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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183688
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】加熱調理システム
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20221206BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F24C3/12 E
F24C3/12 X
F23N5/00 F
F23N5/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091129
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】柴山 総一郎
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003EA03
3K003FA02
3K003FB04
3K003FC04
3K003GA03
(57)【要約】
【課題】調理容器が偏心状態で載置されたり、調理容器が矩形や楕円形等の一方向に長手のものであったりした場合に生ずる、調理容器の底面の輪郭のうちコンロバーナの中心に最も近い部分での炎溢れを、火力を低下させずに防止できるようにする。
【解決手段】コンロバーナ2のバーナヘッド22を、周方向複数の区分けヘッド領域22aに区分けする。各区分けヘッド領域22aの外周面に、炎口24の上方に位置する空気吹出口25を設ける。更に、空気吹出口25に各区分けヘッド領域22a毎に個別に空気を供給可能な給気手段26を設ける。調理容器に関する情報を含むバーナ近傍情報に基づいて、所定の区分けヘッド領域22aの空気吹出口25への空気供給量を他の区分けヘッド領域22aの空気吹出口25への空気供給量と異ならせる不均一空気供給制御を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に多数の炎口が形成された環状のバーナヘッドを有するコンロバーナを備えるガスコンロと、コンロバーナの上方に配置される調理容器に関する調理容器情報と、調理容器の底面の外方に溢れ出た火炎に関する炎溢れ情報と、コンロバーナの近傍への侵入物の接近に関する侵入物情報との少なくとも1つを含むバーナ近傍情報を取得するバーナ近傍情報取得手段とを備える加熱調理システムであって、
ガスコンロは、コンロバーナへの燃料ガスの供給量を調節するガス量調節手段と、制御手段とを備え、制御手段は、バーナ近傍情報取得手段で取得したバーナ近傍情報に基づいてガス量調節手段によりコンロバーナへの燃料ガス供給量を調節する制御を行うように構成されるものにおいて、
バーナヘッドは、周方向複数の区分けヘッド領域に区分けされて、各区分けヘッド領域の外周面に、炎口の上方に位置する空気吹出口が設けられ、
ガスコンロは、空気吹出口に各区分けヘッド領域毎に個別に空気を供給可能な給気手段を備え、
制御手段は、バーナ近傍情報取得手段で取得したバーナ近傍情報に基づいて、給気手段による所定の区分けヘッド領域の空気吹出口への空気供給量を他の区分けヘッド領域の空気吹出口への空気供給量と異ならせる不均一空気供給制御を実行するように構成されることを特徴とする加熱調理システム。
【請求項2】
請求項1記載の加熱調理システムであって、前記バーナ近傍情報に前記調理容器情報が含まれるものにおいて、前記制御手段は、前記調理容器の底面の輪郭のうち前記コンロバーナの中心に最も近い部分であるバーナ最寄り輪郭部分とコンロバーナの中心との間の距離を最小距離として調理容器情報から算出し、前記ガス量調節手段による前記コンロバーナへの燃料ガス供給量の最大値を、バーナ最寄り輪郭部分と同一方位の部分を含む前記区分けヘッド領域の前記空気吹出口への空気供給量を前記給気手段の制御上の最大量にした状態で、バーナ最寄り輪郭部分の外方に火炎が溢れ出ないように、最小距離に応じて設定される燃料ガス供給量の上限値に制限する制御を行うことを特徴とする加熱調理システム。
