(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183726
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】木質材利用カーテンウォール外壁素材構造、木質材利用カーテンウォール外壁構造、木質材利用カーテンウォール外壁構築工法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/92 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
E04B2/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091187
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 勝英
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002NA01
2E002NB01
2E002XA01
(57)【要約】
【課題】木質材をカーテンウォールの外壁として利用し、環境負荷の低減を図る。
【解決手段】
パネル状の木質材2と、この木質材2の少なくとも外面、上面、下面、及び両側面の外面側に位置させた、難燃又は耐火性であり、かつ対雨性を有する外面被覆部4と、木質材2の内面側に位置させた内面被覆部6と、木質材2と外面被覆部4および内面被覆部6の間に位置させた防水材5と、木質材2の複数個所において木質材2を外面側から貫通して木質材2の内面側に延在し、木質材の荷重を支承する支承材10と、を有し、支承材10は、カーテンウォールの支持ファスナーに対して固定可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状の木質材と、
この木質材の少なくとも外面、上面、下面、及び両側面の外面側に位置させた、難燃又は耐火性であり、かつ対雨性を有する外面被覆部と、
前記木質材の内面側に位置させた内面被覆部と、
前記木質材の複数個所において木質材を外面側から貫通して木質材の内面側に延在し、木質材の荷重を支承する支承材と、を有し、
前記支承材は、カーテンウォールの支持ファスナーに対して固定可能である、
ことを特徴とする木質材利用カーテンウォール外壁素材構造。
【請求項2】
前記木質材は、複数枚のひき板を繊維方向が直交するように積層して接着した木質材である請求項1記載の木質材利用カーテンウォール外壁素材構造。
【請求項3】
前記木質材と前記外面被覆部および前記内面被覆部との間に防水材部を有する請求項1記載の木質材利用カーテンウォール外壁素材構造。
【請求項4】
パネル状の木質材と、
この木質材の少なくとも外面、上面、下面、及び両側面の外面側に位置させた、難燃又は耐火性であり、かつ対雨性を有する外面被覆部と、
前記木質材の内面側に位置させた内面被覆部と、
前記木質材の複数個所において木質材を外面側から貫通して木質材の内面側に延在し、木質材の荷重を支承する支承材と、を有し、
前記支承材は、カーテンウォールの支持ファスナーに対して固定されている、
ことを特徴とする木質材利用カーテンウォール外壁構造。
【請求項5】
前記木質材と前記外面被覆部および前記内面被覆部との間に防水材部を有する請求項4記載の木質材利用カーテンウォール外壁構造。
【請求項6】
前記木質材の外面の外側に位置された被覆部の外面側に化粧材が設けられている請求項4又は5項に記載の木質材利用カーテンウォール外壁構造。
【請求項7】
前記化粧材が木材である請求項6記載の木質材利用カーテンウォール外壁構造。
【請求項8】
前記木質材の上面、下面及び両側面のうち少なくとも隣接する2つの面の被腹部の外面に対して、その被覆部に対向する部材との間の止水化を図る止水部が設けられている請求項4~7のいずれか1項に記載の木質材利用カーテンウォール外壁構造。
【請求項9】
前記木質材は、複数枚のひき板を繊維方向が直交するように積層して接着した木質材である請求項4~8のいずれか1項に記載の木質材利用カーテンウォール外壁構造。
【請求項10】
パネル状の木質材と、
この木質材の少なくとも外面、上面、下面、及び両側面の外面側に位置させた、難燃又は耐火性であり、かつ対雨性を有する外面被覆部と、
前記木質材の内面側に位置させた内面被覆部と、
前記木質材と前記外面被覆部および前記内面被覆部の間に位置させた防水材と、
前記木質材の複数個所において木質材を外面側から貫通して木質材の内面側に延在し、木質材の荷重を支承する支承材と、を有する外壁部材を、
