(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183670
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20221206BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20221206BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20221206BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61F13/49 311A
A61F13/49 410
A61F13/534 110
A61F13/532 200
A61F13/533 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091110
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 基成
(72)【発明者】
【氏名】清水 美沙
(72)【発明者】
【氏名】濱野 椋子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA07
3B200BA08
3B200BA12
3B200BB09
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA05
3B200CB03
3B200DA01
3B200DA21
3B200DB05
3B200DB18
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】伸縮性複合シートを外装体として用いつつ、伸縮性、通気性、肌触りに優れ、外観が良好で、体液漏れが防止されたパンツ型吸収性物品の提供。
【解決手段】腹側部2、股下部3、背側部4を含む外装体1と、外装体1に支持される吸収体51とを備え、吸収体51はトップシート10とバックシート30とこれらの間の吸収性シート20とを含み、吸収性シート20は親水性不織布21と高吸収性ポリマー層23とを含み、着用者の最も非肌側にパルプシート22を有し、外装体1は、複数の不織布5と、不織布5の間の伸縮性フィルム6と、これらを一体化する接合部70とを含む複合シート8を備え、複合シート70は所定の通気抵抗値を有し、接合部70は四角形に由来する角部と円に由来する部分円弧部とを有する平面視形状であり、胴周り開口部9Aに沿って周方向に設けられたウエストギャザー7をさらに有する、パンツ型吸収性物品50。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部、股下部及び背側部に区分される外装体と、前記外装体の股下部に主に支持されて体液を吸収する吸収体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収体は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される吸収性シートと、を含み、前記吸収性シートは、体液を面方向及び厚さ方向に拡散させる親水性不織布と、体液を吸収する高吸収性ポリマー層と、を含み、着用者の最も非肌側に、体液を一時的に保持するパルプシートを有し、
前記外装体は、複数の不織布と、前記不織布の間に配置された伸縮性フィルムと、面方向に互いに離隔して前記不織布と前記伸縮性フィルムとを一体化する複数の接合部と、を含む複合シートを備え、
前記複合シートは、その伸縮方向に250%伸長したときの通気抵抗値が0.01kPa・s/m以上0.5kPa・s/m以下の範囲であり、
前記各接合部は、四角形に由来する角部と、円に由来する部分円弧部と、を有する平面視形状であり、
前記腹側部の幅方向両端部と前記背側部の幅方向両端部とを接合することにより形成される胴周り開口部に沿って周方向に設けられ、弾性伸縮部材を含むウエストギャザーをさらに有する、パンツ型吸収性物品。
【請求項2】
ボクサーパンツ型の外観を有する、請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記複合シートは、伸縮方向の伸び率が150%以上270%以下である、請求項1又は請求項2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記弾性伸縮部材の本数が3本以上8本以下である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性シートは、着用者の肌側から順に第1の前記親水性不織布、第1の前記高吸収性ポリマー層、第2の前記親水性不織布、第2の前記高吸収性ポリマー、及び前記パルプシートを重ね合わせた第1の吸収性シートである、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性シートは、着用者の肌側から順に第1の前記親水性不織布、第1の前記高吸収性ポリマー層、第2の前記親水性不織布、第2の前記高吸収性ポリマー、第3の前記親水性不織布、第3の前記高吸収性ポリマー層、及び前記パルプシートを重ね合わせた第2の吸収性シートである、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性シートは、その肌側表面から前記パルプシートの肌側表面に達するエンボス溝を有し、前記エンボス溝は、前記吸収性シートの肌側表面の幅方向中央を長手方向に延びる第1のエンボス溝と、前記第1のエンボス溝と鋭角を成して交差又は接する複数のエンボス溝を含む第2のエンボス溝とを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項8】
記第2エンボス溝は、前記吸収性シートの肌側表面に平面視X字状に設けられ、前記X字の交点が前記第1のエンボス溝上に位置する、請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性シートの厚さが0.5mm以上5mm以下である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項10】
前記親水性不織布は、それぞれ、坪量が10g/m2以上40g/m2以下であり、厚さが0.05mm以上0.3mm以下である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項11】
前記パルプシートは、坪量が10g/m2以上40g/m2以下であり、厚さが0.05mm以上0.5mm以下である、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パンツ型吸収性物品について、種々の提案がなされている。特許文献1には、吸収体と、吸収体を支持する外装体とを備え、外装体は、腹側部、背側部、及びこれらの間に介在する股間部から構成され、腹側部の側縁部と背側部の側縁部との溶着領域であって、胴周り開口部及び脚周り開口部を形成する溶着接合部と、胴周り開口部及び脚周り開口部の各周縁部の略全周にわたって配設され、連続したギャザーを形成する弾性伸縮部材と、を含み、溶着接合部は、その幅方向略中央部に長さ1cm以上の非溶着部を有する、パンツ型吸収性物品が開示されている。該パンツ型吸収性物品は、良好な装着感や風合いを保持しながら良好なフィット性を有すると記載されている(段落0022)。
【0003】
しかしながら、前述の連続したギャザーは、紙おむつ等のパンツ型吸収性物品の外観を特徴付けるものであり、布等で構成される下着との外観上の大きな差異をもたらす。ギャザー部分、特に、腹回りの部位やおしり回りの部位に透けて見える糸ゴムや、その周辺の多数の大きいシワ等は、布製下着には存在しないものである。パンツ型吸収性物品の使用を第三者に知られたくない着用者にとって、このような外観上の差異は望ましいものではなく、布製下着により近い外観を有するパンツ型吸収性物品が要望されている。
【0004】
