(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183721
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20221206BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 305
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091180
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】西山 晃
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB59
2C056EC11
2C056EC12
2C056EC33
2C056EC67
2C056FA13
2C056JC17
(57)【要約】
【課題】インクジェットヘッドのタイプあるいは配置に関する制約を減らしつつ、インクのミストによる印刷画像の画質低下を抑制する。
【解決手段】用紙を搬送する搬送部2と、搬送部2と対向して搬送部2の上方に配置され、搬送部2による搬送中の用紙にインクを吐出して画像を印刷するインクジェットヘッド31と、用紙に対する画像の印刷について所定条件が成立した場合に、インクジェットヘッド31の下方空間33を通過する用紙が途切れる紙間において、下方空間33の換気動作を実行させる制御部4とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部と対向して前記搬送部の上方に配置され、前記搬送部による搬送中の前記用紙にインクを吐出して画像を印刷するインクジェットヘッドと、
前記用紙に対する画像の印刷について所定条件が成立した場合に、前記インクジェットヘッドの下方空間を通過する前記用紙が途切れる紙間において、前記下方空間の換気風量に関する制御、前記下方空間における前記搬送部と前記インクジェットヘッドとの上下間隔に関する制御、前記紙間の時間長に関する制御、のうち少なくとも1つの制御を実行させる制御部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送部は、前記用紙を静電吸着方式で吸着し搬送する搬送ベルトを有しており、前記制御部は、前記所定条件が成立した場合に、前記換気風量に関する制御として、前記下方空間の内側から外側にエアを吸引して前記下方空間を換気する換気エア発生源を作動させる制御を行う請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定条件が成立した場合に、前記上下間隔に関する制御として、前記搬送部及び前記インクジェットヘッドのうち少なくとも一方の移動により、前記紙間における前記上下間隔を前記紙間以外における前記上下間隔よりも拡げる制御を行う請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送部は、前記用紙をエア吸引方式で吸着し搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトに前記用紙を吸引する吸引用エアを発生させる吸引エア発生源とを有しており、前記制御部は、前記所定条件が成立した場合に、前記換気風量に関する制御として、前記吸引用エアの流速を、前記用紙に対する画像の印刷中における前記吸引用エアの流速とは異なる流速とする制御を行う請求項1又は3に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置において、インクの吐出に伴いインクのミストが発生することが知られている。発生したミストがインクジェットヘッドの周りの空間を浮遊し、インクジェットヘッドのノズル面に付着すると、付着したミスト同士がくっついて成長する。ノズル面で成長したミストが液滴となって、ノズルから吐出されたインクによって画像を印刷する用紙上に落下すると、用紙に印刷された画像の画質を低下させてしまう。
【0003】
特許文献1には、インクジェットプリンタのキャリッジを駆動するモータによりインクジェット式吐出ヘッドとプラテン部材との間に電界を形成させる技術が記載されている。特許文献1の技術では、インクミストを電界によってプラテン部材に吸着させ、プラテン部材の吸収部材に吸収させる。
【0004】
特許文献2には、インクジェットプリンタのヘッドユニットの傾斜したノズル面のうちノズル形成範囲の重力方向上側に撥水性の高い第1領域を形成し、重力方向下側に撥水性の低い第2領域を形成している。特許文献2の技術では、ノズル面に付着したミストに由来する液滴がノズル形成範囲の下側の第2領域で濡れ拡がり、大きな液滴に成長する可能性が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-69645号公報
【特許文献2】特開2020-196191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、キャリッジを持たずライン型のインクジェットヘッドを有するタイプのインクジェットプリンタが適用対象外となる。特許文献2の技術は、ノズル面が傾斜していない場合に、ミストをノズル面の第2領域に誘導するための工夫が必要となる。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、インクジェットヘッドのタイプあるいは配置に関する制約を減らしつつ、インクのミストによる印刷画像の画質低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様による画像形成装置は、
用紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部と対向して前記搬送部の上方に配置され、前記搬送部による搬送中の前記用紙にインクを吐出して画像を印刷するインクジェットヘッドと、
前記用紙に対する画像の印刷について所定条件が成立した場合に、前記インクジェットヘッドの下方空間を通過する前記用紙が途切れる紙間において、前記下方空間の換気風量に関する制御、前記下方空間における前記搬送部と前記インクジェットヘッドとの上下間隔に関する制御、前記紙間の時間長に関する制御、のうち少なくとも1つの制御を実行させる制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクジェットヘッドのタイプあるいは配置に関する制約を減らしつつ、インクのミストによる印刷画像の画質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1の制御部が行うインクジェットヘッドの下方空間の換気動作に関する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図2B】
