(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183702
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ステータコア、回転電機、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/12 20060101AFI20221206BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20221206BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02K1/12 A
H02K15/02 F
H02K1/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091145
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 篤司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 翔吾
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA22
5H601BB20
5H601CC05
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD25
5H601DD32
5H601DD47
5H601EE18
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GC02
5H601GC12
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5H601GC37
5H601HH09
5H601KK02
5H601KK08
5H601KK22
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP07
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トルクリップルを低減できるステータコア、回転電機、および駆動装置を提供する。
【解決手段】複数の鋼板を積層されたステータコア70であって、中心軸線を中心とする環状のコアバック71と、コアバックから径方向に延びる複数のティース72と、を備え、コアバックの径方向を向く側面には、軸方向に沿って延びて複数の鋼板同士を固定する複数の溶接部76と、軸方向に沿って延びる溝部75と、が設けられ、複数の溶接部は、周方向に沿って順に並ぶ第1溶接部76A、第2溶接部76B、および第3溶接部76Cを含み、中心軸線J、第1溶接部、および第2溶接部がなす角θ1は、中心軸線、第2溶接部、および第3溶接部がなす角θ2よりも、大きく、溝部は、周方向に隣り合う第1溶接部と第2溶接部との間に配置される、ステータコア。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼板を積層されたステータコアであって、
中心軸線を中心とする環状のコアバックと、
前記コアバックから径方向に延びる複数のティースと、を備え、
前記コアバックの径方向を向く側面には、
軸方向に沿って延びて複数の前記鋼板同士を固定する複数の溶接部と、
軸方向に沿って延びる溝部と、が設けられ、
複数の前記溶接部は、周方向に沿って順に並ぶ第1溶接部、第2溶接部、および第3溶接部を含み、
前記中心軸線、前記第1溶接部、および前記第2溶接部がなす角は、前記中心軸線、前記第2溶接部、および前記第3溶接部がなす角よりも、大きく、
前記溝部は、周方向に隣り合う前記第1溶接部と前記第2溶接部との間に配置される、
ステータコア。
【請求項2】
前記溝部は、前記中心軸線、前記第1溶接部、および前記第2溶接部がなす角の二等分線上に配置される、
請求項1に記載のステータコア。
【請求項3】
複数の前記鋼板は、転積角度で転積され、
前記中心軸線、前記第1溶接部、および前記第3溶接部がなす角が前記転積角度と等しい、
請求項1又は2に記載のステータコア。
【請求項4】
前記溶接部、又は前記溝部は、軸方向から見て前記ティースの中心線上に配置される、
請求項1~3の何れか一項に記載のステータコア。
【請求項5】
前記溶接部、又は前記溝部は、軸方向から見て隣り合う前記ティース同士の間のスロットの中心線上に配置される、
請求項1~3の何れか一項に記載のステータコア。
【請求項6】
周方向に隣り合う前記ティース同士の間には、スロットが設けられ、
複数の前記スロットは、異なる相のコイル線が通過する第1スロットおよび第2スロットを含み、
前記溝部は、軸方向から見て、前記第1スロットの中心線と、前記第2スロットの中心線と、の間に配置される、
