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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183661
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221206BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02P27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091098
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】日和佐 悠一
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505DD03
5H505DD06
5H505EE41
5H505EE52
5H505GG02
5H505GG04
5H505HA09
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ08
5H505JJ16
5H505JJ24
5H505JJ25
5H505JJ29
5H505LL07
5H505LL22
5H505LL41
5H505LL58
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770EA25
5H770HA02X
5H770JA17Z
(57)【要約】
【課題】2相以上の電流が検出できない場合にも安定した駆動を継続できる制御装置等の提供。
【解決手段】制御装置10は、多相インバーター80に流れる電流に基づくPWM制御値が入力され、PWM制御値に基づいて多相インバーター80の各相のPWM信号を生成するPWM信号生成部50と、PWM信号の補正値を演算して、補正値をPWM信号生成部50に出力する補正値演算部40を含む。補正値演算部40は、PWM制御値に基づいて、多相のうち所定相の電流が検出可能であるか否かの判定を行い、所定相の電流が検出不可であると判定された場合に、所定相の電流が検出可能となるようにPWM信号を補正するための補正値を演算する。PWM信号生成部50は、補正値により補正されたPWM信号を多相インバーター80に出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相インバーターに流れる電流に基づくPWM制御値が入力され、前記PWM制御値に基づいて前記多相インバーターの各相のPWM信号を生成するPWM信号生成部と、
前記PWM信号の補正値を演算して、前記補正値を前記PWM信号生成部に出力する補正値演算部と、
を含み、
前記補正値演算部は、
前記PWM制御値に基づいて、多相のうち所定相の電流が検出可能であるか否かの判定を行い、前記所定相の電流が検出不可であると判定された場合に、前記所定相の電流が検出可能となるように前記PWM信号を補正するための前記補正値を演算し、
前記PWM信号生成部は、
前記補正値により補正された前記PWM信号を前記多相インバーターに出力することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記PWM制御値は、電圧指令値であり、
前記PWM信号生成部は、
前記PWM信号のキャリア波を生成するキャリア波生成部と、
前記補正値に基づいて前記キャリア波を補正するキャリア波補正部と、
補正された前記キャリア波と、前記電圧指令値とを比較することで、前記PWM信号を出力するPWM信号出力部と、
を含むことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置において、
前記PWM制御値は、電圧指令値であり、
前記PWM信号生成部は、
前記PWM信号のキャリア波を生成するキャリア波生成部と、
前記補正値に基づいて前記電圧指令値を補正する電圧指令値補正部と、
前記キャリア波と、補正された前記電圧指令値とを比較することで、前記PWM信号を出力するPWM信号出力部と、
を含むことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置において、
前記PWM制御値は、前記多相インバーターにおけるオン時間であり、
前記PWM信号生成部は、
前記PWM信号のキャリア波を生成するキャリア波生成部と、
前記補正値に基づいて、前記オン時間を補正するオン時間補正部と、
前記キャリア波と、補正された前記オン時間とに基づいて、前記PWM信号を出力するPWM信号出力部と、
を含むことを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の制御装置において、
前記PWM制御値は、前記PWM信号のデューティー比であり、
前記PWM信号生成部は、
前記PWM信号のキャリア波を生成するキャリア波生成部と、
前記補正値に基づいて、前記デューティー比を補正するデューティー比補正部と、
前記キャリア波と、補正された前記デューティー比とに基づいて、前記PWM信号を出力するPWM信号出力部と、
を含むことを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の制御装置において、
前記多相インバーターは、3相インバーターであり、
前記所定相は、前記PWM制御値が最大値である最大相と、前記PWM制御値が最小値である最小相との間の中間相であることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の制御装置において、
前記所定相は、前記多相インバーターの第1相についての電流検出ができない場合における、前記第1相以外の相であることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
多相インバーターに流れる電流に基づくPWM制御値に基づいて、前記多相インバーターの各相のPWM信号を生成するPWM信号生成ステップと、
前記PWM信号の補正値を演算する補正値演算ステップと、
を含み、
前記補正値演算ステップにおいて、前記PWM制御値に基づいて、多相のうち所定相の電流が検出可能であるか否かの判定を行い、前記所定相の電流が検出不可であると判定された場合に、前記所定相の電流が検出可能となるように前記PWM信号を補正するための前記補正値を演算し、
前記PWM信号生成ステップにおいて、前記補正値により補正された前記PWM信号を前記多相インバーターに出力することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
3相ブラシレスモーター等の多相のモーターの制御装置の従来技術としては、例えば特許文献1、2、3に開示される技術がある。特許文献1や特許文献2では、下側スイッチング素子のオン時間にしきい値を設定し、このしきい値を用いて電流検出値を採用するかどうかを判定し、不採用の場合はその相以外の相から判断して電流値の推測を行う。また特許文献3では、電流が検出できない状態と判断された場合に、前回に検出した際の電流検出値を用いてモーター駆動を継続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-164159号公報
【特許文献2】特開2005-1574号公報
