部材41は、吸液部材42と組み合わせるための切込み41aを備える。
【0019】
軸部44の挿入方向と直交する方向の幅は、容器2の開口27の内径よりわずかに小さい。軸部44の長さは、揮散体4を容器2の開口27に挿し込んだ図3の状態で、軸部44の先端(図示下端)が容器2の底壁22bの内面に接触する長さである。
【0020】
幅広部46は、開口27に挿通不能な幅を有し、その下端の中央に軸部44の上端を一体に接続している。幅広部46の幅は、後述するカバー6の略円筒形の周壁64の内径より小さい。幅広部46の上下方向の高さは、揮散体4を容器2に装着してカバー6を被せた図3の状態で幅広部46の上端がカバー6の天壁66の内面に接触しない高さである。
【0021】
2つの垂片部48は、幅広部46の下端の幅方向の両側に互いに離間して一体に垂設されている。各垂片部48の幅方向外側の端辺は、それぞれ、幅広部46の幅方向の両端辺と一直線になる。各垂片部48の幅広部46の下端からの突出長さは、揮散体4を容器2の開口27に挿し込んだ図3の状態で、各垂片部48の下端が容器2の肩部24に接触しない長さである。
【0022】
各垂片部48と軸部44の間には、それぞれ、容器2の首部26を挿入配置するための略矩形の凹部47が設けられている。揮散体4を容器2に装着した図3の状態で、各垂片部48の首部26側の端縁は、首部26(すなわちネジ山28)から離間する。
【0023】
吸液部材41の切込み41aは、幅広部46の上端から軸部44の上端を超えた位置まで延びている。切込み41aは、わずかに湾曲している。切込み41aの幅は、吸液部材42の厚みと略同じである。一方、吸液部材42の切込み42aは、軸部44の下端から上端に向けて軸部44の途中まで延びている。切込み42aも、わずかに湾曲している。切込み42aの幅は、吸液部材41の厚みと略同じである。
【0024】
2枚の吸液部材41、42を組み合わせる場合、吸液部材41の切込み41aの上端と吸液部材42の切込み42aの下端を位置合わせし、2つの切込み41a、42aを互いに嵌合させる。このとき、吸液部材41と吸液部材42が互いに直交する姿勢で2つの部材を組み合わせる。このように、2枚の吸液部材41、42を十字状に組み合わせると、図2に示すように、2枚の吸液部材41、42の幅広部46の上端が架空の同一平面に配置され、2枚の吸液部材41、42の軸部44の下端が架空の別の同一平面に配置される。
【0025】
吸液部材41の切込み41aが湾曲しているため、2枚の吸液部材41、42を図2のように組み合わせると、吸液部材42の幅広部46がわずかに湾曲する。また、吸液部材42の切込み42aが湾曲しているため、2枚の吸液部材41、42を図2のように組み合わせると、吸液部材41の軸部44がわずかに湾曲する。これにより、揮散体4の剛性が高められる。
【0026】
上記のように組み立てた揮散体4を容器2に挿し込むと、各吸液部材41、42の軸部44と幅広部46の間に設けた4つの係合爪49が容器2の首部26の上端内面に設けた係合溝26a(図3参照)に係合し、揮散体4が容器2に固定される。この状態で、2枚の吸液部材41、42の軸部44の下端が容器2の底壁22bの内面に接触する。これにより、揮散体4の軸部44の先端が薬液Yに浸漬され、薬液Yが揮散体4によって吸い上げられて薬液Yの揮散が開始される。
【0027】
カバー6は、略円筒状の周壁64、及び周壁64の軸方向の上端65に設けた略円板状の天壁66を一体に備える。周壁64の外径は容器2の胴部22の外径と略同じであり、カバー6を図1に示すように容器2に取り付けると、揮散装置10の外形は略円筒形状となる。
【0028】
周壁64及び天壁66は、それぞれ、複数の揮散孔62を備える。本実施形態では天壁66にも揮散孔62を設けたが、揮散孔62は少なくとも周壁64に設ければよい。揮散孔62の大きさ及び形状は、人の指を挿通不能な大きさ及び形状に形成されている。揮散孔62の形状及びレイアウト(すなわち周壁64の構造)については後に詳述する。
【0029】
周壁64の下端67側には、容器2の係合段部23の外側に重なる所定幅の略円筒形の縁部64aが設けられている。縁部64aには揮散孔62が設けられていない。縁部64aは、周壁64の全周にわたって連続している。縁部64aの内面側には、容器2の係合段部23に係合する複数の係合爪64b(図3参照)が周方向に互いに離間して設けられている。
【0030】
揮散装置キット10´は、所定量の薬液Yを収容した容器2の開口27をキャップ8により密閉し、この容器2にカバー6を取り付け、2枚の吸液部材41、42を一緒に箱詰めして流通される。そして、揮散装置10を組み立てる場合、容器2の首部26に螺合されているキャップ8を取り外し、2枚の吸液部材41、42を十字状に組み合わせた揮散体4の軸部44を、容器2の開口27に差し込んで、揮散体4の先端を薬液Yに浸す。さらに、揮散体4の後端側を覆うようにカバー6を容器2の上に被せて、カバー6の係合爪64bを容器2の係合段部23に係合し、カバー6を容器2に取り付ける。この状態を図1に示す。
