IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特開2022-183744制御システム、制御方法および作業機械
<>
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図1
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図2
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図3
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図4
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図5
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図6
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図7
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図8
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図9
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図10
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図11
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図12
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図13
  • 特開-制御システム、制御方法および作業機械 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183744
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】制御システム、制御方法および作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20221206BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E02F3/43 B
E02F9/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091215
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕明
(72)【発明者】
【氏名】北尾 真一
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA03
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB01
2D003DB02
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】作業工具の姿勢を複数の姿勢に自動で調整する。
【解決手段】本開示の一態様は、作業工具と作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを含む作業機を有する作業機械の制御システムであって、第1の姿勢を含む少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する記憶部を有するコントローラを備える。コントローラは、作業工具の姿勢を操作する指令信号と作業工具の現在の姿勢を示す検出信号とに基づいて少なくとも3種類の目標姿勢のうちのいずれかを選択して作業工具の目標姿勢とし、可動支持部を制御する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業工具と前記作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを含む作業機を有する作業機械の制御システムであって、
少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する記憶部を含むコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記作業工具の姿勢を操作する指令信号と前記作業工具の現在の姿勢を示す検出信号とに基づいて前記少なくとも3種類の目標姿勢のうちのいずれかを選択して前記作業工具の目標姿勢とし、前記可動支持部を制御する
制御システム。
【請求項2】
作業工具と前記作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを含む作業機を有する作業機械の制御システムであって、
第1の姿勢を含む少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する記憶部を含むコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記作業工具の姿勢を操作する指令信号を受信した場合、前記第1の姿勢を前記作業工具の目標姿勢として前記可動支持部を制御し、
前記指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、前記少なくとも3種類の目標姿勢のうち前記第1の姿勢とは異なる目標姿勢を選択して前記作業工具の目標姿勢とし、前記可動支持部を制御する
制御システム。
【請求項3】
前記少なくとも3種類の目標姿勢は、第1の姿勢と第2の姿勢と第3の姿勢とを含み、
前記指令信号は、第1の指令信号と第2の指令信号とを含み、
前記コントローラは、
前記第1の指令信号を受信した場合、前記検出信号に基づいて前記第1の姿勢または前記第2の姿勢にいずれかを前記目標姿勢として選択し、
前記第2の指令信号を受信した場合、前記検出信号に基づいて前記第1の姿勢または前記第3の姿勢のいずれかを前記目標姿勢として選択する
請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記作業工具は、第1の姿勢領域と第2の姿勢領域とに回動可能であり、
前記第1の姿勢領域は、前記第1の姿勢と前記第2の姿勢との間の姿勢領域であり、
前記第2の姿勢領域は、前記第1の姿勢と前記第3の姿勢との間の姿勢領域であり、