【特許文献3】国際公開第2011/142032号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の制御装置では、n相のうちの2つ以上の相において電流が検出できない場合に、正確な電流値の推定ができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、多相インバーターに流れる電流に基づくPWM制御値が入力され、前記PWM制御値に基づいて前記多相インバーターの各相のPWM信号を生成するPWM信号生成部と、前記PWM信号の補正値を演算して、前記補正値を前記PWM信号生成部に出力する補正値演算部と、を含み、前記補正値演算部は、前記PWM制御値に基づいて、多相のうち所定相の電流が検出可能であるか否かの判定を行い、前記所定相の電流が検出不可であると判定された場合に、前記所定相の電流が検出可能となるように前記PWM信号を補正するための前記補正値を演算し、前記PWM信号生成部は、前記補正値により補正された前記PWM信号を前記多相インバーターに出力する制御装置に関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、多相インバーターに流れる電流に基づくPWM制御値に基づいて、前記多相インバーターの各相のPWM信号を生成するPWM信号生成ステップと、前記PWM信号の補正値を演算する補正値演算ステップと、を含み、前記補正値演算ステップにおいて、前記PWM制御値に基づいて、多相のうち所定相の電流が検出可能であるか否かの判定を行い、前記所定相の電流が検出不可であると判定された場合に、前記所定相の電流が検出可能となるように前記PWM信号を補正するための前記補正値を演算し、前記PWM信号生成ステップにおいて、前記補正値により補正された前記PWM信号を前記多相インバーターに出力する制御方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の制御装置の構成例。
図2】本実施形態の動作を説明するフローチャート。
図3】本実施形態の制御装置の詳細な第1構成例。
図4】第1構成例の動作を説明するフローチャート。
図5】本実施形態の制御装置の詳細な第2構成例。
図6】第2構成例の動作を説明するフローチャート。
図7】本実施形態の動作を説明する信号波形図。
図8】本実施形態の動作を説明する信号波形図。
図9】本実施形態の動作を説明する信号波形図。
図10】本実施形態の動作を説明する信号波形図。
図11】PWM信号生成部の第1構成例。
図12】PWM信号生成部の第2構成例。
図13】PWM信号生成部の第3構成例。
図14】PWM信号生成部の第4構成例。
図15】補正値演算部の構成例。
図16】電流値決定部の構成例。
図17】モーター制御部の構成例。
図18】本実施形態の動作の詳細を説明する信号波形図。
図19】本実施形態の動作の詳細を説明する信号波形図。
図20】本実施形態の動作の詳細を説明する信号波形図。
図21】本実施形態の動作の詳細を説明する信号波形図。
図22】本実施形態の動作の詳細を説明する信号波形図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.制御装置
図1に本実施形態の制御装置10の構成例を示す。制御装置10は、補正値演算部40とPWM信号生成部50を含む。制御装置10は、多相インバーター80にPWM信号を出力する。そして多相インバーター80は、多相のPWM信号に基づき制御されて駆動対象100を駆動する。PWMはPulse Width Modulationの略である。駆動対象100は、例えば結線ノードに結線された複数のコイルにより構成されるデバイスであり、例えば3相ブラシレスモーター等の多相モーターである。多相はn相である。
【0010】
制御装置10は、例えばICである集積回路装置により実現できる。集積回路装置は例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)やマイクロコンピューターなどにより実現できる。補正値演算部40、PWM信号生成部50等は集積回路装置の回路により実現できる。例えば本実施形態の制御装置10がマイクロコンピューターにより実現される場合には、補正値演算部40、PWM信号生成部50は、マイクロコンピューターの回路と、マイクロコンピューターのメモリーにロードされて実行されるプログラムとにより実現できる。プログラムはコンピューターにより読み取り可能な情報記憶媒体に記憶できる。
【0011】
PWM信号生成部50は、多相インバーター80に流れる電流に基づくPWM制御値が入力される。PWM制御値は、例えば電圧指令値や、多相インバーター80におけるオン時間や、或いはPWM信号のデューティー比等である。例えば多相インバーター80の各相に流れる電流が検出され、検出結果に基づき生成されたPWM制御値がPWM信号生成部50に入力される。そしてPWM信号生成部50は、PWM制御値に基づいて多相インバーター80の各相のPWM信号を生成する。例えばPWM信号生成部50は、キャリア波とPWM制御値との比較処理等を行って、PWM制御信号を生成する。生成された各相のPWM信号は、多相インバーター80の対応する各相のスイッチング素子に入力されて、スイッチング素子のオン、オフが制御される。
【0012】
補正値演算部40は、PWM信号の補正値を演算する。そして補正値演算部40は、演算された補正値をPWM信号生成部50に出力する。具体的には補正値演算部40は、PWM制御値に基づいて、多相のうち所定相の電流が検出可能であるか否かの判定を行う。例えば多相インバーター80における所定相の電流が検出可能であるか、検出不可であるかを判定する。そして補正値演算部40は、所定相の電流が検出不可であると判定された場合に、所定相の電流が検出可能となるようにPWM信号を補正するための補正値を演算する。例えば補正値演算部40は、n相のうちのn-1以上の相の電流が検出可能となるようにPWM信号を補正するための補正値を演算する。n=3の場合には、補正値演算部40は、3相のうちの少なくとも2相の電流が検出可能となるようにPWM信号を補正するための補正値を演算する。
【0013】
そしてPWM信号生成部50は、補正値により補正されたPWM信号を多相インバーター80に出力する。例えば多相インバーター80がn相のインバーターである場合には、n相のPWM信号を多相インバーター80に出力する。nは例えば2以上の整数である。例えばPWM信号生成部50は、駆動対象100の複数のコイルである多相のコイルの合成磁界の方向が変化しないように補正されたPWM信号を、多相インバーター80に出力する。合成磁界は合成磁束である。補正値に基づくPWM信号の補正は、PWM信号のキャリア波の補正であってもよいし、電圧指令値、オン時間又はデューティー比等のPWM制御値の補正であってもよい。例えばPWM信号生成部50は、補正値により補正されたキャリア波と、PWM制御値との比較処理等を行って、補正後のPWM信号を生成する。或いは、PWM信号生成部50は、キャリア波と、補正値により補正されたPWM制御値との比較処理等を行って、補正後のPWM信号を生成する。
【0014】
図2は本実施形態の制御装置10の動作を説明するフローチャートである。まず制御装置10は、多相インバーター80に流れる電流に基づくPWM制御値に基づいて、多相のうちの所定相の電流が検出可能か否かを判定する(ステップS1)。そして制御装置10は、所定相の電流が検出可能である場合には、補正処理を行うことなく、PWM信号を多相インバーター80に出力する(ステップS2、S5)。一方、制御装置10は、所定相の電流が検出不可である場合には、所定相の電流が検出可能となるようにPWM信号を補正するための補正値を演算し、演算された補正値に基づいてPWM信号を補正する(ステップS2、S3、S4)。そして制御装置10は、補正値により補正されたPWM信号を多相インバーター80に出力する(ステップS5)。
【0015】
このように本実施形態の制御方法は、PWM信号を生成するPWM信号生成ステップと、PWM信号の補正値を演算する補正値演算ステップを含む。そして補正値演算ステップ(ステップS3、S4)において、所定相の電流が検出可能であるか否かの判定を行い、検出不可であると判定された場合に、所定相の電流が検出可能となるようにPWM信号を補正するための補正値を演算する。そしてPWM信号生成ステップ(ステップS5)において、補正値により補正されたPWM信号を多相インバーターに出力する。なお制御装置10がマイクロコンピューター等により実現される場合には、PWM信号生成ステップ及び補正値演算ステップはプログラムにより実行できる。
