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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183746
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】欠陥検出装置及び欠陥検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20221206BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20221206BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20221206BHJP
   B22F 12/49 20210101ALI20221206BHJP
   B22F 10/80 20210101ALI20221206BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20221206BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20221206BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221206BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221206BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221206BHJP
【FI】
G01N29/24
B22F3/105
B22F3/16
B22F12/49
B22F10/80
B29C64/268
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091219
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福山 美咲
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】樋口 暢浩
【テーマコード(参考)】
2G047
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AB05
2G047CA01
2G047CA04
2G047EA05
4F213AP12
4F213AQ02
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL44
4F213WL52
4F213WL76
4F213WL85
4F213WL92
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】3D造形される対象物の内部欠陥の検出に適した欠陥検出装置及び欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係る欠陥検出装置は、対象物を3D造形するためにレーザ光を照射可能であるとともに、対象物中に超音波を発生させるために対象物に対してパルスレーザ光を照射可能であるレーザ照射装置と、レーザ光の照射を制御する照射制御装置と、超音波に基づく対象物の振動を計測するように構成された振動計測装置と、振動計測装置で検出された振動に基づいて対象物の内部欠陥の有無を検出するように構成された検出装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を3D造形するためにレーザ光を照射可能であるとともに、前記対象物中に超音波を発生させるために前記対象物に対してパルスレーザ光を照射可能であるレーザ照射装置と、
前記レーザ光の照射を制御する照射制御装置と、
前記超音波に基づく前記対象物の振動を計測するように構成された振動計測装置と、
前記振動計測装置で検出された前記振動に基づいて前記対象物の内部欠陥の有無を検出するように構成された検出装置と、
を備える欠陥検出装置。
【請求項2】
前記照射制御装置は、前記対象物を3D造形するために連続発振されたレーザ光を照射するように前記レーザ照射装置を制御する
請求項1に記載の欠陥検出装置。
【請求項3】
前記照射制御装置は、前記対象物を3D造形するためにパルスレーザ光を照射するように前記レーザ照射装置を制御する
請求項1に記載の欠陥検出装置。
【請求項4】
前記対象物を3D造形するためのレーザ光を走査するための第1ガルバノミラーを備える
請求項1乃至3の何れか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項5】
前記振動計測装置は、レーザ干渉計又はドップラ振動計の何れか一方を含む
請求項1乃至4の何れか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項6】
前記レーザ干渉計又は前記ドップラ振動計からの計測用のレーザ光を走査するための第2ガルバノミラーを備える
請求項5に記載の欠陥検出装置。
【請求項7】
前記振動計測装置は、レーザ干渉計又はドップラ振動計の何れか一方を含み、
前記照射制御装置は、前記対象物を3D造形するためのレーザ光、及び、前記レーザ干渉計又は前記ドップラ振動計からの計測用のレーザ光を走査するためのガルバノミラーを有する
請求項1乃至3の何れか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項8】
前記振動計測装置は、前記超音波に基づく前記対象物の振動を計測するための接触式トランスデューサを含む
請求項1乃至4の何れか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項9】
対象物を3D造形するためにレーザ照射装置からレーザ光を照射するステップと、
前記対象物中に超音波を発生させるために前記対象物に対して前記レーザ照射装置からパルスレーザ光を照射するステップと、
前記超音波に基づく前記対象物の振動を計測するステップと、
計測された前記振動に基づいて前記対象物の内部欠陥の有無を検出するステップと、
を備える欠陥検出方法。
【請求項10】
対象物を3D造形すると同時に前記対象物中に超音波を発生させるために、前記対象物に対してレーザ照射装置からパルスレーザ光を照射するステップと、
前記超音波に基づく前記対象物の振動を計測するステップと、
計測された前記振動に基づいて前記対象物の内部欠陥の有無を検出するステップと、
を備える欠陥検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、欠陥検出装置及び欠陥検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複雑構造による性能向上を狙いとして、付加造形(AM:Additive Manufacturing)技術が着目され、電子ビームやレーザビームを使用した積層造形によって3次元造形物(3D造形品)を製造する装置が普及している。例えば、特許文献1には、積層造形において、成長部分の温度を監視し、その温度に基づいて照射するビーム出力を調整する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-73796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、複雑構造物を構築する際、複数の鋳鍛造品(鋳鍛造部品)を組み立てて構成するのが一般的である。この場合、鋳鍛造品における欠陥(割れ、ひけ巣等)に係る検査は、超音波探傷法、渦流探傷法、放射線透過法等の比較的簡便な方法を、鋳鍛造部品毎に適用することができた。
【0005】
しかし、AM技術を用いた3D造形品では、金属粉を材料とした一体同時造形の為、中間生成物が無く、欠陥検査は最終形状で行う必要がある。この場合、前述のような簡便な検査方法では、最終形状の外表面から離隔した位置における欠陥評価は困難である。X線CTの活用による評価も考えられるが、大型な3D造形品には対応できないという問題がある。
また、最終形状で欠陥検査を行うため、内部欠陥の存在が判明した場合、再度最初から造形を行うこととなり、手戻りリスクが発生する。
これらを解決するには、造形中に内部欠陥を検出できることが重要である。特許文献1には、このような内部欠陥の問題を解決するための手法が開示されていない。
【0006】
ところで、非接触で内部欠陥を検出する手法として、レーザ超音波法が知られている。レーザ超音波法は、検査対象物の表面にパルスレーザ光を照射することによって検査対象の表面を局所的に加熱し、熱膨張あるいはアブレーション作用によって超音波を発生させ、生じた超音波が検査対象内を伝搬した後、内部欠陥で反射又は散乱し、再び表面へ伝搬してきたものをレーザ干渉計などの検出装置により計測する技術である。
【0007】
