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特開2022-183715銅合金塑性加工材、銅合金棒材、電子・電気機器用部品、端子
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  • 特開-銅合金塑性加工材、銅合金棒材、電子・電気機器用部品、端子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183715
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】銅合金塑性加工材、銅合金棒材、電子・電気機器用部品、端子
(51)【国際特許分類】
   C22C 9/00 20060101AFI20221206BHJP
   C22F 1/08 20060101ALN20221206BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
C22C9/00
C22F1/08 B
C22F1/00 624
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 650A
C22F1/00 661A
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/00 692A
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091161
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】福岡 航世
(72)【発明者】
【氏名】松永 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優樹
(72)【発明者】
【氏名】牧 一誠
(72)【発明者】
【氏名】森川 健二
(72)【発明者】
【氏名】船木 真一
(72)【発明者】
【氏名】森 広行
(57)【要約】
【課題】高い導電率を有するとともに加工性に優れ、かつ、加工を加えた後でも優れた耐熱性を有する銅合金塑性加工材を提供する。
【解決手段】Mgが10massppm超え100massppm以下、残部がCu及び不可避不純物とした組成を有し、前記不可避不純物のうち、Sが10massppm以下、Pが10massppm以下、Seが5massppm以下、Teが5massppm以下、Sbが5massppm以下、Biが5masppm以下、Asが5masppm以下とされるとともに、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計量が30massppm以下とされ、質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が0.6以上50以下の範囲内とされており、導電率が97%IACS以上、引張強度が250MPa以下、断面減少率が25%の引抜加工を加えた後の耐熱温度が150℃以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mgの含有量が10massppm超え100massppm以下の範囲内、残部がCu及び不可避不純物とした組成を有し、前記不可避不純物のうち、Sの含有量が10massppm以下、Pの含有量が10massppm以下、Seの含有量が5massppm以下、Teの含有量が5massppm以下、Sbの含有量が5massppm以下、Biの含有量が5masppm以下、Asの含有量が5masppm以下とされるとともに、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量が30massppm以下とされ、
Mgの含有量を〔Mg〕とし、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量を〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕とした場合に、これらの質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が0.6以上50以下の範囲内とされており、
導電率が97%IACS以上とされ、引張強度が250MPa以下とされており、
断面減少率が25%の引抜加工を加えた後の耐熱温度が150℃以上であることを特徴とする銅合金塑性加工材。
【請求項2】
長手方向に直交する断面の断面積が5mm以上2000mm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の銅合金塑性加工材。
【請求項3】
全伸びが20%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の銅合金塑性加工材。
【請求項4】
Agの含有量が5massppm以上20massppm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の銅合金塑性加工材。
【請求項5】
前記不可避不純物のうち、Hの含有量が10massppm以下、Oの含有量が100massppm以下、Cの含有量が10massppm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の銅合金塑性加工材。
【請求項6】
EBSD法により、長手方向に直交する断面において10000μm以上の測定面積を、0.25μmの測定間隔のステップでCI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とし、Area Fractionにより平均粒径Aを求め、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて各結晶粒の方位差を解析し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした場合のKAM(Kernel Average Misorientation)値の平均値が1.8以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の銅合金塑性加工材。
【請求項7】
長手方向に直交する断面において、(100)面方位の結晶の面積比率が3%以上とされ、(123)面方位の結晶の面積比率が70%以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の銅合金塑性加工材。
【請求項8】
長手方向と直交する断面において、外表面から中心に向けて200μmを超えて1000μmまでの表層領域の結晶粒径が1μm以上120μm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の銅合金塑性加工材。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の銅合金塑性加工材からなり、長手方向に直交する断面の直径が3mm以上50mm以下の範囲内であることを特徴とする銅合金棒材。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載された銅合金塑性加工材からなることを特徴とする電子・電気機器用部品。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載された銅合金塑性加工材からなることを特徴とする端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子等の電子・電気機器用部品に適した銅合金塑性加工材、銅合金棒材、電子・電気機器用部品、端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気導体として種々の分野で銅材が用いられている。近年では、棒材からなる大型端子も用いられている。
ここで、電子機器や電気機器等の大電流化にともない、電流密度の低減およびジュール発熱による熱の拡散のために、これら電子機器や電気機器等に使用される電子・電気機器用部品においては、導電率に優れた無酸素銅等の純銅材が適用されている。