パンツ型吸収性物品の外観上の問題を改善するために、外装体として、表面材料である不織布と伸縮性フィルムとの積層体である複合シートが提案されている。特許文献2には、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、及びポリエステルエラストマーから選択された1種又は2種以上のポリマーを含む通気性の伸縮性フィルムと、該伸縮性フィルムに接合され、直交する2方向に引伸ばし可能なスパンボンド不織布とを含み、2軸弾性引伸ばし性及び通気性を有する積層体である伸縮性複合シートが開示され、さらに該伸縮性複合シートを用いたおむつ及びパーソナルケア製品の外装体が開示されている。
【0005】
また、パンツ型吸収性物品には、体液の吸収を担う吸収体が着用者の股間部に当接するように外装体の肌側表面に固着されている。しかしながら、フラッフパルプ等の吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(以下「SAP」ともいう)とを含有する従来の吸収繊維型吸収体は、1回の体液吸収で厚さが比較的大きくなり、着用者の股間部が窮屈になって着用感が低下し、現在の吸収性物品の趨勢である複数回の体液吸収に適していない。吸収繊維型吸収体を単に薄型化するだけでは、吸収体と外装体の足回り部分との間にすき間が生じ、体液が漏れやすくなり、また、体液吸収量が低下する。そこで、2枚の親水性不織布と、これらの間に接着剤により固着される高吸収性ポリマーとを含む薄型の吸収性シートの使用が検討され、種々の提案がなされている。
【0006】
特許文献3には、第1シートと、第1シートに対向配置される第2シートと、第1シートと第2シートとの間に配置されるSAPとを含み、第1シートは第2シートとの対向面が接着剤塗布面であり、第2シートは第1シートとの対向面が接着剤塗布面であり、SAPは第1シート及び/又は第2シートの接着剤塗布面に幅方向に間欠的にストライプ状に接着され、その幅方向両側は第1シート及び第2シートの接着剤塗布面同士の接着により封止された吸収性シートが、吸収体として開示されている。特許文献2によれば、吸収体の吸収性能を確保するとともに、吸収体幅を小さくすることができると記載されている(段落0012)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-137287号公報
【特許文献2】特開2008-279774号公報
【特許文献3】特開2006-158676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の伸縮性複合シートを外装体として用いた場合、常法に従って吸収体の全面を伸縮性複合シートに固着すると、吸収体と伸縮性複合シートとの固着部分(以下単に「固着部分」ともいう)において伸縮フィルムが通気性を妨げるため、着用時に蒸れが生じ易い。加えて、固着部分が硬くなり、パンツ型吸収性物品全体としての肌触りが低下する。また、通気性を向上させるために、吸収体の全面を固着するのではなく、小面積の固着部分を点在させ、単位面積当たりの固着部分の数を増やすことが考えられるが、その場合でも外装体の感触が硬くなるという課題は十分に解決されない。
【0009】
特許文献3に記載の吸収性シートは、薄型であるものの、SAPが1回目の体液を吸収及び膨潤してゲルブロッキングを起こし、体液の通り道を塞いでしまうことから、繰り返し吸収が悪く(遅く)なるという課題がある。さらに、従来の吸収性シートには、SAPが密に配置されていることで、吸収性シートが硬くなり、着用感が低下するという課題や、吸収性シートを構成するプラスチック系樹脂由来の不織布では、SAPが体液を吸収し始めるまでに体液を瞬間的に受け止める機能がないため、最初の体液を吸収できず、体液漏れや液戻りが生じるという課題もある。
【0010】
本発明の目的は、伸縮性複合シートを外装体として用いつつ、伸縮性、通気性、肌触りに優れ、外観が良好で、体液漏れが防止されたパンツ型吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、不織布と伸縮性フィルムとの間に、互いに離隔する複数の所定平面視形状の接合部を介在させて、一体化することで、所定の通気抵抗値や良好な伸縮性を有し、肌触りもよく、パンツ型吸収性物品の外装体として好適に使用できる伸縮性複合シートが得られること、さらに該伸縮性複合シートと吸収体としての所定の吸収性シートとを組み合わせて用いることで、所望のパンツ型吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記のパンツ型吸収性物品に係る。
【0012】
(1)腹側部、股下部及び背側部に区分される外装体と、前記外装体の股下部に主に支持されて体液を吸収する吸収体と、を備えるパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収体は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される吸収性シートと、を含み、前記吸収性シートは、体液を面方向及び厚さ方向に拡散させる親水性不織布と、体液を吸収する高吸収性ポリマー層と、を含み、着用者の最も非肌側に、体液を一時的に保持するパルプシートを有し、
前記外装体は、複数の不織布と、前記不織布の間に配置された伸縮性フィルムと、面方向に互いに離隔して前記不織布と前記伸縮性フィルムとを一体化する複数の接合部と、を含む複合シートを備え、
前記複合シートは、その伸縮方向に250%伸長したときの通気抵抗値が0.01kPa・s/m以上0.5kPa・s/m以下の範囲であり、
前記各接合部は、四角形に由来する角部と、円に由来する部分円弧部と、を有する平面視形状であり、
前記腹側部の幅方向両端部と前記背側部の幅方向両端部とを接合することにより形成される胴周り開口部に沿って周方向に設けられ、弾性伸縮部材を含むウエストギャザーをさらに有する、パンツ型吸収性物品。
(2)ボクサーパンツ型の外観を有する、上記(1)のパンツ型吸収性物品。
(3)前記複合シートは、伸縮方向の伸び率が150%以上270%以下である、上記(1)又は(2)のパンツ型吸収性物品。
(4)前記弾性伸縮部材の本数が3本以上8本以下である、上記(1)乃至(3)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
(5)前記吸収性シートは、着用者の肌側から順に第1の前記親水性不織布、第1の前記高吸収性ポリマー層、第2の前記親水性不織布、第2の前記高吸収性ポリマー、及び前記パルプシートを重ね合わせた第1の吸収性シートである、上記(1)乃至(4)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
(6)前記吸収性シートは、着用者の肌側から順に第1の前記親水性不織布、第1の前記高吸収性ポリマー層、第2の前記親水性不織布、第2の前記高吸収性ポリマー、第3の前記親水性不織布、第3の前記高吸収性ポリマー層、及び前記パルプシートを重ね合わせた第2の吸収性シートである、上記(1)乃至(4)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
(7)前記吸収性シートは、その肌側表面から前記パルプシートの肌側表面に達するエンボス溝を有し、前記エンボス溝は、前記吸収性シートの肌側表面の幅方向中央を長手方向に延びる第1のエンボス溝と、前記第1のエンボス溝と鋭角を成して交差又は接する複数のエンボス溝を含む第2のエンボス溝とを含む、上記(1)乃至(6)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
(8)前記第2エンボス溝は、前記吸収性シートの肌側表面に平面視X字状に設けられ、前記X字の交点が前記第1のエンボス溝上に位置する、上記(7)の吸収性物品。
(9)前記吸収性シートの厚さが0.5mm以上5mm以下である、上記(1)乃至(8)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