請求項1~5の何れか一項に記載のステータコア。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のステータコアを有するステータと、
前記ステータに対して相対的に回転するロータと、を備える、
回転電機。
【請求項8】
請求項7に記載の回転電機と、
前記ロータに接続される伝達機構と、を備える、
駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコア、回転電機、および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のステータコアとして、複数枚の電磁鋼板が積層されて構成されるものが知られている。この場合、積層された鋼板は、周縁を溶接することで互いに固定される。特許文献1には、溶接部をステータコアの外周面に等間隔に配置したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ステータコアのコアバック部分にも磁束は流れるため、溶接にてステータコアを固定する場合、磁路に影響が出てしまい、トルクリップルが悪化させる虞がある。そこで、ステータコア(鋼板)の固定を行いつつ、トルクリップルを低減できるステータコア構造が求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、トルクリップルを低減できるステータコア、回転電機、および駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステータコアの一つの態様は、複数の鋼板を積層されたステータコアである。ステータコアは、中心軸線を中心とする環状のコアバックと、前記コアバックから径方向に延びる複数のティースと、を備える。前記コアバックの径方向を向く側面には、軸方向に沿って延びて複数の前記鋼板同士を固定する複数の溶接部と、軸方向に沿って延びる溝部と、が設けられる。複数の前記溶接部は、周方向に沿って順に並ぶ第1溶接部、第2溶接部、および第3溶接部を含む。前記中心軸線、前記第1溶接部、および前記第2溶接部がなす角は、前記中心軸線、前記第2溶接部、および前記第3溶接部がなす角よりも、大きい。前記溝部は、周方向に隣り合う前記第1溶接部と前記第2溶接部との間に配置される。
【0007】
本発明の回転電機の一つの態様は、上述のステータコアを有するステータと、前記ステータに対して相対的に回転可能なロータと、を備える。
【0008】
本発明の駆動装置の一つの態様は、上述の回転電機と、前記ロータに接続される伝達機構と、前記ステータに接続されるインバータと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、トルクリップルを低減できるステータコア、回転電機、および駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態の駆動装置の模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のステータコアの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のステータコアの斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のステータコアの平面図である。
【
図6】
図6は、変形例のステータコアの部分拡大図である。
【
図7】
図7は、変形例のステータコアの部分拡大図である。
【
図8】
図8は、上述の実施形態におけるトルクリップルのシミュレーション結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0012】
図1は、本実施形態の駆動装置100の模式図である。
駆動装置100は、車両に搭載され、車軸64を回転させる駆動装置である。駆動装置100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。
図1に示すように、駆動装置100は、回転電機10と、伝達装置60と、を備える。
【0013】
伝達装置60は、回転電機10に接続され、回転電機10の回転、つまり後述するロータ30の回転を車両の車軸64に伝達する。本実施形態の伝達装置60は、ギヤハウジング61と、回転電機10に接続される減速装置62と、減速装置62に接続される差動装置63と、を有する。
【0014】
差動装置63は、リングギヤ63aを有する。リングギヤ63aには、回転電機10から出力されるトルクが減速装置62を介して伝えられる。リングギヤ63aの下側の端部は、ギヤハウジング61内に貯留されたオイルOに浸漬している。リングギヤ63aが回転することで、オイルOがかき上げられる。かき上げられたオイルOは、例えば、減速装置62および差動装置63に潤滑油として供給される。