建築物の躯体側に設けたカーテンウォールの支持ファスナーに対して、前記支承材を固定することにより、建築物の外壁を構築することを特徴とする木質材利用カーテンウォール外壁構築工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質材利用カーテンウォール外壁素材構造、木質材利用カーテンウォール外壁構造、木質材利用カーテンウォール外壁構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
(高層)建築物の外壁には、カーテンウォール構造が汎用されている。
カーテンウォールは、建物自体の荷重を負担しない耐力壁以外の内部と外部の空間をカーテンのように仕切る壁であり、地震や台風などの外力に対して十分な耐力を持ち、上下階に変位が生じても、外壁が脱落、破損することなく追従する。カーテンウォールの素材又はユニットは工場で製造され、ファスナーと呼ばれる取付金物を用いて建物に取り付けられる。
【0003】
カーテンウォールの外壁としては、例えばガラスカーテンウォールと呼ばれる全面ガラス張りの外壁、ハニカムアルミパネル、チタンパネル、セラミックパネル、PC(プレキャスト)カーテンウォールなどがある。
【0004】
これらは概して環境負荷が大きい材料である。
本発明者は、環境負荷の低減、天然材料の有効利用などの観点から、カーテンウォールの外壁に木質材を利用することに着眼した。
【0005】
他方、近年、木質材の利用について着目され、木質材そのもののほか、他の部材との複合材として利用することも指向されている。
例えば、強度を高めたCLTを利用することが指向されている、CLTとは、Cross Laminated Timberの略で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質材である。
【0006】
CLTについては種々の応用があり、その例として特許文献1などを挙げることができる。
しかし、本発明者は、CLTなどの木質材をカーテンウォールの外壁として利用することの先行技術について情報を得ていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の主たる目的は、CLTなどの木質材をカーテンウォールの外壁として利用し、環境負荷の低減を図ることができる木質材利用カーテンウォール外壁素材構造、木質材利用カーテンウォール外壁構造、木質材利用カーテンウォール外壁構築工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する手段として、以下の態様を含む。
<第1の態様>
パネル状の木質材と、
この木質材の少なくとも外面、上面、下面、及び両側面の外面側に位置させた、難燃又は耐火性であり、かつ対雨性を有する外面被覆部と、
前記木質材の内面側に位置させた内面被覆部と、
前記木質材の複数個所において木質材を外面側から貫通して木質材の内面側に延在し、木質材の荷重を支承する支承材と、を有し、
前記支承材は、カーテンウォールの支持ファスナーに対して固定可能である、
ことを特徴とする木質材利用カーテンウォール外壁素材構造。
【0010】
<第2の態様>
パネル状の木質材と、
この木質材の少なくとも外面、上面、下面、及び両側面の外面側に位置させた、難燃又は耐火性であり、かつ対雨性を有する外面被覆部と、
前記木質材の内面側に位置させた内面被覆部と、
前記木質材の複数個所において木質材を外面側から貫通して木質材の内面側に延在し、木質材の荷重を支承する支承材と、を有し、
前記支承材は、カーテンウォールの支持ファスナーに対して固定されている、
ことを特徴とする木質材利用カーテンウォール外壁構造。
【0011】
<第3の態様>
パネル状の木質材と、
この木質材の少なくとも外面、上面、下面、及び両側面の外面側に位置させた、難燃又は耐火性であり、かつ対雨性を有する外面被覆部と、
前記木質材の内面側に位置させた内面被覆部と、
前記木質材と前記外面被覆部および前記内面被覆部の間に位置させた防水材部と、
前記木質材の複数個所において木質材を外面側から貫通して木質材の内面側に延在し、木質材の荷重を支承する支承材と、を有する外壁部材を、
建築物の躯体側に設けたカーテンウォールの支持ファスナーに対して、前記支承材を固定することにより、建築物の外壁を構築することを特徴とする木質材利用カーテンウォール外壁構築工法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、CLTなどの木質材をカーテンウォールの外壁として利用し、環境負荷の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】外壁構造材の一例を示す室外側からの正面図である。