レーザ超音波法による欠陥検出では、パルスレーザ光を照射した時の欠陥からの反射波を観測する必要がある。しかし、浅い位置にある(表面近傍の)欠陥を検査する場合、入射波による表面振動変位に、欠陥からの反射波が埋もれてしまう。そのため、3D造形中に発生する表面から浅い位置にある欠陥の検出には適用困難である。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、3D造形される対象物の内部欠陥の検出に適した欠陥検出装置及び欠陥検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る欠陥検出装置は、
対象物を3D造形するためにレーザ光を照射可能であるとともに、前記対象物中に超音波を発生させるために前記対象物に対してパルスレーザ光を照射可能であるレーザ照射装置と、
前記レーザ光の照射を制御する照射制御装置と、
前記超音波に基づく前記対象物の振動を計測するように構成された振動計測装置と、
前記振動計測装置で検出された前記振動に基づいて前記対象物の内部欠陥の有無を検出するように構成された検出装置と、
を備える。
【0010】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る欠陥検出方法は、
対象物を3D造形するためにレーザ照射装置からレーザ光を照射するステップと、
前記対象物中に超音波を発生させるために前記対象物に対して前記レーザ照射装置からパルスレーザ光を照射するステップと、
前記超音波に基づく前記対象物の振動を計測するステップと、
計測された前記振動に基づいて前記対象物の内部欠陥の有無を検出するステップと、
を備える。
【0011】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係る欠陥検出方法は、
対象物を3D造形すると同時に前記対象物中に超音波を発生させるために、前記対象物に対してレーザ照射装置からパルスレーザ光を照射するステップと、
前記超音波に基づく前記対象物の振動を計測するステップと、
計測された前記振動に基づいて前記対象物の内部欠陥の有無を検出するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、3D造形される対象物の内部欠陥の検出に適した欠陥検出装置及び欠陥検出方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る造形装置の構成を概略的に示す図である。
図2】実施形態に係る造形装置の構成を概略的に示す図である。
図3】実施形態に係る造形装置の構成を概略的に示す図である。
図4】実施形態に係る造形装置の構成を概略的に示す図である。
図5】実施形態に係る造形装置の構成を概略的に示す図である。
図6】1つ目の方法におけるレーザ光の照射のタイミングチャートである。
図7】2つ目の方法におけるレーザ光の照射のタイミングチャートである。
図8】1つ目の方法によって3D造形及び内部欠陥を検出する処理を実施する手順を示したフローチャートである。
図9】対象物の内部欠陥を模式的に示した図である。
図10】内部欠陥を検出するステップにおける処理に係る演算装置の機能ブロックを示す図である。
図11A】検出装置から取得した振動の振幅を示すグラフの一例である。
図11B】内部欠陥の有無の検出に必要な情報を抽出した後の振動を示すグラフの一例である。
図11C】FFT処理の処理結果を表すグラフの一例である。
図12】マップ作成部において作成されたマップの一例を示す図である。
図13】2つ目の方法によって3D造形及び内部欠陥を検出する処理を実施する手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0015】
(欠陥検出装置を備える造形装置の全体構成)
以下、幾つかの実施形態に係る造形装置300について説明する。図1から図5は、それぞれの実施形態に係る造形装置300の構成を概略的に示す図である。なお、図1から図5において、コリメートレンズや集光レンズなどの光学系は省略する。以下の説明では、欠陥検出装置200を備える造形装置300について説明するが、欠陥検出装置200は造形装置300から独立した装置であってもよい。
【0016】
図1から図5に示すように、造形装置300は、内部欠陥を検出するための欠陥検出装置200を備える。造形装置300は、例えば、パウダーベッド方式の付加造形(AM)を行う装置である。なお、造形装置300は、LMD(Laser Metal Deposition)方式の造形を行う装置であってもよい。
【0017】
(レーザ照射装置201)
図1から図5に示す実施形態では、レーザ照射装置201は、造形装置300のベースプレート301上にパウダーベッド302として敷き詰められた原料粉303(例えば合金粉)に対して、原料粉を溶融して3D形状を造形していくための連続発振レーザ光B1、及び、後述するように、対象物T中に超音波を発生させるために対象物Tに対してパルスレーザ光B2を照射可能に構成される(図5参照)。なお、以下の説明では、連続発振レーザ光B1のことを単にレーザ光B1とも称する。
また、図1から図5に示す実施形態では、レーザ照射装置201は、パルス発振モードを備える事で、原料粉を溶融して3D形状を造形すると同時に、対象物T中に超音波を発生させる事も可能である。すなわち、図1から図5に示す実施形態では、レーザ照射装置201は、原料粉を溶融して3D形状を造形すると同時に、対象物T中に超音波を発生させるためのパルスレーザ光B4を照射可能に構成されていてもよい。
すなわち、図1から図5に示す実施形態では、造形装置300における3D造形用のレーザ照射装置201を対象物T中に超音波を発生させるためのパルスレーザ光B2、B4の照射装置としても利用している。図1から図5に示す実施形態では、レーザ照射装置201は、造形装置300の構成要素であるとともに、欠陥検出装置200の構成要素でもある。
【0018】
(第1ガルバノミラー204)
図1から図5に示す実施形態では、造形装置300は、ガルバノミラー(第1ガルバノミラー)204を備えており、連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4の向きを変えてパウダーベッド302上を走査させることができる。すなわち、図1から図5に示す実施形態では、欠陥検出装置200は、対象物Tを3D造形するための連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4を走査するための第1ガルバノミラー204を備える。
なお、図1から図5に示す実施形態では、第1ガルバノミラー204は、パルスレーザ光B2も走査できる。したがって、図1から図5に示す実施形態では、第1ガルバノミラー204は、パルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4を走査することで、対象物T中に超音波を発生させる起点となる位置(超音波励振点)を変更できる。
図1から図5に示す実施形態によれば、レーザ照射装置201自体を移動させる必要がないので、連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4の走査を行うための機構を小型化できる。
【0019】
幾つかの実施形態に係る造形装置300では、第1ガルバノミラー204によって連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4を走査させることで、任意のCADに基づいた形状に沿って連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4を照射できる。これにより、レーザ照射装置201は、原料粉303を溶融固化させて、対象物Tを3D造形する。
【0020】
図1から図5に示す実施形態では、欠陥検出装置200は、上述したように、対象物を3D造形するために連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4を照射可能であるとともに、対象物T中に超音波を発生させるために対象物Tに対してパルスレーザ光B2を照射可能であるレーザ照射装置201を備える。
【0021】
(欠陥検出装置200)
図1から図5に示す実施形態では、欠陥検出装置200は、対象物Tの内部欠陥の有無を検出するように構成された検出装置220と、これらを制御するように構成された制御装置230とを備える。
図1から図5に示す実施形態では、検出装置220は、超音波に基づく対象物Tの振動を計測するように構成された振動計測装置221と、振動計測装置221で検出された振動に基づいて対象物Tの内部欠陥の有無を検出するように構成された演算装置222とを備える。
【0022】
(振動計測装置221)
図1から図3に示す実施形態では、振動計測装置221は、例えば、レーザ干渉計221Aであってもよい。この場合、振動計測装置221は、レーザ光B3を対象物Tに照射して、その反射光を受光して対象物Tの表面の振動、すなわち変位を計測するように構成される。