【0003】
近年、電気・電子用部品に用いられる銅線材では通電時の電流量の増大が起きている。その通電時の発熱量の増大や使用環境の高温化に伴い、高温での硬度低下のしにくさを表す耐熱性に優れた銅材が求められている。しかしながら、純銅材においては、高温での強度低下のしにくさを表す耐熱性が不十分であり、高温環境下での使用ができないといった問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、Mgを0.005mass%以上0.1mass%未満の範囲で含む銅圧延板が開示されている。
この特許文献1に記載された銅圧延板においては、Mgを0.005mass%以上0.1mass%未満の範囲で含み、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有しているので、Mgを銅の母相中に固溶させることで、導電率を大きく低下させることなく、強度、耐応力緩和特性を向上させることが可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-056414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では、上述の電子・電気機器用部品を構成する銅材においては、大電流が流された際の発熱を十分に抑制するために、また、純銅材が用いられていた用途に使用可能なように、導電率をさらに向上させることが求められている。
また、上述の大型端子においては、大電流を流すことから、銅棒材の断面積を維持したまま、厳しい塑性加工( 例えば、曲げ加工、ツバ出し加工等) を行うことにより、部品全体の容積の減少を図っている。このため、上述の銅棒材には、優れた加工性が求められている。
【0007】
そして、上述の電子・電気機器用部品は、通電時の発熱や使用環境の高温化に伴い、高温での強度低下のしにくさを表す耐熱性に優れた銅材が求められている。そのため、加工後にも高温環境で使用できる耐熱性に優れた銅合金塑性加工材が求められている。
また、さらに導電率を十分に向上させることにより、従来、純銅材が用いられていた用途においても良好に使用することが可能となる。
【0008】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、高い導電率を有するとともに加工性に優れ、かつ、加工を加えた後でも優れた耐熱性を有する銅合金塑性加工材、銅合金棒材、電子・電子機器用部品、端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、導電率と耐熱性をバランス良く両立させるためには、Mgを微量添加するとともに、Mgと化合物を生成する元素の含有量を規制することが必要であることが明らかになった。すなわち、Mgと化合物を生成する元素の含有量を規制して、微量添加したMgを適正な形態で銅合金中に存在させることにより、従来よりも高い水準で導電率と耐熱性とをバランス良く向上させることが可能となるとの知見を得た。
【0010】
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明の銅合金塑性加工材は、Mgの含有量が10massppm超え100massppm以下の範囲内、残部がCu及び不可避不純物とした組成を有し、前記不可避不純物のうち、Sの含有量が10massppm以下、Pの含有量が10massppm以下、Seの含有量が5massppm以下、Teの含有量が5massppm以下、Sbの含有量が5massppm以下、Biの含有量が5masppm以下、Asの含有量が5masppm以下とされるとともに、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量が30massppm以下とされ、Mgの含有量を〔Mg〕とし、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量を〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕とした場合に、これらの質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が0.6以上50以下の範囲内とされており、導電率が97%IACS以上とされ、引張強度が250MPa以下とされており、断面減少率が25%の引抜加工を加えた後の耐熱温度が150℃以上であることを特徴としている。
【0011】
この構成の銅合金塑性加工材によれば、Mgと、Mgと化合物を生成する元素であるS,P,Se,Te,Sb,Bi,Asの含有量が上述のように規定されているので、微量添加したMgが銅の母相中に固溶することで、導電率を大きく低下させることなく耐熱性を向上させることができ、具体的には導電率を97%IACS以上、かつ、断面減少率が25%の引抜加工を加えた後の耐熱温度を150℃以上とすることができる。
なお、本発明において、耐熱温度は、熱処理時間60分で熱処理した後に、熱処理前の強度Tに対して0.8×Tの強度になる時の熱処理温度である。
また、引張強度が250MPa以下とされているので、加工性に優れており、厳しい塑性加工を行うことが可能となる。
【0012】
ここで、本発明の銅合金塑性加工材においては、長手方向に直交する断面の断面積が5mm以上2000mm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、長手方向に直交する断面の断面積が5mm以上2000mm以下の範囲内とされているので、熱容量が大きくなり、通電発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の銅合金塑性加工材においては、全伸びが20%以上であることが好ましい。
この場合、全伸びが20%以上とされているので、特に加工性に優れており、さらに厳しい塑性加工を行うことができる。
【0014】
さらに、本発明の銅合金塑性加工材においては、Agの含有量が5massppm以上20massppm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、Agを上述の範囲で含有しているので、Agが粒界近傍に偏析し、粒界拡散が抑制され、加工後の耐熱性をさらに向上させることが可能となる。
【0015】
また、本発明の銅合金塑性加工材においては、前記不可避不純物のうち、Hの含有量が10massppm以下、Oの含有量が100massppm以下、Cの含有量が10massppm以下であることが好ましい。
この場合、H,O,Cの含有量が上述のように規定されているので、ブローホール、Mg酸化物、Cの巻き込みや炭化物等の欠陥の発生を低減でき、加工性を低下させることなく、加工後の耐熱性をさらに向上させることが可能となる。
【0016】
さらに、本発明の銅合金塑性加工材においては、EBSD法により、長手方向に直交する断面において10000μm以上の測定面積を、0.25μmの測定間隔のステップでCI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とし、Area Fractionにより平均粒径Aを求め、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて各結晶粒の方位差を解析し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした場合のKAM(Kernel Average Misorientation)値の平均値が1.8以下とされていることが好ましい。
この場合、上述のKAM値の平均値が1.8以下とされているので、加工時に導入された転位(GN転位)の密度が高い領域が少なくなり、伸びを確保することができ、加工性をさらに向上させることができる。また、転位を経路とした原子の高速拡散を抑制でき、回復、再結晶による軟化現象を抑え、加工後の耐熱性をさらに向上させることができる。
【0017】
また、本発明の銅合金塑性加工材においては、長手方向に直交する断面において、(100)面方位の結晶の面積比率が3%以上とされ、(123)面方位の結晶の面積比率が70%以下とされていることが好ましい。
