(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183701
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】混和除濁装置及び混和除濁装置におけるフロック形成方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/08 20060101AFI20221206BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20221206BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20221206BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B01D21/08 B
B01D21/01 C
B01D21/24 D
B01D21/30 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091143
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 康彦
(57)【要約】
【課題】省電力化及び設置スペースの抑制を可能とする混和除濁装置及び混和除濁装置におけるフロック形成方法を提供する。
【解決手段】底部を有する略円筒形状の槽と、軸方向が槽と略一致するように槽の内部に設けられ、上面及び下面が開放する略円筒形状の筒と、被処理水が流入する流入配管と、処理水が流出する流出配管と、槽の側壁内側と筒の側壁外側とにより形成された流路を、槽及び筒の軸方向において上側流路と下側流路とに仕切る仕切部と、を備え、流入配管は、上側流路に連通し、流出配管は、下側流路に連通する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を有する略円筒形状の槽と、
軸方向が前記槽と略一致するように前記槽の内部に設けられ、上面及び下面が開放する略円筒形状の筒と、
被処理水が流入する流入配管と、
処理水が流出する流出配管と、
前記槽の側壁内側と前記筒の側壁外側とにより形成された流路を、前記槽及び前記筒の軸方向において上側流路と下側流路とに仕切る仕切部と、を備え、
前記流入配管は、前記上側流路に連通し、
前記流出配管は、前記下側流路に連通する、混和除濁装置。
【請求項2】
前記流入配管の長手方向は、前記槽の水平断面における接線方向に沿う、請求項1に記載の混和除濁装置。
【請求項3】
前記筒の下側縁部は、前記槽の水平断面に対して傾斜した形状を有する、請求項1に記載の混和除濁装置。
【請求項4】
さらに、前記流入配管側に設けられて前記被処理水を前記混和除濁装置に吐出するポンプと前記流出配管に設けられて前記処理水を前記混和除濁装置から吸引するポンプとのうちの少なくとも1つのポンプと、
前記ポンプの駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記上側流路における前記被処理水の流動による撹拌強度が、前記筒の側壁内側における前記被処理水の流動による撹拌強度よりも大きくなるように、前記ポンプを制御する、請求項1に記載の混和除濁装置。
【請求項5】
底部を有する略円筒形状の槽と、軸方向が前記槽と略一致するように前記槽の内部に設けられ、上面及び下面が開放する略円筒形状の筒と、被処理水が流入する流入配管と、処理水が流出する流出配管と、前記槽の側壁内側と前記筒の側壁外側とにより形成された流路を、前記槽及び前記筒の軸方向において上側流路と下側流路とに仕切る仕切部と、を備え、前記流入配管は、前記上側流路に連通し、前記流出配管は、前記下側流路に連通する、混和除濁装置におけるフロック形成方法であって、
前記上側流路において前記流入配管から流入した前記被処理水を流動させ、前記筒の側壁内側において前記筒の側壁上端から流入した前記上側流路からの前記被処理水を流動させることによって、前記上側流路における前記被処理水の流動による撹拌強度が前記筒の側壁内側における前記被処理水の流動による撹拌強度よりも大きくなるようにフロックを形成し、
前記下側流路において前記筒の側壁下端から流入した前記筒の側壁内側からの前記処理水を前記流出配管から排出する、