【0015】
回転電機10は、駆動装置100を駆動する部分である。回転電機10は、モータとしての機能と発電機としての機能とを兼ね備える。回転電機10は、供給された交流電流により駆動し、車輪を回転させ、車両を駆動する。また、回転電機10は、車輪の回転を回生し交流電流を発電する。
【0016】
回転電機10は、モータハウジング20と、軸方向に延びる中心軸線Jを中心として回転可能なロータ30と、ステータ40と、ベアリング34,35と、を備える。ロータ30は、ステータ40に対して相対的に回転する。ベアリング34、35は、ロータ30を回転可能に支持する。
【0017】
ロータ30は、シャフト31と、ロータ本体32と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体32は、ロータコアと、ロータコアに固定されたロータマグネットと、を有する。ロータ30のトルクは、伝達装置60に伝達される。
【0018】
シャフト31は、中心軸線Jを中心として回転可能である。シャフト31は、ベアリング34,35によって回転可能に支持されている。これにより、ベアリング34,35は、ロータ30を回転可能に支持している。ベアリング34,35は、例えば、ボールベアリングである。シャフト31の一方の端部は、ギヤハウジング61の内部に突出している。シャフト31の左側の端部には、減速装置62が接続されている。
【0019】
ステータ40は、ロータ30と径方向に隙間を介して対向している。より詳細には、ステータ40は、ロータ30の径方向外側に位置する。ステータ40は、モータハウジング20の内部に固定されている。ステータ40は、ステータコア70と、コイル42と、を有する。
【0020】
ステータコア70は、回転電機10の中心軸線Jを囲む環状である。ステータコア70は、ロータ30の径方向外側に位置する。ステータコア70は、ロータ30を囲んでいる。
【0021】
図2は、本実施形態のステータコア70の分解斜視図である。
図3は、本実施形態のステータコア70の斜視図である。
図4は、本実施形態のステータコア70の平面図である。
図5は、
図4の一部を拡大して示す拡大平面図である。
【0022】
図3に示すように、本実施形態のステータコア70は、複数の鋼板79を厚さ方向に積層されて構成される。複数の鋼板79は、同形状である。鋼板79は、例えば、圧延された板状の母材を打ち抜き加工することにより成形される。鋼板79としては、公知の無方向性電磁鋼板を用いることができる。また、鋼板79として、無方向性電磁鋼板に代えて方向性電磁鋼板を採用してもよい。鋼板79は、磁化されやすい磁化容易方向を有する。鋼板79の磁化容易方向は、圧延方向と一致する。方向性電磁鋼板は、磁化し易さの方向が大きく、無方向性鋼板は、磁化し易さの方向性が閾値以下である。
【0023】
鋼板79は、円環部79pと、円環部79pから径方向内側に延びる複数のティース要素部79tと、を有する。鋼板79を厚さ方向に積層することで、それぞれの円環部79p同士、およびそれぞれのティース要素部79t同士は、軸方向厚さ方向から見て外形を一致させる。鋼板79を厚さ方向に積層することで、積層された複数の円環部79pはコアバック71を構成し、積層された複数のティース72を構成する。
【0024】
図4に示すように、ステータコア70は、コアバック71と複数のティース72とを有する。コアバック71は、中心軸線Jを中心とする環状である。より具体的には、コアバック71は、中心軸線Jを中心として軸方向に沿って延びる円筒状である。また、ティース72は、コアバック71の内周面から径方向内側に延びる。すなわちティース72は、コアバック71から径方向に延びる。
【0025】
複数のティース72は、周方向に沿って等間隔に並ぶ。本実施形態において、コアバック71には、48個のティース72が設けられる。周方向に隣接するティース72の間には、スロットSが設けられる。
【0026】
図3に示すように、スロットSにコイル線43を通過させることで、コイル42は、ステータコア70に装着される。スロットSを通過するコイル線43は、U相のコイル線43U、V相のコイル線43V、およびW相のコイル線43Wに分類される。U相、V相、およびW相のコイル線43U、43V、43Wには、互いに位相が120°ずれた交流電圧が付与される。ここで、U相のコイル線43Uが通過するスロットSをU相スロットS1とし、V相のコイル線43Vが通過するスロットSをV相スロットS2とし、W相のコイル線43Wが通過するスロットSをW相スロットS3とする。ステータコア70において、U相のコイル線43Uが通過するスロットS、V相のコイル線43Vが通過するスロットS、およびW相のコイル線43Wが通過するスロットSが、2個ずつ周方向に沿って順に並ぶ。
【0027】