この場合、長手方向に直交する断面において、転位を蓄積しにくい(100)面方位の結晶の面積比率が3%以上確保され、かつ、転位を蓄積しやすい(123)面方位の結晶の面積比率が70%以下に制限されているので、転位密度の増加を抑制することで伸びを確保でき、加工性をさらに向上させることができるとともに、加工後の耐熱性をさらに向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明の銅合金塑性加工材においては、長手方向と直交する断面において、外表面から中心に向けて200μmを超えて1000μmまでの表層領域の結晶粒径が1μm以上120μm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、表層領域の結晶粒径が1μm以上とされているので、粒界を経路とした粒界拡散により原子の高速拡散が起こることを抑制でき、加工後の耐熱性をさらに向上させることができる。一方、表層領域の結晶粒径が120μm以下とされているので、伸びが確保され、さらに加工性を向上させることができる。
【0019】
本発明の銅合金棒材は、上述の銅合金塑性加工材からなり、長手方向に直交する断面の直径が3mm以上50mm以下の範囲内であることを特徴としている。
この構成の銅合金棒材によれば、上述の銅合金塑性加工材からなるため、大電流用途、高温環境下においても、優れた特性を発揮することができる。また、長手方向に直交する断面の直径が3mm以上50mm以下の範囲内とされているので、強度および導電性を十分に確保することができる。
【0020】
本発明の電子・電気機器用部品は、上述の銅合金塑性加工材からなることを特徴としている。
この構成の電子・電気機器用部品は、上述の銅合金塑性加工材を用いて製造されているので、大電流用途、高温環境下においても、優れた特性を発揮することができる。
【0021】
本発明の端子は、上述の銅合金塑性加工材からなることを特徴としている。
この構成の端子は、上述の銅合金塑性加工材を用いて製造されているので、大電流用途、高温環境下においても、優れた特性を発揮することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高い導電率を有するとともに加工性に優れ、かつ、加工を加えた後でも優れた耐熱性を有する銅合金塑性加工材、銅合金棒材、電子・電子機器用部品、端子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態である銅合金塑性加工材の製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の一実施形態である銅合金塑性加工材について説明する。
本実施形態である銅合金塑性加工材は、Mgの含有量が10massppm超え100massppm以下の範囲内とされ、残部がCu及び不可避不純物とした組成を有し、前記不可避不純物のうち、Sの含有量が10massppm以下、Pの含有量が10massppm以下、Seの含有量が5massppm以下、Teの含有量が5massppm以下、Sbの含有量が5massppm以下、Biの含有量が5masppm以下、Asの含有量が5masppm以下とされるとともに、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量が30massppm以下とされている。
【0025】
そして、Mgの含有量を〔Mg〕とし、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量を〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕とした場合に、これらの質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が0.6以上50以下の範囲内とされている。
なお、本実施形態である銅合金塑性加工材においては、Agの含有量が5massppm以上20massppm以下の範囲内であってもよい。
さらに、本実施形態である銅合金塑性加工材においては、前記不可避不純物のうち、Hの含有量が10massppm以下、Oの含有量が100massppm以下、Cの含有量が10massppm以下であってもよい。
【0026】
また、本実施形態である銅合金塑性加工材においては、導電率が97%IACS以上とされ、引張強度が250MPa以下とされている。
そして、本実施形態である銅合金塑性加工材においては、断面減少率が25%の引抜加工を加えた後の耐熱温度が150℃以上とされている。
【0027】
また、本実施形態である銅合金塑性加工材においては、EBSD法により、長手方向に直交する断面において10000μm以上の測定面積を、0.25μmの測定間隔のステップでCI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とし、Area Fractionにより平均粒径Aを求め、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて各結晶粒の方位差を解析し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした場合のKAM(Kernel Average Misorientation)値の平均値が1.8以下であることが好ましい。
【0028】
さらに、本実施形態である銅合金塑性加工材においては、長手方向に直交する断面において、(100)面方位の結晶の面積比率が3%以上とされ、(123)面方位の結晶の面積比率が70%以下とされていることが好ましい。
また、本実施形態である銅合金塑性加工材においては、長手方向と直交する断面において、外表面から中心に向けて200μmを超えて1000μmまでの表層領域の結晶粒径が1μm以上120μm以下の範囲内とされていることが好ましい。
さらに、本実施形態である銅合金塑性加工材においては、長手方向に直交する断面の断面積が5mm以上2000mm以下の範囲内とされていることが好ましい。
また、本実施形態である銅合金塑性加工材は、長手方向に直交する断面の直径が3mm以上50mm以下の範囲内とされた銅合金棒材であってもよい。
【0029】
次に、本実施形態の銅合金塑性加工材において、上述のように成分組成、各種特性、結晶組織、断面積を規定した理由について説明する。
【0030】
(Mg)
Mgは、銅の母相中に固溶することで、導電率を大きく低下させることなく、断面減少率が25%の引抜加工を加えた後であっても耐熱性を向上させる作用効果を有する元素である。
ここで、Mgの含有量が10massppm以下の場合には、その作用効果を十分に奏功せしめることができなくなるおそれがある。一方、Mgの含有量が100massppmを超える場合には、導電率が低下するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Mgの含有量を10massppm超え100massppm以下の範囲内に設定している。
【0031】
なお、加工後の耐熱性をさらに向上させるためには、Mgの含有量の下限を20massppm以上とすることが好ましく、30massppm以上とすることがさらに好ましく、40massppm以上とすることがより好ましい。
また、導電率の低下をさらに抑制するためには、Mgの含有量の上限を90massppm未満とすることが好ましく、80massppm未満とすることがさらに好ましく、70massppm未満とすることがより好ましい。
【0032】
(S,P,Se,Te,Sb,Bi,As)
上述のS,P,Se,Te,Sb,Bi,Asといった元素は、一般的に銅合金に混入しやすい元素である。そして、これらの元素は、Mgと反応し化合物を形成しやすく、微量添加したMgの固溶効果を低減するおそれがある。このため、これらの元素の含有量は厳しく制御する必要がある。
そこで、本実施形態においては、Sの含有量を10massppm以下、Pの含有量を10massppm以下、Seの含有量を5massppm以下、Teの含有量を5massppm以下、Sbの含有量を5massppm以下、Biの含有量を5masppm以下、Asの含有量を5masppm以下に制限している。