混和除濁装置におけるフロック形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混和除濁装置及び混和除濁装置におけるフロック形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、浄水場では、河川水や井戸水等の原水(以下、被処理水とも呼ぶ)に含まれる浮遊物(SS:Suspended Solids)を除去する浄水設備が用いられる。具体的に、このような浄水設備では、例えば、被処理水に凝集剤を混合することにより、被処理水に含まれる浮遊物を凝集させて沈殿除去する。これにより、浄水場では、例えば、被処理水から安全な生活用水の生成を行うことが可能になる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような浄水設備は、例えば、被処理水の濾過膜処理を行う濾過装置の前段において、凝集剤と被処理水とを撹拌する槽(以下、撹拌池とも呼ぶ)と、浮遊物を凝集させることによってフロックを形成する槽(以下、フロック形成池とも呼ぶ)と、形成したフロックを沈殿させて被処理水から分離する槽(以下、沈殿池とも呼ぶ)とを有する。これにより、浄水設備では、濾過装置に送られる被処理水の濁度を低下させることが可能になる。そのため、浄水装置では、濾過装置における固形物負担を抑えることが可能になり、濾過膜の洗浄周期を短くすることが可能になる。
【0005】
しかしながら、上記のような浄水設備では、撹拌池やフロック形成池における撹拌動力(電力)が大きくなる場合がある。また、上記のような混和除濁装置では、沈殿池が必要になるため、設置スペースが大きくなる場合がある。そのため、上記のような浄水設備では、省電力化及び設置スペースの抑制が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の省電力化及び設置スペースの抑制を達成するため、本発明における混和除濁装置は、底部を有する略円筒形状の槽と、軸方向が前記槽と略一致するように前記槽の内部に設けられ、上面及び下面が開放する略円筒形状の筒と、被処理水が流入する流入配管と、処理水が流出する流出配管と、前記槽の側壁内側と前記筒の側壁外側とにより形成された流路を、前記槽及び前記筒の軸方向において上側流路と下側流路とに仕切る仕切部と、を備え、前記流入配管は、前記上側流路に連通し、前記流出配管は、前記下側流路に連通する。
【発明の効果】
【0007】
本発明における混和除濁装置によれば、省電力化及び設置スペースの抑制が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、混和除濁装置100を正面視した場合における垂直断面図である。
【
図2】
図2は、混和除濁装置100のA-A断面図である。
【
図3】
図3は、混和除濁装置100のB-B断面図である。
【
図4】
図4は、混和除濁装置100のC-C断面図である。
【
図5】
図5は、フロックの形成について説明する図である。
【
図6】
図6は、フロックの形成について説明する図である。
【
図7】
図7は、フロックの形成について説明する図である。
【
図8】
図8は、フロックの形成について説明する図である。
【
図9】
図9は、フロックの形成について説明する図である。
【
図10】
図10は、ポンプ及び制御装置の構成について説明する図である。
【
図11】
図11は、第2の実施の形態における混和除濁装置200を正面視した場合における垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
[第1の実施の形態における混和除濁装置100]
図1から
図10は、第1の実施の形態における混和除濁装置100の構成図である。具体的に、
図1は、混和除濁装置100を正面視した場合における垂直断面図である。また、
図2は、混和除濁装置100のA-A断面図であり、
図3は、混和除濁装置100のB-B断面図であり、
図4は、混和除濁装置100のC-C断面図である。
【0011】
混和除濁装置100は、
図1に示すように、例えば、底部12を有する略円筒形状の槽10と、軸方向が槽10と略一致するように槽10の内部に設けられ、上面21a及び下面21bが開放する略円筒形状の筒20とを有する。槽10の軸方向は、筒20の軸方向と一致するものであってもよいし、筒20の軸方向に対して所定の角度(例えば、5度未満の角度)だけ傾いているものであってもよい。
【0012】
また、混和除濁装置100は、
図1及び