図2Bは、
図1の制御部が行うインクジェットヘッドの下方空間の換気動作に関する処理の手順の別例を示すフローチャートである。
【
図3A】
図3Aは、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【
図3B】
図3Bは、
図3Aの画像形成装置のインクジェットヘッドと搬送部との上下間隔を拡げた状態を示す説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の第4実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の第5実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の各実施形態の変形例に係る画像形成装置の制御部が行うインクジェットヘッドの下方空間の換気動作に関する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
図1に示す画像形成装置1は、例えば、ライン式のインクジェットプリンタによって構成することができる。画像形成装置1は、インクジェット方式により用紙に画像を形成する。画像形成装置1は、搬送部2、印刷部3及び制御部4を備えている。
【0014】
搬送部2は、不図示の給紙部から給紙された不図示の用紙を、印刷部3の下方を経て不図示の排紙部に搬送する。搬送部2が搬送する用紙は、連続紙ではなくカット紙である。搬送部2は、搬送ベルト21と、プラテンプレート22と、帯電ローラ23と、除電ブラシ24,25と、換気ファン26とを有している。
【0015】
搬送ベルト21は、一対のガイドローラ27,27間に架け渡された無端ベルトを用いて構成することができる。搬送ベルト21には、テンションローラ28により張力が付与される。ガイドローラ27,27のうち一方は、図示しないモータにより駆動される駆動ローラ、他方は従動ローラ(フリーローラ)である。搬送ベルト21は、駆動ローラがモータにより回転されることで回転する。搬送ベルト21のガイドローラ27,27間の部分は、用紙の搬送経路上に位置する。
【0016】
搬送ベルト21は、用紙を搬送方向Aに搬送する。搬送ベルト21で搬送される用紙は、印刷部3の真下を通過する。
【0017】
プラテンプレート22は、搬送ベルト21のガイドローラ27,27間の部分を、裏側から支持する。
【0018】
帯電ローラ23は、給紙部に近い箇所で搬送ベルト21の外周側に位置する表面に当接し、給紙部に近い方のガイドローラ27と共に搬送ベルト21をニップする。帯電ローラ23は、ニップした搬送ベルト21の表面を帯電させる。
【0019】
除電ブラシ24,25は、給紙部側と排紙部側とにそれぞれ設けられている。給紙部側の除電ブラシ24は、給紙部から給紙された用紙を静電吸着した搬送ベルト21の表面に接触し、用紙の画像を印刷する印刷面と、用紙の周囲に露出している搬送ベルト21の表面とを除電する。
【0020】
除電ブラシ24で除電された用紙は、用紙の下に隠れて帯電したままの搬送ベルト21の表面部分に静電吸着される。搬送ベルト21の表面は、用紙と重なった部分を除き、除電ブラシ24によって除電される。用紙の周囲の搬送ベルト21は、除電により帯電していない状態となり、用紙に静電吸着力を及ぼしにくくなる。搬送ベルト21に静電吸着された用紙は、周囲の搬送ベルト21部分からの静電吸着力による位置ずれを起こしにくくなる。
【0021】
搬送ベルト21に静電吸着された用紙は、搬送ベルト21により、印刷面が除電された状態で搬送方向Aに搬送されて、印刷部3の真下を通過する。
【0022】
印刷部3における画像の印刷が終わって印刷部3を通過した用紙は、搬送ベルト21から剥離され、不図示の排紙部に排紙される。
【0023】
排紙部側の除電ブラシ25は、搬送ベルト21から剥離された用紙の搬送ベルト21による吸着面に接触し、搬送ベルト21からの剥離により帯電した用紙の吸着面を除電する。
【0024】
換気ファン26は、印刷部3の後述するインクジェットヘッド31の下方空間33の内側から外側にエアを吸引して下方空間33を換気する換気エア発生源として使用することができる。換気ファン26は、例えば、プラテンプレート22の裏側に配置することができる。プラテンプレート22の裏側に配置した換気ファン26は、プラテンプレート22を挟んで、搬送ベルト21の反対側に配置される。
【0025】
作動中の換気ファン26は、プラテンプレート22の裏側に負圧を発生させる。プラテンプレート22の裏側の空間は、搬送ベルト21の幅方向の外側を介して、搬送ベルト21の印刷部3側の空間と連通している。換気ファン26の作動中には、搬送ベルト21の印刷部3側の空間に存在する空気が、搬送ベルト21の幅方向の外側に回り込み、プラテンプレート22の裏側に吸引される。
【0026】
印刷部3は、搬送ベルト21で搬送される用紙に印刷を行う。印刷部3は、インクジェットヘッド31(プリンタエンジン)を備える。
【0027】
インクジェットヘッド31は、搬送ベルト21の上方に配置されている。インクジェットヘッド31は、搬送方向Aに間隔をおいて配置された色別のヘッドブロック32を有している。
【0028】
各色のヘッドブロック32は、下方の搬送ベルト21によって搬送される用紙と対向する不図示のノズル面を有している。ノズル面は水平方向に延在している。ノズル面には、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)が配置されている。各ノズルは、用紙に印刷する画像を構成するヘッドブロック32に対応する色の分版のパターンで、インクをそれぞれ吐出する。
【0029】
搬送ベルト21に静電吸着された用紙は、インクジェットヘッド31の下方空間33を通過する。下方空間33は、ヘッドブロック32と搬送ベルト21との間の空間で、ヘッドギャップと呼ばれる。各ヘッドブロック32のノズルが吐出したインクは、液滴となって飛翔し、下方空間33を通過する用紙の印刷面に着弾する。用紙に着弾した各色のインクは、印刷面上に各色の分版の画像をそれぞれ形成する。各色の分版の画像を印刷面上に重ねて形成することで、印刷部3は、搬送ベルト21により搬送される用紙の印刷面上に、カラーの画像を印刷することができる。
【0030】
搬送ベルト21に静電吸着された用紙は、除電ブラシ24の接触により印刷面が除電された状態で印刷部3に搬送される。用紙の印刷面が除電されているので、各ヘッドブロック32のノズルから吐出されたインクが用紙の印刷面に残る電荷の影響で本来の位置からずれて用紙に着弾することが抑制される。インクの着弾位置ずれが抑制されることで、印刷画像に乱れが生じることが抑制される。
【0031】