さらに、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量を30massppm以下に制限している。
【0033】
なお、Sの含有量は、9massppm以下であることが好ましく、8massppm以下であることがさらに好ましい。
Pの含有量は、6massppm以下であることが好ましく、3massppm以下であることがさらに好ましい。
Seの含有量は、4massppm以下であることが好ましく、2massppm以下であることがさらに好ましい。
Teの含有量は、4massppm以下であることが好ましく、2massppm以下であることがさらに好ましい。
Sbの含有量は、4massppm以下であることが好ましく、2massppm以下であることがさらに好ましい。
Biの含有量は、4massppm以下であることが好ましく、2massppm以下であることがさらに好ましい。
Asの含有量は、4massppm以下であることが好ましく、2massppm以下であることがさらに好ましい。
さらに、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量は、24massppm以下であることが好ましく、18massppm以下であることがさらに好ましい。
【0034】
(〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕)
上述のように、S,P,Se,Te,Sb,Bi,Asといった元素は、Mgと反応して化合物を形成しやすいことから、本実施形態においては、Mgの含有量と、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量との比を規定することで、Mgの存在形態を制御している。
Mgの含有量を〔Mg〕とし、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量を〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕とした場合に、これらの質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が50を超えると、銅中にMgが過剰に固溶状態で存在しており、導電率が低下するおそれがある。一方、質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が0.6未満では、Mgが十分に固溶しておらず、耐熱性が十分に向上しないおそれがある。
よって、本実施形態では、質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕を0.6以上50以下の範囲内に設定している。
【0035】
なお、導電率の低下をさらに抑制するためには、質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕の上限を35以下とすることが好ましく、25以下とすることがさらに好ましい。
また、耐熱性をさらに向上させるためには、質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕の下限を0.8以上とすることが好ましく、1.0以上とすることがさらに好ましい。
【0036】
(Ag:5massppm以上20massppm以下)
Agは、250℃以下の通常の電子・電気機器の使用温度範囲ではほとんどCuの母相中に固溶することができない。このため、銅中に微量に添加されたAgは、粒界近傍に偏析することとなる。これにより粒界での原子の移動は妨げられ、粒界拡散が抑制されるため、加工後の耐熱性が向上することになる。
ここで、Agの含有量が5massppm以上の場合には、その作用効果を十分に奏功せしめることが可能となる。一方、Agの含有量が20massppm以下である場合には、導電率が確保されるとともに製造コストの増加を抑制することができる。
以上のことから、本実施形態では、Agの含有量を5massppm以上20massppm以下の範囲内に設定している。
【0037】
なお、加工後の耐熱性をさらに向上させるためには、Agの含有量の下限を6massppm以上とすることが好ましく、7massppm以上とすることがさらに好ましく、8massppm以上とすることがより好ましい。また、導電率の低下およびコストの増加を確実に抑制するためには、Agの含有量の上限を18massppm以下とすることが好ましく、16massppm以下とすることがさらに好ましく、14massppm以下とすることがより好ましい。
また、Agを意図的に含まずに不純物として含む場合には、Agの含有量が5massppm未満であってもよい。
【0038】
(H:10massppm以下)
Hは、鋳造時にOと結びついて水蒸気となり、鋳塊中にブローホール欠陥を生じさせる元素である。このブローホール欠陥は、鋳造時には割れ、加工時にはふくれ及び剥がれ等の欠陥の原因となる。これらの割れ、ふくれ及び剥がれ等の欠陥は、応力集中して破壊の起点となるため、強度、表面品質を劣化させることが知られている。
ここで、Hの含有量を10massppm以下とすることにより、上述したブローホール欠陥の発生が抑制され、冷間加工性の悪化を抑制することが可能となる。
なお、ブローホール欠陥の発生をさらに抑制するためには、Hの含有量を4massppm以下とすることが好ましく、2massppm以下とすることがさらに好ましい。
【0039】
(O:100massppm以下)
Oは、銅合金中の各成分元素と反応して酸化物を形成する元素である。これらの酸化物は、破壊の起点となるため、加工性が低下し、製造を困難とする。また、過剰なOとMgとが反応することにより、Mgが消費されてしまい、Cuの母相中へのMgの固溶量が低減し、強度や耐熱性、また冷間加工性が劣化するおそれがある。
ここで、Oの含有量を100massppm以下とすることにより、酸化物の生成やMgの消費を抑制し、加工性を向上させることが可能となる。
なお、Oの含有量は、上記の範囲内でも特に50massppm以下とすることが好ましく、20massppm以下とすることがさらに好ましい。
【0040】
(C:10massppm以下)
Cは、溶湯の脱酸作用を目的として、溶解、鋳造において溶湯表面を被覆するように使用されるものであり、不可避的に混入するおそれがある元素である。鋳造時のCの巻き込みにより、Cの含有量が多くなってしまうおそれがある。これらのCや複合炭化物、Cの固溶体の偏析は冷間加工性を劣化させる。
ここで、Cの含有量を10massppm以下とすることにより、Cや複合炭化物、Cの固溶体の偏析が生じることを抑制でき、冷間加工性を向上させることが可能となる。
なお、Cの含有量は、上記の範囲内でも5massppm以下とすることが好ましく、1massppm以下とすることがさらに好ましい。
【0041】
(その他の不可避不純物)
上述した元素以外のその他の不可避的不純物としては、Al,B,Ba,Be,Ca,Cd,Cr,Sc,希土類元素,V,Nb,Ta,Mo,Ni,W,Mn,Re,Ru,Sr,Ti,Os,Co,Rh,Ir,Pb,Pd,Pt,Au,Zn,Zr,Hf,Hg,Ga,In,Ge,Y,Tl,N,Si,Sn,Li等が挙げられる。これらの不可避不純物は、特性に影響を与えない範囲で含有されていてもよい。
ここで、これらの不可避不純物は、導電率を低下させるおそれがあることから、総量で0.1mass%以下とすることが好ましく、0.05mass%以下とすることがさらに好ましく、0.03mass%以下とすることがより好ましく、さらには0.01mass%以下とすることが好ましい。
また、これらの不可避不純物のそれぞれの含有量の上限は、10massppm以下とすることが好ましく、5massppm以下とすることがさらに好ましく、2massppm以下とすることがより好ましい。
【0042】
(引張強度:250MPa以下)
本実施形態である銅合金塑性加工材において、長手方向(伸線方向)に平行な方向における引張強度が250MPa以下である場合には、伸びが確保され、加工性を向上させることができる。
