(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183745
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】粘着組成物、粘着シートおよび電子デバイス
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20221206BHJP
C08L 101/08 20060101ALI20221206BHJP
C08L 101/06 20060101ALI20221206BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221206BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L101/08
C08L101/06
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091218
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】名取 直輝
(72)【発明者】
【氏名】馬場 英治
(72)【発明者】
【氏名】大橋 賢
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA052
4J002AA053
4J002AA062
4J002AA063
4J002AF00U
4J002AF02U
4J002BA01U
4J002BB04W
4J002BB07W
4J002BB10W
4J002BB11W
4J002BB11X
4J002BB11Y
4J002BB15W
4J002BB16W
4J002BB16Z
4J002BB17W
4J002BB17X
4J002BB17Y
4J002BB17Z
4J002BB18W
4J002BB18X
4J002BB18Y
4J002BB20W
4J002BB20X
4J002BB20Y
4J002BC04W
4J002BC10W
4J002BG07W
4J002BK00U
4J002BL01Z
4J002BL02Z
4J002CD17W
4J002CE00U
4J002DE066
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE096
4J002DE146
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002EZ007
4J002FD016
4J002FD34U
4J002GQ00
4J002GQ05
(57)【要約】
【課題】水蒸気侵入バリア性能および気泡抑制性能に優れた粘着層を形成できる粘着組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ基を有するオレフィン系重合体、(B)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体、(C)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体、並びに(D)吸湿性フィラーを含む粘着組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)成分~(D)成分:
(A)エポキシ基を有するオレフィン系重合体、
(B)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体、
(C)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体、並びに
(D)吸湿性フィラー
を含む粘着組成物。
【請求項2】
(B)成分が、酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体である請求項1に記載の粘着組成物。
【請求項3】
(C)成分が、酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体である請求項1または2に記載の粘着組成物。
【請求項4】
(B)成分の数平均分子量が、20,000~500,000である請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着組成物。
【請求項5】
(C)成分の数平均分子量が、500以上10,000未満である請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着組成物。
【請求項6】
(A)成分、(B)成分および(C)成分以外の液状オレフィン系重合体をさらに含む請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着組成物。
【請求項7】
さらに粘着付与剤を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着組成物。
【請求項8】
支持体および請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着組成物から形成された粘着層を含む積層構造を有する粘着シート。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着組成物から形成された粘着層を含む電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着組成物、粘着シートおよび電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイス、太陽電池、センサーデバイス等の電子デバイスの封止、液晶ディスプレイ等の表示装置の製造には、しばしば、粘着組成物、および粘着組成物から形成された粘着層を有する粘着シートが用いられる。
【0003】
電子デバイスの封止では、封止する電子デバイスを有効に保護するために、水蒸気の侵入を抑制する性能(本明細書中「水蒸気侵入バリア性能」と記載することがある)に優れた封止層または粘着層を形成することが求められる。
【0004】
また、過酷な環境(例えば、高温多湿)で用いられる電子デバイスまたは表示装置の封止または製造では、過酷な環境におかれても、気泡の発生を抑制する性能(本明細書中「気泡抑制性能」と記載することがある)に優れた封止層または粘着層を形成することが求められる。
【0005】
例えば、特許文献1には、高温高湿での粘着シートの白濁、発泡等を抑制するために、特定のせん断貯蔵弾性率を有する粘着剤層を有し、且つ特定の定荷重剥離試験での特定の剥離距離を有する光学用粘着シートが提案されている。また、特許文献2には、高温高湿での封止材の白濁、発泡等を抑制するために、特定の吸水率および特定のヘーズを有する透明封止材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-87240号公報
【特許文献2】特開2016-207970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水蒸気侵入バリア性能および気泡抑制性能に優れた粘着層を形成できる粘着組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] 以下の(A)成分~(D)成分:
(A)エポキシ基を有するオレフィン系重合体、
(B)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体、
(C)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体、並びに
(D)吸湿性フィラー
を含む粘着組成物。
[2] (B)成分が、酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体である前記[1]に記載の粘着組成物。
[3] (C)成分が、酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体である前記[1]または[2]に記載の粘着組成物。
[4] (B)成分の数平均分子量が、20,000~500,000である前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の粘着組成物。
[5] (C)成分の数平均分子量が、500以上10,000未満である前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の粘着組成物。
[6] (A)成分、(B)成分および(C)成分以外の液状オレフィン系重合体をさらに含む前記[1]~[5]のいずれか一つに記載の粘着組成物。
[7] さらに粘着付与剤を含む前記[1]~[6]のいずれか一つに記載の粘着組成物。
[8] 支持体および前記[1]~[7]のいずれか一つに記載の粘着組成物から形成された粘着層を含む積層構造を有する粘着シート。
[9] 前記[1]~[7]のいずれか一つに記載の粘着組成物から形成された粘着層を含む電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水蒸気侵入バリア性能および気泡抑制性能に優れた粘着層を形成できる粘着組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
粘着組成物
本発明の粘着組成物は、以下の(A)成分~(D)成分を含むことを特徴とする:
(A)エポキシ基を有するオレフィン系重合体、
(B)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体、
(C)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体、並びに
(D)吸湿性フィラー。
【0011】
(A)成分、(B)成分および(C)成分を使用することによって、これら成分が有するエポキシ基と、酸無水物基および/またはカルボキシ基とが反応して、本発明の粘着組成物から形成された粘着層中に架橋構造を形成することができる。このような架橋構造によって、得られた粘着層は、高温高湿下でも気泡の発生を抑制できると推定される。特に、数平均分子量が10,000以上である(B)成分を使用することによって、変形しにくく、その結果、気泡抑制性能に優れた粘着層を得ることができると推定される。但し、本発明はこのような推定メカニズムに限定されない。
【0012】
(D)成分を使用することによって、優れた水蒸気侵入バリア性能を有する粘着層を形成することができる。しかし、(D)成分が充分に分散されていない粘着組成物から形成された粘着層では、被着体への粘着層のラミネート時に、粘着層と被着体との間に微小な気泡が発生しやすくなる。高温高湿下では、そのような微小な気泡が膨張し、大きな気泡が形成されることがある。この点、本発明では、数平均分子量が10,000未満である(C)成分を使用することによって、粘着組成物中で(D)成分を良好に分散させることができ、その結果、気泡抑制性能に優れた粘着層を得ることができると推定される。但し、本発明はこのような推定メカニズムに限定されない。