図4に示すように、鋼板79の円環部79pの外縁には、3つの溶接用の第1凹部79aと、3つの溶接用の第2凹部79bと、1つの位置決め用の位置決め凹部79cと、が設けられる。第1凹部79a、第2凹部79bおよび位置決め凹部79cは、径方向外側に開口する切欠状である。
【0028】
本実施形態において、第1凹部79aと第2凹部79bとは、互いに同形状である。しかしながら、第1凹部79aと第2凹部79bとが、互いに異なる形状であってもよい。3つの第1凹部79aは、周方向に沿って等間隔に並ぶ。同様に、3つの第2凹部79bは、周方向に沿って等間隔に並ぶ。すなわち、3つの第1凹部79aは120°の間隔で並び、3つの第2凹部79bは120°の間隔で並ぶ。第1凹部79aと第2凹部79bとは周方向に沿って交互に並ぶ。第2凹部79bは、周方向に隣り合う第1凹部79aの周方向中央に対して若干ずれて配置される。
【0029】
位置決め凹部79cは、周方向において第1凹部79aと第2凹部79bとの間に配置される。位置決め凹部79cは、第1凹部79aと第2凹部79bと間の周方向中央に配置される。本実施形態において、位置決め凹部79cは、第1凹部79aおよび第2凹部79bと異なる形状である。なお、位置決め凹部79cは、第1凹部79aおよび第2凹部79bと同形状であってもよい。
【0030】
図2に示すように、ステータコア70は、厚さ方向に複数のブロック78に分割される。本実施形態では、ステータコア70は、互いに積層される3つのブロック78を有する。3つのブロック78は、それぞれ同数の鋼板79を厚さ方向に積層することで構成される。ここで3つのブロック78をそれぞれ第1ブロック78A、第2ブロック78B、および第3ブロック78Cと呼ぶ。
【0031】
それぞれのブロック78に含まれる複数の鋼板79は、位置決め凹部79cの周方向位置が互いに一致した状態積層される。したがって、それぞれのブロック78において複数の鋼板79の圧延方向は、互いに一致する。
【0032】
第1ブロック78A、第2ブロック78B、および第3ブロック78Cは、互いに転積されている。第1ブロック78Aは、第2ブロック78Bに対し120°回転して積層される。第2ブロック78Bは、第3ブロック78Cに対し120°回転して積層される。すなわち、本実施形態のステータコア70において、複数の鋼板79は、120°の転積角度で転積される。転積されたステータコア70において、互いに異なるブロック78に含まれる鋼板79の第1凹部79a同士、および第2凹部79b同士の周方向位置は、互いに一致する。一方で、互いに異なるブロック78に含まれる鋼板79の位置決め凹部79cの周方向位置は、互いに異なる。
【0033】
本実施形態によれば、複数の鋼板79を転籍して積層することで、鋼板79の板厚の偏差を全面において平均化することができる。さらに、鋼板の圧延に起因する磁化容易軸の方向を、ステータコア70全体で平均化することができトルクリップルを抑制できる。
【0034】
図3に示すように、第1ブロック78A、第2ブロック78B、および第3ブロック78Cの各鋼板79の第1凹部79aは、軸方向において互いに連なり第1凹溝部77aを構成する。同様に、第1ブロック78A、第2ブロック78B、および第3ブロック78Cの各鋼板79の第2凹部79bは、軸方向において互いに連なり第2凹溝部77bを構成する。第1凹溝部77aおよび第2凹溝部77bは、コアバック71の径方向外側を向く面(すなわち外周面71a)において軸方向に沿って延びる。第1凹溝部77aおよび第2凹溝部77bの端部は、ステータコア70の軸方向両端面において軸方向両側に開口する。
【0035】
図4に示すように、複数の第1凹溝部77aおよび複数の第2凹溝部77bには、それぞれ溶接部76が設けられる。上述したように、コアバック71の外周面71aには3つの第1凹溝部77aおよび3つの第2凹溝部77bが設けられる。このため、コアバック71の外周面71aには、6つの溶接部76が設けられる。6つの溶接部76は、軸方向に沿って延びてステータコア70を構成する複数の鋼板79同士を固定する。溶接部76は、ステータコア70の軸方向の全長に亘って設けられる。
【0036】
本実施形態において、6つの溶接部76をそれぞれ第1溶接部76A、第2溶接部76B、第3溶接部76C、第4溶接部76D、第5溶接部76E、および第6溶接部76Fと呼ぶ。第1溶接部76A、第2溶接部76B、第3溶接部76C、第4溶接部76D、第5溶接部76E、および第6溶接部76Fは、周方向に沿ってこの順で並ぶ。すなわち、複数の溶接部76は、周方向に沿って並ぶ第1溶接部76A、第2溶接部76B、第3溶接部76C、第4溶接部76D、第5溶接部76E、および第6溶接部76Fを含む。
【0037】
