(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183733
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電気光学装置、電子機器、およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13363 20060101AFI20221206BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221206BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20221206BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G02F1/13363
G02B5/30
G03B21/14 Z
G03B21/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091202
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】春山 明秀
(72)【発明者】
【氏名】青木 透
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
2K203
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB05
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA03
2H149DA04
2H149DA05
2H149DA12
2H149EA02
2H149FA01Y
2H149FA41Y
2H291FA11X
2H291FA11Z
2H291FA14Y
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA29Z
2H291FA30X
2H291FA30Y
2H291FA30Z
2H291FA31Z
2H291FA40X
2H291FA40Z
2H291FA56X
2H291FA56Y
2H291FA56Z
2H291FA62Y
2H291FA85Z
2H291FA86Z
2H291FA87Z
2H291FB02
2H291FB12
2H291FD10
2H291FD12
2H291FD26
2H291FD27
2H291FD29
2H291FD35
2H291GA01
2H291GA08
2H291HA11
2H291LA07
2H291LA22
2H291MA13
2H291PA04
2H291PA08
2H291PA09
2H291PA24
2H291PA42
2H291PA65
2H291PA68
2H291PA73
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA43
2K203FA62
2K203GB05
2K203GB08
2K203GB20
2K203GB26
2K203HA10
2K203HA33
2K203HA43
2K203HA65
2K203HA79
2K203HB08
2K203HB09
2K203HB22
2K203HB25
2K203HB26
2K203MA02
(57)【要約】
【課題】液晶分子の配向の乱れるによる影響を緩和しつつ、コントラスト比の低下を抑制することができる電気光学装置、電子機器、およびプロジェクターを提供すること。
【解決手段】電気光学装置1では、第1偏光素子51、第1位相差素子61、透過型の液晶パネル100、第2位相差素子62、および第2偏光素子52が順に配置されている。ここで、第1位相差素子61、および第2位相差素子62の位相差がλ/4である場合、液晶分子の配向の乱れるによる影響を緩和できる一方、コントラスト比が低下する。それ故、入射光の波長をλとしたとき、第1位相差素子61、および第2位相差素子62の位相差Rを以下の条件とする。例えば、位相差Rをλ/8とする。
0<R<λ/4
好ましくは、λ/12<R<λ/6
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1偏光素子と、
第2偏光素子と、
前記第1偏光素子と前記第2偏光素子との間に配置された液晶パネルと。
前記第1偏光素子と前記液晶パネルとの間に配置された第1位相差素子と、
前記液晶パネルと前記第2偏光素子との間に配置された第2位相差素子と、
を有し、
前記液晶パネルへの入射光の波長をλとしたとき、前記第1位相差素子および前記第2位相差素子は各々、以下の条件
0<R<λ/4
を満たす位相差Rを有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置において、
前記位相差Rは、以下の条件
λ/12<R<λ/6
を満たすことを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気光学装置において、
前記第1位相差素子および前記第2位相差素子は各々、λ/8の位相差Rを有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記第1位相差素子および前記第2位相差素子は各々の遅相軸が直交または略直交していることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記第1偏光素子と前記液晶パネルとの間に配置された第1λ/2位相差素子と、
前記第2偏光素子と前記液晶パネルとの間に配置された第2λ/2位相差素子と、
を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気光学装置において、
前記第1位相差素子と前記第1λ/2位相差素子とは一体の光学素子として構成され、
前記第2位相差素子と前記第2λ/2位相差素子とは一体の光学素子として構成されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記第1位相差素子および前記第2位相差素子は各々、無機材料からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項1から6までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記第1位相差素子および前記第2位相差素子は各々、有機材料からなることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記第1位相差素子および前記第2位相差素子は各々、前記液晶パネルに固定されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記第1位相差素子および前記第2位相差素子の少なくとも一方は、光の入射側の面および光の出射側の面のうち、空気と接する面に反射防止層が設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記第1位相差素子と前記第2位相差素子との間に光学補償素子を備えていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気光学装置において、
