(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183747
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】粘着組成物、粘着シートおよびフレキシブル電子デバイス
(51)【国際特許分類】
C09J 123/22 20060101AFI20221206BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221206BHJP
【FI】
C09J123/22
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091220
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】名取 直輝
(72)【発明者】
【氏名】大橋 賢
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA07
4J004AB01
4J004FA05
4J040DA141
4J040DA161
4J040HD43
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA29
4J040KA31
4J040LA06
4J040MB03
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】変形性および回復性に優れた粘着層を形成できる粘着組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ基を有するイソブテン系重合体、(B)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体、並びに(C)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体を含む粘着組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)成分~(C)成分:
(A)エポキシ基を有するイソブテン系重合体、
(B)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体、並びに
(C)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体
を含む粘着組成物。
【請求項2】
(B)成分が、酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体である請求項1に記載の粘着組成物。
【請求項3】
(C)成分が、酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体である請求項1または2に記載の粘着組成物。
【請求項4】
(B)成分の数平均分子量が、20,000~500,000である請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着組成物。
【請求項5】
(C)成分の数平均分子量が、300以上10,000未満である請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着組成物。
【請求項6】
(A)成分、(B)成分および(C)成分以外の液状オレフィン系重合体をさらに含む請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着組成物。
【請求項7】
さらに可塑剤を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着組成物。
【請求項8】
支持体および請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着組成物から形成された粘着層を含む積層構造を有する粘着シート。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着組成物から形成された粘着層を含むフレキシブル電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着組成物、粘着シートおよびフレキシブル電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フラットパネルディスプレイ(液状ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等)や太陽電池などの電子デバイスには、主としてガラス基板が用いられてきたが、ガラス基板は重く壊れやすく、軽量化、薄型化すると強度が低下するという問題がある。このため、近年は、ガラス基板を柔軟で折り曲げ可能なフレキシブル基板へと置き換えたフレキシブル電子デバイス(以下、単に「フレキシブルデバイス」と略称することがある)の開発が盛んに進められている。また、フレキシブルデバイスの層間接着に、粘着層を有する粘着シートが使用される場合があり、その場合、フレキシブルデバイスが粘着層を有する。
【0003】
フレキシブルデバイスの部材では、折り曲げる際に加えられる応力により破損または剥がれが生じたりすることがある。このような破損または剥がれを防止するために、フレキシブルデバイス中の粘着層は、応力により変形する性能(本明細書中「変形性」と記載することがある)に優れることが求められる。
【0004】
また、フレキシブルデバイスの部材では、応力が除かれた後に、変形した形状が、元の形状に戻ることも要求される。そのため、フレキシブルデバイス中の粘着層は、応力が除かれた後に、変形した形状が、元の形状に戻る性能(本明細書中「回復性」と記載することがある)に優れることが求められる。
【0005】
例えば、特許文献1には、不良および層間剥離を防止するためのフレキシブルデバイス用のアセンブリ層が開示されている。該アセンブリ層は、接着剤組成物を含み、特定のせん断貯蔵弾性率、特定のせん断クリープコンプライアンス、および特定のひずみ回復を有することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、変形性および回復性に優れた粘着層を形成できる粘着組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] 以下の(A)成分~(C)成分:
(A)エポキシ基を有するイソブテン系重合体、
(B)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体、並びに
(C)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体
を含む粘着組成物。
[2] (B)成分が、酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体である前記[1]に記載の粘着組成物。
[3] (C)成分が、酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体である前記[1]または[2]に記載の粘着組成物。
[4] (B)成分の数平均分子量が、20,000~500,000である前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の粘着組成物。
[5] (C)成分の数平均分子量が、300以上10,000未満である前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の粘着組成物。
[6] (A)成分、(B)成分および(C)成分以外の液状オレフィン系重合体をさらに含む前記[1]~[5]のいずれか一つに記載の粘着組成物。