【請求項3】
請求項1記載の加熱調理システムであって、前記バーナ近傍情報に前記調理容器情報が含まれるものにおいて、前記制御手段は、前記各区分けヘッド領域毎に、当該区分けヘッド領域と同一方位の範囲に存する前記調理容器の底面の輪郭部分のうち前記コンロバーナの中心に最も近い部分である領域別バーナ最寄り輪郭部分とコンロバーナの中心との間の距離を領域別最小距離として調理容器情報から算出し、各区分けヘッド領域の前記空気吹出口への前記給気手段による空気供給量を、当該区分けヘッド領域に対応する領域別バーナ最寄り輪郭部分の外方に火炎が溢れ出ないように、前記ガス量調節手段によるコンロバーナへの燃料ガス供給量と当該区分けヘッド領域に対応する領域別最小距離とに応じて設定される空気供給量にする制御を行うことを特徴とする加熱調理システム。
【請求項4】
請求項1記載の加熱調理システムであって、前記バーナ近傍情報に前記炎溢れ情報が含まれるものにおいて、前記制御手段は、炎溢れ情報に基づいて、前記調理容器の底面の外方に火炎が溢れ出ないように、前記各区分けヘッド領域毎に、当該区分けヘッド領域の前記空気吹出口への前記給気手段による空気供給量を調節する制御を行うことを特徴とする加熱調理システム。
【請求項5】
請求項1記載の加熱調理システムであって、前記バーナ近傍情報に前記侵入物情報が含まれるものにおいて、前記制御手段は、侵入物情報に基づき、前記複数の区分けヘッド領域のうち前記侵入物が接近した区分けヘッド領域の前記空気吹出口への前記給気手段による空気供給量を増加する制御を行うことを特徴とする加熱調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面に多数の炎口が形成された環状のバーナヘッドを有するコンロバーナを備えるガスコンロと、コンロバーナの上方に配置される調理容器に関する調理容器情報と、調理容器の底面の外方に溢れ出た火炎に関する炎溢れ情報と、コンロバーナの近傍への侵入物の接近に関する侵入物情報との少なくとも1つを含むバーナ近傍情報を取得するバーナ近傍情報取得手段とを備える加熱調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理システムとして、ガスコンロは、コンロバーナへの燃料ガスの供給量を調節するガス量調節手段と、制御手段とを備え、制御手段は、バーナ近傍情報取得手段で取得したバーナ近傍情報に基づいてガス量調節手段によりコンロバーナへの燃料ガス供給量を調節する制御を行うように構成されるものが知られている。例えば、特許文献1により、バーナ近傍情報取得手段で、調理容器の底面の外方に溢れ出た火炎に関する炎溢れ情報を取得したときに、ガス量調節手段を制御して、コンロバーナの火力を小さくし、炎溢れを生じないようにするものが知られている。
【0003】
ここで、調理容器がコンロバーナに対し偏心した状態で載置されたり、調理容器が矩形や楕円形等の一方向に長手のものであったりして、調理容器の底面の輪郭のうちコンロバーナの中心に最も近い部分であるバーナ最寄り輪郭部分でのみ炎溢れを生ずることがある。上記従来例のものでは、バーナ最寄り輪郭部分でのみ炎溢れを生じても、コンロバーナの火力がバーナヘッドの周方向全域に亘って小さくなる。