(10)前記親水性不織布は、それぞれ、坪量が10g/m2以上40g/m2以下であり、厚さが0.05mm以上0.3mm以下である、上記(1)乃至(9)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
(11)前記パルプシートは、坪量が10g/m2以上40g/m2以下であり、厚さが0.05mm以上0.5mm以下である、上記(1)乃至(10)のいずれかのパンツ型吸収性物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、伸縮性複合シートを外装体として用いつつ、伸縮性、通気性、肌触りに優れ、外観が良好で、体液漏れが防止されたパンツ型吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るパンツ型吸収性物品の外観を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すパンツ型吸収性物品の模式展開図である。
【
図3】
図2のX-X切断線における幅方向の模式断面図である。
【
図4】接合部を示す模式平面図である。(a)は接合部の主要な寸法を示し、(b)は接合部を配置するときの主要な角度を示し、(c)は接合部の主要な配列パターンを示す。
【
図5】複合シートの製造例の一実施形態を示す概略図である。(a)は、複合シートの製造方法の全工程を示す模式側面図である。(b)は、第3工程(接着工程)を拡大して示す模式断面図である。
【
図6】エンボス溝形成前の吸収性シート前駆体の構成を示す模式断面図である。
【
図7】別形態の吸収性シート前駆体の構成を模式的に示す断面図である。
【
図8】吸収性シートにおけるエンボス溝の構成を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図8に示す吸収性シートの幅方向の模式断面図である。(a)は
図7に示すX
1-X
1切断線による模式断面図であり、(b)は
図7に示すX
2-X
2切断線による模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、パンツ型吸収性物品50の着用とは、体液吸収の前後を問わず、着用者の身体に装着した状態をいう。パンツ型吸収性物品50の、長手方向とは、吸収性物品50を着用したときに着用者の股間部を介して前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して略直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。パンツ型吸収性物品50及びその各構成部材の肌側表面とは着用者の肌に当接する表面又は該肌を臨む表面であり、非肌側表面とは着用者の衣類に当接する表面又は衣類を臨む表面である。体液とは、尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
<パンツ型吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態のパンツ型吸収性物品50について説明する。
図1乃至
図4は、パンツ型吸収性物品50を示す。
図5は、パンツ型吸収性物品50の外装体1を構成する複合シートの製造方法を示す。
図6及び
図7は、それぞれ吸収性シート前駆体20A、25Aを示す。
図8及び
図9は、吸収性シート20として用いられる吸収性シートを示す。各図は、吸収性物品50及び各構成部材の形状や、寸法の大小関係等を規定するものではない。本実施形態のパンツ型吸収性物品50は、乳幼児、成人、及び高齢者用のパンツタイプ紙おむつとして好適に使用できる。
【0017】
本実施形態のパンツ型吸収性物品50は、
図1乃至
図3に示すように、ボクサーパンツ型の外形形状を構成する外装体1と、外装体1に主に支持されて体液を吸収する吸収体51と、を備える。パンツ型吸収性物品50の
図2に示す展開時の長手方向寸法は例えば600mm以上1000mm以下の範囲であり、幅方向寸法は例えば450mm以上900mm以下の範囲である。また、後述する股下部4の展開時幅方向寸法は、例えば、90mm以上150mm以下の範囲、又は90mm以上110mm以下の範囲である。
【0018】
前述の展開時寸法を有するパンツ型吸収性物品50は、必要に応じて所定領域に弾性伸縮部材を配設した後、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの、ギャザーを有しないパンツ型吸収性物品50とすることができる。また、着用者の股間部の窮屈感を緩和するために、股間部4の展開時幅方向寸法を前述のように狭くしても、パンツ型吸収性物品50の外形形状を、足回りを覆うボクサーパンツ型とし、吸収体51と足回りとの隙間を無くすことで漏れを抑制することができる。
【0019】
本実施形態のパンツ型吸収性物品50は、ボクサーパンツ型の外形形状を構成する外装体1と、外装体1の肌側表面で支持され、着用者の股間部を前後から覆う前後方向に略帯状の形態を有する吸収体51と、を備える。外装体1は、着用者の腹部に主に当接する腹側部2と、着用者の背部に主に当接する背側部3と、腹側部2と背側部3との間に位置して着用者の股間部に主に当接する股下部4と、を含む。外装体1は、主に股下部4の肌側表面において吸収体51を支持し、股下部4には吸収体51の一部又は全部が重なるように配置されている。吸収体51は、着用者の体液を吸収及び保持する。
【0020】
<外装体>
本実施形態の外装体1は、
図1及び
図2に示すように、股下部4の長手方向中央で幅方向に延びる仮想中心線を中心として略対称な腹側部2と背側部3とを有し、吸収体51も仮想中心線に対して略対称に配置されている。そして、吸収体51が内側になるように仮想中心線で二つ折りにされ、腹側部2及び背側部3の幅方向両側縁をそれぞれ接合したサイドシール部80により、胴周り開口部9A及び一対の脚周り開口部9Bが形成されている。また、胴周り開口部9Aには、周方向にウエストギャザー7が設けられ、パンツ型吸収性物品50に適度な締め付け感を付与している。ウエストギャザー7には弾性伸縮部材が配設され、弾性伸縮部材には、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを使用できる。弾性伸縮部材の配設本数は特に限定されないが、例えば、3本以上8本以下である。配設本数を前述の範囲とすることで、適度な締め付けが得られる。
【0021】
本実施形態のパンツ型吸収性物品50では、胴周り開口部9Aにはウエストギャザー7が設けられているものの、脚周り開口部9Bの周囲には弾性伸縮部材を配設する必要がなく、ウエストギャザー7は着用時には伸縮してギャザーが目立たない状態であることから、パンツ型吸収性物品50の外観表面にギャザーがほとんど形成されず、布製下着とほぼ同じ外観とすることができる。また、少なくとも腹側部2及び背側部3に後述する複合シート8を用い、複合シート8には樹脂製の伸縮性フィルム6が含まれていること等から、比較的幅狭のサイドシール部80を形成しても、サイドシール部80が使用上問題のない接合強度を有しているので、この点でも、パンツ型吸収性物品50の外観を布製下着に近づけることができる。
【0022】
(複合シート)
腹側部2及び背側部3には、複合シート8が外装体1として用いられる。複合シート8を用いることで、パンツ型吸収性物品50の外観において、
図1に示すように、その表面のギャザーを少なくして例えば布製下着の外観に近づけることができる。特に表面に多くのギャザーが存在すると、上着を羽織っても、上着の表面にギャザーの形が現れるので、パンツ型吸収性物品50の着用を他者に認識されるおそれがある。これに対し、本実施形態では、複合シート8の使用により、表面のギャザー量を大きく減らすことができる。したがって、パンツ型吸収性物品50の着用を他者に認識される可能性が大きく減少する。さらに、腹側部2及び背側部3に配設された複合シート8が良好な通気性を有することから、パンツ型吸収性物品50自体が優れた通気性を有し、長時間の着用でも蒸れが非常に起こり難くなり、良好な着用感が得られる。
【0023】