【0023】
図1から図3に示す実施形態では、レーザ干渉計を備える構成に代えて、ドップラ振動計221Bを備えていてもよい。すなわち、振動計測装置221は、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bの何れか一方を含んでいてもよい。
【0024】
図4及び図5に示す実施形態では、振動計測装置221は、レーザ干渉計221A等の非接触式の検出装置に代えて、対象物Tに直接接触させて使用することで振動を検出する探触子である接触式トランスデューサ221tと、データロガー221Dとによって構成されていてもよい。すなわち、振動計測装置221は、超音波に基づく対象物Tの振動を計測するための接触式トランスデューサ221tを含んでいてもよい。
なお、図4に示すように、接触式トランスデューサ221tは、対象物Tの上面に設置してもよい。
また、図5に示すように、接触式トランスデューサ221tは、造形装置300のベースプレート301に設置してもよい。
【0025】
(演算装置222)
図1から図5に示す実施形態では、演算装置222は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等から構成される。図1から図5に示す実施形態では、演算装置222は、例えば、ROM又はRAMに記憶されているプログラムを実行することにより、対象物Tの振動における特定の周波数成分に基づいて、対象物Tの内部欠陥の有無を検出するように構成される。内部欠陥は、空隙など表面からは見えない内部の造形不良である。
図1から図5に示す実施形態では、演算装置222は、次の各機能ブロックを備える。受信した超音波波形を蓄積する「時間波形蓄積メモリ」、超音波波形に窓関数を掛けて任意の波形を取り出す「窓関数による抽出部」、抽出した波形に対してFFT処理を行う「FFT処理部」、FFT処理結果を分析する「FFT結果分析部」、FFT処理結果値をマップ状にプロットする「計測結果マップ作成部」。FFT結果分析部は、周波数成分の総和、ある周波数範囲の最大振幅値、ある周波数のFFT振幅値、などを抽出する。
【0026】
図1から図5に示す実施形態では、欠陥検出装置200は、例えば、フォトディテクタ206を備えていてもよい。フォトディテクタ206は、パルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4が対象物Tに照射されたタイミングを検出するためのものであり、検出信号が演算装置222に入力されるように構成されている。
【0027】
図1に示す実施形態では、第1ガルバノミラー204によって、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bからのレーザ光B3の向きを変えてパウダーベッド上を走査させること、及び、対象物Tの表面で反射したレーザ光B3を次に述べるハーフミラー205に導くことができる。
【0028】
図1に示す実施形態では、欠陥検出装置200は、ハーフミラー205を備えている。この場合、図1に示すように、ハーフミラー205を介して連続発振レーザ光B1及びパルスレーザ光B2、又はパルスレーザ光B4と、レーザ光B3とを第1ガルバノミラー204に入射させ、連続発振レーザ光B1及びパルスレーザ光B2、又はパルスレーザ光B4と、レーザ光B3との向きを変えるように構成することができる。かかる構成によれば、パルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4の照射位置と同じ位置にレーザ光B3を照射する場合に適している。
【0029】
なお、欠陥検出装置200は、ハーフミラー205を備えていない構成であってもよい。例えば、欠陥検出装置200は、ハーフミラー205の代わりにビームスプリッタを備えていてもよい。欠陥検出装置200は、ハーフミラー205及びビームスプリッタを備えていない構成であってもよく、例えば図2に示すように、連続発振レーザ光B1及びパルスレーザ光B2、又はパルスレーザ光B4と、レーザ光B3とをそれぞれ独立して走査可能に構成されていてもよい。
【0030】
(第2ガルバノミラー207)
図2に示す実施形態では、欠陥検出装置200は、第1ガルバノミラー204とは異なるガルバノミラー(第2ガルバノミラー)207を備えている。第2ガルバノミラー207は、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bからの計測用のレーザ光を走査するためのガルバノミラーである。
図2に示す実施形態では、第1ガルバノミラー204によって連続発振レーザ光B1及びパルスレーザ光B2、又はパルスレーザ光B4の向きを変えてパウダーベッド上を走査させることができ、第2ガルバノミラー207によってレーザ光B3の向きを変えてパウダーベッド上を走査させることができる。
図2に示す実施形態によれば、計測用のレーザ光B3を走査できるので、パルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4の照射位置と同じ位置にレーザ光B3を照射することもできる。
【0031】
図3に示す実施形態では、欠陥検出装置200は、レーザ光B3を反射させるためのミラー208を備えている。図3に示す実施形態では、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bからのレーザ光B3の対象物Tにおける照射位置は、予めミラー208の姿勢を調節することで設定された固定位置である。
【0032】
(制御装置230)
図1から図5に示す実施形態では、制御装置230は、CPU、RAM、ROM等から構成される。制御装置230は、例えば、ROM又はRAMに記憶されているプログラムを実行することにより、装置全体の動作を制御する。また、制御装置230は、ROM又はRAMに各種データ(例えば、対象物Tの設計情報等)を記憶する。
図1から図5に示す実施形態では、制御装置230は、連続発振レーザ光B1及びパルスレーザ光B2、又はパルスレーザ光B4の照射を制御する照射制御装置231と、上述した第1ガルバノミラー204及び第2ガルバノミラー207を制御するガルバノミラー制御装置232とを含んでいる。
照射制御装置231は、制御装置230における上述したCPU、RAM、ROM等とは異なるCPU、RAM、ROM等から構成されていてもよく、制御装置230における機能ブロックの一部として構成されていてもよい。
同様に、ガルバノミラー制御装置232は、制御装置230における上述したCPU、RAM、ROM等とは異なるCPU、RAM、ROM等から構成されていてもよく、制御装置230における機能ブロックの一部として構成されていてもよい。
【0033】
上述したように、幾つかの実施形態に係る欠陥検出装置200は、レーザ照射装置201と、照射制御装置231と、振動計測装置221と、検出装置220(演算装置222)とを備える。
これにより、対象物を3D造形するためにレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)と、対象物T中に超音波を発生させるために対象物Tに対して照射するパルスレーザ光(パルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4)とを、同じレーザ照射装置201で照射できるので、欠陥検出装置200、及び、3D造形装置300の装置構成を簡素化できる。これにより、3D造形される対象物Tの内部欠陥の検出に適した欠陥検出装置200を提供できる。
【0034】
上述したように、幾つかの実施形態に係る欠陥検出装置200では、照射制御装置231は、対象物Tを3D造形するためにパルスレーザ光(パルスレーザ光B4)を照射するようにレーザ照射装置を201制御するようにしてもよい。
上述したように、対象物Tを3D造形するためにパルスレーザ光(パルスレーザ光B4)を照射することで対象物T中に超音波を発生させるようにすれば、対象物Tの3D造形と対象物Tの内部欠陥の有無の検出とを同時に実施できる。これにより、対象物Tの3D造形と対象物Tの内部欠陥の有無の検出とに要する時間を短縮できる。
【0035】
上述したように、幾つかの実施形態に係る欠陥検出装置200では、照射制御装置231は、対象物Tを3D造形するために連続発振されたレーザ光(連続発振レーザ光B1)を照射するようにレーザ照射装置201を制御するようにしてもよい。
対象物Tを3D造形するために連続発振されたレーザ光(連続発振レーザ光B1)を用い、対象物T中に超音波を発生させるためにパルスレーザ光(パルスレーザ光B2)を用いるようにすることで、対象物Tの3D造形する場合と、対象物T中に超音波を発生させる場合のそれぞれで、より適した条件でレーザ光を照射できる。
【0036】
