(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183672
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】柱梁接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20221206BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E04B1/58 508S
E04B1/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091112
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】市岡 大幸
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AB16
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG41
2E125AG43
2E125BB02
2E125CA06
(57)【要約】
【課題】鉄骨梁の接続端にエンドプレートが取り付けられ、エンドプレートと鉄骨柱がボルト接合されるとともに、鉄骨梁と鉄骨柱の双方の横幅が同じである柱梁接合構造において、隣接するエンドプレート同士の干渉を防止できる柱梁接合構造を提供すること。
【解決手段】角形鋼管により形成される鉄骨柱10と、ウェブ21とフランジ22,23を備えるH形鋼により形成される鉄骨梁20との柱梁接合構造100であり、鉄骨梁20の接続端24にはエンドプレート40が固定されており、フランジ22,23の左右の端部には面取り部25が設けられ、フランジ22,23の一般部の横幅に比べて接続端24の横幅は狭くなっており、フランジ22,23の一般部とエンドプレート40と鉄骨柱10の横幅がいずれも同じである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形鋼管により形成される鉄骨柱と、ウェブとフランジを備えるH形鋼により形成される鉄骨梁との柱梁接合構造であって、
前記鉄骨梁の接続端にはエンドプレートが固定され、
前記フランジの左右の端部には面取り部が設けられ、該フランジの一般部の横幅に比べて前記接続端の横幅は狭くなっており、
前記フランジの一般部と前記エンドプレートと前記鉄骨柱の横幅がいずれも同じであることを特徴とする、柱梁接合構造。
【請求項2】
角形鋼管により形成される鉄骨柱と、ウェブとフランジを備えるH形鋼により形成される鉄骨梁との柱梁接合構造であって、
前記鉄骨梁の接続端にはエンドプレートが固定され、
該フランジの左右の端部には面取り部が設けられ、該フランジの一般部の横幅に比べて前記接続端の横幅と前記エンドプレートの横幅がいずれも狭く、前記フランジの一般部と前記鉄骨柱の横幅が同じであることを特徴とする、柱梁接合構造。
【請求項3】
前記エンドプレートに対して、前記鉄骨梁の前記接続端が全周に設けられている隅肉溶接部を介して固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の柱梁接合構造。
【請求項4】
前記鉄骨柱の側面に、複数の第一ボルト孔が開設されている接合プレートが固定され、
前記エンドプレートにおける前記第一ボルト孔に対応する位置に、複数の第二ボルト孔が開設されており、
前記接合プレートと前記エンドプレートが、前記第一ボルト孔と前記第二ボルト孔に螺合された取り付けボルトにより固定されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の柱梁接合構造。
【請求項5】
前記鉄骨柱の側面に複数の第三ボルト孔が開設され、
前記エンドプレートにおける前記第三ボルト孔に対応する位置に、複数の第二ボルト孔が開設されており、