前記液晶パネルは、第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置された液晶層と、前記第1基板および前記第2基板のうちの少なくとも一方に形成されたレンズアレイと、を備え、
前記光学補償素子は、前記レンズアレイよりも光出射方向の位置にあることを特徴とする電気光学装置。
【請求項13】
請求項1から12までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記第1位相差素子および前記第2位相差素子を、前記第1偏光素子から前記液晶パネルを経由して前記第2偏光素子に至る光路上に位置する第1状態と前記光路から外れた第2状態とに切り替える切り替え機構を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項14】
請求項1から12までの何れか一項に記載の電気光学装置において、
前記第1位相差素子および前記第2位相差素子を、前記第1偏光素子から前記液晶パネルを経由して前記第2偏光素子に至る光路上に回転させる切り替えを有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項15】
請求項1から14までの何れか一項に記載の電気光学装置を有することを特徴とする電子機器。
【請求項16】
光源と、
前記光源からの光を変調し画像を生成する電気光学装置と、
前記電気光学装置で生成された画像を投射する投射光学系と、
前記画像の投射位置をシフトさせる光路シフト素子と、を備え、
前記電気光学装置は、
第1偏光素子と、第2偏光素子と、前記第1偏光素子と前記第2偏光素子との間に配置された液晶パネルと、前記第1偏光素子と前記液晶パネルとの間に配置された第1位相差素子と、前記液晶パネルと前記第2偏光素子との間に配置された第2位相差素子と、を有し、
前記液晶パネルへの入射光の波長をλとしたとき、前記第1位相差素子および前記第2位相差素子は各々の位相差Rは、0<R<λ/4であることを特徴とするプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、電子機器、およびプロジェクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透過型の電気光学装置は、一対の偏光素子と、一対の偏光素子の間に配置された透過型の液晶パネルとを有しており、入射側の偏光素子を透過した直線偏光の光を液晶パネルに入射させた後、液晶パネルから出射された光のうち、出射側の偏光素子を透過した光を表示に用いる。かかる電気光学装置に関し、入射側の偏光素子と液晶パネルとの間、および出射側の偏光素子と液晶パネルとの間の各々にλ/4位相差素子を配置し、液晶分子の配向方向と偏光素子の偏光軸とが成す角度が45°からずれたときに生じる変調特性の低下を防止することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、入射側の偏光素子と液晶パネルとの間、および出射側の偏光素子と液晶パネルとの間の各々にλ/4位相差素子を配置し、液晶パネルへの入射光を円偏光とすると、液晶パネルに入射した光が配線の側面等で反射した際の位相変化によって光漏れが発生し、コントラスト比が低下しやすくなる。それ故、従来技術では、液晶分子の配向の乱れによる影響を緩和しつつ、コントラスト比の低下を抑制することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置は、第1偏光素子と、第2偏光素子と、前記第1偏光素子と前記第2偏光素子との間に配置された液晶パネルと、前記第1偏光素子と前記液晶パネルとの間に配置された第1位相差素子と、前記液晶パネルと前記第2偏光素子との間に配置された第2位相差素子と、を有し、前記液晶パネルへの入射光の波長をλとしたとき、前記第1位相差素子および前記第2位相差素子は各々、以下の条件
0<R<λ/4
を満たす位相差Rを有することを特徴とする。
【0006】
本発明に係る電気光学装置は、スマートフォン、モバイルコンピューター、投射型表示装置等の電子機器に用いることができる。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るプロジェクターは、光源と、前記光源からの光を変調し画像を生成する電気光学装置と、前記電気光学装置で生成された画像を投射する投射光学系と、前記画像の投射位置をシフトさせる光路シフト素子と、を備え、前記電気光学装置は、第1偏光素子と、第2偏光素子と、前記第1偏光素子と前記第2偏光素子との間に配置された液晶パネルと、前記第1偏光素子と前記液晶パネルとの間に配置された第1位相差素子と、前記液晶パネルと前記第2偏光素子との間に配置された第2位相差素子と、を有し、前記液晶パネルへの入射光の波長をλとしたとき、前記第1位相差素子および前記第2位相差素子は各々の位相差Rは、0<R<λ/4であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置に用いた液晶パネルの一態様を示す平面図。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の断面を模式的に示す説明図。
【
図3】
図2に示す電気光学装置の液晶分子等を模式的に示す説明図。
【
図4】本発明の参考例1に係る電気光学装置の説明図。
【
図5】本発明の参考例2に係る電気光学装置の説明図。
【
図6】
図2に示す電気光学装置の画像の品位と位相差素子の位相差との関係を示すグラフ。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る電気光学装置の説明図。
【
図8】本発明の第2実施形態の変形例に係る電気光学装置の説明図
【
図9】本発明の第3実施形態に係る電気光学装置の説明図。
【
図10】本発明の第3実施形態の変形例1に係る電気光学装置の説明図。
【
図11】本発明の第3実施形態の変形例1に係る電気光学装置の説明図。
【
図12】本発明の第4実施形態に係る電気光学装置の説明図。
【
図13】本発明の第4実施形態の変形例1に係る電気光学装置の説明図。
【
図14】本発明の第5実施形態に係る電気光学装置の説明図。
【
図15】本発明の第6実施形態に係る電気光学装置の説明図。
【
図16】本発明の第7実施形態に係る電気光学装置の説明図。
【