【0013】
(A)成分~(D)成分は、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。以下、(A)成分~(D)成分について順に説明する。
【0014】
<(A)成分>
本発明で使用する(A)成分は、エポキシ基を有するオレフィン系重合体である。本明細書中、「オレフィン系重合体」とは、オレフィンに由来する構成単位(以下「オレフィン単位」と略称することがある)が主たる構成単位である(即ち、オレフィン単位の量が全構成単位の中で最大である)重合体を意味する。なお、以下では、オレフィン単位である「ブテンに由来する構成単位」等を「ブテン単位」等と略称することがある。
【0015】
オレフィン系重合体は、オレフィン系樹脂(例えば、プロピレン-ブテン共重合体)でもよく、オレフィン系ゴム(例えば、ブチルゴム、即ち、イソブテン-イソプレン共重合体)でもよい。本明細書中、「オレフィン系樹脂」とは、架橋によってゴム弾性体を形成できないオレフィン系重合体を意味し、「オレフィン系ゴム」とは、架橋によってゴム弾性体を形成できるオレフィン系重合体を意味する。
【0016】
オレフィンとしては、1個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有するモノオレフィンおよび/または2個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有するジオレフィンが好ましい。モノオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン(イソブチレン)、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィンが挙げられる。ジオレフィンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられる。
【0017】
オレフィン系重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。また、オレフィン系重合体は、オレフィンとオレフィン以外のモノマーとの共重合体でもよい。オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン-非共役ジエン共重合体、イソブテン-イソプレン共重合体、スチレン-イソブテン共重合体、スチレン-イソブテン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0018】
(A)成分中のエポキシ基の濃度は、粘着層の架橋密度をより適切な範囲とし、気泡発生の抑制と粘着性の均衡を図る観点から、好ましくは0.1~5mmol/g、より好ましくは0.3~3mmol/gである。エポキシ基濃度は、JIS K 7236-1995に基づいて得られるエポキシ当量から求められる。
【0019】
(A)成分の数平均分子量は、粘着組成物の流動性をより適切な範囲とし、気泡発生の抑制と粘着性の均衡を図る観点から、好ましくは10,000~500,000、より好ましくは30,000~400,000、さらに好ましくは50,000~300,000である。なお、各成分の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所社製「LC-9A/RID-6A」を、カラムとして昭和電工社製「Shodex K-800P/K-804L/K-804L」を、移動相としてトルエン等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0020】
(A)成分は、例えば、エポキシ基を有する不飽和化合物(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル)で、オレフィン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することによって得ることができる。
【0021】
(A)成分としては、例えば、星光PMC社から入手できる重合体を使用することができる。星光PMC社から入手できる該重合体としては、例えば「ER829」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体)、「ER850」(グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム)、「ER853」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体)、「ER866」(グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム)、「T-YP276」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体)、「T-YP313」(グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体)等が挙げられる。
【0022】
(A)成分は、好ましくはエポキシ基を有するプロピレン-ブテン共重合体および/またはエポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体(即ち、ブチルゴム)であり、より好ましくはエポキシ基を有するプロピレン-ブテン共重合体またはエポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体である。
【0023】
(A)成分として結晶性の低いプロピレン-ブテン共重合体を使用して得られる粘着層は、高温高湿で保管されても、その密着性が低下しにくい傾向がある。従って、(A)成分としてエポキシ基を有するプロピレン-ブテン共重合体を使用する場合、該共重合体の結晶性を下げるために、該共重合体中のブテン単位の量は、プロピレン単位およびブテン単位の合計あたり、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%である。なお、前記ブテン単位の量は、変性部分(例えば、エポキシ基を導入するためのグリシジル(メタ)アクリレートに由来する部分)を除いたプロピレン単位およびブテン単位を基準とする。
【0024】
(A)成分としてエポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体(即ち、ブチルゴム)を使用する場合、粘着層の耐湿性の観点から、該共重合体中のイソプレン単位の量は、イソブテン単位およびイソプレン単位の合計あたり、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.3~5質量%、さらに好ましくは0.5~3質量%である。なお、前記イソプレン単位の量は、変性部分(例えば、エポキシ基を導入するためのグリシジル(メタ)アクリレートに由来する部分)を除いたイソブテン単位およびイソプレン単位を基準とする。
【0025】
(A)成分および後述の(B)成分の含有量の合計は、粘着組成物の(D)成分を除いた不揮発分に対して、気泡発生の抑制の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、粘着性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。ここで、「粘着組成物の(D)成分を除いた不揮発分に対する(A)成分および(B)成分の含有量の合計」は、「100×((A)成分の質量+(B)成分の質量)/(粘着組成物の不揮発分の質量-(D)成分の質量)」を意味する。
【0026】
(A)成分および(B)成分の質量比((A)成分:(B)成分)は、より適切な架橋構造を形成するために、好ましくは5:95~95:5、より好ましくは10:90~90:10、さらに好ましくは80:20~20:80である。
【0027】
<(B)成分>
本発明で使用する(B)成分は、酸無水物基(即ち、カルボニルオキシカルボニル基(-CO-O-CO-))および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体であり、好ましくは酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体である。(B)成分における「オレフィン」および「オレフィン系重合体」の説明および例示は、(A)成分のものと同じである。
【0028】
(B)成分として酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体を使用する場合、該重合体中の酸無水物基の濃度は、粘着層の架橋密度をより適切な範囲とし、気泡発生の抑制と粘着性の均衡を図る観点から、好ましくは0.1~5mmol/g、より好ましくは0.2~3mmol/gである。酸無水物基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、重合体1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0029】
(B)成分としてカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体を使用する場合、該重合体中のカルボキシ基の濃度は、気泡発生の抑制と粘着性の均衡を図る観点から、好ましくは0.1~5mmol/g、より好ましくは0.2~3mmol/gである。カルボキシ基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、重合体1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0030】
(B)成分として酸無水物基およびカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるオレフィン系重合体を使用する場合、該重合体中の酸無水物基の濃度とカルボキシ基の濃度との合計は、気泡発生の抑制と粘着性の均衡を図る観点から、好ましくは0.1~5mmol/g、より好ましくは0.2~3mmol/gである。
【0031】
(B)成分の数平均分子量は、粘着組成物の流動性をより適切な範囲とし、気泡発生の抑制と粘着性の均衡を図る観点から、好ましくは20,000~500,000、より好ましくは25,000~400,000、さらに好ましくは30,000~300,000である。
【0032】
(B)成分は、例えば、酸無水物基および/またはカルボキシ基を有する不飽和化合物(例えば、無水マレイン酸)で、オレフィン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することによって製造することができる。