本実施形態の複合シート8は、2枚の不織布5と、2枚の不織布5の間に介在する伸縮性フィルム6と、不織布5と伸縮性フィルム6との間に介在して面方向に互いに離隔し、不織布5と伸縮性フィルム6とを一体化する複数の接合部70と、を備える。接合部70とは、不織布5と伸縮性フィルム6とが接着した部分である。本明細書において、不織布5と伸縮性フィルム6との一体化とは、不織布5と伸縮性フィルム6とが接着し、少なくともパンツ型吸収性物品50が消費されるまではこの接着が維持されることを意味する。接合部70は、所定の平面形状を有するが、それについては後述する。また、不織布5と伸縮性フィルム6との一体化には、熱融着、超音波接着等の方法を利用するのが好ましい。これらの方法を利用することで、所定の平面形状を有する接合部70を容易に形成できる。一体化方法についても後述する。
【0024】
一方、股下部4は、腹側部2及び背側部3と同様の複合シート8で構成してもよく、従来と同様に不織布で構成してもよい。また、不織布を股下部4の外装体として用いる場合は、従来の外装体と同様に、2層以上の不織布の積層体とすることが好ましい。2層以上の積層体とは、外装不織布シート、内装不織布シート及び補助不織布シート(いずれも不図示)の積層体であり、それぞれ、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を使用できる。これらの不織布を用いる場合、その坪量は、例えば、10g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0025】
複合シート8は、本実施形態に限定されず、3枚以上の不織布5と、各不織布15の間に配置された2枚以上の伸縮性フィルム6との積層体の接合部70による一体化物でもよい。複合シート8の立体形状としては、例えば、断面視が一方向に延びる層状であり、かつ平坦な表面を有する立体形状、断面視が一方向に延びる波線状であり、かつ表面に規則的な凹凸が存在する立体形状等が挙げられる。風合い、肌触り、クッション性等の観点から、後者の立体形状が好ましい。
【0026】
(通気抵抗値)
複合シート8は、その伸縮方向に250%伸長した後に測定した通気抵抗値が0.01kPa・s/m以上0.5kPa・s/m以下の範囲であり、好ましくは0.05kPa・s/m以上0.35kPa・s/m以下の範囲である。複合シート8が前述の通気抵抗値を有することで、股下部4の肌側表面に吸収体51を固着しても、腹側部2及び背側部3を構成する複合シート8により良好な通気性が保たれる。通気抵抗値が0.01kPa・s/m未満では、パンツ型吸収性物品50の保温性が低下し、着用感が低下する傾向がある。通気抵抗値が0.5kPa・s/mを超えると、パンツ型吸収性物品50の通気性が低下し、着用時に蒸れが生じる傾向がある。
【0027】
(伸縮方向の伸び率)
複合シート8は、伸縮方向の伸び率が例えば150%以上270%以下の範囲、又は160%以上260%以下の範囲である。ここで、伸縮方向の伸び率とは、非伸縮状態の自然長に対する、伸長により増加した分の長さの割合である。伸び率は、例えば、島津製作所製のオートグラフを用いて測定することができる。複合シート8の伸縮方向の伸び率が前述の範囲にあることにで、着用者による着脱が容易であり、適度な締め付けを有して履き心地が良く、さらにずり落ちが起こりにくく安心感のあるパンツ型吸収性物品50が得られる。
【0028】
(伸縮荷重)
複合シート8は、伸縮方向に120%伸長したときの伸長荷重が、例えば、0.8N/50mm以上2.0N/50mm以下の範囲であり、かつ、伸縮方向に150%伸長したときの伸長荷重が、例えば2.0N/50mm以上3.5N/50mm以下の範囲である。着用者の体型によって、伸長率が変化するため、120%及び150%の伸張荷重を規定した。このようにすることで、体型によってフィット感の差異が生じない。また、複合シート8は、200%以上270%以下の伸縮方向の伸び率を有する。このため、従来と比較して200%以上の伸張が可能となったため、着用者にとって、はき易く、かつ脱ぎ易いパンツ型吸収性物品50が提供できる。ここで、伸縮方向の伸び率とは、伸縮方向に120%伸長したときと同様、非伸縮状態の自然長に対する、伸長されて増加した分の長さの割合である。伸長荷重は、例えば、島津製作所製のオートグラフを用いて測定することができる。
【0029】
(破断伸度)
複合シート8の破断震度は、例えば、伸縮方向に210%以上280%以下の範囲である。破断伸度とは、非伸縮状態の自然長にある複合シート8の長さをL1とし、複合シート8を伸縮方向に伸長させて破断させたときの長さをL2とすると、破断伸度=(L2/L1)×100(%)となる。破断伸度が前述の範囲をあると、着脱の際にパンツ型吸収性物品50を大きく広げても突っ張ったり破れたりしにくくなる。破断伸度は、例えば、島津製作所製のオートグラフを用いて測定することができる。
【0030】
(不織布)
複合シート8を構成する不織布5としては、従来からパンツ型吸収性物品の外装体に用いられる不織布をいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、これらの2種以上の積層体等が挙げられる。2種以上の積層体は、例えば、ホットメルト系接着剤、熱溶着、超音波溶着等により接合される。好ましい実施形態では、不織布5は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる繊維を構成繊維として含む。複合シート8が複数の不織布5を含む場合、不織布5は異種でも同種でも良い。なお、所定の通気抵抗値及び伸縮方向の伸び率を有する複合シート8を得る観点から、不織布5の坪量は例えば15g/m2以上40g/m2以下の範囲、又は18g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0031】
(伸縮性フィルム)
複合シート8を構成する伸縮性フィルム6は、伸縮方向に伸縮した状態(伸縮方向の伸び率が所定範囲にある状態)で複合シート8中に含まれる。伸縮性フィルム6としては、伸縮性を備えたものであれば特に限定はないが、フィルム化により伸縮性を示す合成樹脂からなるフィルムが好ましい。該合成樹脂としては、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、これらの2種以上のアロイ等が挙げられる。これらのなかでも、コスト及び伸縮性能の観点から、ポリウレタン系樹脂を含むフィルムが好ましく、ポリウレタン系樹脂からなるフィルムがより好ましい。所定の通気抵抗値及び伸縮方向の伸び率を有する複合シート8を得る観点から、伸縮性フィルム6の厚みは例えば8μm以上40μm以下の範囲、伸縮性フィルム6の伸縮方向の伸び率は例えば100%以上350%以下の範囲である。
【0032】
(接合部)
複合シート8は、所定の平面視形状を有する、複数の接合部70により一体化されている。該平面視形状としては、四角形に由来する1又は複数の角部と、円に由来する一又は複数の部分円弧部とを有する平面視形状が挙げられる。より具体的には、接合部70としては、例えば、
図4に示すように、一方向に長い四角形において、該四角形の幅方向に対向する2つの長辺から円弧状の凸部が外方に突出する平面視形状を有する。この図形では、4つの角部と2つの部分円弧部とを有している。このような平面視形状を有する複数の接合部70で一体化された複合シート8は、予想外にも、良好な通気抵抗値を有して通気性が非常に高く、適度な機械的強度と伸縮性と締め付け性とを併せ持つことから、脚周り開口部9Bの周囲等の目立つ領域に弾性伸縮部材を配設する必要がなくなり、外観表面に連続したギャザーが形成されず、パンツ型吸収性物品50の外装体1として非常に好適である。これに対し、平面視形状が四角形や円である接合部で接合した複合シートを外装体として用いると、複合シートの通気抵抗値等の物性が向上しないため、従来と同様の課題を持ったパンツ型吸収性物品が得られるのみである。
【0033】