図1に示すように、一実施形態に係る欠陥検出装置200では、振動計測装置221は、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bの何れか一方を含むとよく、照射制御装置231は、対象物Tを3D造形するためのレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)、及び、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bからの計測用のレーザ光(レーザ光B3)を走査するためのガルバノミラー(第1ガルバノミラー204)を有するとよい。
図1に示すように、一実施形態に係る欠陥検出装置200によれば、対象物Tを3D造形するためのレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)の走査と、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bからの計測用のレーザ光(レーザ光B3)の走査とを、同じガルバノミラー(第1ガルバノミラー204)の制御により実施できる。これにより、対象物Tを3D造形するためのレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)の走査と、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bからの計測用のレーザ光(レーザ光B3)の走査とを別々のガルバノミラーで実施する場合と比べて、欠陥検出装置200を簡素化できる。
【0037】
(欠陥検出方法)
以下、幾つかの実施形態に係る欠陥検出方法について説明する。以下に説明する欠陥検出方法は、制御装置230の制御処理によって自動的に実行されてもよいし、一部の手順については制御装置230ではなくユーザの手動操作によって実行されてもよい。一実施形態に係る欠陥検出方法は、例えば、パウダーベッド方式の付加造形(AM)に適用される。なお、欠陥検出方法は、LMD方式等の他の方法で造形する場合の対象物に適用することも可能である。
【0038】
例えば、対象物Tにおける比較的表面から近い領域における内部欠陥の有無を検出する方法として、パルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4を照射して対象物T中に超音波を発生させ、この超音波に基づく対象物Tの振動における特定の周波数成分に基づいて、対象物Tの内部欠陥の有無を検出できる。
【0039】
なお、対象物Tにパルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4を照射することで、対象物Tに縦振動を生じさせ、対象物Tの表面と内部欠陥との間で発生する縦振動の共振の有無に基づいて、対象物Tの内部欠陥の有無を検出することもできる。
すなわち、対象物Tにおける比較的表面から近い領域において内部欠陥が存在する場合、対象物Tの表面から検出すべき内部欠陥までの深さによって縦振動の共振周波数が変化する。この共振周波数に対応するようにパルスレーザの繰り返し周波数を設定してパルスレーザを繰り返し照射することで、縦振動の共振を発生させ、対象物Tの表面の振動が大きくなることが検出できれば内部欠陥が存在すると推定できる。
【0040】
なお、このような縦振動の共振は、対象物Tにおける比較的表面から近い領域において内部欠陥が存在する場合に対象物Tに発生するたわみ振動と比べると振幅が小さく、且つ、周波数が高い。したがって、上記のような縦振動の共振は、ノイズに埋もれて検出し難い傾向にある。
そのため、対象物Tにおける以下のようなたわみ振動を利用すれば、対象物Tにおける内部欠陥を検出し易くなる。
【0041】
例えば、対象物Tにおける比較的表面から近い領域において内部欠陥が存在する場合、内部欠陥の存在位置、すなわち対象物Tの表面からの距離や、内部欠陥の大きさに応じた固有振動数を有するたわみ振動が発生する。この固有振動数における振幅を抽出し、該振幅の大きさに基づいて、対象物Tの内部欠陥の有無を検出できる。
そこで、幾つかの実施形態に係る欠陥検出方法では、以下のようにして対象物Tにおける内部欠陥を検出するようにしている。
【0042】
なお、後述する内部欠陥を検出する処理は、例えば、次の2通りの実施方法がある。
1つ目の方法では、内部欠陥を検出する処理は、付加造形によって3D造形する場合において、1層毎に実施する。但し、必ずしも1層でなく、複数の層が積層されるごとでもよい。1層の厚さは、材質毎に異なるが、一般的には50μm~100μmである。「複数の層」とは、例えば、5層のように任意の数に設定される。
図6は、1つ目の方法におけるレーザ光の照射のタイミングチャートである。この方法では、連続発振された連続発振レーザ光B1を照射することで1層分又は複数の層分の3D造形を行った後、パルスレーザ光B2を照射することで対象物T中に超音波を発生させ、この超音波に基づく対象物Tの振動を計測して、対象物Tの内部欠陥の有無を検出する。
【0043】
2つ目の方法では、対象物Tを3D造形すると同時に対象物T中に超音波を発生させるために、対象物Tに対してパルスレーザ光B4を照射する。
図7は、2つ目の方法におけるレーザ光の照射のタイミングチャートである。すなわち、2つ目の方法では、パルスレーザ光B4を照射する度に対象物Tを3D造形しつつ、対象物T中に超音波を発生させ、この超音波に基づく対象物Tの振動を計測して、対象物Tの内部欠陥の有無を検出する。
【0044】
このように、幾つかの実施形態に係る欠陥検出方法では、付加造形によって3D造形される途中の対象物Tについて内部欠陥の有無を検出するとよい。3D造形途中で、内部欠陥を検出するため、大きな手戻りが発生するリスクを軽減することができる。
【0045】
なお、幾つかの実施形態に係る欠陥検出装置200で実施される欠陥検出方法は、上述した2通りの方法に限定されない。他のレーザー超音波計測法も同様に適用可能である。
例えば、レーザー光を照射した際に、内部欠陥からの反射波を直接観測する方法(反射法)、内部欠陥の有無による透過波の有無を観測する方法(透過法)、表面近傍等を表面に沿って伝播する超音波の経路上に内部欠陥がある場合の音速やゲインの差異を検出する方法(ガイド波法)なども同様に適用できる。
【0046】
(1層分又は複数の層分の3D造形後、内部欠陥の有無を検出する場合)
図8は、上述した1つ目の方法によって3D造形及び内部欠陥を検出する処理を実施する手順を示したフローチャートである。
図8に示した欠陥検出方法は、レーザ光を照射するステップS1と、パルスレーザ光を照射するステップS3と、振動を計測するステップS5と、内部欠陥を検出するステップS7と、内部欠陥を修復するステップS9とを備えている。
図9は、対象物Tの内部欠陥を模式的に示した図である。本図において欠陥は空隙の場合を示している。但し、欠陥には図示しない割れ、融合不良など、その他の表面からは見えない内部造形不良の形態も含む。
【0047】
(レーザ光を照射するステップS1)
レーザ光を照射するステップS1は、対象物Tを3D造形するためにレーザ照射装置201から連続発振レーザ光B1を照射するステップである。
レーザ光を照射するステップS1では、制御装置230は、連続発振された連続発振レーザ光B1を照射することで1層分又は複数の層分の3D造形を行うように各部を制御する。すなわち、レーザ光を照射するステップS1では、照射制御装置231は、連続発振されたレーザ光B1を照射するようにレーザ照射装置201を制御する。また、レーザ光を照射するステップS1では、ガルバノミラー制御装置232は、1層分又は複数の層分の3D造形を行うように第1ガルバノミラー204を制御する。
【0048】
(パルスレーザ光を照射するステップS3)
パルスレーザ光を照射するステップS3は、対象物T中に超音波を発生させるために対象物Tに対してレーザ照射装置201からパルスレーザ光B2を照射するステップである。
パルスレーザ光を照射するステップS3では、パルスレーザ光B2を対象物Tに照射し、パルスレーザ光B2が照射された部位の急激な熱膨張と収縮により超音波を発生させる。
【0049】
パルスレーザ光を照射するステップS3では、制御装置230は、対象物T中に超音波を発生させるためのパルスレーザ光B2を照射するように各部を制御する。すなわち、パルスレーザ光を照射するステップS3では、照射制御装置231は、パルスレーザ光B2を照射するようにレーザ照射装置201を制御する。また、パルスレーザ光を照射するステップS3では、ガルバノミラー制御装置232は、内部欠陥の有無を検出しようとする位置に対してパルスレーザ光B2が照射されるように第1ガルバノミラー204を制御する。
【0050】
パルスレーザ光を照射するステップS3におけるパルスレーザ光B2の照射回数は、1回であるが、複数回であってもよい。なお、パルスレーザ光B2の対象物Tにおける照射位置は、パルスレーザ光B2の照射期間中、不動である。また、パルスレーザ光B2の照射回数が複数回であっても、各回におけるパルスレーザ光B2の対象物Tにおける照射位置は同一の位置である。