制御部4は、搬送部2及び印刷部3を含む、画像形成装置1の各部の動作を制御する。制御部4は、CPU(Central Processing Unit )及びメモリを含むプロセッサと記憶装置とを備える。メモリは、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。プロセッサは、1又は複数の情報処理回路として機能することができる。
【0032】
本実施形態では、プロセッサが備える情報処理回路をソフトウェアによって実現する例を示すが、もちろん、以下に示す情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、情報処理回路が複数である場合、一部の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0033】
本実施形態では、プロセッサの情報処理回路は、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することで、プロセッサのハードウェア上に仮想的に構築することができる。記憶装置は、アクセス可能な記憶装置として機能する。記憶装置は、例えば、主記憶装置及び補助記憶装置等を備える構成とすることができる。主記憶装置は、例えば、RAMによって構成することができる。補助記憶装置は、例えば、SSD(Solid State Drive )又はHDD(Hard Disk Drive )によって構成することができる。
【0034】
プロセッサの情報処理回路は、具体的には、搬送部2の搬送ベルト21に用紙を静電吸着させて用紙を搬送しつつ、印刷部3のインクジェットヘッド31からインクを吐出させて用紙に画像を印刷するように、画像形成装置1の動作を制御する。
【0035】
インクジェットヘッド31の各ヘッドブロック32のノズルからインクを吐出すると、吐出したインクのミスト34が発生する。発生したミスト34は、ヘッド下空間を浮遊することがある。ヘッド下空間は、例えば、上述したインクジェットヘッド31の下方空間33及び各ヘッドブロック32の周囲の空間を含む、インクジェットヘッド31周りの空間である。
【0036】
ヘッド下空間を浮遊するミスト34がヘッドブロック32のノズル面に付着すると、付着したミスト34同士がくっついて成長し、液滴となってヘッドブロック32の下方の用紙上に落下することがある。ミスト34から成長したインクが用紙に付着すると、用紙に印刷された画像の画質を低下させる要因となる。
【0037】
プロセッサの情報処理回路は、本実施形態では、ヘッド下空間のミスト34がある程度増えて所定条件が成立したと判断した場合に、インクジェットヘッド31の下方空間33の換気動作を換気ファン26に実行させる。情報処理回路は、例えば、用紙に印刷する画像の印字率が基準印字率以上であることで、所定条件が成立したと判断することができる。あるいは、情報処理回路は、用紙に印刷する画像の印字率の積算値が基準積算印字率以上となることで、所定条件が成立したと判断することができる。
【0038】
以下、プロセッサの情報処理回路が行う下方空間33の換気動作に関する処理の手順を、
図2A及び
図2Bのフローチャートを参照して説明する。
【0039】
図2Aの手順では、情報処理回路は、印刷ジョブの実行が開始されると、用紙の1ページの印刷面に画像の印刷を行う度に(ステップS11)、印刷するページの画像の印字率が所定値以上であるか否かを確認する(ステップS13)。
【0040】
画像の印字率とは、用紙のうち余白領域を除いた印刷可能領域に対する実際の画像の印刷部分の割合を示す率のことである。画像の印字率は、例えば、用紙の1ページに画像を印刷するのに用いるインクの、計算上の最大値に対する実際のインクの使用量の割合で表すことができる。画像の印字率は、用紙の1ページの面積に対する画像を印刷した部分の面積の割合で表してもよい。
【0041】
印字率が所定値以上でない場合は(ステップS13でNO)、情報処理回路は、後述するステップS17に処理を移行する。印字率が所定値以上である場合は(ステップS13でYES)、情報処理回路は、ヘッド下空間の換気動作制御を実行し(ステップS15)、ステップS17に処理を移行する。
【0042】
ステップS13での確認に用いる所定値は、上述した基準印字率に対応するもので、印字率に関する特定値とすることができる。この特定値は、例えば、印字率が特定値以上になると、発生するミスト34によって、用紙に印刷する画像に許容範囲を超える画質低下が発生する、目安となる値とすることができる。所定値とする印字率の特定値は、例えば、計算によって求めた推定値であってもよく、実験に基づいて決定した実測値であってもよい。
【0043】
ステップS15の換気動作制御では、情報処理回路は、インクジェットヘッド31の下方空間33を通過する用紙が途切れる紙間において、換気ファン26を作動させる。換気ファン26の作動により、搬送ベルト21の印刷部3側の空間に存在する空気が、搬送ベルト21及びプラテンプレート22の裏側に吸引される。この吸引により、ヘッド下空間の空気を浮遊するミスト34が空気ごと、ヘッド下空間から除去される。
【0044】
情報処理回路は、ステップS15の換気動作制御を、搬送ベルト21に静電吸着された次の用紙の搬送が始まる前の、下方空間33を通過する用紙が途切れる紙間中に終える。
【0045】
換気動作制御を行う時間が、用紙に対する画像の印刷中における紙間の時間長では足りない場合、情報処理回路は、換気動作制御による換気動作中の紙間の時間長を、印刷中の通常の時間長よりも長くする制御を行ってもよい。換気動作中の紙間の時間長は、例えば、換気動作制御の実行によりヘッド下空間のミスト34を除去する間、給紙部から搬送部2への給紙と印刷部3におけるインクの吐出とを中断させることで、印刷中の紙間の時間長よりも長くすることができる。紙間中の搬送ベルト21は回転させたままでよい。
【0046】
紙間を延長して換気動作制御を行う場合、情報処理回路は、換気ファン26の作動を停止させてヘッド下空間の換気動作制御を終了させたら、給紙部から搬送部2への給紙及び印刷部3におけるインクの吐出を再開させる。
【0047】
情報処理回路は、ステップS17において、印刷ジョブによる画像の印刷が全ページ分完了したか否かを確認する。印刷が完了していない場合は(ステップS17でNO)、ステップS11にリターンし、完了した場合は(ステップS17でYES)、一連の処理を終了する。
【0048】
図2Bの手順では、情報処理回路は、印刷ジョブの実行が開始されると、用紙に1ページの画像の印刷を行う度に(ステップS11)、印字率の積算カウントを行う(ステップS12)。印字率の積算カウントでは、情報処理回路は、用紙に印刷される1ページの画像の印字率を求め、求めた印字率を、これまでの印字率の積算カウント値に加算し、積算カウント値を更新する。
【0049】
印字率の積算カウントは、例えば、補助記憶装置の記憶領域の一部を用いたカウンタ領域において行うことができる。情報処理回路は、カウンタ領域に、印字率の積算値をカウント値として記憶させておくことができる。情報処理回路は、カウンタ領域の印字率の積算値を、例えば、後述するステップS15の換気動作制御を実行する度に、ゼロリセットさせることができる。
