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特開2022-183713封止用樹脂組成物およびウェーハレベルパッケージ
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  • 特開-封止用樹脂組成物およびウェーハレベルパッケージ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183713
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物およびウェーハレベルパッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20221206BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20221206BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221206BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221206BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08G59/20
C08L63/00 C
C08K3/013
H01L23/30 R
H01L23/12 501P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091157
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山下 航平
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CC032
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD141
4J002CD161
4J002DE137
4J002DE147
4J002DF017
4J002DJ017
4J002DJ047
4J002EL136
4J002EN036
4J002EN076
4J002EV026
4J002FD017
4J002FD142
4J002FD146
4J002GJ02
4J002GQ05
4J036AB01
4J036AB07
4J036AD07
4J036AD17
4J036AE05
4J036AF06
4J036AJ18
4J036AK19
4J036DB11
4J036DD07
4J036FA02
4J036FA05
4J036FA13
4J036FB08
4J036FB16
4J036GA04
4J036JA07
4M109AA01
4M109CA21
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB08
4M109EB09
4M109EB12
4M109EB13
4M109EB19
(57)【要約】
【課題】封止材料のSiウェーハ上への成形時の反りを抑制する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、および(C)無機充填材を含む封止用樹脂組成物であって、封止用樹脂組成物の硬化物を試料として算出されるWI値が、0.01以上12.0以下である、封止用樹脂組成物。
WI(Warpage Index[ppm^3/(N/mm2)^1/4])=F(CTE1,軟化点)^2×(曲げ弾性率(G)^1/4)×10^(-6) (1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、および
(C)無機充填材
を含む封止用樹脂組成物であって、
以下の方法1にて算出されるWI値が、0.01以上12.0以下である、封止用樹脂組成物。
(方法1)下記式(1)に基づき当該封止用樹脂組成物の前記WI値を算出する。
WI(Warpage Index[ppm^3/(N/mm2)^1/4])=F(CTE1,軟化点)^2×(曲げ弾性率(G)^1/4)×10^(-6) (1)
(上記式(1)中、F(CTE1,軟化点)は下記式(2)で表される。曲げ弾性率(G)は、JIS K 6911に準拠して以下の方法2にて測定される。)
F(CTE1,軟化点)=CTE1×(T成形-T冷却) (2)
(上記式(1)および(2)中、軟化点はJIS K 7244-1に準拠して以下の方法3にて測定される。CTE1は、以下の方法4にて測定される前記軟化点未満の温度における線膨張係数である。上記式(2)中、T成形は、150℃と前記軟化点のより低い方の温度である。T冷却は、25℃である。ここで、上記式のそれぞれの物性値の単位は、CTE:ppm/℃、曲げ弾性率:N/mm2、成形・冷却温度、軟化点:℃で表される。)
(方法2)トランスファー成形装置を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で、当該封止用樹脂組成物を注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの成形品を得、前記成形品を175℃、4時間で後硬化して、試験片を得る。前記試験片の25℃における前記曲げ弾性率(G)[N/mm2]をJIS K 6911に準拠して測定する。
(方法3)前記方法2における前記試験片を、動的機械分析(DMA)の曲げモードにて、昇温速度5℃/minで30℃~300℃の温度範囲、荷重800g、周波数10Hzで測定する。得られた結果から、40~60℃の接線と弾性率の変化率が最大となる温度の接線との交点を前記軟化点[℃]とする。
(方法4)トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で、当該封止用樹脂組成物を注入成形し、長辺15mm×短辺4mm×厚さ4mmの試験片を得る。得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置を用いて、圧縮モードで、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行い、測定結果から、40℃から80℃までの平均線膨張係数を算出し、前記CTE1[ppm/℃]とする。
【請求項2】
前記成分(A)が、オキシラン環含有アシルグリセロールを含む、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、エポキシ化大豆油およびエポキシ化亜麻仁油からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(A)が、下記一般式(3)で表される化合物を含む、請求項1乃至3いずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【化1】
(上記一般式(3)中、Epは下記式(4)に示す基である。R1、R2'およびR3は、それぞれ独立して1価の有機基、もしくはHである。a、a'、b、b'、cおよびc'は、それぞれ独立して、0以上20以下の整数である。x、x'、y、y'、zおよびz'は、それぞれ独立して0以上5以下の整数であるが、x、x'、y、y'、zおよびz'のうち、少なくとも1つは1以上5以下の整数である。nは0~5の数である。)