【0031】
カバー6に設けた複数の揮散孔62は、カバー6の中に空気を取り込み、揮散体4によって吸い上げた薬液Yの揮散効率を高めるよう機能する。反面、揮散効率を高めるため揮散孔62の開口率を大きくし過ると、カバー6の外側から内部の揮散体4や容器2の首部26のネジ山28などが見え易くなり、揮散装置10の見栄えが悪くなり、美観が損なわれる可能性が考えられる。
【0032】
例えば、上述した従来の揮散装置のように、カバーの周壁に軸方向に延びた複数本のスリット状の揮散孔を設けた場合、見る角度によっては、本実施形態の揮散装置10の揮散体4のように上下方向の縁を多く有する揮散体4をカバーの外側から見え難くする効果が期待できる。しかし、容器2の首部26に設けたネジ山28は、軸方向と交差する横方向に延びているため、従来のように縦方向に延びたスリット状の揮散孔ではネジ山28が目立ってしまう。特に、スリット状の揮散孔の本数を多くしたり幅を広くしたりすると、このような不具合が顕著になる。
【0033】
図5は、本実施形態の揮散装置10のカバー6の周壁64を平らな状態に展開した図である。
周壁64の揮散孔62以外の残り全ての部分80は、上述したように、カバー6の内部にある構造物を見え難くする目隠し部分として機能する。つまり、この目隠し部分80の形状を、カバー6の内部にある構造物の形状に合わせて工夫することにより、カバー6の内側にある構造物を見え難くすることができる。よって、本実施形態では、カバー6の周壁64の構造(すなわち複数の揮散孔62の形状及びレイアウト)を図5に示す形状に設計した。
【0034】
周壁64の目隠し部分80は、木葉のような形状を有する複数の第1部分86、及び雫のような形状を有する複数の第2部分88を部分的につなげた形状を有する。言い換えると、複数の揮散孔62は、これら複数の第1部分86及び複数の第2部分88の間に設けられている。第1部分86の面積は第2部分88の面積より大きい。第1部分86の表面には、葉脈の模様が形成されている。
【0035】
第1部分86と第2部分88は周壁64の軸方向(図示上下方向)に一直線状に一対一でつながっている。第1部分86と第2部分88がつながった連結部分87は、上下の向きを互い違いにして周壁64の周方向(図示左右方向)に並んでいる。本実施形態では、14個の連結部分87を周方向に互い違いに並べた。そして、周方向に隣接した2つの連結部分87の第1部分86同士が周方向に部分的につながっている。各連結部分87の上端及び下端は、それぞれ、周壁64の上端65及び下端67につながっている。
【0036】
見方を変えると、周壁64の目隠し部分80は、複数の直線状の縦部分と環状の横部分を含む。複数の縦部分は、図5に破線で囲んだ軸方向に細長い複数の矩形の領域82内にある周壁64の一部であり、それぞれ、第1部分86の一部及び第2部分88の一部を含むとともに各連結部分87の周方向の中心を含む部分である。以下、この部分を縦部分82と称する。各縦部分82は、周壁64の上端65と下端67を軸方向に直線状につないで連続した部分であり、揮散孔62が設けられていない部分である。
【0037】
また、環状の横部分は、図5に破線で囲んだ周方向に延びた矩形の領域84内にある周壁64の一部であり、各連結部分87の第1部分86同士を周方向に環状につないだ部分である。以下、この部分を横部分84と称する。横部分84は、周壁64の上端65及び下端67からそれぞれ離間した位置で周壁64の周方向の全周にわたって連続した部分であり、揮散孔62が設けられていない部分である。横部分84は、周壁64の上端65と下端67の間の中心を含む位置に設けられている。
【0038】
本実施形態では、カバー6の天壁66にも上述した連結部分87に似た形状の目隠し部分を設けているが、天壁66に揮散孔62を設ける構成は本発明に必須の構成ではない。しかしながら、本実施形態のように天壁66に複数の揮散孔62を設けた場合であっても、揮散孔62以外の天壁66の部分の形状を工夫することによって、揮散体4やネジ山28を見え難くする目隠し効果を高めることができる。
【0039】
以下、上述した周壁64の目隠し部分80の縦部分82及び横部分84による目隠し効果について説明する。
【0040】
例えば、揮散装置10をカバー6の真横から見た場合、複数の揮散孔62を介して、揮散体4の一部、及び首部26のネジ山28の一部が外から見えてしまう可能性がある。しかし、カバー6の周壁64が複数の縦部分82を有するため、揮散体4の軸方向に延びた構造物(例えば、吸液部材41、42の幅広部46の径方向外側の縁部など)に縦部分82がちょうど重なると、この軸方向の構造物が全く見えなくなり、揮散体4の外形が分かり難くなる。また、揮散体4の軸方向に延びた構造物にカバー6の縦部分82がちょうど重ならなくても、周壁64の木葉形状の第1部分86によって軸方向の構造物の一部が必ず隠れるため、揮散体4が外部から見え難くなる。
