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特開2022-183668バスバーユニットおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183668
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】バスバーユニットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20221206BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091108
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新保 豊
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB16
5H604BB17
5H604CC01
5H604CC05
5H604QB04
5H604QB14
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP12
5H615SS16
5H615SS20
(57)【要約】
【課題】歩留まりを良好にしつつバスバーの歪みを抑制することができるバスバーユニットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】バスバー51は、第1円弧部51a,第2円弧部51bおよび単一の幅狭部51gを備えており、第1円弧部51aと第2円弧部51bとを幅狭部51gを中心に開いた略J字形状に打ち抜いた後で、第1円弧部51aと第2円弧部51bとを幅狭部51gを中心に折り曲げて略C字形状にすることで、バスバー51を成形することができる。したがって、バスバー51を順送プレス機等で成形する場合において、最初から略C字形状に打ち抜く場合に比して、打ち抜かれるワークの送りピッチを詰めることができ、ひいては歩留率を向上させることが可能となる。さらには、折り曲げ部分を単一の幅狭部51gのみにできるので、バスバー51の歪み発生率を抑制することが可能となる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相のコイルに対応して設けられ、軸方向視で略C字形状に形成された複数のバスバーと、
複数の前記バスバーを互いに非接触の状態で保持する絶縁体と、
を備えたバスバーユニットであって、
前記バスバーは、
軸方向視で略円弧形状に形成された第1円弧部と、
前記第1円弧部に設けられ、かつ前記第1円弧部の径方向外側に突出された電源接続部と、
軸方向視で略円弧形状に形成され、かつ前記第1円弧部よりも短い長さ寸法の第2円弧部と、
前記第1円弧部および前記第2円弧部に設けられ、かつ前記第1円弧部および前記第2円弧部の径方向外側に突出されたコイル接続部と、
前記第1円弧部と前記第2円弧部との間に設けられ、前記第1円弧部および前記第2円弧部の径方向における幅寸法よりも小さい幅寸法の単一の幅狭部と、
を有することを特徴とする、
バスバーユニット。
【請求項2】
前記コイル接続部の径方向外側への突出高さが、前記電源接続部の径方向への突出高さよりも小さいことを特徴とする、
請求項1に記載のバスバーユニット。
【請求項3】
前記第1円弧部および前記第2円弧部の径方向と交差する方向の厚み寸法が、前記幅狭部の幅寸法の略1/2であり、前記第1円弧部および前記第2円弧部の幅寸法が、前記幅狭部の幅寸法の略2倍であることを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載のバスバーユニット。
【請求項4】
前記バスバーが、無酸素銅製の板材により形成されていることを特徴とする、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のバスバーユニット。
【請求項5】
複数の相のコイルに対応して設けられ、軸方向視で略C字形状に形成された複数のバスバーと、
複数の前記バスバーを互いに非接触の状態で保持する絶縁体と、
を備えたバスバーユニットの製造方法であって、
銅板を打ち抜くことで、軸方向視で略円弧形状に形成された第1円弧部と、前記第1円弧部に設けられ、かつ前記第1円弧部の径方向外側に突出された電源接続部と、軸方向視で略円弧形状に形成され、かつ前記第1円弧部よりも短い長さ寸法の第2円弧部と、前記第1円弧部および前記第2円弧部に設けられ、かつ前記第1円弧部および前記第2円弧部の径方向外側に突出されたコイル接続部と、前記第1円弧部と前記第2円弧部との間に設けられ、前記第1円弧部および前記第2円弧部の径方向における幅寸法よりも小さい幅寸法の単一の幅狭部とを有し、略J字形状に形成されたワークを成形する第1工程と、
前記ワークの前記幅狭部を折り曲げて、略J字形状に形成された前記ワークを軸方向視で略C字形状に成形する第2工程と、
複数の前記バスバーを互いに非接触の状態、かつ同軸となるように金型の内部にセットし、溶融された樹脂材料を前記金型の内部に射出して前記絶縁体を成形する第3工程と、
を有することを特徴とする、
バスバーユニットの製造方法。
【請求項6】
前記第1工程において、前記ワークは、順送プレス機により前記銅板を打ち抜いて成形され、前記順送プレス機の送りピッチが、前方の前記ワークにおける前記電源接続部の部分が、後方の前記ワークにおける前記第1円弧部の径方向内側に入り込む送りピッチであることを特徴とする、
請求項5に記載のバスバーユニットの製造方法。
【請求項7】
前記順送プレス機は、当該順送プレス機を形成する昇降部材の1回の昇降動作で、前記第1工程および前記第2工程の双方を実施することを特徴とする、
請求項6に記載のバスバーユニットの製造方法。
【請求項8】
前記コイル接続部の径方向外側への突出高さが、前記電源接続部の径方向への突出高さよりも小さいことを特徴とする、
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のバスバーユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の相のコイルに対応して設けられ、軸方向視で略C字形状に形成された複数のバスバーと、複数のバスバーを互いに非接触の状態で保持する絶縁体と、を備えたバスバーユニットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動パワーステアリング装置等の駆動源には、略円柱形状に形成されたブラシレスモータが採用されている。このようなブラシレスモータの一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたブラシレスモータは、U相,V相,W相に対応したコイルが巻装されたステータと、当該ステータに対して回転するロータと、U相,V相,W相に対応したコイルに駆動電流を分配するバスバーユニットと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-070632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたバスバーユニットでは、3つのU相用,V相用,W相用バスバーが、軸方向視で略C字形状に形成されており、その径方向内側には、ロータを形成する回転軸が回転自在に収容される比較的大きなスペースが形成されている。したがって、順送プレス機で送られるコイル材(バスバーとなる材料)の利用率が低く、歩留まりの悪化を招いていた。そこで、1つだけ設けられる中性点用バスバーのように、折り曲げ加工前の形状を略I字形状(略真っ直ぐな形状)となるように打ち抜いて、その後、当該バスバーの長手方向における2箇所を折り曲げて、軸方向視で略C字形状にすることも考えられる。