図17】本発明を適用した電気光学装置を用いたプロジェクターの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、以下の説明では、光学軸等の方向や向きを説明するにあたって、液晶パネル100を第2基板20側からみたときに液晶パネル100にフレキシブル配線基板105が接続している側を時計の6時方向とし、液晶パネル100にフレキシブル配線基板105が接続している側とは反対側を時計の0時方向とし、右方向を時計の3時方向とし、左方向を時計の9時方向として説明する。
【0010】
1.第1実施形態
1-1.電気光学装置の構成
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置1に用いた液晶パネル100の一態様を示す平面図であり、電気光学装置1を第2基板20側からみた様子を示してある。
図2は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の断面を模式的に示す説明図である。
【0011】
図1および
図2に示すように、本形態の電気光学装置1は、第1偏光素子51と、第2偏光素子52と、第1偏光素子51と第2偏光素子52との間に配置された液晶パネル100を有している。また、電気光学装置1は、第1偏光素子51と液晶パネル100との間に配置された第1位相差素子61と、液晶パネル100と第2偏光素子52との間に配置された第2位相差素子62とを有している。
【0012】
液晶パネル100は、素子基板としての第1基板10と、対向基板としての第2基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、第1基板10と第2基板20とが対向している。シール材107は第2基板20の外縁に沿うように枠状に設けられており、第1基板10と第2基板20との間でシール材107によって囲まれた領域に液晶層5が配置されている。
【0013】
第1偏光素子51と第2偏光素子52とは、互いの偏光軸が90°の角度を成すクロスニコルに配置されており、液晶パネル100は、後述する液晶分子5aの配向方向Pが第1偏光素子51および第2偏光素子52の偏光軸に対して45°の角度を成すように構成される。第1偏光素子51の偏光軸と第2偏光素子52の偏光軸とが成す角度は90°に限らず、製造上の公差等を考慮すると、90°±5°の範囲内の角度であればよい。また、第1偏光素子51および第2偏光素子52の偏光軸と配向方向Pとが成す角度は45°に限らず、製造上の公差等を考慮すると、45°±5°の範囲内の角度であればよい。
【0014】
第1位相差素子61は、遅相軸が第1偏光素子51の偏光軸に対して45°の角度を成すように配置され、第2位相差素子62は、遅相軸が第2偏光素子52の偏光軸に対して45°の角度を成すように配置されている。従って、第1位相差素子61、および第2位相差素子62は、各々の遅相軸が平行、略平行、直行あるいは略直交となるように配置される。本形態において、第1位相差素子61、および第2位相差素子62は、各々の遅相軸が直交あるいは略直交となるように配置されている。
【0015】
1-2.液晶パネル100の詳細構成
液晶パネル100において、第1基板10および第2基板20はいずれも四角形である。液晶パネル100の略中央において、表示領域10aは、時計の3時-9時方向の寸法が0時-6時方向の寸法より長い長方形の領域として設けられており、表示領域10aは、周辺領域10bで囲まれている。
【0016】
第1基板10の基板本体19は、石英やガラス等の屈折率異方性を有しない透光性基板からなり、基板本体19から第1配向膜16までが第1基板10に相当する。基板本体19の第2基板20側の面である一方面19sの側において、表示領域10aの外側には、第1基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。端子102には、フレキシブル配線基板105が接続されており、第1基板10には、フレキシブル配線基板105を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0017】
基板本体19の一方面19sの側において、表示領域10aには、ITO(Indium Tin Oxide)膜等からなる透光性の複数の画素電極9a、および複数の画素電極9aの各々に電気的に接続する画素スイッチング素子30がマトリクス状に形成されている。また、基板本体19と画素電極9aとの間に積層された複数の絶縁膜13の層間に配線17が設けられる。画素電極9aに対して第2基板20側には第1配向膜16が形成されており、画素電極9aは、第1配向膜16によって覆われている。
【0018】
第2基板20の基板本体29は、石英やガラス等の屈折率異方性を有しない透光性基板からなり、基板本体29から第2配向膜26までが第2基板20に相当する。基板本体29の第1基板10側の面である一方面29sの側には、ITO膜等からなる透光性の共通電極21が形成されており、共通電極21に対して第1基板10側には第2配向膜26が形成されている。共通電極21は、第2基板20の略全面に形成されている。共通電極21に対して第1基板10とは反対側には、金属または金属化合物等からなる遮光性の遮光層28、および透光性の平坦化層24が形成されている。遮光層28は、例えば、表示領域10aの外周縁に沿って延在する額縁状の見切り28aとして形成されている。遮光層28は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた領域と平面視で重なる領域にブラックマトリクスとして形成されることもある。
【0019】
本形態において、第1基板10の周辺領域10bのうち、見切り28aと平面視で重なる領域には、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9bが形成されている。
【0020】
第1基板10には、シール材107より外側において第2基板20の角部分と重なる領域に、第1基板10と第2基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通用電極109が形成されている。基板間導通用電極109には、導電粒子を含んだ基板間導通材109aが配置されており、第2基板20の共通電極21は、基板間導通材109aおよび基板間導通用電極109を介して、第1基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、第1基板10の側から共通電位が印加されている。
【0021】
画素電極9aおよび共通電極21がITO膜等の透光性導電層により形成されており、電気光学装置1は、透過型電気光学装置として構成されている。かかる電気光学装置1では、第1基板10および第2基板20のうち、一方側の基板から入射した光が他方側の基板を透過して出射される間に変調されて画像を表示する。本形態では、矢印Lで示すように、第2基板20から入射した光が第1基板10を透過して出射される間に液晶層5によって画素毎に変調され、画像を表示する。