【化2】
【請求項5】
前記軟化点が50℃以上160℃以下である、請求項1乃至4いずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
当該封止用樹脂組成物中の前記成分(C)の含有量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して80質量%以上97質量%以下である、請求項1乃至5いずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか1項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物を含む、ウェーハレベルパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物およびウェーハレベルパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
封止用樹脂組成物に関する技術として、特許文献1(特開昭48-066200号公報)に記載のものがある。同文献には、ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、芳香族ジアミンおよび液状酸無水物をそれぞれ特定量含む混合物に、特定のビス-マレイミドを特定量添加配合してなる低収縮性樹脂組成物について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭48-066200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載の技術について本発明者らが検討したところ、封止材料のSiウェーハ上への成形時の反りを低減するという点において、依然として、改善の余地があることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、および
(C)無機充填材
を含む封止用樹脂組成物であって、
以下の方法1で算出されるWI値が、0.01以上12.0以下である、封止用樹脂組成物が提供される。
(方法1)下記式(1)に基づき当該封止用樹脂組成物のWI値を算出する。
WI(Warpage Index[ppm^3/(N/mm2)^1/4])=F(CTE1,軟化点)^2×(曲げ弾性率(G)^1/4)×10^(-6) (1)
(上記式(1)中、F(CTE1,軟化点)は下記式(2)で表される。曲げ弾性率(G)は、JIS K 6911に準拠して以下の方法2にて測定される。)
F(CTE1,軟化点)=CTE1×(T成形-T冷却) (2)
(上記式(1)および(2)中、軟化点はJIS K 7244-1に準拠して以下の方法3にて測定される。CTE1は、以下の方法4にて測定される前記軟化点未満の温度における線膨張係数である。上記式(2)中、T成形は、150℃と前記軟化点のより低い方の温度である。T冷却は、25℃である。ここで、上記式のそれぞれの物性値の単位は、CTE:ppm/℃、曲げ弾性率:N/mm2、成形・冷却温度、軟化点:℃で表される。)
(方法2)トランスファー成形装置を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で、当該封止用樹脂組成物を注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの成形品を得、前記成形品を175℃、4時間で後硬化して、試験片を得る。前記試験片の25℃における前記曲げ弾性率(G)[N/mm2]をJIS K 6911に準拠して測定する。
(方法3)前記方法2における前記試験片を、動的機械分析(DMA)の曲げモードにて、昇温速度5℃/minで30℃~300℃の温度範囲、荷重800g、周波数10Hzで測定する。得られた結果から、40~60℃の接線と弾性率の変化率が最大となる温度の接線との交点を前記軟化点[℃]とする。
(方法4)トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で、当該封止用樹脂組成物を注入成形し、長辺15mm×短辺4mm×厚さ4mmの試験片を得る。得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置を用いて、圧縮モードで、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行い、測定結果から、40℃から80℃までの平均線膨張係数を算出し、前記CTE1[ppm/℃]とする。
【0006】
また、本発明によれば、たとえば前記本発明における封止用樹脂組成物を硬化してなる硬化物を得ることもできる。
また、本発明によれば、前記本発明における封止用樹脂組成物の硬化物を含む、ウェーハレベルパッケージが提供される。
【0007】
また、本発明によれば、たとえば前記本発明における封止用樹脂組成物で電子部品または半導体パッケージを封止してなる、電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、封止材料のSiウェーハ上への成形時の反りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】軟化点の求め方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、以上、以下を表し、両端の数値をいずれも含む。
【0011】
(封止用樹脂組成物)
本実施形態において、封止用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも呼ぶ。)は、以下の成分(A)~(C)を含む。
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)無機充填材
そして、以下の方法1にて算出されるWI値が、0.01以上12.0以下である。
(方法1)下記式(1)に基づき封止用樹脂組成物のWI値を算出する。
WI(Warpage Index[ppm^3/(N/mm2)^1/4])=F(CTE1,軟化点)^2×(曲げ弾性率(G)^1/4)×10^(-6) (1)
(上記式(1)中、F(CTE1,軟化点)は下記式(2)で表される。曲げ弾性率(G)は、JIS K 6911に準拠して以下の方法2にて測定される。)
F(CTE1,軟化点)=CTE1×(T成形-T冷却) (2)
(上記式(1)および(2)中、軟化点はJIS K 7244-1に準拠して以下の方法3にて測定される。CTE1は、以下の方法4にて測定される軟化点未満の温度における線膨張係数である。上記式(2)中、T成形は、150℃と軟化点のより低い方の温度である。T冷却は、25℃である。ここで、上記式のそれぞれの物性値の単位は、CTE:ppm/℃、曲げ弾性率:N/mm2、成形・冷却温度、軟化点:℃で表される。)