【0005】
しかしながらバスバーは、導電性に優れる一方で柔らかい銅板等からなり、かつ2箇所の折り曲げ部は他の部分に比して大分細くなっている。そのため、バスバーを樹脂モールドする際に、溶融樹脂の圧力が折り曲げ部に掛かり、ひいては折り曲げ部が変形してバスバー全体に歪みが生じ易いという問題があった。特に、折り曲げ部が2箇所存在するため、バスバーの歪み発生率が高く、それを抑制する必要があった。
【0006】
本発明の目的は、歩留まりを良好にしつつバスバーの歪みを抑制することができるバスバーユニットおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバスバーユニットでは、複数の相のコイルに対応して設けられ、軸方向視で略C字形状に形成された複数のバスバーと、複数の前記バスバーを互いに非接触の状態で保持する絶縁体と、を備えたバスバーユニットであって、前記バスバーは、軸方向視で略円弧形状に形成された第1円弧部と、前記第1円弧部に設けられ、かつ前記第1円弧部の径方向外側に突出された電源接続部と、軸方向視で略円弧形状に形成され、かつ前記第1円弧部よりも短い長さ寸法の第2円弧部と、前記第1円弧部および前記第2円弧部に設けられ、かつ前記第1円弧部および前記第2円弧部の径方向外側に突出されたコイル接続部と、前記第1円弧部と前記第2円弧部との間に設けられ、前記第1円弧部および前記第2円弧部の径方向における幅寸法よりも小さい幅寸法の単一の幅狭部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のバスバーユニットの製造方法では、複数の相のコイルに対応して設けられ、軸方向視で略C字形状に形成された複数のバスバーと、複数の前記バスバーを互いに非接触の状態で保持する絶縁体と、を備えたバスバーユニットの製造方法であって、銅板を打ち抜くことで、軸方向視で略円弧形状に形成された第1円弧部と、前記第1円弧部に設けられ、かつ前記第1円弧部の径方向外側に突出された電源接続部と、軸方向視で略円弧形状に形成され、かつ前記第1円弧部よりも短い長さ寸法の第2円弧部と、前記第1円弧部および前記第2円弧部に設けられ、かつ前記第1円弧部および前記第2円弧部の径方向外側に突出されたコイル接続部と、前記第1円弧部と前記第2円弧部との間に設けられ、前記第1円弧部および前記第2円弧部の径方向における幅寸法よりも小さい幅寸法の単一の幅狭部とを有し、略J字形状に形成されたワークを成形する第1工程と、前記ワークの前記幅狭部を折り曲げて、略J字形状に形成された前記ワークを軸方向視で略C字形状に成形する第2工程と、複数の前記バスバーを互いに非接触の状態、かつ同軸となるように金型の内部にセットし、溶融された樹脂材料を前記金型の内部に射出して前記絶縁体を成形する第3工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バスバーは、第1円弧部,第2円弧部および単一の幅狭部を備えており、第1円弧部と第2円弧部とを幅狭部を中心に開いた略J字形状に打ち抜いた後で、第1円弧部と第2円弧部とを幅狭部を中心に折り曲げて略C字形状にすることで、バスバーを成形することができる。したがって、バスバーを順送プレス機等で成形する場合において、最初から略C字形状に打ち抜く場合に比して、打ち抜かれるワークの送りピッチを詰めることができ、ひいては歩留率を向上させることが可能となる。さらには、折り曲げ部分を単一の幅狭部のみにできるので、バスバーの歪み発生率を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ブラシレスモータをカバー部材側から見た斜視図である。
図2】カバー部材の図示を省略した図である。
図3図2のA-A線に沿う断面図である。
図4】バスバーユニットおよび駆動用コネクタを示す斜視図である。
図5】バスバー単体の正面図である。
図6】プレス加工ラインの概要を説明する図である。
図7】[打ち抜き工程(本発明)]を説明する図である。
図8】[打ち抜き工程(比較例)]を説明する図である。
図9】[折り曲げ工程]を説明する図である。
図10】[射出成形工程]を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1はブラシレスモータをカバー部材側から見た斜視図を、図2はカバー部材の図示を省略した図を、図3図2のA-A線に沿う断面図を、図4はバスバーユニットおよび駆動用コネクタを示す斜視図を、図5はバスバー単体の正面図を、図6はプレス加工ラインの概要を説明する図を、図7は[打ち抜き工程(本発明)]を説明する図を、図8は[打ち抜き工程(比較例)]を説明する図を、図9は[折り曲げ工程]を説明する図を、図10は[射出成形工程]を説明する図をそれぞれ示している。
【0013】
図1ないし図3に示されるブラシレスモータ10は、電動の自動二輪車等(駆動対象物)の駆動源に用いられるモータ装置である。具体的には、ブラシレスモータ10は、車体フレームに設置され、チェーンやベルトを介して駆動輪の車軸を駆動する。なお、ブラシレスモータ10を、駆動輪の車軸に直接設けることもできる。
【0014】
ブラシレスモータ10は、当該ブラシレスモータ10の外郭を形成するハウジング20を備えている。ハウジング20は、略有底筒状に形成されたアルミニウム製のハウジング本体21と、略円板状に形成されたアルミニウム製のカバー部材22とを備えている。ここで、カバー部材22は、シール部材として機能するガスケット23(図1および図3参照)を介して、ハウジング本体21の開口側(図1および図3の上側)を閉塞している。
【0015】
図3に示されるように、ハウジング20の内部には、モータユニット40が収容されている。モータユニット40は、ハウジング本体21の内側に固定されたステータ41と、当該ステータ41の径方向内側において微小隙間(エアギャップ)を介して回転されるロータ42と、を備えている。
【0016】