図3に示すように、壁部11の内側と壁部21の外側との間において、上面視で環状形状の仕切部31を有する。
【0013】
さらに、混和除濁装置100は、
図1、
図2及び
図4に示すように、撹拌池(図示せず)から被処理水(凝集剤が添加された被処理水)が流入する流入配管41と、混和除濁装置100において固液分離が行われた後の処理水(以下、単に処理水とも呼ぶ)が流出する流出配管42とを有する。
【0014】
槽10は、例えば、水平方向の断面が円形形状である壁部11と、壁部11の下方向において壁部11と一体となって成形された底部12と、底部12の下端部と連通するフロック排出管13とを有する。なお、壁部11は、例えば、水平方向の断面が楕円形状であるものであってもよい。
【0015】
壁部11は、例えば、流入配管41と連通する流入口11aと、流出配管42と連通する流出口11bとを有する。
【0016】
底部12は、例えば、下方向に向かって先が細くなるテーパー形状を有している。そして、底部12には、例えば、壁部11の内側において形成されたフロックが堆積される。
【0017】
フロック排出管13は、例えば、底部12に堆積されたフロックを外部に排出する。具体的に、フロック排出管13は、バルブ32が開口されたことに応じて、底部12に堆積されたフロックを外部に排出する。
【0018】
ここで、壁部11の上面(図示せず)は、密閉されていることが好ましい。すなわち、槽10は、例えば、流入口11a及び流出口11b以外が密閉されていることが好ましい。これにより、槽10では、後述するように、流入配管41から流入した被処理水を流出配管42から流出させることが可能になる。
【0019】
筒20は、例えば、水平方向の断面が円形形状であって、上面21a及び下面22bが開放する壁部21を有する。なお、壁部21は、例えば、水平方向の断面が楕円形状であるものであってもよい。
【0020】
壁部21は、例えば、軸方向(垂直方向)の長さが壁部11よりも短い。そして、壁部21の上端部の垂直方向における高さは、例えば、壁部11の上端部の高さよりも低く、壁部21の下端部の垂直方向における高さは、壁部11の下端部の高さよりも高い。なお、壁部21の上端側の一部は、上方向に向かって先が細くなるテーパー形状であってもよく、壁部21の下端側の一部は、下方向に向かって先が細くなるテーパー形状であってもよい。
【0021】
仕切部31は、例えば、筒20を槽10に対して固定するともに、壁部11の内側と壁部21の外側とにより形成された流路を槽10及び筒20の軸方向において上側流路とR1と下側流路R4とに仕切る。
【0022】
すなわち、上側流路R1は、
図1及び
図2に示すように、槽10と筒20と仕切部31とで区画された空間の中のうち、上側の空間に対応する流路である。また、下側流路R4は、
図1及び
図4に示すように、槽10と筒20と仕切部31とで区画された空間の中のうち、上側の空間に対応する流路である。なお、以下、壁部21の上面から下面に向かう流路(筒20の内側の空間に対応する流路)を筒流路R2とも呼び、筒流路R2の下側の流路(筒20の下端部よりも下側の空間に対応する流路)を底側流路R3とも呼ぶ。
【0023】
流入配管41は、例えば、流入口11aを介して上側流路R1に連通する。また、流出配管42は、例えば、流出口11bを介して下側流路R4に連通する。すなわち、詳細については後述するが、流入配管41から槽10に流入した被処理水は、上側流路R1、筒流路R2、底側流路R3及び下側流路R4を順に通過する。そして、この通過過程により固液分離が行われる。そして、固液分離が行われた後の処理水は、下側流路R4から流出配管42に流出する。なお、
図1に示すポイントP1及びポイントP2については後述する。
【0024】
ここで、流入配管41は、
図2に示すように、例えば、長手方向が槽10(壁部11)の水平断面における接線方向に沿うように設置されるものであってよい。これにより、流入配管41は、流速を維持した状態で被処理水を槽10に流入させることが可能になる。
【0025】
[フロックの形成]
次に、混和除濁装置100におけるフロックの形成について説明を行う。
図5から
図8は、フロック1の形成について説明する図である。具体的に、
図5、
図7及び
図9は、混和除濁装置100を正面視した場合における垂直断面図(
図1に対応する図)である。また、
図6は、混和除濁装置100のA-A断面図(
図2に対応する図)であり、
図8は、混和除濁装置100のC-C断面図(