なお、長手方向(伸線方向)に平行な方向における引張強度の上限は、240MPa以下であることがさらに好ましく、230MPa以下であることがより好ましく、220MPa以下であることが最も好ましい。また、長手方向(伸線方向)に平行な方向における引張強度の下限は、100MPa以上とすることが好ましく、120MPa以上とすることがさらに好ましく、140MPa以上とすることがより好ましい。
【0043】
(導電率:97%IACS以上)
本実施形態である銅合金塑性加工材においては、導電率が97%IACS以上とされている。導電率を97%IACS以上とすることにより、通電時の発熱を抑えて、純銅材の代替として端子等の電子・電気機器用部品として良好に使用することが可能となる。
なお、導電率は、97.5%IACS以上であることが好ましく、98.0%IACS以上であることがさらに好ましく、98.5%IACS以上であることがより好ましく、99.0%IACS以上であることがより一層好ましい。
【0044】
(加工後の耐熱温度:150℃以上)
本実施形態である銅合金塑性加工材において、断面減少率が25%の引抜加工を加えた後の耐熱温度が高い場合には、高温でも銅材の回復、再結晶による軟化現象が起きにくいことから、高温環境下で使用される通電部材への適用が可能となる。
このため、本実施形態においては、加工後の耐熱温度が150℃以上とされている。なお、実施形態において、耐熱温度は、熱処理時間60分で熱処理した後に、熱処理前の強度Tに対して0.8×Tの強度になる時の熱処理温度である。
ここで、断面減少率が25%の引抜加工を加えた後の耐熱温度は、175℃以上であることがさらに好ましく、200℃以上であることがより好ましく、225℃以上であることが一層好ましい。
【0045】
(全伸び:20%以上)
本実施形態である銅合金塑性加工材において、全伸びが20%以上である場合には、さらに加工性に優れており、厳しい条件の塑性加工によって部品を成形することが可能となる。
なお、全伸びは、22.5%以上であることがさらに好ましく、25%以上であることがより好ましい。
【0046】
(KAM値の平均値:1.8以下)
EBSDにより測定されるKAM(Kernel Average Misorientation)値は、1つのピクセルとそれを取り囲むピクセル間との方位差を平均値化することで算出される値である。ピクセルの形状は正六角形のため、近接次数を1とする場合(1st)、隣接する六つのピクセルとの方位差の平均値がKAM値として算出される。このKAM値を用いることで、局所的な方位差、すなわちひずみの分布を可視化できる。
【0047】
このKAM値が高い領域は、加工時に導入された転位(GN転位)の密度が高い領域であるため、強度が高くなり、伸びが低下する。また、断面減少率が25%の引抜加工を施した後にはさらに転位密度は増加し、その転位を経路とした原子の高速拡散が起こりやすく、回復、再結晶による軟化現象が起こりやすくなり、耐熱性は低下する。
そのため、このKAM値の平均値を1.8以下に制御することによって、強度を低下させて伸びを向上させ、さらに加工後の耐熱温度を向上させることが可能となる。
なお、KAM値の平均値は、上記の範囲内でも1.6以下であることが好ましく、1.4以下であることがさらに好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.0以下であることが一層好ましい。
【0048】
なお、本実施形態では、EBSD装置の解析ソフトOIM Analysis(Ver.7.3.1)にて測定される値であるCI(Confidence Index)値が0.1以下の測定点を除きKAM値を算出している。CI値はある解析点から得られたEBSDパターンを指数付けする際に、Voting法を用いることで算出され、0から1の値を取る。CI値は指数付けと方位計算の信頼性を評価する値であるため、CI値が低い場合、すなわち解析点の明瞭な結晶パターンが得られない場合には組織中にひずみ(加工組織)が存在しているといえる。特にひずみが大きい場合、CI値が0.1以下の値を取る。
【0049】
((100)面方位の結晶の面積比率:3%以上)
本実施形態である銅合金塑性加工材においては、長手方向(伸線方向)と直交する断面で結晶方位を測定した際に、(100)面方位の結晶の面積比率が3%以上であることが好ましい。なお、本実施形態においては、(100)面から15°までの範囲の結晶方位を(100)面方位とした。
【0050】
(100)面方位を有する結晶粒は他の方位を持つ結晶粒と比較して転位を蓄積しにくいため、(100)面方位の結晶の面積比率を3%以上確保することで、伸びを向上させることが可能となる。また、(100)面は転位を蓄積しにくく、加工による結晶方位の回転が起きにくいため、断面減少率が25%の加工であれば、加工後も(100)面を保つことができ、転位を拡散経路とした高速拡散を抑制し、回復、再結晶による軟化現象を抑制することが可能となり、加工後の耐熱性を向上させることができる。
【0051】
なお、(100)面方位の結晶の面積比率は、4%以上であることがさらに好ましく、6%以上であることがより好ましく、10%以上であることが一層好ましく、20%以上であることがより一層好ましい。一方、(100)面方位の結晶の面積比率が高すぎる場合、同一の結晶方位を持つ結晶粒が増加することから、大角粒界が減少して伸びが低下するおそれがある。このため、(100)面方位の結晶の面積比率は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがさらに好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることが一層好ましい。
【0052】
((123)面方位の結晶の面積比率:70%以下)
本実施形態である銅合金塑性加工材においては、長手方向(伸線方向)と直交する断面で結晶方位を測定した際に、(123)面方位の結晶の面積比率が70%以下であることが好ましい。なお、本実施形態においては、(123)面から15°までの範囲の結晶方位を(123)面方位とした。
【0053】
(123)面方位を有する結晶粒は他の方位を持つ結晶粒と比較して転位を蓄積しやすいため、(123)面方位の結晶の面積比率を70%以下に制限することにより、伸びを向上させることが可能となる。
なお、(123)面方位の結晶の面積比率は、65%以下であることがさらに好ましく、60%以下であることがより好ましく、55%以下であることが一層好ましく、50%以下であることがより一層好ましい。
【0054】
(表層領域の結晶粒径)
本実施形態である銅合金塑性加工材においては、長手方向と直交する断面において、外表面から中心に向けて200μmを超えて1000μmまでの表層領域の結晶粒径が1μm以上とされている場合には、粒界を経路とした粒界拡散による原子の高速拡散が起こることを抑制でき、加工後の耐熱性をさらに向上させることができる。一方、表層領域の結晶粒径が120μm以下とされているので、伸びが確保され、さらに加工性を向上させることができる。
なお、上述の表層領域の結晶粒径は、2μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがより一層好ましい。一方、上述の表層領域の結晶粒径は、100μm以下であることがさらに好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがより一層好ましい。
【0055】
(断面積:5mm以上2000mm以下)
本実施形態である銅合金塑性加工材において、長手方向に直交する断面の断面積が5mm以上2000mm以下の範囲内である場合には、熱容量が大きくなり、大電流を流した場合であっても、通電発熱による温度上昇を抑制することができる。
なお、長手方向に直交する断面の断面積は、6.0mm以上とすることがさらに好ましく、7.5mm以上とすることがより好ましく、10mm以上とすることがより一層好ましい。また、長手方向に直交する断面の断面積は、1800mm以下とすることがさらに好ましく、1600mm以下とすることがより好ましく、1500mm以下とすることがより一層好ましい。
【0056】
次に、このような構成とされた本実施形態である銅合金塑性加工材の製造方法について、図1に示すフロー図を参照して説明する。
【0057】