(方法2)トランスファー成形装置を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で、封止用樹脂組成物を注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの成形品を得、成形品を175℃、4時間で後硬化して、試験片を得る。試験片の25℃における曲げ弾性率(G)[N/mm2]をJIS K 6911に準拠して測定する。
(方法3)方法2における試験片を、動的機械分析(DMA)の曲げモードにて、昇温速度5℃/minで30℃~300℃の温度範囲、荷重800g、周波数10Hzで測定する。得られた結果から、40~60℃の接線と弾性率の変化率が最大となる温度の接線との交点を軟化点[℃]とする。
(方法4)トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で、封止用樹脂組成物を注入成形し、長辺15mm×短辺4mm×厚さ4mmの試験片を得る。得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置を用いて、圧縮モードで、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行い、測定結果から、40℃から80℃までの平均線膨張係数を算出し、CTE1[ppm/℃]とする。
【0012】
本実施形態においては、封止用樹脂組成物が成分(A)~(C)を含むとともに、WIが特定の範囲にある。このため、封止用樹脂組成物の硬化物の反りを抑制できるとともに、硬化物と隣接する材料との間の密着性を優れたものとすることができる。
【0013】
(WI:Warpage Index)
WIは、硬化物の機械物性のバランスを好ましいものとする観点から、0.01以上であり、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上である。
また、反り抑制の観点から、WIは12.0以下であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは6.0以下である。
【0014】
WIは、封止用樹脂組成物の硬化物の物性値から、方法1により求められ、封止用樹脂組成物の成形時に発生する応力、つまり、反りの程度を反映する指標である。
また、方法1における式(1)および(2)は、本発明者が実験に基づき初めて見出したものである。反りが発生する一般的なメカニズムとしては、被成形部材(具体的にはSiウェーハ)と封止用樹脂組成物の硬化物との熱収縮のミスマッチにより発生した応力が原因であるため、弾性率とCTE(熱膨張係数)の積で表現されることがある。一方で、弾性率とCTE(熱膨張係数)の積では上手く相関がとれない場合もあり、本発明者は、封止用樹脂組成物の硬化物と比較し、被成形部材が高剛性、つまり、厚みがあったり、高弾性率の場合、封止用樹脂組成物の硬化物の弾性率による応力緩和効果がCTE(熱膨張係数)の効果と比較して、低くなると考えられるため、弾性率と比較してCTE(熱膨張係数)の影響が大きいと推察した。
また、応力が発生する温度は、封止用樹脂組成物の硬化物がある程度硬くなる温度、つまり、軟化点以下の温度であるという推察に基づき、式(1)および(2)を見出した。
【0015】
(曲げ弾性率)
封止用樹脂組成物の硬化物の25℃における曲げ弾性率(G)は、ハンドリング性向上の観点から、好ましくは1000N/mm2以上であり、より好ましくは3000N/mm2以上、さらに好ましくは4000N/mm2以上である。
また、反り抑制の観点から、樹脂組成物の硬化物の25℃における曲げ弾性率は、好ましくは30000N/mm2以下であり、より好ましくは25000N/mm2以下、さらに好ましくは15000N/mm2以下である。
硬化物の25℃における曲げ弾性率は、前述の方法2により測定される。
【0016】
樹脂組成物の硬化物の260℃における曲げ弾性率は、硬化物の機械強度向上の観点から、好ましくは200N/mm2以上であり、より好ましくは500N/mm2以上、さらに好ましくは800N/mm2以上、さらにより好ましくは1000N/mm2以上である。
また、信頼性向上の観点から、樹脂組成物の硬化物の260℃における曲げ弾性率は、たとえば3000N/mm2以下であってよく、好ましくは1500N/mm2以下であり、より好ましくは1450N/mm2以下、さらに好ましくは1400N/mm2以下である。
硬化物の260℃における曲げ弾性率は、測定温度を260℃とする他は前述の方法2に準じて測定される。
【0017】
(曲げ強度)
樹脂組成物の硬化物の260℃における曲げ強度は、信頼性向上の観点から、好ましくは5N/mm2以上であり、より好ましくは10N/mm2以上、さらに好ましくは15N/mm2以上である。
また、260℃における曲げ強度は、たとえば50N/mm2以下であってもよい。
【0018】
樹脂組成物の硬化物の25℃における曲げ強度は、信頼性向上の観点から、好ましくは50N/mm2以上であり、より好ましくは65N/mm2以上、さらに好ましくは80N/mm2以上である。
また、25℃における曲げ強度は、たとえば200N/mm2以下であってもよい。
硬化物の曲げ強度は、前述の方法2に準じて各測定温度にて測定される。
【0019】
(軟化点)
封止用樹脂組成物の硬化物の軟化点[℃]は、耐熱性向上の観点から、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。
また、応力緩和の観点から、上記軟化点は、好ましくは160℃以下であり、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0020】
軟化点は、JIS K 7244-1に準拠して前述の方法3にて測定される。
図1は、弾性率(貯蔵弾性率E')の測定結果から軟化点を求める方法をさらに具体的に説明する図である。図1には、温度[℃]-貯蔵弾性率E'[MPa]グラフの例が示されている。また、図1中、接線T1は、弾性率の変化率が最大となる温度の接線であり、接線T2は、40~60℃の接線である。軟化点は、接線T1および接線T2の交点の温度[℃]として求められる。
【0021】
(ガラス転移温度:Tg)
樹脂組成物の硬化物のTg(℃)は、耐熱性向上の観点から、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上である。
また、樹脂組成物の硬化物のTg(℃)は、たとえば300℃以下であってもよい。
【0022】
(動的弾性率)
樹脂組成物の硬化物の35℃における貯蔵弾性率E'は、ハンドリング向上の観点から、好ましくは3GPa以上であり、より好ましくは4GPa以上、さらに好ましくは5GPa以上である。
また、反りの抑制の観点から、上記E'は、好ましくは30GPa以下であり、より好ましくは29GPa以下、さらに好ましくは28GPa以下である。
【0023】
樹脂組成物の硬化物の260℃における貯蔵弾性率E'は、機械強度向上の観点から、好ましくは0.1GPa以上であり、より好ましくは0.5GPa以上、さらに好ましくは1.0GPa以上である。