ステータ41は、複数の鋼板(磁性体)を積層することで略筒状に形成されたステータコア41aを有している。ステータコア41aの径方向内側には、複数のティース(図示せず)が設けられ、これらのティースにはプラスチック等の非磁性体からなるインシュレータ41bを介して、U相,V相およびW相の三相に対応したそれぞれのコイル41cが、それぞれ集中巻き等により巻装されている。
【0017】
また、ステータ41の軸方向一側(図3の上側)には、環状のバスバーユニット50が設けられている。バスバーユニット50には、U相用電源ターミナルTU,V相用電源ターミナルTVおよびW相用電源ターミナルTWの基端部Tb(図4参照)が、それぞれ電気的に接続されている。ここで、バスバーユニット50は、U相,V相およびW相の三相に対応したそれぞれのコイル41cに対して、駆動電流を分配する機能を有する。
【0018】
ロータ42は、複数の鋼板(磁性体)を積層することで略筒状に形成されたロータ本体42aを備えている。ロータ本体42aの回転中心には、丸鋼棒からなる回転軸42bが固定されている。すなわち、回転軸42bは、ロータ本体42aとともに回転される。また、ロータ本体42aの内部には、略板状に形成された複数のマグネット42cが設けられている。なお、複数のマグネット42cは、ロータ本体42aの周方向に対して、N極およびS極が交互に現れるように配置されている。
【0019】
ただし、上述のようにロータ本体42aの内部に複数のマグネット42cを埋め込んだ所謂「IPM(Interior Permanent Magnet)構造」に限らず、ロータ本体42aの表面にマグネット(図示せず)を装着した所謂「SPM(Surface Permanent Magnet)構造」を採用することもできる。
【0020】
ロータ42を形成する回転軸42bの軸方向一側には、略円板形状に形成されたセンサマグネット42dが固定されている。センサマグネット42dは、ロータ42(回転軸42b)の回転状態を検出するために用いられる。そして、センサマグネット42dは、ロータ42の軸方向において、センサ基板44に設けられた回転センサ44aと対向している。
【0021】
また、回転軸42bの軸方向一側は、ベアリングホルダ43に装着された第1ボールベアリングBB1により回転自在に支持されている。これに対し、回転軸42bの軸方向他側(図3の下側)は、ハウジング本体21に装着された第2ボールベアリングBB2により回転自在に支持されている。
【0022】
ハウジング本体21は、略円板状に形成された底壁部21aを備えている。底壁部21aの中心部分には、略筒状に形成された軸受装着部21bおよびシール装着部21cが一体に設けられている。軸受装着部21bおよびシール装着部21cはそれぞれ同軸上に配置されている。軸受装着部21bはハウジング本体21の内側に設けられ、軸受装着部21bの径方向内側には第2ボールベアリングBB2の外輪が装着されている。これに対し、シール装着部21cはハウジング本体21の外側に設けられ、シール装着部21cの径方向内側にはゴム製のリップシールLSが装着されている。
【0023】
なお、第2ボールベアリングBB2の内輪は、回転軸42bの軸方向他側に装着され、リップシールLSは、第2ボールベアリングBB2よりもハウジング本体21の外側寄りの部分において、回転軸42bの外周に接触されている。これにより、ハウジング20の内部への雨水や埃等の進入が阻止される。
【0024】
また、ハウジング本体21の外部で、かつ底壁部21aの径方向外側には、合計4つの固定脚21d(図1および図2では3つのみ示す)が設けられている。これらの固定脚21dは、底壁部21aの周囲に等間隔(90度間隔)となるように一体に設けられ、自動二輪車の骨格を形成する車体フレーム等に、ボルトを介して固定される。
【0025】
さらに、ハウジング本体21は、略筒状に形成された筒状壁部21eを備えている。筒状壁部21eの軸方向他側は、底壁部21aの径方向外側に一体に設けられている。そして、筒状壁部21eの径方向内側には、ステータコア41aが圧入されて接着剤等により強固に固定されている。また、筒状壁部21eの径方向外側には、ブラシレスモータ10の駆動により発生したモータユニット40(ステータコア41a)の熱を、ハウジング本体21の外部に放熱する複数の冷却フィン21fが一体に設けられている。
【0026】
さらに、ハウジング本体21は、多角形壁部24を備えている。多角形壁部24は、筒状壁部21eの軸方向一側(図3の上側)に、当該筒状壁部21eと同軸となるように一体に設けられている。そして、図2に示されるように、多角形壁部24は、ハウジング本体21を軸方向一側から見ると、略正六角形形状に形成されている。
【0027】
具体的には、多角形壁部24は、第1辺部24a,第2辺部24b,第3辺部24c,第4辺部24d,第5辺部24eおよび第6辺部24fを備えており、これらの6つの辺部24aないし24fが、略正六角形を形成している。なお、多角形壁部24には開口部24gが設けられ、当該開口部24gからハウジング本体21の内部に、ステータ41やロータ42(モータユニット40)が組み付けられる。また、開口部24gは、ガスケット23を介してカバー部材22により密閉されている。
【0028】
第1辺部24aには、駆動用コネクタ25が装着され、当該駆動用コネクタ25は、ハウジング20の軸方向一側に設けられている。駆動用コネクタ25は、プラスチック等の樹脂材料からなるコネクタブロック25aを有し、当該コネクタブロック25aは、固定ねじ等(図示せず)により、第1辺部24aに固定されている。
【0029】
コネクタブロック25aは、ハウジング20の外部に配置され、具体的には多角形壁部24の径方向外側に突出されている。そして、コネクタブロック25aの内部には、U相用電源ターミナルTU,V相用電源ターミナルTVおよびW相用電源ターミナルTWの先端部Tt(図4参照)が露出して設けられている。なお、U相用電源ターミナルTU,V相用電源ターミナルTVおよびW相用電源ターミナルTWの基端部Tb(図4参照)は、それぞれハウジング20の内部に収容されたバスバーユニット50に電気的に接続されている。
【0030】
具体的には、U相用電源ターミナルTU,V相用電源ターミナルTVおよびW相用電源ターミナルTWの基端部Tbは、U相用,V相用およびW相用のバスバー51の電源接続部51e(図4参照)に、それぞれ抵抗溶接等により固定されている。なお、抵抗溶接等に限らず、ねじ止めやかしめ固定等によって固定することもできる。
【0031】
そして、図2に示されるように、U相用電源ターミナルTUの先端部Ttには、一端側がコントローラCUに電気的に接続されたU相用電線EUの他端側が電気的に接続されている。また、V相用電源ターミナルTVの先端部Ttには、一端側がコントローラCUに電気的に接続されたV相用電線EVの他端側が電気的に接続されている。さらに、W相用電源ターミナルTWの先端部Ttには、一端側がコントローラCUに電気的に接続されたW相用電線EWの他端側が電気的に接続されている。これにより、ステータ41のそれぞれのコイル41cに、駆動電流が供給される。