パルスレーザ光B2のビーム径は、検出しようとする内部欠陥の大きさSと同程度であるとよく、例えば数百μmである。ここでいう内部欠陥の大きさとは、内部欠陥を対象物Tの表面から見たときの大きさのことである。なお、パルスレーザ光B2のビーム径を上記の大きさに設定するために、欠陥検出装置200はビーム径調整レンズを備えていてもよいが、ビーム径調整レンズを備えることは必須ではない。
パルスレーザ光B2のパルス幅は、10n秒以上1000n秒以下であるとよい。
【0051】
パルスレーザ光を照射するステップS3において、上述したような照射条件でパルスレーザ光B2を対象物Tに照射することで、対象物Tに超音波を発生させることができる。
このようにして発生した超音波は、比較的広帯域の振動である。そのため、対象物Tの表面からの距離dや内部欠陥の大きさSに応じて対象物Tの固有振動数が異なっていても、この固有振動数のたわみ振動が卓越して発生させることができる。
【0052】
(振動を計測するステップS5)
振動を計測するステップS5は、パルスレーザ光を照射するステップS3を実施することで発生した超音波に基づく対象物Tの振動を計測するステップである。
振動を計測するステップS5は、パルスレーザ光を照射するステップS3でパルスレーザ光B2を照射したタイミングと同時に実施される。
振動を計測するステップS5では、検出装置220は、対象物Tの表面の振動を振動計測装置221に検出させる。
【0053】
図1図2、及び図3に示す実施形態では、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bによって超音波に基づく対象物Tの表面の振動を非接触で検出できる。
【0054】
図1図2、及び図3に示す実施形態では、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bによって超音波に基づく対象物Tの表面の振動を非接触で検出できる。
図1に示す実施形態では、パルスレーザ光B2の照射位置とレーザ光B3の照射位置とが同じ位置となる。また、図2に示す実施形態では、ガルバノミラー204、207の姿勢制御によって、パルスレーザ光B2の照射位置と同じ位置にレーザ光B3を照射することができる。
超音波励振点と、受信点の近接化が可能になる為、これにより、対象物Tの検査面が小さい場合や、対象物Tが複雑な場合であっても、対象物Tの表面の振動を検出できる。
また、図1及び図2に示す実施形態において、パルスレーザ光B2の照射位置とレーザ光B3の照射位置とが同じ位置であれば、パルスレーザ光B2の照射位置からレーザ光B3の照射位置までの振動の伝達時間を考慮しなくてもよくなる。これにより、後述する内部欠陥を検出するステップS7における演算負荷を低減できる。
【0055】
図1に示す実施形態では、パルスレーザ光B2とレーザ光B3とを同軸で照射できる。これにより、対象物Tが複雑な構造であっても、レーザ光B3が対象物Tの一部によって遮られることを回避して対象物Tの表面の振動を検出できる。
【0056】
図2に示す実施形態では、ガルバノミラー204、207の姿勢制御によって、パルスレーザ光B2の照射位置とレーザ光B3の照射位置とが常に一定の距離を保つように照射することができる。これにより、パルスレーザ光B2の照射によるノイズが検出されるタイミングと、上述した固有振動数での振幅が検出されるタイミングとをずらすことができ、固有振動数での振幅を検出し易くなる。また、図2に示す実施形態では、パルスレーザ光B2の照射位置とレーザ光B3の照射位置とが常に一定の距離を保つように照射することにより、パルスレーザ光B2の照射位置とレーザ光B3の照射位置との距離が変化する場合と比べて、後述する内部欠陥を検出するステップS7における演算負荷を低減できる。
【0057】
図3に示す実施形態では、上述したように、振動計測装置221からのレーザ光B3の対象物Tにおける照射位置は、予めミラー208の姿勢を調節することで設定された固定位置である。そのため、レーザ光B3の対象物Tにおける照射位置の表面の状態が不変であるため、対象物Tの表面の振動を安定して検出できる。
また、図3に示す実施形態では、第2ガルバノミラー207の姿勢制御を行わなくてもよくなるので、制御装置230における演算負荷を抑制できる。
【0058】
このように、幾つかの実施形態に係る欠陥検出方法において、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bによって対象物Tの表面の振動を検出するようにしてもよい。
これにより、内部欠陥の有無を非接触で検出することができる。
【0059】
図4及び図5に示す実施形態では、接触式トランスデューサ221tによって超音波に基づく対象物Tの表面の振動を直接検出できる。これにより、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bに対象物Tの表面の振動を非接触で検出する場合と比べて、良好な感度で対象物Tの表面の振動を検出できる。
図4に示す実施形態では、接触式トランスデューサ221tを対象物Tの上面に設置するので、パルスレーザ光B2の照射位置と接触式トランスデューサ221tとの距離を比較的接近できるので、さらに良好な感度で対象物Tの表面の振動を検出できる。
図5に示す実施形態では、接触式トランスデューサ221tを造形装置300のベースプレート301に設置するので、対象物Tの検査面が小さい場合や、対象物Tが複雑な場合等、接触式トランスデューサ221tを対象物Tの上面に設置することが困難な場合であっても、対象物Tの振動を検出できる。
【0060】
(内部欠陥を検出するステップS7)
内部欠陥を検出するステップS7は、振動を計測するステップS5で計測された振動に基づいて対象物Tの内部欠陥の有無を検出するステップである。すなわち、内部欠陥を検出するステップS7は、超音波に基づく対象物Tの振動の特定の周波数成分の振幅に基づいて、対象物Tの内部欠陥の有無を検出するステップである。
図10は、内部欠陥を検出するステップS7における後述する処理に係る演算装置222の機能ブロックを示す図である。演算装置222は、時間波形蓄積メモリ222a、窓関数による抽出部222b、FFT処理部222c、FFT結果分析部222d、マップ作成部(計測結果マップ作成部)222eの各機能ブロックを仮想的に有している。
内部欠陥を検出するステップS7では、演算装置222は、次のようにして対象物Tの内部欠陥の有無を検出する。
まず、演算装置222は、時間波形蓄積メモリ222aにて、フォトディテクタ206で検出したパルスレーザ光B2の照射タイミングを基準として、該照射タイミング以降の予め設定された期間内に振動計測装置221で検出した振動の情報を振動計測装置221から取得する。
図11Aは、上述のようにして振動計測装置221から取得した振動の振幅を示すグラフの一例である。
【0061】
次いで、演算装置222は、窓関数による抽出部222bにて、上述のようにして振動計測装置221から取得した振動の情報から、内部欠陥の有無の検出に必要な振動の情報を抽出する。
図11Bは、内部欠陥の有無の検出に必要な情報を抽出した後の振動を示すグラフの一例である。
【0062】
具体的には、窓関数による抽出部222bは、上述のようにして振動計測装置221から取得した振動の情報から、第1到達波についての振動の情報を抽出する。すなわち、窓関数による抽出部222bは、上述のようにして振動計測装置221から取得した振動の情報から、第1到達波を検出した期間に相当する振動の情報を抽出する。図11Bに示す例では、窓関数による抽出部222bは、上述のようにして振動計測装置221から取得した振動の情報から、フォトディテクタ206で検出したパルスレーザ光B2の照射タイミングを0秒として、該照射タイミング以降、5.0μ秒経過時までの振動の情報を抽出する。
なお、上述した第1到達波についての振動の情報の抽出方法は一例であり、他の方法で第1到達波についての振動の情報を抽出してもよい。
また、窓関数による抽出部222bは、該照射タイミング以降、5.0μ秒経過時までの振動の情報を抽出する際、パルスレーザ光B2の照射によるノイズを除くべく、該照射タイミング以降、所定の期間の振動の情報は取得対象から外す。図11Bに示す例では、演算装置222は、該照射タイミング以降、0.5μ秒経過時までの振動の情報は取得しない。
【0063】
上述のようにして抽出した第1到達波についての振動の情報には、対象物Tの表面近傍の内部欠陥の存在に起因した固有周波数によるたわみ振動と、表面波成分とを含んでいる。そこで、演算装置222は、FFT処理部222cにて、該固有周波数によるたわみ振動を抽出すべく、上述のようにして抽出した第1到達波についての振動の情報に対してFFT(Fast Fourier Transform)処理を行う。
図11Cは、FFT処理の処理結果を表すグラフの一例である。
【0064】