【0050】
情報処理回路は、ステップS12で更新した印字率の積算カウント値が、印字率に関する所定積算値以上であるか否かを確認する(ステップS14)。
【0051】
印字率が所定積算値以上でない場合は(ステップS14でNO)、情報処理回路は、ステップS17に処理を移行する。印字率が所定積算値以上である場合は(ステップS14でYES)、情報処理回路は、ヘッド下空間の換気動作制御を実行し(ステップS15)、印字率の積算カウント値をゼロリセットさせた後(ステップS16)、ステップS17に処理を移行する。ステップS15の換気動作制御の内容は、
図2AのステップS15の換気動作制御の内容と同じである。
【0052】
ステップS14での確認に用いる印字率に関する所定積算値は、上述した基準積算印字率に対応するもので、印字率の積算カウント値に関する特定値とすることができる。積算カウント値に関する特定値は、例えば、印字率の積算カウント値が積算カウント値に関する特定値以上になると、発生するミスト34によって、用紙に印刷する画像に許容範囲を超える画質低下が発生する、目安となる値とすることができる。所定積算値とする印字率の積算カウント値に関する特定値は、例えば、計算によって求めた推定値であってもよく、実験に基づいて決定した実測値であってもよい。ステップS14での確認に用いる所定積算値は、
図2AのステップS13での確認に用いる所定値と同じ値であってもよい。
【0053】
情報処理回路は、ステップS17において、印刷ジョブによる画像の印刷が全ページ分完了したか否かを確認する。印刷が完了していない場合は(ステップS17でNO)、ステップS11にリターンし、完了した場合は(ステップS17でYES)、一連の処理を終了する。
【0054】
本実施形態の画像形成装置1では、用紙に印刷される画像の印字率を、その画像を印刷するためにノズルから吐出されるインクの量に換算する。換算した吐出インクの量又は積算量が一定の量に達したら、ヘッド下空間を浮遊するミスト34の量が相応の量になったものとして、制御部4がヘッド下空間の換気動作制御を実行する。
【0055】
換気動作制御の実行により、換気ファン26が動作して、ヘッド下空間のミスト34を含む空気がプラテンプレート22の裏側に排出される。この排出により、ヘッド下空間の換気を行ってヘッド下空間のミスト34の量が増えるのを抑制し、ミスト34に由来するインクの付着で用紙の印刷画像の画質が低下するのを抑制することができる。
【0056】
本実施形態の画像形成装置1によるヘッド下空間の換気は、本実施形態のインクジェットヘッド31とはタイプが異なる、例えば、キャリッジを用いて移動させるインクジェットヘッド等を有する画像形成装置でも、実行することができる。また、本実施形態の画像形成装置1による換気は、本実施形態のヘッドブロック32のノズル面とは配置が異なる、例えば、ノズル面を意図的に傾斜させて配置した画像形成装置でも、実行することができる。
【0057】
本実施形態の画像形成装置1では、上述した内容でヘッド下空間の換気を行うことで、インクジェットヘッドのタイプあるいは配置に関する制約を減らしつつ、インクのミスト34による印刷画像の画質低下を抑制することができる。
【0058】
なお、紙間の時間長を十分に長く確保できる場合は、ステップS15の換気動作制御において、換気ファン26を作動させず、搬送ベルト21が回転することで搬送ベルト21の周りに発生する搬送気流によって、ヘッド下空間の換気動作制御を実行してもよい。搬送気流は、インクジェットヘッド31の下方空間33を用紙の搬送方向Aに流れる。この搬送気流により、ヘッド下空間のミスト34を含む空気を搬送方向Aにおける下流側に排出することができる。
【0059】
紙間の時間長を十分に長く確保できる場合は、例えば、画像形成装置1が印刷ジョブを実行していない非印刷動作時を含んでいてもよい。用紙を搬送する必要のない非印刷動作時に、制御部4の情報処理回路が、用紙を静電吸着していない搬送ベルト21を回転させて搬送動作させることで、非印刷動作時に搬送気流によりヘッド下空間の換気動作を行うことができる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置を説明する。第2実施形態に係る画像形成装置は、
図3Aに示すように、
図1に示す第1実施形態の画像形成装置1から換気ファン26を省略し、ヘッドギャップ調整部5を追加している。
【0061】
ヘッドギャップ調整部5は、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を調整する。ヘッドギャップ調整部5は、インクジェットヘッド31と搬送部2とのうち少なくとも一方を他方に対して上下方向に移動させることで、両者の上下間隔を調整することができる。インクジェットヘッド31と搬送部2とのうち少なくとも一方は、ヘッドギャップ調整部5によって上下方向に移動させることができるように、不図示の支持機構によって移動可能に支持されている。
【0062】
搬送部2側を上下方向に移動させる場合、ヘッドギャップ調整部5は、搬送ベルト21よりも印刷部3側に配置された除電ブラシ24を除いて、搬送部2の各要素を一緒に移動させる。インクジェットヘッド31を上下方向に移動させる場合、ヘッドギャップ調整部5は、搬送ベルト21よりも印刷部3側に配置された、除電ブラシ24を含む要素を、インクジェットヘッド31と一緒に移動させる。
【0063】
ヘッドギャップ調整部5は、インクジェットヘッド31と搬送部2とのうち少なくとも一方の移動により、両者の上下間隔を
図3Bに示すように拡げることができる。拡がったインクジェットヘッド31と搬送部2との間には、用紙の搬送方向Aに沿う向きの気流が発生する。この気流は、搬送ベルト21による用紙の搬送気流に由来する。
【0064】
搬送気流は、搬送ベルト21が回転することで、搬送ベルト21の周りに発生する。インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を拡げる前の
図3Aの状態では、発生した搬送気流は、ヘッドブロック32と搬送ベルト21との間の下方空間33を、用紙の搬送方向Aに流れる。
【0065】
ヘッドブロック32と搬送ベルト21とのヘッドギャップは、ノズルから吐出されたインクの用紙までの飛翔距離を短くして用紙に対するインクの着弾位置精度を高めるために、極力短い距離に設定されることが多い。ヘッドギャップの距離が短いことから、下方空間33は、流路抵抗が高く搬送気流が流れにくい。
【0066】