前記鉄骨柱と前記エンドプレートが、前記第三ボルト孔と前記第二ボルト孔に螺合された取り付けボルトにより固定されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の柱梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨柱として角形鋼管を適用し、鉄骨梁としてH形鋼を適用してなる鉄骨造建築物のパネルゾーンには、様々な柱梁接合構造が適用される。具体的には、パネルゾーンにあって鉄骨柱から側方に張り出す上下の通しダイアフラムに対してブラケットが溶接接合され、ブラケットに対して鉄骨梁がスプライスプレートを介してボルト接合される第一形態や、鉄骨柱の側面に溶接接合されている接合プレートのボルト孔に対して、鉄骨梁の接続端に溶接接合されているエンドプレートのボルト孔が位置合わせされ、ボルト接合される第二形態、鉄骨柱に設けられているボルト孔に対して、鉄骨梁の接続端に溶接接合されているエンドプレートのボルト孔が位置合わせされ、ボルト接合される第三形態等を挙げることができる。
【0003】
また、相互に接合される鉄骨柱と鉄骨梁の双方の横幅の寸法関係に関しても様々な形態があり、鉄骨柱の側面の横幅よりも狭幅のフランジを備えた鉄骨梁が接合される形態や、双方の横幅が同じ幅である形態等が挙げられる。後者の鉄骨柱と鉄骨梁の双方の横幅が同じ形態に関して、さらに上記するエンドプレートを介して双方が接合される形態(上記する第二形態と第三形態)においては、エンドプレートに対して鉄骨梁の全周を隅肉溶接により接合しようとすると、溶接部のはみ出しを考慮して鉄骨梁に比べてエンドプレートの横幅を広くしなければならず、結果としてエンドプレートは鉄骨柱の横幅よりも広くせざるを得ない。
【0004】
しかしながら、エンドプレートが鉄骨柱の横幅よりも広くなることにより、例えば鉄骨柱の隣接する二つの側面のそれぞれに対して鉄骨梁のエンドプレートを取り付けようとした際に、双方のエンドプレートの対向端部同士が干渉する恐れがある。
【0005】
ここで、特許文献1には、柱の幅によらずに梁の性能を向上させることができ、施工手間を増すことなく柱の幅と同程度の幅を有する梁を柱に接合することができる柱梁接合構造が提案されている。具体的には、柱と、柱の一側面部に固定される梁とを備え、梁は、梁本体部と、梁本体部に固着されて柱の外周面に面接触する板状のエンドプレートとを備え、梁本体部は柱の幅と同程度の幅を有し、エンドプレートは柱に面接触する柱接触面部と梁本体部の端部に接合される梁端接合面部とを備えている。ここで、柱接触面部は柱の幅と同じか僅かに小さい幅を有し、梁端接合面部は梁本体部の幅よりも大きい幅を有し、エンドプレートは梁本体部の高さ方向に沿って延在してこれらの面部を連結する一対の側方小口面部を備え、側方小口面部は柱接触面部側から梁端接合面部側に向けて拡幅状に傾斜した状態に形成されている。さらに、梁は、柱の軸心を通過する各面の法線を水平方向に45度傾けた仮想線に対して、エンドプレートの側方小口面部を交差させない状態で取り付けられ、隣り合うエンドプレートが互いに隙間を空けた状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の柱梁接合構造によれば、エンドプレートの側方小口面部が柱接触面部側から梁端接合面部に向けて拡幅状に傾斜した状態に形成されていることにより、エンドプレートに対して梁の端部を全周溶接しながら、隣接するエンドプレートの側方小口面部同士の干渉を防止できるとしている。しかしながら、柱の横幅よりもエンドプレートの横幅が広いことから、柱と梁(エンドプレート)との納まりの関係からエンドプレート同士の干渉を完全に抑止するのは難しい。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、鉄骨梁の接続端にエンドプレートが取り付けられ、エンドプレートと鉄骨柱がボルト接合されるとともに、鉄骨梁と鉄骨柱の双方の横幅が同じである柱梁接合構造において、隣接するエンドプレート同士の干渉を防止できる柱梁接合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による柱梁接合構造の一態様は、
角形鋼管により形成される鉄骨柱と、ウェブとフランジを備えるH形鋼により形成される鉄骨梁との柱梁接合構造であって、