対象物Tにおける比較的表面から近い領域において内部欠陥が存在する場合、比較的低い周波数の範囲内で卓越している周波数成分の振幅が発生する。この周波数の範囲は、内部欠陥の形状、内部欠陥の位置、対象物Tの材質等によって決まるが、例えば0.5MHz以上5.0MHz以下の範囲となることがある。
そこで、FFT結果分析部222dは、上述したFFT処理の処理結果において、上述したような比較的低い周波数の範囲内の振幅のピークを検出し、そのピーク値を取得する。FFT結果分析部222dは、該ピーク値が予め設定された閾値を超えている場合、パルスレーザ光B2の照射位置の直下に内部欠陥が存在していると判断する。
図11Cに示す例では、1.20MHzにおいて比較的大きな振幅のピークが認められる。
なお、FFT結果分析部222dは、FFT処理部222cにおけるFFT処理の結果の総和や、特定の周波数の時のFFT振幅値等に基づいて内部欠陥の有無を判断するようにしてもよい。
【0065】
このように、上述した一実施形態に係る欠陥検出方法において、内部欠陥を検出するステップS7では、内部欠陥の形状、内部欠陥の位置、対象物Tの材質等によって決まる周波数成分に基づいて、対象物Tの内部欠陥の有無を検出するとよい。
これにより、対象物Tにおける比較的表面から近い領域における内部欠陥の有無を検出できる。
【0066】
なお、演算装置222は、制御装置230と協働して、パルスレーザ光B2の照射位置をずらしながら、上述したレーザ光を照射するステップS1から内部欠陥を検出するステップS7を繰り返し実施することで、対象物Tの表面の全面に亘り、比較的表面から近い領域における内部欠陥の有無を検出する。
【0067】
演算装置222は、マップ作成部222eにて、対象物Tの表面上の位置と、FFT結果分析部222dが取得した上記ピーク値との関係を示すマップを作成する。すなわち、マップ作成部222eは、FFT処理結果値をマップ状にプロットすることで上記マップを作成する。
図12は、マップ作成部222eにおいて作成された上記マップの一例を示す図である。図12に示すマップでは、上記ピーク値の分布を上記ピーク値に応じた濃度で表している。例えば図12に示すマップでは、破線で囲んだ位置において内部欠陥が存在していることが推認できる。
なお、マップ作成部222eは、FFT結果分析部222dがFFT処理部222cにおけるFFT処理の結果の総和を取得した場合には、この総和と、対象物Tの表面上の位置との関係を示すマップを作成する。
また、マップ作成部222eは、FFT結果分析部222dが特定の周波数のFFT振幅値を取得した場合には、このFFT振幅値と、対象物Tの表面上の位置との関係を示すマップを作成する。
【0068】
(内部欠陥を修復するステップS9)
内部欠陥を修復するステップS9は、付加造形の積層によって3D造形される造形中の対象物Tについて内部欠陥を検出した場合に、内部欠陥の直上位置で次層を形成するときに内部欠陥を修復するように次層と次層の数層下の層までを溶融するステップである。
幾つかの実施形態に係る欠陥検出方法では、内部欠陥を検出するステップS7において内部欠陥の存在が検出された場合に内部欠陥を修復するステップS9を実施する。
すなわち、幾つかの実施形態では、付加造形の積層によって3D造形される造形中の対象物Tについて内部欠陥を検出した場合に、内部欠陥の直上位置で次層を形成するときに内部欠陥を修復するように次層と次層の数層下の層までを溶融してもよい。「次層と次層の数層下の層までを溶融する」とは、内部欠陥の上に位置する上層とともに内部欠陥を含む層を溶融することを意味する。
【0069】
例えば、図6に示す、左から2番目の3D造形(レーザ光を照射するステップS1)の際に内部欠陥が生じ、その後の内部欠陥を検出するステップS7において内部欠陥の存在が検出された場合、次の3D造形である左から3番目の3D造形(レーザ光を照射するステップS1)の際に、連続発振レーザ光B1の出力を通常の3D造形における出力よりも大きくして、3D造形(内部欠陥を修復するステップS9)を行うとよい。
【0070】
上述した一実施形態に係る欠陥検出方法は、レーザ光を照射するステップS1と、パルスレーザ光を照射するステップS3と、振動を計測するステップS5と、内部欠陥を検出するステップS7と、を備える。
これにより、対象物Tを3D造形するためにレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)と、対象物T中に超音波を発生させるために対象物Tに対して照射するパルスレーザ光(パルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4)とを、同じレーザ照射装置201で照射できるので、制御対象の装置を少なくすることができる。これにより、装置の制御が煩雑になり難くなるので、3D造形される対象物Tの内部欠陥の検出に適した欠陥検出方法を提供できる。
【0071】
(対象物Tを3D造形しつつ内部欠陥の有無を検出する場合)
図13は、上述した2つ目の方法によって3D造形及び内部欠陥を検出する処理を実施する手順を示したフローチャートである。
図13に示した欠陥検出方法は、パルスレーザ光を照射するステップS13と、振動を計測するステップS15と、内部欠陥を検出するステップS17と、内部欠陥を修復するステップS19とを備えている。
【0072】
(パルスレーザ光を照射するステップS13)
パルスレーザ光を照射するステップS13は、対象物Tを3D造形すると同時に対象物T中に超音波を発生させるために、対象物Tに対してレーザ照射装置201からパルスレーザ光B4を照射するステップである。
パルスレーザ光を照射するステップS13では、パルスレーザ光B4をパウダーベッドに照射し、パルスレーザ光B4の照射による3D造形を行うとともに、パルスレーザ光B4が照射された部位の急激な熱膨張と収縮により超音波を発生させる。
【0073】
パルスレーザ光を照射するステップS13では、制御装置230は、対象物Tを3D造形すると同時に対象物T中に超音波を発生させるためのパルスレーザ光B4を照射するように各部を制御する。すなわち、パルスレーザ光を照射するステップS13では、照射制御装置231は、パルスレーザ光B4を照射するようにレーザ照射装置201を制御する。また、パルスレーザ光を照射するステップS13では、ガルバノミラー制御装置232は、3D造形及び内部欠陥の有無を検出しようとする位置に対してパルスレーザ光B4が照射されるように第1ガルバノミラー204を制御する。
【0074】
パルスレーザ光を照射するステップS13におけるパルスレーザ光B4の照射回数は、3D造形及び内部欠陥の有無を検出しようとする位置の1カ所につき1回であるが、複数回であってもよい。なお、パルスレーザ光B4の対象物Tにおける照射位置は、パルスレーザ光B4の照射期間中、不動である。また、パルスレーザ光B4の照射回数が上記1カ所につき複数回であっても、各回におけるパルスレーザ光B4の対象物Tにおける照射位置は同一の位置である。
パルスレーザ光B4のビーム径は、検出しようとする内部欠陥の大きさSと同程度であるとよく、例えば数百μmである。ここでいう内部欠陥の大きさとは、内部欠陥を対象物Tの表面から見たときの大きさのことである。なお、パルスレーザ光B4のビーム径を上記の大きさに設定するために、欠陥検出装置200はビーム径調整レンズを備えていてもよいが、ビーム径調整レンズを備えることは必須ではない。
パルスレーザ光B4のパルス幅は、10n秒以上1000n秒以下であるとよい。
【0075】
パルスレーザ光を照射するステップS13において、上述したような照射条件でパルスレーザ光B4を対象物Tに照射することで、原料粉303を溶融すること、及び、対象物Tに超音波を発生させることができる。
このようにして発生した超音波は、比較的広帯域の振動である。そのため、対象物Tの表面からの距離dや内部欠陥の大きさSに応じて対象物Tの固有振動数が異なっていても、この固有振動数のたわみ振動を卓越して発生させることができる。
【0076】
(振動を計測するステップS15)
振動を計測するステップS15は、パルスレーザ光を照射するステップS13を実施することで発生した超音波に基づく対象物の振動を計測するステップである。
振動を計測するステップS15は、パルスレーザ光を照射するステップS13でパルスレーザ光B4を照射したタイミングと略同時期に実施される。
振動を計測するステップS15では、検出装置220は、対象物Tの表面の振動を振動計測装置221に検出させる。
【0077】
図1図2、及び図3に示す実施形態では、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bによって超音波に基づく対象物Tの表面の振動を非接触で検出できる。
【0078】
図1図2、及び図3に示す実施形態では、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bによって超音波に基づく対象物Tの表面の振動を非接触で検出できる。