[7] さらに可塑剤を含む前記[1]~[6]のいずれか一つに記載の粘着組成物。
[8] 支持体および前記[1]~[7]のいずれか一つに記載の粘着組成物から形成された粘着層を含む積層構造を有する粘着シート。
[9] 前記[1]~[7]のいずれか一つに記載の粘着組成物から形成された粘着層を含むフレキシブル電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変形性および回復性に優れた粘着層を形成できる粘着組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
粘着組成物
本発明の粘着組成物は、以下の(A)成分~(C)成分を含むことを特徴とする:
(A)エポキシ基を有するイソブテン系重合体、
(B)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体、並びに
(C)酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体。
【0011】
(A)成分~(C)成分は、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。以下、(A)成分~(C)成分について順に説明する。
【0012】
<(A)成分>
本発明で使用する(A)成分は、エポキシ基を有するイソブテン系重合体である。本明細書中、「イソブテン系重合体」とは、イソブテンに由来する構成単位(以下「イソブテン単位」と略称することがある)が主たる構成単位である(即ち、イソブテン単位の量が全構成単位の中で最大である)重合体を意味する。なお、以下ではイソブテンに由来する構成単位と同様に、「オレフィンに由来する構成単位」等を「オレフィン単位」等と略称することがある。
【0013】
イソブテン系重合体は、イソブテンの単独重合体でもよく、イソブテンとイソブテン以外のモノマーとの共重合体でもよい。共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。
【0014】
イソブテン系重合体は、イソブテン系樹脂(例えば、ポリイソブテン)でもよく、イソブテン系ゴム(例えば、ブチルゴム、即ち、イソブテン-イソプレン共重合体)でもよい。本明細書中、「イソブテン系樹脂」とは、架橋によってゴム弾性体を形成できないイソブテン系重合体を意味し、「イソブテン系ゴム」とは、架橋によってゴム弾性体を形成できるイソブテン系重合体を意味する。
【0015】
(A)成分中のエポキシ基の濃度は、粘着層の変形性および回復性の観点から、好ましくは0.1~5mmol/g、より好ましくは0.3~3mmol/gである。エポキシ基濃度は、JIS K 7236-1995に基づいて得られるエポキシ当量から求められる。
【0016】
(A)成分の数平均分子量は、粘着層の変形性および回復性の観点から、好ましくは10,000~500,000、より好ましくは30,000~400,000、さらに好ましくは50,000~300,000である。なお、各成分の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所社製「LC-9A/RID-6A」を、カラムとして昭和電工社製「Shodex K-800P/K-804L/K-804L」を、移動相としてトルエン等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0017】
(A)成分は、例えば、エポキシ基を有する不飽和化合物(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル)で、イソブテン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することによって得ることができる。
【0018】
(A)成分としては、例えば、星光PMC社から入手できる重合体を使用することができる。星光PMC社から入手できる該重合体としては、例えば「ER850」(グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム)、「ER866」(グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム)、「ER869」(グリシジルメタクリレート-2-エチルヘキシルアクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム)等が挙げられる。
【0019】
(A)成分は、好ましくはエポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体(即ち、ブチルゴム)である。
(A)成分としてエポキシ基を有するイソブテン-イソプレン共重合体(即ち、ブチルゴム)を使用する場合、粘着層の耐黄変性の観点から、該共重合体中のイソプレン単位の量は、イソブテン単位およびイソプレン単位の合計あたり、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.3~5質量%、さらに好ましくは0.5~3質量%である。なお、前記イソプレン単位の量は、変性部分(例えば、エポキシ基を導入するためのグリシジル(メタ)アクリレートに由来する部分)を除いたイソブテン単位およびイソプレン単位を基準とする。
【0020】
(A)成分および後述の(B)成分の含有量の合計は、粘着組成物の不揮発分100質量%に対して、粘着層の回復性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、粘着層の変形性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0021】
(A)成分および(B)成分の質量比((A)成分:(B)成分)は、適切な架橋構造を形成するため、好ましくは5:95~95:5、より好ましくは10:90~90:10、さらに好ましくは80:20~20:80である。
【0022】
<(B)成分>
本発明で使用する(B)成分は、酸無水物基(即ち、カルボニルオキシカルボニル基(-CO-O-CO-))および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体であり、好ましくは酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体である。(B)成分における「イソブテン系重合体」の説明は、(A)成分のものと同じである。
【0023】
(B)成分として酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体を使用する場合、該重合体中の酸無水物基の濃度は、粘着層の変形性および回復性の観点から、好ましくは0.1~5mmol/g、より好ましくは0.2~3mmol/gである。酸無水物基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、重合体1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0024】
(B)成分としてカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体を使用する場合、該重合体中のカルボキシ基の濃度は、粘着層の変形性および回復性の観点から、好ましくは0.1~5mmol/g、より好ましくは0.2~3mmol/gである。カルボキシ基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、重合体1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0025】