前記コントローラは、
前記第1の指令信号を受信し、且つ、前記作業工具の現在の姿勢が前記第2の姿勢領域である場合は、前記第1の姿勢を目標姿勢として選択し、
前記第2の指令信号を受信し、且つ、前記作業工具の現在の姿勢が前記第1の姿勢領域である場合は、前記第1の姿勢を目標姿勢として選択する
請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記少なくとも3種類の目標姿勢は、第2の姿勢と第3の姿勢とをさらに含み、
前記指令信号は、第1の指令信号と第2の指令信号とを含み、
前記コントローラは、
前記第1の指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、前記第2の姿勢を前記作業工具の前記目標姿勢として決定し、
前記第2の指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、前記第3の姿勢を前記作業工具の前記目標姿勢として決定する
請求項2に記載の制御システム。
【請求項6】
前記第1の姿勢は、前記作業工具の水平姿勢であり、
前記第2の姿勢は、前記作業工具の運搬姿勢であり、
前記第3の姿勢は、前記作業工具の排土姿勢または前記作業工具の接地姿勢である
請求項3から5のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記指令信号を出力する作業工具操作装置は、第1の制御位置と第2の制御位置との間を作動可能なレバーであり、
前記第1の指令信号は、前記レバーが前記第1の制御位置へ操作された場合に出力される信号であり、
前記第2の指令信号は、前記レバーが前記第2の制御位置へ操作された場合に出力される信号である
請求項3から5のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項8】
前記指令信号を出力する作業工具操作装置は、第1の制御位置と第2の制御位置との間を作動可能なレバーと、スイッチとを含み、
前記第1の指令信号は、前記レバーが前記第1の制御位置の方向へ操作され、且つ前記スイッチが操作された場合に出力される信号であり、
前記第2の指令信号は、前記レバーが前記第2の制御位置の方向へ操作され、且つ前記スイッチが操作された場合に出力される信号である
請求項3から5のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項9】
前記指令信号を出力する作業工具操作装置は、第1のスイッチと第2のスイッチを含み、
前記第1の指令信号は、前記第1のスイッチが操作された場合に出力される信号であり、
前記第2の指令信号は、前記第2のスイッチが操作された場合に出力される信号である
請求項3から5のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項10】
作業工具と前記作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを含む作業機を有する作業機械の制御方法であって、
少なくとも3種類の目標姿勢を記憶するステップと、
前記作業工具の姿勢を操作する指令信号と前記作業工具の現在の姿勢を示す検出信号とに基づいて前記少なくとも3種類の目標姿勢のうちのいずれかを選択するステップと、
前記選択した目標姿勢を前記作業工具の目標姿勢として前記可動支持部を制御するステップと
を備える制御方法。
【請求項11】
作業工具と前記作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを含む作業機を有する作業機械の制御方法であって、
第1の姿勢を含む少なくとも3種類の目標姿勢を記憶するステップと、
前記作業工具の姿勢を操作する指令信号を受信した場合、前記第1の姿勢を目標姿勢として選択するステップと、
前記指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、前記少なくとも3種類の目標姿勢のうち前記第1の姿勢とは異なる目標姿勢を選択するステップと、
前記選択した目標姿勢を前記作業工具の目標姿勢として前記可動支持部を制御するステップと
を備える制御方法。
【請求項12】
作業工具と前記作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを有する作業機械であって、
前記可動支持部を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する記憶部を含み、
前記作業工具の姿勢を操作する指令信号と前記作業工具の現在の姿勢を示す検出信号とに基づいて前記少なくとも3種類の目標姿勢のうちのいずれかを選択して前記作業工具の目標姿勢とし、前記可動支持部を制御する
作業機械。
【請求項13】
作業工具と前記作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを有する作業機械であって、
前記可動支持部を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
第1の姿勢を含む少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する記憶部を含み、
前記作業工具の姿勢を操作する指令信号を受信した場合、前記第1の姿勢を前記作業工具の目標姿勢として前記可動支持部を制御し、
前記指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、前記少なくとも3種類の目標姿勢のうち前記第1の姿勢とは異なる目標姿勢を選択して前記作業工具の目標姿勢とし、前記可動支持部を制御する