【
図2】外壁構造材の一例を示す室内側からの裏面図である。
【
図6】実施形態2の外壁構造材を示す部分分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
(外壁構造材(木質材耐火性カーテンウォール))
図1~
図4は、木質材耐火壁を構成する外壁構造材の一例を示す図である。
外壁構造材1は、例えば4枚のひき板などの単位木質材3を、繊維方向が直交するように積層接着したパネル状の(CLT)木質材2と、木質材2の外面と側面を(他の材料層を介して間接に又は)直接に覆うように形成された被覆部4と、木質材2の裏面を(他の材料層を介して間接に又は)直接に覆うように形成された内面被覆部6と、を有する。
図1において、外壁構造材1の形状は平面視正方形、長方形状など適宜の形状とすることができる。また、外壁構造材1の大きさも特に限定されるものではない。
なお、本発明の木質材耐火壁は、建築物のカーテンウォール外壁に使用されることを想定して作成されたものであり、外壁構造材1は、表側が建造物の外側、裏側が建造物の内側となるように配置される。
【0015】
単位木質材3は、例えば木材又は集成材からなる板状部材である。
集成材としては、複数の平面視略長方形状のひき板(ラミナ)が、長辺を互いに接触接合されてなる配向板が含まれる。
単位木質材3は3枚以上9枚以下であることが好ましい。2枚以下では、十分な強度が得られず、10枚以上では、嵩張り過ぎ取り扱いが困難となる傾向がある。
単位木質材3の厚さが1cm以上3.6cm以下であることが好ましい。1cm未満では、十分な強度が得られず、3.6cm超では、嵩張り過ぎて取り扱いが困難となることがある。
単位木質材3が難燃薬剤注入木材であることが好ましい。これにより、耐火性をより高められる。
【0016】
「木質材」
複数の単位木質材3を積層接着した木質材2を備える。木質材2は、単位木質材が積層接着された部材である。
木質材2がCLT(Cross Laminated Timber)であり、前記CLTは、複数の配向板が配向の向きが互いに直交するように積層接着されてなり、前記配向板は、複数の平面視略長方形状のひき板(ラミナ)が、長辺を互いに接触接合されてなることが好ましい。これにより、強度をより高められる。
【0017】
木質材2の外面は防水処理により防水材部5を形成することが好ましい。これにより、防水性をより高め、例えば被覆部の形成にモルタル材料などを使用する場合、その被覆部中の水分が木質材2へ侵入することを妨げ、木質材2の耐久性を向上させることができる。
この防水処理としては、各種撥水材の塗布、アスファルト防水、シート防水、塗膜防水等の防水材によるもの、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、無機系等の塗料が塗布したものなどを使用することもできる。
【0018】
「外面被覆部」、「内面被覆部」
木質材2の外面、下面及び両側面、好ましくは上面についても、外面被覆部4を備える。外面被覆部4は、難燃又は耐火性材料であり、かつ対雨性を有する材料で形成される。これにより外壁構造材1の難燃又は耐火性、ならびに対雨性を高めることができる。
ここで、難燃又は耐火性材料としては、建築基準法施行令第107条に適合するものが望ましい。
【0019】
さらに、木質材2の裏面に内面被覆部6を備えている。
内面被覆部6としては、対雨性を必ずしも要求されないが、対雨性を有する又は有しない難燃又は耐火性材料を使用できる。
【0020】
外面被覆部4の難燃・耐火材料としては、例えば繊維補強モルタルあるいは鉄筋等で補強されたモルタルであることが好ましい。これにより、木質材2の外面、下面、両側面、上面にかけて難燃・耐火材料により覆うことができ、耐久性を確保しながら難燃・耐火性を向上することができる。
内面被覆部6は、繊維補強モルタルあるいは鉄筋等で補強されたモルタルのほか、強化石膏ボードを使用することもできる。強化石膏ボードは木質材2の裏面に容易に取り付けることができ、耐火性を高められる。
ちなみに、外面被覆部4として例えば石膏ボード材料などで形成した場合、雨に晒される外壁の条件では、水分を吸収したりすることにより強度が低下する。したがって、対雨性が必要となる。
【0021】