前記鉄骨梁の接続端にはエンドプレートが固定され、
前記フランジの左右の端部には面取り部が設けられ、該フランジの一般部の横幅に比べて前記接続端の横幅は狭くなっており、
前記フランジの一般部と前記エンドプレートと前記鉄骨柱の横幅がいずれも同じであることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、フランジの左右の端部に面取り部が設けられ、フランジの一般部の横幅に比べて接続端の横幅が狭くなっていることにより、フランジの一般部と鉄骨柱の横幅が同じ場合に、エンドプレート幅を同じ幅にできることから、隣接するエンドプレート同士の干渉を防止することができる。ここで、パネルゾーンにおいて角形鋼管の側面に対する鉄骨梁の取り付け形態は、一つの側面に一つの鉄骨梁が取り付けられる形態、二つ乃至四つの側面に二つ乃至四つの鉄骨梁が取り付けられる形態の全てを含んでいるが、隣接する直交関係にある鉄骨梁の双方のエンドプレート同士の干渉を防止できる観点から、相互に直交する少なくとも二つの鉄骨梁が鉄骨柱にボルト接合されている形態が好適である。さらに、特許文献1に記載されるエンドプレートのように、その側方小口面部の全長がテーパー状に開先加工される形態に比べて、上下のフランジの接続端の左右(端)をテーパー状に切断加工等するのみでよいことから、特許文献1に記載の柱梁接合構造に比べて構成部材の製作コストを安価にできる。
【0011】
また、フランジの左右の端部に設けられている面取り部の形態は、平面視テーパー状の面取り部や、平面視湾曲状の面取り部などがあるが、加工性等の観点から平面視テーパー状の面取り部が好ましい。そして、この面取り部のテーパー角度に応じて、フランジの接続端の横幅が規定されることになる。
【0012】
また、本発明による柱梁接合構造の他の態様は、
角形鋼管により形成される鉄骨柱と、ウェブとフランジを備えるH形鋼により形成される鉄骨梁との柱梁接合構造であって、
前記鉄骨梁の接続端にはエンドプレートが固定され、
該フランジの左右の端部には面取り部が設けられ、該フランジの一般部の横幅に比べて前記接続端の横幅と前記エンドプレートの横幅がいずれも狭く、前記フランジの一般部と前記鉄骨柱の横幅が同じであることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、フランジの左右の端部に面取り部が設けられ、フランジの一般部の横幅に比べて接続端の横幅が狭くなっていることにより、フランジの一般部と鉄骨柱の横幅が同じであって、これらに比べてエンドプレートの横幅が狭い場合においても、隣接するエンドプレート同士の干渉を防止することができる。ここで、フランジの一般部の横幅はエンドプレートの横幅よりも広いものの、鉄骨柱の横幅と同じであること(広過ぎないこと)から、相互に直交する鉄骨梁(のフランジ)同士の干渉の恐れもない。また、本態様においても、上下のフランジの接続端の左右をテーパー状に切断加工等するのみでよいことから、特許文献1に記載の柱梁接合構造に比べて構成部材の製作コストを安価にできる。
【0014】
また、本発明による柱梁接合構造の他の態様は、
前記エンドプレートに対して、前記鉄骨梁の前記接続端が全周に設けられている隅肉溶接部を介して固定されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、フランジの一般部とエンドプレートと鉄骨柱の横幅がいずれも同じである形態と、フランジの一般部と鉄骨柱の横幅が同じであってエンドプレートの横幅が相対的に狭い形態のいずれにおいても、エンドプレートの広幅面に対して鉄骨梁の接続端の全周を隅肉溶接部を介して溶接接合することができる。尚、後者の形態である、フランジの一般部と鉄骨柱の横幅が同じであってエンドプレートの横幅が相対的に狭い形態においては、エンドプレートの横幅がフランジの一般部や鉄骨梁の横幅に比べて狭いものの、フランジの接続端よりも広く設定されることにより、エンドプレートの広幅面に対する鉄骨梁の接続端の全周の隅肉溶接が可能になる。
【0016】
また、本発明による柱梁接合構造の他の態様は、