【0032】
ここで、コネクタブロック25aは、ハウジング20の軸方向と交差する方向(図2の上側)を向いている。つまり、駆動用コネクタ25に対するU相用,V相用およびW相用電線EU,EV,EWの他端側の接続方向は、それぞれハウジング20の軸方向と交差する方向となっている。また、コネクタブロック25aは、ゴム製のシール部材SM(図3参照)を介して、第1辺部24aに固定されている。これにより、コネクタブロック25aの部分からハウジング20の内部に雨水や埃等が進入することが阻止される。
【0033】
図2に示されるように、多角形壁部24には、ハウジング20の径方向外側に突出された突出部26が一体に設けられている。具体的には、突出部26は、第1辺部24aの隣に設けられた第2辺部24bからハウジング20の径方向外側に突出されている。突出部26は、ハウジング20を軸方向一側から見ると略三角形形状に形成されており、開口部26aおよび略三角形形状に形成された底壁26bを備えている。また、突出部26は、底壁26bからハウジング20の軸方向一側に起立した第1側壁26cおよび第2側壁26dを有している。なお、第2辺部24bにおいても、底壁26bからハウジング20の軸方向一側に起立している。
【0034】
このように、突出部26は、底壁26b,第1側壁26c,第2側壁26dおよび第2辺部24bにより囲まれて形成され、その内側には、接続用スペースSPが形成されている。すなわち、当該接続用スペースSPは、ハウジング20の軸方向一側に設けられている。
【0035】
接続用スペースSPは、基板用ワイヤーハーネス45の長手方向におけるコントローラ側コネクタ部47側が入り込む部分となっている。そして、接続用スペースSPは、コントローラ側コネクタ部47を基板用コネクタ27に接続する際に、コントローラ側コネクタ部47を基板用コネクタ27に誘導(案内)する機能を有する。これにより、ブラシレスモータ10の組み立ての際に、コントローラ側コネクタ部47を基板用コネクタ27に容易に接続することが可能となっている。
【0036】
ここで、第1側壁26cは、第1辺部24aの略延長線上に配置されている。また、第2側壁26dは、第3辺部24cの略延長線上に配置されている。これにより、突出部26がハウジング20の径方向外側に大きく突出することが抑えられている。なお、突出部26の開口部26aにおいても、ガスケット23を介してカバー部材22により密閉されている。
【0037】
図1ないし図3に示されるように、カバー部材22は、多角形壁部24の開口部24gを閉塞するメインカバー部22aと、突出部26の開口部26aを閉塞するサブカバー部22bとを備えている。メインカバー部22aおよびサブカバー部22bは一体となっており、メインカバー部22aは略円板状に形成され、サブカバー部22bは略三角形の板状に形成されている。
【0038】
そして、カバー部材22は、その周方向に分散配置された合計7個の固定ボルトBTにより、ハウジング本体21に強固に固定されている。なお、カバー部材22をハウジング本体21に固定する際に、両者間にガスケット23を挟み込むようにする。
【0039】
突出部26の第1側壁26cには、ハウジング20の径方向外側に突出するようにして、コネクタ固定部26eが一体に設けられている。そして、コネクタ固定部26eには、基板用コネクタ27が装着されている。ここで、基板用コネクタ27においても、駆動用コネクタ25と同様にハウジング20の軸方向一側に設けられている。
【0040】
基板用コネクタ27は、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成され、略平板状に形成された固定板部27aを備えている。固定板部27aは、一対の第1ねじS1によりコネクタ固定部26eに固定されている。なお、固定板部27aとコネクタ固定部26eとの間には、ゴム製のシール部材(図示せず)が設けられている。これにより、基板用コネクタ27の部分からハウジング20の内部に雨水や埃等が進入することが阻止される。
【0041】
また、基板用コネクタ27は、略箱形状に形成された内側接続部(図示せず)および外側接続部27cを備えている。内側接続部は、固定板部27aのコネクタ固定部26e側に設けられ、ハウジング20の内部に配置されている。これに対し、外側接続部27cは、固定板部27aのコネクタ固定部26e側とは反対側に設けられ、ハウジング20の外部に配置されている。なお、基板用コネクタ27の内部には、インサート成形等により複数の導電部材(図示せず)が埋設されている。
【0042】
ここで、基板用コネクタ27の内側接続部には、突出部26の内側の接続用スペースSPにおいて、基板用ワイヤーハーネス45のコントローラ側コネクタ部47が接続される。これに対し、基板用コネクタ27の外側接続部27cには、一端側がコントローラCUに電気的に接続された基板用電線SE(図2参照)の他端側が、コネクタ接続部(図示せず)を介して接続される。すなわち、基板用電線SEの他端側は、基板用コネクタ27の内部に設けられた導電部材の一端側に電気的に接続されている。
【0043】
そして、図1および図2に示されるように、ハウジング20の外部に配置されたコネクタブロック25aと、同じくハウジング20の外部に配置された外側接続部27cとは、それぞれハウジング20の軸方向と交差する方向でかつ同じ方向(図2の上方)を向いている。また、駆動用コネクタ25および基板用コネクタ27は、ハウジング20をその軸方向と交差する方向から見たときに、ハウジング20の軸方向と交差する方向に横一列で並んで近接配置されている。これにより、ブラシレスモータ10に対するU相用,V相用,W相用電線EU,EV,EWおよび基板用電線SEの取り回し性を向上させつつ、これらの電線EU,EV,EW,SEを、駆動用コネクタ25および基板用コネクタ27に対して、それぞれ容易に接続可能となっている。
【0044】
さらに、駆動用コネクタ25および基板用コネクタ27は、ハウジング20をその軸方向と交差する方向から見たときに、それぞれロータ42の軸方向寸法の範囲内、つまり回転軸42bの軸方向寸法の範囲内に設けられている(図3参照)。これにより、ブラシレスモータ10の軸方向寸法を詰めて、当該ブラシレスモータ10の小型化を実現している。
【0045】
図2および図3に示されるように、ハウジング本体21の軸方向一側(図3の上側)には、略正六角形の板状に形成されたアルミニウム製のベアリングホルダ43が設けられている。ベアリングホルダ43は、略正六角形に形成された多角形壁部24の径方向内側に配置され、第1ボールベアリングBB1を保持している。具体的には、第1ボールベアリングBB1は、ベアリングホルダ43の中央部分に形成された保持筒43aに装着されている。なお、保持筒43aは、ハウジング本体21の軸方向他側(図3の下側)に向けて突出され、かつバスバーユニット50の径方向内側に入り込んでいる。これによっても、ブラシレスモータ10の軸方向寸法が詰められている。