【0022】
1-3.防塵用の透光性基板の構成
図2に示すように、電気光学装置1を後述する投射型表示装置のライトバルブ等として使用する場合、第2基板20の基板本体29の第1基板10とは反対側の他方面29tには、防塵用の第1透光板41が接着剤等によって接合されている。第1基板10の基板本体29の第2基板20とは反対側の他方面19tには、防塵用の第2透光板42が接着剤等によって接合されている。従って、液晶パネル100に直接、塵等の異物が付着することがないので、異物が画像に映り込むことを抑制することができる。第1透光板41および第2透光板42は各々、石英やガラス等の屈折率異方性を有しない基板からなる。
【0023】
1-4.液晶層5等の構成
図3は、
図2に示す電気光学装置1の液晶分子5a等を模式的に示す説明図である。
図3に示すように、第1配向膜16および第2配向膜26は、SiO
x(x≦2)、TiO
2、MgO、Al
2O
3等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜である。従って、第1配向膜16および第2配向膜26は、カラムと称せられる柱状体16a、26aが第1基板10および第2基板20に対して斜めに形成された柱状構造体層からなる。それ故、第1配向膜16および第2配向膜26は、液晶層5に用いた負の誘電率異方性を備えた液晶分子5aを第1基板10および第2基板20に対して斜め傾斜配向させ、液晶分子5aにプレチルトを付している。
【0024】
ここで、画素電極9aと共通電極21との間に電圧を印加しない状態で、第1基板10および第2基板20に対して垂直な方向と液晶分子5aの長軸方向(配向方向)とがなす角度がプレチルト角θpである。本実施形態において、プレチルト角θpは、例えば5°である。
【0025】
このようにして、電気光学装置1は、VA(Vertical Alignment)モードの電気光学装置として構成されている。かかる電気光学装置1では、画素電極9aと共通電極21との間に電圧が印加されると、液晶分子5aは、点線で示すように、第1基板10および第2基板20に対する傾き角が小さくなる方向に変位する。かかる変位の方向がいわゆる明視方向である。本形態においては、
図1に示すように、液晶分子5aの配向方向P(明視方向)は、平面視において、時計の4時30分の方向から10時30分に向かう方向である。
【0026】
1-5.第1位相差素子61および第2位相差素子62の構成等
図4は、本発明の参考例1に係る電気光学装置の説明図である。
図5は、本発明の参考例2に係る電気光学装置の説明図である。
図6は、
図2に示す電気光学装置1の画像の品位と位相差素子の位相差Rとの関係を示すグラフである。
図4および
図5において、第1偏光板51の偏光軸、第1位相差層61の遅相軸、液晶パネル100における液晶分子の配向方向、第1位相差層62の遅相軸、および第1偏光板51の偏光軸を各々点線の矢印で示し、光の偏光状態等は実線の矢印で示してある。
【0027】
本形態において、第1位相差素子61および第2位相差素子62は、例えば、無機材料からなる。第1位相差素子61および第2位相差素子62としては、水晶やサファイア等の複屈折性結晶を用いることができる。また、第1位相差素子61および第2位相差素子62は各々、透光性基板に形成された斜方蒸着膜によって構成することもできる。
【0028】
第1位相差素子61および第2位相差素子62は、有機材料によって構成されることもある。より具体的には、第1位相差素子61および第2位相差素子62は、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルフォン、ポリシクロオレフィン等の有機ポリマーの延伸や光配向によって異方性を付与したシート部材によって構成されることもある。この場合、第1位相差素子61および第2位相差素子62は各々、透光性基板に貼付された状態で用いられる。
【0029】
本形態において、第1位相差素子61および第2位相差素子62は各々、液晶パネル100への入射光の波長をλとしたとき、以下の条件
0<R<λ/4
好ましくは、λ/12<R<λ/6
を満たす位相差Rを有する。例えば、第1位相差素子61および第2位相差素子62は各々、λ/8の位相差Rを有する。
【0030】
以下、
図4、
図5および
図6を参照して、位相差Rについて説明する。第1位相差素子61および第2位相差素子62が存在しない場合、
図4に示すように、第1偏光素子51から出射された第1直線偏光が液晶パネル100に入射する。ここで、画素が、黒表示に対応するオフ状態である場合、液晶パネル100からは第1直線偏光の光が出射されるので、第2偏光素子52からは出射さない。
【0031】
これに対して、画素が、白表示に対応するオン状態にある場合、液晶パネル100から第2直線偏光の光が出射され、かかる第2直線偏光の光は、第2偏光素子52から出射される。
【0032】
その際の出射光量Iは、以下の式で示される。
I=I0・sin2(2θ)・sin2(n・Δnd/λ) ・・式(1)
I0=入射光量
θ=液晶層の配向方向と偏光素子の偏光軸とが成す角度
n=液晶層の屈折率
Δnd=液晶層のリダーデーション
λ=入射光の波長
【0033】
従って、出射光量Iは、液晶層の配向方向と偏光素子の偏光軸とが成す角度θの影響を受ける。ここで、偏光素子の偏光軸は、液晶パネル100に入射する第1直線偏光の光の光軸方向に相当する。従って、横電界によって液晶分子の配向が乱れると、その影響が出射光量Iが及ぶ結果、白画面に黒い部分が発生することになる。
【0034】
一方、λ/4の位相差を有する1/4λ位相差素子では、直線偏光化された入射光が、その振動方向が1/4λ位相差素子の遅相軸に対してθ=+45゜の角度で入射したとき、1/4λ位相差素子からの出射光は右回りの円偏光となる。これに対して、入射光の振動方向と1/4λ位相差素子の遅相軸とがθ=-45゜の角度をなすときは左回りの円偏光となる。従って、
図5に示すように、液晶パネル100において、第1偏光素子51から出射された第1直線偏光が第1位相差素子61に入射して液晶パネル100に右回りの円偏光が入射したとする。ここで、画素が、黒表示に対応するオフ状態にある場合、液晶パネル100からは右回りの円偏光が出射される結果、右回りの円偏光が第2位相差素子62に入射する。従って、第2位相差素子62からは第1直線偏光の光が出射されるので、第2偏光素子52からは出射さない。
【0035】
これに対して、画素が、白表示に対応するオン状態にある場合、液晶パネル100からは左回りの円偏光が出射される結果、左回りの円偏光が第2位相差素子62に入射する。従って、第2位相差素子62からは第2直線偏光の光が出射され、かかる第2直線偏光の光は、第2偏光素子52から出射される。
【0036】