【0033】
(B)成分としては、例えば、星光PMC社から入手できる重合体を使用することができる。星光PMC社から入手できる該重合体としては、例えば「ER641」(無水マレイン酸変性ブチルゴム)、「ER645」(無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性プロピレン-ブテンランダム共重合体)、「ER661」(無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム)、「ER669」(無水マレイン酸-2-エチルヘキシルアクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム、「ER674」(無水マレイン酸-ラウリルメタクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム)等が挙げられる。
【0034】
本発明の一態様において、(B)成分は、
(i)好ましくは酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるプロピレン-ブテン共重合体、および/または酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン-イソプレン共重合体(即ち、ブチルゴム)であり、
(ii)より好ましくは酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるプロピレン-ブテン共重合体、または酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン-イソプレン共重合体であり、
(iii)さらに好ましくは酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるプロピレン-ブテン共重合体、または酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン-イソプレン共重合体である。
【0035】
(B)成分として結晶性の低いプロピレン-ブテン共重合体を使用して得られる粘着層は、高温高湿で保管されても、その密着性が低下しにくい傾向がある。従って、(B)成分として酸無水物基および/またはカルボキシ基(好ましくは酸無水物基)を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるプロピレン-ブテン共重合体を使用する場合、該共重合体の結晶性を下げるために、該共重合体中のブテン単位の量は、プロピレン単位およびブテン単位の合計あたり、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%である。なお、前記ブテン単位の量は、変性部分(例えば、酸無水物基を導入するための、無水マレイン酸に由来する部分、無水マレイン酸-(メタ)アクリレート共重合体に由来する部分等)を除いたプロピレン単位およびブテン単位を基準とする。
【0036】
(B)成分として酸無水物基および/またはカルボキシ基(好ましくは酸無水物基)を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン-イソプレン共重合体(即ち、ブチルゴム)を使用する場合、粘着層の耐湿性の観点から、該共重合体中のイソプレン単位の量は、イソブテン単位およびイソプレン単位の合計あたり、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~3質量%である。なお、前記イソプレン単位の量は、変性部分(例えば、酸無水物基を導入するための、無水マレイン酸に由来する部分、無水マレイン酸-(メタ)アクリレート共重合体に由来する部分等)を除いたイソブテン単位およびイソプレン単位を基準とする。
【0037】
<(C)成分>
本発明で使用する(C)成分は、酸無水物基(即ち、カルボニルオキシカルボニル基(-CO-O-CO-))および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体であり、好ましくは酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体である。(C)成分におけるオレフィン系重合体の説明および例示は、(A)成分のものと同じである。
【0038】
(C)成分として酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体を使用する場合、該重合体中の酸無水物基の濃度は、(D)成分の分散および気泡発生の抑制の観点から、好ましくは0.1~3mmol/g、より好ましく0.2~2mmol/gである。酸無水物基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、重合体1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0039】
(C)成分としてカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体を使用する場合、該重合体中のカルボキシ基の濃度は、(D)成分の分散および気泡発生の抑制の観点から、好ましくは0.1~3mmol/g、より好ましくは0.2~2mmol/gである。カルボキシ基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、重合体1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0040】
(C)成分として酸無水物基およびカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体を使用する場合、該重合体中の酸無水物基の濃度とカルボキシ基の濃度との合計は、(D)成分の分散および気泡発生の抑制の観点から、好ましくは0.1~3mmol/g、より好ましくは0.2~2mmol/gである。
【0041】
(C)成分の数平均分子量は、(D)成分の分散の観点から、好ましくは500以上10,000未満、より好ましくは700~8,000、さらに好ましくは1,000~6,000である。
【0042】
(C)成分は、例えば、酸無水物基および/またはカルボキシ基を有する不飽和化合物(例えば、無水マレイン酸)で、オレフィン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することによって製造することができる。
【0043】
(C)成分としては、メーカーから入手できる重合体を使用することができる。そのような重合体としては、例えば、東邦化学工業社製「HV-300M」(無水マレイン酸変性液状ポリブテン)、星光PMC社製「ER688」(無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性ポリブテン)、三井化学社製「ルーカントA-5515」(酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体)、「ルーカントA-5260」(酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体)、「ルーカントA-5320H」(酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体)等が挙げられる。
【0044】
本発明の一態様において、(C)成分は、好ましくは酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるポリブテンであり、より好ましくは酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるポリブテンである。
【0045】
(C)成分の含有量は、(D)成分100質量部に対して、(D)成分の分散の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、気泡抑制の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0046】
<(A)成分の使用量、並びに(B)成分および(C)成分の使用量>
(A)成分の使用量、並びに(B)成分および(C)成分の使用量は、これらが有する官能基の比によって定めることが好ましい。「(A)成分が有するエポキシ基の量(mol)」:「(B)成分および(C)成分が有する酸無水物基の量(mol)およびカルボキシ基の量(mol)の合計」は、架橋による気泡抑制の観点から、好ましくは20:80~80:20、より好ましくは25:75~75:25、さらに好ましくは30:70~70:30である。なお、例えば(B)成分および(C)成分がいずれも酸無水物基のみを有する場合、前記「酸無水物基の量(mol)およびカルボキシ基の量(mol)の合計」は「酸無水物基の量(mol)の合計」を意味する。
【0047】
<(D)成分>
本発明で使用する(D)成分は、吸湿性フィラーである。(D)成分としては、例えば、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、焼成ドロマイト(酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムを含む混合物)、水素化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム、モレキュラーシーブ、シリカ等が挙げられる。(D)成分は、好ましくは半焼成ハイドロタルサイトおよび/または酸化カルシウムであり、より好ましくは半焼成ハイドロタルサイトまたは酸化カルシウムである。
【0048】
ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイト、および焼成ハイドロタルサイトに分類することができる。
【0049】
未焼成ハイドロタルサイトは、例えば、天然ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)に代表されるような層状の結晶構造を有する金属水酸化物であり、例えば、基本骨格となる層[Mg1-XAlX(OH)2]X+と中間層[(CO3)X/2・mH2O]X-からなる。未焼成ハイドロタルサイトは、合成ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイト様化合物を含む概念である。ハイドロタルサイト様化合物としては、例えば、下記式(I)および下記式(II)で表されるものが挙げられる。
【0050】
[M2+
1-xM3+
x(OH)2]x+・[(An-)x/n・mH2O]x- (I)