(B)成分として酸無水物基およびカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン系重合体を使用する場合、該重合体中の酸無水物基の濃度とカルボキシ基の濃度との合計は、粘着層の変形性および回復性の観点から、好ましくは0.1~5mmol/g、より好ましくは0.2~3mmol/gである。
【0026】
(B)成分の数平均分子量は、粘着層の変形性および回復性の観点から、好ましくは20,000~500,000、より好ましくは25,000~400,000、さらに好ましくは30,000~300,000である。
【0027】
(B)成分は、例えば、酸無水物基および/またはカルボキシ基を有する不飽和化合物(例えば、無水マレイン酸)で、イソブテン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することによって製造することができる。
【0028】
(B)成分としては、例えば、星光PMC社から入手できる重合体を使用することができる。星光PMC社から入手できる該重合体としては、例えば「ER641」(無水マレイン酸変性ブチルゴム)、「ER661」(無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム)、「ER669」(無水マレイン酸-2-エチルヘキシルアクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム)、「ER674」(無水マレイン酸-ラウリルメタクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム)等が挙げられる。
【0029】
本発明の一態様において、(B)成分は、好ましくは酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン-イソプレン共重合体(即ち、ブチルゴム)であり、より好ましくは酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン-イソプレン共重合体である。
【0030】
(B)成分として酸無水物基および/またはカルボキシ基(好ましくは酸無水物基)を有し、且つ数平均分子量が10,000以上であるイソブテン-イソプレン共重合体(即ち、ブチルゴム)を使用する場合、粘着層の耐黄変性の観点から、該共重合体中のイソプレン単位の量は、イソブテン単位およびイソプレン単位の合計あたり、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~3質量%である。なお、前記イソプレン単位の量は、、変性部分(例えば、酸無水物基を導入するための、無水マレイン酸に由来する部分、無水マレイン酸-(メタ)アクリレート共重合体に由来する部分等)を除いたイソブテン単位およびイソプレン単位を基準とする。
【0031】
<(C)成分>
本発明で使用する(C)成分は、酸無水物基(即ち、カルボニルオキシカルボニル基(-CO-O-CO-))および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体であり、好ましくは酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体である。本明細書中、「オレフィン系重合体」とは、オレフィン単位」が主たる構成単位である(即ち、オレフィン単位の量が全構成単位の中で最大である)重合体を意味する。
【0032】
オレフィン系重合体は、オレフィン系樹脂(例えば、プロピレン-ブテン共重合体)でもよく、オレフィン系ゴム(例えば、ブチルゴム、即ち、イソブテン-イソプレン共重合体)でもよい。本明細書中、「オレフィン系樹脂」とは、架橋によってゴム弾性体を形成できないオレフィン系重合体を意味し、「オレフィン系ゴム」とは、架橋によってゴム弾性体を形成できるオレフィン系重合体を意味する。
【0033】
オレフィンとしては、1個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有するモノオレフィンおよび/または2個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有するジオレフィンが好ましい。モノオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン(イソブチレン)、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィンが挙げられる。ジオレフィンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられる。
【0034】
オレフィン系重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。また、オレフィン系重合体は、オレフィンとオレフィン以外のモノマーとの共重合体でもよい。オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン-非共役ジエン共重合体、イソブテン-イソプレン共重合体、スチレン-イソブテン共重合体、スチレン-イソブテン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0035】
(C)成分として酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体を使用する場合、該重合体中の酸無水物基の濃度は、粘着層の変形性および回復性の観点から、好ましくは0.05~3mmol/g、より好ましく0.1~2mmol/gである。酸無水物基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、重合体1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0036】
(C)成分としてカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体を使用する場合、該重合体中のカルボキシ基の濃度は、粘着層の変形性および回復性の観点から、好ましくは0.05~3mmol/g、より好ましくは0.1~2mmol/gである。カルボキシ基の濃度は、JIS K 2501の記載に従い、重合体1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0037】
(C)成分として酸無水物基およびカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるオレフィン系重合体を使用する場合、該重合体中の酸無水物基の濃度とカルボキシ基の濃度との合計は、粘着層の変形性および回復性の観点から、好ましくは0.05~3mmol/g、より好ましくは0.1~2mmol/gである。
【0038】
(C)成分の数平均分子量は、粘着層の変形性の観点から、好ましくは300以上10,000未満、より好ましくは500~8,000、さらに好ましくは1,000~6,000である。
【0039】
(C)成分は、例えば、酸無水物基および/またはカルボキシ基を有する不飽和化合物(例えば、無水マレイン酸)で、オレフィン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することによって製造することができる。
【0040】
