(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183681
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】転写用両面粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20221206BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20221206BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20221206BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20221206BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/14
C09J183/07
H01L21/52 Z
H01L21/60 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091122
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】越智 元気
(72)【発明者】
【氏名】渡部 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】野呂 弘司
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F044
5F047
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA11
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004EA05
4J004FA08
4J040DF061
4J040EK081
4J040JB09
4J040MA02
4J040MA04
4J040MA10
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA20
4J040PA44
5F044KK01
5F047BB18
(57)【要約】
【課題】紫外線の照射を行っても電子部品の位置ズレが生じにくく、転写精度を保持できる転写用両面粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の転写用両面粘着シートは、第1粘着剤層と、基材と、第2粘着剤層とがこの順に積層された転写用両面粘着シートであり、
前記第1粘着剤層は、低粘着性粘着剤層からなり、
前記第2粘着剤層は、剥離性粘着剤層からなり、
前記第1粘着剤層に波長248nmの紫外線レーザーをビームサイズ130×105μm、出力100mJ/cm
2、パルス幅10ns、周波数100Hzにて照射した後の浮き高さR
z2に対する、照射する前の浮き高さR
z1の比(R
z1/R
z2)が0.2~1600である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1粘着剤層と、基材と、第2粘着剤層とがこの順に積層された転写用両面粘着シートであり、
前記第1粘着剤層は、低粘着性粘着剤層からなり、
前記第2粘着剤層は、剥離性粘着剤層からなり、
前記第1粘着剤層に波長248nmの紫外線レーザーをビームサイズ130×105μm、出力100mJ/cm2、パルス幅10ns、周波数100Hzにて照射した後の浮き高さRz2に対する、照射する前の浮き高さRz1の比(Rz1/Rz2)が0.2~1600である、転写用両面粘着シート。
【請求項2】
前記第1粘着剤層に波長248nmの紫外線レーザーをビームサイズ130×105μm、出力100mJ/cm2、パルス幅10ns、周波数100Hzにて照射したときの、照射面積全体に対する、浮き面積の面積割合が20.0%以下である、請求項1に記載の転写用両面粘着シート。
【請求項3】
第1粘着剤層と、基材と、第2粘着剤層とがこの順に積層された転写用両面粘着シートであり、
前記第1粘着剤層は、低粘着性粘着剤層からなり、
前記第2粘着剤層は、剥離性粘着剤層からなり、
前記第1粘着剤層に波長248nmの紫外線レーザーをビームサイズ130×105μm、出力100mJ/cm2、パルス幅10ns、周波数100Hzにて照射したときの、照射面積全体に対する、浮き面積の面積割合が20.0%以下である、転写用両面粘着シート。
【請求項4】
前記浮き高さRz2(μm)に対する、前記第1粘着剤層の厚みt1(μm)の比(Rz2/t1)が1.0以下である、請求項1又は2に記載の転写用両面粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写用両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置等の製造過程において、半導体ウェハを個片化した半導体チップを、キャリア基板上の転写用両面粘着シートに受け取ってから、実装基板上に転写することが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置等の製造過程では、半導体チップを受け取った転写用両面粘着シートを搬送する際に識別性を付与するために転写用両面粘着シートへのマーキングが行われることがある。しかし、このようなマーキングに紫外線レーザーが用いられると、
図5に示すように、基材10から第1粘着剤層12が剥離して浮き上がることによって転写用両面粘着シートの平坦性が損なわれ、電子部品21の位置ズレが生じたり、転写の不良が起きたりしやすくなるという問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、紫外線の照射を行っても電子部品の位置ズレが生じにくく、転写精度を保持できる転写用両面粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、半導体チップ等の微細な電子部品を受け取るための第1粘着剤層と、基材と、キャリア基板に仮固定するための第2粘着剤層とを有し、特定の紫外線レーザー照射後の浮き高さに対する照射前の浮き高さの比が特定の範囲内である転写用両面粘着シートを用いると、紫外線レーザー照射によるマーキングを行っても電子部品の位置ズレや転写不良を抑制できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、第1粘着剤層と、基材と、第2粘着剤層とがこの順に積層された転写用両面粘着シートであり、
上記第1粘着剤層は、低粘着性粘着剤層からなり、
上記第2粘着剤層は、剥離性粘着剤層からなり、
上記第1粘着剤層に波長248nmの紫外線レーザーをビームサイズ130×105μm、出力100mJ/cm2、周波数100Hz、パルス幅10nsで照射した後の浮き高さRz2に対する、照射する前の浮き高さRz1の比(Rz1/Rz2)が0.2~1600である、転写用両面粘着シートを提供する。
【0008】
上記第1粘着剤層に波長248nmの紫外線レーザーをビームサイズ130×105μm、出力100mJ/cm2、周波数100Hz、パルス幅10nsで照射したときの、照射面積に対する、浮き面積の面積割合は20.0%以下であることが好ましい。
【0009】
本発明は、また、第1粘着剤層と、基材と、第2粘着剤層とがこの順に積層された転写用両面粘着シートであり、
上記第1粘着剤層は、低粘着性粘着剤層からなり、
上記第2粘着剤層は、剥離性粘着剤層からなり、
前記第1粘着剤層に波長248nmの紫外線レーザーをビームサイズ130×105μm、出力100mJ/cm2、パルス幅10ns、周波数100Hzにて照射したときの、照射面積全体に対する、浮き面積の面積割合が20.0%以下である、転写用両面粘着シートを提供する。
【0010】
上記浮き高さRz2(μm)に対する、上記第1粘着剤層の厚みt1(μm)の比(t1/Rz2)は1.0以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の転写用両面粘着シートは、紫外線レーザーの照射を行っても平坦性が損なわれにくいので、電子部品の位置ズレや転写不良を抑制し、転写精度を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の転写用両面粘着シートの一実施形態を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の転写用両面粘着シートの他の実施形態を示す断面模式図である。
【
図3】
図1に示す転写用両面粘着シートを用いた電子部品の実装基板上への実装方法における第1工程の一実施形態を表す断面模式図である。
【
図4】
図1に示す転写用両面粘着シートを用いた電子部品の実装基板上への実装方法における第2工程の一実施形態を表す断面模式図である。
【
図5】紫外線レーザーの照射により平坦性が損なわれ、受け取った電子部品に位置ズレの生じた転写用両面粘着シートを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[転写用両面粘着シート]
本発明の一実施形態に係る転写用両面粘着シートは、第1粘着剤層と、基材と、第2粘着剤層とがこの順に積層された積層構造を有し、上記第1粘着剤層に波長248nmの紫外線レーザーをビームサイズ130×105μm、出力100mJ/cm
2、周波数100Hz、パルス幅10nsで照射した後の浮き高さR
z2に対する、照射する前の浮き高さR
z1の比(R
z1/R
z2)が0.2~1600である。本発明の転写用両面粘着シートの一実施形態について、図面を参照して、以下に説明することがあるが、本発明の転写用両面粘着シートは当該実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の転写用両面粘着シートの一実施形態を示す断面模式図であり、1は転写用両面粘着シート、10は基材、11は第1粘着剤層、12は第2粘着剤層を示す。
【0014】
上記比(Rz1/Rz2)が0.2~1600であるという構成は、上記第1粘着剤層に受け取った電子部品の位置精度の観点から好ましく、0.4~1500がより好ましく、0.5~1400がさらに好ましい。また、浮き高さRz1及びRz2は、レーザー照射後の照射部の垂直方向(Z軸方向)の膨らみ量の最大高さであって、例えば、レーザー顕微鏡(製品名「VK-X100」、(株)キーエンス製)を用いて得られた表面観察画像を解析することによって得ることができる。
【0015】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、第1粘着剤層に波長248nmの紫外線レーザーをビームサイズ130×105μm、出力100mJ/cm2、周波数100Hz、パルス幅10nsで照射したときの、照射面積に対する、浮き面積の面積割合が20.0%以下であることが好ましい。上記面積割合が20.0%以下であるという構成は、上記第1粘着剤層に受け取った電子部品の位置精度の観点から好ましく、15.0%以下がより好ましく、10.0%以下がさらに好ましい。上記面積割合の下限は、通常、0%である。なお、浮き面積は、上記基材から上記低粘着性粘着剤層が剥離して浮き上がった部分の面積であって、例えば、顕微鏡を用いて撮像した表面観察画像を解析して求めることができる。
【0016】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、上記浮き高さRz2(μm)に対する、上記第1粘着剤層の厚みt1(μm)の比(Rz2/t1)は1.0以下であることが好ましい。上記比(Rz2/t1)が1.0以下であるという構成は、上記第1粘着剤層に受け取った電子部品の位置精度の観点から好ましく、0.5以下がより好ましく、0.4以下がさらに好ましい。
【0017】
上記の、紫外線レーザー照射後の浮き高さRz2や、浮き面積の面積割合は、第1粘着剤層を構成する粘着剤の種類や組成、架橋度等を調整することよる粘着力、および、紫外線吸収剤の種類や添加量を調整することによる基材の反応抑制や粘着剤と基材との密着性を調整することにより調節することができる。
【0018】
本発明の別の実施形態に係る転写用両面粘着シートは、第1粘着剤層と、基材と、第2粘着剤層とがこの順に積層された積層構造を有し、上記第1粘着剤層に波長248nmの紫外線レーザーをビームサイズ130×105μm、出力100mJ/cm2、周波数100Hz、パルス幅10nsで照射したときの、照射面積に対する、浮き面積の面積割合が20.0%以下である。上記面積割合が20.0%以下であるという構成により電子部品の位置精度を保持できる。上記面積割合は、15.0%以下が好ましく、10.0%以下がより好ましい。
【0019】
<第1粘着剤層>
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、第1粘着剤層は、電子部品を受け取って保持するための粘着剤層であり、低粘着性粘着剤層からなるものである。第1粘着剤層が低粘着性粘着剤層からなるという構成は、受け取る際に電子部品にかかる力を低減でき、電子部品の損傷を抑制できる点で好適である。また、電子部品を非接触で第1粘着剤層が受け取る際には、例えば、電子部品をダイシングテープからピン部材で押す等して剥離させ、第1粘着剤層上に落下させる。しかし、落下した電子部品を第1粘着剤層が受け取る際に跳ねて精度よく受け取ることができない場合がある。当該現象が発生した場合には、電子製品の位置精度が低下し、接触不良が生じる場合がある。上記第1粘着剤層が低粘着性粘着剤層からなるという構成は、電子部品を非接触で第1粘着剤層が受け取る際に、電子部品が跳ねずに第1粘着剤層にキャッチされやすく、位置精度よく受け取ることができる点でも好適である。さらには、転写用両面粘着シートが受け取った電子部品を実装基板に実装する際に、第1粘着剤層から電子部品を容易に剥離できる点でも好ましい。
【0020】
上記第1粘着剤層は、構成する粘着剤の種類や組成、架橋度等を調整することや、軽剥離化剤や可塑剤の配合によるWBL(Weak Boundary Layer)の形成により、低粘着性粘着剤層とすることができる。
【0021】
第1粘着剤層のPETフィルムに対する25℃での180°引き剥がし粘着力は、特に限定されないが、電子部品が損傷することなく、位置精度よく受け取ることができ、さらに実装基板への良好な転写性の観点から、100mN/25mm以下であることが好ましく、より好ましくは50mN/25mm以下であり、さらに好ましくは10mN/25mmである。また、第1粘着剤層に対する電子部品の接着性の観点から、第1粘着剤層のガラス板に対する25℃での180°引き剥がし粘着力は、0.1mN/25mm以上であることが好ましく、より好ましくは1mN/25mm以上である。
【0022】
第1粘着剤層のPETフィルムに対する25℃での180°引き剥がし粘着力(以下、本明細書において、「P1a」と称する場合がある)に対する、転写用両面粘着シートを160℃で5分間保持した後の第1粘着剤層のPETフィルムに対する25℃での180°引き剥がし粘着力(以下、本明細書において、「P1b」と称する場合がある)の比(P1b/P1a)は、特に限定されないが、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。P1b/P1aが3.0以下であるという構成は、本発明の転写用両面粘着シートが受け取った電子部品を実装基板上に熱圧着にて転写して実装する際に、電子部品に対する第1粘着剤層の粘着力が上昇せず、良好に剥離して実装基板に転写できる点で好ましい。
【0023】
上記25℃での180°引き剥がし粘着力は、転写用両面粘着シートの第2粘着剤層をガラス板に貼り合わせ、第1粘着剤層の粘着面にPETフィルムを貼り合わせ、2kgローラー、1往復の圧着条件で圧着し、23℃、50%RHの雰囲気下で30分間エージングする。エージング後、JIS Z0237に準拠して、25℃、50%RHの雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、被着体から転写用両面粘着シートを引きはがし、180°引き剥がし粘着力(mN/25mm)を測定する。上記PETフィルムとしては、未処理PETであれば特に限定されないが、例えば、商品名「ルミラー・♯25-S10 厚み23μm」(東レ(株)製)が挙げられる。
【0024】
上記第1粘着剤層の表面力は、構成する粘着剤の種類や組成、架橋度、脂肪酸エステルやフッ素系界面活性剤等の添加剤等により調整することができる。
【0025】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、第1粘着剤層のAFM-DMAによる周波数1Hz、25℃での貯蔵弾性率(E'1a)は50MPa以下であることが好ましい。当該構成は、上記第1粘着剤層が受け取った電子部品を確実に接着する上で好ましい。上記E'1aが高すぎると、上記第1粘着剤層に対する電子部品の接着性が低下して、電子部品の位置ずれや落下などの不具合が生じる場合がある。上記第1粘着剤層に対する電子部品の接着性の観点から、E'1aは40MPa以下が好ましく、30MPa以下がより好ましい。また、20MPa以下、10MPa以下であってもよい。一方、上記第1粘着剤層から回路基板への転写性の観点から、E'1aは、0.1MPa以上であることが好ましい。上記E'1aが低すぎる場合は、上記第1粘着剤層に対する電子部品の接着性が高くなりすぎ、実装基板へ実装する際の転写性が損なわれる場合がある。電子部品の実装基板への転写性の観点から、E'1aは0.2MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がより好ましい。