【0016】
このように本実施形態によれば、多相インバーター80の所定相の電流が検出不可であると判定されると、当該所定相の電流が検出可能となるように、PWM信号が補正され、補正されたPWM信号が多相インバーター80に出力されるようになる。これにより、所定相の電流が検出可能になるように補正されたPWM信号を、多相インバーター80に出力して、多相インバーター80により駆動対象100を駆動できるようになる。従って、例えばn相のうちの2つ以上の相において電流が検出できない場合にも、検出不可であった所定相の電流が検出可能になることで、より正確な電流値の推定が可能になり、駆動対象100の安定した駆動を継続することが可能になる。
【0017】
2.詳細な構成例
図3に本実施形態の制御装置10の詳細な第1構成例を示す。図3では、制御装置10はモーター制御部20とPWM制御部30を含む。また制御装置10はサンプルホールド回路11、12、13を更に含むことができる。そして図1で説明した補正値演算部40、PWM信号生成部50はPWM制御部30に設けられている。
【0018】
なお、以下では図1の駆動対象100がモーター110であり、多相インバーター80が3相のインバーターである場合について主に例にとり説明する。即ちn相におけるnが3の場合を例にとり説明する。但し本実施形態はn=3には限定されず、n=2又はn≧4である場合にも適用できる。また以下では、図1図2で説明した所定相が中間相である場合を主に例にとり説明する。
【0019】
多相インバーター80は、スイッチング素子81、82、83、84、85、86と、電流検出器87、88、89を含む。スイッチング素子81、82、83は、高電位側の電源であるVCC側のスイッチング素子であり、上側アーム素子とも呼ばれる。スイッチング素子84、85、86は、低電位側の電源であるGND側のスイッチング素子であり、下側アーム素子とも呼ばれる。グランドであるGNDはVSSとも呼ばれる。下側アーム素子であるスイッチング素子84、85、86は、電流検出器87、88、88側のスイッチング素子である。
【0020】
また図1の駆動対象100に対応するモーター110は、U相のコイル、V相のコイル、W相のコイルを有する例えば3相のブラシレスモーターである。U相、V相、W相のコイルはU相、V相、W相の巻き線とも呼ばれる。そしてスイッチング素子81、84は、U相の電流を流すためのスイッチング素子である。またスイッチング素子82、85は、V相の電流を流すためのスイッチング素子であり、スイッチング素子83、86は、W相の電流を流すためのスイッチング素子である。また電流検出器87、88、89は、シャント抵抗と呼ばれる電流検出用の抵抗素子を有し、各々、U相、V相、W相の電流を検出する。具体的には電流検出器87、88、89により、下側アーム素子であるGND側のスイッチング素子84、85、86がオンしたときのU相、V相、W相の電流が検出される。例えば電流検出器87、88、89は、電流検出用の抵抗素子に電流が流れることによる降下電圧を検出することで電流を検出する。なお電流検出器87、88、89は、オペアンプと呼ばれる演算増幅器を含む構成であってもよい。このように電流検出器87、88、89に演算増幅器を設けることで、微少な検出電流であっても検出可能になる。
【0021】
制御装置10のサンプルホールド回路11、12、13は、電流検出器87、88、89により検出された電流値のサンプルホールドを行う。サンプルホールドされた電流値は不図示のA/D変換回路によりデジタル値に変換される。そしてモーター制御部20は、不図示の外部の処理装置からの例えば速度の指令値と、位置センサーの出力値と、電流検出器87、88、89により検出された電流iu、iv、iwとに基づいて、電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcを求めて、PWM制御部30に出力する。例えばモーター制御部20は、速度の指令値による目標の速度と、位置センサーにより検出された実際の速度とに基づく速度のフィードバック制御を行って、電流指令値を求め、電流指令値と、電流検出器87、88、89により検出された電流iu、iv、iwとに基づく電流のフィードバック制御を行って、電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcを求める。なお位置センサーはホール素子等により実現できる。
【0022】
PWM制御部30は、図1のPWM制御値に対応する電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcに基づいて、PWM信号を生成して、多相インバーター80に出力する。具体的にはPWM制御部30は、U相用のPWM制御信号を、U相の電流を流すスイッチング素子81、84に出力する。同様にPWM制御部30は、V相用のPWM制御信号を、V相の電流を流すスイッチング素子82、85に出力し、W相用のPWM制御信号を、W相の電流を流すスイッチング素子83、86に出力する。
【0023】
そして本実施形態では、例えばPWM制御部30が、図1で説明した補正値演算部40とPWM信号生成部50を含む。補正値演算部40は、PWM制御値である電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcに基づいて、例えばU相、V相、W相のうちの所定相の電流が検出可能であるか否かの判定を行い、所定相の電流が検出不可であると判定された場合に、所定相の電流が検出可能となるようにPWM信号を補正するための補正値を演算する。そしてPWM信号生成部50は、補正値により補正されたPWM信号を多相インバーター80に出力する。
【0024】
図4図3の第1構成例の動作を説明するフローチャートである。まず制御装置10は、3相の電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcの大小比較を行う(ステップS11)。そしてU相、V相、W相のうち、電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcの値が大きい相から、最大相、中間相、最小相とする。例えばVuc>Vvc>Vwcであれば、U相、V相、W相が、各々、最大相、中間相、最小相になる。Vvc>Vwc>Vucであれば、V相、W相、U相が、各々、最大相、中間相、最小相になる。
【0025】
次に制御装置10は、中間相の電圧指令値が、電流検出可能判定用のしきい値以下か否かを判定することで、中間相の電圧指令値が電流検出できる値か否かを判定する(ステップS12)。即ち制御装置10は、図3の電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcのうち、中間相と判断される相の電圧指令値が、電流検出可能判定用のしきい値以下か否かを判定する。そして制御装置10は、中間相の電圧指令値が、電流検出可能判定用のしきい値以下であり、電流検出できる値である場合には、PWM信号の補正は行わず、3相の電圧指令値とキャリア波を比較して、PWM信号を生成する(ステップS15)。一方、制御装置10は、中間相の電圧指令値が、電流検出可能判定用のしきい値より大きく、電流検出できない値である場合には、中間相の電圧指令値から電流検出可能判定用のしきい値を減算し、減算結果をキャリア波に加算する(ステップS13、S14)。そして制御装置10は、3相の電圧指令値と、減算結果が加算されたキャリア波とを比較して、PWM信号を生成する(ステップS15)。即ち、制御装置10は、中間相の電圧指令値が、電流検出できない値である場合には、中間相の電流が検出できるようにPWM信号を補正する。