【0046】
そして、ベアリングホルダ43は、ハウジング本体21の軸方向一側に、合計6つの第1固定ボルトB1により強固に固定されている。なお、合計6つの第1固定ボルトB1は、ベアリングホルダ43の角部近傍に位置するように分散配置され、かつハウジング本体21の軸方向一側から締め付けられている。これにより、ベアリングホルダ43の歪みが効果的に抑えられて第1ボールベアリングBB1の位置精度が確保される。よって、ロータ42のスムーズな回転が可能となる。また、第1固定ボルトB1はハウジング20の内部に設けられるが、仮に締め付けが緩んで外れたとしても、ロータ42側に脱落することがなく、回転部分の損傷が確実に防止される。
【0047】
また、ベアリングホルダ43のロータ42側とは反対側で、かつ突出部26の近傍には、略板状に形成されたクリップ固定部43bが設けられている。クリップ固定部43bは、隣り合う第1固定ボルトB1の間に配置され、かつハウジング20の軸方向一側(図2の手前側)に突出されている。そして、クリップ固定部43bには、基板用ワイヤーハーネス45に固定されたクリップ部材49が固定されている。
【0048】
さらに、ベアリングホルダ43のロータ42側とは反対側で、かつ中央部分には、第1ボールベアリングBB1が保持筒43aから脱落するのを防止する環状の支持プレート43cが設けられている。具体的には、支持プレート43cは、その径方向内側の部分で第1ボールベアリングBB1の外輪を押さえている。これにより、第1ボールベアリングBB1のスムーズな動作が確保される。
【0049】
そして、支持プレート43cは、当該支持プレート43cの周方向に等間隔(90度間隔)で配置された合計4つの第2固定ボルトB2(図2では3つのみ示す)により、ベアリングホルダ43に固定されている。ここで、第2固定ボルトB2においてもハウジング20の内部に設けられるが、仮に締め付けが緩んで外れたとしても、ロータ42側に脱落することがなく、回転部分の損傷が確実に防止される。
【0050】
また、ベアリングホルダ43のロータ42側とは反対側で、かつ第1ボールベアリングBB1の周囲には、合計4つの支持柱43dが設けられている。これらの支持柱43dは、ハウジング20の軸方向一側に、それぞれ所定高さで突出されており、その先端部分にはセンサ基板44が固定されている。つまり、合計4つの支持柱43dは、センサ基板44を支持している。
【0051】
具体的には、それぞれの支持柱43dは、第1ボールベアリングBB1の周囲に等間隔(90度間隔)で配置され、対角線上に配置された一対の支持柱43dに、一対の第2ねじS2によりセンサ基板44が固定されている。なお、第2ねじS2においてもハウジング20の内部に設けられるが、仮に締め付けが緩んで外れたとしても、ロータ42側に脱落することがなく、回転部分の損傷が確実に防止される。
【0052】
合計4つの支持柱43dに支持されるセンサ基板44は、ハウジング20の軸方向一側に設けられ、略正方形形状に形成されたプリント基板(PCB)となっている。そして、センサ基板44の中央部分には、磁気抵抗素子からなる回転センサ44aが設けられている。回転センサ44aは、ハウジング20の軸方向において、回転軸42bの軸方向一側に固定されたセンサマグネット42dに対して、微小隙間を介して対向している(図3参照)。これにより、回転センサ44aは、回転軸42bの回転状態(回転方向や回転速度等)を検出する。
【0053】
また、センサ基板44には、基板用ワイヤーハーネス45の基板側コネクタ部48が接続される基板側接続部44bが設けられている。そして、センサ基板44に設けられた基板側接続部44bは、図2に示されるように、突出部26の接続用スペースSPに向けられており、これにより、基板側コネクタ部48を基板側接続部44bに容易に接続することが可能となっている。
【0054】
ここで、基板用ワイヤーハーネス45は、センサ基板44と基板用コネクタ27との間に設けられ、当該基板用ワイヤーハーネス45は、ハウジング20の内部において、コントローラCU(図2参照)とセンサ基板44とを電気的に接続する機能を有する。よって、回転センサ44aの検出信号は、基板用ワイヤーハーネス45および基板用電線SEを介して、コントローラCUに送出される。
【0055】
図3ないし図5に示されるように、ステータ41の軸方向一側に設けられるバスバーユニット50は、軸方向視で略環状に形成されている。バスバーユニット50の径方向内側には、ブラシレスモータ10を組み立てた状態において、保持筒43aが配置されている。よって、バスバーユニット50の径方向内側には、第1ボールベアリングBB1および回転軸42bの一部も配置されている。ここで、本発明における軸方向視とは、図4のバスバー51の板厚方向を示している。
【0056】
バスバーユニット50は、軸方向視で略C字形状に形成された合計3つのバスバー51を備えており、これらのバスバー51は、U相,V相およびW相(三相)のコイル41c(図3参照)に対応して、それぞれU相用,V相用およびW相用となっている。なお、3つのバスバー51は、図5に示されるように、それぞれ同じ形状に形成されている。
【0057】
バスバー51は、無酸素銅(C1020)製の板材(銅板)を、図6に示される順送プレス機62を用いて[打ち抜き加工]および[折り曲げ加工]をこの順番で施すことで形成されている。ここで、無酸素銅(C1020)とは、純度が99.96%以上の純銅であって、導電性に優れかつ柔軟な素材となっている。なお、バスバーユニット50の仕様に応じて、無酸素銅(C1020)以外の素材を用いることもできる。
【0058】
また、バスバーユニット50は、U相用,V相用およびW相用のバスバー51を保持するバスバー支持部52を備えている。バスバー支持部52は、本発明における絶縁体に相当し、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで環状に形成されている。具体的には、図4に示されるように、バスバー支持部52は、3つのバスバー51を、それぞれ周方向に所定量(略30度)ずらした状態で、かつ互いに非接触の状態(短絡させない状態)となるように同軸上で保持している。
【0059】
なお、3つのバスバー51は、バスバーユニット50の軸方向において、互いに微小隙間を介して絶縁状態で重ねられている。したがって、それぞれのバスバー51の歪みは、バスバーユニット50の製造上において確実に排除したい事象となっている。言い換えれば、バスバーユニット50の軸方向寸法を詰めて、ブラシレスモータ10全体の小型化を実現するためにも、バスバー51を歪みが生じないように精度良く成形する必要がある。
【0060】