【0026】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、上記第1粘着剤層のAFM-DMAによる周波数1kHz、25℃での貯蔵弾性率(E'1b)は100MPa以下であることが好ましい。当該構成は、上記第1粘着剤層が電子部品を非接触で受け取る場合に、第1粘着剤層の表面で電子部品が弾かれず、位置精度よく受け取ることができる点で好ましい。上記E'1bが高すぎると、上記第1粘着剤層の表面に電子部品を接触させずに落として受け取る際に、電子部品が弾かれて所定の位置からずれたり、裏返るなどして位置精度が低下しやすくなる。上記第1粘着剤層に対する電子部品の位置精度の観点から、E'1bは90MPa以下が好ましく、80MPa以下がより好ましい。また、70MPa以下、60MPa以下、50MPa以下、40MPa以下、30MPa以下であってもよく、特に20MPa以下であってもよい。一方、上記第1粘着剤層から実装基板への転写性の観点から、E'1bは、0.5MPa以上であることが好ましい。上記E'1bが低すぎる場合は、上記第1粘着剤層に対する電子部品の接着性が高くなり、また、電子部品が落下する際に第1粘着剤層に埋まるなどして、実装基板へ実装する際の転写性が損なわれる場合がある。電子部品の実装基板への転写性の観点から、E'1bは0.7MPa以上が好ましく、1.0MPa以上がより好ましい。
【0027】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、上記第1粘着剤層のAFM-DMAによる周波数1Hz、25℃での貯蔵弾性率(E'1a)に対する上記第1粘着剤層のAFM-DMAによる周波数1kHz、25℃での貯蔵弾性率(E'1b)の割合(E'1b/E'1a)が1.00よりも大きいこと好ましい。当該構成は、上記第1粘着剤層に対する電子部品の接着性、位置精度、実装基板への転写性などのバランスがよくなる点で好ましい。電子部品の接着性、位置精度、実装基板への転写性などのバランスの観点から、E'1b/E'1aは、1.05以上が好ましく、1.10以上がより好ましい。E'1b/E'1aの上限は特に限定されないが、上記バランスの観点から3.00以下が好ましい。
【0028】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、上記第1粘着剤層のAFM-DMAによる周波数1Hz、25℃での損失弾性率(E"1a)は7MPa以下であることが好ましい。当該構成は、電子部品の実装基板への転写性に優れる観点から、好ましい。上記E"1aが高すぎる場合は、上記第1粘着剤層に対する電子部品の接着性が高くなりすぎ、実装基板へ実装する際の転写性が損なわれる場合がある。電子部品の実装基板への転写性の観点から、E"1aは5MPa以下が好ましく、3MPa以下がより好ましい。上記E"1aが低すぎると、上記第1粘着剤層に対する電子部品の接着性が低下して、電子部品の位置ずれや落下などの不具合が生じる場合がある。上記第1粘着剤層に対する電子部品の接着性の観点から、E"1aは0.01MPa以上が好ましく、0.03MPa以上がより好ましい。
【0029】
上記第1粘着剤層のAFM-DMA(原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)の動的粘弾性測定(nDMA:nano Dynamic Mechanical Analysis))による周波数1Hz、25℃での貯蔵弾性率(E'1a)、周波数1kHz、25℃での貯蔵弾性率(E'1b)、及び周波数1Hz、25℃での損失弾性率(E"1a)は、構成する粘着剤の種類や組成、架橋度などにより調整することができる。
【0030】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、上記第1粘着剤層のステンレス板(直径5mm)に対するタック力が、10~250gf/Φ5mmSUSであることが好ましい。上記タック力が10gf/Φ5mmSUS以上であるという構成は、上記第1粘着剤層に電子部品の接着性、位置精度の観点から好ましく、20gf/Φ5mmSUS以上がより好ましい。一方、上記タック力が250gf/Φ5mmSUS以下であるという構成は、電子部品の実装基板への転写性の観点から好ましく、200gf/Φ5mmSUS以下がより好ましい。
【0031】
上記第1粘着剤層のステンレス板(直径5mm)に対するタック力は、構成する粘着剤の種類や組成、架橋度、脂肪酸エステルやフッ素系界面活性剤等の添加剤などにより調整することができる。
【0032】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、上記第1粘着剤層の表面力が、-500~-100μNであることが好ましい。上記表面力が-500μN以上であるという構成は、上記第1粘着剤層に電子部品の接着性、位置精度の観点から好ましく、-400μN以上がより好ましい。一方、上記表面力が-100μN以下であるという構成は、電子部品の実装基板への転写性の観点から好ましく、-150μN以下がより好ましい。
【0033】
上記第1粘着剤層の表面力は、構成する粘着剤の種類や組成、架橋度、脂肪酸エステルやフッ素系界面活性剤等の添加剤などにより調整することができる。
【0034】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、第1粘着剤層の厚みt1は、特に限定されないが、1μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上である。厚みが一定以上であると、第1粘着剤層が電子部品が精度よく受け取りやすくなり、好ましい。また、第1粘着剤層の厚みt1の上限は、特に限定されないが、100μmが好ましく、より好ましくは90μmであり、さらに80μm、70μm、60μm又は50μmが好ましい。さらに45μm、40μm、35μm、μm、30μm、25μm、20μm、15μm又は10μmがより好ましい。厚みが一定以下であると、電子部品を精度よく実装基板に転写しやすくなり、好ましい。
【0035】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、第1粘着剤層のヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、10%以下が好ましく、より好ましくは5.0%以下である。ヘイズが10%以下であると、優れた透明性が得られ、例えば、転写用両面粘着シートをキャリア基板に貼付した際に、キャリア基板上に付されたパターン(例えば、電子部品の転写位置を示すマーカー)を視認することができ、好ましい。なお、上記ヘイズは、例えば、第1粘着剤層をセパレータ上に形成して常態(23℃、50%RH)に少なくとも24時間静置した後、セパレータを剥離し、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に貼り合わせたものを試料とし、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定することができる。
【0036】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、第1粘着剤層の可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361-1に準じる)は、特に限定されないが、85%以上が好ましく、より好ましくは88%以上である。全光線透過率が85%以上であると、優れた透明性が得られ、例えば、転写用両面粘着シートをキャリア基板に貼付した際に、キャリア基板上に付されたパターン(例えば、電子部品の転写位置を示すマーカー)を視認することができ、好ましい。なお、上記全光線透過率は、例えば、第1粘着剤層をセパレータ上に形成して常態(23℃、50%RH)に少なくとも24時間静置した後、セパレータを剥離し、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に貼り合わせたものを試料とし、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定することができる。
【0037】
上記第1粘着剤層を構成する粘着剤組成物としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤等を含むことができる。これらの中でも、電子部品が損傷することなく、位置精度よく受け取ることができ、さらに実装基板への良好な転写性の観点から、低粘着性、低タック性に制御しやすいシリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤が好ましく、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤がより好ましく、シリコーン系粘着剤がさらに好ましい。
【0038】
(シリコーン系粘着剤)
シリコーン系粘着剤としては、特に制限されず、公知乃至慣用のシリコーン系粘着剤を用いることができ、例えば、付加型シリコーン系粘着剤、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤、縮合型シリコーン系粘着剤等を用いることができる。シリコーン系粘着剤は1液型、2液型のいずれであってもよい。シリコーン系粘着剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
上記付加型シリコーン系粘着剤は、一般に、ケイ素原子にビニル基等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンとを、塩化白金酸等の白金化合物触媒を用いて付加反応(ヒドロシリル化反応)させることによりシリコーン系ポリマーを生成させる粘着剤である。過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤は、一般に、オルガノポリシロキサンを過酸化物により硬化(架橋)させてシリコーン系ポリマーを生成させる粘着剤である。また、縮合型シリコーン系粘着剤は、一般に、末端にシラノール基又はアルコキシシリル基等の加水分解性シリル基を有するポリオルガノシロキサン間の脱水又は脱アルコール反応によりシリコーン系ポリマーを生成させる粘着剤である。
【0040】
シリコーン系粘着剤としては、低粘着性、低タック性にコントロールしやすい点より、例えば、シリコーンゴムとシリコーンレジンとを含有するシリコーン系粘着剤が挙げられる。
【0041】
上記シリコーンゴムとしては、シリコーン系のゴム成分であれば特に制限されないが、例えば、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等を主な構成単位とするオルガノポリシロキサンを使用できる。また、反応の型に応じて、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するシリコーン系ゴム(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン;付加反応型の場合)、メチル基を少なくとも有するシリコーン系ゴム(過酸化物硬化型の場合)、末端にシラノール基又は加水分解性のアルコキシシリル基を有するシリコーン系ゴム(縮合型の場合)等を用いることができる。なお、シリコーンゴムにおけるオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、通常、15万以上であるが、好ましくは28万~100万であり、特に50万~90万が好適である。
【0042】
また、上記シリコーンレジンとしては、シリコーン系粘着剤に使用されているシリコーン系のレジンであれば特に制限されないが、例えば、構成単位「R3Si1/2」からなるM単位、構成単位「SiO2」からなるQ単位、構成単位「RSiO3/2」からなるT単位、及び構成単位「R2SiO」からなるD単位から選択される少なくとも1種の単位を有する(共)重合体からなるオルガノポリシロキサンからなるシリコーンレジン等が挙げられる。なお、上記構成単位におけるRは炭化水素基又はヒドロキシル基を示す。上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(メチル基、エチル基等のアルキル基等)、脂環式炭化水素基(シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ナフチル基等のアリール基等)等が挙げられる。上記M単位と、Q単位、T単位及びD単位から選択された少なくとも1種の単位との割合(比)としては、例えば、前者/後者(モル比)=0.3/1~1.5/1(好ましくは0.5/1~1.3/1)程度であることが望ましい。このようなシリコーンレジンにおけるオルガノポリシロキサンには、必要に応じて、ビニル基等の各種官能基が導入されていてもよい。なお、導入される官能基は、架橋反応を生じることが可能な官能基であってもよい。シリコーンレジンとしては、M単位とQ単位からなるMQレジンが好ましい。シリコーンレジンにおけるオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、通常、1000以上であるが、好ましくは1000~20000であり、特に1500~10000が好適である。
【0043】
シリコーンゴムとシリコーンレジンとの配合割合としては、特に制限されないが、低粘着性、低タック性にコントロールしやすい点より、例えば、シリコーンゴム100重量部に対して、シリコーンレジンが100~220重量部(特に、120~180重量部)であることが好ましい。
【0044】
なお、シリコーンゴムとシリコーンレジンとを含有するシリコーン系粘着剤において、シリコーンゴムとシリコーンレジンとは、単に混合されている混合状態であってもよく、互いに反応して、縮合物(特に部分縮合物)、架橋反応物、付加反応生成物等となっていてもよい。
【0045】
また、シリコーンゴムとシリコーンレジンとを含有するシリコーン系粘着剤では、低粘着性、低タック性にコントロールしやすい点より、架橋構造体とするために、通常、架橋剤を含んでいる。このような架橋剤としては、特に制限されないが、シロキサン系架橋剤(シリコーン系架橋剤)、過酸化物系架橋剤を好適に用いることができる。架橋剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
上記シロキサン系架橋剤としては、例えば、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを好適に用いることができる。このようなポリオルガノハイドロジェンシロキサンにおいて、水素原子が結合しているケイ素原子には、水素原子以外に各種有機基が結合していてもよい。該有機基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基の他、ハロゲン化アルキル基等が挙げられるが、合成や取り扱いの観点から、メチル基が好ましい。また、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの骨格構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれの骨格構造を有していてもよいが、直鎖状が好適である。
【0047】
上記過酸化物系架橋剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、モノパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド等を使用できる。より具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン、2,4-ジクロロ-ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-ジイソプロピルベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキシン-3等が挙げられる。
【0048】
付加型シリコーン系粘着剤として、例えば、商品名「KR-3700」、「KR-3701」、「X-40-3237-1」、「X-40-3240」、「X-40-3291-1」、「X-40-3306」(以上、信越化学工業(株)製)が市販されている。また、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤として、例えば、商品名「KR-100」、「KR-101-10」、「KR-130」(以上、信越化学工業(株)製)等が市販されている。
【0049】
上記付加型シリコーン系粘着剤には、白金触媒等の硬化触媒を含むことが好ましい。白金触媒として、例えば、商品名「CAT-PL-50T」(信越化学工業(株)製)、商品名「DOWSIL NC-25 Catalyst」、「DOWSIL SRX212 Catalyst」(以上、ダウ・東レ(株)製)等が市販されている。第1粘着剤層の電子部品の受け取り性、位置精度、実装基板への転写性やタック力等のバランスの観点から、硬化触媒の含有量は、ベースポリマーとしてのシリコーン系ポリマー(シリコーンゴム、シリコーンレジン等を含む)100重量部に対して、0.1~10重量部程度が好ましい。
【0050】
(ウレタン系粘着剤)