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、制御方法および作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、操作レバーが保持位置に操作された場合に、バケットを水平姿勢に自動調整するホイールローダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-167098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械の一例としてのホイールローダでは、例えば、作業工具の一例であるバケットにおいてよく用いられる定型的な姿勢として、水平姿勢のほか、運搬姿勢、排土姿勢、接地姿勢等がある。しかしながら、特許文献1に記載されているホイールローダでは、バケットの姿勢を複数の定型的な姿勢に自動調整することができないという課題があった。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業工具の姿勢を複数の姿勢に自動で調整することができる制御システム、制御方法および作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の第1の態様は、作業工具と作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを含む作業機を有する作業機械の制御システムであって、少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する記憶部を有するコントローラを備える。コントローラは、作業工具の姿勢を操作する指令信号と作業工具の現在の姿勢を示す検出信号とに基づいて少なくとも3種類の目標姿勢のうちのいずれかを選択して作業工具の目標姿勢とし、可動支持部を制御する。
【0007】
また、本開示の第2の態様は、作業工具と作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを含む作業機を有する作業機械の制御システムであって、第1の姿勢を含む少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する記憶部を有するコントローラを備える。コントローラは、作業工具の姿勢を操作する指令信号を受信した場合、第1の姿勢を作業工具の目標姿勢として可動支持部を制御する。コントローラは、指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、少なくとも3種類の目標姿勢のうち第1の姿勢とは異なる目標姿勢を選択して作業工具の目標姿勢とし、可動支持部を制御する。
【0008】
また、本開示の第3の態様は、作業工具と作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを含む作業機を有する作業機械の制御方法であって、以下のステップを備える。第1のステップは、少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する。第2のステップは、作業工具の姿勢を操作する指令信号と作業工具の現在の姿勢を示す検出信号とに基づいて少なくとも3種類の目標姿勢のうちのいずれかを選択する。第3のステップは、選択した目標姿勢を作業工具の目標姿勢として可動支持部を制御する。
【0009】
また、本開示の第4の態様は、作業工具と作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを含む作業機を有する作業機械の制御方法であって、以下のステップを備える。第1のステップは、第1の姿勢を含む少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する。第2のステップは、作業工具の姿勢を操作する指令信号を受信した場合、第1の姿勢を目標姿勢として選択する。第3のステップは、指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、少なくとも3種類の目標姿勢のうち第1の姿勢とは異なる目標姿勢を選択する。第4のステップは、選択した目標姿勢を作業工具の目標姿勢として可動支持部を制御する。
【0010】
また、本開示の第5の態様は、作業工具と作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを有する作業機械であって、可動支持部を制御するコントローラとを備える。コントローラは、少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する記憶部を含む。コントローラは、作業工具の姿勢を操作する指令信号と作業工具の現在の姿勢を示す検出信号とに基づいて少なくとも3種類の目標姿勢のうちのいずれかを選択して作業工具の目標姿勢とし、可動支持部を制御する。
【0011】
また、本開示の第6の態様は、作業工具と作業工具の姿勢を変化させる可動支持部とを有する作業機械であって、可動支持部を制御するコントローラとを備える。コントローラは、第1の姿勢を含む少なくとも3種類の目標姿勢を記憶する記憶部を含む。コントローラは、作業工具の姿勢を操作する指令信号を受信した場合、第1の姿勢を作業工具の目標姿勢として可動支持部を制御する。コントローラは、指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、少なくとも3種類の目標姿勢のうち第1の姿勢とは異なる目標姿勢を選択して作業工具の目標姿勢とし、可動支持部を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の各態様によれば、作業工具の姿勢を複数の姿勢に自動で調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
図2】第1の実施形態に係る作業機械の動作例を示す側面図である。
図3】第1の実施形態に係る作業機械の他の動作例を示す側面図である。
図4】第1の実施形態に係る作業機械の他の動作例を示す側面図である。
図5】第1の実施形態に係る作業機械の他の動作例を示す側面図である。
図6】第1の実施形態に係る作業機械の制御システムの構成例を示すブロック図である。
図7】第1の実施形態に係るバケット操作装置の構成例を示す斜視図である。
図8】第1の実施形態に係るバケット操作装置の他の構成例を示す斜視図である。
図9】第1の実施形態に係るコントローラの構成を示す概略ブロック図である。
図10】第1の実施形態に係るバケットの動作例を示す模式図である。
図11】第1の実施形態に係るコントローラの動作例を示すフローチャートである。
図12】第2の実施形態に係るコントローラの動作例を示すフローチャートである。
図13】第2の実施形態に係るコントローラの動作例を示すフローチャートである。
図14】第2の実施形態に係るコントローラの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示に係る実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0015】