その結果、火力不足で調理性能に悪影響が及んでしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-230148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、火力不足による調理性能への悪影響を生ずることなく、バーナ近傍情報に応じた適切な制御を行うことができるようにした加熱調理システムを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、外周面に多数の炎口が形成された環状のバーナヘッドを有するコンロバーナを備えるガスコンロと、コンロバーナの上方に配置される調理容器に関する調理容器情報と、調理容器の底面の外方に溢れ出た火炎に関する炎溢れ情報と、コンロバーナの近傍への侵入物の接近に関する侵入物情報との少なくとも1つを含むバーナ近傍情報を取得するバーナ近傍情報取得手段とを備える加熱調理システムであって、ガスコンロは、コンロバーナへの燃料ガスの供給量を調節するガス量調節手段と、制御手段とを備え、制御手段は、バーナ近傍情報取得手段で取得したバーナ近傍情報に基づいてガス量調節手段によりコンロバーナへの燃料ガス供給量を調節する制御を行うように構成されるものにおいて、バーナヘッドは、周方向複数の区分けヘッド領域に区分けされて、各区分けヘッド領域の外周面に、炎口の上方に位置する空気吹出口が設けられ、ガスコンロは、空気吹出口に各区分けヘッド領域毎に個別に空気を供給可能な給気手段を備え、制御手段は、バーナ近傍情報取得手段で取得したバーナ近傍情報に基づいて、給気手段による所定の区分けヘッド領域の空気吹出口への空気供給量を他の区分けヘッド領域の空気吹出口への空気供給量と異ならせる不均一空気供給制御を実行するように構成されることを特徴とする。
【0007】
ここで、空気吹出口から吹き出す空気は、バーナヘッドの炎口から噴出する混合気の燃焼部に二次空気として供給される。そのため、空気吹出口への空気供給量を多くすると、炎口からのびる火炎の長さが短くなる。そして、本発明によれば、上記不均一空気供給制御で所定の区分けヘッド領域の空気吹出口への空気供給量を多くすることにより、コンロバーナの火力を小さくしなくても、所定の区分けヘッド領域の炎口からのびる火炎の長さを短くすることができる。従って、火力不足による調理性能への悪影響を生ずることなく、バーナ近傍情報に応じた適切な制御を行うことが可能になる。
【0008】
例えば、バーナ近傍情報に調理容器情報が含まれる場合、制御手段は、調理容器の底面の輪郭のうちコンロバーナの中心に最も近い部分であるバーナ最寄り輪郭部分とコンロバーナの中心との間の距離を最小距離として調理容器情報から算出し、ガス量調節手段によるコンロバーナへの燃料ガス供給量の最大値を、バーナ最寄り輪郭部分と同一方位の部分を含む区分けヘッド領域の空気吹出口への空気供給量を給気手段の制御上の最大量にした状態で、バーナ最寄り輪郭部分の外方に火炎が溢れ出ないように、最小距離に応じて設定される燃料ガス供給量の上限値に制限する制御を行う。これによれば、調理容器の載置位置や調理容器の形状に拘わらずに、炎溢れを防止できる範囲でコンロバーナへの燃料ガス供給量をできるだけ多くすることができ、調理性能が向上する。
【0009】
また、バーナ近傍情報に調理容器情報が含まれる場合、制御手段は、各区分けヘッド領域毎に、当該区分けヘッド領域と同一方位の範囲に存する調理容器の底面の輪郭部分のうちコンロバーナの中心に最も近い部分である領域別バーナ最寄り輪郭部分とコンロバーナの中心との間の距離を領域別最小距離として調理容器情報から算出し、各区分けヘッド領域の空気吹出口への給気手段による空気供給量を、当該区分けヘッド領域に対応する領域別バーナ最寄り輪郭部分の外方に火炎が溢れ出ないように、ガス量調節手段によるコンロバーナへの燃料ガス供給量と当該区分けヘッド領域に対応する領域別最小距離とに応じて設定される空気供給量にする制御を行うことが望ましい。これによれば、調理容器の底面の何れの輪郭部分での炎溢れも生ずることなく、コンロバーナへの燃料ガス供給量を変化させることができ、調理性能が向上する。
【0010】
更に、本発明において、バーナ近傍情報に炎溢れ情報が含まれる場合、制御手段は、炎溢れ情報に基づいて、調理容器の底面の外方に火炎が溢れ出ないように、各区分けヘッド領域毎に、当該区分けヘッド領域の空気吹出口への給気手段による空気供給量を調節する制御を行うことが望ましい。これによれば、調理容器の載置位置や調理容器の形状に拘わらずに、炎溢れを防止しつつ、コンロバーナへの燃料ガス供給量をできるだけ多くして、調理性能を向上させることができる。