また、信頼性向上の観点から、上記E'は、好ましくは6GPa以下であり、より好ましくは5GPa以下、さらに好ましくは4GPa以下である。
各温度におけるE'および前述のTgは、軟化点の測定方法に係る方法3に準じて、以下の方法で測定される。
【0024】
(Tgおよび動的弾性率の測定方法)
方法3における試験片を、動的機械分析(DMA)の曲げモードにて、昇温速度5℃/minで30℃~300℃の温度範囲、荷重800g、周波数10Hzで、貯蔵弾性率E'および損失弾性率E''を測定する。得られた結果から、損失正接(tanδ=損失弾性率E''/貯蔵弾性率E')が最大となる温度をTgとする。
【0025】
(線膨張係数)
封止用樹脂組成物のガラス転移温度未満の温度における線膨張係数CTE1は、反り抑制の観点から、好ましくは1ppm/℃以上であり、より好ましくは3ppm/℃以上、さらに好ましくは5ppm/℃以上である。
また、反り抑制の観点から、上記CTE1は、好ましくは20ppm/℃以下、さらに好ましくは15ppm/℃以下、さらにより好ましくは10ppm/℃以下である。
CTE1は、前述の方法4により測定される。
【0026】
封止用樹脂組成物のガラス転移温度以上の温度における線膨張係数CTE2は、反り抑制の観点から、好ましくは5ppm/℃以上であり、より好ましくは7ppm/℃以上、さらに好ましくは10ppm/℃以上である。
また、反り抑制の観点から、上記CTE2は、好ましくは25ppm/℃以下、さらに好ましくは20ppm/℃以下、さらにより好ましくは16ppm/℃以下である。
CTE2は、前述の方法4に準じて、190℃から230℃までの平均線膨張係数を算出することにより求められる。
【0027】
(スパイラルフロー)
樹脂組成物のスパイラルフローは、成形時の充填性向上の観点から、好ましくは50cm以上であり、より好ましくは70cm以上、さらに好ましくは90cm以上である。
また、成形時の金型からの樹脂漏れ抑制の観点から、樹脂組成物のスパイラルフローは、好ましくは250cm以下であり、より好ましくは230cm以下、さらに好ましくは200cm以下である。
【0028】
樹脂組成物のスパイラルフローは、具体的には以下の方法で測定される。すなわち、樹脂組成物について、低圧トランスファー成形機(具体的には、コータキ精機社製、「KTS-15」)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で各例の樹脂組成物を注入し、流動長(cm)を測定する。
【0029】
(ゲルタイム:GT)
樹脂組成物のゲルタイムは、成形性をより好ましいものとする観点から、好ましくは10秒以上であり、より好ましくは20秒以上、さらに好ましくは30秒以上である。
また、生産性向上の観点から、樹脂組成物のゲルタイムは、好ましくは100秒以下であり、より好ましくは80秒以下、さらに好ましくは60秒以下である。
【0030】
樹脂組成物のゲルタイムは、具体的には以下の方法で測定される。すなわち、175℃の熱板上に樹脂組成物を載せ、スパチュラで約1回/秒のストロークで練り、樹脂組成物が熱により溶解してから硬化するまでに要した時間を測定することによりゲルタイム(秒)を求める。
【0031】
(圧縮成形物の外観)
樹脂組成物の圧縮形型物の外観は、レーザーマーキング性や意匠性をより好ましいものとする観点から、均一な表面外観が良く、圧縮成形物外観評価結果が好ましくは以下△の項目、より好ましくは以下〇の項目である。外観には、樹脂組成物における成分の相溶性が影響していると考えられる。
【0032】
(圧縮成形物の外観の評価方法)
ストリップサイズ成形用の圧縮成形機(TOWA社製PMC)を用いて、240×77.5×0.4mmの42アロイの基板上面に、235×71×0.5mmのサイズとなるよう、樹脂組成物を成形する。成形条件は成形温度150℃、成形時間300秒、成形圧力は10MPaとする。
得られた成形基板の樹脂表面を目視による官能検査により評価する。
〇:表面全体が均一な外観
一例としては、本実施形態では、表面全体が黒色で均一であり、ドット状の変色部や色むら等の外観異常がない状態である。
△:表面の大部分において、均一な外観
一例としては、本実施形態では、表面の大部分が黒色で均一であり、一部にドット状の変色部や色むら等がある状態である。
×:表面の大部分において、''不''均一な外観
一例としては、本実施形態では、表面の大部分において、ドット状の変色部や色むら等がある状態である。
【0033】
(混練後樹脂状態)
樹脂組成物をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)で混練し、混練時の樹脂の硬さを評価した際の混練直後の樹脂の硬さは、製造時のロール、ニーダーまたは押出機等の混練機での混練性を反映しており、柔らかい方が好ましい。つまり、混練性の観点から、前記樹脂の硬さは、好ましくは以下△の項目、より好ましくは以下〇の項目である。
【0034】
(混練後樹脂状態の評価方法)
樹脂組成物をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)で100℃、30rpmの条件で30秒間混練し、混練時の樹脂の硬さを3段階で評価する。
〇:混練直後の樹脂の硬さが柔らかい:ラボプラストミルで混練した際の、最低溶融トルクが0.01N・m以上であり、5.0N・m未満である。
△:混練直後の樹脂の硬さがふつう:ラボプラストミルで混練した際の、最低溶融トルクが5.0N・m以上であり、9.9N・m以下である。
×:混練直後の樹脂の硬さが硬い:ラボプラストミルで混練した際の、最低溶融トルクが10.0N・m以上であり、50.0N・m以下である。
【0035】
次に、封止用樹脂組成物の構成成分について具体例を挙げて説明する。
【0036】
(成分(A))
成分(A)は、エポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂は、たとえば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等に例示されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂;およびオキシラン環含有アシルグリセロールからなる群から選択される1種または2種以上である。
また、成分(A)は、好ましくはオキシラン環含有アシルグリセロールと他のエポキシ樹脂とを含み、より好ましくはオキシラン環含有アシルグリセロールと、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂およびビフェニル型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種とを含む。
【0037】
成形時の収縮を抑制する観点、および、隣接する材料との間の剥離を抑制する観点から、成分(A)は、好ましくはオキシラン環含有アシルグリセロールを含み、より好ましくはエポキシ化大豆油およびエポキシ化亜麻仁油からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