図4に対応する図)である。なお、以下、筒20における上面21a及び下面21bの図示を省略する。
【0026】
初めに、被処理水は、
図5の実線矢印に示すように、流入配管41から上側流路R1に対して流入する。具体的に、例えば、
図6に示すように、流入配管41の長手方向が壁部11の水平断面における接線方向に沿っている場合、被処理水は、流入配管41内における流速が維持されたままの状態で上側流路R1に流入する。
【0027】
次に、
図5及び
図6の実線矢印に示すように、上側流路R1における被処理水の流れは、上向きの旋回流になる。すなわち、上側流路R1の底部に仕切部31が設けられているため、流入配管41から上側流路R1に流入した被処理水は、旋回しながら上昇する。そして、上側流路R1では、
図5に示すように、被処理水の旋回流による撹拌によって、粒形の小さい微小なフロック1(以下、フロック1aとも呼ぶ)が形成される。
【0028】
ここで、
図5及び
図6に示す例では、上側流路R1の幅が筒流路R2よりも狭い。そのため、上側流路R1における被処理水の滞留時間(以下、T値とも呼ぶ)は、後述する筒流路R2におけるT値よりも短くなる。また、流入配管41から上側流路R1に流入する被処理水は、流入配管41内における流速が維持された状態で流入する。そのため、被処理水の流動による撹拌強度(以下、G値とも呼ぶ)は、後述する筒流路R2におけるG値よりも大きくなる。
【0029】
ここで、被処理水の水平方向(旋回、横向きの流れ)における力は、圧損を生じながら弱くなる。すなわち、被処理水が上方に向かうにつれて、旋回流の流速が落ちる。一方、被処理水の垂直方向の力はほぼ変化しない(押し出し流れなので流速はほぼ変化しない)。
【0030】
次に、上側流路R1における上向きの旋回流によって上側流路R1の上端まで上昇した被処理水(フロック1aを含む被処理水)は、
図7の実線矢印に示すように、筒流路R2に順次流れ込む。そして、筒流路R2では、
図7及び
図8の実線矢印に示すように、被処理水の流れが下向きの旋回流になる。さらに、筒流路R2では、
図7に示すように、被処理水の旋回流による撹拌によって、フロック1aよりも粒形の大きいフロック1(以下、フロック1bとも呼ぶ)が形成される。
【0031】
ここで、
図7及び
図8に示す例では、筒流路R2の幅が上側流路R1よりも広い。そのため、筒流路R2における被処理水のT値は、上側流路R1におけるT値よりも長くなる。また、上側流路R1から筒流路R2に流入する被処理水は、上側流路R1から筒流路R2に流れる過程で旋回流が小さくなる(撹拌強度が弱くなる)。そのため、被処理水の流動によるG値は、上側流路R1におけるG値よりも小さくなる。特に、筒流路R2における被処理水の垂直方向における流れの向き(下向流)は、上側流路R1における流れの向き(上向流)と逆方向であるため、筒流路R2では、被処理水の流動によるG値が小さくなる。
【0032】
さらに、被処理水が筒流路R2から底側流路R3まで下降した場合、旋回流がより小さくなるため、被処理水の流動によるG値がさらに小さくなる。そして、底側流路R3において、フロック1は、フロック1bよりも粒形の大きいフロック1(以下、フロック1cとも呼ぶ)に成長する。すなわち、底側流路R3において被処理水のフロックが重力沈降する過程で徐々に大きくなる。そして、形成されたフロック1cが底部12において堆積される。
【0033】
その後、底側流路R3まで下降した被処理水は、
図9に示すように、上向流によって底側流路R3から下側流路R4に流入する。そして、下側流路R4に流入した処理水は、
図9に示すように、流出口11bを介して流出配管42から流出する。
【0034】
ここで、底部12に堆積されるフロック1cは、フロック1aやフロック1bよりも粒形が十分に大きいフロックである。そのため、フロック1cは、底側流路R3から下側流路R4に対する上向流によって上昇せず、下側流路R4に流れ込まない。換言すれば、処理水の流出速度(上向流速)よりも、沈降流速の速いフロックが分離される。したがって、混和除濁装置100は、被処理水からフロック1cを分離することが可能になる。
【0035】