(C)成分としてはメーカーから入手できる重合体を使用することができる。そのような重合体としては、例えば、東邦化学工業社製「HV-300M」(無水マレイン酸変性液状ポリブテン)、星光PMC社製「ER688」(無水マレイン酸変性液状ポリブテン)、三井化学社製「ルーカントA-5515」(酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体)、「ルーカントA-5260」(酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体)、「ルーカントA-5320H」(酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体)等が挙げられる。
【0041】
本発明の一態様において、(C)成分は、好ましくは酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるポリブテンであり、より好ましくは酸無水物基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満であるポリブテンである。
【0042】
(C)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発分100質量%に対して、粘着層の変形性の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、粘着層の回復性の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0043】
<(A)成分の使用量、並びに(B)成分および(C)成分の使用量>
(A)成分の使用量、並びに(B)成分および(C)成分の使用量は、これらが有する官能基の比によって定めることが好ましい。「(A)成分が有するエポキシ基の量(mol)」:「(B)成分および(C)成分が有する酸無水物基の量(mol)およびカルボキシ基の量(mol)の合計」は、粘着層の回復性の観点から、好ましくは20:80~80:20、より好ましくは25:75~75:25、さらに好ましくは30:70~70:30である。なお、例えば(B)成分および(C)成分がいずれも酸無水物基のみを有する場合、前記「酸無水物基の量(mol)およびカルボキシ基の量(mol)の合計」は「酸無水物基の量(mol)の合計」を意味する。
【0044】
<他の成分>
本発明の粘着組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、(A)成分~(C)成分以外の成分(以下「他の成分」と記載することがある)を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、液状オレフィン系重合体、可塑剤、酸化防止剤、金属錯体、硬化剤促進剤等が挙げられる。これらは、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。以下、液状オレフィン系重合体等について順に説明する。
【0045】
(液状オレフィン系重合体)
本発明において、良好な密着性、およびより一層良好な変形性を粘着層に付与するために、(A)成分、(B)成分および(C)成分以外の液状オレフィン系重合体を使用してもよい。本発明において「液状オレフィン系重合体」における「液状」とは、25℃での粘度が5,000Pa・s以下であることを意味する。また、本発明において「25℃での粘度」とは、動的粘弾性測定装置で測定される25℃での動粘度に、密度を掛けて算出される粘度を意味する。動的粘弾性測定装置としては、例えば、TAインスツルメント社製レオメーター(商品名:DISCOVERY HR-2)等が挙げられる。「液状オレフィン系重合体」における「オレフィン」および「オレフィン系重合体」の説明および例示は、(C)成分のものと同じである。
【0046】
液状オレフィン系重合体の中で、エポキシ基を有する液状イソブテン系重合体は、本発明では(A)成分に分類される。また、液状オレフィン系重合体の中で、酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000以上である液状イソブテン系重合体は、本発明では(B)成分に分類される。また、液状オレフィン系重合体の中で、酸無水物基および/またはカルボキシ基を有し、且つ数平均分子量が10,000未満である液状オレフィン系重合体は、(C)成分に分類される。
【0047】
液状オレフィン系重合体の25℃での粘度は、粘着層の変形性の観点から、好ましくは50~5,000Pa・s、より好ましくは50~4,000Pa・s、さらに好ましくは100~3,000Pa・sである。
【0048】
液状ポリオレフィン系重合体の数平均分子量は、粘着層の密着性の観点から、
好ましくは100~50,000、より好ましくは200~30,000、さらに好ましくは300~20,000である。
【0049】
液状オレフィン系重合体は、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば、ENEOS社製「HV-300」(液状ポリブテン)、ENEOS社製「HV-1900」(液状ポリブテン)、ENEOS社製「HV-50」(液状ポリブテン)、ENEOS社製「HV-35」(液状ポリブテン)、Kothari社製「950MW」(液状ポリブテン)、Kothari社製「2400MW」(液状オレフィン系重合体)、INEOS社製「H-1900」(液状ポリブテン)、INEOS社製「H-6000」(液状ポリブテン)、INEOS社製「H-18000」(液状ポリブテン)、日油社製「200N」(液状ポリブテン)、日本曹達社製「BI-2000」(水素化ポリブタジエン)、日本曹達社製「BI-3000」(水素化ポリブタジエン)、日本曹達社製「GI-3000」(水素化ポリブタジエン)、三井化学社製「ルーカントLX100」(液状オレフィン系重合体)、三井化学社製「ルーカントLX400」(液状オレフィン系重合体)、出光昭和シェル社製「Poly bd R-45HT」(ブタジエン系液状ゴム)、出光昭和シェル社製「Poly bd R-15HT」(ブタジエン系液状ゴム)、出光昭和シェル社製「Poly ip」(液状ポリイソプレン)、日本曹達社製「B-1000」(液状ポリブタジエン)、日本曹達社製「B-3000」(液状ポリブタジエン)、日本曹達社製「G-3000」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「LIR-30」(液状ポリイソプレン)、クラレ社製「LIR-390」(液状ポリイソプレン)、クラレ社製「LIR-290」(液状ポリイソプレン)、クラレ社製「LBR-302」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「LBR-305」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「LBR-361」(液状ポリブタジエン)、クラレ社製「L-SBR-820」(液状スチレン-ブタジエンランダム共重合体)、CRAY VALLEY社製「Ricon154」(液状ブタジエン)、CRAY VALLEY社製「RICON 184」(液状スチレン-ブタジエンランダム共重合体)等が挙げられる。
【0050】
液状オレフィン系重合体は、好ましくは液状ポリブテンである。
液状オレフィン系重合体を使用する場合、粘着組成物中のその含有量は、粘着層の密着性の観点から、粘着組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは3~50質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。
【0051】
(可塑剤)
本発明において、より一層良好な変形性を粘着層に付与するために、可塑剤を使用してもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤、石油系オイル、ポリオールポリエステル、動物油、植物油、ヒマシ油誘導体等が挙げられる。
【0052】
フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)等が挙げられる。アジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル等が挙げられる。トリメリット酸エステル系塑剤としては、例えば、トリメリット酸トリオクチル等が挙げられる。スルホン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0053】
石油系オイルとしては、例えば、パラフィンオイル(流動パラフィン)、ナフテンオイル、芳香族オイル等が挙げられる。ポリオールポリエステルとしては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
【0054】
動物油としては、例えば、スクワラン、スクワレン等が挙げられる。植物油としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油、トール油、ラッカセイ油、綿実油、菜種油、大豆油、パーム油、ヤシ油等が挙げられる。
【0055】
様々なメーカーから、ヒマシ油誘導体が可塑剤として市販されている。ヒマシ油誘導体の市販品としては、例えば、伊藤製油社製の「ヒマシ硬化油A」、「CO-FA」、「DCO-FA」、「リックサイザー S4」、「リックサイザー C-101」、「リックサイザー GR-310」、「リックサイザー S-8」;青木油脂工業社製の「ブラウノンBR-410」、「ブラウノンBR-410」、「ブラウノンBR-430」、「ブラウノンBR-450」、「ブラウノンCW-10」、「ブラウノンRCW-20」、「ブラウノンRCW-40」、「ブラウノンRCW-50」、「ブラウノンRCW-60」;日油社製の「カスターワックスA」、「ニューサイザー510R」、「ステアリン酸さくら」、「ヒマシ硬化脂肪酸」、「NAA-34」、「NAA-160」、「NAA-175」等が挙げられる。
【0056】
可塑剤を使用する場合、粘着組成物中のその含有量は、粘着層の変形性および密着性の観点から、粘着組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは3~30質量%、さらに好ましくは5~25質量%である。
【0057】
(酸化防止剤)
本発明において酸化防止剤に特に限定はなく、公知のものを使用することができる。酸化防止剤を使用する場合、その含有量は、粘着組成物の不揮発分100質量%に対して、
好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.10~4質量%、さらに好ましくは0.20~3質量%である。
【0058】
(金属錯体)
本発明において、より一層優れた回復性を有する粘着層を形成するために、二つの配位原子がともに酸素原子である二座配位子(以下「酸素-二座配位子」と記載することがある)および配位原子が酸素原子である単座配位子(以下「酸素-単座配位子」と記載することがある)が中心金属に結合した金属錯体を使用してもよい。
【0059】
前記金属錯体は、好ましくは、下記式(1):
【0060】
【0061】
[式(1)中、
Mは、2価以上の金属を表し、
R1およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、
R2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、またはアラルキル基を表し、
Xは、単座配位子を表し、
式(1)中の[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の実線は共有結合を表し、
式(1)中の[ ]内の酸素原子(O)とMとの間の破線は配位結合を表し、並びに
mは、3または4を表し、nは、0~4の整数を表し、m≧nである。]
で表される金属錯体(以下「金属錯体(1)」と略称することがある)である。金属錯体(1)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
上記式(1)中のMは、好ましくは周期表第4族の金属または周期表第13族の金属であり、より好ましくはアルミニウム、チタンまたはジルコニウムである。
【0063】
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0064】
本明細書において、アルキル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキル基(但し、長鎖アルキル(メタ)アクリレート中のアルキル基を除く)の炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10、特に好ましくは1~6である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基等が挙げられる。アルキル基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0065】
本明細書において、アルケニル基は直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~20である。アルケニル基としては、例えば、エテニル基(即ち、ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基等が挙げられる。アルケニル基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0066】
本明細書において、アルキニル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキニル基の炭素数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6である。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、4-メチル-2-ペンチニル基等が挙げられる。アルキニル基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0067】
本明細書において、アリール基の炭素数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~14である。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基等が挙げられる。アリール基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0068】
本明細書において、アラルキル基の炭素数は、好ましくは7~16である。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。アラルキル基は、置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0069】
本明細書において、置換基を有していてもよいアミノ基としては、例えば、アミノ基、モノ-またはジ-アルキルアミノ基(例、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジブチルアミノ基)、モノ-またはジ-シクロアルキルアミノ基(例、シクロプロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、モノ-またはジ-アリールアミノ基(例、フェニルアミノ基)、モノ-またはジ-アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基)、複素環アミノ基(例、ピリジルアミノ基)等が挙げられる。
【0070】