ウレタン系粘着剤としては、特に制限されず、公知乃至慣用のウレタン系粘着剤を用いることができ、低粘着性、低タック性にコントロールしやすい点より、ポリオール、多官能イソシアネート系化合物、及び触媒を含有するウレタン系粘着剤が好ましい。
【0051】
上記ポリオールとしては、ヒドロキシル基を2個以上有するポリオールであれば、任意の適切なポリオールを採用し得る。このようなポリオールとしては、例えば、ヒドロキシル基を2個有するポリオール(ジオール)、ヒドロキシル基を3個有するポリオール(トリオール)、ヒドロキシル基を4個有するポリオール(テトラオール)、ヒドロキシル基を5個有するポリオール(ペンタオール)、ヒドロキシル基を6個有するポリオール(ヘキサオール)等が挙げられる。ポリオールは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
上記ポリオールとしては、好ましくは、数平均分子量(Mn)が400~20000のポリオールを含むことが好ましい。また、ポリオール全量中の、数平均分子量(Mn)が400~20000のポリオールの含有割合は、好ましくは50~100重量%であり、より好ましくは70~100重量%であり、さらに好ましくは90~100重量%であり、特に好ましくは95~100重量%であり、最も好ましくは実質的に100重量%である。ポリオール中の、数平均分子量(Mn)が400~20000のポリオールの含有割合を、上記範囲内に調整することにより、例えば、低粘着性、低タック性にコントロールされたウレタン系粘着剤を提供することができる。
【0053】
上記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。
【0054】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオール成分と酸成分とのエステル化反応によって得ることができる。
【0055】
上記ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0056】
上記酸成分としては、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、ダイマー酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェエルジカルボン酸、これらの酸無水物等が挙げられる。
【0057】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、低分子ポリオール(プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等)等を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0058】
上記ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン、σ-バレーロラクトン等の環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオール等が挙げられる。
【0059】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記ポリオール成分とホスゲンとを重縮合反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロビル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、エチルブチル炭酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジル等の炭酸ジエステル類とをエステル交換縮合させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分を2種以上併用して得られる共重合ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとカルボキシル基含有化合物とをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエーテル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとエステル化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとジカルボン酸化合物とを重縮合反応させて得られるポリエステル系ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとアルキレンオキサイドとを共重合させて得られる共重合ポリエーテル系ポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。
【0060】
上記ひまし油系ポリオールとしては、例えば、ひまし油脂肪酸と上記ポリオール成分とを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ひまし油脂肪酸とポリプロピレングリコールとを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。
【0061】
上記ポリオールとしては、第1粘着剤層体の電子部品への低粘着性、低タック性、濡れ性等の観点から、ヒドロキシル基を3個有するポリオール(トリオール)を必須成分として用いることが好ましい。ヒドロキシル基を3個有するポリオール(トリオール)は、上記ポリオールを構成する成分全量に対して、50~100重量%含量することが好ましく、70~100重量%含量することがより好ましい。
【0062】
上記多官能イソシアネート系化合物としては、例えば、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0063】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0064】
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソソアネート、2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0066】
中でも、脂肪族ポリイソシアネート及びその変性体が好ましい。脂肪族ポリイソシアネート及びその変性体は、他のイソシアネート系架橋剤に比べて、架橋構造が柔軟性に富み、低粘着性、低タック性にコントロールしやすい。脂肪族ポリイソシアネート及びその変性体としては、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート及びその変性体が好ましい。
【0067】
上記多官能イソシアネート系化合物、及び上記ポリオールは、第1粘着剤層体の電子部品への低粘着性、低タック性、濡れ性の観点から、上記多官能イソシアネート系化合物のイソシアネート基、及び上記ポリオールのヒドロキシル基の当量比(NCO/OH)が1~5であることが好ましく、1.1~3であることがより好ましく、1.2~2であることがさらに好ましい。
【0068】
上記ウレタン系粘着剤は、鉄系化合物、及び/又は錫系化合物等の触媒を含むことが好ましい。具体的には、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズ等の錫系触媒、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(ヘキサン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(5-メチルヘキサン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(オクタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(6-メチルヘプタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(ノナン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ノナン-4,6-ジオナト)鉄、トリス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(トリデカン-6,8-ジオナト)鉄、トリス(1-フェニルブタン-1,3-ジオナト)鉄、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)鉄、トリス(アセト酢酸エチル)鉄、トリス(アセト酢酸-n-プロピル)鉄、トリス(アセト酢酸イソプロピル)鉄、トリス(アセト酢酸-n-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸-sec-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸-tert-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸メチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸エチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-n-プロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸イソプロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-n-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-sec-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-tert-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸ベンジル)鉄、トリス(マロン酸ジメチル)鉄、トリス(マロン酸ジエチル)鉄、トリメトキシ鉄、トリエトキシ鉄、トリイソプロポキシ鉄、塩化第二鉄等の鉄系触媒が挙げられる。
【0069】
上記ウレタン系粘着剤に含有する触媒の含有量(使用量)は、ポリオール100重量部に対して、0.002~0.5重量部が好ましく、0.005~0.3重量部がより好ましく、0.01~0.1重量部がさらに好ましい。この範囲内にあると、粘着剤層を形成した際に架橋反応の速度が速く、粘着剤組成物のポットライフも長くなり、好ましい態様となる。
【0070】
また、ウレタン系粘着剤としては、低粘着性、低タック性にコントロールしやすい点より、ウレタンプレポリマーを含有するウレタン系粘着剤も好ましい。
【0071】
ウレタンプレポリマーを含有するウレタン系粘着剤は、例えば、ウレタンプレポリマーとしてのポリウレタンポリオールと多官能イソシアネート系化合物を含有する粘着剤が挙げられる。ウレタンプレポリマーは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。多官能イソシアネート系化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0072】
ウレタンプレポリマーとしてのポリウレタンポリオールは、好ましくは、ポリエステルポリオールと、ポリエーテルポリオールとを、触媒存在下又は無触媒下で、有機ポリイソシアネ-ト化合物と反応させてなるものである。
【0073】
ポリエステルポリオールとしては、任意の適切なポリエステルポリオールを用い得る。このようなポリエステルポリオールとして、例えば、酸成分とグリコール成分とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。酸成分としては、例えば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3'-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、ポリオール成分としてグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、その他に、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も挙げられる。
【0074】
ポリエステルポリオールの分子量としては、低分子量から高分子量まで使用可能である。ポリエステルポリオールの分子量としては、数平均分子量が、好ましくは500~5000である。数平均分子量が500未満では、反応性が高くなり、ゲル化しやすくなるおそれがある。数平均分子量が5000を超えると、反応性が低くなり、さらにはポリウレタンポリオール自体の凝集力が小さくなるおそれがある。ポリエステルポリオールの使用量は、ポリウレタンポリオールを構成するポリオール中、好ましくは10~90モル%である。
【0075】
ポリエーテルポリオールとしては、任意の適切なポリエーテルポリオールを用い得る。このようなポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。このようなポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の官能基数が2以上のポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0076】
ポリエーテルポリオールの分子量としては、低分子量から高分子量まで使用可能である。ポリエーテルポリオールの分子量としては、数平均分子量が、好ましくは1000~5000である。数平均分子量が1000未満では、反応性が高くなり、ゲル化しやすくなるおそれがある。数平均分子量が5000を超えると、反応性が低くなり、さらにはポリウレタンポリオール自体の凝集力が小さくなるおそれがある。ポリエーテルポリオールの使用量は、ポリウレタンポリオールを構成するポリオール中、好ましくは20~80モル%である。
【0077】
ポリエーテルポリオールは、必要に応じてその一部を、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のグリコール類や、エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミン類等に置き換えて併用することができる。
【0078】
ポリエーテルポリオールとしては、2官能性のポリエーテルポリオールのみを用いても良いし、数平均分子量が1000~5000であり、且つ、1分子中に少なくとも3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを一部もしくは全部用いても良い。ポリエーテルポリオールとして、平均分子量が1000~5000であり、且つ、1分子中に少なくとも3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを一部もしくは全部用いると、粘着力と再剥離性のバランスが良好となり得る。このようなポリエーテルポリオールにおいては、数平均分子量が1000未満では、反応性が高くなり、ゲル化しやすくなるおそれがある。また、このようなポリエーテルポリオールにおいては、数平均分子量が5000を超えると、反応性が低くなり、さらにはポリウレタンポリオール自体の凝集力が小さくなるおそれがある。このようなポリエーテルポリオールの数平均分子量は、より好ましくは2500~3500である。
【0079】
有機ポリイソシアネート化合物としては、任意の適切な有機ポリイソシアネート化合物を用い得る。このような有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0080】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4',4"-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0081】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0082】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω'-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω'-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω'-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0083】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0084】
有機ポリイソシアネート化合物としては、トリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体等も併用することができる。
【0085】
ポリウレタンポリオールを得る際に用い得る触媒としては、任意の適切な触媒を用い得る。このような触媒としては、例えば、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
【0086】
3級アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
【0087】
有機金属系化合物としては、例えば、錫系化合物、非錫系化合物等が挙げられる。
【0088】
錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0089】