このように、本実施の形態における混和除濁装置100は、底部12を有する略円筒形状の槽10と、軸方向が槽10と略一致するように槽10の内部に設けられ、上面21a及び下面21bが開放する略円筒形状の筒20と、被処理水が流入する流入配管41と、処理水が流出する流出配管42と、壁部11の内側と壁部21の外側とにより形成された流路を、槽10及び筒20の軸方向において上側流路R1と下側流路R4とに仕切る仕切部31と、を有する。また、流入配管41は、上側流路R1に連通し、流入配管41の長手方向は、槽10の水平断面における接線方向に沿い、さらに、流出配管42は、下側流路R4に連通する。
【0036】
すなわち、本実施の形態における混和除濁装置100では、例えば、流入配管41の長手方向が槽10の水平断面における接線方向に沿うことによって、流入配管41内における流速を維持したままの状態で被処理水を上側流路R1に流入させる。そのため、混和除濁装置100では、撹拌動力を用いることなく、被処理水の撹拌を行うことが可能になる。したがって、混和除濁装置100では、省電力化を図ることが可能になる。
【0037】
ここで、良質なフロック1を形成するためには、一般的に、被処理水におけるG値とT値との積であるGT値を所定の閾値以上にする必要がある。さらに、水流の剪断作用によってフロック1が破壊されることを防止するため、いわゆるテーパード・フロキュレーション方式を採用することが好ましい。このテーパード・フロキュレーション方式は、フロック1の粒形が小さい段階においては強い撹拌強度で凝集剤を十分に撹拌し(G値が大)、フロック1の粒形が大きくなった後の段階においては撹拌強度を弱める(G値が小)方式である。
【0038】
この点、本実施の形態における混和除濁装置100では、上側流路R1におけるG値を大きくすることが可能であるとともに、筒流路R2におけるG値を小さくすることも可能である。そのため、混和除濁装置100では、フロック1の粒形が小さい段階におけるG値を大きくするとともに、フロック1の粒形が大きくなった後の段階におけるG値を小さくすることが可能になる。また、混和除濁装置100では、筒流路R2におけるT値を上側流路R1におけるT値よりも大きくすることが可能であるため、上側流路R1及び筒流路R2のそれぞれにおいてGT値を確保することが可能になる。
【0039】
なお、本実施の形態における混和除濁装置100では、上側流路R1の底部近傍(仕切部31の近傍)におけるG値が、上側流路R1の上端近傍におけるG値よりも大きい。そのため、混和除濁装置100では、上側流路R1のみに着目した場合においても、テーパード・フロキュレーション方式に従ったフロック形成を行うことが可能になる。
【0040】
また、本実施の形態における混和除濁装置100では、槽10の底部12においてフロック1(フロック1c)を堆積させる構造を有することで、沈殿池を別途設ける必要がなくなる。そのため、混和除濁装置100では、設置スペースを抑制することが可能になる。
【0041】
[ポンプを用いた場合における被処理水の流動の制御]
次に、ポンプを用いた場合における被処理水の流動の制御について説明を行う。
図10は、ポンプ及び制御装置の構成について説明する図である。
【0042】
図10に示すように、流入配管41には、例えば、被処理水を槽10(上側流路R1)に向けて吐出する第1ポンプP11が設置されるものであってもよい。また、流出配管42には、例えば、処理水を槽10(下側流路R4)から吸引する第2ポンプP12が設置されるものであってもよい。すなわち、第1ポンプP11、第2ポンプP12の少なくとも1つが設置されるものであってもよい。
【0043】
さらに、混和除濁装置100の外部には、例えば、第1ポンプP11及び第2ポンプP12のうちの少なくともいずれかの駆動を制御する制御装置60が設置されるものであってもよい。制御装置60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やメモリを有するコンピューター装置である。具体的に、制御装置60は、例えば、上側流路R1における被処理水の流動によるG値が筒流路R2における被処理水の流動によるG値よりも大きくなるように、第1ポンプP11及び第2ポンプP12のうちの少なくともいずれかを制御する。
【0044】
これにより、混和除濁装置100では、良質なフロックの形成をより精度良く制御することが可能になる。特に、混和除濁装置100では、例えば、被処理水に対して凝集剤を供給する位置の下流側に第1ポンプP11を設置することで、上側流路R1におけるG値をより大きくすることが可能になる。
【0045】