また、成分(A)がオキシラン環含有アシルグリセロールを含むことにより、たとえば、ガラス転移温度以上の温度における線膨張係数CTE2を小さくすることも可能となる。
また、成分(A)がオキシラン環含有アシルグリセロールを含むことにより、たとえば、成分(C)の配合量を高めることも可能となる。
【0038】
ここで、オキシラン環含有アシルグリセロールとは、具体的には、アシルグリセロールを構成するアシル鎖中にオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物のことをいい、さらに具体的には、エポキシ基(オキシラン環)変性アシルグリセロールである。
上記オキシラン環含有アシルグリセロールに対応するアシルグリセロールは、具体的には、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの少なくとも1つである。
オキシラン環含有トリグリセリドに対応するトリグリセリドの一例として、大豆油、亜麻仁油、エノ油、キリ油、オルティシア油(olticia oil)、ベニバナ油、ケシ油、麻油、綿実油、ヒマワリ油、菜種油、高級オレイン系トリグリセリド、燈台草類植物のトリグリセリド、ピーナッツ油、オリーブ油、オリーブ核油、アーモンド油、カポック油、ヘーゼルナッツ油、アプリコット核油、ブナ実油、ルピナス油、トウモロコシ油、ゴマ油、ブドウ種油、ラレマンティア油(lallemantia oil)、ヒマシ油、ニシン油、イワシ油、メンヘーデン油、クジラ油、獣脂およびそれらの誘導体、また、上記トリグリセリドの続く脱水素反応により得られる高級不飽和誘導体のオレフィン系不飽和結合の一部、または、すべてをエポキシ基(オキシラン環)に変性したものが挙げられる。
また、上記のトリグリセリドは、グリセリンを1種または2種以上の脂肪酸でエステル交換した化合物、および、そのエステル交換化合物のオレフィン系不飽和結合の一部、または、すべてをエポキシ基(オキシラン環)に変性したものでもよい。上記脂肪酸の一例としては、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、アラキドン酸、ネルボン酸が挙げられる。
【0039】
また、成分(A)は、たとえば、下記一般式(3)で表される化合物であってもよい。
【0040】
【化1】
【0041】
(上記一般式(3)中、Epは下記式(4)に示す基である。R1、R2'およびR3は、それぞれ独立して1価の有機基、もしくはHである。a、a'、b、b'、cおよびc'は、それぞれ独立して、0以上20以下の整数である。x、x'、y、y'、zおよびz'は、それぞれ独立して0以上5以下の整数であるが、x、x'、y、y'、zおよびz'のうち、少なくとも1つは1以上5以下の整数である。nは0~5の数である。)
【0042】
【化2】
【0043】
式(4)に示したとおり、一般式(3)におけるEpは、エポキシ基(オキシラン環)を含む2価の基である。
一般式(3)において、a、a'、b、b'、cおよびc'は、整数であり、それぞれ独立して、他の樹脂との相溶性向上の観点から、たとえば0以上であり、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、また、たとえば20以下であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。
x、x'、y、y'、zおよびz'は、整数であり、それぞれ独立して、他の樹脂との相溶性向上および反応性の観点から、たとえば0以上であり、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、また、たとえば5以下であり、より好ましくは4以下である。
nは、他の樹脂との相溶性の観点から、たとえば0以上であり、より好ましくは1以上であり、また、たとえば5以下であり、より好ましくは2以下である。
【0044】
一般式(3)において、R1、R2'およびR3は、それぞれ独立して1価の有機基、もしくは、Hである。R1、R2'およびR3は官能基を含んでもよい。上記官能基として、エチレングリコール鎖、フェニル基が挙げられる。また、上記官能基は、カルボキシル基、無水マレイン酸、アミン、ヒドロキシル基等の反応性の官能基であってもよい。
1、R2'およびR3の炭素数は、それぞれ独立して、相溶性の観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは3以上であり、また、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。また、R1、R2'およびR3の好ましい例として、アルキル鎖やエチレングリコール鎖が挙げられる。
【0045】
一般式(3)に示した化合物は、たとえばアルケンの酸化反応を用いる方法で製造することができ、具体的には、不飽和脂肪酸基のオレフィン系二重結合を公知の方法、たとえば、触媒、ヒドロ過酸化アルキルの存在下または過ギ酸、過酢酸等の過酸の存在下で、過酸化水素との反応によりエポキシ化することもできる。
【0046】
樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、成形性向上の観点から、樹脂組成物全体に対し、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
また、成形時の収縮抑制の観点から、樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、樹脂組成物全体に対し、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、さらにより好ましくは6質量%以下である。
【0047】
(成分(B))
成分(B)は、硬化剤である。
硬化剤としては、たとえば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミノ類;
アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;
トリヒドロキシフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;
フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;上記以外のフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等を含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;ならびにカルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
また、成分(B)は、好ましくはフェノールノボラック樹脂、トリスフェニルメタン混合型フェノール樹脂およびビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0048】
樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、硬化特性向上の観点から、樹脂組成物全体に対し、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上である。