例えば、用紙に対する画像の印刷を行っていないときに、ヘッドギャップ調整部5が、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を拡げると、ヘッドギャップの距離が増えて下方空間33が拡がる。拡がった下方空間33によって形成される換気用の空気流路の流路抵抗は、拡がる前の下方空間33の流路抵抗よりも下がる。流路抵抗が下がった換気用の空気流路には、搬送気流が流れやすくなる。搬送気流が流れやすくなると、搬送気流によるヘッド下空間の換気機能を期待しやすくなる。
【0067】
本実施形態の画像形成装置1では、制御部4のプロセッサの情報処理回路が、下方空間33の換気動作に関する処理の手順を、
図2A又は
図2Bのフローチャートに示す手順で行う。
【0068】
本実施形態では、情報処理回路は、ステップS15の換気動作制御において、ヘッドギャップ調整部5を作動させてインクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を拡げ、その後、ヘッドギャップ調整部5の作動を停止させて、拡げた上下間隔を元に戻す。
【0069】
詳しくは、情報処理回路は、ステップS15の換気動作制御において、インクジェットヘッド31の下方空間33を通過する用紙が途切れる紙間において、換気ファン26を作動させる代わりに、ヘッドギャップ調整部5を作動させる。ヘッドギャップ調整部5の作動により、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔が、紙間以外における例えば印刷中の
図3Aの間隔から
図3Bの間隔に拡がると、両者の間に換気用の空気流路が形成される。
【0070】
ヘッドギャップ調整部5の作動により、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を拡げると、両者間の空気の圧力が下がり、
図3Bに示すように、ヘッドブロック32の周囲から搬送ベルト21側に向かう空気の流れが発生する。この流れによって、ヘッドブロック32の周囲のミスト34を含む空気が、換気用の空気流路に誘導され、搬送気流に合流しやすくなる。
【0071】
換気用の空気流路を流れる搬送気流により、搬送ベルト21の印刷部3側の空間に存在する空気が、不図示の排紙部側に排出される。この排出により、ヘッド下空間の空気を浮遊するミスト34が空気ごと、ヘッド下空間から除去される。
【0072】
情報処理回路は、換気動作の終了後に、ヘッドギャップ調整部5の作動を停止させて、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を、
図3Aに示す、間隔を拡げる前の元の間隔に戻す。
【0073】
インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔をヘッドギャップ調整部5により調整すると、換気動作制御の実行に第1実施形態よりも長い時間を要する場合、情報処理回路は、用紙の搬送及び画像の印刷を中断し紙間を延長して換気動作制御を行ってもよい。用紙の搬送及び画像の印刷を中断し紙間を延長して換気動作制御を行う場合、情報処理回路は、ヘッドギャップ調整部5の作動を停止させてヘッド下空間の換気動作制御を終了させたら、搬送部2による用紙の搬送及び印刷部3による画像の印刷を再開させる。
【0074】
本実施形態の画像形成装置1では、ヘッド下空間の換気動作が、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を拡げて形成した換気用の空気流路を流れる搬送気流によって行われ、ヘッド下空間のミスト34を含む空気が排紙部側に排出される。この排出により、本実施形態の画像形成装置1でも、ヘッド下空間の換気を行ってヘッド下空間のミスト34の量が増えるのを抑制し、ミスト34に由来するインクの付着で用紙の印刷画像の画質が低下するのを抑制することができる。
【0075】
本実施形態の画像形成装置1によるヘッド下空間の換気を行うことでも、第1実施形態の画像形成装置1と同じく、インクジェットヘッドのタイプあるいは配置に関する制約を減らしつつ、インクのミスト34による印刷画像の画質低下を抑制することができる。
【0076】
[第3実施形態]
続いて、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置を説明する。第1及び第2実施形態の画像形成装置1は、いずれも、用紙を搬送ベルト21に静電吸着させて搬送するものであった。
図4に示す第3実施形態の画像形成装置1は、用紙を搬送ベルト21にエア吸引により吸着させて搬送する。
【0077】
本実施形態の画像形成装置1では、
図1に示す第1実施形態の画像形成装置1から、用紙の静電吸着に関係する帯電ローラ23及び除電ブラシ24,25を省略し、換気ファン26に代えて吸引ファン29を設けている。本実施形態の搬送ベルト21及びプラテンプレート22は、それぞれを貫通する多数の吸引孔を有しており、搬送ベルト21は、用紙をエア吸引方式で吸着し搬送する搬送ベルトとして機能する。
【0078】
ヘッドギャップ調整部5は省略してもよく、省略しなくてもよい。ヘッドギャップ調整部5を省略する場合は、インクジェットヘッド31と搬送部2とのうち少なくとも一方の不図示の支持機構も、省略することができる。
【0079】
吸引ファン29は、用紙を吸引する吸引用エアを発生させる吸引エア発生源として使用することができる。吸引ファン29は、プラテンプレート22の裏側に配置することができる。作動中の吸引ファン29は、プラテンプレート22の裏側で負圧を発生させる。この負圧により、搬送ベルト21の上方の空気が搬送ベルト21及びプラテンプレート22の各吸引孔を介してプラテンプレート22の裏側に吸引される。この空気の吸引により、搬送ベルト21上の用紙を搬送ベルト21の表面に吸着することができる。
【0080】
本実施形態の画像形成装置1では、ヘッドギャップ調整部5及び支持機構を省略する場合も、省略しない場合も、制御部4のプロセッサの情報処理回路が、下方空間33の換気動作に関する処理の手順を、
図2A又は
図2Bのフローチャートに示す手順で行う。
【0081】
ステップS15の換気動作制御では、情報処理回路は、例えば、給紙部から搬送部2への給紙と印刷部3におけるインクの吐出とを中断させて、インクジェットヘッド31の下方空間33を通過する用紙が途切れる紙間の時間長を延長する。この延長により、換気動作制御による換気動作中の紙間の時間長は、用紙に対する画像の印刷中における紙間の時間長よりも長くなる。
【0082】
換気動作中の時間長を延長した紙間においては、用紙が存在しない紙間の搬送ベルト21及びプラテンプレート22の吸引孔を介して、印刷部3側の空間に存在する空気が、搬送ベルト21及びプラテンプレート22の裏側に吸引される。この吸引により、ヘッド下空間の空気を浮遊するミスト34が空気ごと、ヘッド下空間から除去される。
【0083】