(式中、M2+は、Mg2+、Zn2+等の2価の金属イオンを表し、M3+は、Al3+、Fe3+等の3価の金属イオンを表し、An-は、CO3
2-、Cl-、NO3
-等のn価のアニオンを表し、0<x<1であり、0≦m<1であり、nは、正の数である。)
式(I)中、M2+は、好ましくはMg2+であり、M3+は、好ましくはAl3+であり、An-は、好ましくはCO3
2-である。
【0051】
M2+
xAl2(OH)2x+6-nz(An-)z・mH2O (II)
(式中、M2+は、Mg2+、Zn2+等の2価の金属イオンを表し、An-は、CO3
2-、Cl-、NO3
-等のn価のアニオンを表し、xは、2以上の正の数であり、zは、2以下の正の数であり、mは、正の数であり、nは、正の数である。)
式(II)中、M2+は、好ましくはMg2+であり、An-は、好ましくはCO3
2-である。
【0052】
半焼成ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイトを焼成して得られる、層間水の量が減少または消失した層状の結晶構造を有する金属水酸化物をいう。「層間水」とは、組成式を用いて説明すれば、上述した未焼成の天然ハイドロタルサイトおよびハイドロタルサイト様化合物の組成式に記載の「H2O」を指す。
【0053】
一方、焼成ハイドロタルサイトは、未焼成ハイドロタルサイトまたは半焼成ハイドロタルサイトを焼成して得られ、層間水だけでなく、水酸基も縮合脱水によって消失した、アモルファス構造を有する金属酸化物をいう。
【0054】
未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、飽和吸水率により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、1質量%以上20質量%未満である。一方、未焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、1質量%未満であり、焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、20質量%以上である。
【0055】
「飽和吸水率」とは、測定試料(例えば、半焼成ハイドロタルサイト)を天秤にて1.5g量り取り、初期質量を測定した後、大気圧下、60℃、90%RH(相対湿度)に設定した小型環境試験器(エスペック社製SH-222)に200時間静置した場合の、初期質量に対する質量増加率を言い、下記式(i):
飽和吸水率(質量%)
=100×(吸湿後の質量-初期質量)/初期質量 (i)
で求めることができる。
【0056】
半焼成ハイドロタルサイトの飽和吸水率は、好ましくは3質量%以上20質量%未満、より好ましくは5質量%以上20質量%未満である。
【0057】
また、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、熱重量分析で測定される熱重量減少率により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトの280℃における熱重量減少率は、15質量%未満であり、かつその380℃における熱重量減少率は、12質量%以上である。一方、未焼成ハイドロタルサイトの280℃における熱重量減少率は、15質量%以上であり、焼成ハイドロタルサイトの380℃における熱重量減少率は、12質量%未満である。
【0058】
熱重量分析は、日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA EXSTAR6300を用いて、アルミニウム製のサンプルパンにハイドロタルサイトを5mg秤量し、蓋をせずオープンの状態で、窒素流量200mL/分の雰囲気下、30℃から550℃まで昇温速度10℃/分の条件で行うことができる。熱重量減少率は、下記式(ii):
熱重量減少率(質量%)
=100×(加熱前の質量-所定温度に達した時の質量)/加熱前の質量 (ii)で求めることができる。
【0059】
また、未焼成ハイドロタルサイト、半焼成ハイドロタルサイトおよび焼成ハイドロタルサイトは、粉末X線回折で測定されるピークおよび相対強度比により区別することができる。半焼成ハイドロタルサイトは、粉末X線回折により2θが8~18°付近に二つにスプリットしたピーク、または二つのピークの合成によりショルダーを有するピークを示し、低角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度(=低角側回折強度)と、高角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度(=高角側回折強度)の相対強度比(低角側回折強度/高角側回折強度)は、0.001~1,000である。一方、未焼成ハイドロタルサイトは、8~18°付近で一つのピークしか有しないか、または低角側に現れるピークまたはショルダーと高角側に現れるピークまたはショルダーの回折強度の相対強度比が前述の範囲外となる。焼成ハイドロタルサイトは、8°~18°の領域に特徴的ピークを有さず、43°に特徴的なピークを有する。粉末X線回折測定は、粉末X線回折装置(パナリティカル(PANalytical)社製、エンピリアン(Empyrean))により、対陰極CuKα(1.5405Å)、電圧:45V、電流:40mA、サンプリング幅:0.0260°、走査速度:0.0657°/s、測定回折角範囲(2θ):5.0131~79.9711°の条件で行った。ピークサーチは、回折装置付属のソフトウエアのピークサーチ機能を利用し、「最小有意度:0.50、最小ピークチップ:0.01°、最大ピークチップ:1.00°、ピークベース幅:2.00°、方法:2次微分の最小値」の条件で行うことができる。
【0060】
半焼成ハイドロタルサイトのBET比表面積は、1~250m2/gが好ましく、5~200m2/gがより好ましい。これらのBET比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(Macsorb HM Model 1210 マウンテック社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
【0061】
半焼成ハイドロタルサイトの粒子径は、1~1,000nmが好ましく、10~800nmがより好ましい。これらの粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定(JIS Z 8825)により粒度分布を体積基準で作成したときの該粒度分布のメジアン径である。
【0062】
半焼成ハイドロタルサイトは、表面処理剤で表面処理したものを用いることができる。表面処理に使用する表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、アルキルシラン類、シランカップリング剤等を使用することができ、なかでも、高級脂肪酸、アルキルシラン類が好適である。表面処理剤は、1種または2種以上を使用できる。
【0063】
半焼成ハイドロタルサイトは、市販品を使用することができる。その市販品としては、例えば、協和化学工業社製「DHT-4C」、「DHT-4A-2」等が挙げられる。
【0064】
酸化カルシウムは、市販品を使用することができる。その市販品としては、例えば、井上石灰工業社製「QC-X」;三共製粉社製「モイストップ#10」;吉澤石灰工業社製「HAL-G」、「HAL-J」、「HAL-F」;Filgen社製「CaO Nano Powder」等が挙げられる。
【0065】
酸化カルシウムの粒子径および酸化カルシウムを含む混合物の粒子径は、それぞれ、好ましくは0.03~10μm、より好ましくは0.05~5μm、さらに好ましくは0.1~3μmである。これらの粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定(JIS Z 8825)により粒度分布を体積基準で作成したときの該粒度分布のメジアン径である。
【0066】
(D)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発分に対して、粘着層の水蒸気侵入バリア性能の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、粘着層の密着性の観点から、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。ここで、「粘着組成物の不揮発分に対する(D)成分の含有量」とは、「100×(D)成分の質量/粘着組成物の不揮発分の質量」を意味する。
【0067】
<他の成分>
本発明の粘着組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、(A)成分~(D)成分以外の成分(以下「他の成分」と記載することがある)を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、液状オレフィン系重合体、粘着付与剤、酸化防止剤、金属錯体、硬化剤促進剤等が挙げられる。これらは、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。以下、液状オレフィン系重合体等について順に説明する。
【0068】
(液状オレフィン系重合体)
本発明において、粘着層のタック性を向上させ、その密着性を改善するために、(A)成分、(B)成分および(C)成分以外の液状オレフィン系重合体を使用してもよい。本発明において「液状オレフィン系重合体」における「液状」とは、25℃での粘度が5,000Pa・s以下であることを意味する。また、本発明において「25℃での粘度」とは、動的粘弾性測定装置で測定される25℃での動粘度に、密度を掛けて算出される粘度を意味する。動的粘弾性測定装置としては、例えば、TAインスツルメント社製レオメーター(商品名:DISCOVERY HR-2)等が挙げられる。「液状オレフィン系重合体」における「オレフィン」および「オレフィン系重合体」の説明および例示は、(A)成分のものと同じである。
【0069】
本発明において、エポキシ基を有する液状オレフィン系重合体は、(A)成分に分類される。また、本発明において、酸無水物基および/またはカルボキシ基を有する液状オレフィン系重合体は、その数平均分子量に応じて、(B)成分または(C)成分に分類される。
【0070】
液状オレフィン系重合体の25℃での粘度は、粘着層の密着性改善の観点から、好ましくは50~5,000Pa・s、より好ましくは100~4,000Pa・s、さらに好ましくは200~3,000Pa・sである。
【0071】
液状ポリオレフィン系重合体の数平均分子量は、粘着層の密着性改善の観点から、好ましくは100~50,000、より好ましくは200~30,000、さらに好ましくは300~20,000である。