なお、一般的に、被処理水におけるフロックの濃度(以下、C0とも呼ぶ)が大きい場合、GT値が小さい場合であっても良質なフロックを形成することが可能である。そのため、制御装置60は、例えば、被処理水におけるC0が大きい場合、GT値が小さくなるように、上側流路R1における被処理水の流動によるG値を制御するものであってもよい。また、制御装置60は、例えば、被処理水におけるC0が小さい場合、GT値が大きくなるように、上側流路R1における被処理水の流動によるG値を制御するものであってもよい。
【0046】
[第2の実施の形態における混和除濁装置200]
図11は、第2の実施の形態における混和除濁装置200の構成図である。具体的に、
図11は、第2の実施の形態における混和除濁装置200を正面視した場合における垂直断面図である。
【0047】
図1に示す混和除濁装置100において、ポイントP1及びポイントP2のそれぞれは、処理水が下側流路R4に流れ込む位置を示している。具体的に、ポイントP1は、処理水が下側流路R4に流れ込む位置のうち、流出口11bからの距離が最も遠い位置を示している。また、ポイントP2は、処理水が下側流路R4に流れ込む位置のうち、流出口11bからの距離が最も近い位置を示している。
【0048】
ここで、ポイントP1において下側流路R4に流入した処理水は、筒20の外周に沿った流路を経由して流出口11b(流出配管42)に到達する。これに対し、ポイントP2において下側流路R4に流入した処理水は、筒20の外周に沿った流路を経由することなく、上方向に向かう流路のみを経由して流出口11bに到達する。そのため、ポイントP1において下側流路R4に流入した処理水は、流出口11bに到達するために、ポイントP2において下側流路R4に流入した処理水よりも長い流路を経由する必要がある。
【0049】
したがって、
図1に示す混和除濁装置100では、処理水が下側流路R4に流入する位置によって、底側流路R3から下側流路R4に対して流入する処理水の流速が異なる可能性がある。そのため、
図1に示す混和除濁装置100では、例えば、底側流路R3から下側流路R4に対する処理水の流速が速い位置において、底部12に堆積されたフロック1cの吸い込みが発生する可能性がある。
【0050】
そこで、第2の実施における混和除濁装置200では、
図11に示すように、
図1等で説明した筒20に代えて、下側縁部が水平方向に対して傾斜した形状を有する筒50(壁部51)を有する。
【0051】
これにより、混和除濁装置200は、
図11に示すように、例えば、処理水が下側流路R4に流れ込む位置のうち、流出口11bからの距離が最も遠い位置であるポイントP3から流出口11bまでの下側流路R4の距離と、処理水が下側流路R4に流れ込む位置のうち、流出口11bからの距離が最も近い位置であるポイントP2から流出口11bまでの下側流路R4の距離との差を小さくすることが可能になる。そのため、混和除濁装置200は、下側流路R4に流入する各位置における処理水の流速の差を抑えることが可能になり、底部12に堆積されたフロック1cの吸い込みの発生を抑制することが可能になる。
【0052】
さらに、筒50の下側縁部の形状は、例えば、処理水が下側流路R4に流れ込む各位置から流出口11bまでの距離が一定になる形状であることが好ましい。
【0053】
具体的に、
図11に示す例において、ポイントP3から流出口11bまでの下側流路R4の距離は、例えば、筒50の水平断面における外周の半分の距離である。そのため、ポイントP2から流出口11bまでの下側流路R4の距離(すなわち、ポイントP2から流出口11bまでの垂直方向の距離)は、この場合、筒50の水平断面における外周の半分の距離であることが好ましい。
【0054】
これにより、混和除濁装置200は、下側流路R4に流入する各位置における処理水の流速の差をより抑えることが可能になり、底部12に堆積されたフロック1cの吸い込みの発生をより抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0055】
1:フロック 1a:フロック
1b:フロック 1c:フロック
10:槽 11:壁部
11a:流入口 11b:流出口
12:底部 13:フロック排出管
20:筒 21:壁部
21a:上面 21b:下面
31:仕切部 32:バルブ
41:流入配管 42:流出配管
50:筒 51:壁部
60:制御装置 100:混和除濁装置
200:混和除濁装置 R1:上側流路
R2:筒流路 R3:底側流路
R4:下側流路 P11:第1ポンプ
P12:第2ポンプ