非錫系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系化合物;オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛系化合物;2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート等の鉄系化合物;安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系化合物;ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系化合物;ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系化合物;等が挙げられる。
【0090】
ポリウレタンポリオールを得る際に触媒を使用する場合、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの2種類のポリオールが存在する系では、その反応性の相違のため、単独の触媒の系では、ゲル化したり反応溶液が濁ったりするという問題が生じやすい。そこで、ポリウレタンポリオールを得る際に2種類の触媒を用いることにより、反応速度、触媒の選択性等が制御しやすくなり、これらの問題を解決し得る。このような2種類の触媒の組み合わせとしては、例えば、3級アミン/有機金属系、錫系/非錫系、錫系/錫系が挙げられ、好ましくは錫系/錫系であり、より好ましくはジブチル錫ジラウレートと2-エチルヘキサン酸錫の組み合わせである。その配合比は、重量比で、2-エチルヘキサン酸錫/ジブチル錫ジラウレートが、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.2~0.6である。配合比が1以上では、触媒活性のバランスによりゲル化しやすくなるおそれがある。
【0091】
ポリウレタンポリオールを得る際に触媒を使用する場合、触媒の使用量は、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールと有機ポリイソシアネ-ト化合物の総量に対して、好ましくは0.01~1.0重量%である。
【0092】
ポリウレタンポリオールを得る際に触媒を使用する場合、反応温度は、好ましくは100℃未満であり、より好ましくは85℃~95℃である。100℃以上になると反応速度、架橋構造の制御が困難となるおそれがあり、所定の分子量を有するポリウレタンポリオールが得難くなるおそれがある。
【0093】
ポリウレタンポリオールを得る際には、触媒を用いなくても良い。その場合は、反応温度が、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上である。また、無触媒下でポリウレタンポリオールを得る際は、3時間以上反応させることが好ましい。
【0094】
ポリウレタンポリオールを得る方法としては、例えば、1)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒、有機ポリイソシアネートを全量フラスコに仕込む方法、2)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒をフラスコに仕込んで有機ポリイソシアネ-トを滴下する添加する方法が挙げられる。ポリウレタンポリオールを得る方法として、反応を制御する上では、2)の方法が好ましい。
【0095】
ポリウレタンポリオールを得る際には、任意の適切な溶剤を用い得る。このような溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン等が挙げられる。これらの溶剤の中でも、好ましくはトルエンである。
【0096】
多官能イソシアネート系化合物としては、前述したものを援用し得る。
【0097】
ウレタンプレポリマーを含有する組成物から得られるポリウレタン系組成物を製造する方法としては、いわゆる「ウレタンプレポリマー」を原料として用いてポリウレタン系樹脂組成物を製造する方法であれば、任意の適切な製造方法を採用し得る。
【0098】
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤としては、特に制限されず、公知乃至慣用のアクリル系粘着剤を用いることができ、例えば、低粘着性、低タック性にコントロールしやすい点より、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有するアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0099】
上記アクリル系ポリマーは、ポリマーの構成単位として、アクリル系モノマー(分子中に(メタ)アクリロイル基を有するモノマー成分)に由来する構成単位を含むポリマーである。上記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多く含むポリマーであることが好ましい。なお、アクリル系ポリマーは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち、いずれか一方又は両方)を表し、他も同様である
【0100】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル(ラウリルエステル)、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のフェニルエステル、ベンジルエステルが挙げられる。
【0101】
上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を第1粘着剤層において適切に発現させ、低粘着性、低タック性にコントロールしやすい点より、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。
【0102】
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、粘着性、タック性等の改質を目的として、上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマー成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。上記他のモノマー成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリロニトリル等の官能基含有モノマー、ビニルエステル系モノマー等が挙げられる。上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。上記酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等が挙げられる。上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等が挙げられる。上記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等が挙げられる。上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルが挙げられる。上記他のモノマー成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を第1粘着剤層において適切に発現させ、低粘着性、低タック性にコントロールしやすい点より、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における、上記他のモノマー成分の合計割合は、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下である。
【0103】
上記アクリル系ポリマーは、そのポリマー骨格中に架橋構造を形成するために、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分と共重合可能な多官能性モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。上記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(例えば、ポリグリシジル(メタ)アクリレート)、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の分子内に(メタ)アクリロイル基と他の反応性官能基を有する単量体等が挙げられる。上記多官能性モノマーは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を第1粘着剤層において適切に発現させ、低粘着性、低タック性にコントロールしやすい点より、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における上記多官能性モノマーの割合は、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下である。
【0104】
アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを含む1種以上のモノマー成分を重合に付すことにより得られる。重合方法としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等が挙げられる。
【0105】
アクリル系ポリマーの質量平均分子量は、10万以上が好ましく、より好ましくは20万~300万である。質量平均分子量が10万以上であると、粘着剤層中の低分子量物質が少ない傾向にあり、電子部品等への汚染をより抑制することができる。
【0106】
第1粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤組成物は、架橋剤を含有していてもよい。例えば、アクリル系ポリマーを架橋させ、第1粘着剤層中の低分子量物質をより低減させることができる。また、アクリル系ポリマーの質量平均分子量を高め、低粘着性、低タック性にコントロールすることができる。上記架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物(ポリフェノール系化合物等)、アジリジン化合物、メラミン化合物等が挙げられ、イソシアネート系架橋剤及び/又はエポキシ系架橋剤が好ましい。架橋剤を使用する場合、その使用量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、10質量部程度以下が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0107】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、脂肪族イソシアネート類、脂環式イソシアネート類、及び芳香族イソシアネート類が挙げられる。脂肪族イソシアネート類としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びダイマー酸ジイソシアネートが挙げられる。脂環式イソシアネート類としては、例えば、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。芳香族イソシアネート類としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネートが挙げられる。また、イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名「コロネートL」,東ソー(株)製)やヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌル体(商品名「コロネートHX」,東ソー(株)製)も挙げられる。
【0108】
エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、及びビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルが挙げられ、また、分子内にエポキシ基を二つ以上有するエポキシ系樹脂も挙げられる。市販のエポキシ系架橋剤としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の「テトラッドC」が挙げられる。
【0109】
第1粘着剤層を構成する粘着剤組成物には、軽剥離化剤を含むことが好ましい。軽剥離化剤を含むことにより、第1粘着剤層の表面にWBL(Weak Boundary Layer;弱境界層)が形成され、低粘着性、低タック性に制御しやすくなる。
【0110】
軽剥離化剤としては、特に限定されず、公知の軽剥離化剤を制限なく使用することができ、例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系界面活性剤、脂肪族エステル等が挙げられ、これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0111】
上記シリコーン系剥離剤としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性シリコーン系剥離剤、電離性放射線硬化性シリコーン系剥離剤等が挙げられる。また、シリコーン系剥離剤は、溶剤を含まない無溶剤型、有機溶剤に溶解あるいは分散した溶剤型のいずれであってもよい。なお、シリコーン系剥離剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0112】
上記熱硬化性シリコーン系剥離剤としては、特に限定されないが、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンとを含むものが好ましい。また、上記シリコーン系剥離剤は、熱付加反応による架橋が起こって硬化する熱付加反応硬化性シリコーン系剥離剤であることが好ましい。
【0113】
上記熱付加反応硬化性シリコーン系剥離剤としては、特に限定されないが、分子中にケイ素原子(Si)に結合した水素原子(H)を有するポリシロキサン(Si-H基含有ポリシロキサン)と、分子中にSi-H結合(SiとHとの共有結合)に対して反応性を有する官能基(Si-H基反応性官能基)を含むポリシロキサン(Si-H基反応性ポリシロキサン)とを含む剥離剤が好ましく挙げられる。なお、この剥離剤は、Si-H基とSi-H基反応性官能基とが付加反応して架橋することにより硬化する。
【0114】
上記Si-H基含有ポリシロキサンにおいて、Hが結合したSiは、主鎖中のSi及び側鎖中のSiのいずれであってもよい。上記Si-H基含有ポリシロキサンは、分子中にSi-H基を2個以上含むポリシロキサンが好ましい。2個以上のSi-H基を含有するポリシロキサンとしては、ポリ(ジメチルシロキサン-メチルシロキサン)等のジメチルハイドロジェンシロキサン系ポリマーが好ましく挙げられる。
【0115】
また、上記Si-H基反応性ポリシロキサンとしては、Si-H基反応性官能基又はかかる官能基を含む側鎖が、シロキサン系ポリマーの主鎖(骨格)を形成するSi(例えば、主鎖末端のSi、主鎖内部のSi)に結合した態様のポリシロキサンが好ましく挙げられる。中でも、Si-H基反応性官能基が主鎖中のSiに直接結合したポリシロキサンが好ましい。さらには、上記Si-H基反応性ポリシロキサンとしては、分子中にSi-H基反応性官能基を2個以上含むポリシロキサンも好ましく挙げられる。
【0116】
上記Si-H基反応性ポリシロキサンにおけるSi-H基反応性官能基としては、例えば、ビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。また、上記Si-H基反応性ポリシロキサンにおける主鎖部分を形成するシロキサン系ポリマーとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサン(2つのアルキル基は同じでも、異なってもよい。);ポリアルキルアリールシロキサン;ポリ(ジメチルシロキサンッメチルシロキサン)、複数のSi含有モノマーを重合してなるポリマー等が挙げられる。中でも、主鎖部分を形成するシロキサン系ポリマーとしては、ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0117】
特に、上記熱付加反応硬化性シリコーン系剥離剤は、分子中にSi-H基を2個以上含むポリシロキサンと、分子中にSi-H基反応性官能基を2個以上含むポリシロキサンとを含有する熱付加反応硬化性シリコーン系剥離剤であることが好ましい。
【0118】
また、上記電離性放射線硬化性シリコーン系剥離剤としては、特に限定されないが、紫外線(UV)照射により架橋反応が起こって硬化するUV硬化性シリコーン系剥離剤が好ましく挙げられる。
【0119】
上記UV硬化性シリコーン系剥離剤は、UV照射によって、カチオン重合、ラジカル重合、ラジカル付加重合、ヒドロシリル化反応等の化学反応が起こって硬化する剥離剤である。上記UV硬化性シリコーン系剥離剤は、カチオン重合により硬化するUV硬化性シリコーン系剥離剤が特に好ましい。
【0120】