【0026】
図5に本実施形態の制御装置10の詳細な第2構成例を示す。図5の第2構成例では、図3の第1構成例の制御装置10に対して、電流値決定部14が更に設けられている。電流値決定部14は、サンプルホールド回路11、12、13にサンプルホールドされた電流値に基づいて、電流検出ができなかった相の電流値を決定する。
【0027】
図6図5の第2構成例の動作を説明するフローチャートである。図6のステップS21、S22、S23、S24、S25は、図4のステップS11、S12、S13、S14、S15と同様であるため詳細な説明は省略する。制御装置10は、図6のステップS25で3相の電圧指令値とキャリア波を比較して、PWM信号を生成し、中間相と最小相の電流を検出する(ステップS26)。そして制御装置10は、中間相と最小相の電流検出値から最大相の電流を推定する(ステップS27)。即ち制御装置10は、iv+iu+iw=0というキルヒホッフの定理に基づく演算処理により、最大相の電流を推定する。この最大相の電流の推定処理は図5の電流値決定部14が行う。
【0028】
図7図10は本実施形態の動作を説明する信号波形図である。図7において、キャリア波の値が電圧指令値よりも小さくなる期間は、図3図5の電流検出器87、88、89側のスイッチング素子84、85、86のオフ期間であり、電流検出器87、88、89による電流検出が不可となる期間である。一方、キャリア波の値が電圧指令値よりも大きくなる期間は、電流検出器87、88、89側のスイッチング素子84、85、86のオン期間であり、電流検出器87、88、89による電流検出が可能となる期間である。なお以下では、電流検出器87、88、89側のスイッチング素子84、85、86を、適宜、検出器側のスイッチング素子84、85、86と記載する。
【0029】
そして図8において、キャリア波の値が中間相の電圧指令値より大きくなる期間は、検出器側のスイッチング素子84、85、86のうち、中間相の検出器側のスイッチング素子のオン期間である。例えばキャリア波の値が中間相の電圧指令値よりも大きくなる期間は、U相が中間相である場合には、U相の検出器側のスイッチング素子84のオン期間であり、V相、W相が中間相である場合には、各々、V相、W相の検出器側のスイッチング素子85、86のオン期間である。そして図8では、中間相の検出器側のスイッチング素子のオン期間が、最低検出可能期間よりも短いため、中間相の電流検出が不可になる。スイッチング素子のオン期間が、最低検出可能期間よりも短いと、ノイズ等が原因で適正な電流値を検出できなくなるからである。ここで最低検出可能期間は、キャリア波の値が電流検出可能判定用のしきい値よりも大きくなる期間である。
【0030】
そこで本実施形態では図4のステップS12、図6のステップS12に示すように、中間相の電圧指令値が、電流検出可能判定用のしきい値以下か否かを判定する。そして中間相の電圧指令値がしきい値よりも大きい場合には、図8に示すように、中間相の検出器側のスイッチング素子のオン期間が、最低検出可能期間よりも短くなるため、中間相の電流検出が不可になる。例えばU相が中間相である場合には、U相の電流検出が不可になり、V相、W相が中間相である場合には、各々、V相、W相の電流検出が不可になる。
【0031】
このように中間相の電流検出が不可と判定されると、図4のステップS13、図6のステップS23に示すように、中間相の電圧指令値から電流検出可能判定用のしきい値を減算することで、図8のB1に示す補正値を求める。そして図4のステップS14、図6のステップS24に示すように、中間相の電圧指令値としきい値の減算結果である補正値を、キャリア波に加算する処理を行う。即ち図9のC1に示すようにキャリア波に補正値を加算することで、C2に示す補正後のキャリア波を求める。補正後のキャリア波において、キャリア波の値が中間相の電圧指令値よりも大きくなる図9のC3に示すオン期間は、補正前のキャリア波における図8のB2に示すオン期間よりも長くなるため、中間相の電流検出が可能になる。即ちオン期間が、電流検出可能期間以上の長さの期間になることで、所定相である中間相の電流検出が可能になる。
【0032】
例えば図10では、補正値を加算することで求められた補正後のキャリア波と、最大相、中間相、最小相の電圧指令値との比較が行われる。PWM信号生成部50は、このようにキャリア波と各相の電圧指令値の比較を行うことで、各相のPWM信号を生成する。
【0033】
そして図10では、補正値を加算した補正後のキャリア波の値が中間相の電圧指令値よりも大きくなる期間が、D1に示すように中間相の検出器側のスイッチング素子のオン期間になる。この図10のD1に示すオン期間は、図8のB2に示すオン期間よりも長く、最低検出可能期間以上の長さになるため、電流検出器87、88、89のうちの中間相の電流検出器により、中間相の電流を検出することが可能になる。また図10のD2に示すように、最小相の検出器側のスイッチング素子のオン期間は十分に長いため、電流検出器87、88、89のうちの最小相の電流検出器により、最小相の電流も検出できる。また図10のD3に示すように、最大相の検出器側のスイッチング素子のオン期間が短く、最大相の電流を検出できなかったとしても、図5の電流値決定部14が、キルヒホッフの定理にしたがって、最大相の電流の値を推定できる。例えば最小相、中間相、最大相が、各々、U相、V相、W相である場合には、iw=-(iu+iv)の式により、最大相であるW相の電流の値を推定できる。
【0034】
このように本実施形態によれば、3相のうちの2相の電流が検出不可である場合にも、検出不可である2相のうちの、所定相である中間相の電流が検出可能となるように、PWM信号が補正される。例えば図9のC1に示すように、PWM信号の生成用のキャリア波に補正値を加算する補正が行われ、補正後のPWM信号が多相インバーター80に出力されて、多相インバーター80によりモーター110が駆動されるようになる。このように補正されたPWM信号を用いることで、3相のうち中間相と最大相の電流が検出不可である場合にも、中間相の電流が検出可能になることで、最大相の電流も推定できるようになり、最小相、中間相、最大相の電流によるモーター110の適正な駆動を継続できるようになる。
【0035】
3.PWM信号生成部
図11図14に、PWM信号生成部50の第1構成例~第4構成例を示す。なお図11図14の第1構成例~第4構成例では、PWM制御部30に電流非検出相判定部32が設けられている。この電流非検出相判定部32は、電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcに基づいて、電流非検出相を判定する。例えば図11図12では、電流非検出相判定部32は、電流非検出相として、電圧指令値が最大となる相を判定する。即ち、電流非検出相判定部32は、電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcの比較判定を行い、U相、V相、W相のうち、電圧指令値が最も大きい相を、最大相として判定して、電流非検出相である最大相を選択するための選択信号SELを出力する。
【0036】
図11の第1構成例のPWM信号生成部50は、キャリア波生成部52と、キャリア波補正部54と、PWM信号出力部60を含む。キャリア波生成部52は、PWM信号のキャリア波を生成する。例えばキャリア波生成部52は図7図10に示すような三角波のキャリア波を生成する。例えばキャリア波生成部52は、アップカウンターとダウンカウンターを含むことができる。そしてキャリア波生成部52は、アップカウンターにより最小値からカウント値のアップカウントを行い、カウント値が最大値になると、ダウンカウンターによりカウント値のダウンカウントを行うという処理を繰り返すことで、キャリア波の値を生成する。
【0037】