本実施形態においては、作業機械1にローカル座標系を設定し、ローカル座標系を参照しながら各部の位置関係について説明する。ローカル座標系において、作業機械1の左右方向(車幅方向)に延伸する第1軸をX軸とし、作業機械1の前後方向に延伸する第2軸をY軸とし、作業機械1の上下方向に延伸する第3軸をZ軸とする。X軸とY軸とは直交する。Y軸とZ軸とは直交する。Z軸とX軸とは直交する。+X方向は右方向であり、-X方向は左方向である。+Y方向は前方向であり、-Y方向は後方向である。+Z方向は上方向であり、-Z方向は下方向である。
【0016】
<第1の実施形態>
[作業機械の概要]
図1図5は、第1の実施形態に係る作業機械1を示す側面図である。第1の実施形態に係る作業機械1は、例えばホイールローダである。以下の説明において、作業機械1を適宜、ホイールローダ1、と称する。
【0017】
図1に示すように、ホイールローダ1は、車体2と、キャブ3と、走行装置4と、作業機10とを有する。ホイールローダ1は、走行装置4により、作業現場を走行する。ホイールローダ1は、作業現場において、作業機10を用いて作業を実施する。ホイールローダ1は、作業機10を用いて、掘削作業、積込作業、運搬作業、および除雪作業等の作業を実施することができる。
【0018】
キャブ3は、車体2に支持される。キャブ3の内部には、オペレータが着座する運転席31と、後述する操作装置32と、表示入力部34とが配置される。
【0019】
走行装置4は、回転可能な車輪5を有する。車輪5は、車体2を支持する。ホイールローダ1は、走行装置4によって路面(あるいは地面)RSを走行可能である。なお、図1では、左側の前輪5Fおよび後輪5Rのみが図示されている。
【0020】
作業機10は、車体2に支持される。作業機10は、作業工具の一例としてのバケット12と、バケット12の位置と姿勢を変化させる可動支持部17とから構成されている。図1に示す例では、可動支持部17は、ブーム11と、ブームシリンダ13と、バケットシリンダ14と、ベルクランク15と、リンク16とを備える。
【0021】
ブーム11は、車体2に対して回動可能に支持され、ブームシリンダ13の伸縮に応じて図1図5に示すように上下方向に移動する。ブームシリンダ13は、ブーム11を移動させるための動力を発生するアクチュエータであり、一端部は車体2に連結され、他端部はブーム11に連結される。オペレータが操作装置32に含まれるブーム操作装置(図示しない)を操作すると、ブームシリンダ13が伸縮する。これにより、ブーム11は上下方向に移動する。ブームシリンダ13は、例えば油圧シリンダである。
【0022】
バケット12は、刃先12Tを有し、土砂等の掘削対象物の掘削や、積み込みを行うための作業工具である。バケット12は、ブーム11に対して回動可能に連結されるとともに、リンク16の一端部に対して回動可能に連結されている。リンク16の他端部は、ベルクランク15の一端部に回動可能に連結されている。ベルクランク15は、中央部がブーム11に回動可能に連結され、他端部がバケットシリンダ14の一端部に回動可能に連結されている。バケットシリンダ14の他端部は車両本体2に回動可能に連結されている。バケット12は、バケットシリンダ14が発生する動力によって作動する。バケットシリンダ14は、バケット12を移動するための動力を発生するアクチュエータである。オペレータがバケット操作装置33を操作すると、バケットシリンダ14が伸縮する。これにより、バケット12は揺動する。バケットシリンダ14は、例えば油圧シリンダである。刃先12Tは、山刃、平刃等の形状を有し、交換可能にバケット12の端部に取り付けられている。
【0023】
なお、本実施形態では、図2に示すように刃先12Tが下を向いているバケット12の姿勢を、ダンプ姿勢という。ダンプ姿勢は、例えば、バケット12内の掘削物を運搬車両等に積み込むことができる姿勢(排土姿勢)である。また、図3に示すように刃先12Tが上を向いているバケット12の姿勢を、チルト姿勢(抱え込み姿勢)という。チルト姿勢は、例えば、掘削物をバケット12内に保持することができる姿勢(運搬姿勢)である。また、図4に示すように刃先12Tが路面RSと水平方向(ほぼ水平方向を含む)を向いているバケット12の姿勢を、掘削姿勢(あるいは掘削時の走行姿勢)という。掘削姿勢は、例えば、土砂等の掘削対象物の掘削を開始するときや掘削対象物に向かって走行するときの姿勢(あるいは掘削を開始するときや走行するときに適した姿勢)である。また、図5に示すように刃先12Tが路面RSに接しているバケット12の姿勢を、接地姿勢という。ホイールローダ1は、例えば、バケット12を掘削姿勢(あるいは掘削姿勢から刃先12Tが路面RSより低くなる姿勢)とし、前方方向へ走行することで前方に位置する掘削対象物の掘削を開始する。なお、ホイールローダ1では、掘削姿勢は、刃先方向が路面RSと実質的に水平であるということから水平姿勢と呼ぶこともできる。
【0024】
[制御システムの構成]
図6は、第1の実施形態に係るホイールローダ1の制御システムの構成例を示すブロック図である。図6に示すように、ホイールローダ1は、動力源201と、PTO(Power Take Off)202と、油圧ポンプ203と、制御弁200と、操作装置32と、表示入力部34と、コントローラ100とを備える。
【0025】
動力源201は、作業機械を作動させるための駆動力を発生する。動力源として、内燃機関や電動機が例示される。
【0026】
PTO202は、動力源201の駆動力の少なくとも一部を油圧ポンプ203に伝達する。PTO202は、動力源201の駆動力を走行装置4と油圧ポンプ203とに分配する。
【0027】
油圧ポンプ203は、動力源201によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ203から吐出された作動油の少なくとも一部は、制御弁200を介して、ブームシリンダ13およびバケットシリンダ14のそれぞれに供給される。制御弁200は、油圧ポンプ203からブームシリンダ13およびバケットシリンダ14のそれぞれに供給される作動油の流量および方向を制御する。作業機10は、油圧ポンプ203からの作動油により動作する。
【0028】
操作装置32は、キャブ3の内部に配置される。操作装置32は、オペレータにより操作される。オペレータは、操作装置32を操作して、ホイールローダ1の進行方向と走行速度の調整、前進または後進の切替え、および作業機10の操作を実施する。操作装置32は、例えば、ステアリング、シフトレバー、アクセルペダル、ブレーキペダル、および作業機10のバケット12を操作するためのバケット操作装置(作業工具操作装置の一例)33を含む。バケット操作装置33は、バケット12の姿勢を操作する指令信号を出力する。表示入力部34は、入力装置と表示装置の組み合わせ、タッチパネル等の入力表示装置等から構成される。オペレータは、表示入力部34を用いて、例えば後述する作業機10の制御における目標位置や目標姿勢の記憶値を設定する。