カチオン重合型のUV硬化性シリコーン系剥離剤としては、特に限定されないが、少なくとも2個のエポキシ基が、シロキサン系ポリマーの主鎖(骨格)を形成するSi(例えば、主鎖末端のSi、主鎖内部のSi)及び/又は側鎖に含まれるSiに、それぞれ直接又は2価の基(メチレン基、エチレン基等のアルキレン基;エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のアルキレンオキシ基等)を介して結合したエポキシ基含有ポリシロキサンを含む剥離剤が好ましく挙げられる。これら少なくとも2個のエポキシ基のSiへの結合態様は、同じでも異なってもよい。すなわち、1種又は2種以上のエポキシ基含有側鎖を2個以上含むポリシロキサンを含む剥離剤が好ましく挙げられる。エポキシ基含有側鎖としては、グリシジル基、グリシドキシ基(グリシジルオキシ基)、3,4-エポキシシクロヘキシル基、2,3-エポキシシクロペンチル基等が挙げられる。エポキシ基含有ポリシロキサンは、直鎖状、分岐鎖状、又はそれらの混合物のいずれであってもよい。
【0121】
特に、本発明の転写用両面粘着テープでは、第1粘着剤層を低粘着性、低タック性に制御しやすいという観点から、シリコーン系粘着剤に熱硬化性シリコーン系剥離剤を含むことが好ましく、熱付加反応硬化性シリコーン系剥離剤を含むことがより好ましい。
【0122】
本発明の転写用両面粘着テープでの第1粘着剤層がシリコーン系粘着剤を含む場合、上記シリコーン系剥離剤の含有量は、特に限定されないが、ベースポリマーであるシリコーン系ポリマー100重量部に対して、0.5重量部以上100重量部以下であることが好ましい。上記含有量が0.5重量部以上であると、第1粘着剤層を低粘着性、低タック性に制御しやすいという効果を得やすくなり、より好ましくは1重量部以上であり、さらにより好ましくは3重量部以上である。また、上記含有量が100重量部以下であると、十分な粘着性が得られず、電子部品の受け取りが難しくなるという不具合を抑制しやすくなり、より好ましくは30重量部以下であり、さらにより好ましくは25重量部以下である。
【0123】
上記フッ素系界面活性剤を軽剥離化剤として使用することにより、フッ素部位の低表面自由エネルギーによる軽剥離効果を発揮することができる。
【0124】
上記フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系オリゴマー、パーフルオロブタンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、ヘキサフルオロペンタントリマー誘導体含有スルホン酸塩、ヘキサフルオロペンタントリマー誘導体含有カルボン酸塩、ヘキサフルオロペンタントリマー誘導体含有四級アンモニウム塩、ヘキサフルオロペンタントリマー誘導体含有ベタイン、ヘキサフルオロペンタントリマー誘導体含有ポリオキシエチレンエーテル等等が挙げられ、中でも、フッ素系オリゴマーが好ましい。なお、フッ素系界面活性剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0125】
上記フッ素系界面活性剤の具体例としては、たとえば、市販品として、商品名「メガファックF-114」、「メガファックF-410」(以上、DIC(株)製)、商品名「サーフロンS-211」、「サーフロンS-221」、「サーフロンS-231」、「サーフロンS-232」、「サーフロンS-233」、「サーフロンS-241」、「サーフロンS-242」、「サーフロンS-243」、「サーフロンS-420」(以上、AGCセイミケミカル(株)製)、商品名「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント320」、「フタージェント400SW」、「フタージェント251」、「フタージェント212M」、「フタージェント215M」、「フタージェント250」、「フタージェント209F」、「フタージェント222F」、「フタージェント245F」、「フタージェント208G」、「フタージェント218GL」、「フタージェント240G」、「フタージェント212P」、「フタージェント220P」、「フタージェント228P」、「フタージェントFTX-218」、「フタージェントDFX-18(以上(株)ネオス製)等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0126】
上記フッ素系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、3500以上が好ましく、より好ましくは5000以上、さらに好ましくは10000以上、特に好ましくは20000以上である。上記フッ素系オリゴマーの重量平均分子量が3500以上であると、低粘着性、低タック性に制御しやすくなる。さらに、重量平均分子量が20000以上であると、粘着剤(組成物)の配合時の泡立ちを抑制でき、粘着剤塗工後の外観に優れるため、好ましい。また、上記フッ素系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)の上限としては、20万が好ましく、10万以下がより好ましい。上限を20万とすることで、フッ素系オリゴマーが表面に偏在しやすく、軽剥離効果をより発揮しやすくなり、好ましい。
【0127】
また、上記フッ素系オリゴマーとしては、たとえば、市販品として、商品名「メガファックF-251」、「メガファックF-253」、「メガファックF-281」、「メガファックF-410」、「メガファックF-430」、「メガファックF-444」、「メガファックF-477」、「メガファックF-510」、「メガファックF-511」、「メガファックF-551」、「メガファックF-552」、「メガファックF-553」、「メガファックF-554」、「メガファックF-555」、「メガファックF-556」、「メガファックF-557」、「メガファックF-558」、「メガファックF-559」、「メガファックF-560」、「メガファックF-561」、「メガファックF-562」、「メガファックF-563」、「メガファックF-565」、「メガファックF-568」、「メガファックF-569」、「メガファックF-570」、「メガファックF-571」、「メガファックF-572(以上、DIC(株)製)、商品名「サーフロンS-611」、「サーフロンS-651」、「サーフロンS-386(以上、AGCセイミケミカル(株)製)、商品名「フタージェント610FM」、「フタージェント710FL」、「フタージェント710FM」、「フタージェント710FS」、「フタージェント730FL」、「フタージェント730LM(以上(株)ネオス製)等があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0128】
本発明の転写用両面粘着テープでの第1粘着剤層がフッ素系界面活性剤を含む場合、上記フッ素系界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、ベースポリマーであるシリコーン系ポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上5重量部以下であることが好ましい。上記含有量が0.01重量部以上であると、第1粘着剤層を低粘着性、低タック性に制御しやすいという効果を得やすくなり、より好ましくは0.05重量部以上であり、さらにより好ましくは0.1重量部以上である。また、上記含有量が5重量部以下であると、十分な粘着性が得られず、電子部品の受け取りが難しくなるという不具合を抑制しやすくなり、また、透明性の低下を抑制する観点から、より好ましくは3重量部以下であり、さらにより好ましくは2重量部以下である。
【0129】
第1粘着剤層を構成する粘着剤組成物が脂肪酸エステルを含むことにより、第1粘着剤層体の電子部品への低粘着性、低タック性、濡れ性が期待できる。
【0130】
上記脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、べへニン酸モノグリセライド、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸コレステリル、メタクリル酸ラウリル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、オレイン酸メチル、ステアリン酸メチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ペンタエリスリトールモノオレエート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸イソトリデシル、2-エチルヘキサン酸トリグリセライド、ラウリン酸ブチル、オレイン酸オクチル、イソノナン酸トリデシル等が挙げられる。脂肪酸エステルは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0131】
上記ウレタン系粘着剤組成物に含有される脂肪酸エステルの含有量は、第1粘着剤層体の電子部品への低粘着性、低タック性、濡れ性や被着体への汚染性の観点から、例えば、ポリオール100重量部に対して、1~50重量部が好ましく、2~40重量部がより好ましく、3~30重量部がさらに好ましい。
【0132】
第1粘着剤層を構成する粘着剤組成物が軽剥離化剤を含む場合、その含有量(総量)は、第1粘着剤層体の電子部品への低粘着性、低タック性、濡れ性や電子部品への汚染性の観点から、例えば、ベースポリマー100重量部に対して、0.1重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、3重量部以上がさらに好ましい。第1粘着剤層の着色を防止する観点から、50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
【0133】
上記紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、波長250nm付近での紫外線吸収能力が高い観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0134】
1分子中にヒドロキシル基を2個以下有するトリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「Tinosorb S」、BASF社製)、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN 460」、BASF社製)、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(C10-C16(主としてC12-C13)アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(商品名「TINUVIN400」、BASF社製)、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[3-(ドデシルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ]フェノール)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物(商品名「TINUVIN405」、BASF社製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(商品名「TINUVIN1577」、BASF社製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(商品名「ADK STAB LA46」、ADEKA社製)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN479」、BASF社製)等を挙げることができる。
【0135】
また、1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 928」、BASF社製)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(商品名「TINUVIN PS」、BASF社製)、ベンゼンプロパン酸及び3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ(C7-9側鎖及び直鎖アルキル)のエステル化合物(商品名「TINUVIN384-2」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN900」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN928」、BASF社製)、メチル-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物(商品名「TINUVIN1130」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(商品名「TINUVIN P」、BASF社製)、2(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN234」、BASF社製)、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(商品名「TINUVIN326」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(商品名「TINUVIN328」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN329」、BASF社製)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(商品名「TINUVIN213」、BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(商品名「TINUVIN571」、BASF社製)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3、4、5,6-テトラヒドロフタルイミドーメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(商品名「Sumisorb250」、住友化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0136】
また、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物)、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤(オキシベンゾフェノン系化合物)としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸(無水及び三水塩)、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4-ジメトキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0137】
また上記サリチル酸エステル系紫外線吸収剤(サリチル酸エステル系化合物)としては、例えば、フェニル-2-アクリロイルオキシベンゾエ-ト、フェニル-2-アクロリイルオキシ-3-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-アクリロイルオキシ-4-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-アクリロイルオキシ-5-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-アクリロイルオキシ-3-メトキシベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシ-3-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシ-4メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンゾエ-ト、フェニル2-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエ-ト、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(商品名「TINUVIN120」、BASF社製)等を挙げることができる。
【0138】
上記シアノアクリレート系紫外線吸収剤(シアノアクリレート系化合物)としては、例えば、アルキル-2-シアノアクリレート、シクロアルキル-2-シアノアクリレート、アルコキシアルキル-2-シアノアクリレート、アルケニル-2-シアノアクリレート、アルキニル-2-シアノアクリレート等を挙げることができる。
【0139】
上記紫外線吸収剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0140】
上記紫外線吸収剤の吸収スペクトルの最大吸収波長は、200~400nmの波長領域に存在することが好ましく、240~380nmの波長領域に存在することがより好ましい。このような紫外線吸収剤としては、例えば、商品名「Tinuvin384-2」(最大吸収波長345nm、BASF社製)等が挙げられる。
【0141】
上記第1粘着剤層の波長248nmの紫外線の紫外線透過率TUV1は、上記第1粘着剤層の厚みにもよるが、75%以下(より好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下、下限は通常5%である)であることが好ましい。なお、上記紫外線透過率は、例えば、波長248nmの紫外線を上記第1粘着剤層に垂直に入射させた透過率を、分光光度計(製品名「U-4100」)、(株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定することができる。