ここで、液晶パネル100に入射する光が円偏光の場合、式(1)におけるsin2(2θ)の項が存在しないので、出射光量Iは、以下の式で示される。それ故、横電界によって液晶分子の配向が乱れても、その影響が出射光量Iが及ばないため、白画面に黒い部分が発生することを抑制することができる。それ故、第1位相差素子61および第2位相差素子62の位相差をλ/4に設定すれば、配向不良の影響を最も抑制することができる。
I=I0・sin2(n・Δnd/λ) ・・式(2)
【0037】
しかしながら、円偏光の場合、液晶パネル100に入射した光が配線の側面等で反射した際の位相変化によって光漏れが発生しやすく、
図6を参照して以下に説明するように、コントラスト比が低下しやすい。
【0038】
図6には、第1位相差素子61および第2位相差素子62の位相差Rを0からλ/4まで変化させた場合における電気光学装置1の配向不良への影響およびコントラスト比の変化を示してある。横軸は、コントラスト比(Contrast Ratio)であり、右側が、コントラスト比が高いことを示し、縦軸は、配向不良度合であり、上側が配向不良の影響が大きいことを示す。
図6に示すように、第1位相差素子61および第2位相差素子62の位相差Rが0の場合、コントラスト比が高い一方、配向不良の影響が大きい。また、第1位相差素子61および第2位相差素子62の位相差Rをλ/4に近づけていくと、配向不良の影響を抑制される一方、コントラスト比が低下していく。かかる結果に基づいて、本実施形態では、第1位相差素子61および第2位相差素子62の位相差Rを以下の条件に設定してある。
0<R<λ/4
【0039】
従って、配向不良の影響を抑制しつつ、コントラスト比の低下を抑制することができる。ここで、第1位相差素子61および第2位相差素子62の位相差Rは、以下の条件に設定することが好ましい。
λ/12<R<λ/6
【0040】
例えば、第1位相差素子61および第2位相差素子62の位相差Rをλ/8に設定することが好ましい。かかる構成によれば、電気光学装置1において、配向不良の影響をより適正に抑制しつつ、コントラスト比の低下をより回避することができる。
【0041】
2.第2実施形態
図7は、本発明の第2実施形態に係る電気光学装置1の説明図である。本形態および以下に説明する形態は、基本的な構成が第1実施形態と同様である。従って、共通する部分には同一の符号を付して図示し、それらの説明を省略する。
【0042】
図7に示すように、本形態の電気光学装置1において、第1位相差素子61および第2位相差素子62は各々、液晶パネル100に固定されている。本形態において、液晶パネル100には防塵用の第1透光板41および第2透光板42が接着剤等によって固定されていることから、第1位相差素子61および第2位相差素子62は各々、第1透光板41および第2透光板42を介して液晶パネル100に固定されている。
【0043】
より具体的には、第1位相差素子61は第1透光板41の液晶パネル100とは反対側の面に固定され、第2位相差素子62は第2透光板42の液晶パネル100とは反対側の面に接着等の固定されている。ここで、第1位相差素子61および第2位相差素子62は、例えば、第1透光板41および第2透光板42に直接、固定されている。また、第1位相差素子61および第2位相差素子62は各々、透光性の支持板に貼付され、支持板が第1透光板41および第2透光板42に固定されている態様であってもよい。
【0044】
また、第1位相差素子61は第1透光板41と液晶パネル100との間に固定され、第2位相差素子62は第2透光板42と液晶パネル100との間に固定されている構成であってもよい。この場合、第1位相差素子61は第1透光板41、および液晶パネル100の第2基板20の双方に接着剤等によって固定され、第2位相差素子62は第2透光板42、および液晶パネル100の第1基板10の双方に接着剤等によって固定される。
【0045】
2-1.第2実施形態の変形例
図8は、本発明の第2実施形態の変形例に係る電気光学装置1の説明図である。
図8に示すように、第1位相差素子61および第2位相差素子62を液晶パネル100に固定するにあたって、第1透光板41の液晶パネル100とは反対側の面、および第2透光板42の液晶パネル100とは反対側の面に斜方蒸着した無機膜によって第1位相差素子61および第2位相差素子62を構成してもよい。
【0046】
また、第1位相差素子61は第1透光板41と液晶パネル100との間に固定され、第2位相差素子62は第2透光板42と液晶パネル100との間に固定されている構成であってもよい。この場合、第1位相差素子61を構成する無機膜は第1透光板41、または液晶パネル100の第2基板20に形成され、第2位相差素子62を構成する無機膜は第2透光板42、または液晶パネル100の第1基板10に形成される。
【0047】
3.第3実施形態
図9は、本発明の第3実施形態に係る電気光学装置1の説明図である。
図9に示すように、本形態の電気光学装置1において、第1偏光素子51と液晶パネル100との間には、第1位相差素子61および第1λ/2位相差素子66が配置され、第2偏光素子52と液晶パネル100との間には、第2位相差素子62および第2λ/2位相差素子67が配置されている。例えば、第1偏光素子51と第1位相差素子61との間に第1λ/2位相差素子66が配置され、第2偏光素子52と第2位相差素子62との間に第2λ/2位相差素子67が配置されている。従って、第1位相差素子61および第1λ/2位相差素子66によって広い領域対応可能な広帯域位相差素子を構成することができ、第2位相差素子62および第2λ/2位相差素子67によって広い領域対応可能な広帯域位相差素子を構成することができる。
【0048】
ここで、第1位相差素子61および第1λ/2位相差素子66は各々、無機材料あるいは有機材料からなり、第2位相差素子62および第2λ/2位相差素子67は各々、無機材料あるいは有機材料からなる。
【0049】
3-1.第3実施形態の変形例1
図10は、本発明の第3実施形態の変形例1に係る電気光学装置1の説明図である。
図10に示すように、本形態の電気光学装置1においても、第3実施形態と同様、第1偏光素子51と液晶パネル100との間には、第1位相差素子61および第1λ/2位相差素子66が配置され、第2偏光素子52と液晶パネル100との間には、第2位相差素子62および第2λ/2位相差素子67が配置されている。ここで、第1位相差素子61および第1λ/2位相差素子66は一体の光学素子68として液晶パネル100に固定され、第2位相差素子62および第2λ/2位相差素子67は一体の光学素子69として液晶パネル100に固定されている。より具体的には、第1位相差素子61および第1λ/2位相差素子66は一体の光学素子68として第1透光板41を介して液晶パネル100に固定され、第2位相差素子62および第2λ/2位相差素子67は一体の光学素子69として第2透光板42を介して液晶パネル100に固定されている。