本明細書において、アルコキシ基(即ち、アルキルオキシ基)中のアルキル基の説明は、上述のアルキル基の説明と同じである。アルコキシ基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0071】
本明細書において、アルケニルオキシ基中のアルケニル基の説明は、上述のアルケニル基の説明と同じである。アルケニルオキシ基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0072】
本明細書において、アルコキシカルボニル基(即ち、アルキルオキシカルボニル基)中のアルキル基の説明は、上述のアルキル基の説明と同じである。アルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基等が挙げられる。
【0073】
式(1)中のXで表される単座配位子としては、例えば、アルコキシドアニオン(RO-)(前記式中、Rは有機基を示す)、カルボキシレートアニオン(RCOO-)(前記式中、Rは有機基を示す)、オキソ(O)等が挙げられる。
【0074】
アルコキシドアニオンは、RO-(前記式中、Rは有機基を示す)で表される。有機基Rは脂肪族基または芳香族基のいずれでもよい。また、脂肪族基は飽和脂肪族基または不飽和脂肪族基のいずれでもよい。有機基Rの炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは6~18、特に好ましくは8~14である。アルコキシドアニオン(RO-)としては、例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、イソブトキシド、sec-ブトキシド、tert-ブトキシド、ペンチルオキシド、ヘキシルオキシド、フェノキシド、4-メチルフェノキシド等が挙げられる。
【0075】
カルボキシレートアニオンは、RCOO-(前記式中、Rは有機基を示す)で表される。有機基Rは脂肪族基または芳香族基のいずれでもよい。また、脂肪族基は飽和脂肪族基または不飽和脂肪族基のいずれでもよい。有機基Rの炭素数は、好ましくは1~20、さらに好ましくは6~18、特に好ましくは8~14である。カルボキシレートアニオン(RCOO-)としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、安息香酸等のカルボン酸に対応するカルボキシレートアニオン等が挙げられる。
【0076】
式(1)中の[ ]内が多座配位子を表す、多座配位子としては、例えば、アセチルアセトン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、アセチルアセトアルデヒド、2,4-ヘキサンジオン、2,4-ヘプタンジオン、5-メチル-2,4-ヘキサンジオン、5,5-ジメチル-2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルアセトフェノン、サリチルアルデヒド、1,1,1-トリフルオロアセチルアセトン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン、3-メトキシ-2,4-ペンタンジオン、3-シアノ-2,4-ペンタンジオン、3-ニトロ-2,4-ペンタンジオン、3-クロロ-2,4-ペンタンジオン、アセト酢酸、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、サリチル酸、サリチル酸メチル、マロン酸、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が挙げられる。中心金属に配位した状態では多座配位子は、それからプロトンを一つまたはそれ以上取り去った構造となる。
【0077】
Mがアルミニウムである金属錯体(1)の具体例としては、アルミニウムジイソプロピレートモノsec-ブチレート、アルミニウムトリsec-ブチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムオクタデセニルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジn-ブチレート、アルミニウムプロピルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムn-ブチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノ(アセチルアセトネート)ビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0078】
Mがチタンである金属錯体(1)の具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、テトラtert-ブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート(別名:ビス(2-エチルヘキシルオキシ)ビス(2-エチル-3-オキソヘキシルオキシ)チタン(IV))、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、アリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンジノルマルブトキシドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタン(IV)テトラ(メチルフェノラート)、チタンオキシドビス(2,4-ペンタンジオネート)、モノイソプロポキシチタントリイソステアレート、ジイソプロポキシチタンジイソステアレーが挙げられる。
【0079】
Mがジルコニウムである金属錯体(1)の具体例としては、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)、ジルコニウムアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、ジルコニウムジノルマルブトキシドビス(2,4-ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(2,4-ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムブトキシド(アセチルアセテート)ビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシドモノアセチルアセトネート、オクチル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、トリノルマルブトキシジルコニウムモノオクチレート、トリノルマルブトキシジルコニウムモノステアレートが挙げられる。
【0080】
金属錯体を使用する場合、粘着組成物中のその含有量は、粘着層の回復性の観点から、粘着組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1.0~15質量%、さらに好ましくは1.5~10質量%である。
【0081】
(硬化促進剤)
本発明において、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分および(C)成分の酸無水物基および/またはカルボキシ基との架橋反応を促進するために、硬化促進剤を使用してもよい。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、3級・4級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、有機ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0082】
イミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ドデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0083】
3級・4級アミン系化合物としては、特に制限はないが、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルメチルアンモニウム・2-エチルヘキサン酸塩等の4級アンモニウム塩;DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5)、DBU-フェノール塩、DBU-オクチル酸塩、DBU-p-トルエンスルホン酸塩、DBU-ギ酸塩、DBU-フェノールノボラック樹脂塩等のジアザビシクロ化合物;ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TAP)等の3級アミンまたはそれらの塩、芳香族ジメチルウレア、脂肪族ジメチルウレア等のジメチルウレア化合物;等が挙げられる。
【0084】
ジメチルウレア化合物としては、例えば、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア;U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましく用いられる。
【0085】
有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuP-K、TPP-SCN、TPP-S(いずれも北興化学工業社製)等が挙げられる。
【0086】
硬化促進剤を使用する場合、粘着組成物中のその含有量は、(A)成分のエポキシ基と、(B)成分および(C)成分の酸無水物基および/またはカルボキシ基との架橋反応を促進するために、粘着組成物の不揮発分100質量%に対して、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~4質量%、さらに好ましくは0.10~3質量%である。
【0087】
粘着シート
本発明は、支持体および本発明の粘着組成物から形成された粘着層を含む積層構造を有する粘着シートも提供する。本発明では保護シートを使用してもよい。即ち、本発明の粘着シートは、支持体、粘着層、および保護シートをこの順に含む積層構造を有していてもよい。支持体と粘着層との間、および粘着層と保護シートとの間に、他の層(例えば離型層)が存在していてもよい。
【0088】
支持体および保護シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン;シクロオレフィンポリマー;ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と記載することがある)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド等のプラスチックフィルム等が挙げられる。支持体および保護シートは、いずれも単層フィルムでもよく、積層フィルムでもよい。
【0089】
支持体および保護シートとして、例えば、バリア層を有する低透湿性フィルム、またはバリア層を有する低透湿性フィルムと別のフィルムとの積層フィルムを使用することができる。バリア層としては、例えば、シリカ蒸着膜、窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜等の無機膜が挙げられる。バリア層は、複数の無機膜の複数層(例えば、シリカ蒸着膜)で構成されていてもよい。また、バリア層は、有機物と無機物から構成されていてもよく、有機層と無機膜の複合多層であってもよい。
【0090】
保護シートでは、粘着層と接する面が離型処理されていることが好ましい。一方、支持体は、離型処理されていてもよく、離型処理されていなくてもよい。離型処理としては、例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤による離型処理が挙げられる。
【0091】
支持体および保護シートの厚さは、特に限定されないが、粘着シートの取り扱い性等の観点から、それぞれ、好ましくは10~150μm、より好ましくは20~100μmである。なお、支持体および保護シートが積層フィルムである場合、前記厚さは、積層フィルムの厚さである。一方、粘着層の厚さは、その密着性および屈曲時の応力緩和の観点から、好ましくは5~200μm、より好ましくは10~150μm、さらに好ましくは20~100μmである。
【0092】
粘着組成物および粘着シートの製造
本発明の粘着組成物は、上述の成分を公知の機器を使用して混合することによって製造することができる。
【0093】
本発明の粘着シートは、例えば、(i)上述の成分を有機溶剤に溶かして、粘着組成物のワニスを調製し、(ii)得られたワニスを支持体上に塗布して塗膜を形成し、(iii)得られた塗膜を加熱して有機溶剤を除去することによって、製造することができる。
【0094】
ワニスの調製に使用し得る有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ等のセロソルブ類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンのアミド類;等を挙げることができる。有機溶剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤として市販品を使用してもよい。その市販品としては、例えば、丸善石油化学社製「スワゾール」、出光興産社製「イプゾール」等が挙げられる。ワニスの塗布は、公知の方法(例えば、ダイコーターを使用する方法)で行えばよく、塗布方法に特に限定はない。
【0095】
(A)成分のエポキシ基と、(B)成分および(C)成分の酸無水物基および/またはカルボキシ基との反応を進行させるために、有機溶剤の除去は、塗膜を加熱することによって行うことが好ましい。塗膜の加熱温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは100~180℃であり、その時間は、好ましくは2~90分、より好ましくは5~60分である。塗膜の加熱は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
【0096】
粘着組成物および粘着シートの用途
本発明の粘着組成物および粘着シートは、フレキシブル電子デバイスの製造に有用である。また、本発明の粘着シートは、光学用透明粘着シート(OCA)等にも使用することができる。
【0097】
フレキシブル電子デバイス
本発明は、本発明の粘着組成物から形成された粘着層を含むフレキシブル電子デバイスも提供する。本発明のフレキシブル電子デバイスは、例えば、(i)本発明の粘着組成物を用いて本発明の粘着シートを製造し、(ii)本発明の粘着シートを使用してフレキシブル電子デバイス中の粘着層を形成することによって(例えば、フレキシブル電子デバイスの基板上に本発明の粘着シートを積層して粘着層を形成することによって)、製造することができる。また、本発明のフレキシブル電子デバイスは、本発明の粘着シートを複数の材料(例えば、タッチパネルセンサー、偏光板、表面保護シート等)の層間接着のために使用し、任意の材料(層)上に本発明の粘着シートにより粘着層を形成し、その上からさらに別の任意の材料(層)を積層する工程を経て、製造することができる。
【実施例0098】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、成分の量および共重合単位の量における「部」および「%」は、特に断りがない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0099】