【0029】
図7および図8は、第1の実施形態に係るバケット操作装置33を示す構成図である。なお、図7は、バケット操作装置33が、操作レバー33Lに、1個のスイッチ33b1を有する例を示し、図8は、バケット操作装置33が、操作レバー33Lに、2個のスイッチ33b1とスイッチ33b2を有する例を示す。図7および図8に示すように、バケット操作装置33は、中立位置(C1)に対して前後方向に傾動位置A1(第1の制御位置)から傾動位置E1(第2の制御位置)まで(E1←D1←C1→B1→A1)の方向に作動可能な電気式操作レバーである操作レバー33Lを備える。傾動位置A1およびE1は、例えば操作レバー33Lが後ろ方向および前方向のストロークエンドに達した位置である。バケット操作装置33は、操作レバー33Lに一定以上の操作力が掛けられていない状態で、操作レバー33Lの位置を中立位置(C1)に自動的に復帰する機構を有している。本実施形態では、操作レバー33Lの位置を傾動位置A1または傾動位置E1に傾動させる操作を傾動保持操作という。また、操作レバー33Lの位置を傾動位置A1に傾動させる操作をチルト側傾動保持操作という。また、操作レバー33Lの位置を傾動位置E1に傾動させる操作をダンプ側傾動保持操作という。
【0030】
バケット操作装置33は、操作レバー33Lの傾動方向と傾動量に応じた制御信号を出力する。また、バケット操作装置33は、操作レバー33Lが傾動位置A1およびE1に傾動させる操作がされた場合にその旨を示す所定の操作パターン信号を出力する。また、バケット操作装置33は、スイッチ33b1またはスイッチ33b2が押されているか否かを示す信号を出力する。本実施形態では、スイッチ33b1またはスイッチ33b2が押される操作を傾動保持操作としてもよい。この場合、バケット操作装置33は、PPC(Pressure Proportional Control)バルブを用いて構成してもよい。
【0031】
なお、バケット操作装置33は、オペレータの手が操作レバー33Lから離れると操作レバーは中立状態(C1)に復帰するが、後述するコントローラ100は、例えば、作業機10の位置や姿勢が所定の状態となるまで仮想的に傾動保持状態が継続しているとみなして制御を行うことができる。
【0032】
また、ホイールローダ1は、作業機負荷センサ71と、ブーム角センサ72と、バケット角センサ73とを有する。
【0033】
作業機負荷センサ71は、作業機10にかかる負荷を検出する。作業機負荷センサ71は、例えば、作業機10の少なくとも一部に配置された歪ゲージやロードセル等の荷重測定デバイスである。作業機負荷センサ71により検出された負荷データは、コントローラ100へ出力される。なお、作業機10にかかる負荷は、例えば、ブームシリンダ13を駆動させる圧油の圧力を検出する油圧センサまたはバケットシリンダ14を駆動させる圧油の圧力を検出する油圧センサを用いて検出してもよい。この場合、掘削物がバケット12に保持されている状態と保持されていない状態とで、作業機10に掛かる負荷が変化する。作業機負荷センサ71は、作業機10に掛かる負荷の変化を検出することによって、バケット12内に保持された掘削物の有無を検出することができる。
【0034】
ブーム角センサ72は、車体2に対するブーム11の角度を検出し、検出データをコントローラ100へ出力する。ブーム角センサ72は、例えば、車体2とブーム11との連結部に配置される角度センサである。なお、ブーム11の角度は、ブームシリンダ13のストローク量から算出してもよい。
【0035】
バケット角センサ73は、バケット12の角度を検出するためのセンサである。バケット角センサ73は、例えば、ブーム11とベルクランク15との連結部に配置される角度センサである。バケット角センサ73は、ブーム11に対するベルクランク15の角度を検出し、検出データをコントローラ100へ出力する。ブーム角センサ72が検出した車体2に対するブーム11の角度と、バケット角センサ73が検出したブーム11に対するベルクランク15の角度とに基づいて、ブーム11(および車体2)に対するバケット12の角度を算出することができる。なお、ブーム11に対するバケット12の角度は、例えば、バケット12とブーム11との連結部において、ブーム11に対するバケット12の角度を検出するセンサを用いて検出してもよい。また、ブーム11に対するベルクランク15の角度やブーム11に対するバケット12の角度は、ブームシリンダ13のストローク量とバケットシリンダ14のストローク量から算出してもよい。
【0036】
[コントローラの構成]
図9は、第1の実施形態に係るホイールローダ1のコントローラ100を示す構成図である。コントローラ100は、例えば、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、入出力装置等を有するFPGA(Field Programmable Gate Array)やマイクロコンピュータを用いて構成される。コントローラ100は、ハードウェアまたはハードウェアとプログラム等のソフトウェアの組み合わせから構成される機能的構成として、操作信号検出部101と、ブーム角取得部102と、バケット角算出部104と、記憶部105と、目標バケット角決定部107と、バケット接地検出部112と、バケットシリンダ制御部109とを備える。
【0037】
本実施形態のコントローラ100は、バケット12とバケット12の位置と姿勢を変化させる可動支持部17とを有する作業機10を制御する装置である。そして、コントローラ100は、バケット12の姿勢を操作する指令信号と、バケット12の現在の姿勢を示す検出信号とに基づいて、少なくとも3種類の目標姿勢のうちのいずれかを選択してバケット12の目標姿勢とし、可動支持部17を制御する。バケット12の姿勢を操作する指令信号は、バケット操作装置33が出力した操作レバー33Lの傾動方向と傾動量に応じた制御信号と、操作信号検出部101が出力したバケット操作装置33に対して傾動保持操作が行われたことを示す制御信号とを含む。バケット12の現在の姿勢を示す検出信号は、バケット角算出部104が出力した現在のバケット角を示す検出信号である。