前記鉄骨柱の側面に、複数の第一ボルト孔が開設されている接合プレートが固定され、
前記エンドプレートにおける前記第一ボルト孔に対応する位置に、複数の第二ボルト孔が開設されており、
前記接合プレートと前記エンドプレートが、前記第一ボルト孔と前記第二ボルト孔に螺合された取り付けボルトにより固定されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、鉄骨柱の側面に溶接接合等により固定されている接合プレートに対して、鉄骨梁の接続端に固定されているエンドプレートがボルト接合されることにより、鉄骨柱にボルト孔を開設することによる断面欠損に起因した鉄骨柱の剛性低下を回避しながら、鉄骨柱と鉄骨梁との接合強度の高い柱梁接合構造を形成することができる。
【0018】
また、本発明による柱梁接合構造の他の態様において、
前記鉄骨柱の側面に複数の第三ボルト孔が開設され、
前記エンドプレートにおける前記第三ボルト孔に対応する位置に、複数の第二ボルト孔が開設されており、
前記鉄骨柱と前記エンドプレートが、前記第三ボルト孔と前記第二ボルト孔に螺合された取り付けボルトにより固定されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、鉄骨柱の側面に対して、鉄骨梁の接続端に固定されているエンドプレートが直接ボルト接合されることにより、鉄骨柱と鉄骨梁の接合に際して他の部材を不要にできることから、可及的安価に柱梁接合構造を施工することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から理解できるように、本発明の柱梁接合構造によれば、鉄骨梁の接続端にエンドプレートが取り付けられ、エンドプレートと鉄骨柱がボルト接合されるとともに、鉄骨梁と鉄骨柱の双方の横幅が同じである柱梁接合構造において、隣接するエンドプレート同士の干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る柱梁接合構造の一例を鉄骨梁の上方から見た横断面である。
【
図2】
図1のII-II矢視図であって、第1実施形態に係る柱梁接合構造の一例の縦断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る柱梁接合構造の一例を鉄骨梁の上方から見た横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、各実施形態に係る柱梁接合構造について添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0023】
[第1実施形態に係る柱梁接合構造]
はじめに、
図1及び
図2を参照して、第1実施形態に係る柱梁接合構造の一例を説明する。ここで、
図1は、第1実施形態に係る柱梁接合構造の一例を鉄骨梁の上方から見た横断面であり、
図2は、
図1のII-II矢視図であって、第1実施形態に係る柱梁接合構造の一例の縦断面図である。
【0024】
柱梁接合構造100は、パネルゾーンを形成する角形鋼管からなる鉄骨柱10の四つの側面11,12,13,14のうち、隣接する二つの側面11,12に鉄骨梁20が接合された接合構造である。ここで、柱梁接合構造は、鉄骨柱10の三つの側面に鉄骨梁20が接合される形態であってもよいし、鉄骨柱10の四つの全ての側面に鉄骨梁20が接合される形態であってもよい。
【0025】
角形鋼管10は、四つの隅角部が湾曲した平面視形状が略正方形を呈し、例えば、JIS G 3466(一般構造用角形鋼管)に基づくJIS製品である、STKR400やSTKR490の他、建築構造用冷間成形角形鋼管である、BCR(Box Column Roll 建築構造用冷間ロール成形角形鋼管、登録商標)やBCP(Box Column Press建築構造用冷間プレス成形角形鋼管、登録商標)等を適用できる。ここで、BCRやBCPは、SN材(建築構造用鋼材)をベースとした一般社団法人日本鉄鋼連盟製の角形鋼管である。また、角形鋼管10の一辺は150mm乃至1000mm程度の範囲に設定でき、その肉厚は6mm乃至50mm程度の範囲に設定できる。