本実施形態の接合部70は、複合シート8の伸縮方向Yに対して直交して延びる四角形71と、円72とを一体化した形状であり、四角形71の対角線の交点と円72の中心とが一致し(重なり)、円72の直径が四角形71の短辺よりも長く、かつ長辺よりも短いものである。接合部70は、四角形71由来の角部を4つ有し、かつ円72由来の部分円弧状の凸部を2つ有し、該部分円弧状凸部は一方が伸縮方向Yの一方向に及び他方が伸縮方向Yの他方向にそれぞれ突出している(
図4(a))。接合部70は、四角形71部分が伸縮方向Yに対して略直交する方向に延びているが(直交方向に対する傾斜角が0°)、これに限定されず、該直交方向に対して四角形71部分の延びる方向が例えば45°、90°、135°等の角度で傾いていてもよい(
図4(b))。このような接合部70が、複合シート8の伸縮方向に沿って、所定のパターンで配列されている。該パターンとしては、例えば、
図4(c)に示すように、X配列とY配列との組み合わせである。X配列とY配列とは、伸縮方向に垂直な方向に一つずつ交互に配列されて、配列パターンを形成する。X配列にはX1配列、X2配列等があり、Y配列にはY1配列、Y2配列等がある。X1配列とX2配列とは伸縮方向の位相を規則的にずらしたものであり、同様にY1配列とY2配列とは伸縮方向の位相を規則的にずらしたものである。X配列及びY配列はそれぞれ1種を単独で用いてもよく、
図4(c)に示すように2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
図4において、接合部70の各寸法の一例を示せば、符号「A」で示す接合部70の四角形71部分の寸法(伸縮方向の長さ)は、伸縮方向Yに250%伸長させたときに例えば0.2mm以上0.4mm以下の範囲であり、符号「B」で示される、接合部70の伸縮方向Yに対してほぼ直交する方向の寸法は例えば0.8mm以上2.0mm以下の範囲であり、符号「C」で示される、接合部70の円41の直径は例えば0.3mm以上0.8mm以下の範囲である。
【0035】
また、
図4(c)において、配列X1、X2で、伸縮方向への傾斜角が0度である接合部70と、前述の接合部70に隣り合い、伸縮方向への傾斜角が90度である接合部70との、伸縮方向の最短距離D1が、複合シート8を伸縮方向Yに250%伸長させたときに、例えば1.0mm以上3.0mm以下であり、配列Y1、Y2で、伸縮方向への傾斜角が135°である接合部70と、前述の伸縮方向への傾斜角が45°である接合部70との、伸縮方向の最短距離D2が、複合シート8を伸縮方向Yに250%伸長させたときに、例えば2.0mm以上5.0mm以下の範囲であり、配列X1、Y1で、X1の伸縮方向への傾斜角が90度である接合部70と、Y1の伸縮方向への傾斜角が135°である接合部70との、伸縮方向に垂直な方向の最短距離D3が例えば1.0mm以上3.0mm以下の範囲である。
接合部70の寸法及び接合部間の最短距離を前述の範囲にすることで、複合シート8における通気性がさらに向上し、かつ、伸縮性フィルム6の耐久性の低下が緩和される。
【0036】
複合シート8は、接合部70の接着面積率が例えば4%以上18%以下の範囲である。ここで、接着面積率とは、複合シート8の単位面積当たりの、当該単位面積中に存在する接合部70の総面積の割合を百分率で示したものである。接着面積率が4%未満であると、複合シート8の通気性が低下する傾向がある。一方、接着面積率が18%を超えると、複合シート8の強度が低下する傾向がある。
【0037】
複合シート8は、例えば、
図5に示す製造方法により作製できる。
図5は複合シート8の製造方法を模式的に示す図面である。
図5(a)は、複合シート8の製造方法の全工程を示す模式側面図である。
図5(b)は、第3工程(接着工程)を拡大して示す模式断面図である。
図5に示す製造方法は、超音波接着を利用する方法であり、第1~第3工程をこの順で含んでいる。
【0038】
第1工程では、送給ローラ51に巻き付けられた伸縮性フィルム6に所定の張力を負荷しながら搬送する。伸縮性フィルム6は、所定の張力により搬送方向に伸長しながら搬送される。所定の張力とは、伸縮性フィルム6を200%以上、より好ましくは250±30%伸張させる張力である。
【0039】
第1工程に続く第2工程では、2つの送給ローラ52に巻き付けられた各不織布5を、伸張状態で搬送される伸縮性フィルム6の上下に積層し、一体化前の積層体を得る。
【0040】
第2工程に続く第3工程では、第2工程で得られた一体化前の積層体を第1、第2の接合ローラ53、54の圧接部分(以下「ニップ部」ともいう)に通過させて所定の接合部70が形成されるように一体化し、複合シート8を得る。第1の接合ローラ53は、その周面に、幅方向に延びて所定寸法及び所定の内部空間形状を有する凹部55が周方向に所定間隔で複数設けられている。第2の接合ローラ54は、その周面に、幅方向に延びて所定寸法及び所定の立体形状(前記積層体の介在下に先端部分を凹部55内に挿入可能な立体形状)を有する凸部56が周方向に所定の間隔で複数設けられている。第1、第2の接合ローラ53、54は、凹部55内に凸部56の先端部分が挿入可能になるように噛み合わされ、所定の圧力で圧接されている。第1、第2の接合ローラ53、54のニップ部には、ローラ周面の幅方向に実質的に連続するシール線が、伸縮方向に0.5mm以上2.0mm以下の間隔で形成されている。第1、第2の接合ローラ53、54は、いずれか一方又は両方が、超音波発生装置又は加熱装置を備え、凹部55の内壁面又は凸部56の少なくとも先端部分に超音波を印可可能に又は加熱可能に構成されている。
【0041】
第3工程において、第2工程で得られた一体化前の積層体を、加圧下に第1、第2の接合ローラ53、54のニップ部に通過させ、凹部55の内壁面と凸部56の先端部分との接点であるシール線を超音波印可又は加熱することにより、所定の平面形状を有する複数の接合部70が形成され、不織布5と伸縮性フィルム6とが複数の接合部70により一体化され、表面のシワが少なく、滑らかな肌触りを有する複合シート8が得られる。すなわち、
図4に示す平面形状を有する複数の接合部70が、
図4に示す所定の間隔で形成され、不織布5と伸縮性フィルム6とが一体化された複合シート8が得られる。
【0042】
<吸収体>
図3に示す吸収体51は、股下部4の肌側表面に主に支持され、肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向配置され、非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10と吸収性シート20との間に配置されるセカンドシート60と、セカンドシート60とバックシート30との間に配置される吸収性シート20と、トップシート10の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体51は、外装体1の主に股下部4の肌側表面に対して着脱自在に設けられてもよい。吸収性シート20は、着用者の肌側から順に、第1の親水性不織布21、第1の高吸収性ポリマー層(以下「SAP層」ともいう)23、第2の親水性不織布21、第2のSAP層23、及びパルプシート22を重ね合わせて構成され(
図6)、吸収性シート20の肌側表面からパルプシート22表面又はその近傍に達するエンボス溝15が所定の平面視形状で形成されている。
【0043】
本実施形態の
図3に示す吸収体51によれば、第1に、吸収性シート20の薄いという利点を保持しつつ、薄層のSAP層23を複数層設けることで、一層毎ではゲルブロッキングを防止しつつ体液吸収能力を向上させ、高吸収性ポリマー12に起因する硬さが発現するのを防止して吸収体51の着用感を向上させ、第2に、吸収性シート20の最も非肌側にパルプシート22を配することで、体液漏れや液戻りを防止し、第3に、吸収性シート20の肌側表面からパルプシート22の肌側表面に及ぶ所定のエンボス溝15を設けることで、吸収性シート20全体の体液拡散性を向上させ、複数回の体液吸収後でも吸収速度及び吸収速度が高水準に維持される。
【0044】