【0011】
更に、本発明において、バーナ近傍情報に侵入物情報が含まれる場合、制御手段は、侵入物情報に基づき、複数の区分けヘッド領域のうち侵入物が接近した区分けヘッド領域の空気吹出口への給気手段による空気供給量を増加する制御を行うことが望ましい。これによれば、コンロバーナへの燃料ガス供給量を減少させなくても、侵入物が接近した区分けヘッド領域の炎口からのびる火炎の長さが短くなり、調理性能を悪くすることなく、侵入物の加熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の加熱調理システムの設置状況を示す斜視図。
図2】実施形態の加熱調理システムが具備するコンロの要部の平面図。
図3図2のIII-III線で切断した断面図。
図4】実施形態の加熱調理システムが具備するコンロに設けられたコンロバーナの斜視図。
図5図4のV-V線で切断したコンロバーナの切断平面図。
図6図5のVI-VI線で切断したコンロバーナの切断正面図。
図7】(a)実施形態の加熱調理システムが具備するコンロに設けられたコンロバーナの下ボディ部材を取り外した状態の斜め下方から見た斜視図、(b)下ボディ部材の斜め上方から見た斜視図。
図8】実施形態の加熱調理システムに設けられたレンジフードの斜め下方から見た斜視図。
図9】実施形態の加熱調理システムが具備するコンロの制御手段が行う調理容器情報に基づく不均一空気供給制御の内容を示すフロー図。
図10】実施形態の加熱調理システムが具備するコンロの制御手段が行う炎溢れ情報に基づく不均一空気供給制御の内容を示すフロー図。
図11】実施形態の加熱調理システムが具備するコンロの制御手段が行う侵入物情報に基づく不均一空気供給制御の内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態の加熱調理システムが具備するガスコンロは、図示省略したコンロ本体をシステムキッチンのカウンタトップCTに形成したコンロ開口に落とし込むようにして配置するビルトイン式コンロであり、コンロ本体の上面を覆う天板1に開設したバーナ用開口11に臨むコンロバーナ2を左右2個備えている。天板1上には、バーナ用開口11を囲うようにして五徳12が載置されると共に、バーナ用開口11とこれに挿通されるバーナボディ21の部分との間の隙間を上方から覆うカバーリング13が載置されている。また、天板1の前部には、コンロバーナ2,2用の左右一対の操作パネル部14,14と、中央部の電源スイッチ15とが設けられている。
【0014】
図4乃至図7も参照して、各コンロバーナ2は、バーナボディ21と、バーナボディ21上の環状のバーナヘッド22と、混合管23とを有している。バーナヘッド22の外周面には、多数の炎口24が形成されている。バーナヘッド22は、周方向に♯1~♯4の4個の区分けヘッド領域22aに区分けされている。各区分けヘッド領域22aの外周面には、炎口24の上方に位置する空気吹出口25が設けられている。尚、五徳12の各五徳爪12aと同一方位に位置するバーナヘッド22の部分には、火炎が五徳爪12aに触れて不完全燃焼することを防止するために、一般的な炎口24を設けていない。そして、各五徳爪12aと同一方位に位置するバーナヘッド22の部分を周方向に隣接する区分けヘッド領域22aの境界部としている。
【0015】
より具体的に説明すれば、バーナボディ21は、バーナ用開口11に挿通される外側筒体211aと内側筒体211bとを有する上ボディ部材211と、下ボディ部材212とで構成され、下ボディ部材212の上面に上ボディ部材211が装着されている。下ボディ部材212には、空気吹出口25に♯1~♯4の各区分けヘッド領域22a毎に個別に空気を供給する給気手段たる♯1~♯4の4個のファン26が接続されている。そして、下ボディ部材212の内部に、各ファン26からの空気が流れる通風路212aを4個のファン26に対応して4個形成している。
【0016】