図4および図5に示されるように、バスバー51は、軸方向視で略円弧形状に形成された第1円弧部51aを備えている。第1円弧部51aの長さ寸法はL1となっており、第1円弧部51aはバスバー51の殆どの部分を占めている。また、バスバー51は、軸方向視で略円弧形状に形成された第2円弧部51bを備えている。第2円弧部51bは、第1円弧部51aと同じ曲率半径となっており、かつ第2円弧部51bの長さ寸法はL2となっている。第2円弧部51bの長さ寸法L2は、第1円弧部51aの長さ寸法L1よりも短くなっており、具体的には、長さ寸法L2は長さ寸法L1の略1/3となっている(L2≒L1/3)。
【0061】
第1円弧部51aの長手方向両側および第2円弧部51bの長手方向一側(図5の右側)には、それぞれコイル接続部51cが一体に設けられている。すなわち、バスバー51には、合計3つのコイル接続部51c設けられている。なお、第1円弧部51aに設けられる一対のコイル接続部51cの間隔は180度間隔となっている。また、第1円弧部51a長手方向他側(図5の下側)のコイル接続部51cと第2円弧部51bのコイル接続部51cとの間隔は90度間隔となっている。
【0062】
そして、これら3つのコイル接続部51cは、第1円弧部51aおよび第2円弧部51bの径方向外側に突出されており、第1円弧部51aおよび第2円弧部51bからの突出高さはH1となっている。ここで、コイル接続部51cの突出高さH1は、バスバー51の径方向における第1円弧部51aおよび第2円弧部51bの幅寸法W1の略2倍の大きさとなっている(H1≒2×W1)。
【0063】
コイル接続部51cは、バスバー51を軸方向から見たときに、略長方形形状に形成されており、その長手方向両側には、コイル41c(図3参照)の端部が接続される凹部51dが設けられている。これらの凹部51dの開口側の部分は、バスバー51の径方向外側を向いており、バスバー51の径方向外側からコイル41cの端部が入り込むようになっている。ここで、凹部51dに入り込んだコイル41cの端部は、コイル接続部51cの長手方向両側をかしめることで、当該コイル接続部51cに電気的に接続される。なお、かしめた上でさらにはんだ付け等により固定しても良い。これにより、より確実にコイル41cの端部とコイル接続部51cとを電気的に接続することが可能となる。
【0064】
また、第1円弧部51aの長手方向中央部には、電源接続部51eが一体に設けられている。電源接続部51eは、第1円弧部51aの長手方向両側に設けられたコイル接続部51cの双方に対して、90度間隔となるように配置されている。電源接続部51eは、コイル接続部51cに比して、第1円弧部51aの径方向外側に大きく突出されており、第1円弧部51aからの突出高さはH2となっている。具体的には、コイル接続部51cの突出高さH1の方が、電源接続部51eの突出高さH2よりも小さく、突出高さH1は突出高さH2の略1/2の大きさとなっている(H1≒H2/2)。
【0065】
電源接続部51eは、バスバー51を軸方向から見たときに、略長方形形状に形成されており、その短手方向両側には、コイル41c(図3参照)の端部が接続される凹部51fが設けられている。これらの凹部51fの開口側の部分は、バスバー51の径方向外側を向いており、バスバー51の径方向外側からコイル41cの端部が入り込むようになっている。ここで、凹部51fに入り込んだコイル41cの端部は、電源接続部51eの短手方向両側をかしめることで、当該電源接続部51eに電気的に接続される。なお、かしめた上でさらにはんだ付け等により固定しても良い。これにより、より確実にコイル41cの端部と電源接続部51eとを電気的に接続することが可能となる。
【0066】
そして、図4に示されるように、電源接続部51eの長手方向における先端側の先端部Tpに、U相用電源ターミナルTU,V相用電源ターミナルTVおよびW相用電源ターミナルTWの基端部Tbが電気的に接続されるようになっている。
【0067】
さらに、第1円弧部51aと第2円弧部51bとの間には、幅狭部51gが設けられている。バスバー51の径方向における幅狭部51gの幅寸法W2は、第1円弧部51aおよび第2円弧部51bの幅寸法W1よりも小さくなっている(W2<W1)。つまり、幅狭部51gは、第1円弧部51aおよび第2円弧部51bに比して、剛性が弱められている。
【0068】
言い換えると、第1円弧部51aおよび第2円弧部51bの幅寸法W1は、幅狭部51gの幅寸法W2よりも大きくなっており、具体的には、幅寸法W1は幅寸法W2の略2倍となっている(W1≒2×W2)。また、第1円弧部51aおよび第2円弧部51bの径方向と交差する方向の厚み寸法、すなわちバスバー51の板厚寸法はT(図4参照)となっており、この板厚寸法Tは、幅狭部51gの幅寸法W2の略1/2となっている(T≒W2/2)。
【0069】
上述のように、バスバー51を無酸素銅(C1020)製の板材から形成し、かつ第1円弧部51a,第2円弧部51bおよび幅狭部51gの寸法関係を、W1≒2×W2およびT≒W2/2を満たすようにすることで、バスバー51の径方向に対する幅狭部51gの変形を許容しつつも、当該幅狭部51gにシワ等の歪みが生じないようにしている。すなわち、バスバー51全体が歪むことが効果的に抑えられている。
【0070】
次に、以上のように形成されたバスバーユニット50(バスバー51およびバスバー支持部52)の製造方法について、図6ないし図10を用いて詳細に説明する。
【0071】
バスバー51は、図6に示されるプレス加工ラインPLにより成形される。プレス加工ラインPLは、その上流側から下流側(図6の左側から右側)に向けて、アンコイラ60,レベラー61および順送プレス機62を備えている。アンコイラ60は、バスバー51の材料となる無酸素銅(C1020)製の板材(銅板)を丸めてなるコイル材60aを回転自在に支持している。そして、アンコイラ60からレベラー61に向けて、コイル材60aが供給される。
【0072】
レベラー61は、複数のワークロール61aと、コイル材60aを順送プレス機62に向けて送り出すピンチローラ61bとを備えている。そして、複数のワークロール61aの部分をコイル材60aが通過することで、丸められていたコイル材60aの巻きぐせ等の歪みが除去されて平板状となる。ここで、レベラー61の部分でのコイル材60aの送り量は、ピンチローラ61bの矢印R1方向への回転速度によって決まる。
【0073】
その後、レベラー61から矯正されて出てきたコイル材60aは、順送プレス機62の送り装置62aに送られる。送り装置62aは、駆動ローラ62bを備えており、当該駆動ローラ62bの矢印R2方向への回転駆動により、順送プレス機62の内部にコイル材60aが送られていく。ここで、ピンチローラ61bの矢印R1方向への回転速度および駆動ローラ62bの矢印R2方向への回転速度は、図示しないコントローラにより同期制御される。
【0074】