【0142】
また、上記第1粘着剤層の波長248nmの紫外線の紫外線透過率TUV1を、上記第1粘着剤層の厚みt1で除した値(TUV1/t1)は、5.00以下であることが好ましく、より好ましくは4.90以下、更に好ましくは4.80以下であり、下限は、0.50であることが好ましく、より好ましくは0.70、更に好ましくは1.00である。
【0143】
上記第1粘着剤層を構成する粘着剤組成物中の上記紫外線吸収剤の含有量は、上記第1粘着剤層の厚みによって変化するが、例えば15μmとした場合には、上記粘着剤100重量部に対して、0.05~1.5重量部が好ましく、より好ましくは0.07~1.2重量部、更に好ましくは1.0~1.0重量部である。
【0144】
第1粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤を含むことにより、本発明の転写用両面粘着シートの保管時の変色等の劣化を抑制することができ、また、転写用両面粘着シートを切断しやすくなる等、加工性を向上することができる。
【0145】
上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、リン系、イオウ系及びアミン系の酸化防止剤があげられ、これらから選ばれるいずれか少なくとも1種を用いる。これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0146】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、単環フェノール化合物として、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-メチルフェノール、2,6-ジイソプロピル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-アミル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-オクチル-4-n-プロピルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-n-オクチルフェノール、2-イソプロピル-4-メチル-6-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4-エチル-6-t-オクチルフェノール、2-イソブチル-4-エチル-6-t-ヘキシルフェノール、2-シクロヘキシル-4-n-ブチル-6-イソプロピルフェノール、スチレン化混合クレゾール、DL-α-トコフェロール、ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等を、2環フェノール化合物として、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-ブチリデンビス(2-t-ブチル-4-メチルフェノール)、3,6-ジオキサオクタメチレンビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2'-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を、3環フェノール化合物として、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4-t-ブチル-2,6-ジメチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等を、4環フェノール化合物として、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等を、リン含有フェノール化合物として、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)ニッケル等を挙げることができる。
【0147】
上記酸化防止剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。粘着剤組成物に含有される劣化防止剤の含有量は、保管時の変色等の劣化抑制、転写用両面粘着シートの加工性の観点から、例えば、上記第1粘着組成物100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、0.03~5重量部がより好ましく、0.1~3重量部がさらに好ましい。
【0148】
上記第1粘着剤層を構成する粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含むことができる。このようなその他の成分としては、例えば、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、可塑剤、導電剤、表面潤滑剤、レベリング剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤等が挙げられる。
【0149】
<第2粘着剤層>
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、第2粘着剤層は、キャリア基板に仮固定するための粘着剤層であり、剥離性粘着剤層からなるものである。上記第2粘着剤層が剥離性粘着剤層からなるという構成は、当該第2粘着剤層をキャリア基板から糊残り等の汚染がなく剥離することができ、リワーク性が向上できる点で好ましい。
【0150】
上記第2粘着剤層は、粘着剤の種類や組成、架橋度等による粘着性の調整や、熱、紫外線等の電磁波等の物理的刺激により粘着力を低下させることにより、剥離性粘着剤層とすることができる。
【0151】
第2粘着剤層のガラス板に対する25℃での180°引き剥がし粘着力は、特に限定されないが、キャリア基板から糊残り等の汚染がなく剥離することができ、リワーク性向上の観点から、5000mN/25mm以下であることが好ましく、より好ましくは3000mN/25mm以下であり、さらに好ましくは1000mN/25mm以下である。また、第2粘着剤層に対するキャリア基板の接着性の観点から、第2粘着剤層のガラス板に対する25℃での180°引き剥がし粘着力は、1mN/25mm以上であることが好ましく、より好ましくは5mN/25mm以上である。
【0152】
第2粘着剤層のガラス板に対する25℃での180°引き剥がし粘着力(以下、本明細書において、「P2a」と称する場合がある)に対する、転写用両面粘着シートを160℃で5分間保持した後の第2粘着剤層のガラス板に対する25℃での180°引き剥がし粘着力(以下、本明細書において、「P2b」と称する場合がある)の比(P2b/P2a)は、特に限定されないが、2以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。P2b/P2aが3以下であるという構成は、本発明の転写用両面粘着シートが受け取った電子部品を実装基板上に熱圧着にて転写して実装する際に、キャリア基板に対する第2粘着剤層の粘着力が上昇せず、良好に剥離してリワーク性に優れる点で好ましい。
【0153】
上記第2粘着剤層の25℃での180°引き剥がし粘着力は、第1粘着剤層と同様に測定することができる。
【0154】
上記第2粘着剤層の上記粘着力は、構成する粘着剤の種類や組成、架橋度等を調整することや、軽剥離化剤や可塑剤の配合によるWBL(Weak Boundary Layer)の形成により、調整することができる。
【0155】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、第2粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、1μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上である。厚みが一定以上であると、第2粘着剤層がキャリア基板に安定して固定しやすくなり、好ましい。また、第2粘着剤層の厚みの上限は、特に限定されないが、30μmが好ましく、より好ましくは20μmである。厚みが一定以下であると、第2粘着剤層をキャリア基板から剥離しやすくなり、リワーク性が向上し、好ましい。
【0156】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、第2粘着剤層のヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。ヘイズが10%以下であると、優れた透明性が得られ、例えば、転写用両面粘着シートをキャリア基板に貼付した際に、キャリア基板上に付されたパターン(例えば、電子部品の受け取り位置を示すマーカー)を視認することができ、好ましい。なお、上記ヘイズは、例えば、第2粘着剤層をセパレータ上に形成して常態(23℃、50%RH)に少なくとも24時間静置した後、セパレータを剥離し、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に貼り合わせたものを試料とし、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定することができる。
【0157】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、第2粘着剤層の可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361-1に準じる)は、特に限定されないが、85%以上が好ましく、より好ましくは88%以上である。全光線透過率が85%以上であると、優れた透明性が得られ、例えば、転写用両面粘着シートをキャリア基板に貼付した際に、キャリア基板上に付されたパターン(例えば、電子部品の受け取り位置を示すマーカー)を視認することができ、好ましい。なお、上記全光線透過率は、例えば、第2粘着剤層をセパレータ上に形成して常態(23℃、50%RH)に少なくとも24時間静置した後、セパレータを剥離し、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に貼り合わせたものを試料とし、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定することができる。
【0158】
上記第2粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、上記で第1粘着剤層で使用されるシリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、キャリア基板から糊残り等の汚染がなく剥離することができ、リワーク性向上の観点から、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤が好ましく、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤がより好ましく、アクリル系粘着剤がさらに好ましい。
【0159】
本発明の転写用両面粘着シートにおける第2粘着剤層は、転写用両面粘着シートの使用過程において外部からの作用によって意図的に粘着力を低減させることが可能な粘着剤層(粘着力低減可能型粘着剤層)であってもよいし、転写用両面粘着シートの使用過程において外部からの作用によっては粘着力がほとんど又は全く低減しない粘着剤層(粘着力非低減型粘着剤層)であってもよく、本発明の転写用両面粘着シートを使用して電子部品を転写する手法や条件等に応じて適宜に選択することができる。
【0160】
第2粘着剤層が粘着力低減可能型粘着剤層である場合、本発明の転写用両面粘着シートの製造過程や使用過程において、第2粘着剤層が相対的に高い粘着力を示す状態と相対的に低い粘着力を示す状態とを使い分けることが可能となる。例えば、本発明の転写用両面粘着シートの使用過程で第1粘着剤層が電子部品を受け取る工程では、第2粘着剤層が相対的に高い粘着力を示す状態を利用して、キャリア基板からの転写用両面粘着シートの浮きを抑制・防止することが可能となる。一方で、その後、本発明の転写用両面粘着シートをキャリア基板から剥離過程では、第2粘着剤層の粘着力を低減させることで、リワーク性を向上させることができる。
【0161】
このような粘着力低減可能型粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、放射線硬化性粘着剤、加熱発泡型粘着剤等が挙げられる。粘着力低減可能型粘着剤層を形成する粘着剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0162】
上記放射線硬化性粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、又はX線の照射により硬化するタイプの粘着剤を用いることができ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化性粘着剤)を特に好ましく用いることができる。
【0163】
上記放射線硬化性粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマー等のベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する添加型の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
【0164】
ベースポリマーとしては、第1粘着剤層と同様のアクリル系ポリマーを使用することができる。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を第2粘着剤層において適切に発現させ、粘着性、剥離性をコントロールしやすい点より、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。
【0165】
上記アクリル系ポリマーは、ヒドロキシ基含有モノマーを含んでもよい。第2粘着剤層内のアクリル系ポリマーがヒドロキシ基含有モノマーを含む場合、第2粘着剤層において適度な凝集力が得られやすい。第2粘着剤層において適度な接着性や凝集力を実現するという観点からは、上記アクリル系ポリマーにおける、ヒドロキシ基含有モノマーの割合は、例えば0.1~30質量%であり、好ましくは0.5~20質量%である。
【0166】
上記アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマーを含んでもよい。第2粘着剤層内のアクリル系ポリマーがカルボキシ基含有モノマーを含む場合、第2粘着剤層において適度な接着信頼性が得られやすい。第2粘着剤層において適度な接着信頼性を実現するという観点からは、上記アクリル系ポリマーにおける、カルボキシ基含有モノマーの割合は、例えば0.1~30質量%であり、好ましくは0.5~20質量%である。
【0167】
上記アクリル系ポリマーは、ビニルエステル系モノマーを含んでもよい。第2粘着剤層内のアクリル系ポリマーがビニルエステル系モノマーを含む場合、第2粘着剤層において適度な凝集力が得られやすい。第2粘着剤層において適度な凝集力を実現するという観点からは、上記アクリル系ポリマーにおける、ビニルエステル系モノマーの割合は、例えば0.1~60質量%であり、好ましくは0.5~50質量%である。
【0168】
第2粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤組成物は、架橋剤を含有していてもよい。例えば、アクリル系ポリマーを架橋させ、第2粘着剤層中の低分子量物質をより低減させることができる。また、アクリル系ポリマーの質量平均分子量を高め、低粘着性、剥離性にコントロールすることができる。上記架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物(ポリフェノール系化合物等)、アジリジン化合物、メラミン化合物等が挙げられ、イソシアネート系架橋剤及び/又はエポキシ系架橋剤が好ましい架橋剤を使用する場合、その使用量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、10質量部程度以下が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0169】
第2粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤組成物は、架橋促進剤が用いられていてもよい。架橋促進剤の種類は、使用する架橋剤の種類に応じて適宜選択することができる。なお、本明細書において、架橋促進剤とは、架橋剤による架橋反応の速度を高める触媒を指す。かかる架橋促進剤としては、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、テトラ-n-ブチル錫、トリメチル錫ヒドロキシド等の錫(Sn)含有化合物;N,N,N',N'-テトラメチルヘキサンジアミンやトリエチルアミン等のアミン類、イミダゾール類等のN含有化合物;等が例示される。なかでも、Sn含有化合物が好ましい。これら架橋促進剤の使用は、上記副モノマーとしてヒドロキシル基含有モノマーを用い、かつ架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いた場合に特に効果的である。上記粘着剤組成物に含まれる架橋促進剤の量は、上記アクリル系ポリマー100質量部に対し、例えば、0.001~0.5質量部程度(好ましくは0.001~0.1質量部程度)とすることができる。