また、成形時の流動性や充填性を向上する観点から、樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、樹脂組成物全体に対し、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは7.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、さらにより好ましくは3.0質量%以下である。
【0049】
(成分(C))
成分(C)は、無機充填材である。成分(C)として、たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ;アルミナ;タルク;酸化チタン;窒化珪素;窒化アルミニウムが挙げられる。
成分(C)は、汎用性に優れている観点から、好ましくはシリカを含み、より好ましくはシリカである。
シリカの形状の一例として、溶融球状シリカ等の球状シリカ、破砕シリカが挙げられる。
また、熱伝導性および汎用性に優れている観点から、成分(C)がアルミナを含むことも好ましい。アルミナの形状の一例として、溶融球状アルミナ等の球状アルミナ、破砕アルミナが挙げられる。
【0050】
成分(C)の平均粒径d50は、成形時の収縮抑制の観点から、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上である。
また、成形時の充填性を向上する観点から、成分(C)の平均粒径d50は、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは12μm以下、さらにより好ましくは10μm以下である。
【0051】
ここで、成分(C)の平均粒径d50は、市販のレーザー式粒度分布計(たとえば、島津製作所社製 SALD-7000)で測定したときの平均粒径(個数平均径)である。
【0052】
成分(C)の最大粒径(フィラーカットポイント)は、成形時の流動性や充填性を向上する観点から、好ましくは150μm以下であり、より好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。
また、成分(C)の最大粒径(フィラーカットポイント)は、たとえば3μm以上であってもよい。
【0053】
樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、反り抑制の観点から、樹脂組成物全体に対し、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上である。
また、成形時の流動性や充填性向上の観点から、樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、樹脂組成物全体に対し、たとえば98質量%以下であり、好ましくは97質量%以下、より好ましくは96質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下、さらにより好ましくは92質量%以下である。
【0054】
ここで、上記オキシラン環含有アシルグリセロールが潤滑剤として働くと考えられるため、本実施形態において、成分(A)がオキシラン環含有アシルグリセロールを含有する構成とすることにより、オキシラン環含有アシルグリセロールを含まない樹脂組成物と比較して、成分(C)をよりいっそう高充填とすることができる。
【0055】
樹脂組成物は、成分(A)~(C)以外の成分を含んでもよい。たとえば、樹脂組成物は、硬化促進剤、カップリング剤、離型剤、着色剤、シリコーンおよびその他の添加剤からなる群から選択される1種または2種以上をさらに含んでもよい。
【0056】
(硬化促進剤)
硬化促進剤として、たとえば、成分(A)のエポキシ樹脂と成分(B)の硬化剤との架橋反応を促進させるものを用いることができる。硬化促進剤の一例として、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物;2、3-ジヒドロキシナフタレンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0057】
樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、硬化性を向上する観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。
また、硬化物の製造安定性を高める観点から、樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0058】
(カップリング剤)
カップリング剤は、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、フェニルアミノシラン等のアミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
硬化物の強度および靭性をバランス良く向上する観点から、カップリング剤は、好ましくはシランカップリング剤であり、Si原子に結合するアルキレン基を有するシランカップリング剤であることがより好ましい。
【0059】
樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、硬化性を向上する観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。
また、硬化物の製造安定性を高める観点から、樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下である。
【0060】
離型剤は、たとえば、カルナバワックス等の天然ワックス;酸化ポリエチレンワックス、モンタン酸エステルワックス、1-アルケン(C>10)・マレイン酸無水物の重縮合物とステアリルアルコールとの反応生成物等の合成ワックス;ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類;ならびにパラフィン等から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
樹脂組成物中の離型剤の含有量は、離型性および硬化特性をより好ましいものとする観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0061】
着色剤は、たとえば、カーボンブラック、黒色酸化チタン、ベンガラおよび有機色素等からなる群から選択される1種以上を含む。
樹脂組成物中の着色剤の含有量は、硬化物の外観をより好ましいものとする観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0062】
(シリコーン)
シリコーンとして、ポリエーテル変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルが挙げられる。
樹脂組成物中のシリコーンの含有量は、樹脂組成物全体に対してたとえば0.3~3質量%程度とすることができる。