吸収体51は、トップシート10、吸収性シート20、及びバックシート30を基本構成単位とし、例えば、前述のような立体ギャザー40の配設、トップシート10と吸収性シート20との間へのセカンドシート60の配置等の、公知の様々な改変を加えることができる。以下、本実施形態の吸収体51の構成部材について、トップシート10、セカンドシート60、吸収性シート20、バックシート30、及び立体ギャザー40の順で更に詳しく説明する。
【0045】
(トップシート)
トップシート10は、吸収性シート20に向けて体液を速やかに通過させて吸収性シート20の面方向に体液を拡散させる液透過性のシート状基材である。トップシート10は、着用者の肌に直接当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも各不織布が好ましい。
【0046】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m2)以上40g/m2以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収性シート20に誘導するために必要とされる、吸収性シート20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0047】
(セカンドシート)
セカンドシート60は、トップシート10の非肌側、より詳しくはトップシート10と吸収性シート20との間に配置される。セカンドシート60を配置することで、クッション性が増し、フィット性と着用感が向上するとともに、トップシート10を透過してきた体液を吸収性シート20全体にほぼ均一に拡散させることができる。
【0048】
セカンドシート60の基材は、例えば、体液の透過速度がトップシート10より速く、体液を吸収性シート20へ素早く拡散する嵩高な不織布である。該不織布としてはエアスルー不織布、スパンボンド不織布等が好ましい。セカンドシート60の厚さは例えば0.1mm以上4mm以下の範囲であり、その坪量は例えば20g/m2以上60g/m2以下の範囲、又は22g/m2以上37g/m2以下の範囲である。厚さが0.1mm未満、又は、坪量が20g/m2未満もしくは60g/m2より大きいと、吸収性シート20の肌側表面全体に体液が十分に拡散しないとともに、吸収体51の着用感が低下する傾向がある。また、セカンドシート60の形状は、特に制限はないが、好ましい実施形態では、吸収性シート20の表面を完全に覆うことができる形状である。
【0049】
(吸収性シート)
吸収性シート20は、その長手方向の寸法(最大長さ)が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収性シート20の幅方向の寸法(最大幅)は、例えば、50mm以上105mm以下の範囲である。また、吸収性シート20の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が例えば180mm以上800mm以下の範囲であり、外装体1の腹側部2、及び背側部3で支持される領域の幅方向寸法がともに例えば60mm以上400mm以下の範囲であり、外装体1の股下部4で支持される領域の幅方向寸法が例えば90mm以上250mm以下の範囲である。吸収性シート20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0050】
吸収性シート20は、体液を面方向及び厚さ方向に拡散させる親水性不織布21と、体液を吸収しかつ親水性不織布21により支持される高吸収性ポリマー層23とを含み、その最も非肌側に、体液が排出されたときに体液を一時的に貯留するパルプシート22を有し、吸収性繊維を含まないものである。本実施形態の吸収性シート20の具体例としては、
図6に示す吸収性シート前駆体20A、
図7に示す吸収性シート前駆体25A等が挙げられる。本実施形態では、吸収性シート前駆体20A、25Aの肌側表面からパルプシート22の肌側表面又はその近傍に達する溝部であるエンボス溝15を形成しているが形成しなくてもよい。エンボス溝15については後述する。
【0051】
図6に示す吸収性シート前駆体20Aは、着用者の肌側から順に、第1の親水性不織布21、第1のSAP層23、第2の親水性不織布21、第2のSAP層23、及びパルプシート22を重ね合わせて構成された吸収性シートである。また、
図7に示す吸収性シート前駆体25Aは、着用者の肌側から順に、第1の親水性不織布21、第1のSAP層23、第2の親水性不織布21、第2のSAP層23、第3の親水性不織布21、第3のSAP層23、及びパルプシート22を重ね合わせて構成された吸収性シートである。吸収性シート20の厚さは、例えば、0.5mm以上5mm以下の範囲である。高吸収性ポリマー12は、第1、第2及び第3のSAP層23中に、例えば、ホットメルト接着剤により固着されている。
【0052】
(親水性不織布)
第1、第2、第3の親水性不織布21は、例えば、吸収性シート20の面方向及び厚さ方向に体液を拡散させる。親水性不織布21としては、体液の拡散性に優れる親水性不織布を特に限定なく使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂からなる繊維の1種又は2種以上を含む、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性シート20又は吸収性シート20A、25Aの薄型化の観点から、例えば、スパンボンド不織布が挙げられる。親水性不織布21の坪量は、例えば、10g/m2以上40g/m2以下の範囲である。親水性不織布21の厚さは、例えば、0.05mm以上0.3mm以下の範囲である。なお、第1、第2、第3の親水性不織布21には、同種又は異種の親水性不織布を用いることができる。
【0053】
(パルプシート)
パルプシート22は、吸収性シート20又は吸収性シート20A、25Aの最も非肌側に位置し、例えば、第2又は第3のSAP層23を支持するとともに、体液が排出されたときに、高吸収性ポリマー12が体液吸収を開始する前に、体液を一時的に貯留及び保持し、体液漏れ、液戻り等の発生を防止する。高吸収性ポリマー12が体液を吸収するよりも、パルプシート22が体液を保持する方が速いので、高吸収性ポリマー12が体液吸収を開始すると、パルプシート22に保持された体液が高吸収性ポリマー12に吸収される。パルブシート22としては、パルプ繊維(セルロース繊維)を含有するシートであれば特に限定されないが、例えば、セルロース繊維からなるクレープ紙、湿潤紙力剤を含むクレープ紙、ティシュ等が挙げられる。パルプシート22の上述の機能を十分に発揮させる観点から、パルプシート22の坪量は、例えば、10g/m2以上30g/m2以上の範囲であり、厚さは、例えば、0.05mm以上0.2mm以下の範囲である。
【0054】
(高吸収性ポリマー)
第1、第2、第3の各SAP層23に用いられる高吸収性ポリマー12としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマー12は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0055】
高吸収性ポリマー12は、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマー12の使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマー12を用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収性シート20が体液を吸収した後に硬化することにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマー12の中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0056】