6つの溶接部76のうち、奇数番目の溶接部76である第1溶接部76A、第3溶接部76C、および第5溶接部76Eは、第1凹溝部77aに配置される。一方で、6つの溶接部76のうち、偶数番目の溶接部76である第2溶接部76B、第4溶接部76D、および第6溶接部76Fは、第1凹溝部77aに配置される。
【0038】
第1ブロック78Aの各鋼板79の位置決め凹部79c、第2ブロック78Bの各鋼板79の位置決め凹部79c、および第3ブロック78Cの各鋼板79の位置決め凹部79cは、それぞれ軸方向において連なり位置決め溝部(溝部)76を構成する。すなわち、コアバック71の外周面71aには、位置決め溝部75が設けられる。
【0039】
位置決め溝部75は、第1ブロック78A、第2ブロック78B、および第3ブロック78Cの外周面において、軸方向に沿って延びる。第1ブロック78Aの位置決め溝部75と、第2ブロック78Bの位置決め溝部75、および第3ブロック78Cの位置決め溝部75は、ブロック78の境界部において途切れており互いに、周方向において等間隔に配置される。
【0040】
第1ブロック78A、第2ブロック78B、および第3ブロック78Cの何れかの位置決め溝部75は、キー溝として機能する。第1ブロック78A、第2ブロック78B、および第3ブロック78Cの何れかの位置決め溝部75には、モータハウジング20の内周面に設けられるキー部(図示略)が挿入される。これにより、ステータコア70は、モータハウジング20に対する周方向の移動が抑制される。
【0041】
図5に示すように、ステータコア70を軸方向から見て、中心軸線J、第1溶接部76A、および第2溶接部76Bがなす角を第1角度θ1とする。また、ステータコア70を軸方向から見て、中心軸線J、第2溶接部76B、および第3溶接部76Cがなす角を第2角度θ2とする。さらに、中心軸線J、第1溶接部76A、および第3溶接部76Cがなす角を第3角度θ3とする。本実施形態において、第1角度θ1は64°であり、第2角度θ2は56°であり、第3角度θ3は、120°である。
【0042】
なお、図に示すように、第1溶接部76A、第2溶接部76B、および第3溶接部76Cの周方向の位置関係と、第3溶接部76C、第4溶接部76D、および第5溶接部76Eの周方向の位置関係と、第5溶接部76E、第6溶接部76F、および第1溶接部76Aの周方向の位置関係は、互いに同じである。すなわち、中心軸線J、第3溶接部76C、および第4溶接部76Dがなす角、並びに中心軸線J、第5溶接部76E、および第6溶接部76Fがなす角は、第1角度θ1に一致する。さらに、中心軸線J、第4溶接部76D、および第5溶接部76Eがなす角、並びに中心軸線J、第6溶接部76F、および第1溶接部76Aがなす角は、第2角度θ2に一致する。
【0043】
図5に示すように、第1溶接部76A、第2溶接部76B、および第3溶接部76Cに着目する。本実施形態において、第1角度θ1は、第2角度θ2よりも大きい(θ1>θ2)。したがって、第2溶接部76Bは、第1溶接部76Aと第3溶接部76Cとの周方向の中央に対し、第3溶接部76C側に偏って配置される。したがって、第1溶接部76Aと第2溶接部76Bとの周方向の距離は比較的広く、第2溶接部76Bと第3溶接部76Cとの周方向の距離は比較的狭い。また同様に、第3溶接部76Cと第4溶接部76Dとの周方向の距離は比較的広く、第4溶接部76Dと第5溶接部76Eとの周方向の距離は比較的狭い。さらに、第5溶接部76Eと第6溶接部76Fとの周方向の距離は比較的広く、第6溶接部76Fと第1溶接部76Aとの周方向の距離は比較的狭い。このように、複数の溶接部76の間の周方向の距離は、広い領域と狭い領域とが交互に設けられる。
【0044】
本実施形態において、位置決め溝部75は、周方向に隣り合う第1溶接部76Aと第2溶接部76Bとの間に配置される。このため、位置決め溝部75は、2つの溶接部76の間であって周方向の距離が比較的広い領域に配置される。
【0045】
一般的に、ステータコア70の周方向の位置決めのために位置決め溝部75を設けると、コアバックの径方向寸法が、位置決め溝部75によって局所的に小さくなる。このため、コアバック71は、位置決め溝部75の径方向内側の領域において磁気抵抗が大きくなり磁束を通し難くなる。一方で、ステータコア70を構成する鋼板79は、溶接時に熱を付与することで結晶状態が変化し、溶接部76の近傍で磁気抵抗が大きくなり磁束を通し難くなる。
【0046】
本実施形態によれば、周方向に並ぶ溶接部76のうち、周方向の間隔が広く確保された領域に位置決め溝部75が配置される。このため、位置決め溝部75によって磁気抵抗が大きくなる領域と、溶接部の影響で磁気抵抗が大きくなる領域と、を周方向に離間して配置することができる。これによって、コアバック71の周方向における磁気抵抗のバランスをよくすることができ、結果的に回転電機10のトルクリップルを低減できる。
【0047】