【0072】
液状オレフィン系重合体は、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば、ENEOS社製「HV-300」(液状ポリブテン)、ENEOS社製「HV-1900」(液状ポリブテン)、ENEOS社製「HV-50」(液状ポリブテン)、ENEOS社製「HV-35」(液状ポリブテン)、Kothari社製「950MW」(液状ポリブテン)、Kothari社製「2400MW」(液状オレフィン系重合体)、INEOS社製「H-1900」(液状ポリブテン)、INEOS社製「H-6000」(液状ポリブテン)、INEOS社製「H-18000」(液状ポリブテン)、日油社製「200N」(液状ポリブテン)、日本曹達社製「BI-2000」(水素化ポリブタジエン)、日本曹達社製「BI-3000」(水素化ポリブタジエン)、日本曹達社製「GI-3000」(水素化ポリブタジエン)、三井化学社製「ルーカントLX100」(液状オレフィン系重合体)、三井化学社製「ルーカントLX400」(液状オレフィン系重合体)、出光昭和シェル社製「Poly bd R-45HT」(ブタジエン系液状ゴム)、出光昭和シェル社製「Poly bd R-15HT」(ブタジエン系液状ゴム)、出光昭和シェル社製「Poly ip」(液状ポリイソプレン)、日本曹達社製「B-1000」(液状ポリブタジエン)、日本曹達社製「B-3000」(液状ポリブタジエン)、日本曹達社製「G-3000」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「LIR-30」(液状ポリイソプレン)、クラレ社製「LIR-390」(液状ポリイソプレン)、クラレ社製「LIR-290」(液状ポリイソプレン)、クラレ社製「LBR-302」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「LBR-305」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「LBR-361」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「L-SBR-820」(液状スチレン-ブタジエンランダム共重合体)、CRAY VALLEY社製「Ricon154」(液状ブタジエン)、CRAY VALLEY社製「RICON 184」(液状スチレン-ブタジエンランダム共重合体)等が挙げられる。
【0073】
液状オレフィン系重合体は、好ましくは液状ポリブテンである。
液状オレフィン系重合体を使用する場合、粘着組成物中のその含有量は、粘着層の密着性の観点から、粘着組成物の(D)成分を除いた不揮発分に対して、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは15~50質量%である。ここで、「粘着組成物の(D)成分を除いた不揮発分に対する液状オレフィン系重合体の含有量」とは、「100×液状オレフィン系重合体の質量/(粘着組成物の不揮発分の質量-(D)成分の質量)」を意味する。「粘着組成物の(D)成分を除いた不揮発分に対する、液状オレフィン系重合体以外の成分の含有量」も、「粘着組成物の(D)成分を除いた不揮発分に対する液状オレフィン系重合体の含有量」と同様の意味である。
【0074】
(粘着付与剤)
粘着付与剤は、粘着組成物に粘着性を付与する成分である。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂(水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール共重合樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等)、石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、水添系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂)、クマロン-インデン樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0075】
粘着付与剤は市販品を使用することができる。その市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、パインクリスタル ME-H、パインクリスタル ME-D、パインクリスタル ME-G、パインクリスタル KR-85、パインクリスタル KE-311、パインクリスタル KE-359、パインクリスタル D-6011、パインクリスタル PE-590、パインクリスタル KE-604、パインクリスタル PR-580(いずれも荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0076】
テルペン樹脂としては、例えばYSレジンPX1000、YSレジンPX1150、YSレジンPX1150N、YSレジンPX1250、YSレジンTH130、YSレジンTR105、YSレジンLP、YSレジンCP(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0077】
水素添加テルペン樹脂としては、例えばクリアロンP、クリアロンM、クリアロンKシリーズ(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0078】
テルペンフェノール共重合樹脂としては、例えばYSポリスター2000、ポリスターU、ポリスターT、ポリスターS、マイティエースG(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0079】
芳香族変性テルペン樹脂としては、例えばYSレジンTO85、YSレジンTO105、YSレジンTO115、YSレジンTO125(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0080】
水添系石油樹脂としては、例えばEscorez5300シリーズ、5600シリーズ(いずれもエクソンモービル社製);T-REZ OP501、T-REZ PR803、T-REZ HA085、T-REZ HA103、T-REZ HA105、T-REZ HA125、(いずれも水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ENEOS社製);Quintone1325、Quintone1345(いずれも日本ゼオン社製);アイマーブS-100、アイマーブS-110、アイマーブP-100、アイマーブP-125、アイマーブP-140(いずれも水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂、出光興産社製);アルコン P-90、アルコン P-100、アルコン P-115、アルコンP-125、アルコン P-140、アルコン M-90、アルコン M-100、アルコン M-115、アルコン M-135、TFS13-030(いずれも荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0081】
芳香族系石油樹脂としては、例えばENDEX155(イーストマン社製);ネオポリマーL-90、ネオポリマー120、ネオポリマー130、ネオポリマー140、ネオポリマー150、ネオポリマー170S、ネオポリマー160、ネオポリマーE-100、ネオポリマーE-130、ネオポリマーM-1、ネオポリマーS、ネオポリマーS100、ネオポリマー120S、ネオポリマー130S、ネオポリマーEP-140(いずれもENEOS社製);ペトコールLX、ペトコール120、ペトコール130、ペトコール140(いずれも東ソー社製);T-REZ RB093、T-REZ RC100、T-REZ RC115、T-REZ RC093、T-REZ RE100(いずれもENEOS社製)等が挙げられる。
【0082】
共重合系石油樹脂としては、T-REZ HB103、T-REZ HB125、T-REZ PR801、T-REZ PR802、T-REZ RD104(いずれもENEOS社製);ペトロタック60、ペトロタック70、ペトロタック90、ペトロタック90HS、ペトロタック90V、ペトロタック100V(いずれも東ソー社製);QuintoneD100(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0083】
粘着付与剤の軟化点は、粘着組成物の耐熱性等の観点から、50~200℃が好ましく、90~180℃がより好ましく、100~150℃がさらに好ましい。なお、軟化点は、JIS K2207に従い環球法により測定される。
【0084】
粘着付与剤を使用する場合、粘着組成物中のその含有量は、粘着層の密着性の観点から、粘着組成物の(D)成分を除いた不揮発分に対して、好ましくは2~70質量%、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。
【0085】
(酸化防止剤)
本発明において酸化防止剤に特に限定はなく、公知のものを使用することができる。酸化防止剤を使用する場合、その含有量は、粘着組成物の(D)成分を除いた不揮発分に対して、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.10~4質量%、さらに好ましくは0.20~3質量%である。
【0086】
(金属錯体)
(D)成分を組成物中でより良好に分散させるために、二つの配位原子がともに酸素原子である二座配位子(以下「酸素-二座配位子」と記載することがある)および配位原子が酸素原子である単座配位子(以下「酸素-単座配位子」と記載することがある)が中心金属に結合した金属錯体を使用してもよい。
【0087】
前記金属錯体は、好ましくは、下記式(1):
【0088】
【0089】
[式(1)中、
Mは、2価以上の金属を表し、
R1およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、
R2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、またはアラルキル基を表し、
Xは、単座配位子を表し、
式(1)中の[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の実線は共有結合を表し、
式(1)中の[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の破線は配位結合を表し、並びに
mは、3または4を表し、nは、0~4の整数を表し、m≧nである。]
で表される金属錯体(以下「金属錯体(1)」と略称することがある)である。金属錯体(1)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