情報処理回路は、ステップS15の換気動作制御を行う際に、吸引ファン29が発生する負圧(換気用エアの流速)を切り替えてもよい。換気動作中の吸引ファン29の負圧を切り替える場合、切り替え前の負圧(換気用エアの流速)の大きさは、搬送ベルト21上の用紙を吸着するのに適した大きさの吸着圧とすることができる。切り替え後の負圧の大きさは、搬送ベルト21の印刷部3側の空間に存在する空気を、例えば、搬送ベルト21及びプラテンプレート22の吸引孔を介してプラテンプレート22の裏側に吸引するのに適した大きさの換気圧とすることができる。
【0084】
吸着圧は、換気圧よりも低い圧力でもよく、換気圧よりも高い圧力でもよい。吸着圧及び換気圧は、目的に応じた適宜な圧力にそれぞれ設定することができる。換気動作中は、ヘッド下空間の空気がミスト34ごと、搬送ベルト21及びプラテンプレート22の吸引孔を通過する。換気圧は、例えば、搬送ベルト21及びプラテンプレート22の吸引孔における流路抵抗等を考慮して設定することができる。
【0085】
換気動作中の吸引ファン29の負圧を換気圧に切り替える場合は、換気動作中に、印刷部3側の空間に存在する空気を、吸着圧よりも換気に適した圧力で、搬送ベルト21及びプラテンプレート22の吸引孔を介してプラテンプレート22の裏側に吸引できる。
【0086】
ヘッドギャップ調整部5及び支持機構を省略しない場合、情報処理回路は、ステップS15の換気動作制御を行う際に、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を拡げてもよい。両者の上下間隔は、第2実施形態の画像形成装置1と同じく、ヘッドギャップ調整部5によって拡げ、あるいは、拡げた間隔から元の間隔に戻すことができる。
【0087】
ヘッドギャップ調整部5の作動により、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を拡げると、両者間の空気の圧力が下がり、
図3Bに示すように、ヘッドブロック32の周囲から搬送ベルト21側に向かう空気の流れが発生する。この流れによって、ヘッドブロック32の周囲のミスト34を含む空気を搬送ベルト21側に誘導し、搬送ベルト21及びプラテンプレート22の吸引孔を介してプラテンプレート22の裏側に、ミスト34を効率よく吸引することができる。
【0088】
情報処理回路は、換気動作の終了後に、ヘッドギャップ調整部5の作動を停止させて、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を、間隔を拡げる前の
図3Aに示す元の間隔に戻す。
【0089】
情報処理回路は、ステップS15の換気動作制御を行う際に、吸引ファン29の負圧の切り替えと、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を拡げることとを、両方一緒に行ってもよい。
【0090】
本実施形態の画像形成装置1では、ヘッド下空間の換気動作が、紙間を延長して行われる。ヘッド下空間の換気動作では、吸引ファン29が発生する負圧により、ヘッド下空間のミスト34を含む空気が、搬送ベルト21及びプラテンプレート22の吸引孔を通ってプラテンプレート22の裏側に吸引される。この吸引により、本実施形態の画像形成装置1でも、ヘッド下空間の換気を行ってヘッド下空間のミスト34の量が増えるのを抑制し、ミスト34に由来するインクの付着で用紙の印刷画像の画質が低下するのを抑制することができる。
【0091】
本実施形態の画像形成装置1によるヘッド下空間の換気を行うことでも、第1実施形態の画像形成装置1と同じく、インクジェットヘッドのタイプあるいは配置に関する制約を減らしつつ、インクのミスト34による印刷画像の画質低下を抑制することができる。
【0092】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る画像形成装置を説明する。第1~第3実施形態の画像形成装置1は、用紙を静電吸着又はエア吸引により搬送ベルト21に吸着させて搬送するものであった。第4実施形態の画像形成装置1は、用紙を搬送ベルト21に吸着させずに搬送する。
【0093】
図5に示す第4実施形態の画像形成装置1は、
図4に示す第3実施形態の画像形成装置1の吸引ファン29に代えて、
図1に示す第1実施形態の画像形成装置1の換気ファン26を設けた構成を有している。本実施形態の画像形成装置1では、ヘッドギャップ調整部5と、インクジェットヘッド31及び搬送部2の不図示の支持機構とを省略している。本実施形態の画像形成装置1では、用紙をエア吸引方式で搬送ベルト21に吸着し搬送するための、搬送ベルト21及びプラテンプレート22の吸引孔も、省略している。
【0094】
本実施形態の画像形成装置1では、制御部4のプロセッサの情報処理回路が、下方空間33の換気動作に関する処理の手順を、
図2A又は
図2Bのフローチャートに示す手順で行う。
【0095】
本実施形態では、情報処理回路は、ステップS15の換気動作制御において、第1実施形態の画像形成装置1と同じく、インクジェットヘッド31の下方空間33を通過する用紙が途切れる紙間において、換気ファン26を作動させる。換気ファン26の作動により、搬送ベルト21の印刷部3側の空間に存在する空気が、搬送ベルト21及びプラテンプレート22の裏側に吸引される。この吸引により、ヘッド下空間の空気を浮遊するミスト34が空気ごと、ヘッド下空間から除去される。
【0096】
情報処理回路は、ステップS15の換気動作制御を、搬送ベルト21に静電吸着された次の用紙の搬送が始まる前の、下方空間33を通過する用紙が途切れる紙間中に終える。
【0097】
換気動作制御を行う時間が、用紙に対する画像の印刷中における紙間の時間長では足りない場合、情報処理回路は、給紙部から搬送部2への給紙と印刷部3におけるインクの吐出とを中断して、換気動作制御による換気動作中の紙間の時間長を延長させてもよい。
【0098】
本実施形態の画像形成装置1では、ヘッド下空間の換気動作が、換気ファン26により発生し搬送ベルト21の外側を通る気流によって行われ、ヘッド下空間のミスト34を含む空気がプラテンプレート22の裏側に排出される。この排出により、ヘッド下空間の換気を行ってヘッド下空間のミスト34の量が増えるのを抑制し、ミスト34に由来するインクの付着で用紙の印刷画像の画質が低下するのを抑制することができる。
【0099】
本実施形態の画像形成装置1によるヘッド下空間の換気を行うことでも、第1実施形態の画像形成装置1と同じく、インクジェットヘッドのタイプあるいは配置に関する制約を減らしつつ、インクのミスト34による印刷画像の画質低下を抑制することができる。
【0100】
[第5実施形態]
続いて、本発明の第5実施形態に係る画像形成装置を説明する。
図6に示す第5実施形態の画像形成装置1は、
図5に示す第4実施形態の画像形成装置1と同じく、用紙を搬送ベルト21に吸着させずに搬送する。
【0101】
図6に示す本実施形態の画像形成装置1は、