【0026】
鉄骨柱10において、鉄骨梁20が接合される側面11,12には、正面視矩形の接合プレート30が溶接部70を介して固定されている。この溶接部70は、例えば、正面視矩形の上下の端面と側面11とが隅肉溶接により形成され、正面視矩形の左右の端面と側面11とが突合せ溶接(もしくはフレア溶接)により形成される。
【0027】
一方、鉄骨柱10において、鉄骨梁20が接合されない側面13,14には、正面視矩形のタブラープレート80が溶接部75を介して固定されており、タブラープレート80によってパネルゾーンにおける鉄骨梁20が接合されない鉄骨柱10の側面13,14が補強される。
【0028】
鉄骨柱10の側面11,12に溶接部70を介して固定されている接合プレート30に対して、鉄骨梁20の接続端24が固定されているエンドプレート40が高力ボルト60によりボルト接合される。
【0029】
鉄骨梁20は、ウェブ21と上フランジ22と下フランジ23とを有するH形鋼により形成されており、JIS製品である、SN材(建築構造用圧延鋼材 JIS G 3136)、SS材(一般構造用圧延鋼材 JIS G 3101)、SM材(溶接構造用圧延鋼材 JIS G 3106)等を適用できる。
【0030】
柱梁接合構造100においては、
図1に示すように、鉄骨梁20のフランジ22(23)の接続端24における左右が、平面視テーパー状に切断加工等されることにより、面取り部25が設けられている。ここで、面取り部は、例えば湾曲状に形成されてもよい。
【0031】
また、鉄骨梁20のフランジ22(23)の一般部の横幅(
図1に示すように、平面視における幅)と、エンドプレート40の横幅は、同じ幅t1に設定されており、鉄骨柱10の横幅も幅t1に設定されており、従って、鉄骨梁20のフランジ22(23)の一般部と、エンドプレート40と、鉄骨柱10の横幅はいずれも同じ幅に設定されている。
【0032】
一方、鉄骨梁20の接続端24の横幅は、左右端の面取り部25によって鉄骨梁20のフランジ22(23)の一般部よりも狭い幅t2に設定されている。
【0033】
また、
図2に示すように、正面視矩形の接合プレート30とエンドプレート40の高さは同じ高さs1に設定されており、鉄骨梁20の高さs2はエンドプレート40の高さs1よりも低く設定されている。
【0034】
このように、平面視においては、エンドプレート40の広幅面41の横幅t1よりも鉄骨梁20の接続端24の横幅t2が狭く設定され、側面視においても、エンドプレート40の広幅面41の高さs1よりも鉄骨梁20の接続端24の高さs2が低く設定されていることから、鉄骨梁20の接続端24がエンドプレート40の広幅面41に当接した図示する姿勢において、接続端24は広幅面41の内部に完全に収容される。
【0035】
接続端24は、その全周が広幅面41に対して隅肉溶接部50を介して固定されるが、接続端24が広幅面41の内部に完全に収容されることから、隅肉溶接部50が広幅面41からはみ出ることが抑制され、接続端24の全周に亘って隅肉溶接部50を形成することが可能になる。
【0036】
図1及び
図2に示すように、接合プレート30には、2×3箇所(の計6箇所)に第一ボルト孔31が開設されており、エンドプレート40には、それぞれの第一ボルト孔31に対応する位置に第二ボルト孔42が開設されている。そして、接合プレート30にエンドプレート40が当接した姿勢において、対応する第一ボルト孔31と第二ボルト孔42が連通するボルト孔に対して高力ボルト60が螺合されることにより、接合プレート30とエンドプレート40を介して鉄骨柱10と鉄骨梁20が接合され、柱梁接合構造100が形成される。
【0037】