【0170】
上記放射線重合性のモノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等挙げられる。上記放射線重合性のオリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等の種々のオリゴマーが挙げられ、分子量が100~30000程度のものが好ましい。第2粘着剤層を形成する放射線硬化性粘着剤中の上記放射線硬化性のモノマー成分及びオリゴマー成分の含有量は、上記ベースポリマー100質量部に対して、例えば5~500質量部、好ましくは40~150質量部程度である。また、添加型の放射線硬化性粘着剤としては、例えば特開昭60-196956号公報に開示のものを用いてもよい。
【0171】
上記放射線硬化性粘着剤としては、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。このような内在型の放射線硬化性粘着剤を用いると、形成された第2粘着剤層内での低分子量成分の移動に起因する粘着特性の意図しない経時的変化を抑制することができる傾向がある。
【0172】
上記内在型の放射線硬化性粘着剤に含有されるベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーが好ましい。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入方法としては、例えば、第1の官能基を有するモノマー成分を含む原料モノマーを重合(共重合)させてアクリル系ポリマーを得た後、上記第1の官能基と反応し得る第2の官能基及び放射線重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0173】
上記第1の官能基と上記第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基等が挙げられる。これらの中でも、反応追跡の容易さの観点から、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせ、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが好ましい。中でも、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製することは技術的難易度が高く、一方でヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーの作製及び入手の容易性の観点から、上記第1の官能基がヒドロキシ基であり、上記第2の官能基がイソシアネート基である組み合わせが好ましい。イソシアネート基及び放射性重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物、すなわち、放射線重合性の不飽和官能基含有イソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、ヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーとしては、上述のヒドロキシ基含有モノマーや、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテル等のエーテル系化合物に由来する構成単位を含むものが挙げられる。
【0174】
上記放射線硬化性粘着剤は、光重合開始剤を含有することが好ましい。上記光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート等が挙げられる。上記α-ケトール系化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。上記アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフエノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等が挙げられる。上記ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等が挙げられる。上記ケタール系化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。上記芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロリド等が挙げられる。上記光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム等が挙げられる。上記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。放射線硬化性粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば0.05~20質量部である。
【0175】
上記加熱発泡型粘着剤は、加熱によって発泡や膨張をする成分(発泡剤、熱膨張性微小球等)を含有する粘着剤である。上記発泡剤としては、種々の無機系発泡剤や有機系発泡剤が挙げられる。上記無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類等が挙げられる。上記有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系化合物等が挙げられる。上記熱膨張性微小球としては、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張する物質が殻内に封入された構成の微小球が挙げられる。上記加熱によって容易にガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等が挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質をコアセルべーション法や界面重合法等によって殻形成物質内に封入することによって、熱膨張性微小球を作製することができる。上記殻形成物質としては、熱溶融性を示す物質や、封入物質の熱膨張の作用によって破裂し得る物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。
【0176】
上記粘着力非低減型粘着剤層としては、例えば、感圧型粘着剤層が挙げられる。なお、感圧型粘着剤層には、粘着力低減可能型粘着剤層に関して上述した放射線硬化性粘着剤から形成された粘着剤層を予め放射線照射によって硬化させつつも一定の粘着力を有する形態の粘着剤層が含まれる。粘着力非低減型粘着剤層を形成する粘着剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、第2粘着剤層の全体が粘着力非低減型粘着剤層であってもよいし、一部が粘着力非低減型粘着剤層であってもよい。例えば、第2粘着剤層が単層構造を有する場合、第2粘着剤層の全体が粘着力非低減型粘着剤層であってもよいし、第2粘着剤層における特定の部位が粘着力非低減型粘着剤層であり、他の部位が粘着力低減可能型粘着剤層であってもよい。また、第2粘着剤層が積層構造を有する場合、積層構造における全ての粘着剤層が粘着力非低減型粘着剤層であってもよいし、積層構造中の一部の粘着剤層が粘着力非低減型粘着剤層であってもよい。
【0177】
放射線硬化性粘着剤から形成された粘着剤層(放射線未照射放射線硬化型粘着剤層)を予め放射線照射によって硬化させた形態の粘着剤層(放射線照射済放射線硬化型粘着剤層)は、放射線照射によって粘着力が低減されているとしても、含有するポリマー成分に起因する粘着性を示し、本発明の転写用両面粘着シートに最低限必要な粘着力を発揮することが可能である。放射線照射済放射線硬化型粘着剤層を用いる場合、第2粘着剤層の面広がり方向において、第2粘着剤層の全体が放射線照射済放射線硬化型粘着剤層であってもよく、第2粘着剤層の一部が放射線照射済放射線硬化型粘着剤層であり且つ他の部分が放射線未照射の放射線硬化型粘着剤層であってもよい。なお、本明細書において、「放射線硬化型粘着剤層」とは、放射線硬化性粘着剤から形成された粘着剤層をいい、放射線硬化性を有する放射線未照射放射線硬化型粘着剤層及び当該粘着剤層が放射線照射により硬化した後の放射線硬化済放射線硬化型粘着剤層の両方を含む。
【0178】
上記感圧型粘着剤層を形成する粘着剤としては、公知乃至慣用の感圧型の粘着剤を用いることができ、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤を好ましく用いることができる。第2粘着剤層が感圧型の粘着剤としてアクリル系ポリマーを含有する場合、当該アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多い構成単位として含むポリマーであることが好ましい。上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、上述の添加型の放射線硬化性粘着剤に含まれ得るアクリル系ポリマーとして説明されたアクリル系ポリマーを採用することができる。
【0179】
<基材>
本発明の転写用両面粘着シートにおける基材は、第1粘着剤層や第2粘着剤層において支持体として機能する要素である。基材としては、例えば、プラスチック基材(特にプラスチックフィルム)が挙げられる。上記基材は、単層であってもよいし、同種又は異種の基材の積層体であってもよい。
【0180】
上記プラスチック基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルイミド;アラミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド;ポリフェニルスルフィド;フッ素樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;セルロース樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。本発明の転写用両面粘着シートが受け取った電子部品を実装基板上に熱圧着(例えば、150℃)して転写して実装する際に、熱による膨張や収縮を起こしにくい良好な耐熱性を示し、精度よく実装できるという観点から、基材は、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の耐熱性樹脂を主成分として含むことが好ましく、ポリイミドを主成分として含むことがより好ましい。なお、基材の主成分とは、構成成分中で最も大きな質量割合を占める成分とする。上記樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。第2粘着剤層が前述のように放射線硬化型粘着剤層である場合、基材は放射線透過性を有することが好ましい。
【0181】
基材がプラスチックフィルムである場合、上記プラスチックフィルムは、無配向であってもよく、少なくとも一方向(一軸方向、二軸方向等)に配向していてもよいが、無配向が熱収縮性を示しにくいことから好ましい。
【0182】
基材の第1粘着剤層及び/又は第2粘着剤層側表面は、粘着剤層との密着性、保持性等を高める目的で、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等の物理的処理;クロム酸処理等の化学的処理;コーティング剤(下塗り剤);シリコーンプライマー処理による易接着処理等の表面処理が施されていてもよい。また、帯電防止能を付与するため、金属、合金、これらの酸化物等を含む導電性の蒸着層を基材表面に設けるほか、PEDOT-PSS等の導電性高分子をコーティングしてもよい。密着性を高めるための表面処理は、基材における粘着剤層側の表面全体に施されていることが好ましい。
【0183】
基材の厚さは、本発明の転写用両面粘着シートにおける支持体として基材が機能するための強度を確保するという観点からは、5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上である。また、本発明の転写用両面粘着シートにおいて適度な可撓性を実現するという観点からは、基材の厚さは、200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0184】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、基材のヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、10%以下が好ましく、より好ましくは5.0%以下である。ヘイズが10%以下であると、優れた透明性が得られ、例えば、転写用両面粘着シートをキャリア基板に貼付した際に、キャリア基板上に付されたパターン(例えば、電子部品の受け取り位置を示すマーカー)を視認することができ、好ましい。なお、上記ヘイズは、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定することができる。
【0185】
本発明の転写用両面粘着シートにおいて、基材の可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361-1に準じる)は、特に限定されないが、85%以上が好ましく、より好ましくは88%以上である。全光線透過率が85%以上であると、優れた透明性が得られ、例えば、転写用両面粘着シートをキャリア基板に貼付した際に、キャリア基板上に付されたパターン(例えば、電子部品の受け取り位置を示すマーカー)を視認することができ、好ましい。なお、上記全光線透過率は、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定することができる。
【0186】
<セパレータ>
本発明の転写用両面粘着シートの粘着剤層表面(第1粘着剤層及び/又は第2粘着剤層の粘着面)は、使用時までは剥離ライナー(セパレータ)により保護されていてもよい。セパレータは粘着剤層の保護材として用いられ、粘着シートを被着体に貼付する際に剥がされる。
図2は、本発明の転写用両面粘着シートの一実施形態を示す断面模式図であり、1は転写用両面粘着シート、10は基材、11は第1粘着剤層、12は第2粘着剤層、110、120はセパレータを示す。なお、セパレータは、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0187】
上記セパレータとしては、慣用の剥離紙等を利用でき、具体的には、例えば、剥離処理剤による剥離処理層を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等)からなる低接着性基材等を用いることができる。
【0188】
上記セパレータとしては、例えば、セパレータ用基材の少なくとも一方の面に剥離処理層が形成されているセパレータを好適に用いることができる。このようなセパレータ用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルム等のプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙等)の他、これらを、ラミネートや共押し出し等により、複層化したもの(2~3層の複合体)等が挙げられる。
【0189】
上記剥離処理層を構成する剥離処理剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤等を用いることができる。剥離処理剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
なお、第1粘着剤層は、低粘着性粘着剤層で構成されているため、剥離処理剤で処理されていない基材をセパレータとして使用することも可能である。
【0190】
上記セパレータは、電子部品への悪影響を防止するため、セパレータ用基材の少なくとも一方の面に帯電防止層が形成されていてもよい。帯電防止層はセパレータの一方の面(剥離処理面又は未処理面)に形成されていてもよく、セパレータの両面(剥離処理面及び未処理面)に形成されていてもよい。
【0191】
帯電防止性樹脂に含有される帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基等のカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤、スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤、アルキルベタイン及びその誘導体、イミダゾリン及びその誘導体、アラニン及びその誘導体等の両性型帯電防止剤、アミノアルコール及びその誘導体、グリセリン及びその誘導体、ポリエチレングリコール及びその誘導体等のノニオン型帯電防止剤、さらには、上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0192】
セパレータの厚さは、特に限定されず、5~100μmの範囲から適宜選択すればよい。
【0193】
本発明の転写用両面粘着シートの製造方法は、上記粘着剤組成物の組成等によって異なり、特に限定されず、公知の形成方法を利用することができるが、例えば、以下の(1)~(4)等の方法が挙げられる。
(1)上記粘着剤組成物を基材上に塗布(塗工)して組成物層を形成し、該組成物層を硬化(例えば、熱硬化や紫外線等の活性エネルギー線照射による硬化)させて粘着剤層を形成して粘着シートを製造する方法