順送プレス機62の内部には、基台62cと、当該基台62cに対して矢印M1に示されるように昇降駆動される昇降部材62dと、が設けられている。そして、基台62cと昇降部材62dとの間には、送り装置62aから送られてくるコイル材60aが通過するようになっている。ここで、昇降部材62dの昇降動作は、ピンチローラ61bおよび駆動ローラ62bとともに、コントローラにより同期制御される。
【0075】
基台62cおよび昇降部材62dの上流側(順送プレス機62の左側)には、コイル材60aからバスバー51となるワークW(図7参照)を打ち抜く打ち抜き部63が設けられている。打ち抜き部63は、基台62cに固定されたダイ63aと、昇降部材62dに固定されたパンチ63bと、を備えている。そして、昇降部材62dの下降動作により、パンチ63bがダイ63aに向けて移動して、これによりコイル材60aからワークWが打ち抜かれる。
【0076】
具体的には、抜く打ち抜き部63では、図7の矢印M2に示されるように、コイル材60aから略J字形状に形成されたワークWが打ち抜かれる。ここで、抜く打ち抜き部63では、ワークWに対して、第1円弧部51a,第2円弧部51b,コイル接続部51c,電源接続部51e,凹部51d,51f(図5参照)および幅狭部51gも同時に成形される。
【0077】
また、順送プレス機62における送りピッチP1は、前方のワークW(3)における電源接続部51eの部分が、後方のワークW(4)における第1円弧部51aの径方向内側に入り込む送りピッチとなっており、その結果、歩留率が高められている。例えば、コイル材60aの単位長さLの範囲において、略3個のワークWを取り出すことが可能となっている。
【0078】
ここで、比較例として、図8に示されるように、予め略C字形状に形成されたワークWを取り出す場合には、その送りピッチP2は、上述の送りピッチP1の略3倍となる(P2≒3×P1)。したがって、コイル材60aの単位長さLの範囲において、略1個のワークWしか取り出すことができない。このように、本実施の形態においては、比較例に比して歩留率が略3倍に向上している。
【0079】
このように、順送プレス機62の抜く打ち抜き部63においてワークWを成形する工程、すなわち、図7に示される[打ち抜き工程]が、本発明における第1工程に相当する。
【0080】
また、図6に示されるように、基台62cおよび昇降部材62dの下流側(順送プレス機62の右側)には、打ち抜き部63で成形されたワークWを、略J字形状(図7参照)から略C字形状(図5参照)となるように折り曲げる折り曲げ部64が設けられている。折り曲げ部64は、図9に示されるように、基台62c上に固定された支持凸部64aと、基台62c上でスライド可能なスライド部材64bとを備えている。また、折り曲げ部64は、昇降部材62dに設けられ、かつ昇降部材62dの下降動作に伴い、図9の矢印M3のようにスライド部材64bを支持凸部64aに向けて移動させる押圧部材64c(図6参照)を備えている。
【0081】
なお、スライド部材64bと押圧部材64cとの間には、テーパカム(図示せず)が設けられており、これにより、押圧部材64cの下方への移動がスライド部材64bの横方向への移動に変換され、ひいてはスライド部材64bが支持凸部64aに近付くように移動される。
【0082】
よって、図9に示されるように、支持凸部64aとスライド部材64bとの間に供給された略J字形状のワークWが、破線で示されるように折り曲げられて、軸方向視で略C字形状となるように塑性変形される。具体的には、ワークWにおける第2円弧部51bのコイル接続部51cが、スライド部材64bにより押圧され、これにより第1円弧部51aと第2円弧部51bとの間の単一の幅狭部51gが折り曲げられる。このとき、ワークWにおける幅狭部51gを中心として、幅狭部51gの部分の1箇所のみが塑性変形されるため、成形後のバスバー51全体が歪むようなこと抑えられ、従前に比して精度良くバスバー51を成形可能となっている。
【0083】
このように、順送プレス機62は、当該順送プレス機62を形成する昇降部材62dの1回の昇降動作で、打ち抜き部63による[打ち抜き工程]と、折り曲げ部64による[折り曲げ工程]との双方が実施される。なお、図9に示される[折り曲げ工程]が、本発明における第2工程に相当する。
【0084】
[折り曲げ工程]が終了して、図5に示されるような形状に仕上げられたバスバー51は、図6の矢印M4に示されるように、順送プレス機62の下流側に排出されて、ストッカSTに集められる。
【0085】
ストッカSTに集められたバスバー51は、図10に示される[射出成形工程]に移行される。[射出成形工程]は、本発明における第3工程に相当し、射出成形装置70が用いられる。射出成形装置70は、基台(図示せず)に固定された下金型71と、当該下金型71に対して昇降駆動される上金型72とを備えている。また、上金型72には、溶融樹脂MRが流通する流通路72aが設けられ、当該流通路72aの上流側(図10の上側)には、溶融樹脂MRを所定圧で射出するディスペンサDPが設けられている。
【0086】
そして、U相用,V相用およびW相用の3つのバスバー51を下金型71にセットする。このとき、3つのバスバー51は、互いに非接触の状態とされ、かつ同軸となるように下金型71にセットする。その後、当該状態のもとで、上金型72を下降駆動して下金型71に突き当てる。すると、上下金型71,72の内部に、バスバー支持部52を形作るキャビティCAが形成される。次いで、図中矢印M5に示されるように、ディスペンサDPを駆動して、流通路72aに所定圧で溶融樹脂MRを供給する。これにより、キャビティCAの内部に溶融樹脂MRが射出されて、バスバー支持部52が成形される。
【0087】
ここで、ディスペンサDPから供給される溶融樹脂MRは、ある程度の粘度を有しており、かつバスバー51同士の間の狭い隙間に溶融樹脂MRを行き渡らせる必要がある。したがって、溶融樹脂MRは、比較的大きな圧力でキャビティCAの内部に充填される。
【0088】
このとき、第1円弧部51a,第2円弧部51bおよび幅狭部51g(図5参照)のうちの最も変形し易い幅狭部51gは1箇所だけであり、かつ第1円弧部51a,第2円弧部51bおよび幅狭部51gの寸法関係を、W1≒2×W2およびT≒W2/2を満たすようにしている。そのため、幅狭部51gの剛性が第1円弧部51aおよび第2円弧部51bに対して極端に低下することはない。よって、それぞれのバスバー51が溶融樹脂MRの圧力で歪むことが効果的に抑えられて、ひいてはそれぞれのバスバー51が互いに短絡することはない。
【0089】
その後、上下金型71,72を水冷等により強制冷却することで、溶融樹脂MRを硬化させる。なお、上下金型71,72を暫く放置して自然に冷却させても良い。次いで、図中矢印M6に示されるように、上金型72を上昇駆動して下金型71から引き離し、かつ硬化されたバスバー支持部52を下金型71から離型させる。これにより、バスバーユニット50が完成する。