上記式(1)中のMは、好ましくは周期表第4族の金属または周期表第13族の金属であり、より好ましくはアルミニウム、チタンまたはジルコニウムである。
【0091】
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0092】
本明細書において、アルキル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキル基(但し、長鎖アルキル(メタ)アクリレート中のアルキル基を除く)の炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、特に好ましくは1~6である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基等が挙げられる。アルキル基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0093】
本明細書において、アルケニル基は直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~20である。アルケニル基としては、例えば、エテニル基(即ち、ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0094】
本明細書において、アルキニル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキニル基の炭素数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6である。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、4-メチル-2-ペンチニル基等が挙げられる。アルキニル基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0095】
本明細書において、アリール基の炭素数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基等が挙げられる。アリール基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0096】
本明細書において、アラルキル基の炭素数は、好ましくは7~16である。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。アラルキル基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0097】
本明細書において、置換基を有していてもよいアミノ基としては、例えば、アミノ基、モノ-またはジ-アルキルアミノ基(例、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジブチルアミノ基)、モノ-またはジ-シクロアルキルアミノ基(例、シクロプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、モノ-またはジ-アリールアミノ基(例、フェニルアミノ基)、モノ-またはジ-アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基)、複素環アミノ基(例、ピリジルアミノ基)等が挙げられる。
【0098】
本明細書において、アルコキシ基(即ち、アルキルオキシ基)中のアルキル基の説明は、上述のアルキル基の説明と同じである。アルコキシ基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0099】
本明細書において、アルケニルオキシ基中のアルケニル基の説明は、上述のアルケニル基の説明と同じである。アルケニルオキシ基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0100】
本明細書において、アルコキシカルボニル基(即ち、アルキルオキシカルボニル基)中のアルキル基の説明は、上述のアルキル基の説明と同じである。アルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0101】
式(1)中のXで表される単座配位子としては、例えば、アルコキシドアニオン(RO-)(前記式中、Rは有機基を示す)、カルボキシレートアニオン(RCOO-)(前記式中、Rは有機基を示す)、オキソ(O)等が挙げられる。
【0102】
アルコキシドアニオンは、RO-(前記式中、Rは有機基を示す)で表される。有機基Rは脂肪族基または芳香族基のいずれでもよい。また、脂肪族基は飽和脂肪族基または不飽和脂肪族基のいずれでもよい。有機基Rの炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは6~18、特に好ましくは8~14である。アルコキシドアニオン(RO-)としては、例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、イソブトキシド、sec-ブトキシド、tert-ブトキシド、ペンチルオキシド、ヘキシルオキシド、フェノキシド、4-メチルフェノキシド等が挙げられる。
【0103】
カルボキシレートアニオンは、RCOO-(前記式中、Rは有機基を示す)で表される。有機基Rは脂肪族基または芳香族基のいずれでもよい。また、脂肪族基は飽和脂肪族基または不飽和脂肪族基のいずれでもよい。有機基Rの炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは6~18、特に好ましくは8~14である。カルボキシレートアニオン(RCOO-)としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、安息香酸等のカルボン酸に対応するカルボキシレートアニオン等が挙げられる。
【0104】
式(1)中の[ ]内が多座配位子を表す、多座配位子としては、例えば、アセチルアセトン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、アセチルアセトアルデヒド、2,4-ヘキサンジオン、2,4-ヘプタンジオン、5-メチル-2,4-ヘキサンジオン、5,5-ジメチル-2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルアセトフェノン、サリチルアルデヒド、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン、3-メトキシ-2,4-ペンタンジオン、3-シアノ-2,4-ペンタンジオン、3-ニトロ-2,4-ペンタンジオン、3-クロロ-2,4-ペンタンジオン、アセト酢酸、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、サリチル酸、サリチル酸メチル、マロン酸、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が挙げられる。中心金属に配位した状態では多座配位子は、それからプロトンを一つまたはそれ以上取り去った構造となる。
【0105】
Mがアルミニウムである金属錯体(1)の具体例としては、アルミニウムジイソプロピレートモノsec-ブチレート、アルミニウムトリsec-ブチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムオクタデセニルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジn-ブチレート、アルミニウムプロピルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムn-ブチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0106】
Mがチタンである金属錯体(1)の具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、テトラtert-ブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート(別名:ビス(2-エチルヘキシルオキシ)ビス(2-エチル-3-オキソヘキシルオキシ)チタン(IV))、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、アリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンジノルマルブトキシドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタン(IV)テトラ(メチルフェノラート)、チタンオキシドビス(2,4-ペンタンジオネート)、モノイソプロポキシチタントリイソステアレート、ジイソプロポキシチタンジイソステアレーが挙げられる。
【0107】
Mがジルコニウムである金属錯体(1)の具体例としては、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)、ジルコニウムアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、ジルコニウムジノルマルブトキシドビス(2,4-ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(2,4-ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムブトキシド(アセチルアセテート)ビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシドモノアセチルアセトネート、オクチル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、トリノルマルブトキシジルコニウムモノオクチレート、トリノルマルブトキシジルコニウムモノステアレートが挙げられる。
【0108】
金属錯体を使用する場合、粘着組成物中のその含有量は、(D)成分の分散の観点から、粘着組成物の(D)成分を除いた不揮発分に対して、好ましくは0.03~3質量%、より好ましくは0.05~2.5質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%である。
【0109】
(硬化促進剤)
本発明において、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分および(C)成分の酸無水物基および/またはカルボキシ基との架橋反応を促進するために、硬化促進剤を使用してもよい。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、3級・4級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、有機ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0110】
イミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ドデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0111】
3級・4級アミン系化合物としては、特に制限はないが、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルメチルアンモニウム・2-エチルヘキサン酸塩等の4級アンモニウム塩;DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5)、DBU-フェノール塩、DBU-オクチル酸塩、DBU-p-トルエンスルホン酸塩、DBU-ギ酸塩、DBU-フェノールノボラック樹脂塩等のジアザビシクロ化合物;ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TAP)等の3級アミンまたはそれらの塩、芳香族ジメチルウレア、脂肪族ジメチルウレア等のジメチルウレア化合物;等が挙げられる。
【0112】
ジメチルウレア化合物としては、例えば、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア;U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましく用いられる。
【0113】
有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuP-K、TPP-SCN、TPP-S(いずれも北興化学工業社製)等が挙げられる。
【0114】
硬化促進剤を使用する場合、粘着組成物中のその含有量は、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分および(C)成分の酸無水物基および/またはカルボキシ基との架橋反応を促進するために、粘着組成物の(D)成分を除いた不揮発分に対して、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.010~0.5質量%、さらに好ましくは0.015~0.25質量%である。
【0115】
粘着シート
本発明は、支持体および本発明の粘着組成物から形成された粘着層を含む積層構造を有する粘着シートも提供する。本発明では保護シートを使用してもよい。即ち、本発明の粘着シートは、支持体、粘着層、および保護シートをこの順に含む積層構造を有していてもよい。支持体と粘着層との間、および粘着層と保護シートとの間に、他の層(例えば離型層)が存在していてもよい。
【0116】
支持体および保護シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン;シクロオレフィンポリマー;ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と記載することがある)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド等のプラスチックフィルム等が挙げられる。支持体および保護シートは、いずれも単層フィルムでもよく、積層フィルムでもよい。
【0117】
支持体および保護シートとして、例えば、バリア層を有する低透湿性フィルム、またはバリア層を有する低透湿性フィルムと別のフィルムとの積層フィルムを使用することができる。バリア層としては、例えば、シリカ蒸着膜、窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜等の無機膜が挙げられる。バリア層は、複数の無機膜の複数層(例えば、シリカ蒸着膜)で構成されていてもよい。また、バリア層は、有機物と無機物から構成されていてもよく、有機層と無機膜の複合多層であってもよい。
【0118】
保護シートでは、粘着層と接する面が離型処理されていることが好ましい。一方、支持体は、離型処理されていてもよく、離型処理されていなくてもよい。離型処理としては、例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤による離型処理が挙げられる。
【0119】
支持体および保護シートの厚さは、特に限定されないが、粘着シートの取り扱い性等の観点から、それぞれ、好ましくは10~150μm、より好ましくは20~100μmである。なお、支持体および保護シートが積層フィルムである場合、前記厚さは、積層フィルムの厚さである。一方、粘着層の厚さは、凹凸のある基板へラミネートする際の埋め込み性および水蒸気バリア性能の観点から、好ましくは1~200μm、より好ましくは3~150μm、さらに好ましくは5~100μmである。粘着層の厚さが1μm以上であると、粘着層が凹凸により良好に追従し、埋め込み性をより向上させることができる。粘着層の厚さが200μm以下であると、粘着層断面からの水蒸気侵入がより良好に抑制され、水蒸気バリア性能をより良好なものとすることができる。
【0120】
粘着組成物および粘着シートの製造
本発明の粘着組成物は、上述の成分を公知の機器を使用して混合することによって製造することができる。
【0121】
本発明の粘着シートは、例えば、(i)上述の成分を有機溶剤に溶解または分散させて、粘着組成物のワニスを調製し、(ii)得られたワニスを支持体上に塗布して塗膜を形成し、(iii)得られた塗膜を加熱して有機溶剤を除去することによって、製造することができる。
【0122】
ワニスの調製に使用し得る有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ等のセロソルブ類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンのアミド類;等を挙げることができる。有機溶剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤として市販品を使用してもよい。その市販品としては、例えば、丸善石油化学社製「スワゾール」、出光興産社製「イプゾール」等が挙げられる。ワニスの塗布は、公知の方法(例えば、ダイコーターを使用する方法)で行えばよく、塗布方法に特に限定はない。
【0123】
(A)成分のエポキシ基と、(B)成分および(C)成分の酸無水物基および/またはカルボキシ基との反応を進行させるために、有機溶剤の除去は、塗膜を加熱することによって行うことが好ましい。塗膜の加熱温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは100~180℃であり、その時間は、好ましくは2~90分、より好ましくは5~60分である。塗膜の加熱は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
【0124】
粘着組成物および粘着シートの用途
本発明の粘着組成物および粘着シートは、電子デバイス(例えば、有機ELデバイス、太陽電池、センサーデバイス等)、導電性基板等の封止に用いることができる。電子デバイスとしては、例えば、有機ELデバイス、太陽電池、センサーデバイス等が挙げられる。電子デバイスは、より好ましくは有機ELデバイスまたは太陽電池等の水分に弱い電子デバイスである。
【0125】
電子デバイス
本発明は、本発明の粘着組成物から形成された粘着層を含む電子デバイスも提供する。本発明の電子デバイスは、例えば、(i)本発明の粘着組成物を用いて本発明の粘着シートを製造し、(ii)本発明の粘着シートを使用して電子デバイス中の粘着層を形成することによって(例えば、電子デバイスの基板上に本発明の粘着シートを積層して粘着層を形成することによって)、製造することができる。また、本発明の電子デバイスは、例えば、本発明の粘着シートを複数の材料(例えば、タッチパネルセンサー、偏光板、表面保護シート等)の層間接着のために使用し、任意の材料(層)上に本発明の粘着シートにより粘着層を形成し、その上からさらに別の任意の材料(層)を積層する工程を経て、製造することができる。
【実施例0126】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、成分の量および共重合単位の量における「部」および「%」は、特に断りがない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0127】
<成分>
実施例および比較例で用いた成分を以下に示す。
(1)(A)成分
「ER853」(星光PMC社製、グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、エポキシ基濃度:1.63mmol/g、数平均分子量:113,000、プロピレン単位/ブテン単位:71%/29%)
「ER829」(星光PMC社製、グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、エポキシ基濃度:0.64mmol/g、数平均分子量:168,000、プロピレン単位/ブテン単位:71%/29%)
「ER866」(星光PMC社製、グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム、エポキシ基濃度:1.63mmol/g、数平均分子量:113,000、イソブテン単位/イソプレン単位:98.9%/1.1%)
【0128】
(2)(B)成分
「ER645」(星光PMC社製、無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性プロピレン-ブテンランダム共重合体、ブチルメタクリレート単位の濃度:0.32mmol/g、酸無水物基濃度:1.18mmol/g、数平均分子量:59,000、プロピレン単位/ブテン単位:71%/29%)
「ER661」(星光PMC社製、無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム、ブチルメタクリレート単位の濃度:0.32mmol/g、酸無水物基濃度:0.46mmol/g、数平均分子量:40,000、イソブテン単位/イソプレン単位:98.9%/1.1%)
【0129】
(3)(C)成分
「HV-300M」(東邦化学工業社製、無水マレイン酸変性液状ポリブテン、酸無水物基濃度:0.77mmol/g、数平均分子量:2,100)
【0130】
(4)(D)成分
「DHT-4C」(協和化学工業社製、半焼性ハイドロタルサイト、メジアン径:400nm、BET比表面積:15m2/g)
酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製、メジアン径:1.8μm)