(2)上記粘着剤組成物を、セパレータ上に塗布(塗工)して組成物層を形成し、該組成物層を硬化(例えば、熱硬化や紫外線等の活性エネルギー線照射による硬化)させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材上に転写して粘着シートを製造する方法
(3)上記粘着剤組成物を、基材上に塗布(塗工)し、乾燥させて粘着剤層を形成して粘着シートを製造する方法
(4)上記粘着剤組成物を、セパレータ上に塗布(塗工)し、乾燥させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材上に転写して粘着シートを製造する方法
【0194】
上記(1)~(4)における硬化方法としては、生産性に優れるという点で、均質で表面平滑な粘着剤層を形成できる点で、熱硬化させる方法が好ましい。
【0195】
上記粘着剤組成物を所定の面上に塗布(塗工)する方法としては、公知のコーティング方法を採用することがき、特に限定されないが、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等が挙げられる。
【0196】
本発明の転写用両面粘着シートの厚み(総厚み)は、特に限定されないが、10μm以上が好ましく、より好ましくは15μm以上である。厚みが一定以上であると、第1粘着剤層が電子部品を精度よく受け取りやすくなり、好ましい。また、本発明の転写用両面粘着シートの厚み(総厚み)の上限は、特に限定されないが、500μmが好ましく、より好ましくは300μmである。厚みが一定以下であると、電子部品を精度よく実装基板に転写しやすくなり、好ましい。なお、本発明の転写用両面粘着シートの厚みには、セパレータの厚みは含めないものとする。
【0197】
本発明の転写用両面粘着シートのヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、10%以下が好ましく、より好ましくは5.0%以下である。ヘイズが10%以下であると、優れた透明性が得られ、例えば、転写用両面粘着シートをキャリア基板に貼付した際に、キャリア基板上に付されたパターン(例えば、電子部品の受け取り位置を示すマーカー)を視認することができ、好ましい。なお、上記ヘイズは、例えば、転写用両面粘着シートを常態(23℃、50%RH)に少なくとも24時間静置した後、セパレータを有する場合にはこれを剥離し、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に貼り合わせたものを試料とし、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定することができる。
【0198】
本発明の転写用両面粘着シートの可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361-1に準じる)は、特に限定されないが、85%以上が好ましく、より好ましくは88%以上である。全光線透過率が85%以上であると、優れた透明性が得られ、例えば、転写用両面粘着シートをキャリア基板に貼付した際に、キャリア基板上に付されたパターン(例えば、電子部品の受け取り位置を示すマーカー)を視認することができ、好ましい。なお、上記全光線透過率は、例えば、転写用両面粘着シートを常態(23℃、50%RH)に少なくとも24時間静置した後、セパレータを有する場合にはこれを剥離し、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に貼り合わせたものを試料とし、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定することができる。
【0199】
本発明の転写用両面粘着シートは、電子部品の実装基板上への実装方法に好適に使用されるものである。本発明の転写用両面粘着シートを使用した電子部品の実装基板上への実装方法は、好ましくは、以下の工程を含む。
ダイシングされた電子部品を、転写用両面粘着シートの第1粘着剤層が受け取る工程(第1工程)
上記第1粘着剤層が受け取った電子部品を実装基板に転写する工程(第2工程)
【0200】
図3は、本発明の転写用両面粘着シートを使用した電子部品の実装基板上への実装方法における第1工程の一実施形態を表す断面模式図である。
【0201】
図3(a)において、転写用両面粘着シート1は、第2粘着剤層12の粘着面でキャリア基板22に貼着している。キャリア基板22の第2粘着剤層12と貼着している面には、電子部品を配置するためのマーキングパターンが付されていてもよい。転写用両面粘着シート1は透明性が高いため、キャリア基板22に付されたマーキングパターンを視認することができる。
【0202】
転写用両面粘着シート1の第1粘着剤層11の粘着面の上部には、ダイシングにより個片化された複数の電子部品21がダイシングテープ20に貼着された状態で、第1粘着剤層11の粘着面に対向して、離間して配置されている。
【0203】
図3(b)において、ダイシングテープ20の電子部品21が貼着していない面からピン部材23で電子部品21を突き押して、電子部品21を第1粘着剤層11の粘着面に近接させて、第1粘着剤層11の粘着面が受け取る。受け取りは、電子部品21を第1粘着剤層11を接触させて行ってもよく、また、非接触で行ってもよい。非接触で受け取る場合は、電子部品21がダイシングテープ20から剥離するまで電子部品21を突き押し、電子部品21の粘着面に落下させる。接触させて受け取る場合、第1粘着剤層11の粘着面は低粘着性のため、電子部品21が受け取られる際に係る応力は弱いため、電子部品21の損傷を抑制することができる。非接触で受け取る場合は、第1粘着剤層11の粘着面は低粘着性のため、落下した電子部品21を位置精度よくキャッチすることができる。なお、ピン部材23の代わりに紫外線、レーザー光線等の放射線を照射することにより、電子部品21をダイシングテープ20から剥離させてもよい。
【0204】
電子部品21の第1粘着剤層11への受け取りは個別に行ってもよく、複数個を一括して行ってもよい。
図3(c)は、ダイシングテープ20の全ての電子部品21が、転写用両面粘着シート1の第1粘着剤層11の粘着面上に受け取られた形態を示す断面模式図である。
【0205】
図4は、本発明の転写用両面粘着シートを使用した電子部品の実装基板上への実装方法における第2工程を表す断面模式図である。
【0206】
図4(a)に示すように、実装基板30の回路面31(回路パターンは図示略)に対向、離間して、転写用両面粘着シート1の第1粘着剤層11の粘着面上に配列された電子部品21を配置する。次に、
図4(b)に示すように、実装基板30の回路面31と転写用両面粘着シート1の第1粘着剤層11の粘着面上に配列された電子部品21を近接させて、電子部品21と実装基板30の回路面31を接触させる。
【0207】
電子部品21の実装基板30の回路面31への転写は、熱圧着(例えば、150℃、1分間)で行ってもよい。転写用両面粘着シート1を構成する基材10、第1粘着剤層11、及び/又は第2粘着剤層12は耐熱性に優れるので、熱圧着により、膨張したり、収縮したり、粘着力が変化しにくいので、精度よく、電子部品21の実装基板30の回路面31への転写することができる。
【0208】
次に、
図4(c)に示すように、転写用両面粘着シート1と実装基板30を離間させることにより、第1粘着剤層11から電子部品21が剥離し、実装基板30の回路面31へ転写される。第1粘着剤層11は低粘着性粘着剤層で構成されているため、電子部品21が容易に剥離し、電子部品21が損傷することなく、効率的に実装基板30に実装することができる。
【0209】
電子部品21が実装基板30に実装された後の
図4(c)の転写用両面粘着シート1は、キャリア基板22から剥離してもよい(図示略)。第2粘着剤層12は剥離性粘着剤層で構成されているため、糊残りなく剥離でき、リワーク性に優れるため、キャリア基板22を容易に再利用することができる。
【0210】
実装基板上への実装する電子部品としては、特に限定されないが、微細で薄型の半導体チップやLEDチップに好適に使用することができる。
【実施例0211】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0212】
<実施例1>
シリコーン系粘着剤(付加反応型シリコーン系粘着剤、商品名「X-40-3306」、信越化学工業(株)製)100重量部、白金系触媒1(商品名「CAT-PL-50T」、信越化学工業(株)製)1.4重量部、シリコーン系剥離剤1(ジメチルポリシロキサンを主成分とした付加反応型のシリコーン系剥離剤、商品名「KS-776A」、信越化学工業(株)製)5重量部、及び、紫外線吸収剤(商品名「Tinuvin384-2」、最大吸収波長345nm、BASF社製)0.2重量部を配合し、全体の固形分が25重量%となるようにトルエンで稀釈し、ディスパーで混合してシリコーン系粘着剤組成物(1)を調製した。
【0213】
基材フィルム(一方の面がシリコーンプライマー処理されたポリエステルフィルム、厚み75μm、商品名「ダイアホイル MRF#75」、三菱樹脂(株)製)のシリコーンプライマー処理された面に、シリコーン系粘着剤組成物(1)を乾燥後の糊厚みが15μmとなるように塗布し、乾燥温度120℃、乾燥時間5分の条件でキュアーして乾燥した。このようにして基材フィルムのシリコーンプライマー処理層上にシリコーン系粘着剤層を有するフィルムを得た。
【0214】
なお、シリコーン系粘着フィルムの粘着面上には、セパレータ(1)(剥離処理されていないポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み25μm、商品名「ルミラーS10#25」、東洋紡(株)製)を貼り合わせ、シリコーン系粘着剤層を保護し、〔セパレータ(1)層〕/〔シリコーン系粘着剤(1)層〕/〔基材フィルム層〕〕の積層構造を有する積層体(1)を得た。
【0215】
次に、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)((株)日本触媒製)100重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)(東亞合成(株)製)4重量部、重合開始剤として2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(富士フィルム和光純薬工業(株)製)0.02重量部、酢酸エチル180重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、重量平均分子量56万のアクリル系共重合体の溶液(固形分35重量%)を調製した。
【0216】
調整したアクリル系共重合体の溶液に、その固形分100重量部に対して、架橋剤としてコロネートHX(東ソー(株)製)を固形分換算で4.0重量部、架橋触媒としてエンビライザーOL-1(東京ファインケミカル(株)製)を固形分換算で0.02重量部を加え、全体の固形分が25重量%となるようにトルエンで希釈し、ディスパーで攪拌したアクリル系粘着剤組成物をセパレータ(2)(剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み38μm、商品名「MRF#38」、三菱ケミカル(株)製)の剥離処理層側にファウンテンロールで乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥温度130℃、乾燥時間30秒の条件でキュアーして乾燥した。このようにして、セパレータ(2)上にアクリル系粘着剤層を形成した。
【0217】
次いで、アクリル系粘着剤層の表面に、上記で得られた積層体(1)の基材フィルム側(シリコーンプライマー非処理面)を貼り合わせ、〔セパレータ(1)層〕/〔シリコーン系粘着剤(1)層(第1粘着剤層)〕/〔基材フィルム層〕/〔アクリル系粘着剤層(第2粘着剤層)〕/〔セパレータ(2)層〕の積層構造を有する転写用両面粘着シートを得た。
【0218】
<実施例2~6、比較例1、2>
実施例1と同様にして、表1に記載の配合量となるように紫外線吸収剤(商品名「Tinuvin384-2、最大吸収波長345nm、BASF社製)を配合したシリコーン系粘着剤組成物を用い、表1に記載の厚みとなるように第1粘着剤層を形成して、それぞれ、転写用両面粘着シートを得た。
【0219】
<評価>
実施例及び比較例で得られた転写用両面粘着シートについて、以下の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0220】
(紫外線透過率)
転写用両面粘着シートの第1粘着剤層からミクロトームを用いて薄片を切り出し、顕微紫外可視近赤外分光光度計(製品名「MSV-5200 DGK」、日本分光製)を用いて、200~800nmの波長域にて透過率を測定し、波長248nmでの値を、紫外線透過率TUV1とした。
【0221】
(浮き高さ)
セパレータ(1)層を剥離した転写用両面粘着シートに対して、シリコーン系粘着剤層側から、紫外線レーザでー(波長248nm、レーザー光スポット断面積15300μm2、出力100mJ/cm2)を、パルス時間10nsec、周波数100Hz、1mm2中に9ドット(平均照射面積15300μm2)となるように照射した。それら9ドットについて、レーザー顕微鏡(製品名「VK-X100」、(株)キーエンス製)を用いて得られた表面観察画像を解析し、照射した後の浮き高さRz2を、各ドットごとの最大高さの平均値として得た。また、紫外線レーザーを照射する前の転写用両面粘着シートについて、9ドット相当箇所の表面観察画像から、同様にして、照射する前の浮き高さRz1を得た。
【0222】
(浮き面積)
セパレータ(1)層を剥離した転写用両面粘着シートに対して、シリコーン系粘着剤層側から、紫外線レーザー(波長248nm、レーザービームサイズ130×105μm(レーザー光スポット断面積13650μm2、出力100mJ/cm2)を、パルス時間10nsec、周波数100Hzで、1mm2中に9ドット(平均照射面積15300μm2)となるように照射した。それら9ドットの各ドットについて、デジタルマイクロスコープ(製品名「VHX-700F」、(株)キーエンス製)を用いて観察倍率200倍で表面観察画像を撮像し、これを画像処理ソフトImageJにて解析し、浮きの生じた面積(浮き面積)を9ドットの平均値として求めた。浮き面積の面積割合(%)は、レーザー照射面積15300μm2に対する浮き面積の面積割合として求めた。
【0223】
(転写精度)
セパレータ(1)を剥離した転写用両面粘着シートを、第一粘着剤層が表面になるようにダイシングリングに貼付し、両面粘着シートの表面10μmの深さまでダイシングすることによって、一辺1mm四方の複数のマーキングを付した。
【0224】
エキスパンド時に1mm×1mmのサイズに断割されるようにレーザー光による前処理を行った半導体ウエハを厚み30μmにまで研磨してから、ダイシング・ダイボンドフィルムと貼り合わせて、半導体ウエハ付きのダイシング・ダイボンドフィルムを得た。半導体ウエハ付きのダイシング・ダイボンドフィルムを、ダイセパレーター(製品名「DDS2300」、ディスコ社製)のダイシングリングに保持させ、クールエキスパンダーユニットで、エキスパンド温度-15℃、エキスパンド速度200mm/秒、エキスパンド量11mmの条件でクールエキスパンドし、半導体ウエハ及びダイボンド層を割断してから、室温下において、エキスパンド速度1mm/秒、エキスパンド量7mmの条件で、常温エキスパンドを行い、更に、エキスパンド状態を維持したまま、ヒート温度200℃、風量40L/分、ヒート距離20mm、ローテーションスピード3°/秒の条件において、半導体チップの外周部分におけるダイシングテープを熱収縮させて、半導体ウエハ及びダイボンド層が断割した状態を保持した、ダイボンド層付半導体チップを有するダイシング・ダイボンドフィルムを得た。
【0225】
ダイボンド層付半導体チップを有する面を下向きにしたダイシング・ダイボンドフィルムと、マーキングした第1粘着剤層を上向きにした転写用両面粘着シートとを、ダイボンド層付半導体チップとマーキングの位置を合わせつつ、クリアランス1mmで対向するように配置し、ダイシング・ダイボンドフィルムの上側(裏側)から針で突き押して、第1粘着剤層の粘着面に、ダイボンド層付半導体チップをマーキング位置に正確に10個落下させて、半導体チップを受け取った転写用両面粘着シートを得た。
【0226】
半導体チップを受け取った転写用両面粘着シートに対して、ダイボンド層付き半導体チップを受け取った部分以外の部分に紫外線レーザー(波長248nm、レーザー光スポット断面積15300μm2、出力100mJ/cm2、周波数100Hz、パルス幅10ns)をアライメントマークとなるように照射し、該アライメントマークを基準として、対応するマーキングを付した実装基板を設置し位置合わせし、位置合わせ済みの実装基板に対してダイボンド層付き半導体チップを転写し、ダイボンド層付半導体チップを顕微鏡を用いて確認し、以下の基準で評価した。
【0227】
〇:実装基板のマーキング位置に対して、位置ズレが生じているダイボンド層付半導体チップが確認されなかった
×:実装基板のマーキング位置に対して、位置ズレが生じているダイボンド層付半導体チップが確認された
【0228】
本発明の構成を備える実施例1~6の転写用両面粘着シートでは、いずれも、紫外線レーザー照射による半導体チップの位置ズレが抑制された。これに対して、比(Rz1/Rz2)が本発明の構成から外れる比較例1、2の転写用両面粘着シートでは、半導体チップの位置ズレが生じた。
【0229】