なお、本実施形態において、位置決め溝部75は、径方向外側に向かうに従い開口幅が広がる切欠状であるが、位置決め溝部75の形状は本実施形態に限定されない。位置決め溝部75は、径方向の深さ寸法が大きくなるに従い、回転電機10のトルクリップルを増大させる。逆に、位置決め溝部75の径方向の深さ寸法をコアバック71の径方向寸法に対して十分に小さくすることで、位置決め溝部75に起因するトルクリップルの増大を抑制することができるが、回転電機10の径方向寸法が大型化する。すなわち、本実施形態によれば、回転電機10の小型化に伴うトルクリップルの増大を抑制することができる。
【0048】
本実施形態において、位置決め溝部75は、第1角度θ1の二等分線L上に配置される。本実施形態によれば、位置決め溝部75とその周方向両側に位置する溶接部76(すなわち、第1溶接部76Aおよび第2溶接部76B)との距離を最大限確保することができ、回転電機10のトルクリップルを効果的に低減できる。
【0049】
本実施形態において、第1角度θ1と第2角度θ2との和である第3角度θ3は、転積角度と等しい。このため、複数の溶接部76と位置決め溝部75は、それぞれのブロック78において第3角度θ3に回転して同様に配置される。本実施形態のステータコア70によれば、転積角度毎に、複数の溶接部76と位置決め溝部75を周方向に周期的に配置でき、回転電機10のトルクリップルをさらに抑制できる。
【0050】
図5に示すように、本実施形態の第1溶接部76Aおよび第3溶接部76Cの径方向内側には、ティース72が配置される。ここで、ティース72の延びる方向に沿う中心線を、ティース中心線(中心線)TLとする。本実施形態において、第1溶接部76Aは、軸方向から見て、その径方向内側のティース72のティース中心線TL上に配置される。同様に、第3溶接部76Cは、軸方向から見て、その径方向内側のティース72のティース中心線TL上に配置される。
【0051】
ステータ40のコイル42に電流が流れることで、ステータコア70に磁気回路が形成される。磁気回路の磁束は、ティース72の径方向外側のコアバック71において周方向両側に分岐する。このため、ティース72の径方向外側であって、コアバック71の外縁においては、磁束密度が低くなりやすい。
【0052】
本実施形態において、溶接部76を、軸方向から見てティース72のティース中心線TL上に配置することで、磁気回路において磁束密度が相対的に低くなりやすい部分に、溶接部76を配置することができ、磁気回路に対する溶接部76の影響を抑制することができ、回転電機10のトルクリップルを抑制できる。
【0053】
なお、本実施形態では、複数の溶接部76のうち、第1溶接部76A、第3溶接部76C、および第5溶接部76Eがティース72のティース中心線TL上に配置される場合について説明した。しかしながら、第2溶接部76B、第4溶接部76D、および第6溶接部76Fについても、ティース72のティース中心線TL上に配置されていてもよい。さらに、変形例として、
図6に示すように、位置決め溝部175が、ティース72のティース中心線TL上に配置されていてもよい。このような構成を採用する場合であっても、磁気回路に対する位置決め溝部175の影響を抑制することができ、回転電機10のトルクリップルを抑制できる。
【0054】
図5に示すように、本実施形態の第2溶接部76Bの径方向内側には、スロットSが配置される。ここで、スロットSの径方向に沿う中心線を、スロット中心線(中心線)SLとする。本実施形態において、第2溶接部76Bは、軸方向から見て、その径方向内側のスロットSのスロット中心線SL上に配置される。
【0055】
コイル42に電流が流れた際に、コアバック71には周方向に沿う磁気回路が形成される。コアバック71の径方向の寸法が十分に大きい場合、コアバック71の外縁近傍の磁束密度は小さくなる。また、コイル42に流れる電流は、交流電流であるため、磁気回路は経時的に変化する。コアバック71の外縁においてスロットSの径方向外側の領域は、磁気回路の経時的な変化に影響を受け難い。このため、スロットSの径方向外側であって、コアバック71の外縁に溶接部76を配置することで、トルクリップルに対する影響を小さくすることができる。
【0056】
本実施形態において、溶接部76を、軸方向から見てスロットSのスロット中心線SL上に配置することで、磁気回路に対する溶接部76の影響を抑制することができ、回転電機10のトルクリップルを抑制できる。
【0057】
なお、本実施形態では、複数の溶接部76のうち、第2溶接部76B、第4溶接部76D、および第6溶接部76FがスロットSのスロット中心線SL上に配置される場合について説明した。しかしながら、第1溶接部76A、第3溶接部76C、および第5溶接部76Eについても、スロットSのスロット中心線SL上に配置されていてもよい。さらに、変形例として、