【0063】
また、その他の添加剤として、たとえば、難燃剤、低応力材、酸化防止剤、イオンキャッチャー等が挙げられる。
樹脂組成物中のその他の添加剤の含有量は、それぞれ、樹脂組成物全体に対してたとえば0.01~10質量%程度とすることができる。
【0064】
次に、樹脂組成物の形状について説明する。
樹脂組成物は、たとえば粒子状またはシート状である。
粒子状の樹脂組成物として、具体的には、タブレット状または粉粒体のものが挙げられる。ここで、樹脂組成物が粉粒体であるとは、粉末状または顆粒状のいずれかである場合を指す。
【0065】
次に、樹脂組成物の製造方法を説明する。本実施形態において、樹脂組成物は、たとえば、上述した各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また、必要に応じて、上記方法における粉砕後にタブレット状に打錠成形して粒子状の樹脂組成物を得てもよい。また、上記方法における粉砕後にたとえば真空ラミネート成形または圧縮成形によりシート状の樹脂組成物を得てもよい。また得られた樹脂組成物について、適宜分散度や流動性等を調整してもよい。
【0066】
ここで、本実施形態において、WIについて上述の条件を満たす封止用樹脂組成物を得るためには、従来技術とは異なる製法上の工夫を施すことが重要であり、たとえば、成分(A)の種類の選択、および、かかる成分(A)と成分(B)および(C)との組み合わせ等が挙げられる。
また、製法上の工夫点としては、たとえば、封止用樹脂組成物に含まれる成分および含有量を調整するとともに、成分(A)の配合量を制御し、製造工程における成分の添加順序、混合条件等を適宜制御することにより、WIが所望の範囲にある封止用樹脂組成物を得ることができる。
【0067】
本実施形態における封止用樹脂組成物は、たとえば電子部品または半導体パッケージの封止に用いることができ、これにより電子装置を得ることができる。また、本実施形態において得られる樹脂組成物は、たとえば、ウェーハレベルパッケージ(WLP)、パネルレベルパッケージ(PLP)またはモールドアンダーフィル(MUF)の成形に好適に用いられる。中でも、Siウェーハ上への成形時の反りを低減するという点において、本実施形態において得られる樹脂組成物は優れているため、ウェーハレベルパッケージ(WLP)用としてさらに好適に用いられる。また、本実施形態によれば、たとえば、封止用樹脂組成物の硬化物を含むウェーハレベルパッケージを得ることもできる。
【0068】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0069】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1~10および比較例1~6)
各例について、表1~表3に示す各成分をミキサーにより混合した。次いで、得られた混合物を、ロール混練した後、冷却、粉砕して粉粒体である樹脂組成物を得た。
【0071】
各例で得られた樹脂組成物またはその硬化物について、WI値、線膨張係数(CTE1およびCTE2)、スパイラルフロー、ゲルタイム、動的弾性率、軟化点、Tg、25℃および260℃における曲げ弾性率、ならびに、25℃および260℃における曲げ強度を測定した。
また、各例で得られた樹脂組成物について、圧縮成形時の外観、混練後の樹脂状態および反り量を評価した。
測定結果および評価結果を表1~表3にあわせて示す。
【0072】
表1~表3中の各成分の詳細は以下のとおりである。
(無機充填材)
無機充填材1:シリカ、TS-6026、日鉄ケミカル&マテリアル社製、平均粒径9.0μm
無機充填材2:シリカ、MUF-4、龍森社製、平均粒径3.8μm
無機充填材3:シリカ、SC-2500-SQ、アドマテックス社製、均粒径0.5μm
無機充填材4:シリカ、SC-5500-SQ、アドマテックス社製、平均粒径1.5μm
無機充填剤5:シリカ、TS12-079-5、日鉄ケミカル&マテリアル社製、平均粒径20.5μm
【0073】
(着色剤)
着色剤1:カーボンブラック、ESR-2001、東海カーボン社製
【0074】
(カップリング剤)
カップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、CF-4083、東レ・ダウコーニング社製
カップリング剤2:γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物、KE-6137、九州住友ベークライト社製
【0075】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:4、4'-ビフェニル型エポキシ樹脂、YX-4000K、三菱ケミカル社製
エポキシ樹脂2:トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂とビフェニル型エポキシ樹脂の混合物、YL6677、三菱ケミカル社製
エポキシ樹脂3:エポキシ化大豆油、O-130P、ADEKA社製
エポキシ樹脂4:ビフェニル型エポキシ樹脂、NC3000L、日本化薬社製
【0076】
(硬化剤)
硬化剤1:HE910-20:トリスフェニルメタン混合型フェノール樹脂、エア・ウォーター社製
硬化剤2:フェノールノボラック樹脂、PR-55617、住友ベークライト社製
硬化剤3:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、MEH-7851SS、明和化成社製
【0077】
(離型剤)
離型剤1:ジエタノールアミン・ジモンタン酸エステル、リコモント TP NC 133、クラリアント社製
離型剤2:ステアリン酸、粉末ステアリン酸さくら、日油社製
【0078】
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:KTM-03、テトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート
硬化促進剤2:KTM-05、テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート
硬化促進剤3:2、3-ジヒドロキシナフタレン、2.3-DON-H、エア・ウォーター社製
硬化促進剤4:トリフェニルホスフィン、PP-360、ケイ・アイ化成社製
【0079】
(シリコーン)
シリコーン1:ポリエーテル変性シリコーンオイル、FZ-3730、ダウ・東レ社製
【0080】
(低応力材)
低応力材1:球状エポキシシリコーンパウダー、DOWSIL EP-2601、ダウ・東レ社製
低応力材2:ジメチルシリコーン、KF-96-500cs、信越化学工業社製
低応力材3:ジメチルシリコーン、KF-96-3,000cs、信越化学工業社製
低応力材4:ジメチルシリコーン、KF-96H-1万cs、信越化学工業社製
低応力材5:グリシジル変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、XER-81P、JSR社製
【0081】
(測定方法および評価方法)
(線膨張係数)