繊維補強モルタルの繊維としては、ガラス繊維(GRC)、炭素繊維(CFRC)、ポリプロピレン樹脂繊維、鋼繊維(SFRC)、ステンレス繊維などを挙げることができる。
外面被覆部4の外面と側面(下面及び上面を含む)は止水部材7を設けることが望ましい。これにより、雨水の浸入や、火災時における外から放水に対して、外壁構造材より内方の材料への防護を図ることができる。
【0022】
「防水材部」
木質材2と外面被覆部4および内面被覆部6の間には、防水材部5が形成されている。
このように、木質材2の外面は防水処理することが好ましい。これにより、防水性をより高め、例えば被覆部の形成にモルタル材料などを使用する場合、その被覆部中の水分が木質材2へ侵入することを妨げ、木質材2の耐久性を向上させることができる。
【0023】
「被覆部固定部材」
また、木質材2に被覆部固定部材9が取り付けられて、外面被覆部4の固定・一体化がなされている。これにより、取り扱いがし易い外壁構造材1とすることができる。
被覆部固定部材9としては、例えばコーチボルトなどを挙げることができる。コーチボルトの頭部を外面被覆部に埋設するようにし、外面被覆部4の固定、剥落を防止できる。
図1では、木質材2の外面側の4隅に被覆部固定部材9を取り付けるとともに、各側面の2隅に被覆部固定部材9を取り付けて、外面被覆部4と木質材2の一体化を図っているが、被覆部固定部材9の数、打ち込み位置はこれに限られるものではない。
図3、4は、被覆部固定部材9の数、打ち込み位置が異なる別の実施形態を示す。これらの図に示すように、被覆部固定部材9の数を増やし、多数打ち込むことが好ましい。これにより、より固定を安定化でき、一体化できる。
【0024】
「荷重支承支承材及びファスナー」
木質材2の複数個所において、木質材2を外面側から貫通して木質材2の内面側に延在し、木質材の荷重を支承する支承材10を有する。
【0025】
支承材10は、例えば頭部が六角などの形状を有し、木質材2の外面の座刳り溝内に入り込み、外面側から貫通して木質材2の内面側に延在し、その先端には連結プレート10aが一体している。
【0026】
さらに、連結プレート10aは、例えばその周囲において溶接などにより取付荷重受けファスナー8と一体化されている。
【0027】
取付荷重受けファスナー8は、(高層)建築物の躯体側に設けた、例えば鉄骨梁や柱に固定したカーテンウォールの支持ファスナー20に係止、溶接、ボルト連結などにより連結され、カーテンウォール外壁が構築される。
図1では、外壁構造材1の取付荷重受けファスナー8の数は4つだが、外壁構造材1の大きさなどに応じて適宜、その数を決定すればよい。また耐火性能を有する部分から飛び出している荷重受けファスナー部は、鉄骨造で用いる公知の耐火被覆材により被覆することで、耐火性能を有するようにできる。
【0028】
「止水部」
外面被覆部4における、少なくとも隣接する2つの面の被腹部の外面に、地震時等の建物変形に追従しながら止水性能も保つことができる止水部7が設けられており、止水部7としては例えば止水ゴムである。この止水部7としては、4周全体に設けるほか、少なくとも隣接する面(側面と上面又は下面)に設けて、隣接する外壁との間で等圧を確保することにより止水を図ることもできる。なお、止水部7の一部に止水性能を阻害しない程度の切欠部などを有していてもよい。
外壁構造材1を例えば
図5に示すように、左右及び上下に隣接させたとき、外壁構造材1間からの水の侵入を妨げることができる。CWはカーテンウォール外壁を示す。
【0029】
(実施形態2)
図6は、実施形態2の外壁構造材21を示す一部断面斜視分解図である。
外壁構造材21は、外面被覆部4の外面に化粧材11を設けたほかは、実施形態1の外壁構造材1と同一の構成を備える。
仕上げ材として木質系の化粧材11を使用することにより、外部から木質を把握でき、外壁としての美観性を向上させることができるとともに、環境負荷の少ない材料を使用している建築物であることを強調できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の外壁構造材及び木質材耐火壁は、軽く、取り扱いやすいという木質材の特性を生かしつつ、十分な強度、耐火性、止水性を有するものなので、木質系の(高層)建築物の構造材(木質材耐火性カーテンウォール)として活用が期待できる。
【符号の説明】
【0031】
1…外壁構造材、2…木質材、3…単位木質材、4…外面被覆部、5…防水材部、6…内面被覆部、7…止水部材、8…取付荷重受けファスナー、9…被覆部固定部材(コーチボルト)、10…支承材、11…化粧材、21…外壁構造材。