【0038】
なお、図9は、コントローラ100が有する複数の機能のうち、操作装置32(操作部)が有するバケット操作装置33の操作に応じた制御に対応する構成のみを示している。また、後述するコントローラ100の動作例では、バケット操作装置33の操作に応じた制御のうち、図7および図8に示すバケット操作装置33の操作レバー33Lに傾動保持操作が行われた場合について説明する。
【0039】
操作信号検出部101は、操作装置32内のバケット操作装置33の操作信号を受信し、操作レバー33Lの位置が傾動位置A1または傾動位置E1に傾動させる傾動保持操作が行われたか否か、あるいは、スイッチ33b1に対して傾動保持操作が行われたか否かを検出した結果を、傾動保持操作が行われたことを示す制御信号として目標バケット角決定部107およびバケットシリンダ制御部109へ出力する。なお、本実施形態において、バケット12の姿勢を操作する指令信号は、操作信号検出部101が出力する以下の第1の指令信号と第2の指令信号とを含む。
【0040】
第1の指令信号は、例えば、操作レバー33Lが、傾動位置A1(第1の制御位置)へ傾動保持操作された場合に出力される信号である。第2の指令信号は、例えば、操作レバー33Lが、傾動位置E1(第2の制御位置)へ傾動保持操作された場合に出力される信号である。
【0041】
あるいは、第1の指令信号は、例えば、操作レバー33Lが傾動位置B1(第1の制御位置の方向)へ操作され、かつスイッチ33b1が操作された場合に出力される信号である。第2の指令信号は、例えば、操作レバー33Lが傾動位置D1(第2の制御位置の方向)へ操作され、かつスイッチ33b1が操作された場合に出力される信号である。
【0042】
あるいは、第1の指令信号は、例えば、スイッチ33b1(第1のスイッチ)が操作された場合に出力される信号である。第2の指令信号は、スイッチ33b2(第2のスイッチ)が操作された場合に出力される信号である。
【0043】
ブーム角取得部102は、ブーム角センサ72が検出したデータを受信し、現在のブーム角を取得する。ブーム角取得部102は、取得した現在のブーム角データを目標バケット角決定部107と、バケット接地検出部112へ出力する。現在のブーム角データは、例えば、現在のブームシリンダ長を示すデータであってもよい。
【0044】
バケット角算出部104は、ブーム角センサ72が検出したデータとバケット角センサ73が検出したデータとを受信し、現在のバケット角を算出する。バケット角算出部104は、算出した現在のバケット角データを目標バケット角決定部107、バケットシリンダ制御部109、およびバケット接地検出部112へ出力する。現在のバケット角データは、例えば、現在のバケットシリンダ長を示すデータであってもよい。
【0045】
記憶部105は、表示入力部34を用いて設定されたバケット12の少なくとも3種類の目標姿勢の設定値を記憶値として記憶する。本実施形態において、少なくとも3種類の目標姿勢は、第1の姿勢と、第2の姿勢と、第3の姿勢とを含む。あるいは、後述する第2の実施形態において、少なくとも3種類の目標姿勢は、第1の姿勢を含む。また、第1の姿勢の初期値は例えば、バケット12の水平姿勢とすることができる。また、第2の姿勢の初期値は例えば、バケット12の運搬姿勢とすることができる。また、第3の姿勢の初期値は、例えば、バケット12の排土姿勢または接地姿勢とすることができる。オペレータは、表示入力部34を用いてこれらの目標姿勢の設定値を変更したり、初期化したりすることができる。
【0046】
目標バケット角決定部107は、操作信号検出部101の出力信号と、バケット角算出部104の出力信号と、記憶部105に設定されている目標姿勢の設定値とに基づいて、記憶部105に記憶されている少なくとも3種類の目標姿勢の設定値から1つの目標姿勢を選択する。目標バケット角決定部107は、選択した目標姿勢とブーム角取得部102の出力信号(ブーム角)とに基づいて目標バケット角を決定する。バケット12の姿勢は、ブーム11の角度(ブーム角)に応じて可動領域が変化するため、バケット12の姿勢は、目標姿勢とブーム角とに基づいて決定される。なお、目標バケット角を示すデータは、例えば、バケットシリンダ長の目標値である目標バケットシリンダ長を示すデータであってもよい。目標バケット角決定部107は、選択した目標姿勢データをバケットシリンダ制御部109へ出力する。目標バケット角決定部107は、決定した目標バケット角をバケットシリンダ制御部109へ出力する。
【0047】
なお、目標バケット角決定部107は、操作信号検出部101から第1の指令信号を受信した場合、第1の姿勢および第2の姿勢のいずれかを目標姿勢として選択する。また、目標バケット角決定部107は、操作信号検出部101から第2の指令信号を受信した場合、第1の姿勢および第3の姿勢のいずれかを目標姿勢として選択する。
【0048】
なお、本実施形態では、バケット12は、第1の姿勢領域と第2の姿勢領域とに回動可能である。第1の姿勢領域は、第1の姿勢と第2の姿勢との間の姿勢領域であり、第2の姿勢領域は、第1の姿勢と第3の姿勢との間の姿勢領域である。目標バケット角決定部107は、操作信号検出部101から第1の指令信号を受信し、かつ、バケット12の現在の姿勢が第2の姿勢領域である場合は、第1の姿勢を目標姿勢として選択する。また、目標バケット角決定部107は、操作信号検出部101から第2の指令信号を受信し、かつ、バケット12の現在の姿勢が第1の姿勢領域である場合は、第1の姿勢を目標姿勢として選択する。
【0049】
バケット接地検出部112は、ブーム角取得部102が出力したブーム角と、バケット角算出部104が算出したバケット角と、作業機負荷センサ71が検出した作業機10の負荷とに基づいて、バケット12が路面(地面)RSに接地したか否かを検出する。バケット接地検出部112は、例えば、ブーム角とバケット角に基づいてバケット12と路面RSとの間隔を推定するとともに、作業機負荷センサ71が一定の負荷の増大を検出したときに、バケット12が接地したと検知する。バケット接地検出部112は、検出結果をバケットシリンダ制御部109へ出力する。
【0050】