【0131】
(5)液状オレフィン系重合体
「HV-1900」(ENEOS社製、液状ポリブテン、数平均分子量:2,900、25℃での粘度:460Pa・s)
【0132】
(6)粘着付与剤
「T-REZ HA105」(ENEOS社製、水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂、軟化点:104.5℃)
【0133】
(7)酸化防止剤
「Irganox 1010」(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
【0134】
(8)金属錯体
「プレンアクト AL-M」(味の素ファインテクノ社製、アルミニウムオクタデセニルアセトアセテートジイソプロピレート)
【0135】
(9)硬化剤促進剤
2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(化薬ヌーリオン社製、以下「TAP」と略記する。)
【0136】
<実施例1>
下記表に示す配合比のワニスを以下の手順で作製し、得られたワニスを用いて粘着シートを作製した。なお、下記表に記載の各成分の使用量(部)は、ワニス中の各成分の不揮発分の量を示す。
【0137】
具体的には、水添ジシクロペンタジエン系石油樹脂(粘着付与剤、ENEOS社製「T-REZ HA105」)のスワゾール溶液(不揮発分:60%)に、無水マレイン酸変性液状ポリブテン(東邦化学工業社製「HV-300M」)、液状ポリブテン(ENEOS社製「HV-1900」)、金属錯体(味の素ファインテクノ社製「プレンアクト AL-M」)、および半焼性ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」)を3本ロールで分散させて、混合物を得た。得られた混合物に、グリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(星光PMC社製「ER853」)、無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(星光PMC社製「ER645」)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製「Irganox 1010」)、硬化促進剤(TAP、化薬ヌーリオン社製)およびトルエンを配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、粘着組成物のワニスを得た。得られたワニスを、シリコーン系離型剤で処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋クロス社製「SP3000」、PETフィルムの厚さ:38μm)の離型処理面上に、ダイコーターにて均一に塗布し、130℃で30分間加熱し、厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを得た。
【0138】
<実施例2>
(A)成分としてグリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(星光PMC社製「ER853」)の替わりにグリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(星光PMC社製「ER829」)を使用し、(A)成分および(B)成分の使用量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを作製した。
【0139】
<実施例3>
(C)成分として半焼性ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT-4C」)の替わりに酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを作製した。
【0140】
<実施例4>
(A)成分としてグリシジルメタクリレート変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(星光PMC社製「ER853」)の替わりにグリシジルメタクリレート変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER866」)を使用し、(B)成分として無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性プロピレン-ブテンランダム共重合体(星光PMC社製「ER645」)の替わりに無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER661」)を使用し、(A)成分および(B)成分の使用量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを作製した。
【0141】
<比較例1>
(B)成分を使用せず、(A)成分および(C)成分の使用量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを作製した。
【0142】
<比較例2>
(C)成分を使用せず、(A)成分の使用量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを作製した。
【0143】
<比較例3>
(D)成分を使用せず、(A)成分および(B)成分の使用量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを作製した。
【0144】
<水蒸気侵入バリア性能の評価方法>
支持体として、アルミニウム箔およびポリエチレンテレフタレートフィルムを備える複合フィルム(東海東洋アルミ販売社製「PETツキAL1N30」、アルミニウム箔の厚さ30μm、PETフィルムの厚さ25μm)を用意した(複合フィルムの水蒸気の水蒸気透過度:0.001(g/m2/24hr)以下)。
【0145】
前記複合フィルムを支持体として用いたこと以外は、実施例および比較例と同様にして、「支持体(複合フィルム)/粘着層」の積層構造を有する試験用シートを得た。なお、粘着層は、複合フィルムのアルミニウム箔上に形成した。
【0146】
無アルカリガラスで形成された50mm×50mm角のガラス板を用意した。このガラス板を、煮沸したイソプロピルアルコールで5分洗浄し、150℃において30分以上乾燥した。
【0147】
乾燥後のガラス板の片面に、前記ガラス板の端部からの距離0mm~2mmの周縁エリアを覆うマスクを用いて、カルシウムを蒸着した。これにより、ガラス板の片面の、前記ガラス板の端部からの距離0mm~2mmの周縁エリアを除く中央部分に、厚さ200nmのカルシウム膜(純度:99.8%)が形成された。
【0148】
窒素雰囲気内で、上述した試験用シートの粘着層と、前記ガラス板のカルシウム膜側の面とを、熱ラミネーター(フジプラ社製「ラミパッカーDAiSY A4(LPD2325)」)を用いて貼合せ、積層体を得た。この積層体を評価サンプルとして使用した。
【0149】
一般に、カルシウムが水と接触して酸化カルシウムになると、透明になる。また、前記の評価サンプルでは、ガラス板およびアルミニウム箔が充分に高い水蒸気浸入バリア性能を有するので、水分は、通常、粘着層の端部を通って面内方向(厚み方向に垂直な方向)に移動して、カルシウム膜に到達する。カルシウム膜に水分が到達すると、カルシウム膜は端部から次第に酸化されて透明になるので、カルシウム膜の縮小が観察される。したがって、評価サンプルへの水分侵入は、評価サンプルの端部からカルシウム膜までの封止距離(mm)を測定することによって、評価できる。そのため、カルシウム膜を含む評価サンプルを、電子デバイスのモデルとして使用できる。
【0150】
まず、評価サンプルの端部からカルシウム膜の端部までの当初封止距離X2(mm)を、顕微鏡(ミツトヨ社製「Measuring Microscope MF-U」)により測定した。
【0151】
次いで、温度85℃湿度85%RHに設定した恒温恒湿槽に、評価サンプルを収納した。恒温恒湿槽に収納された評価サンプルの端部からカルシウム膜の端部までの間の封止距離X1(mm)が、当初封止距離X2よりも0.1mm増加した時点で、評価サンプルを恒温恒湿槽から取り出した。評価サンプルを恒温恒湿槽へ収納した時点から、評価サンプルを恒温恒湿槽から取り出した時点までの時間を、減少開始時間t(時間)として求めた。この減少開始時間tは、評価サンプルを恒温恒湿槽に収納した時点TP1から、恒温恒湿槽に収納された評価サンプルの端部とカルシウム膜の端部との間の封止距離X1(mm)が「X2+0.1mm」となる時点TP2までの時間に相当する。
【0152】
前記の封止距離X1および減少開始時間tを、式(1)のフィックの拡散式にあてはめて、水蒸気浸入バリア性能のパラメータとしての定数Kを算出した。
【0153】
【0154】
得られた定数Kを用いて、粘着層の水蒸気浸入バリア性能を、下記基準で評価した。定数Kの値が小さいほど、水蒸気浸入バリア性能が高いことを意味する。なお、下記「hr」は、「時間」を意味する。結果を下記表に記載する。
(水蒸気浸入バリア性能の基準)
〇:定数Kが、0.02cm/hr0.5未満
×:定数Kが、0.02cm/hr0.5以上
【0155】
<気泡抑制性能の評価方法>
実施例および比較例で作製した粘着シート(粘着層の厚さ:50μm)を長さ50mm×幅50mmにカットし、カットした粘着シートを、バッチ式真空ラミネータ(ニチゴー・モートン社製「V-160」)を用いて、50mm×50mmのバリアフィルム(住友化学社製)のバリア層蒸着面にラミネートした。ラミネート条件は、温度80℃、減圧時間30秒の後、圧力0.3MPaにて30秒加圧であった。その後、粘着シートのPETフィルムを剥離し、露出した粘着層上に、さらにポリイミドフィルム(宇部興産社製、UPILEX-50S)を上記と同じ条件でラミネートして、積層体を作製した。次いで、得られた積層体を温度85℃および湿度85%RHに設定した恒温恒湿槽に収納し、100時間後に積層体内部の気泡の有無を、目視によって観察し、下記基準で評価した。なお、この評価方法で使用したバリアフィルムおよびポリイミドフィルムは透明であるため、積層体内部の気泡の有無を、目視により観察することができた。結果を下記表に記載する。
(気泡抑制性能の基準)
〇:気泡の発生がない
×:気泡の発生がある
【0156】
【0157】
本発明の要件を満たす実施例1~4の粘着組成物から形成された粘着層は、水蒸気侵入バリア性能および気泡抑制性能に優れていた。他方、(B)成分を含有しない比較例1の粘着組成物および(C)成分を含有しない比較例2の粘着組成物から形成された粘着層は気泡抑制性能が劣っていた。また、(D)成分を含有しない比較例3の粘着組成物から形成された粘着層は水蒸気侵入バリア性能に劣っていた。