(溶解・鋳造工程S01)
まず、銅原料を溶解して得られた銅溶湯に、前述の元素を添加して成分調整を行い、銅合金溶湯を製出する。なお、各種元素の添加には、元素単体や母合金等を用いることができる。また、上述の元素を含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。また、本合金のリサイクル材およびスクラップ材を用いてもよい。
ここで、銅原料は、純度が99.99mass%以上とされたいわゆる4NCu、あるいは99.999mass%以上とされたいわゆる5NCuとすることが好ましい。H,O,Cの含有量を上述のように規定する場合には、これらの元素の含有量の少ない原料を選別して使用することになる。具体的には、H含有量が0.5massppm以下、O含有量が2.0massppm以下、C含有量が1.0massppm以下の原料を用いることが好ましい。
【0058】
溶解時においては、Mgの酸化を抑制するため、また水素濃度低減のため、HOの蒸気圧が低い不活性ガス雰囲気(例えばArガス)による雰囲気溶解を行い、溶解時の保持時間は最小限に留めることが好ましい。
そして、成分調整された銅合金溶湯を鋳型に注入して鋳塊を製出する。なお、量産を考慮した場合には、連続鋳造法または半連続鋳造法を用いることが好ましい。
【0059】
(均質化/溶体化工程S02)
次に、得られた鋳塊の均質化および溶体化のために加熱処理を行う。鋳塊の内部には、凝固の過程においてMgが偏析で濃縮することにより発生したCuとMgを主成分とする金属間化合物等が存在することがある。そこで、これらの偏析および金属間化合物等を消失または低減させるために、鋳塊を300℃以上1080℃以下にまで加熱する加熱処理を行うことで、鋳塊内において、Mgを均質に拡散させたり、Mgを母相中に固溶させたりする。なお、この均質化/溶体化工程S02は、非酸化性または還元性雰囲気中で実施することが好ましい。
ここで、加熱温度が300℃未満では、溶体化が不完全となり、母相中にCuとMgを主成分とする金属間化合物が多く残存するおそれがある。一方、加熱温度が1080℃を超えると、銅素材の一部が液相となり、組織や表面状態が不均一となるおそれがある。よって、加熱温度を300℃以上1080℃以下の範囲に設定している。
【0060】
(熱間加工工程S03)
組織の均一化のために、得られた鋳塊を所定の温度まで加熱し、熱間加工を行う。加工方法に特に限定はなく、例えば、引抜、押出、溝圧延等を採用することができる。本実施形では、熱間押出加工を実施している。
また、熱間加工時に発生した酸化膜除去のため、後述の熱処理工程S04の前に、酸洗槽による酸洗工程を行ってもよい。また、棒材の場合、表面欠陥の除去のため、皮むき加工を行ってもよい。
【0061】
なお、熱間加工温度、熱間加工終了温度を高く設定し、その後の冷却速度を高く設定することにより、粒界偏析を低減することができる。冷却速度は、5℃/sec以上であることが好ましく、7℃/sec以上であることがさらに好ましく、10℃/sec以上であることがより好ましい。これにより、後述する熱処理工程S04において、集合組織((100)面方位および(123)面方位の結晶の面積比率)をコントロールすることができる。
ここで、熱間加工温度は、500℃以上であることが好ましく、550℃以上であることがさらに好ましく、600℃以上であることがより好ましい。また、熱間加工終了温度は、400℃以上であることが好ましく、450℃以上であることがさらに好ましく、500℃以上であることがより好ましい。
【0062】
(熱処理工程S04)
熱間加工工程S03後に、熱処理を実施する。
ここで、熱処理温度が300℃未満の場合や保持時間が0.5時間未満の場合には、再結晶が十分に起こらずに、熱間加工工程S03でのひずみが残存することとなり、KAM値が高くなるおそれがある。また、結晶粒径が小さくなりすぎ、かつ、(100)面方位の結晶の面積比率が低くなり、(123)面方位の結晶の面積比率が高くなるおそれがある。一方、熱処理温度が700℃超えの場合や保持時間が24時間超えの場合には、結晶粒径が大きくなり、(100)面方位の結晶の面積比率が高くなりすぎるおそれがある。
そこで、本実施形態においては、熱処理温度は300℃以上700℃以下の範囲内、熱処理温度での保持時間は0.5時間以上24時間以下の範囲内とされていることが好ましい。
【0063】
なお、熱処理温度は、350℃以上であることがさらに好ましく、400℃以上であることがより好ましい。一方、熱処理温度は、650℃以下であることがさらに好ましく、600℃以下であることがより好ましい。また、熱処理温度での保持時間は、0.75時間以上であることがさらに好ましく、1時間以上であることがより好ましい。一方、熱処理温度での保持時間は、18時間以下であることがさらに好ましく、12時間以下であることがより好ましい。
【0064】
また、(100)面方位の結晶の面積比率及び(123)面方位の結晶の面積比率を確実に制御するためには、連続焼鈍による熱処理時の昇温速度は2℃/sec以上であることが好ましく、5℃/sec以上であることがさらに好ましく、7℃/sec以上であることがより好ましい。さらに、降温速度は5℃/sec以上であることが好ましく、7℃/sec以上であることがさらに好ましく、10℃/sec以上であることがより好ましい。
また、含有元素の酸化を減らすために、酸素分圧を10-5atm以下とすることが好ましく、10-7atm以下とすることがさらに好ましく、10-9atm以下とすることがより好ましい。
【0065】
(仕上加工工程S05)
熱処理工程S04後に、強度調整のために仕上加工を行ってもよい。加工法は特に指定しないが棒材の場合は引抜加工、押し出し加工等が挙げられる。さらに棒材の場合は真直化のために抽伸工程を行ってもよい。なお、加工条件は、長手方向の引張強度が250MPa以下となるように適宜調整することになる。
【0066】
このようにして、本実施形態である銅合金塑性加工材(銅合金棒材)が製出されることになる。
【0067】
以上のような構成とされた本実施形態である銅合金塑性加工材においては、Mgの含有量が10massppm超え100massppm以下の範囲内とされ、Mgと化合物を生成する元素であるSの含有量を10massppm以下、Pの含有量を10massppm以下、Seの含有量を5massppm以下、Teの含有量を5massppm以下、Sbの含有量を5massppm以下、Biの含有量を5masppm以下、Asの含有量を5masppm以下、さらに、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量を30massppm以下に制限しているので、微量添加したMgを銅の母相中に固溶させることができ、導電率を大きく低下させることなく、加工後の耐熱性を向上させることが可能となる。
【0068】
そして、Mgの含有量を〔Mg〕とし、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量を〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕とした場合に、これらの質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が0.6以上50以下の範囲内に設定しているので、Mgが過剰に固溶して導電率を低下させることなく、加工後の耐熱性を十分に向上させることが可能となる。
さらに、強度が250MPa以下とされているので、加工性に優れており、厳しい塑性加工を行うことが可能となる。
【0069】
また、本実施形態の銅合金塑性加工材において、長手方向に直交する断面の断面積が5mm以上2000mm以下の範囲内とされている場合には、熱容量が大きくなり、通電発熱により温度上昇を抑制することができる。
さらに、本実施形態の銅合金塑性加工材において、全伸びが20%以上とされている場合には、特に加工性に優れており、さらに厳しい塑性加工を行うことができる。
【0070】
また、本実施形態の銅合金塑性加工材において、Agの含有量が5massppm以上20massppm以下の範囲内とされている場合には、Agが粒界近傍に偏析することになり、このAgによって粒界拡散が抑制され、加工後の耐熱性をさらに向上させることが可能となる。