バケットシリンダ制御部109は、バケット操作装置33に対して所定の傾動保持操作が行われた場合、バケット12の姿勢を操作する指令信号とバケット12の現在の姿勢を示す検出信号とに基づいて、目標バケット角決定部107が選択した目標姿勢となるようにバケットシリンダ指令を出力する。バケットシリンダ制御部は、バケット角算出部104が算出した現在のバケット角と、目標バケット角決定部107が決定した目標バケット角とを比較し、現在のバケット角が目標バケット角となるようにバケットシリンダ指令を出力する。バケットシリンダ制御部109は、バケットシリンダ指令を出力して制御弁200を制御する。制御弁200は、バケットシリンダ指令に基づいてバケットシリンダ14を駆動し、可動支持部17を制御する。
【0051】
[バケットの動作例]
図10は、第1の実施形態に係るバケット12の動作例を示す模式図である。図10では、バケット12を水平状態(水平姿勢)とした場合をバケット12-1として示す。バケット12を最大限チルトさせた状態(この状態をチルトエンドという)をバケット12-2として示す。バケット12を最大限ダンプさせた状態(この状態をダンプエンドという)をバケット12-3として示す。ただし、ダンプエンドの姿勢は、バケット12を最大限ダンプさせた状態(バケット12-3aとして示す)と、バケット12が接地した状態(バケット12-3bとして示す)のいずれかの姿勢となる。
【0052】
なお、以下の動作例の説明では、第1姿勢を水平姿勢、第2姿勢をチルトエンド、第3姿勢をダンプエンドとする場合について説明する。なお、バケット12-1-2は、第1姿勢のバケット12-1と、第2姿勢のバケット12-2の間の姿勢である。バケット12-1-3は、第1姿勢のバケット12-1と、第3姿勢のバケット12-3の間の姿勢である。
【0053】
[コントローラの動作例]
図11は、第1の実施形態に係るコントローラ100の動作例を示すフローチャートである。図11に示す処理によって、コントローラ100(バケットシリンダ制御部109)は、バケット姿勢を制御する。
【0054】
図11は、所定の周期で繰り返し実行されるフローである。なお、図11は、チルト側の処理を示し、ダンプ側の処理には「チルト側」あるいは「チルトエンド」を「( )」内の「(ダンプ側)」あるいは「(ダンプエンド)」に読み替えた処理となる。
【0055】
図11に示す処理では、コントローラ100は、まず、チルト側(ダンプ側)への傾動保持操作を検出したか否かを判断する(S101)。傾動保持操作を検出していない場合(S101:No)、コントローラ100は、図11に示す処理を終了する。傾動保持操作を検出した場合(S101:Yes)、コントローラ100は、現在のバケット角データに基づいてバケット12の現在の姿勢が水平姿勢よりダンプ側(チルト側)か否かを判断する(S102)。バケット12の現在の姿勢が水平姿勢よりダンプ側(チルト側)である場合(S102:Yes)、コントローラ100は、現在のブーム角に応じて、バケット12が水平姿勢となる目標バケット角を決定する(S103)。バケット12の現在の姿勢が水平姿勢よりダンプ側(チルト側)でない場合(S102:No)、コントローラ100は、現在のブーム角に応じて、バケット12の姿勢がチルトエンド(ダンプエンド)状態となる目標バケット角を決定する(S104)。次に、コントローラ100は、現在のバケット角が目標バケット角となるように指令を出力する(S105)。次に、コントローラ100は、ダンプ側(チルト側)へのレバー操作を検出したか否かを判断する(S106)。ダンプ側(チルト側)へのレバー操作を検出した場合(S106:Yes)、コントローラ100は、処理を中止する(S107)。ダンプ側(チルト側)へのレバー操作を検出しなかった場合(S106:No)、コントローラ100は、図11に示す処理を終了する。
【0056】
以上の処理によって、コントローラ100は、バケット12の姿勢が目標バケット姿勢となるように可動支持部17を制御する。本実施形態では、バケット姿勢が水平姿勢(第1姿勢)よりダンプ側(チルト側)の場合、チルト側(ダンプ側)傾動保持操作によって、バケット姿勢を水平姿勢(第1姿勢)に調整することができる。
【0057】
また、コントローラ100は、バケット姿勢が水平姿勢(第1姿勢)よりチルト側(ダンプ側)の場合、チルト側(ダンプ側)傾動保持操作によって、チルトエンド(ダンプエンド)に調整することができる。
【0058】
(作用・効果)
以上のように本実施形態によれば、バケット操作装置33に対して所定の傾動保持操作を行うことで、作業工具の姿勢を複数の姿勢に自動で調整することができる。
【0059】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係るコントローラ100の動作例ついて、図12図14を参照しながら詳細に説明する。なお、コントローラ100の構成は、図9に示す第1の実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0060】
[コントローラの動作例]
図12図14は、第2の実施形態に係るコントローラ100の動作例を示すフローチャートである。図12図14に示す処理によって、コントローラ100(バケットシリンダ制御部109)は、バケット姿勢を制御する。
【0061】
図12は、所定の周期で繰り返し実行されるメインフローである。図13は、S202で実行され、S206で中止される処理1(傾動保持操作を1回検出したの場合の処理)の内容を示す。図14は、S207で実行される処理2(例えば、1回目の傾動保持操作を検出してから所定時間内に2回目の傾動保持操作を検出した場合の処理)の内容を示す。なお、図12図14は、チルト側の処理を示し、ダンプ側の処理には「チルト側」あるいは「チルトエンド」を「( )」内の「(ダンプ側)」あるいは「(ダンプエンド)」に読み替え、また、(S405)の判断を加えた処理となる。ただし、S405の判断の処理は、チルト側の処理で実行しても問題はない。
【0062】
図12に示す処理では、コントローラ100は、まず、チルト側(ダンプ側)への傾動保持操作を検出したか否かを判断する(S201)。傾動保持操作を検出していない場合(S201:No)、コントローラ100は、図12に示す処理を終了する。傾動保持操作を検出した場合(S201:Yes)、コントローラ100は、処理1(図13)を開始する(S202)。以後、処理1内で処理1が中止されるか、または、S206で中止されるまで、処理1は実行される。
【0063】