【0050】
本形態において、光学素子68では、第1位相差素子61と第1λ/2位相差素子66とは直接、あるいは透光性の支持板を介して固定され、光学素子69では、第2位相差素子62と第2λ/2位相差素子67とは直接、あるいは透光性の支持板を介して固定される。
【0051】
なお、第1位相差素子61および第1λ/2位相差素子66からなる光学素子68が第1透光板41と液晶パネル100との間に配置され、第2位相差素子62および第2λ/2位相差素子67からなる光学素子69が第2透光板42と液晶パネル100との間に配置されている態様であってもよい。この場合、第1位相差素子61および第1λ/2位相差素子66からなる光学素子68が第1透光板41、および液晶パネル100の第2基板20の双方に接着剤等によって固定され、第2位相差素子62および第2λ/2位相差素子67からなる光学素子69が第2透光板42、および液晶パネル100の第1基板10の双方に接着剤等によって固定される。
【0052】
3-2.第3実施形態の変形例2
図11は、本発明の第3実施形態の変形例2に係る電気光学装置1の説明図である。
図11に示すように、
図10に示す光学素子68を構成するにあたっては、第1位相差素子61を構成する斜方蒸着膜と第1λ/2位相差素子66を構成する斜方蒸着膜とが積層されている態様を採用することができる。また、
図10に示す光学素子69を構成するにあたっては、第2位相差素子62を構成する斜方蒸着膜と第2λ/2位相差素子67を構成する斜方蒸着膜とが積層されている態様を採用することができる。
【0053】
4.第4実施形態
図12は、本発明の第4実施形態に係る電気光学装置1の説明図である。
図12に示すように、電気光学装置1では、Cプレート、OプレートまたはAプレートからなる光学補償素子71を1種類あるいは複数種類設け、コントラストや視野角特性を高めてもよい。なお、光学補償板の配置としては、パネルと位相差板の間に配置することが光学的には好ましく、補償効果が高くなる。しかし、位相差板61を作製上先に設ける必要がある場合や、別途、位相差板61の外側に補償板を設ける必要になった場合には、この配置でも少なからず補償効果が得ることが可能になる。
【0054】
Cプレート、OプレートおよびAプレートは、屈折率の3次元分布を示す屈折率楕円体は、以下のように定義される。ここで、第1基板10または第2基板20の基板面内の座標軸をXY軸とし、法線方向をZ軸とする。X軸方向の主屈折率をNxとし、Y軸方向の主屈折率をNyとし、Z軸方向の主屈折率をNzとする。
【0055】
Aプレート(正のAプレート)は、以下の条件式
Nx>Ny=Nz
を満たす。
【0056】
Cプレート(負のCプレート)は、以下の条件式
Nx=Ny>Nz
を満たす。
【0057】
Oプレートは、屈折率楕円体自体が基板に対して傾いているものであり、例えば、Nx>Ny>Nzに対してY軸を回転軸として、基板法線からある角度で傾いており、基板法線から見た時には、XY平面による楕円体断面における遅相軸がY軸方向になる。ただし、上記の条件に限定されるわけではなく、楕円体形状およびその傾きによって、Y軸方向が進相軸になってもよい。
【0058】
光学補償素子71は、無機材料あるいは有機材料からなる。光学補償素子71が無機材料からなるCプレートである場合、光学補償素子71は、例えば、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した無機膜からなる。高屈折率層は、タンタル酸化膜、ニオブ酸化膜、チタン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜等からなる。例えば、高屈折率層は、屈折率が2.3のニオブ酸化膜で形成され、低屈折率層は、屈折率が1.5のシリコン酸化膜で形成される。光学補償素子71が無機材料からなるOプレートである場合、光学補償素子71は、タンタル酸化膜等の無機膜を斜方蒸着することにより形成される。
【0059】
4-1.第4実施形態の変形例
図13は、本発明の第4実施形態の変形例1に係る電気光学装置1の説明図である。
図13に示すように、電気光学装置1では、複数の画素電極9aの各々に対して平面視で1対1の関係をもって重なる複数のマイクロレンズ220を備えたレンズアレイ22を第2基板20に設け、光の利用効率を高めることがある。レンズアレイ22を形成するにあたって、基板本体29の一方面29sには、複数の画素電極9aの各々と平面視で一対一の関係をもって平面視で重なる凹曲面からなるレンズ面が複数形成されている。また、基板本体29の一方面29sと平坦化層24との間には、透光性のレンズ層23が積層され、レンズ層23は、基板本体29と反対側の面が平坦面になっている。基板本体29とレンズ層23とは屈折率が相違しており、レンズ面およびレンズ層23は、マイクロレンズ220を構成している。本形態において、レンズ層23の屈折率は、基板本体29の屈折率より大である。例えば、基板本体29は石英基板(シリコン酸化物、SiO2)からなり、屈折率が1.48であるのに対して、レンズ層23は、シリコン酸窒化膜(SiON)からなり、屈折率が1.58~1.68である。それ故、マイクロレンズ220は、光源からの光を収束させる正のパワーを有している。
【0060】
ここで、光学補償素子71は、レンズアレイ22と液晶層5との間を避けた位置に設けられている。例えば、光学補償素子71は、レンズ層23と平坦化層24との間に積層された無機膜である。かかる態様によれば、光学補償素子71および液晶層5では、光線の入射角が等しいので、光学補償素子71によって液晶層5の光学補償を適正に行うことができる。なお、光学補償素子71は、例えば、第1基板10において、画素電極9aと絶縁膜13との間に設けてもよい。
【0061】
5.第5実施形態
図14は、第5実施形態に係る電気光学装置1の説明図である。
図14に示すように、本形態の電気光学装置1においては、各光学部材の両面のうち、空気と接する面には、低屈折率層と高屈折率層との積層膜等からなる反射防止層80が形成されている。従って、各光学部材と空気との界面での反射を抑制することができるので、反射による表示光の損失や迷光の発生等を抑制することができる。
【0062】
本形態では、第1偏光素子51および第2偏光素子52は、各々の両面が空気と接しているため、第1偏光素子51および第2偏光素子52の各々の両面に反射防止層80が形成されている。また、第1位相差素子61の第1偏光素子51側の面、および第2位相差素子62の第2偏光素子52側の面が空気と接しているため、第1位相差素子61の第1偏光素子51側の面、および第2位相差素子62の第2偏光素子52側の面に反射防止層80が形成されている。
【0063】
6.第6実施形態