図1からも明らかなように、鉄骨梁20の接続端24にエンドプレート40が取り付けられ、エンドプレート40と鉄骨柱10(に固定されている接合プレート30)がボルト接合されるとともに、鉄骨梁20と鉄骨柱10の双方の横幅が同じ幅t1であるパネルゾーンにおいて、上記する特許文献1のようにエンドプレートの横幅を広くする代わりに、鉄骨梁20の接続端24におけるフランジ22,23の左右端に面取り部25を設けてフランジ22,23の接続端24における横幅をフランジ22,23の一般部の横幅よりも狭くしたことにより、エンドプレート40に対する接続端24の全周の隅肉溶接を可能にできる。そして、このことに加えて、エンドプレート40が鉄骨柱10に取り付けられている側面の外側へ張り出さないことから、相互に直交する隣接した双方のエンドプレート40の対向端面45同士の干渉を防止できる。
【0038】
柱梁接合構造100に対して、特許文献1に記載の構成では、上記するように、エンドプレートの側方小口面部をテーパー状にしてはいるものの、鉄骨柱の側面の横幅よりもエンドプレートの横幅が広く設定されていることから、施工誤差等によってエンドプレートが側方へずれた際に、隣接するエンドプレートの対向端面同士の干渉の可能性がある。
【0039】
また、特許文献1に記載のエンドプレートは、四つある側方小口面部の全周に亘って開先加工が施されているものと考えられるが、このように長尺な開先加工には加工手間を要し、製作コストの高騰に繋がる。これに対して、柱梁接合構造100では、鉄骨梁20の上下のフランジ22,23の接続端24の左右(端)をテーパー状に切断加工するのみでよいことから、製作コストを可及的に安価にできる。
【0040】
さらに、柱梁接合構造100は、特許文献1に記載のように、鉄骨柱に設けられているボルト孔を利用してエンドプレートを鉄骨柱に直接ボルト接合するものでないことから、鉄骨柱においてボルト孔による断面欠損に起因する剛性低下の問題も生じない。
【0041】
[第2実施形態に係る柱梁接合構造]
次に、
図3を参照して、第2実施形態に係る柱梁接合構造の一例を説明する。ここで、
図3は、第2実施形態に係る柱梁接合構造の一例を鉄骨梁の上方から見た横断面である。
【0042】
図示例の柱梁接合構造100Aは、エンドプレート40Aの横幅t3が、鉄骨梁20のフランジ22(23)の一般部や鉄骨柱10の横幅t1よりも狭く設定されている点において柱梁接合構造100と相違し、その余の構成は同一である。
【0043】
より詳細には、エンドプレート40Aの横幅t3は、フランジ22(23)の一般部や鉄骨柱10の横幅t1よりも狭い幅であり、且つ、鉄骨梁20の接続端24の横幅t2よりも広い幅に設定されており、t1>t3>t2の関係を有している。
【0044】
このように各横幅の大小関係が規定されていることによっても、エンドプレート40Aに対する接続端24の全周の隅肉溶接を可能にしながら、相互に直交する隣接した双方のエンドプレート40Aの対向端面45同士の干渉を防止できる。
【0045】
また、エンドプレート40に比べてエンドプレート40Aの規模(平面積)が小さくなることにより、柱梁接合構造100Aの施工に際して材料コストを可及的に低減することができる。
【0046】
[第3実施形態に係る柱梁接合構造]
次に、図面を参照せずに、第3の実施形態に係る柱梁接合構造の一例を説明する。この柱梁接合構造は、柱梁接合構造100,100Aから接合プレート30を省略し、鉄骨柱10の側面11,12にエンドプレート40の第二ボルト孔42に対応する第三ボルト孔を設け、鉄骨柱10とエンドプレート40を高力ボルト60にて直接ボルト接合する形態である。
【0047】
この柱梁接合構造では、上記するように、ボルト孔が設けられることによる鉄骨柱の剛性低下の問題はあるものの、一方で接合プレート30を不要にできることから、柱梁接合構造の施工に際して材料コストを可及的に低減することができる。
【0048】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0049】
10:鉄骨柱(角形鋼管)
11,12,13,14:側面
20:鉄骨梁(H形鋼)
21:ウェブ
22:上フランジ(フランジ)
23:下フランジ(フランジ)
24:接続端
25:面取り部
30:接合プレート
31:第一ボルト孔
40,40A:エンドプレート
41:広幅面
42:第二ボルト孔
45:対向端面
50:隅肉溶接部
60:高力ボルト
70,75:溶接部
80:タブラープレート
100,100A:柱梁接合構造