バーナヘッド22は、内周に、上ボディ部材211の内側筒体211bに嵌合する筒部221aを垂設した環状の下ヘッド部材221と、下ヘッド部材221との間に空気吹出口25を画成する環状の上ヘッド部材222とで構成されている。上ヘッド部材222の内周には、下ボディ部材212の上面の後述する♯1~♯4の吹出口212bで囲われる空間に達する筒部222aが垂設されている。また、下ヘッド部材221の下面外周部には、上ボディ部材211の外側筒体211aの上端に着座する環状壁221bが垂設されている。この環状壁221bには、その下端面から上方に窪む炎口24となる溝が周方向の間隔を存して多数形成されている。炎口24は、下ヘッド部材221の筒部221a及び上ボディ部材211の内側筒体211bと上ボディ部材211の外側筒体211aとの間に画成される空間に連通しており、この空間に連通するように混合管23が上ボディ部材211と一体に設けられている。
【0017】
図7(a)も参照して、上ヘッド部材222の下面には、空気吹出口25及びこれに連なる、上ヘッド部材222の筒部222aと下ヘッド部材221の筒部221aとの間の空間を♯1~♯4の4個の区分けヘッド領域22aに対応して周方向4部分に区分けする放射状の4個の仕切壁222bが垂設されている。また、下ボディ部材212の上面には、図7(b)に示す如く、♯1~♯4の4個のファン26に連なる4個の通風路212aの下流端に位置する、円弧形筒状の♯1~♯4の4個の吹出口212bが同一円周上に突設されている。そして、仕切壁222bで区分けされた各空間部分の下端部に、♯1~♯4の各吹出口212bを嵌合させ、♯1~♯4の各区分けヘッド領域22aの空気吹出口25の上流側に♯1~♯4の各ファン26が接続されるようにしている。
【0018】
また、各コンロバーナ2には、点火電極27と、火炎検知素子としての熱電対28と、コンロバーナ2の上方、即ち、五徳12に載置される調理容器の底面に当接してその温度を検出する鍋底温度センサ29とが付設されている。鍋底温度センサ29は、各コンロバーナ2のバーナボディ21及びバーナヘッド22で囲われた中央空間を通して上方に突出している。
【0019】
図5を参照して、各コンロバーナ2に対するガス供給路3には、安全弁31と、ガス量調節手段たる流量調節弁32とが介設されている。安全弁31と、流量調節弁32と、♯1~♯4のファン26と、点火電極27に高電圧を印加する図外のイグナイタは、制御手段たるマイクロコンピュータから成るコントローラ4により制御される。コントローラ4には、操作パネル部14に設けられた点消火操作部、火力調節操作部及び調理モード選択部からの信号と、鍋底温度センサ29からの信号と、熱電対28からの信号とが入力される。コントローラ4は、点消火操作部から点火指令信号が入力されると、安全弁31を開弁させると共にイグナイタをオンして、コンロバーナ2に点火する。その後、熱電対28からの信号に基づいて失火が検知されたときや、点消火操作部から消火指令信号が入力されたときは、安全弁31を閉弁させる。調理モード選択部で手動調理モードが選択されているときは、火力調節操作部からの信号に基づいて流量調節弁32を制御する。また、調理モード選択部で自動調理モードが選択されたときは、鍋底温度センサ29で検出した被加熱物の温度が調理モードに対応する所定の設定温度範囲に収まるように流量調節弁32の制御を行う。
【0020】
また、本実施形態の加熱調理システムは、図8に示す如く、カウンタトップCTの上方に位置するレンジフードRHの下面に配置した、赤外線カメラから成る左右一対のバーナ近傍情報取得手段5,5を備えている。各バーナ近傍情報取得手段5は、各コンロバーナ2の周辺を含む所定範囲を俯瞰して撮像し、コンロバーナ2の上方に配置(五徳12に載置)される調理容器に関する調理容器情報と、調理容器の底面の外方に溢れ出た火炎に関する炎溢れ情報と、コンロバーナ2の近傍への侵入物の接近に関する侵入物情報との少なくとも1つを含むバーナ近傍情報を取得し、このバーナ近傍情報をコントローラ4に送信する。コントローラ4は、バーナ近傍情報に基づいて、所定の区分けヘッド領域22aの空気吹出口25への空気供給量を他の区分けヘッド領域22aの空気吹出口25への空気供給量と異ならせる不均一空気供給制御を実行する。以下、この点について詳述する。