図15は、本発明の第6実施形態に係る電気光学装置1の説明図である。第1実施形態から第4実施形態に係る電気光学装置1では、第1位相差素子61および第2位相差素子62を設けたため、配向不良の影響をより適正に抑制しつつ、コントラスト比の低下をより回避することができる。ここで、ビジネス系の電子機器において電気光学装置1によって画像を表示する場合、文字や線を表示することが多く、先に示した液晶配向不良による表示不良によって、文字や線が太くなることが問題となるため、第1位相差素子61および第2位相差素子62を設けることにより、配向不良の影響をより適正に抑制することが好ましい。
【0064】
これに対して、ホーム系の電子機器において電気光学装置1によって画像を表示する場合、自然画やアニメーション等を中心とした映像になるため、文字や線の太りは認識し難く、それよりはコントラス比の方が重要視される。その場合、
図6から分かるように、第1位相差素子61および第2位相差素子62が設けなければ、コントラス比が高いことが分かる。
【0065】
そこで、本形態では、第1位相差素子61および第2位相差素子62を各々、他の光学部材に固定せず、第1偏光素子51から液晶パネル100を経由して第2偏光素子52に至る光路上に位置する第1状態と、かかる光路から外れた第2状態とに切り替える切り替え機構が設けられている。例えば、
図15に示すように、第1位相差素子61を第1偏光素子51から液晶パネル100に至る光路から外れた位置まで移動させるガイド910等を備えた切り替え機構91と、第2位相差素子62を液晶パネル100から第2偏光素子52に至る光路から外れた位置まで移動させるガイド920等を備えた切り替え機構92とが設けられている。従って、電気光学装置1によって文字や線を主に表示する場合には、第1位相差素子61および第2位相差素子62を光路上に配置し、電気光学装置1によって自然画やアニメーション等を主に表示する場合には、切り替え機構91、92を利用して、第1位相差素子61および第2位相差素子62を光路から外すことができる。
【0066】
7.第7実施形態
図16は、第7実施形態に係る電気光学装置1の説明図である。本形態では、第1位相差素子61および第2位相差素子62を各々、第1偏光素子51から液晶パネル100を経由して第2偏光素子52に至る光路上に位置する第1状態と、かかる光路から外れた第2状態とに切り替えるにあたって、第1位相差素子61および第2位相差素子62を各々、面内方向に沿って回転させる。
【0067】
より具体的には、例えば、
図16に示すように、切り替え機構95は、第1位相差素子61および第1偏光素子51を支持するフレーム96を有するとともに、フレーム96には、スプリングやゴム等の弾性体98によって、第1位相差素子61が設けられた支持板60が支持されている。また、フレーム96には、フレーム96の相対向する2か所に調整ネジ97が設けられている。従って、調整ネジ97によって支持板60の端部を押圧することで、第1位相差素子61の角度位置を調整することができる。第2位相差素子62にも同様な切り替え機構95が設けられている。従って、電気光学装置1によって文字や線を主に表示する場合には、第1位相差素子61および第2位相差素子62を光路において、第1位相差素子61を遅相軸が第1偏光素子51の偏光軸に45°の角度を成すように設定し、第2位相差素子62を遅相軸が第2偏光素子52の偏光軸に45°の角度を成すように設定する。一方、電気光学装置1によって自然画やアニメーション等を主に表示する場合には、切り替え機構95を利用して、第1位相差素子61および第2位相差素子62を面内方向で回転させ、第1位相差素子61および第2位相差素子62を光路において、第1位相差素子61を遅相軸が第1偏光素子51の偏光軸に直交または平行となるように設定し、第2位相差素子62を遅相軸が第2偏光素子52の偏光軸に直交または平行となるように設定する。その結果、第1位相差素子61および第2位相差素子62を光路から外さなくても、第1位相差素子61および第2位相差素子62を光路から外した場合と同様な状態となる。それ故、光路周辺に余計なスペースを設けなくても、自然画やアニメーション等の表示に適した構成とすることができる。
【0068】
8.電子機器への搭載例
図17は、本発明を適用した電気光学装置1を用いた投射型表示装置の概略構成図である。
図17に示す投射型表示装置は、電気光学装置1を用いた電子機器の一例である。なお、以下の説明では、互いに異なる波長域の光が供給される複数の電気光学装置1が用いられているが、いずれの電気光学装置にも、本発明を適用した電気光学装置1が用いられている。
【0069】
図17に示す投射型表示装置は、前方に設けられたスクリーン211に映像を投射する前方投影型のプロジェクター210である。投射型表示装置210は、光源212と、ダイクロイックミラー213、214と、本発明を適用した電気光学装置を成す3つのライトバルブ(赤色光用電気光学装置1(r)、緑色光用電気光学装置1(g)、および青色光用電気光学装置1(b)と、投射光学系218と、光路シフト素子240と、クロスダイクロイックプリズム219(色合成光学系)と、リレー系230とを備えている。
【0070】
光源212は、例えば、赤色光、緑色光および青色光を含む光を供給する超高圧水銀ランプ、半導体レーザー等で構成されている。ダイクロイックミラー213は、光源212からの赤色光Lrを透過させるとともに緑色光Lgおよび青色光Lbを反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー214は、ダイクロイックミラー213で反射された緑色光Lgおよび青色光Lbのうち青色光Lbを透過させるとともに緑色光Lgを反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー213、214は、光源212から出射された光を赤色光Lrと緑色光Lgと青色光Lbとに分離する色分離光学系を構成する。ダイクロイックミラー213と光源212との間には、インテグレーター221および偏光変換素子222が光源212から順に配置されている。インテグレーター221は、光源212から照射された光の照度分布を均一化する。偏光変換素子222は、光源212からの光を例えばs偏光のような特定の振動方向を有する直線偏光に変換する。
【0071】
赤色光用電気光学装置1(r)は、ダイクロイックミラー213を透過して反射ミラー223で反射した赤色光Lrを画像信号に応じて変調し、変調した赤色光Lrをクロスダイクロイックプリズム219に向けて出射する。赤色光用電気光学装置1(r)は、
図1から
図16を参照して説明した構成を有している。例えば、赤色光用電気光学装置1(r)は、第1偏光素子51(R)、防塵用の第1透光板41(r)、液晶パネル100(r)、防塵用の第2透光板42(r)、および第2偏光素子52(r)を備えている。また、赤色光用電気光学装置1(r)は、第1位相差素子61(r)、および第2位相差素子62(r)を有している。
【0072】