【0041】
しかし、容器2の首部26の外周面にあるネジ山28は、軸方向と交差する方向に設けられているため、仮に周壁64の縦部分82だけがネジ山28に重なって見えたとしても、ネジ山28は外部から見え易くなってしまう。また、ネジ山28の外側に重なる吸液部材41、42の垂片部48は薄い板状の構造物であるため、ネジ山28が揮散体4によって隠れる部分はほとんど無い。
【0042】
これに対し、本実施形態の揮散装置10は、カバー6の周壁64の横部分84が周壁64の全周にわたって連続して設けられているため、この横部分84によってネジ山28が部分的に隠されて外部から見え難くなる。このような横部分84による目隠し効果は、横部分84が周壁64の全周にわたって連続して設けられているため、揮散装置10を周方向のどの位置から見ても同様に得ることができる。
【0043】
また、上記のような横部分84による目隠し効果は、横部分84の軸方向の幅Wを大きくすることで高めることができる。しかし、横部分84の幅Wを大きくすると、その分、揮散孔62が小さくなって薬液Yの揮散効率が低下する。よって、本実施形態では、薬液Yの揮散効率を十分に満足させた上で揮散装置10の見栄えを良くすることができるように、横部分84の幅Wを周壁64の軸方向の長さTの1/8から1/3の幅に設定した。
【0044】
また、横部分84による目隠し効果は、周壁64の上端65と下端67の中間位置に横部分84を設けることにより高めることができる。カバー6は、周壁64の下端内縁にある係合爪64bを容器2の胴部22と肩部24の間にある係合段部23に係合することにより容器2に取り付けられている。このため、カバー6を容器2に取り付けた状態で、容器2の首部26は、カバー6の周壁64の下端より上方の部分に対向する。よって、横部分84を周壁64の上端65及び下端67から離れた上下方向の中間位置に設けることで、首部26のネジ山28を外部から見え難くすることができる。
【0045】
なお、上述した横部分84による目隠し効果は、揮散装置10をカバー6の真横から見た場合に限らず、揮散装置10を斜め上から見た場合(例えば図1の状態)であっても同様に得ることができる。また、仮に、揮散装置10を棚の上などに置いて斜め下方から見上げた場合、容器2の肩部24を通して首部26のネジ山28を見ることになり、ネジ山28は見え難くなる。
【0046】
以上のように、本実施形態によると、周壁64の目隠し部分80が複数の縦部分82と横部分84を含むため、薬液Yの揮散効率を低下させることなく、カバー6の内側にある揮散体4や首部26のネジ山28が揮散孔62を介して外部から見え難くなり、揮散装置10の見栄えを良くすることができる。
【0047】
また、本実施形態の揮散装置10のカバー6は、径方向の外側からカバー6を見る周方向の位置によって、揮散孔62同士が重なって見える場合がある。目隠し部分80の第1部分86と第2部分88を軸方向に連結した連結部分87を、この連結部分87に含まれる縦部分82を正面に向けて見た場合、当該連結部分87の径方向の反対側に対向する別の連結部分87は第1部分86と第2部分88が上下逆につながったものとなる。このため、この方向からカバー6を見ても揮散孔62が重なって見えることはない。
【0048】
これに対し、周方向に隣接する2つの連結部分87を1つのパターンと見做して、このパターンを正面に向けてカバー6を見ると、径方向の反対側の別のパターンが正面のパターンと重なって見える。つまり、この方向からカバー6を見た場合、複数の揮散孔62が前後に重なって見えることになる。言い換えると、このように前後で重なって見ることができるパターンを周方向に連続した周壁64を有するカバー6を用いた場合、揮散孔62を介してカバー6内に空気を効果的に流すことができ、薬液Yの揮散効率を高めることができる。このような効果は、本実施形態の十字状の揮散体4の代わりに板状部材による揮散体(例えば、吸液部材41、42の一方)を用いた場合、揮散体の面方向に空気が流れ易くなる。また、棒状の揮散体を用いた場合にも同様のことが言える。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記の実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0050】
2…容器、 4…揮散体、 6…カバー、 10…揮散装置、 62…揮散孔、 64…周壁、 65…上端、 67…下端、 80…目隠し部分、 82…縦部分、 84…横部分、 86…第1部分、 87…連結部分、 88…第2部分、 Y…薬液。
図1
図2
図3
図4
図5