【0021】
図2に示す如く、コンロバーナ2に対し偏心した状態で調理容器Pが五徳12に載置された場合、調理容器Pの底面の輪郭のうちコンロバーナ2の中心Oに最も近い部分であるバーナ最寄り輪郭部分Paの外方に火炎が溢れ出ること、即ち、バーナ最寄り輪郭部分Paでの火炎溢れを生じやすくなる。尚、調理容器が矩形や楕円形等の一方向に長手のものである場合も、調理容器の底面の輪郭のうち調理容器の短手方向に位置するバーナ最寄り輪郭部分で火炎溢れを生じやすくなる。この場合、コンロバーナ2への燃料ガス供給量を減少させ、即ち、コンロバーナ2の火力を弱くして、バーナ最寄り輪郭部分Paでの火炎溢れを防止することも考えられる。然し、これでは、火力不足で調理性能に悪影響が及んでしまう。
【0022】
ところで、空気吹出口25から吹き出す空気は、バーナヘッド22の炎口24から噴出する混合気の燃焼部に二次空気として供給される。そのため、空気吹出口25への空気供給量を多くすると、炎口24からのびる火炎の長さが短くなる。そして、バーナ最寄り輪郭部分Paと同一方位の部分を含む所定の区分けヘッド領域22aの空気吹出口25への空気供給量が多くなるように不均一空気供給制御を行えば、コンロバーナ2の火力を小さくしなくても、所定の区分けヘッド領域22aの炎口24からのびる火炎の長さを短くして、バーナ最寄り輪郭部分Paで火炎溢れを防止することができる。従って、火力不足による調理性能への悪影響を生ずることなく、バーナ近傍情報に応じた適切な制御を行うことが可能になる。
【0023】
図9を参照して、調理容器情報に基づく不均一空気供給制御について具体的に説明する。先ず、STEP100で調理容器情報を取得してから、STEP101において、上述したバーナ最寄り輪郭部分Paとコンロバーナ2の中心Oとの間の距離を最小距離Rminとして調理容器情報から算出する。次に、STEP102において、バーナ最寄り輪郭部分Paと同一方位の部分を含む所定の区分けヘッド領域22a(図2に示す例では♯1の区分けヘッド領域22a)の空気吹出口25への空気供給量を対応するファン26の制御上の最大量にした状態で、バーナ最寄り輪郭部分Paでの炎溢れを生じないように、最小距離Rminに応じて設定される燃料ガス供給量の上限値QGlimを検索する。
【0024】
ここで、空気吹出口25への空気供給量を上記最大量にした状態における、コンロバーナ2の中心Oから火炎先端までの距離とコンロバーナ2への燃料ガス供給量との関係を予め調べておき、この関係をデータテーブルとしてコントローラ4に格納しておく。そして、STEP102では、データテーブルからコンロバーナ2の中心Oから火炎先端までの距離が上記最小距離Rminになるときのコンロバーナ2への燃料ガス供給量を検索し、この燃料ガス供給量を上限値QGlimとする。
【0025】
次に、STEP103において、燃料ガス供給量の要求量QGdem(手動調理モードでは、火力調節操作部による調節火力に対応する燃料ガス供給量、自動調理モードでは、鍋底温度センサ29の検出温度に基づいて決定される燃料ガス供給量)が上限値QGlimを上回っているか否かを判別する。QGdem>QGlimであれば、STEP104において、流量調節弁32で調節する燃料ガス供給量QGを上限値QGlimにし、QGdem≦QGlimであれば、STEP105において流量調節弁32で調節する燃料ガス供給量QGを要求量QGdemにする。
【0026】