図4に示す第3実施形態の画像形成装置1の吸引ファン29を省略し、その代わりに、ヘッドギャップ調整部5と、インクジェットヘッド31及び搬送部2の不図示の支持機構とを残した構成を有している。
【0102】
本実施形態の画像形成装置1でも、制御部4のプロセッサの情報処理回路が、下方空間33の換気動作に関する処理の手順を、
図2A又は
図2Bのフローチャートに示す手順で行う。
【0103】
本実施形態では、情報処理回路は、ステップS15の換気動作制御において、第2実施形態の画像形成装置1と同じく、紙間においてヘッドギャップ調整部5を作動させる。ヘッドギャップ調整部5の作動により、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔が
図3Bの間隔に拡がると、両者の間に換気用の空気流路が形成される。換気用の空気流路には、搬送ベルト21の周りに発生した用紙の搬送気流が、用紙の搬送方向Aに流れる。
【0104】
インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔が拡がると、両者間の空気の圧力が下がり、ヘッドブロック32の周囲のミスト34を含む空気が、換気用の空気流路に誘導され、搬送気流に合流しやすくなる。
【0105】
換気用の空気流路を流れる搬送気流により、搬送ベルト21の印刷部3側の空間に存在する空気が、不図示の排紙部側に排出される。この排出により、ヘッド下空間の空気を浮遊するミスト34が空気ごと、ヘッド下空間から除去される。
【0106】
情報処理回路は、換気動作の終了後に、ヘッドギャップ調整部5の作動を停止させて、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を、間隔を拡げる前の
図3Aに示す元の間隔に戻す。
【0107】
換気動作制御を行う時間が、用紙に対する画像の印刷中における紙間の時間長では足りない場合、情報処理回路は、給紙部から搬送部2への給紙と印刷部3におけるインクの吐出とを中断して、換気動作制御による換気動作中の紙間の時間長を延長させてもよい。
【0108】
本実施形態の画像形成装置1では、ヘッド下空間の換気動作が、インクジェットヘッド31と搬送部2との上下間隔を拡げて形成した換気用の空気流路を流れる搬送気流によって行われ、ヘッド下空間のミスト34を含む空気が排紙部側に排出される。この排出により、本実施形態の画像形成装置1でも、ヘッド下空間の換気を行ってヘッド下空間のミスト34の量が増えるのを抑制し、ミスト34に由来するインクの付着で用紙の印刷画像の画質が低下するのを抑制することができる。
【0109】
本実施形態の画像形成装置1によるヘッド下空間の換気を行うことでも、第1実施形態の画像形成装置1と同じく、インクジェットヘッドのタイプあるいは配置に関する制約を減らしつつ、インクのミスト34による印刷画像の画質低下を抑制することができる。
【0110】
本実施形態の画像形成装置1に、第4実施形態の換気ファン26を追加してもよい。換気ファン26を追加する場合、制御部4の情報処理回路は、
図2A又は
図2BのステップS15の換気動作制御において、換気ファン26とヘッドギャップ調整部5とを両方とも作動させる。換気ファン26とヘッドギャップ調整部5とが両方作動することで、換気ファン26の負圧による換気と換気用空気流路における搬送気流による換気とを両方一緒に行って、ヘッド下空間のミスト34を含む空気を効率よく換気することができる。
【0111】
[第1~第5実施形態の変形例]
第1~第5実施形態では、用紙に印刷される画像の印字率を、その画像を印刷するためにノズルから吐出されるインクの量に換算し、換算した吐出インクの量又は積算量が一定の量に達したら、制御部4がヘッド下空間の換気動作制御を実行するものとした。制御部4がヘッド下空間の換気動作制御を実行する目安は、用紙に印刷される画像の印字率に限定されない。
【0112】
第1~第5実施形態の変形例として、例えば、画像を印刷した用紙の枚数の積算値である積算印刷枚数を、制御部4がヘッド下空間の換気動作制御を実行する目安にしてもよい。換気動作制御を実行する目安に積算印刷枚数を用いる場合、情報処理回路は、積算印刷枚数として、画像を印刷するために給紙部及び搬送部2が印刷部3に給紙した用紙の給紙枚数をカウントすることができる。情報処理回路は、用紙の給紙枚数の積算値が換気実行枚数以上となることで、所定条件が成立したと判断することができる。
【0113】
換気実行枚数とは、例えば、印刷実行枚数に到達した場合に換気をすぐに実行させるために用いる、通常動作から換気動作に切り替えるためのフラグを立てる条件として定義することができる。このように定義する場合、用紙の給紙枚数の積算値が換気実行枚数以上となると、通常動作から換気動作に切り替えるためのフラグが立つことになる。
【0114】
換気動作制御を実行する目安に給紙枚数を用いる場合、情報処理回路は、印刷ジョブの実行が開始されると、用紙に1ページの画像の印刷を行う度に(ステップS21)、給紙枚数の積算カウントを行う(ステップS22)。給紙枚数の積算カウントでは、情報処理回路は、給紙部及び搬送部2が印刷部3に給紙する用紙の枚数を、例えば、搬送経路上のセンサ等で検出し、検出した用紙の枚数を、これまでの給紙枚数の積算カウント値に加算し、積算カウント値を更新する。
【0115】
給紙枚数の積算カウントは、例えば、第1~第5実施形態の画像形成装置における印字率の積算カウントと同様に、補助記憶装置の記憶領域の一部を用いたカウンタ領域において行うことができる。情報処理回路は、カウンタ領域に、給紙枚数の積算値をカウント値として記憶させておくことができる。情報処理回路は、カウンタ領域の給紙枚数の積算値を、例えば、後述するステップS25の換気動作制御を実行する度に、ゼロリセットさせることができる。
【0116】
情報処理回路は、ステップS22で更新した給紙枚数の積算カウント値が、給紙枚数に関する所定積算値以上であるか否かを確認する(ステップS24)。
【0117】
給紙枚数が所定積算値以上でない場合は(ステップS24でNO)、情報処理回路は、後述するステップS27に処理を移行する。給紙枚数が所定積算値以上である場合は(ステップS24でYES)、情報処理回路は、ヘッド下空間の換気動作制御を実行し(ステップS25)、給紙枚数の積算カウント値をゼロリセットさせた後(ステップS26)、ステップS27に処理を移行する。ステップS25の換気動作制御では、情報処理回路は、第1~第5実施形態の各画像形成装置1において情報処理回路がそれぞれ行った換気動作制御を実行する。
【0118】
ステップS24での確認に用いる給紙枚数に関する所定積算値は、上述した換気実行枚数に対応するもので、給紙枚数の積算カウント値に関する特定値とすることができる。積算カウント値に関する特定値は、例えば、給紙枚数の積算カウント値が積算カウント値に関する特定値以上になると、発生するミスト34によって、用紙に印刷する画像に許容範囲を超える画質低下が発生する、目安となる値とすることができる。所定積算値とする給紙枚数の積算カウント値に関する特定値は、例えば、計算によって求めた推定値であってもよく、実験に基づいて決定した実測値であってもよい。