<成分>
実施例および比較例で用いた成分を以下に示す。
(1)(A)成分
「ER866」(星光PMC社製、グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム、エポキシ基濃度:1.63mmol/g、数平均分子量:113,000、イソブテン単位/イソプレン単位:98.9%/1.1%)
「ER869」(星光PMC社製、グリシジルメタクリレート-2-エチルヘキシルアクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム、2-エチルヘキシルアクリレート単位の濃度:0.067mmol/g、エポキシ基濃度:1.51mmol/g、数平均分子量:189,000、イソブテン単位/イソプレン単位:98.9%/1.1%)
【0100】
(2)(B)成分
「ER661」(星光PMC社製、無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム、ブチルメタクリレート単位の濃度:0.32mmol/g、酸無水物基濃度:0.46mmol/g、数平均分子量:40,000、イソブテン単位/イソプレン単位:98.9%/1.1%)
「ER669」(星光PMC社製、無水マレイン酸-2-エチルヘキシルアクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム(2-エチルヘキシルアクリレート単位の濃度:0.21mmol/g、酸無水物基濃度:0.43mmol/g、数平均分子量:96,000、イソブテン単位/イソプレン単位:98.9%/1.1%)
【0101】
(3)(C)成分
「HV-300M」(東邦化学工業社製、無水マレイン酸変性液状ポリブテン、酸無水物基濃度:0.77mmol/g、数平均分子量:2,100)
「ER688」(星光PMC社製、無水マレイン酸変性液状ポリブテン、酸無水物基濃度:0.29mmol/g、数平均分子量:2,100)
【0102】
(4)液状オレフィン系重合体
「HV-1900」(ENEOS社製、液状ポリブテン、数平均分子量:2,900、25℃での粘度:460Pa・s)
【0103】
(5)可塑剤
「リックサイザー S-8」(伊藤製油社製、ヒマシ油誘導体)
【0104】
(6)酸化防止剤
「Irganox 1010」(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
「Irgafos 168」(BASF社製、リン系酸化防止剤)
【0105】
(7)金属錯体
「プレンアクト AL-M」(味の素ファインテクノ社製、アルミニウムオクタデセニルアセトアセテートジイソプロピレート)
【0106】
(8)硬化剤促進剤
「U CAT-18X」(サンアプロ社製、トリエチルメチルアンモニウム・2-エチルヘキサン塩)
【0107】
<実施例1>
下記表に示す配合比のワニスを以下の手順で作製し、得られたワニスを用いて粘着シートを作製した。なお、下記表に記載の各成分の使用量(部)は、ワニス中の各成分の不揮発分の量を示す。
【0108】
具体的には、グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER866」)、無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER661」)、無水マレイン酸変性液状ポリブテン(東邦化学工業社製、「HV-300M」)、液状ポリブテン(ENEOS社製「HV-1900」)、可塑剤(伊藤製油社製「リックサイザー S-8」)、金属錯体(味の素ファインテクノ社製「プレンアクト AL-M」)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製「Irganox 1010」)、リン系酸化防止剤(BASF社製「Irgafos 168」)、硬化促進剤(サンアプロ社製「U CAT-18X」)、およびトルエンを配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、粘着組成物のワニスを得た。得られたワニスを、シリコーン系離型剤で処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋クロス社製「SP3000」、PETフィルムの厚さ:38μm)の離型処理面上に、ダイコーターにて均一に塗布し、130℃で30分間加熱し、厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを得た。
【0109】
<実施例2>
(A)成分としてグリシジルメタクリレート変性ブチルゴム(星光PMC社製、「ER866」の替わりにグリシジルメタクリレート-2-エチルヘキシルアクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER869」)を使用し、および(B)成分として無水マレイン酸-ブチルメタクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER661」)の替わりに無水マレイン酸-2-エチルヘキシルアクリレートランダム共重合体変性ブチルゴム(星光PMC社製「ER669」)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを作製した。
【0110】
<実施例3>
(C)成分として無水マレイン酸変性液状ポリブテン(東邦化学工業社製「HV-300M」)の替わりに無水マレイン酸変性液状ポリブテン(星光PMC社製「ER688」)を使用し、並びに(A)成分および(B)成分の使用量を変更した以外は実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを作製した。
【0111】
<比較例1>
(B)成分を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを作製した。
【0112】
<比較例2>
(C)成分を使用しなかったこと以外は実施例1と同様の方法にて、粘着組成物のワニス、および厚さ50μmの粘着層を有する粘着シートを作製した。
【0113】
<変形性および回復性の評価>
得られた粘着シートを折り畳み、折り畳んだ粘着シートを直径8mmのベルトポンチで打ち抜き、打ち抜いた物の両面から支持体を剥離することにより、厚さが約0.8mmであり、且つ直径が8mmである評価用サンプルを調製した。
【0114】
得られた評価用サンプルを、DHR平行板レオメーターに設置し、95kPaのせん断応力を5秒間負荷した時点の評価用サンプルのせん断ひずみS1を測定した。次いで負荷した応力を解除してから60秒経過した時点の評価用サンプルのせん断ひずみS2を測定した。
【0115】
評価用サンプルの変形性を、下記基準で評価した。結果を表1に示す。
(変形性の基準)
〇(良好):せん断ひずみS1が5.0以上
×(不良):せん断ひずみS1が5.0未満
【0116】
せん断ひずみS1およびせん断ひずみS2から、下記式:
ひずみ回復率(%)=100×(S1-S2)/S1
によって、ひずみ回復率を算出し、評価用サンプルの回復性を下記基準で評価した。結果を表1に示す。
(回復性の基準)
〇(良好):ひずみ回復率が85%以上
×(不良):ひずみ回復率が85%未満
【0117】
【0118】
本発明の要件を満たす実施例1~4の粘着組成物から形成された評価用サンプルは、変形性および応答性に優れていた。他方、(B)成分を含有しない比較例1の粘着組成物から形成された評価用サンプルは、回復性が大きく劣っていた。また、(C)成分を含有しない比較例2の粘着組成物から形成された評価用サンプルは、変形性および回復性の両方とも劣っていた。