次に、各区分けヘッド領域22a毎に空気吹出口25へのファン26による空気供給量を個別に制御するSTEP106~STEP108の領域別空気制御を行う。領域別空気制御では、先ず、STEP106において、各区分けヘッド領域22a毎に、当該区分けヘッド領域22aと同一方位の範囲に存する調理容器Pの底面の輪郭部分のうちコンロバーナ2の中心Oに最も近い部分である領域別バーナ最寄り輪郭部分とコンロバーナ2の中心Oとの間の距離を領域別最小距離R´minとして調理容器情報から算出する。尚、図2に示す例において、♯1の区分けヘッド領域22aにおける領域別最小距離R´minは上記最小距離Rminと同じである。
【0027】
ここで、コンロバーナ2への燃料ガス供給量と空気吹出口25への空気供給量とをパラメータとして、燃料ガス供給量と空気供給量との変化に対するコンロバーナ2の中心Oから火炎先端までの距離の変化を予め調べておき、この関係をデータマップとしてコントローラ4に格納しておく。そして、STEP107において、コンロバーナ2への燃料ガス供給量を上記QGとする条件下で、コンロバーナ2の中心Oから火炎先端までの距離を各区分けヘッド領域22aの領域別最小距離R´min以下にするのに必要な空気吹出口25への空気供給量の最小値(零を含む)を領域別空気供給量YQAとしてデータマップから検索する。尚、この領域別空気供給量YQAは、各区分けヘッド領域22aの領域別バーナ最寄り輪郭部分での炎溢れを生じないように、流量調節弁32によるコンロバーナ2への燃料ガス供給量QGと当該区分けヘッド領域22aに対応する領域別最小距R´min離とに応じて設定される空気供給量になる。次に、STEP108において、各区分けヘッド領域22aの空気吹出口25への各ファン26による空気供給量QAを当該区分けヘッド領域22aの領域別空気供給量YQAにする制御を行う。
【0028】
調理容器情報に基づく上記不均一空気供給制御では、流量調節弁32によるコンロバーナ2への燃料ガス供給量の最大値を上記上限値QGlimとする制御が行われることになる。これによれば、調理容器Pの載置位置や調理容器Pの形状に拘わらずに、燃料ガスの要求量QGdemが上限値QGlim以下である限り、炎溢れを防止しつつ、コンロバーナ2への燃料ガス供給量を要求量QGdemに維持することができ、調理性能が向上する。また、上記領域別空気制御を行うことにより、調理容器Pの底面の何れの輪郭部分での炎溢れも生ずることなく、コンロバーナ2への燃料ガス供給量QGを変化させることができ、調理性能が向上する。
【0029】
また、バーナ近傍情報に炎溢れ情報が含まれる場合、コントローラ4は、炎溢れ情報に基づいて、調理容器Pの底面の外方に火炎が溢れ出ないように、各区分けヘッド領域22a毎に、当該区分けヘッド領域22aの空気吹出口25へのファン26による空気供給量QAを調節する不均一空気供給制御を行う。これによれば、調理容器Pの載置位置や調理容器Pの形状に拘わらずに、炎溢れを防止しつつ、コンロバーナ2への燃料ガス供給量QGをできるだけ多くして、調理性能を向上させることができる。以下、この制御について、図10を参照して説明する。
【0030】
炎溢れ情報に基づく不均一空気供給制御では、先ず、STEP200で炎溢れ情報を取得してから、STEP201において、炎溢れ情報に基づいて調理容器Pの底面の何れかの箇所での炎溢れを生じているか否かを判別する。炎溢れを生じている場合は、STEP202において、炎溢れを生じている箇所と同一方位に位置する部分を含む区分けヘッド領域22aを炎溢れ区分けヘッド領域として特定する。そして、STEP203において、炎溢れ区分けヘッド領域の空気吹出口25への対応するファン26による空気供給量QAを最大量に増加する。
【0031】
次に、STEP204において、未だ炎溢れを生じているか否かを判別し、炎溢れを生じていなければ、炎溢れ情報に基づく不均一空気供給制御を終了する。一方、炎溢れを生じていれば、STEP205において、コンロバーナ2への流量調節弁32による燃料ガス供給量QGを1段階減少させてから、STEP206で未だ炎溢れを生じているか否かを判別する。炎溢れを生じていれば、STEP205に戻って燃料ガス供給量QGを1段階減少することを繰り返す。そして、炎溢れを生じなくなったときに、炎溢れ情報に基づく不均一空気供給制御を終了する。