前述の方法4に準じて測定した。すなわち、各例で得られた樹脂組成物を、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で、注入成形し、長辺15mm×短辺4mm×厚さ4mmの試験片を得た。
得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業社製、TMA100)を用いて、圧縮モードで、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定をおこなった。
測定結果から、40℃から80℃までの平均線膨張係数を算出してCTE1[ppm/℃]とし、190℃から230℃までの平均線膨張係数をCTE2[ppm/℃]とした。
【0082】
(圧縮成形外観)
ストリップサイズ成形用の圧縮成形機(TOWA社製PMC)を用いて、240×77.5×0.4mmの42アロイの基板上面に、235×71×0.5mmのサイズとなるよう、樹脂組成物を成形した。成形条件は成形温度150℃、成形時間300秒、成形圧力は10MPaとした。
得られた成形基板の樹脂表面を目視による官能検査により評価した。
評価基準を以下に示す。以下の○および△のものを合格とした。
〇:表面全体が均一な外観
一例としては、本実施例では、表面全体が黒色で均一であり、ドット状の変色部や色むら等の外観異常がない状態である。
△:表面の大部分において、均一な外観
一例としては、本実施例では、表面の大部分が黒色で均一であり、一部にドット状の変色部や色むら等がある状態である。
×:表面の大部分において、''不''均一な外観
一例としては、本実施例では、表面の大部分において、ドット状の変色部や色むら等がある状態である。
【0083】
(混練後樹脂状態)
樹脂組成物をラボプラストミル(東洋精機製作所社製)で110℃、30rpmの条件で30秒間混練し、混練直後の樹脂の硬さを3段階で評価した。以下の○および△のものを合格とした。
評価基準を以下に示す。
〇:混練直後の樹脂の硬さが柔らかい:ラボプラストミルで混練した際の、最低溶融トルクが0.01N・m以上であり、5.0N・m未満である。
△:混練直後の樹脂の硬さがふつう:ラボプラストミルで混練した際の、最低溶融トルクが5.0N・m以上であり、9.9N・m以下である。
×:混練直後の樹脂の硬さが硬い:ラボプラストミルで混練した際の、最低溶融トルクが10.0N・m以上であり、50.0N・m以下である。
【0084】
(スパイラルフロー)
各例で得られた樹脂組成物について、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、「KTS-15」)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で各例の樹脂組成物を注入し、流動長[cm]を測定した。
【0085】
(ゲルタイム:GT)
175℃の熱板上に各例の樹脂組成物を載せ、スパチュラで約1回/秒のストロークで練り、樹脂組成物が熱により溶解してから硬化するまでに要した時間を測定することによりゲルタイム[秒]を求めた。
【0086】
(軟化点)
前述の方法3に従い、JIS K 7244-1に準拠して以下の方法で測定した。
すなわち、各例で得られた樹脂組成物を、トランスファー成形装置を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの成形品を得た。得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して、試験片を得た。
得られた試験片を、動的機械分析(DMA)(「DDV-25GP」A&D company, Ltd.社製)の曲げモードにて、昇温速度5℃/minで30℃~300℃の温度範囲、荷重800g、周波数10Hzで測定した。得られた結果から、40~60℃の接線と弾性率の変化率が最大となる温度の接線との交点を軟化点[℃]とした。
【0087】
(ガラス転移温度:Tgおよび動的弾性率)
トランスファー成形装置を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で、樹脂組成物を注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの成形品を得た。得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して、試験片を得た。得られた試験片を、動的機械分析(DMA)の曲げモードにて、昇温速度5℃/minで30℃~300℃の温度範囲、荷重800g、周波数10Hzで、貯蔵弾性率E'および損失弾性率E''を測定した。得られた結果から、損失正接(tanδ=損失弾性率E''/貯蔵弾性率E')が最大となる温度をガラス転移温度Tgとした。各例の35℃および260℃における貯蔵弾性率E'[GPa]およびTg[℃]を表1~表3に示す。
【0088】
(曲げ弾性率および曲げ強度)
前述の方法2に準じて測定した。すなわち、各例で得られた樹脂組成物を、トランスファー成形装置を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの成形品を得た。得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して、試験片を得た。
得られた試験片の25℃および260℃における曲げ弾性率ならびに25℃および260℃における曲げ強度[N/mm2]をJIS K 6911に準拠して測定した。
【0089】
(WI値)
前述の方法1に従い、各例における樹脂組成物のWI値を下記式(1)に基づき算出した。下記式(1)および(2)における各物性値には、上述の方法で測定された各例の物性値を用いた。
WI(Warpage Index[ppm^3/(N/mm2)^1/4])=F(CTE1,軟化点)^2×(曲げ弾性率(G)^1/4)×10^(-6) (1)
(上記式(1)中、F(CTE1,軟化点)は下記式(2)で表される。それぞれの物性値の単位は、CTE:ppm/℃、曲げ弾性率:N/mm2、成形・冷却温度、軟化点:℃で表される。)
F(CTE1,軟化点)=CTE1×(T成形-T冷却) (2)
【0090】
(反り量の測定)
圧縮成形機を使用し、厚み775μm、直径12インチのシリコンウェーハ上に150℃、300秒で圧縮成形を行った後に、150℃、4時間のPMCをすることで各例の封止用樹脂組成物の500μm厚さの硬化物を得た。得られた硬化物のシリコンウェーハ面が水平な精密石定盤(新潟精機社製、G4560)と接するように硬化物を置き、硬化物の円周部75°、つまり、円を8等分した際の縁8点、の精密石定盤からシリコンウェーハまでの高さを測定し、その8点の平均をウェーハ反り量[mm]とした。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
表1~表3より、各実施例においては、比較例に対して反りが抑制された。
また、表1および表2より、各実施例においては、混練後の樹脂状態および圧縮成形により得られた成形品の外観に優れていた。
【符号の説明】
【0095】
T1 接線
T2 接線
図1