【0119】
ステップS24での確認に用いる給紙枚数に関する所定積算値は、例えば、クリーニング実行枚数よりも少ない枚数とすることができる。クリーニング実行枚数は、積算印刷枚数である給紙枚数の積算カウント値について、インクジェットヘッド31のクリーニング動作を実行させる条件が成立する値である。例えば、積算印刷枚数が3000枚に達した場合に、インクジェットヘッド31のクリーニング動作の実行条件が成立する場合、ステップS25の換気動作制御は、積算印刷枚数である給紙枚数の積算カウント値が1000枚に達することに実行してもよい。
【0120】
クリーニング実行枚数よりも少ない積算印刷枚数毎に、ヘッド下空間の換気動作制御を行うことで、インクジェットヘッド31の汚れの進行を遅らせて、インクジェットヘッド31のクリーニング動作の実行頻度を少なくすることができる。クリーニング動作の実行頻度を少なくすることで、インクジェットヘッド31のクリーニング動作に用いる例えばワイパ等の消耗品の消耗を遅らせて、消耗品の交換頻度を減らすことができる。
【0121】
情報処理回路は、ステップS27において、印刷ジョブによる画像の印刷が全ページ分完了したか否かを確認する。印刷が完了していない場合は(ステップS27でNO)、ステップS21にリターンし、完了した場合は(ステップS27でYES)、一連の処理を終了する。
【0122】
第1~第5実施形態の変形例の画像形成装置1では、印刷部3に給紙されて画像が印刷される用紙の積算枚数を、その画像を印刷するためにノズルから吐出されるインクの積算量に換算する。換算した吐出インクの積算量が一定の量に達したら、ヘッド下空間を浮遊するミスト34の量が相応の量になったものとして、制御部4がヘッド下空間の換気動作制御を実行する。
【0123】
第1~第5実施形態の変形例の画像形成装置1でも、第1~第5実施形態の画像形成装置1と同じく、インクジェットヘッドのタイプあるいは配置に関する制約を減らしつつ、インクのミスト34による印刷画像の画質低下を抑制することができる。
【0124】
本発明は上記の実施形態のままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。さらに、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0125】
[付記]
以上に説明した実施形態によって、以下に示す態様の発明が開示される。
【0126】
即ち、一つの態様の発明として、
用紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部と対向して前記搬送部の上方に配置され、前記搬送部による搬送中の前記用紙にインクを吐出して画像を印刷するインクジェットヘッドと、
前記用紙に対する画像の印刷について所定条件が成立した場合に、前記インクジェットヘッドの下方空間を通過する前記用紙が途切れる紙間において、前記下方空間の換気風量に関する制御、前記下方空間における前記搬送部と前記インクジェットヘッドとの上下間隔に関する制御、前記紙間の時間長に関する制御、のうち少なくとも1つの制御を実行させる制御部と、
を備える画像形成装置が開示される。
【0127】
また、他の一つの態様の発明として、前記搬送部は、前記用紙を静電吸着方式で吸着し搬送する搬送ベルトを有しており、前記制御部は、前記所定条件が成立した場合に、前記換気風量に関する制御として、前記下方空間の内側から外側にエアを吸引して前記下方空間を換気する換気エア発生源を作動させる制御を行う画像形成装置が開示される。
【0128】
また、他の一つの態様の発明として、前記紙間は、前記インクジェットヘッドが前記用紙に画像を印刷する印刷ジョブが実行されていない非印刷動作時を含み、前記搬送部は、前記用紙を静電吸着方式で吸着し搬送する搬送ベルトを有しており、前記制御部は、前記所定条件が成立した場合に、前記換気風量に関する制御として、前記用紙を吸着していない前記搬送ベルトを前記非印刷動作時に搬送動作させる制御を行う画像形成装置が開示される。
【0129】
さらに、他の一つの態様の発明として、前記制御部は、前記所定条件が成立した場合に、前記上下間隔に関する制御として、前記搬送部及び前記インクジェットヘッドのうち少なくとも一方の移動により、前記紙間における前記上下間隔を前記紙間以外における前記上下間隔よりも拡げる制御を行う画像形成装置が開示される。
【0130】
また、他の一つの態様の発明として、前記搬送部は、前記用紙をエア吸引方式で吸着し搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトに前記用紙を吸引する吸引用エアを発生させる吸引エア発生源とを有しており、前記制御部は、前記所定条件が成立した場合に、前記換気風量に関する制御として、前記吸引用エアの流速を、前記用紙に対する画像の印刷中における前記吸引用エアの流速とは異なる流速とする制御を行う画像形成装置が開示される。
【0131】
さらに、他の一つの態様の発明として、上記の各態様の発明における前記制御部は、前記所定条件が成立した場合に、前記紙間の時間長に関する制御として、前記紙間の時間長を、前記用紙に対する画像の印刷中における前記紙間の時間長よりも長くする制御を行う画像形成装置が開示される。
【0132】
また、他の一つの態様の発明として、上記の各態様の発明における前記所定条件は、前記用紙に印刷する画像の印字率が基準印字率以上であることで成立する画像形成装置が開示される。
【0133】
さらに、他の一つの態様の発明として、上記の各態様の発明における前記所定条件は、前記用紙に印刷する画像の印字率の積算値が基準積算印字率以上となることで成立する画像形成装置が開示される。
【0134】
また、他の一つの態様の発明として、直前に記載した態様を除く他の各態様の発明における前記所定条件は、前記インクジェットヘッドによる前記用紙への画像の積算印刷枚数が換気実行枚数以上となることで成立する画像形成装置が開示される。
【0135】
さらに、他の一つの態様の発明として、前記換気実行枚数は、前記インクジェットヘッドのクリーニング動作を実行させる条件が前記積算印刷枚数について成立するクリーニング実行枚数よりも少ない枚数である画像形成装置が開示される。
【符号の説明】
【0136】
1 画像形成装置
2 搬送部
3 印刷部
4 制御部
5 ヘッドギャップ調整部
21 搬送ベルト
22 プラテンプレート
23 帯電ローラ
24,25 除電ブラシ
26 換気ファン
27 ガイドローラ
28 テンションローラ
29 吸引ファン
31 インクジェットヘッド
32 ヘッドブロック
33 下方空間
34 ミスト
A 搬送方向