キャリア波補正部54は、補正値演算部40からの補正値に基づいて、キャリア波生成部52により生成されたキャリア波を補正する。具体的には補正値演算部40は、所定相である中間相の電流が検出不可であると判定された場合に、中間相の電流が検出可能となるようにPWM信号を補正するための補正値を演算する。例えば図8に示すように、補正値演算部40は、中間相の電圧指令値から電圧検出可能判定用のしきい値を減算した値を、補正値として求める。そして図9図11で説明したように、キャリア波補正部54は、キャリア波生成部52により生成されたキャリア波の値に補正値を加算する補正を行う。
【0038】
PWM信号出力部60は、キャリア波補正部54により補正されたキャリア波と、電圧指令値とを比較することで、PWM信号を出力する。例えばPWM信号出力部60は、補正後のキャリア波の値であるデジタル値と、電圧指令値のデジタル値とを比較することで、PWM信号を生成する。具体的にはPWM信号出力部60は、U相の電圧指令値Vucと、キャリア波とを比較することで、U相のスイッチング素子をオンオフするPWM信号を出力する。またPWM信号出力部60は、V相の電圧指令値Vvcと、キャリア波とを比較することで、V相のスイッチング素子をオンオフするPWM信号を出力し、W相の電圧指令値Vwcと、キャリア波とを比較することで、W相のスイッチング素子をオンオフするPWM信号を出力する。例えば図10において最小相、中間相、最大相が、各々、U相、V相、W相であったとする。この場合には、最小相の電圧指令値とキャリア波が比較されることで、最小相のスイッチング信号をオンオフするPWM信号が出力される。また中間相の電圧指令値とキャリア波が比較されることで、中間相のスイッチング信号をオンオフするPWM信号が出力される。また最大相の電圧指令値とキャリア波が比較されることで、最大相のスイッチング信号をオンオフするPWM信号が出力される。そして、このようなPWM信号によるPWM制御が行われて、中間相と最小相の電流が検出され、最大相の電流は、中間相と最小相の電流から推定される。
【0039】
このように図11に示す第1構成例のPWM信号生成部50では、キャリア波補正部54が、補正値演算部40からの補正値に基づいてキャリア波を補正し、PWM信号出力部60が、補正されたキャリア波と、電圧指令値とを比較することで、PWM信号を出力する。このようにすれば、所定相の電流が検出不可であると判定されると、所定相の電流が検出可能となるように、補正値に基づきキャリア波が補正されることで、PWM信号の補正が行われて、補正されたPWM信号が多相インバーター80に出力されるようになる。これにより多相のうちの2以上の相の電流が検出不可である場合にも、正確な電流値の推定を可能にして、多相インバーター80による駆動を継続できるようになる。
【0040】
図12の第2構成例のPWM信号生成部50は、キャリア波生成部52と、電圧指令値補正部55と、PWM信号出力部60を含む。そしてキャリア波生成部52は、PWM信号のキャリア波を生成し、電圧指令値補正部55は、補正値に基づいて電圧指令値を補正し、PWM信号出力部60は、キャリア波と、補正された電圧指令値とを比較することで、PWM信号を出力する。
【0041】
具体的には補正値演算部40は、中間相の電圧指令値が、中間相の電流を検出できる値か否かを判定する。そして補正値演算部40は、中間相の電流検出が不可である場合には、中間相の電流検出を可能にする補正値を演算する。例えば、中間相の電圧指令値から電圧検出可能判定用のしきい値を減算した値が、補正値として求められる。そして電圧指令値補正部55は、求められた補正値に基づいて電圧指令値を補正する。例えば電圧指令値補正部55は、U相、V相、W相の電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcから補正値を減算する補正を行う。このように、電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcから補正値を減算することで、図10のようにキャリア波に補正値を加算した場合と同様に、電流検出が不可であった中間相の電流検出を可能にする補正が実現される。そしてPWM信号出力部60は、キャリア波生成部52からのキャリア波と、電圧指令値補正部55により補正された電圧指令値とを比較することで、PWM信号を出力する。そして、このようなPWM信号によるPWM制御が行われて、電圧指令値の中間相と最小相の電流が検出され、最大相の電流については、中間相と最小相の電流から推定される。
【0042】
このように図12に示す第2構成例のPWM信号生成部50では、電圧指令値補正部55が、補正値演算部40からの補正値に基づいて電圧指令値を補正し、PWM信号出力部60が、補正されたキャリア波と、補正された電圧指令値とを比較することで、PWM信号を出力する。このようにすれば、所定相の電流が検出不可であると判定されると、所定相の電流が検出可能となるように、補正値に基づき電圧指令値が補正されることで、PWM信号の補正が行われて、補正されたPWM信号が多相インバーター80に出力されるようになる。これにより多相のうちの2以上の相の電流が検出不可である場合にも、正確な電流値の推定を可能にして、多相インバーター80による駆動を継続できるようになる。
【0043】
図13の第3構成例では、PWM制御値は、多相インバーター80におけるオン時間であり、PWM信号生成部50は、キャリア波生成部52と、オン時間補正部56と、PWM信号出力部60を含む。そしてキャリア波生成部52は、PWM信号のキャリア波を生成し、オン時間補正部56は、補正値演算部40からの補正値に基づいて、オン時間を補正し、PWM信号出力部60は、キャリア波と、補正されたオン時間とに基づいて、PWM信号を出力する。オン時間は、例えば多相インバーター80の検出器側のスイッチング素子のオン時間であり、例えばオン時間を設定するオン時間設定値である。
【0044】
具体的には、3相の検出器側のスイッチング素子のオン時間が長い相から順に、最大相、中間相、最小相とする。この場合に補正値演算部40は、中間相のオン時間が電流検出できる時間か否かを判定し、中間相の電流検出が不可である場合には、中間相の電流検出を可能にする補正値を演算する。例えば中間相のオン時間と検出判定時間との差分が、補正値として求められる。そしてオン時間補正部56は、オン時間に補正値を加算する補正を行う。例えば3相の検出器側のスイッチング素子のオン時間TOu、TOv、TOwに対して、補正値を加算する補正が行われる。そしてPWM信号出力部60は、キャリア波生成部52からのキャリア波と、補正されたオン時間に基づいて、PWM信号を出力する。そして、このようなPWM信号によるPWM制御が行われて、オン時間が最大となる最大相の電流と、オン時間が最大と最小の中間となる中間相の電流が検出される。そしてオン時間が最小となる最小相の電流については、中間相と最大相の電流から推定される。即ちこの場合には、電流非検出相は最小相であり、電流非検出相として最小相を選択する選択信号SELが、電流非検出相判定部32から出力される。
【0045】
このようにすれば、所定相の電流が検出不可であると判定されると、所定相の電流が検出可能となるように、多相インバーター80におけるオン時間が補正値に基づき補正されることで、PWM信号の補正が行われて、補正されたPWM信号が多相インバーター80に出力されるようになる。これにより多相のうちの2以上の相の電流が検出不可である場合にも、正確な電流値の推定を可能にして、多相インバーター80による駆動を継続できるようになる。
【0046】