第1、第2、第3のSAP層23中の高吸収性ポリマー12の坪量は、ゲルブロッキングの発生を防止する観点から、例えば、150g/m2以上800g/m2以下の範囲、又は200g/m2以上700g/m2以下の範囲である。SAPの坪量を前述の数値範囲内とすることで、第1、第2、第3のSAP層23中でのゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収性シート20を柔らかい触感にすることができる。また、第1、第2、第3のSAP層23の厚さは、例えば、0.5mm以上10.0mm以下の範囲又は0.5mm以上6.0mm以下の範囲である。なお、第1、第2、第3のSAP層23の坪量及び厚さは同一でも異なっていてもよい。
【0057】
第1、第2、第3のSAP層23中に高吸収性ポリマー12を固着させるために用いられるホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。ホットメルト接着剤の含有量は、高吸収性ポリマー12の吸収性及び装着時の肌触りを損なわない観点から、例えば10g/m2以下の範囲である。
【0058】
<吸収性シート前駆体の製造方法>
吸収性シート前駆体20Aは、公知の方法に従って製造できる。製造方法としては、例えば、第1の親水性不織布21の非肌側表面にホットメルト接着剤を塗布し、更に所定量の高吸収性ポリマー12を散布して第1のSAP層23を形成する第1工程と、第1のSAP層23の上(非肌側表面)に第2の親水性不織布21を重ね合わせ、第2の親水性不織布の非肌側表面に、第1工程と同様にして第2のSAP層23を形成する第2工程と、第2のSAP層23の上(非肌側表面)にパルプシート22を重ね合わせて吸収性シート前駆体20Aを得る第3工程とを含む製造方法が挙げられる。吸収性シート前駆体20Aには、必要に応じて、加圧処理又は加圧加熱処理を施してもよい。吸収性シート前駆体20Aにエンボス加工を施すことにより、本実施形態で使用される吸収性シート20が得られる。吸収性シート前駆体25Aも同様にして作製できる。
【0059】
(エンボス溝)
吸収性シート20の肌側表面には、該肌側表面からパルプシート22の肌側表面又はその近傍に達する溝部であって、該肌側表面の幅方向中央を長手方向に延びる第1のエンボス溝16と、第1のエンボス溝16と鋭角を成して交差又は接する複数のエンボス溝を含む第2のエンボス溝17とを有するエンボス溝15が形成されていてもよい。このようなエンボス溝15の具体例として、例えば、
図8に示すエンボス溝15が挙げられる。
図8に示すエンボス溝15は、吸収性シート20の肌側表面の幅方向中央を長手方向に延びる第1のエンボス溝16と、吸収性シート20の肌側表面に平面視X字状に設けられ、前記X字の交点が第1のエンボス溝16上に位置する第2のエンボス溝17と、を有している。
図8のX
1-X
1断面では、
図9(a)に示すように第1のエンボス溝16のみを確認することができ、
図8のX
2-X
2断面では、
図9(b)に示すように第1のエンボス溝16の幅方向両側に第2のエンボス溝17が配置されているのを確認できる。エンボス溝15は、例えば、ヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を利用して、吸収性シート20の肌側表面に形成することができる。
【0060】
本実施形態では、第1のエンボス溝16の開口部の幅方向寸法(以下単に「第1のエンボス溝16の幅寸法」ともいう)は、第2のエンボス溝17の開口部の幅方向寸法(以下単に「第2のエンボス溝17の幅寸法」ともいう)よりもやや大きめに又は同じ幅に形成され、例えば、第1のエンボス溝16の幅寸法は3mm以上8mm以下の範囲であり、第2のエンボス溝17の幅寸法は3mm以上8mm以下の範囲である。
【0061】
また、本実施形態では、複数の第2のエンボス溝17が、吸収性シートの長手方向に配列されている。すなわち、3個のX字形の第2のエンボス溝17が、前記X字の交点を線(第1のエンボス溝16)の上に置いて、長手方向に並んでいる。第2のエンボス溝17の数は、本実施形態に限定されず、1個でも複数個でもよい。好ましい実施形態では、一の第2のエンボス溝17と、これに隣り合う他の第2のエンボス溝17と、の間隔V(
図5)は、0mmでもよく、互いに離隔しているときは、例えば、0mm以上20mm以下の範囲である。Vが20mmよりも大きい場合、第2のエンボス溝17同士が長手方向に離れすぎてしまい、体液拡散性の向上が十分ではない傾向がある。
【0062】
他の好ましい本実施形態では、第1のエンボス部16の長手方向両端を幅方向に延長した2つの線Aと、第2のエンボス部17の幅方向両側において最も幅方向外側の点を長手方向に延長した2つの線Bと、で囲まれた仮想図形は、エンボス溝15全体を内包しかつ吸収性シートの平面視形状と相似関係にある最小面積の図形となる。このときに、該仮想図形の縁辺と吸収性シート20の縁辺との距離は、
図8では、長さ方向の距離であるL1、L2、幅方向の距離であるW1、W2で示されているが、これらはすべて同じになり、0mmでもよく(該仮想図形と吸収性シートの平面視形状とが一致する場合)、距離があるときは、例えば0mm以上3mm以下の範囲である。本実施形態によれば、排出された体液がエンボス部15を通して吸収性シート20に円滑に吸収される。該仮想図形の縁辺と吸収性シートの縁辺との距離が3mmを超えると、エンボス部15から拡散された体液の一部が吸収性シート20により瞬時に吸収されにくくなり、肌側表面にあふれて漏れが発生し易くなる傾向がある。なお、本実施形態に限定されず、L1、L2、W1、W2をそれぞれ単独で例えば0mm以上3mm以下の範囲で変動させてもよい。
【0063】
別の好ましい実施形態では、吸収性シート20の幅方向において、第1のエンボス溝16の幅方向一端から、第2のエンボス溝17の同じ幅方向の先端までの最小距離W3(
図5)が例えば3mm以上8mm以下の範囲である。この実施形態によれば、エンボス溝15の形成による体液拡散性の向上効果が安定的に発揮される。最小距離W3が3mm未満では、体液拡散性が不十分になる傾向がある。最小距離W3が8mm超えると、太い体液流れが生じ、漏れの原因になる傾向がある。
【0064】
さらに別の好ましい実施形態では、
図8に示す第2のエンボス溝17において、吸収性シートの幅方向縁辺を臨む、第2のエンボス溝17の平面視X字状の形状の「X」が成す角α、β、γ(
図8)の角度が50°以上90°以下である。この実施形態によれば、第2のエンボス溝17の形成による体液拡散性の向上効果が安定的に発揮される。角度α、β、γが50°未満及び90°を超える場合、体液を吸収して膨潤した高吸収性ポリマー12がゲルブロッキングを起こし、第2のエンボス溝17を埋め、体液拡散性が低下する傾向がある。なお、
図8のように複数の第2のエンボス溝17が存在する場合、角度α、β、γは同一でも異なっていてもよい。
【0065】
(キャリアシート)
本実施形態では、吸収性シート20をキャリアシート(不図示)で包んでもよい。キャリアシートは親水性シートであり、吸収性シート20を全体的に又は部分的に包む。例えば、キャリアシートの幅方向中央部に吸収性シート20を載置し、必要に応じてキャリアシートと吸収性シート20とをホットメルト接着剤等で接着した後、キャリアシートの幅方向両端部を吸収性シート20の肌側で重ね合わせて必要に応じてホットメルト接着剤等で接着することにより、キャリアシートでC折りした吸収性シート20が得られる。キャリアシートとしては、この分野で常用される親水性シートをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。また、キャリアシートの厚さは例えば0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は例えば5g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0066】
(バックシート)
バックシート30は、吸収性シート20が保持する体液が着用者の衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0067】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m2以上60g/m2以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0068】