【0090】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、バスバー51は、第1円弧部51a,第2円弧部51bおよび単一の幅狭部51gを備えており、第1円弧部51aと第2円弧部51bとを幅狭部51gを中心に開いた略J字形状に打ち抜いた後で、第1円弧部51aと第2円弧部51bとを幅狭部51gを中心に折り曲げて略C字形状にすることで、バスバー51を成形することができる。したがって、バスバー51を順送プレス機62等で成形する場合において、最初から略C字形状に打ち抜く場合に比して、打ち抜かれるワークWの送りピッチP1を詰めることができ、ひいては歩留率を向上させることが可能となる。さらには、折り曲げ部分を単一の幅狭部51gのみにできるので、バスバー51の歪み発生率を抑制することが可能となる。
【0091】
また、本実施の形態によれば、コイル接続部51cの径方向外側への突出高さH1が、電源接続部51eの径方向への突出高さH2よりも小さくなっている。したがって、U相用,V相用およびW相用の3つのバスバー51を下金型71にセットする際に、電源接続部51eが目印となるため、それぞれのバスバー51を下金型71に対して誤ることなく正確にセットすることが可能となる。よって、バスバーユニット50の組み立て性を向上させることができる。
【0092】
さらに、本実施の形態によれば、第1円弧部51aおよび第2円弧部51bの径方向と交差する方向の厚み寸法(板厚寸法T)が、幅狭部51gの幅寸法W2の略1/2(T≒W2/2)であり、第1円弧部51aおよび第2円弧部51bの幅寸法W1が、幅狭部51gの幅寸法W2の略2倍(W1≒2×W2)となっている。
【0093】
これにより、バスバー51の径方向に対する幅狭部51gの変形を許容しつつも、当該幅狭部51gにシワ等の歪みが発生せず、ひいてはバスバー51全体が歪むことを効果的に抑えることができる。また、幅狭部51gの剛性を第1円弧部51aおよび第2円弧部51bに対して極端に低下させずに済むので、それぞれのバスバー51が溶融樹脂MRの圧力で歪むことが効果的に抑えられる。よって、それぞれのバスバー51がバスバー支持部52の内部で互いに短絡することが抑えられ、バスバーユニット50の不良の発生率を大幅に低減することができる。
【0094】
また、本実施の形態によれば、バスバー51が無酸素銅(C1020)製の板材により形成されているので、バスバー51を導電性に優れたものとし、かつ柔軟なものにできる。したがって、単一の幅狭部51gの部分のみ(1箇所のみ)を変形させることができ、つまり変形部分のコントロール性を向上させることができ、その歪みを他の部分に伝搬させずに済む。よって、バスバー51の全体に歪みが発生することを効果的に抑制することができる。
【0095】
さらに、本実施の形態によれば、[打ち抜き工程]において、ワークWは、順送プレス機62によりコイル材60aを打ち抜いて成形され、順送プレス機62の送りピッチP1が、前方のワークW(3)における電源接続部51eの部分が、後方のワークW(4)における第1円弧部51aの径方向内側に入り込む送りピッチとなっている。これにより、コイル材60aの単位長さLの範囲において、多くのワークWを取り出すことが可能となり、ひいては予め略C字形状に形成されたワークWを取り出すもの(図8参照)に比して、歩留率を大幅に向上させることができる。
【0096】
また、本実施の形態によれば、順送プレス機62は、当該順送プレス機62を形成する昇降部材62dの1回の昇降動作で、[打ち抜き工程]および[折り曲げ工程]の双方を実施するので、[打ち抜き工程]および[折り曲げ工程]をそれぞれ個別に実施するものに比して、バスバー51の製造に必要な電力等(製造エネルギ)の省力化を図ることが可能となる。
【0097】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記実施の形態においては、バスバーユニット50を備えたブラシレスモータ10を、電動の自動二輪車等の駆動源に適用したものを示したが、本発明はこれに限らない。例えば、電動の車椅子や電動の手押し車等の小型のモビリティの駆動源や、アームロボットの関節等の駆動源、さらにはパワーステアリング装置の駆動源にも適用することができる。
【0098】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0099】
10:ブラシレスモータ,20:ハウジング,21:ハウジング本体,21a:底壁部,21b:軸受装着部,21c:シール装着部,21d:固定脚,21e:筒状壁部,21f:冷却フィン,22:カバー部材,22a:メインカバー部,22b:サブカバー部,23:ガスケット,24:多角形壁部,24a:第1辺部,24b:第2辺部,24c:第3辺部,24d:第4辺部,24e:第5辺部,24f:第6辺部,24g:開口部,25:駆動用コネクタ,25a:コネクタブロック,26:突出部,26a:開口部,26b:底壁,26c:第1側壁,26d:第2側壁,26e:コネクタ固定部,27:基板用コネクタ,27a:固定板部,27c:外側接続部,40:モータユニット,41:ステータ,41a:ステータコア,41b:インシュレータ,41c:コイル,42:ロータ,42a:ロータ本体,42b:回転軸,42c:マグネット,42d:センサマグネット,43:ベアリングホルダ,43a:保持筒,43b:クリップ固定部,43c:支持プレート,43d:支持柱,44:センサ基板,44a:回転センサ,44b:基板側接続部,45:基板用ワイヤーハーネス,47:コントローラ側コネクタ部,48:基板側コネクタ部,49:クリップ部材,50:バスバーユニット,51:バスバー,51a:第1円弧部,51b:第2円弧部,51c:コイル接続部,51d:凹部,51e:電源接続部,51f:凹部,51g:幅狭部,52:バスバー支持部(絶縁体),60:アンコイラ,60a:コイル材(板材,銅板),61:レベラー,61a:ワークロール,61b:ピンチローラ,62:順送プレス機,62a:送り装置,62b:駆動ローラ,62c:基台,62d:昇降部材,63:打ち抜き部,63a:ダイ,63b:パンチ,64:折り曲げ部,64a:支持凸部,64b:スライド部材,64c:押圧部材,70:射出成形装置,71:下金型,72:上金型,72a:流通路,B1:第1固定ボルト,B2:第2固定ボルト,BB1:第1ボールベアリング,BB2:第2ボールベアリング,BT:固定ボルト,CA:キャビティ,CU:コントローラ,DP:ディスペンサ,EU:U相用電線,EV:V相用電線,EW:W相用電線,LS:リップシール,MR:溶融樹脂,PL:プレス加工ライン,SE:基板用電線,SM:シール部材,SP:接続用スペース,ST:ストッカ,Tb:基端部,Tp:先端部,Tt:先端部,TU:U相用電源ターミナル,TV:V相用電源ターミナル,TW:W相用電源ターミナル,W:ワーク
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