図14の第4構成例では、PWM制御値は、PWM信号のデューティー比であり、PWM信号生成部50は、キャリア波生成部52と、デューティー比補正部57と、PWM信号出力部60を含む。そしてキャリア波生成部52は、PWM信号のキャリア波を生成し、デューティー比補正部57は、補正値演算部40からの補正値に基づいて、デューティー比を補正し、PWM信号出力部60は、キャリア波と、補正されたデューティー比とに基づいて、PWM信号を出力する。ここでのデューティー比は、例えば多相インバーター80の検出器側のスイッチング素子のPWM信号のデューティー比であり、例えばPWM信号のデューティー比を設定するデューティー比設定値である。
【0047】
具体的には、3相の検出器側のスイッチング素子のPWM信号のデューティー比が長い相から順に、最大相、中間相、最小相とする。この場合に補正値演算部40は、中間相のデューティー比が電流検出できるデューティー比か否かを判定し、中間相の電流検出が不可である場合には、中間相の電流検出を可能にする補正値を演算する。例えば中間相のデューティー比と検出判定デューティー比との差分が、補正値として求められる。そしてデューティー比補正部57は、デューティー比に補正値を加算する補正を行う。例えば3相の検出器側のスイッチング素子のPWM信号のデューティー比DTu、DTv、DTwに対して、補正値を加算する補正が行われる。そしてPWM信号出力部60は、キャリア波生成部52からのキャリア波と、補正されたデューティー比に基づいて、PWM信号を出力する。そして、このようなPWM信号によるPWM制御が行われて、デューティー比が最大となる最大相の電流と、デューティー比が最大と最小の中間となる中間相の電流が検出される。そしてデューティー比が最小となる最小相の電流については、中間相と最大相の電流から推定される。即ち、この場合には、電流非検出相は最小相であり、電流非検出相として最小相を選択する選択信号SELが、電流非検出相判定部32から出力される。
【0048】
このようにすれば、所定相の電流が検出不可であると判定されると、所定相の電流が検出可能となるように、PWM信号のデューティー比が補正値に基づき補正されることで、PWM信号の補正が行われて、補正されたPWM信号が多相インバーター80に出力されるようになる。これにより多相のうちの2以上の相の電流が検出不可である場合にも、正確な電流値の推定を可能にして、多相インバーター80による駆動を継続できるようになる。
【0049】
また本実施形態では、多相インバーター80は3相インバーターである。即ち、U相、V相、W相の3相のインバーターである。そして所定相は、PWM制御値が最大値である最大相と、PWM制御値が最小値である最小相との間の中間相である。即ち、中間相は、PWM制御値が最大値と最小値の間の中間値となる相である。PWM制御値は、電圧指令値、オン時間又はデューティー比等である。このようにすれば、所定相である中間相の電流検出が不可である場合に、中間相の電流検出を可能にする補正値が求められ、求められた補正値により補正されたPWM信号を多相インバーター80に出力できるようになる。従って、3相のうちの例えば最大相と中間相の電流検出が不可である場合には、中間相の電流検出が可能になることで、中間相の電流と最小相の電流から、最大相の電流を推定して、PWM制御を行えるようになる。また3相のうちの例えば最小相と中間相の電流検出が不可である場合には、中間相の電流検出が可能になることで、中間相の電流と最大相の電流から、最小相の電流を推定して、PWM制御を行えるようになる。
【0050】
4.補正値演算部、電流値決定部、モーター制御部
図15に補正値演算部40の構成例を示す。補正値演算部40は、中間相選択部42と、中間相検出可能判定部44と、減算器46と、セレクター48を含む。
【0051】
中間相選択部42は、電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcの中から中間相の電圧指令値を選択して、中間相検出可能判定部44及び減算器46に出力する。具体的には中間相選択部42は、3相の電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcを比較し、これらの電圧指令値を大きい順に最大相、中間相、最小相とした場合に、中間相の電圧指令値を選択して出力する。
【0052】
中間相検出可能判定部44は、中間相の電圧指令値と電流検出可能判定用のしきい値とに基づいて、中間相の電流が検出可能か否かを判定し、判定信号をセレクター48に出力する。例えば中間相検出可能判定部44は、中間相の電圧指令値がしきい値以下である場合には、中間相の電流が検出可能であると判定して、第1電圧レベルの判定信号を出力する。一方、中間相検出可能判定部44は、中間相の電圧指令値がしきい値よりも大きい場合には、中間相の電流が検出不可であると判定して、第2電圧レベルの判定信号を出力する。第1電圧レベル、第2電圧レベルの一方はハイレベルであり、他方はローレベルである。
【0053】
減算器46は、中間相の電圧指令値から電流検出可能判定用のしきい値を減算し、これらの値の差分である減算結果をセレクター48に出力する。セレクター48は、中間相の電流が検出可能であり、中間相検出可能判定部44からの判定信号が第1電圧レベルである場合には、端子TA側を選択し、補正値として0を出力する。一方、セレクター48は、中間相の電流が検出不可であり、中間相検出可能判定部44からの判定信号が第2電圧レベルである場合には、端子TB側を選択し、中間相の電圧指令値と電流検出可能判定用のしきい値の差分を、補正値として出力する。このような構成、動作の補正値演算部40により、図4のステップS11、S12、S13、図6のステップS21、S22、S23の処理が実行される。
【0054】
図16図5の電流値決定部14の構成例を示す。電流値決定部14は、電流推定部15と電流選択部16を含む。電流推定部15は、図11図14の電流非検出相判定部32からの選択信号SELが入力され、3相の電流iu、iv、iwのうち、電流が非検出と判定された相の電流を推定する。例えば選択信号SELにより、電流iwが例えば最大相の電流であり、非検出であることが選択された場合には、電流推定部15は、iw=-(iu+iv)の演算式により、電流iwの値を推定する。そして電流選択部16は、電流iu、ivと、電流推定部15により推定された電流iwと、を選択して出力する。
【0055】
図17にモーター制御部20の構成例を示す。モーター制御部20は、指令速度演算部21と、位置&速度推定部22と、速度PI制御部23と、電流PI制御部24と、座標変換部25、26と、変調部27を含む。
【0056】
指令速度演算部21は、速度の指令値のディーティ比から指令電気角速度ωeを計算する。なおSPI(Serial Peripheral Interface)などのシリアル通信により直接にωeを速度PI制御部23に入力するようにしてもよい。位置&速度推定部22は、位置センサーの出力値に基づいて実電気角速度ωeを計算して推定する。速度PI制御部23は、指令電気角速度ωeと実電気角速度ωeに基づいて速度PI制御を行い、q軸電流指令値iqd軸電流指令値idを計算する。なおd軸電流指令値idについては、トルクに影響を与えないd軸電流をid=0として制御してもよい。以上に説明した指令速度演算部21、位置&速度推定部22、速度PI制御部23の処理により速度フィードバックの制御が実現される。
【0057】
また位置&速度推定部22は、ホール素子等により実現される位置センサーの出力値に基づいて、電気角θeを計算して推定する。なお位置センサーとしてエンコーダーやレゾルバを用いる場合には、出力値をデコードして用いればよい。座標変換部25は、三相の電流iu、iv、iwを回転座標系のid、iqにDQ変換する。電流PI制御部は、電流PI制御により電圧指令値Vd、Vqを計算する。座標変換部26は、回転座標系を逆DQ変換して、三相の電圧指令値Vu、Vv、Vwを求める。三相変調を行う場合には、逆DQ変換された三相の正弦波を変調部27にて変調する。Vu、Vv、Vwは電圧指令値Vuc、Vvc、Vwcに対応する。なおSVPWM(空間ベクトル変調)による制御を行ってもよい。以上に説明した位置&速度推定部22、電流PI制御部24、座標変換部25、26、変調部27の処理により電流フィードバックの制御が実現される。なお位置フィードバック制御の場合には、速度の指令値ではなく位置の指令値がモーター制御部20に入力されることになる。また位置センサーを用いないセンサーレス制御の場合には、モーター電流からθeを推定すればよい。