図13に示す処理1では、コントローラ100は、まず、現在のバケット角データに基づいてバケット12の現在の姿勢が水平姿勢よりダンプ側(チルト側)か否かを判断する(S301)。バケット12の現在の姿勢が水平姿勢よりダンプ側(チルト側)でない場合(S301:No)、コントローラ100は、図13に示す処理1を終了する。バケット12の現在の姿勢が水平姿勢よりダンプ側(チルト側)である場合(S301:Yes)、コントローラ100は、現在のブーム角に応じて、バケット12の姿勢が水平姿勢となる目標バケット角を決定する(S302)。次に、コントローラ100は、現在のバケット角が目標バケット角となるように指令を出力する(S303)。次に、コントローラ100は、ダンプ側(チルト側)へのレバー操作を検出したか否かを判断する(S304)。ダンプ側(チルト側)へのレバー操作を検出した場合(S304:Yes)、コントローラ100は、処理を中止し(S304)、ダンプ側(チルト側)へのレバー操作を検出しなかった場合(S304:No)、コントローラ100は、図13に示す処理1を終了する。
【0064】
一方、図12に示す処理では、コントローラ100は、処理1(図13)を開始した後(S202)、傾動保持操作検出後の時間をカウントする(S203)。次に、コントローラ100は、所定時間以内にチルト側(ダンプ側)への傾動保持操作を検出したか否かを判断する(S204)。所定時間以内にチルト側(ダンプ側)への傾動保持操作を検出しなかった場合(S204:No)、コントローラ100は、カウンタをクリアして(S208)、図12に示す処理を終了する。所定時間以内にチルト側(ダンプ側)への傾動保持操作を検出した場合(S204:Yes)、コントローラ100は、処理1を実行中か否かを判断する(S205)。処理1を実行中である場合(S205:Yes)、コントローラ100は、処理1を中止する(S206)。処理1を実行中でない場合(S205:No)、または、処理1を中止した場合(S206)、コントローラ100は、処理2(図14)を開始し(S207)、カウントをクリアして(S208)、図12に示す処理を終了する。
【0065】
図14に示す処理2では、コントローラ100は、まず、現在のブーム角に応じて、バケット12の姿勢がチルトエンド(ダンプエンド)状態となる目標バケット角を決定する(S401)。次に、コントローラ100は、現在のバケット角が目標バケット角となるように指令を出力する(S402)。次に、コントローラ100は、ダンプ側(チルト側)へのレバー操作を検出したか否かを判断する(S403)。ダンプ側(チルト側)へのレバー操作を検出した場合(S403:Yes)、コントローラ100は、処理を中止する(S404)。一方、ダンプ側(チルト側)へのレバー操作を検出しなかった場合(S403:No)、コントローラ100は、バケット12の接地が検出されたか否かを判断する(S405)。バケット12の接地が検出された場合(S405:Yes)、コントローラ100は、処理を中止し(S404)、バケット12の接地が検出されなかった場合(S405:No)、コントローラ100は、図14に示す処理を終了する。
【0066】
以上の処理によって、コントローラ100は、バケット12が第2姿勢または第1姿勢と第2姿勢間の姿勢である場合に、ダンプ側傾動保持操作が1回行われた場合、バケット12を第1姿勢(水平姿勢)に調整する。また、コントローラ100は、バケット12が第3姿勢または第1姿勢と第3姿勢間の姿勢である場合に、チルト側傾動保持操作が1回行われた場合、バケット12を第1姿勢(水平姿勢)に調整する。
【0067】
コントローラ100は、バケット12が任意の姿勢である場合に、チルト側傾動保持操作が所定時間内に連続的に繰り返して行われた場合、バケット12を第2姿勢(チルトエンド)に調整する。また、コントローラ100は、バケット12が任意の姿勢である場合に、ダンプ側傾動保持操作が所定時間内に連続的に繰り返して行われた場合、バケット12を第3姿勢(ダンプエンド)に調整する。
【0068】
(作用・効果)
以上のように、第2の実施形態に係るコントローラ100によれば、コントローラ100の目標バケット角決定部107は、バケット12の姿勢を操作する指令信号を受信した場合、第1の姿勢をバケット12の目標姿勢として可動支持部17を制御する。また、コントローラ100は、バケット12の現在の姿勢を示す指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、少なくとも3種類の目標姿勢のうち第1の姿勢とは異なる目標姿勢を選択してバケット12の目標姿勢とし、可動支持部17を制御する。
【0069】
目標バケット角決定部107は、操作信号検出部101から第1の指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、記憶部105に記憶されている少なくとも3種類の目標姿勢の設定値から第2の姿勢を目標姿勢として選択してバケット12の目標姿勢とし、可動支持部17を制御する。また、目標バケット角決定部107は、操作信号検出部101から第2の指令信号を所定時間内に連続的に繰り返して受信した場合、記憶部105に記憶されている少なくとも3種類の目標姿勢の設定値から第3の姿勢を目標姿勢として選択してバケット12の目標姿勢とし、可動支持部17を制御する。
【0070】
本実施形態によれば、バケット操作装置33に対して所定の傾動保持操作を行うことで、作業工具の姿勢を複数の姿勢に自動で調整することができる。
【0071】
<本実施形態の変形例または他の実施形態>
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0072】
例えば、ホイールローダ1は、遠隔操作できるものとしてもよい。この場合、コントローラ100の一部または全部と、操作装置32とを、例えば、遠隔操作を行う場所に設けることができる。
【0073】
また、例えば、作業機械(あるいは作業車両)は、ホイールローダに限定されず、作業工具と作業工具の可動支持部とを有する作業機を備える油圧ショベル等の他の作業機械とすることができる。また、作業工具は、バケットに限られない。作業工具は、例えばアタッチメントとしてホイールローダに交換可能に取り付けられるフォーク、ベールグラブ等としてもよい。
【0074】
また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 ホイールローダ(作業機械)、2 車体、3 キャブ、4 走行装置、5 車輪、6 タイヤ、10 作業機、11 ブーム、12 バケット(作業工具)、12T 刃先、13 ブームシリンダ、14 バケットシリンダ、15 ベルクランク、16 リンク、17 可動支持部、100 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14