図7に示すように、位置決め溝部275が、スロットSのスロット中心線SL上に配置されていてもよい。このような構成を採用する場合であっても、磁気回路に対する位置決め溝部275の影響を抑制することができ、回転電機10のトルクリップル抑制の効果を得ることができる場合がある。
【0058】
図5に示すように、本実施形態のステータコア70では、同相のコイル線43が通過するスロットSが、2つずつ周方向に沿って並んでいる。上述したように、複数のスロットSは、異なる相のコイル線43が通過するU相スロットS1、V相スロット(第1スロット)S2、およびW相スロット(第2スロット)S3を含む。位置決め溝部75は、軸方向から見て、V相スロットS2のスロット中心線SLと、W相スロットS3のスロット中心線SLと、の間に配置される。
【0059】
異相のコイル線43には、異なる相の電圧が付与され、異なる位相の電流が流れる。異なる相のコイル線43が通過するスロットSの間に配置されるティース72には、径方向に沿う大きな磁界が発生難い。すなわち、異なる相のコイル線43が配置されるスロットSの間に位置するコアバック71の一領域において、磁気回路の磁束密度は小さくなる。
【0060】
本実施形態によれば、位置決め溝部75を、軸方向から見て、異なる相のコイル線43が通過するスロットSのスロット中心線SLの間に配置することで、磁気回路に対する位置決め溝部75の影響を抑制することができ、回転電機10のトルクリップルを抑制できる。
【0061】
図8は、上述の実施形態におけるトルクリップルのシミュレーション結果を表すグラフである。
図8において、横軸は第1角度θ1を示し、縦軸は回転電機10の最大出力に対するトルクリップルの比率を表す。
【0062】
このシミュレーションでは、第3角度θ3を120°としつつ第1角度θ1を様々に変更させている。また、位置決め溝部75をそれぞれの第1角度θ1の二等分線上に配置している。このシミュレーションにおいて、変化させる第1角度θ1(および第2角度θ2)以外の構成については、上述の実施形態のステータコア70の構成を採用している。
なお、
図8は、24次のトルクリップルのシミュレーション結果であるが、他の次数のトルクリップルについても、同様の傾向が表れる。
【0063】
図8から、本実施形態の構成では、第1角度θ1を64°前後に設定する場合に、トルクリップルを最も低減できることがわかる。なお、この場合、第2角度θ2は56°となる。
図8から、第1角度θ1と第2角度θ2と等しい角度である60°とする場合、第1溶接部76Aおよび第2溶接部76Bと、位置決め溝部75との距離が近づき、トルクリップルが増大する。
【0064】
図8に示すように、トルクリップルは、第1角度θ1の変化に対して周期的に増減する。これは、第1角度θ1の二等分線上に配置される位置決め溝部75と、各スロットSの位相との関係に起因する増減である。
図8に示す範囲において、トルクリップルの極小値は、第1角度θ1が、60°~67.5°の間、および75°~82.5°の間に位置する。第1角度θ1が、これらの値の範囲内に配置される場合、位置決め溝部75は、ティース72の径方向外側に配置される。このため、トルクリップルが低減される。また、これらのうち、第1角度θ1が、60°~67.5°の間に位置する場合には、位置決め溝部75が異相のコイル線43が通過するスロットSの間に配置されることとなり、さらにトルクリップルを低減できる。
【0065】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0066】
例えば、回転電機10は、モータに限られず、発電機であってもよい。回転電機10の用途は、特に限定されない。回転電機は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。回転電機が用いられる際の姿勢は、特に限定されない。回転電機の中心軸線は、鉛直方向に延びてもよい。
【0067】
上述の実施形態では、インナーロータ型の回転電機10について説明したが、アウターロータ型の回転電機10においても同様の構成を採用できる。さらに、上述の実施形態では、溶接部76が位置決め溝部75内に設けられる場合について説明した。しかしながら、溶接部はステータコアの外周面に直接的に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…回転電機、30…ロータ、40…ステータ、42…コイル、43,43U,43V,43W…コイル線、70…ステータコア、71…コアバック、72…ティース、76…位置決め溝部(溝部)、76…溶接部、76A…第1溶接部、76B…第2溶接部、76C…第3溶接部、79…鋼板、100…駆動装置、J…中心軸線、L…二等分線、S…スロット、S2…V相スロット(第1スロット)、S3…W相スロット(第2スロット)、SL…スロット中心線(中心線)、TL…ティース中心線(中心線)