【0058】
5.詳細な動作
次に図18図22を用いて本実施形態の詳細な動作について説明する。図18の信号波形図に示すように本実施形態の制御装置10では、速度の指令値が大きく変化する過渡状態において、変化後の速度指令値の指令速度を目標速度として、モーター110の回転の実速度が徐々に目標速度に近づいて行く。この場合に本実施形態では図8図9で説明したように、中間相の電圧指令値が、電流検出可能判定用のしきい値よりも大きくなる期間において、PWM信号の補正が行われる。図19は、図18において中間相の電圧指令値がしきい値よりも大きくなるA1の期間を拡大して示した信号波形図である。
【0059】
図19に示すように、中間相の電圧指令値がしきい値よりも大きくなるA1に示す期間において、中間相の電圧指令値としきい値の差分である補正値が演算される。そしてこのように演算された補正値が、PWM信号のキャリア波に加算され、PWM信号の補正が行われる。即ちA1に示す期間において、キャリア波に補正値が加算される補正が行われ、補正後のキャリア波と各相の電圧指令値との比較により、各相の補正後のPWM信号が生成される。なお図19においてキャリア波の信号と共に示される信号は、最大相、中間相、最小相の電圧指令値の信号である。
【0060】
このように本実施形態のPWM信号の補正は、速度の指令値が大きく変化する過渡状態において行われる。或いは本実施形態のPWM信号の補正は、モーター110の高速回転の際や、高負荷トルクがかかった場合にも行われる。例えば負荷がかかると実速度が大きく変化するため、実速度と指令速度との差が大きく変化するからである。
【0061】
例えば図20に、速度の指令値が大きく変化する過渡状態から、速度が一定となる定常状態に移行したときのU相、V相、W相のモーター電流を示す。U相、V相、W相のモーター電流は、過渡状態である図20の前半期間においては大きく変化するが、定常状態である後半期間においては、中心付近の電流に収束して行く。図20に示すように、本実施形態によりPWM信号の補正を行った場合にも、U相、V相、W相のモーター電流の関係は維持される。即ちモーター110のU相、V相、W相の巻き線である多相のコイルの合成磁界の方向が変化しないように、U相、V相、W相のモーター電流が制御される。
【0062】
PWM制御では、VCCの電源側のスイッチング素子81、82、83のPWM信号のデューティー比が高いほど、モーター110に印加される電源電圧をより長く利用できる。一般的に、正弦波を3相変調すると、電源電圧の利用率が約1.15倍になると言われている。なお変調は3相変調には限定されず、空間ベクトル変調であってもよい。そして図21において、正弦波での100パーセントの制御範囲では、E1に示すように、3相変調等の変調後においては、上側の範囲において、VCCの電源電圧を利用する余裕がある。またE2に示すように、変調後においては、下側の範囲においても、GNDを利用する余裕がある。そして図22に示すように、利用率を約1.15倍にして、正弦波では100パーセントを超えた制御範囲であっても、変調後は制御範囲に収まるようになる。従って、変調後の方が、電源電圧の利用率が高くなる。即ち、モーター110に、電流をより流すことができ、トルクや速度の性能を向上できる。
【0063】
しかしながら、図22のF1に示す範囲では、電圧指令値がしきい値よりも大きく、最低検出可能期間が短い。従って、3相の電流を検出した場合に、変調により電源電圧の利用率を上げても、正確な電流値を検出できないケースが増えてしまう。
【0064】
この点、図22のF2、F3、F4では、中間相の電圧指令値が、過渡状態等において電流検出可能判定用のしきい値よりも大きくなるため、本実施形態では、キャリア波に補正値を加算するなどの補正を行って、3相のうちの2相の電流を必ず検出できるようにする。このようにすれば、変調により電源電圧の利用率を上げながら、過渡状態等においてもより正確な電流値の推定を可能にして、モーター110の安定した駆動を継続できるようになる。
【0065】
6.変形例
次に本実施形態の種々の変形例について説明する。本実施形態では多相が3相である場合について例にとり説明したが、多相はn相であってもよい。nは2以上の整数である。この場合には、本実施形態の第1変形例の制御装置10は、n相の電圧指令値の大小比較を行う。ここで、値の大きい相から、最大相、第2相、第3相、…、第n-1相、最小相とする。そして制御装置10は、第2相の電圧指令値が電流検出できる値かを判定し、検出不能な値の場合、第2相の電流が検出できるように補正する。例えば第2相の電圧指令値と判定用のしきい値との差分を、キャリア波に加算する補正を行う。そして制御装置10は、n相の電圧指令値と補正したキャリア波の比較から、PWM信号を生成して、n相の電圧指令値の最大相以外の相の電流を検出する。この場合にn相の電圧指令値の最大相の電流値は、最大相以外の電流検出値から推定する。
【0066】
また本実施形態の第2変形例では、3相の電流検出器87、88、89のうちの1つの相の電流検出器が故障した場合に、他の2つの相の電流を検出できるようにして、故障した相の電流を推定してもよい。この場合には、制御装置10は、故障した相以外の電圧指令値の大小比較を行い、値の大きい相から最大相、最小相とする。そして制御装置10は、最大相の電圧指令値が電流検出できる値かを判定し、検出不能な値の場合、最大相の電流が検出できるように補正する。具体的には制御装置10は、最大相の電圧指令値と判定用のしきい値との差分を、3相の電圧指令値から減算したり、或いは、最大相の電圧指令値と判定用のしきい値との差分を、キャリア波に加算する。そして制御装置10は、3相の電圧指令値とキャリア波の比較から、PWM信号を生成して、電流検出器が、故障した相以外の相の電流を検出する。そして電流検出器が故障した相の電流値については、故障していない相の電流検出値から推定する。
【0067】
また本実施形態の第3変形例では、2つの相の電流検出器のみが多相インバーター80に設けられている場合に、これらの2つ相の電流検出器において電流を必ず検出できるようにして、電流検出器が設けられていない相の電流を推定してもよい。この場合には制御装置10は、電流検出器が設けられている相の電圧指令値の大小比較を行い、値の大きい相から最大相、最小相とする。そして制御装置10は、最大相の電圧指令値が電流検出できる値か否かを判定し、検出不能な値の場合、最大相の電流が検出できるように補正する。具体的には制御装置10は、最大相の電圧指令値と判定用のしきい値との差分を、3相の電圧指令値から減算したり、或いは、最大相の電圧指令値と判定用のしきい値との差分を、キャリア波に加算する補正を行う。そして制御装置10は、3相の電圧指令値とキャリア波の比較によりPWM信号を生成して、電流検出器が設けられている相の電流を検出する。電流検出器が設けられていない相の電流値は、電流検出器が設けられている相の電流検出値から推定する。
【0068】
このように本実施形態の所定相は、多相インバーター80の第1相についての電流検出ができない場合における、第1相以外の相であってもよい。具体的には、所定相は、第1相以外の相のうち、PWM制御値が最大値である最大相又はPWM制御値が最小値である最小相である。例えばPWM制御値が電圧指令値である場合には、所定相は、第1相以外の相のうちの最大相であり、PWM制御値がオン時間やデューティー比である場合には、所定相は、第1相以外の相のうちの最小相である。
【0069】