【0032】
また、バーナ近傍情報に侵入物情報が含まれる場合、コントローラ4は、侵入物情報に基づき、複数の区分けヘッド領域22aのうち侵入物が接近した区分けヘッド領域22aの空気吹出口25への対応するファン26による空気供給量を増加する不均一空気供給制御を行う。これによれば、コンロバーナ2への燃料ガス供給量QGを減少させなくても、侵入物が接近した区分けヘッド領域22aの炎口24からのびる火炎の長さが短くなり、調理性能を悪くすることなく、侵入物の加熱を抑制することができる。以下、この制御について、図11を参照して説明する。
【0033】
侵入物情報に基づく不均一空気供給制御では、先ず、STEP300で侵入物情報を取得してから、STEP301において、侵入物情報に基づいてコンロバーナ2から所定範囲内に侵入物が存在するか否かを判別する。コンロバーナ2から所定範囲内に侵入物が存在していれば、STEP302において、侵入物が接近した区分けヘッド領域22aを侵入物接近区分けヘッド領域として特定する。そして、STEP303において、侵入物接近区分けヘッド領域の空気吹出口25への対応するファン26による空気供給量QAを最大量に増加する。
【0034】
ところで、コンロバーナ2に点火する際には、コンロバーナ2への燃料ガスの供給を開始する前に、空気吹出口25へのファン26による空気供給を開始することが望ましい。これによれば、コンロバーナ2の点火時の二次空気不足による炎溢れの発生を抑制することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、空気吹出口25に♯1~♯4の各区分けヘッド領域22a毎に個別に空気を供給可能な給気手段を♯1~♯4の4個のファン26で構成しているが、1個のファンと、各区分けヘッド領域の空気吹出口に連なるファンの下流側の各分岐送風路に介設したバタフライ弁等の弁とで給気手段を構成することも可能である。また、上記実施形態において、バーナヘッド22の区分けヘッド領域22aの数は4個であるが、4個以外であってもよい。更に、上記実施形態では、バーナ近傍情報取得手段5をレンジフードRHの下面に設置しているが、それ以外の例えばコンロ1の後方の壁面にバーナ近傍情報取得手段を設置することも可能である。また、バーナ近傍情報取得手段として上記実施形態の赤外線カメラと侵入物との距離を測定する測距センサとを併用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
2…コンロバーナ、22…バーナヘッド、22a…区分けヘッド領域、24…炎口、25…空気吹出口、26…ファン(給気手段)、32…流量調節弁(ガス量調節手段)、4…コントローラ、5…バーナ近傍情報取得手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
ここで、コンロバーナ2への燃料ガス供給量と空気吹出口25への空気供給量とをパラメータとして、燃料ガス供給量と空気供給量との変化に対するコンロバーナ2の中心Oから火炎先端までの距離の変化を予め調べておき、この関係をデータマップとしてコントローラ4に格納しておく。そして、STEP107において、コンロバーナ2への燃料ガス供給量を上記QGとする条件下で、コンロバーナ2の中心Oから火炎先端までの距離を各区分けヘッド領域22aの領域別最小距離R´min以下にするのに必要な空気吹出口25への空気供給量の最小値(零を含む)を領域別空気供給量YQAとしてデータマップから検索する。尚、この領域別空気供給量YQAは、各区分けヘッド領域22aの領域別バーナ最寄り輪郭部分での炎溢れを生じないように、流量調節弁32によるコンロバーナ2への燃料ガス供給量QGと当該区分けヘッド領域22aに対応する領域別最小距R´minとに応じて設定される空気供給量になる。次に、STEP108において、各区分けヘッド領域22aの空気吹出口25への各ファン26による空気供給量QAを当該区分けヘッド領域22aの領域別空気供給量YQAにする制御を行う。