図1に示す実施形態では、パルスレーザ光B4の照射位置とレーザ光B3の照射位置とが同じ位置となる。また、図2に示す実施形態では、ガルバノミラー204、207の姿勢制御によって、パルスレーザ光B4の照射位置と同じ位置にレーザ光B3を照射することができる。
超音波励振点と、受信点の近接化が可能になる為、これにより、対象物Tの検査面が小さい場合や、対象物Tが複雑な場合であっても、対象物Tの表面の振動を検出できる。
また、図1及び図2に示す実施形態において、パルスレーザ光B4の照射位置とレーザ光B3の照射位置とが同じ位置であれば、パルスレーザ光B4の照射位置からレーザ光B3の照射位置までの振動の伝達時間を考慮しなくてもよくなる。これにより、後述する内部欠陥を検出するステップS17における演算負荷を低減できる。
【0079】
図1に示す実施形態では、パルスレーザ光B4とレーザ光B3とを同軸で照射できる。これにより、対象物Tが複雑な構造であっても、レーザ光B3が対象物Tの一部によって遮られることを回避して対象物Tの表面の振動を検出できる。
【0080】
図2に示す実施形態では、ガルバノミラー204、207の姿勢制御によって、パルスレーザ光B4の照射位置とレーザ光B3の照射位置とが常に一定の距離を保つように照射することができる。これにより、パルスレーザ光B4の照射によるノイズが検出されるタイミングと、上述した固有振動数での振幅が検出されるタイミングとをずらすことができ、固有振動数での振幅を検出し易くなる。また、図2に示す実施形態では、パルスレーザ光B4の照射位置とレーザ光B3の照射位置とが常に一定の距離を保つように照射することにより、パルスレーザ光B4の照射位置とレーザ光B3の照射位置との距離が変化する場合と比べて、後述する内部欠陥を検出するステップS17における演算負荷を低減できる。
【0081】
図3に示す実施形態では、上述したように、振動計測装置221からのレーザ光B3の対象物Tにおける照射位置は、予めミラー208の姿勢を調節することで設定された固定位置である。そのため、レーザ光B3の対象物Tにおける照射位置の表面の状態が不変であるため、対象物Tの表面の振動を安定して検出できる。
また、図3に示す実施形態では、第2ガルバノミラー207の姿勢制御を行わなくてもよくなるので、制御装置230における演算負荷を抑制できる。
【0082】
このように、幾つかの実施形態に係る欠陥検出方法において、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bによって対象物Tの表面の振動を検出するようにしてもよい。
これにより、内部欠陥の有無を非接触で検出することができる。
【0083】
図4及び図5に示す実施形態では、接触式トランスデューサ221tによって超音波に基づく対象物Tの表面の振動を直接検出できる。これにより、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bに対象物Tの表面の振動を非接触で検出する場合と比べて、良好な感度で対象物Tの表面の振動を検出できる。
図4に示す実施形態では、接触式トランスデューサ221tを対象物Tの上面に設置するので、パルスレーザ光B4の照射位置と接触式トランスデューサ221tとの距離を比較的接近できるので、さらに良好な感度で対象物Tの表面の振動を検出できる。
図5に示す実施形態では、接触式トランスデューサ221tを造形装置300のベースプレート301に設置するので、対象物Tの検査面が小さい場合や、対象物Tが複雑な場合等、接触式トランスデューサ221tを対象物Tの上面に設置することが困難な場合であっても、対象物Tの振動を検出できる。
【0084】
(内部欠陥を検出するステップS17)
内部欠陥を検出するステップS17は、振動を計測するステップS15で計測された振動に基づいて対象物の内部欠陥の有無を検出するステップである。すなわち、内部欠陥を検出するステップS17は、超音波に基づく対象物Tの振動の特定の周波数成分の振幅に基づいて、対象物Tの内部欠陥の有無を検出するステップである。
内部欠陥を検出するステップS17では、演算装置222は、次のようにして対象物Tの内部欠陥の有無を検出する。
まず、演算装置222は、時間波形蓄積メモリ222aにて、フォトディテクタ206で検出したパルスレーザ光B4の照射タイミングを基準として、該照射タイミング以降の予め設定された期間内に振動計測装置221で検出した振動の情報を振動計測装置221から取得する。
【0085】
次いで、演算装置222は、窓関数による抽出部222bにて、上述のようにして振動計測装置221から取得した振動の情報から、内部欠陥の有無の検出に必要な振動の情報を抽出する。窓関数による抽出部222bにおける処理の内容は、図8に示した1つ目の方法についての内部欠陥を検出するステップS7における処理の内容と略同じであるので、詳細な説明は省略する。なお、窓関数による抽出部222bは、フォトディテクタ206で検出したパルスレーザ光B4の照射タイミングを0秒として、該照射タイミング以降、5.0μ秒経過時までの振動の情報を抽出する。
【0086】
次いで、演算装置222は、FFT処理部222cにて、該固有周波数によるたわみ振動を抽出すべく、上述のようにして抽出した第1到達波についての振動の情報に対してFFT処理を行う。
【0087】
上述したFFT処理の処理結果に基づいてFFT結果分析部222dで行われる処理の内容は、図8に示した1つ目の方法についての内部欠陥を検出するステップS7における処理の内容と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0088】
このように、上述した一実施形態に係る欠陥検出方法において、内部欠陥を検出するステップS17では、内部欠陥の形状、内部欠陥の位置、対象物Tの材質等によって決まる周波数成分に基づいて、対象物Tの内部欠陥の有無を検出するとよい。
これにより、対象物Tにおける比較的表面から近い領域における内部欠陥の有無を検出できる。
【0089】
なお、演算装置222は、制御装置230と協働して、パルスレーザ光B4の照射位置をずらしながら、上述したパルスレーザ光を照射するステップS13から内部欠陥を検出するステップS17を繰り返し実施することで、対象物Tの表面の全面に亘り、比較的表面から近い領域における内部欠陥の有無を検出する。
【0090】
演算装置222は、マップ作成部222eにて、対象物Tの表面上の位置と、FFT結果分析部222dが取得した上記ピーク値との関係を示すマップを作成する。すなわち、マップ作成部222eは、FFT処理結果値をマップ状にプロットすることで上記マップを作成する。マップ作成部222eで行われる処理の内容は、図8に示した1つ目の方法についての内部欠陥を検出するステップS7における処理の内容と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0091】
(内部欠陥を修復するステップS19)
内部欠陥を修復するステップS19は、付加造形の積層によって3D造形される造形中の対象物Tについて内部欠陥を検出した場合に、内部欠陥を修復するように、少なくとも対象物Tにおける内部欠陥の直上に位置する部位を溶融するステップである。
幾つかの実施形態に係る欠陥検出方法では、内部欠陥を検出するステップS17において内部欠陥の存在が検出された場合に内部欠陥を修復するステップS19を実施する。
すなわち、幾つかの実施形態では、付加造形の積層によって3D造形される造形中の対象物Tについて内部欠陥を検出した場合に、内部欠陥の直上位置で次層を形成するときに内部欠陥を修復するように次層と次層の数層下の層までを溶融してもよい。この場合には、パルスレーザ光B4の出力を通常の3D造形における出力よりも大きくして、3D造形(内部欠陥を修復するステップS19)を行うとよい。
また、幾つかの実施形態に係る欠陥検出方法では、内部欠陥を検出するステップS17において内部欠陥の存在が検出された場合に、パルスレーザ光B4の照射位置を変えずに、再びパルスレーザ光B4を通常の3D造形における出力より高い出力にて照射して、少なくとも対象物Tにおける内部欠陥の直上に位置する部位を溶融することで、内部欠陥を修復するようにしてもよい(図7参照)。
【0092】
上述した一実施形態に係る欠陥検出方法は、パルスレーザ光を照射するステップS13と、振動を計測するステップS15と、内部欠陥を修復するステップS19と、を備える。
上述した一実施形態に係る欠陥検出方法によれば、対象物Tを3D造形すると同時に対象物T中に超音波を発生させることができるので、対象物Tの3D造形と対象物Tの内部欠陥の有無の検出とを同時に実施できる。これにより、対象物Tの3D造形と対象物Tの内部欠陥の有無の検出とに要する時間を短縮できるので、3D造形される対象物Tの内部欠陥の検出に適した欠陥検出方法を提供できる。