例えば上述の第2変形例では、多相インバーター80の第1相は、電流検出器が故障した相である。そして所定相は、電流検出器が故障した相以外の相であり、電流検出器が故障していない相である。具体的には所定相は、電流検出器が故障した相以外の相のうち、電圧指令値が最大となる最大相である。また上述の第3変形例では、多相インバーター80の第1相は、電流検出器が設けられていない相である。そして所定相は、電流検出器が設けられていない相以外の相であり、電圧検出器が設けられている相である。具体的には所定相は、電流検出器が設けられていない相以外の相のうち、電圧指令値が最大となる最大相である。このようにすれば、第1相についての電流検出ができない場合にも、第1相以外の相である所定相の電流が検出可能になるような補正が行われるようになるため、PWM信号による適正な駆動を実現することが可能になる。
【0070】
以上に説明したように本実施形態の制御装置は、多相インバーターに流れる電流に基づくPWM制御値が入力され、PWM制御値に基づいて多相インバーターの各相のPWM信号を生成するPWM信号生成部と、PWM信号の補正値を演算して、補正値をPWM信号生成部に出力する補正値演算部を含む。そして補正値演算部は、PWM制御値に基づいて、多相のうち所定相の電流が検出可能であるか否かの判定を行い、所定相の電流が検出不可であると判定された場合に、所定相の電流が検出可能となるようにPWM信号を補正するための補正値を演算する。またPWM信号生成部は、補正値により補正されたPWM信号を多相インバーターに出力する。
【0071】
本実施形態によれば、所定相の電流が検出不可であると判定されると、当該所定相の電流が検出可能となるように、PWM信号が補正され、補正されたPWM信号が多相インバーターに出力されるようになる。これにより、所定相の電流が検出可能になるように補正されたPWM信号を、多相インバーターに出力して、多相インバーターにより駆動対象を駆動できるようになり、駆動対象の安定した駆動を継続することなどが可能になる。
【0072】
また本実施形態では、PWM制御値は、電圧指令値であってもよい。そしてPWM信号生成部は、PWM信号のキャリア波を生成するキャリア波生成部と、補正値に基づいてキャリア波を補正するキャリア波補正部と、補正されたキャリア波と、電圧指令値とを比較することで、PWM信号を出力するPWM信号出力部を含んでもよい。
【0073】
このようにすれば、所定相の電流が検出不可であると判定されると、所定相の電流が検出可能となるように、補正値に基づきキャリア波が補正されることで、PWM信号の補正が行われて、補正されたPWM信号が多相インバーターに出力されるようになる。
【0074】
また本実施形態では、PWM制御値は、電圧指令値であってもよい。そしてPWM信号生成部は、PWM信号のキャリア波を生成するキャリア波生成部と、補正値に基づいて電圧指令値を補正する電圧指令値補正部と、キャリア波と、補正された電圧指令値とを比較することで、PWM信号を出力するPWM信号出力部を含んでもよい。
【0075】
このようにすれば、所定相の電流が検出不可であると判定されると、所定相の電流が検出可能となるように、補正値に基づき電圧指令値が補正されることで、PWM信号の補正が行われて、補正されたPWM信号が多相インバーターに出力されるようになる。
【0076】
また本実施形態では、PWM制御値は、多相インバーターにおけるオン時間であってもよい。そしてPWM信号生成部は、PWM信号のキャリア波を生成するキャリア波生成部と、補正値に基づいて、オン時間を補正するオン時間補正部と、キャリア波と、補正されたオン時間とに基づいて、PWM信号を出力するPWM信号出力部を含んでもよい。
【0077】
このようにすれば、所定相の電流が検出不可であると判定されると、所定相の電流が検出可能となるように、多相インバーターにおけるオン時間が補正値に基づき補正されることで、PWM信号の補正が行われて、補正されたPWM信号が多相インバーターに出力されるようになる。
【0078】
また本実施形態では、PWM制御値は、PWM信号のデューティー比であってもよい。そしてPWM信号生成部は、PWM信号のキャリア波を生成するキャリア波生成部と、補正値に基づいて、デューティー比を補正するデューティー比補正部と、キャリア波と、補正されたデューティー比とに基づいて、PWM信号を出力するPWM信号出力部を含んでよい。
【0079】
このようにすれば、所定相の電流が検出不可であると判定されると、所定相の電流が検出可能となるように、PWM信号のデューティー比が補正値に基づき補正されることで、PWM信号の補正が行われて、補正されたPWM信号が多相インバーターに出力されるようになる。
【0080】
また本実施形態では、多相インバーターは、3相インバーターであり、所定相は、PWM制御値が最大値である最大相と、PWM制御値が最小値である最小相との間の中間相であってもよい。
【0081】
このようにすれば、所定相である中間相の電流検出が不可である場合に、中間相の電流検出を可能にする補正値が求められ、求められた補正値により補正されたPWM信号を多相インバーターに出力できるようになる。
【0082】
また本実施形態では、所定相は、多相インバーターの第1相についての電流検出ができない場合における、第1相以外の相であってもよい。
【0083】
このようにすれば、第1相についての電流検出ができない場合にも、第1相以外の相である所定相の電流が検出可能になるような補正が行われるようになるため、PWM信号による適正な駆動を実現することが可能になる。
【0084】
また本実施形態の制御方法は、多相インバーターに流れる電流に基づくPWM制御値に基づいて、多相インバーターの各相のPWM信号を生成するPWM信号生成ステップと、PWM信号の補正値を演算する補正値演算ステップと、含む。そして補正値演算ステップにおいて、PWM制御値に基づいて、多相のうち所定相の電流が検出可能であるか否かの判定を行い、所定相の電流が検出不可であると判定された場合に、所定相の電流が検出可能となるようにPWM信号を補正するための補正値を演算する。またPWM信号生成ステップにおいて、補正値により補正されたPWM信号を多相インバーターに出力する。
【0085】
このようにすれば、所定相の電流が検出可能になるように補正されたPWM信号を、多相インバーターに出力して、多相インバーターにより駆動対象を駆動できるようになり、駆動対象の安定した駆動を継続することなどが可能になる。
【0086】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また制御装置、補正値演算部、PWM信号生成部の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0087】
10…制御装置、11、12、13…サンプルホールド回路、14…電流値決定部、15…電流推定部、16…電流選択部、20…モーター制御部、21…指令速度演算部、22…速度推定部、23…速度PI制御部、24…電流PI制御部、25、26…座標変換部、27…変調部、30…PWM制御部、32…電流非検出相判定部、40…補正値演算部、42…中間相選択部、44…中間相検出可能判定部、46…減算器、48…セレクター、50…PWM信号生成部、52…キャリア波生成部、54…キャリア波補正部、55…電圧指令値補正部、56…オン時間補正部、57…デューティー比補正部、60…PWM信号出力部、80…多相インバーター、81、82、83、84、85、86…スイッチング素子、87、88、89…電流検出器、100…駆動対象、110…モーター、DTu、DTv、DTw…デューティー比、SEL…選択信号、TOu、TOv、TOw…オン時間、Vuc、Vvc、Vwc…電圧指令値、iu、iv、iw…電流
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