【0071】
また、本実施形態の銅合金塑性加工材において、不可避不純物のうち、Hの含有量が10massppm以下、Oの含有量が100massppm以下、Cの含有量が10massppm以下とされている場合には、ブローホール、Mg酸化物、Cの巻き込みや炭化物等の欠陥の発生を低減でき、加工性を低下させることなく、加工後の耐熱性を向上させることが可能となる。
【0072】
さらに、本実施形態の銅合金塑性加工材において、EBSD法により、長手方向に直交する断面において10000μm以上の測定面積を、0.25μmの測定間隔のステップでCI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とし、Area Fractionにより平均粒径Aを求め、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて各結晶粒の方位差を解析し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなした場合のKAM(Kernel Average Misorientation)値の平均値が1.8以下とされている場合には、加工時に導入された転位(GN転位)の密度が高い領域が少なくなり、伸びを確保することができ、加工性をさらに向上させることができる。また、転位を経路とした原子の高速拡散を抑制でき、回復、再結晶による軟化現象を抑え、加工後の耐熱性をさらに向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態の銅合金塑性加工材において、長手方向に直交する断面において結晶方位を測定した結果、(100)面方位の結晶の面積比率が3%以上とされ、(123)面方位の結晶の面積比率が70%以下とされている場合には、転位を蓄積しにくい(100)面方位の結晶の面積比率が3%以上確保され、かつ、転位を蓄積しやすい(123)面方位の結晶の面積比率が70%以下に制限されているので、転位密度の増加を抑制することで伸びを確保でき、加工性をさらに向上させることができるとともに、加工後の耐熱性をさらに向上させることができる。
【0074】
さらに、本実施形態の銅合金塑性加工材において、長手方向と直交する断面において、外表面から中心に向けて200μmを超えて1000μmまでの表層領域の結晶粒径が1μm以上とされている場合には、粒界を経路とした粒界拡散により原子の高速拡散が起こることを抑制でき、加工後の耐熱性をさらに向上させることができる。一方、上述の表層領域の結晶粒径が120μm以下とされている場合には、伸びが確保され、さらに加工性を向上させることができる。
【0075】
さらに、本実施形態である銅合金棒材は、上述の銅合金塑性加工材で構成されているので、大電流用途、高温環境下においても、優れた特性を発揮することができる。また、長手方向に直交する断面の直径が3mm以上50mm以下の範囲内とされているので、強度および導電性を十分に確保することができる。
【0076】
さらに、本実施形態である電子・電気機器用部品(端子等)は、上述の銅合金塑性加工材で構成されているので、大電流用途、高温環境下においても、優れた特性を発揮することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態である銅合金塑性加工材、電子・電気機器用部品(端子等)について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、銅合金塑性加工材の製造方法の一例について説明したが、銅合金塑性加工材の製造方法は、実施形態に記載したものに限定されることはなく、既存の製造方法を適宜選択して製造してもよい。
【実施例0078】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
H含有量が0.1massppm以下、O含有量が1.0massppm以下、S含有量が1.0massppm以下、C含有量が0.3massppm以下、Cuの純度が99.99mass%以上の銅原料と、6N(純度99.9999mass%)以上の高純度銅と2N(純度99mass%)以上の純度を有する純金属を用いて作製した各種添加元素を1mass%含む母合金を準備した。
【0079】
銅原料を坩堝内に装入して、Arガス雰囲気あるいはAr-Oガス雰囲気とされた雰囲気炉内において高周波溶解した。
得られた銅溶湯内に、上述の母合金を用いて表1,2に示す成分組成に調製し、H,Oを導入する場合には、溶解時の雰囲気を高純度Arガス(露点-80℃以下)、高純度Nガス(露点-80℃以下)、高純度Oガス(露点-80℃以下)、高純度Hガス(露点-80℃以下)を用いて、Ar-N―HおよびAr-O混合ガス雰囲気とした。Cを導入する場合には、溶解において溶湯表面にC粒子を被覆させ、溶湯と接触させた。
これにより、表1,2に示す成分組成の合金溶湯を溶製し、これをカーボン鋳型に注湯して、鋳塊を製出した。なお、鋳塊の大きさは、直径約80mm、長さ約300mmとした。
【0080】
得られた鋳塊に対して、Arガス雰囲気中において、表3,4に記載の条件で均質化/溶体化工程を実施した。
その後、表3,4に記載の条件(加工終了温度および押出比)で熱間加工(熱間押出)を行い、熱間加工材を得た。なお、熱間加工後は水冷により冷却を行った。
【0081】
得られた熱間加工材を、表3,4に記載の条件で、ソルトバスを使用して熱処理を実施し、冷却を行った。
その後、熱処理後の銅素材を切断するとともに、酸化被膜を除去するために表面研削を実施した。
その後、常温で、表3,4の条件で仕上加工(冷間押出加工)を実施し、本発明例および比較例の銅合金塑性加工材(銅合金棒材)を得た。
【0082】
得られた銅合金塑性加工材(銅合金棒材)について、以下の項目について評価を実施した。
【0083】
(組成分析)
得られた鋳塊から測定試料を採取し、Mgは誘導結合プラズマ発光分光分析法で、その他の元素はグロー放電質量分析装置(GD-MS)を用いて測定した。また、Hの分析は、熱伝導度法で行い、O,S,Cの分析は、赤外線吸収法で行った。
なお、測定は試料中央部と幅方向端部の2カ所で測定を行い、含有量の多い方をそのサンプルの含有量とした。その結果、表1,2に示す成分組成であることを確認した。
【0084】
(引張強度および全伸び)
JIS Z 2201に規定される2号試験片に準拠して試験片を採取し、JIS Z 2241の引張試験方法により、銅合金塑性加工材(銅合金棒材)の長手方向(押出方向)の引張強度、および、全伸びを測定した。長手方向に直交する断面の断面積が450mmを超えた場合は平行部の長さ200mmで試験を行った。
【0085】
(加工後の耐熱温度)
得られた銅合金塑性加工材(銅合金棒材)に対して、常温で、断面減少率25%の引抜加工を実施した。
その後、日本伸銅協会のJCBA T325:2013に準拠して、1時間の熱処理での長手方向(引抜方向)で引張試験による等時軟化曲線を取得することで評価した。
なお、本実施例において、耐熱温度は、熱処理時間60分で熱処理した後に、熱処理前の強度Tに対して0.8×Tの強度になる時の熱処理温度である。
【0086】
(導電率)
JIS H 0505(非鉄金属材料の体積抵抗率及び導電率測定方法)により、導電率を算出した。
【0087】
(KAM値)
銅合金棒材(銅合金塑性加工材)の長手方向(伸線方向)に直交する断面を観察面として、EBSD測定装置およびOIM解析ソフトによって、次のようにKAM値の平均値を求めた。
【0088】
耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。そして、EBSD測定装置(FEI社製Quanta FEG 450,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社) OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM
Data Analysis ver.7.3.1)によって、電子線の加速電圧15kV、10000μm以上の測定面積を、0.25μmの測定間隔のステップでCI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とし、データ解析ソフトOIMを用いてArea Fractionによる平均粒径Aを求めた。
【0089】
その後、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて解析し、隣接するピクセル間の方位差が5°以上である境界を結晶粒界とみなして解析した全ピクセルのKAM値を求め、その平均値を求めた。
【0090】
(集合組織)
銅合金塑性加工材(銅合金棒材)の長手方向(押出方向)に直交する断面を観察面として、EBSD測定装置及びOIM解析ソフトによって、次のように、(100)面方位から15°以内の方位の面積比率、および、(123)面方位から15°以内の方位の面積比率を測定した。
【0091】
最終工程後の銅合金棒材から試験片を採取し、銅合金棒材の長手断面を耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。そして、EBSD測定装置(FEI社製Quanta FEG 450,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社) OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM Data Analysis ver.7.3.1)によって、電子線の加速電圧20kV、直径の1000分の1の長さの測定間隔で、銅合金棒材の長手断面中心を測定範囲の中心として、直径×(直径の5%以上15%以下)の長方形で囲まれた面内の方位を測定した。測定結果の内、CI値が0.1以下である測定点を除いて、Area Fractionにより面積比率を求めた。
【0092】
(表層領域の結晶粒径)
得られた銅合金塑性加工材(銅合金棒材)に対して、長手方向(押出方向)に直交する断面において、外表面から中心に向けて200μmを超えて1000μmまでの表層領域における平均結晶粒径を測定した。
上述の平均結晶粒径、長手方向(押出方向)に直交する断面の中心を通る任意の軸を基準に、軸から円周方向に沿って0°、90°、180°、270°位置にある4点をそれぞれ測定し、4点各所の結晶粒径を平均した。測定は、SEM-EBSD(検出器 HIKARI、分析ソフトウェア TSL OIM Data collection 5.31およびOIM Analysis 6.2)を用い、隣り合う2つの結晶間の配向方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とし、面積で重み付けした加重平均値を結晶粒径とした。視野範囲はx=500μm、y=500μmを計8か所計測した平均値を用いた。また、step size は1μmとした。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
比較例1は、Mgの含有量が本発明の範囲よりも少ないため、加工後の耐熱性が不十分であった。
比較例2は、Mgの含有量が本発明の範囲を超えており、導電率が低くなった。
比較例3は、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量が30massppmを超えており、加工後の耐熱性が不十分であった。
比較例4は、質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が0.6未満であり、加工後の耐熱性が不十分であった。
比較例5は、仕上加工の断面積減少率が高すぎるため、強度が本発明の範囲を超えており、全伸びが低く、加工性に劣っていた。また、加工後の耐熱性が不十分であった。
【0100】
これに対して、本発明例1~20においては、強度が低く、かつ、全伸びが高く、加工性に十分優れていた。また、導電率が高くなった。さらに、加工後の耐熱性にも優れていた。
以上のことから、本発明例によれば、高い導電率を有するとともに加工性に優れ、かつ、加工を加えた後でも優れた耐熱性を有する銅合金塑性加工材を提供可能であることが確認された。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
Mgの含有量が10massppm超え100massppm以下の範囲内、残部がCu及び不可避不純物とした組成を有し、前記不可避不純物のうち、Sの含有量が10massppm以下、Pの含有量が10massppm以下、Seの含有量が5massppm以下、Teの含有量が5massppm以下、Sbの含有量が5massppm以下、Biの含有量が5masppm以下、Asの含有量が5masppm以下とされるとともに、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量が30massppm以下とされ、
Mgの含有量を〔Mg〕とし、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量を〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕とした場合に、これらの質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が0.6以上50以下の範囲内とされており、
導電率が97%IACS以上とされ、引張強度が250MPa以下とされており、
銅合金塑性加工材に対して断面減少率が25%の引抜加工を加えた後、熱処理時間60分で熱処理した後に、熱処理前の強度T に対して0.8×T の強度になる時の熱処理温度が150℃以上であることを特徴とする銅合金塑性加工材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明の銅合金塑性加工材は、Mgの含有量が10massppm超え100massppm以下の範囲内、残部がCu及び不可避不純物とした組成を有し、前記不可避不純物のうち、Sの含有量が10massppm以下、Pの含有量が10massppm以下、Seの含有量が5massppm以下、Teの含有量が5massppm以下、Sbの含有量が5massppm以下、Biの含有量が5masppm以下、Asの含有量が5masppm以下とされるとともに、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量が30massppm以下とされ、Mgの含有量を〔Mg〕とし、SとPとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量を〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕とした場合に、これらの質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が0.6以上50以下の範囲内とされており、導電率が97%IACS以上とされ、引張強度が250MPa以下とされており、銅合金塑性加工材に対して断面減少率が25%の引抜加工を加えた後、熱処理時間60分で熱処理した後に、熱処理前の強度T に対して0.8×T の強度になる時の熱処理温度が150℃以上であることを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
【表2】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
【表4】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
【表6】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
比較例1は、Mgの含有量が本発明の範囲よりも少ないため、加工後の耐熱性が不十分であった。
比較例2は、Mgの含有量が本発明の範囲を超えており、導電率が低くなった
比較例4は、質量比〔Mg〕/〔S+P+Se+Te+Sb+Bi+As〕が0.6未満であり、加工後の耐熱性が不十分であった。
比較例5は、仕上加工の断面積減少率が高すぎるため、強度が本発明の範囲を超えており、全伸びが低く、加工性に劣っていた。また、加工後の耐熱性が不十分であった。