【0093】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0094】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る欠陥検出装置200は、対象物Tを3D造形するためにレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)を照射可能であるとともに、対象物T中に超音波を発生させるために対象物Tに対してパルスレーザ光(パルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4)を照射可能であるレーザ照射装置201を備える。本開示の少なくとも一実施形態に係る欠陥検出装置200は、レーザ光の照射を制御する照射制御装置231を備える。本開示の少なくとも一実施形態に係る欠陥検出装置200は、超音波に基づく対象物Tの振動を計測するように構成された振動計測装置221を備える。本開示の少なくとも一実施形態に係る欠陥検出装置200は、振動計測装置221で検出された振動に基づいて対象物Tの内部欠陥の有無を検出するように構成された検出装置220(演算装置222)を備える。
【0095】
上記(1)の構成によれば、対象物Tを3D造形するためにレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)と、対象物T中に超音波を発生させるために対象物Tに対して照射するパルスレーザ光(パルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4)とを、同じレーザ照射装置201で照射できるので、欠陥検出装置200、及び、3D造形装置300の装置構成を簡素化できる。これにより、3D造形される対象物Tの内部欠陥の検出に適した欠陥検出装置200を提供できる。
【0096】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、照射制御装置231は、対象物Tを3D造形するために連続発振されたレーザ光(連続発振レーザ光B1)を照射するようにレーザ照射装置201を制御するようにしてもよい。
【0097】
上記(2)の構成によれば、対象物Tを3D造形するために連続発振されたレーザ光(連続発振レーザ光B1)を用い、対象物T中に超音波を発生させるためにパルスレーザ光(パルスレーザ光B2)を用いるようにすることで、対象物Tの3D造形する場合と、対象物T中に超音波を発生させる場合のそれぞれで、より適した条件でレーザ光を照射できる。
【0098】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、照射制御装置231は、対象物を3D造形するためにパルスレーザ光(パルスレーザ光B4)を照射するようにレーザ照射装置201を制御するようにしてもよい。
【0099】
上記(3)の構成によれば、対象物Tを3D造形するためにパルスレーザ光(パルスレーザ光B4)を照射することで対象物T中に超音波を発生させるようにすれば、対象物Tの3D造形と対象物Tの内部欠陥の有無の検出とを同時に実施できる。これにより、対象物Tの3D造形と対象物Tの内部欠陥の有無の検出とに要する時間を短縮できる。
【0100】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、対象物Tを3D造形するためのレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)を走査するための第1ガルバノミラー204を備えるとよい。
【0101】
上記(4)の構成によれば、レーザ照射装置201自体を移動させる必要がないので、レーザ光の走査を行うための機構を小型化できる。
【0102】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、振動計測装置221は、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bの何れか一方を含んでいてもよい。
【0103】
上記(5)の構成によれば、対象物Tの振動を非接触で計測できる。
【0104】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bからの計測用のレーザ光(レーザ光B3)を走査するための第2ガルバノミラー207を備えるとよい。
【0105】
上記(6)の構成によれば、計測用のレーザ光(レーザ光B3)を走査できるので、パルスレーザ光B2又はパルスレーザ光B4の照射位置と同じ位置に計測用のレーザ光(レーザ光B3)を照射できる。
【0106】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、振動計測装置221は、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bの何れか一方を含むとよく、照射制御装置231は、対象物Tを3D造形するためのレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)、及び、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bからの計測用のレーザ光(レーザ光B3)を走査するためのガルバノミラー(第1ガルバノミラー204)を有するとよい。
【0107】
上記(7)の構成によれば、対象物Tを3D造形するためのレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)の走査と、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bからの計測用のレーザ光(レーザ光B3)の走査とを、同じガルバノミラー(第1ガルバノミラー204)の制御により実施できる。これにより、対象物Tを3D造形するためのレーザ光(連続発振レーザ光B1又はパルスレーザ光B4)の走査と、レーザ干渉計221A又はドップラ振動計221Bからの計測用のレーザ光(レーザ光B3)の走査とを別々のガルバノミラーで実施する場合と比べて、欠陥検出装置200を簡素化できる。
【0108】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、振動計測装置221は、超音波に基づく対象物Tの振動を計測するための接触式トランスデューサ221tを含んでいてもよい。
【0109】
上記(8)の構成によれば、超音波に基づく対象物Tの振動を非接触で計測する場合と比べて、計測精度を向上させ易い。
【0110】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係る欠陥検出方法は、対象物Tを3D造形するためにレーザ照射装置201からレーザ光(連続発振レーザ光B1)を照射するステップ(S1)と、対象物T中に超音波を発生させるために対象物Tに対してレーザ照射装置201からパルスレーザ光(パルスレーザ光B2)を照射するステップ(S3)と、超音波に基づく対象物Tの振動を計測するステップ(S5)と、計測された振動に基づいて対象物Tの内部欠陥の有無を検出するステップ(S7)と、を備える。
【0111】
上記(9)の方法によれば、対象物Tを3D造形するためにレーザ光(連続発振レーザ光B1)と、対象物T中に超音波を発生させるために対象物Tに対して照射するパルスレーザ光(パルスレーザ光B2)とを、同じレーザ照射装置201で照射できるので、制御対象の装置を少なくすることができる。これにより、装置の制御が煩雑になり難くなるので、3D造形される対象物Tの内部欠陥の検出に適した欠陥検出方法を提供できる。
【0112】
(10)本開示の少なくとも一実施形態に係る欠陥検出方法は、対象物Tを3D造形すると同時に対象物T中に超音波を発生させるために、対象物Tに対してレーザ照射装置201からパルスレーザ光(パルスレーザ光B4)を照射するステップ(S13)と、超音波に基づく対象物Tの振動を計測するステップ(S15)と、計測された振動に基づいて対象物Tの内部欠陥の有無を検出するステップ(S17)と、を備える。
【0113】
上記(10)の方法によれば、対象物Tを3D造形すると同時に対象物T中に超音波を発生させることができるので、対象物Tの3D造形と対象物Tの内部欠陥の有無の検出とを同時に実施できる。これにより、対象物Tの3D造形と対象物Tの内部欠陥の有無の検出とに要する時間を短縮できるので、3D造形される対象物Tの内部欠陥の検出に適した欠陥検出方法を提供できる。
【符号の説明】
【0114】
200 欠陥検出装置
201 レーザ照射装置
204 ガルバノミラー(第1ガルバノミラー)
207 ガルバノミラー(第2ガルバノミラー)
220 検出装置
221 振動計測装置
221A レーザ干渉計
221B ドップラ振動計
221D データロガー
221t 接触式トランスデューサ
222 演算装置
230 制御装置
231 照射制御装置
232 ガルバノミラー制御装置
300 造形装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13