(立体ギャザー)
立体ギャザー40は、例えば、吸収体51の着用者が排泄した体液の横漏れ等を防止するために、吸収体51の幅方向両端付近で吸収体51の長手方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0069】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収性シート20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0070】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの坪量は、例えば、13g/m2以上20g/m2以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0071】
<吸収体の製造方法>
吸収体51は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、トップシート10及びセカンドシート60と、バックシート30との間に吸収性シート20を収容する工程と、トップシート10の縁辺とバックシート30の縁辺とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を利用して固定する工程と、立体ギャザー40をバックシート30及びトップシート10の所定位置に設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。吸収体51には、必要に応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等が適宜設けられる。こうして得られた吸収体51を折り畳んで製品化される。
【0072】
<パンツ型吸収性物品の製造方法>
パンツ型吸収性物品50は、腹側部2及び背側部3、又は腹側部2、背側部3及び股下部4の外装体1として複合シート8を用いる以外は、従来のパンツ型吸収性物品と同様にして作製できる。例えば、複合シート8により腹側部2及び背側部3を作製し、股下部4を従来の不織布の積層体により構成し、これらを所定の順序で長手方向に接合して外装体1を得る工程と、外装体1の肌側表面の所定位置(主に股下部4)に吸収体51を固着する工程と、腹側部2及び背側部3の幅方向両端部を溶着し、サイドシール部80を形成する工程と、を含む製造方法により、パンツ型吸収体51が得られる。こうして得られるパンツ型吸収体51は、所定の順序で折り畳んで袋詰めすることにより、製品化される。
【0073】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることは当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0074】
以下、本実施形態について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
【0075】
<実施例1~11、比較例1~10>
(複合シートの作製)
図4に示す平面形状及び配列(配列Xと配列Yとが列に垂直な方向に交互に配列される)を有し、かつ表1に示す各寸法(
図4に示すA、B、C、D1、D2、D3の各寸法)を有し、超音波接着で形成された接合部配列パターン(A)~(F)の各接合部により、2枚のポリプロピレン製スパンボンド不織布(坪量20g/m
2)の間に、ポリウレタン製伸縮性フィルム(厚み20μm、伸縮方向の伸縮率250%)を配置し、一体化して複合シートを作製した。なお、比較例(D)~(F)は、接合部の平面視形状を円(接合部配列パターン(D)又は長方形(接合部配列パターン(E)、(F))とする以外は、接合部配列パターン(A)~(C)と同様にして複合シートを作製した。
【0076】
作製した複合シートを以下の評価試験、及び官能評価を実施した。結果を表1に示す。
(通気性評価、伸長性評価)
接合部配列パターン(A)~(F)の複合シートを、1度伸長方向に250%伸長した後に伸長を解放し、通気性試験機(商品名:KES-F8、カトーテック(株)製)を使用して、通気抵抗値R(kPa・s/m)を測定した。また、島津製作所製のオートグラフを用い、サンプル幅50mm(延伸方向に対して直角方向)での120%伸長時、150%伸長時の伸長荷重(N/50mm)を測定した。
【0077】
(伸縮性、フィット性、外装体部分の柔軟性の評価)
外装体として接合部配列パターン(A)~(F)の複合シート、トップシートとして坪量30g/m2のエアスルー不織布、バックシートとして坪量32g/m2の通気性ポリエチレンフィルムを使用し、トップシートとバックシートの間に、表2乃至表4に示す構成を有する吸収性シートを配置して吸収体を作製し、外装体の主に股下部の肌側表面にホットメルト系接着剤で接合した。また、吸収体の長手方向両端部の外装体の肌側表面に、スパンボンド不織布に幅方向に延びる1240デシテックスのウレタン系糸ゴムを300%に伸長した状態でそれぞれ6本ずつ配設したウエストギャザーを接合し、実施例1~11及び比較例1~10のパンツ型吸収性物品を作製した。
【0078】
実施例1~11及び比較例1~10の、接合部配列パターン(A)~(F)の複合シートを用いた各パンツ型吸収性物品を20名のモニターに着用してもらい、伸縮性(はき易いか否か)、フィット性、外装体部分の柔軟性(柔らかな肌触り及び風合いを有するか否か)について、官能評価を行った。官能評価については、いずれの評価も、「よい」と「悪い」の二択で調査を行い、以下の基準により評価した。
〇:「よい」が12人以上20人以下のとき
△:「よい」が5人以上11人以下のとき
×:「よい」がいないか、1人以上4人以下のとき
【0079】
実施例1~11及び比較例1~10の、外装体に取り付ける前の表3及び表4に示す吸収体について、下記の評価を実施した。結果を表3又は表4に示す。
(吸収体の厚さ)
実施例1~11及び比較例1~10の各吸収体の中心部をABSデジマチックハイトゲージHDS-HC((株)ミツトヨ製)を用い、吸収体の厚さを測定した。
(吸収速度3回法)
底面積16.8cm2の円柱の中央に、上下方向に貫通した内径19mmの穴を有し、重さを755.6gとした測定冶具を、吸収体の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水それぞれ40mlを投下し、生理食塩水が吸収性物品に接触した時点から治具中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれるところを終点として時間を計測した(1回目)。そして3分経過後に同様の時間を計測し(2回目)、同様に3回目を計測した。3回の合計値を表3、表4に示した。
(45度漏れ性試験)
体液の一時的な吸収を見るために45度漏れ性試験を行った。250mm×400mm×8mmの2枚のアクリル板を、一方を水平に、他方を水平に置いたアクリル板から45度に傾斜させて固定した。水平から45度に傾斜させた側のアクリル板に作成した吸収性物品を貼り付ける。20mLの生理食塩水を吸収体の中心部に向かって注水し、吸収性物品の下側から漏れが生じなければ「○」、漏れが生じた場合「×」と評価した。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
表1から、実施例で用いた接合部配列パターンは、比較例で用いた接合部配列パターンに比べて、得られる複合シートの通気抵抗値が低く通気性に優れ、伸長荷重が小さくて締め付けが少なく、複合シートを外装体とするパンツ型吸収性物品の伸縮性、フィット性、及び柔軟性が良好であることがわかる。
表3の結果から、実施例1~11のバンッ型吸収性物品は、体液の吸収速度が速く、且つ、45度漏れが良好で、一時吸収にも問題がなく、漏れにくいと言える。一方、表4の比較例1~10のパンツ型吸収性物品は、吸収速度が遅い、乃至は、45度漏れが悪い、またはその両方である結果だった。
よって、本実施形態によれば、ゲルブロッキング生じにくいため吸収速度が速く、一時吸収にも優れる吸収性物品を得ることができる。