緑色光用電気光学装置1(g)は、ダイクロイックミラー213で反射した後にダイクロイックミラー214で反射した緑色光Lgを、画像信号に応じて緑色光LGを変調し、変調した緑色光LGをクロスダイクロイックプリズム219に向けて出射する。緑色光用電気光学装置1(g)は、
図1から
図16を参照して説明した構成を有している。例えば、緑色光用電気光学装置1(g)は、赤色光用電気光学装置1(r)と同様に、第1偏光素子51(g)、防塵用の第1透光板41(g)、液晶パネル100(g)、防塵用の第2透光板42(g)、および第2偏光素子52(g)を備えている。また、緑色光用電気光学装置1(g)は、第1位相差素子61(g)、および第2位相差素子62(g)を有している。
【0073】
青色光用電気光学装置1(b)は、ダイクロイックミラー213で反射し、ダイクロイックミラー214を透過した後でリレー系230を経た青色光Lbを画像信号に応じて変調し、変調した青色光Lbをクロスダイクロイックプリズム219に向けて出射する。青色光用電気光学装置1(b)は、
図1から
図16を参照して説明した構成を有している。例えば、青色光用電気光学装置1(b)は、赤色光用電気光学装置1(r)、および緑色光用電気光学装置1(g)と同様に、第1偏光素子51(b)、防塵用の第1透光板41(b)、液晶パネル100(b)、防塵用の第2透光板42(b)、および第2偏光素子52(b)を備えている。また、青色光用電気光学装置1(b)は、第1位相差素子61(b)、および第2位相差素子62(b)を有している。
【0074】
リレー系230は、リレーマイクロレンズ224a、224bと反射ミラー225a、225bとを備えている。リレーマイクロレンズ224a、224bは、青色光Lbの光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。リレーマイクロレンズ224aは、ダイクロイックミラー214と反射ミラー225aとの間に配置されている。
【0075】
リレーマイクロレンズ224bは、反射ミラー225a、225bの間に配置されている。反射ミラー225aは、ダイクロイックミラー214を透過してリレーマイクロレンズ224aから出射した青色光Lbをリレーマイクロレンズ224bに向けて反射するように配置されている。反射ミラー225bは、リレーマイクロレンズ224bから出射した青色光Lbを青色光用電気光学装置1(b)に向けて反射するように配置されている。
【0076】
クロスダイクロイックプリズム219は、2つのダイクロイック膜219a、219bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜219aは青色光Lbを反射して緑色光Lgを透過する。ダイクロイック膜219bは赤色光Lrを反射して緑色光Lgを透過する。
【0077】
従って、クロスダイクロイックプリズム219は、赤色光用電気光学装置1(r)、緑色光用電気光学装置1(g)、および青色光用電気光学装置1(b)の各々で変調された赤色光Lrと緑色光Lgと青色光Lbとを合成し、投射光学系218に向けて出射するように構成されている。投射光学系218は、投影マイクロレンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム219で合成された光をスクリーン211に投射するように構成されている。
【0078】
このように構成した投射型表示装置210において、緑色光用電気光学装置1(g)、および青色光用電気光学装置1(b)には、異なる波長の光が入射することから、赤色光用電気光学装置1(r)、緑色光用電気光学装置1(g)、および青色光用電気光学装置1(b)のうち、少なくとも2つの電気光学装置では、上記した第1位相差素子61および第2位相差素子62が有する位相差を電気光学装置毎に異ならせてもよい。また、赤色光用電気光学装置1(r)、緑色光用電気光学装置1(g)、および青色光用電気光学装置1(b)では、上記した第1位相差素子61および第2位相差素子62が有する位相差を電気光学装置毎に異ならせてもよい。例えば、赤色光用電気光学装置1(r)に入射する赤色光の中心波長を610nmとし、緑色光用電気光学装置1(g)に入射する緑色光の中心波長を550nmとし、青色光用電気光学装置1(b)に入射する青色光の中心波長を470nmとして、各電気光学装置1に用いる第1位相差素子61および第2位相差素子62の位相差を適正な値に設定してもよい。
【0079】
さらに、投射光学系218は、光路シフト素子240を含む。電気光学装置1は、光源212からの光を変調し、画像を生成する。光路シフト素子240は、生成された画像のスクリーン211への投射位置を所定の期間毎にシフトさせ、投射画像の解像度を高めることができる。よって、プロジェクター210は、電気光学装置1を適用することにより、横電界等による液晶分子の配向の乱れやディスクリネーションによる影響を緩和しつつ、コントラスト比の低下を抑制し、解像度および高品質の画像を表示することができる。
【0080】
8-1.他の電子機器
本発明を適用した電気光学装置1は、投射型表示装置において、光源部として、各色の光を出射するLED光源、レーザー光源等を用い、かかる光源から出射された色光を各々、別の電気光学装置に供給するように構成してもよい。
【0081】
また、電気光学装置1は、投射画像を観察する側から投射する前方投射型プロジェクターに限らず、投射画像を観察する側とは反対の側から投射する後方投射型プロジェクターに用いてもよい。
【0082】
また、電気光学装置1を適用可能な電子機器は、投射型表示装置210に限定されない。電気光学装置1は、例えば、投射型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や直視型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、または電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として用いてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…電気光学装置、5…液晶層、5a…液晶分子、9a…画素電極、10…第1基板、10a…表示領域、16…第1配向膜、20…第2基板、21…共通電極、22…レンズアレイ、26…第2配向膜、41…第1透光板、42…第2透光板、51…第1偏光素子、52…第2偏光素子、60…支持板、61…第1位相差素子、62…第2位相差素子、66…第1λ/2位相差素子、67…第2λ/2位相差素子、68、69…光学素子、71…光学補償素子、80…反射防止層、91、92、95…切り替え機構、96…フレーム、97…調整ネジ、98…弾性体、100…液晶パネル、210…プロジェクター、211…スクリーン、212…光源、218…投射光学系、219…クロスダイクロイックプリズム、220…マイクロレンズ、240…光路シフト素子、910、920…ガイド