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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183753
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/02 20060101AFI20221206BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20221206BHJP
   F04D 13/06 20060101ALI20221206BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F04D13/02 H
F04D29/58 D
F04D13/06 H
H02K7/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091231
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳
【テーマコード(参考)】
3H130
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA32G
3H130BA33G
3H130BA74G
3H130DA03X
3H130DB01X
3H130DD01X
3H130EA02G
3H130EB01E
3H130EB01G
3H130EB02E
3H130EB02G
3H130EC17A
3H130EC17E
3H130EC17G
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC05
5H607DD03
5H607FF06
5H607FF12
(57)【要約】
【課題】ロータの円筒部に対して回転軸線方向に延在する貫通部を設けた場合でも、円筒部の外径が大きくなることを抑制することができるポンプ装置を提供すること。
【解決手段】ポンプ装置1において、ロータ4とラジアル軸受11との間には、回転軸線方向に延在する貫通部15が設けられているため、ロータに対して回転中心軸線方向の両側に大きな圧力差が発生しにくい。貫通部15は、ロータ4の円筒部40の内周面に形成された第1溝48と、ラジアル軸受11の外周面に形成された第2溝111とによって構成されている。従って、十分な開口面積を有する貫通部15を形成する場合でも、第1溝48の開口面積は狭くてよい。それ故、第1溝48によって円筒部40の強度が低下しにくいので、円筒部40の外径を大きくする必要がない。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータに対して回転中心軸線の一方側に設けられたポンプ室に配置され、前記モータのロータに接続されたインペラと、を備え、
前記ロータには、前記回転中心軸線に沿って延在し、外側に駆動マグネットを保持し、内側に円筒状のラジアル軸受を保持する円筒部が設けられ、
前記円筒部と前記ラジアル軸受との間には、前記円筒部の内周面で前記回転中心軸線に沿って延在する第1溝と、前記ラジアル軸受の外周面で前記回転中心軸線に沿って延在し、前記第1溝に径方向の内側から重なる第2溝とによって、前記回転中心軸線の両側を貫通させる貫通部が設けられていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ装置において、
前記ロータは、前記ラジアル軸受がインサート成形された樹脂成形品であることを特徴とするポンプ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のポンプ装置において、
前記ラジアル軸受の回転軸線方向の一方の端部には、前記第1溝の位置を示すマークが付されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のポンプ装置において、
前記円筒部の外周面には、前記回転中心軸線に沿って延在する複数本のリブが設けられ、
前記駆動マグネットは、前記複数本のリブに径方向の外側から接するように前記円筒部に圧入されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のポンプ装置において、
前記第1溝は、径方向からみたとき前記リブと重なる角度位置に設けられていることを特徴とするポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラをモータによって回転させるポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポンプ装置では、ポンプ室に配置されたインペラをモータで回転させる。モータにおいて、ロータは、円筒状のラジアル軸受を内側に保持する円筒部を備えており、円筒部の外周側に円筒状の駆動マグネットが固定される。ここで、ロータに対して回転中心軸線方向の両側に大きな圧力差が発生すると、ロータが回転中心軸線方向で振動するおそれがある。そこで、ロータの円筒部を回転中心軸線方向で貫通する貫通穴からなる貫通部を設け、圧力差を抑制する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5180907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、ロータの円筒部に貫通穴を設けた場合に円筒部の強度を確保するには、円筒部を径方向で厚くする必要があり、その結果、円筒部の外径が大きくなるという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ロータの円筒部に対して回転軸線方向に延在する貫通部を設けた場合でも、円筒部の外径が大きくなることを抑制することができるポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るポンプ装置は、モータと、前記モータに対して回転中心軸線の一方側に設けられたポンプ室に配置され、前記モータのロータに接続されたインペラと、を備え、前記ロータには、前記回転中心軸線に沿って延在し、外側に駆動マグネットを保持し、内側に円筒状のラジアル軸受を保持する円筒部が設けられ、前記円筒部と前記ラジアル軸受との間には、前記円筒部の内周面で前記回転中心軸線に沿って延在する第1溝と、前記ラジアル軸受の外周面で前記回転中心軸線に沿って延在する第2溝とによって、前記回転中心軸線の両側を貫通させる貫通部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、ロータとラジアル軸受との間には、回転軸線方向に延在する貫通部を設けられているため、ロータに対して回転中心軸線方向の両側に大きな圧力差が発生しにくい。従って、ロータが回転中心軸線方向で振動しにくい。ここで、貫通部は、円筒部の内周面に形成された第1溝と、ラジアル軸受の外周面に形成された第2溝とによって構成されている。従って、十分な開口面積を有する貫通部を形成する場合でも、第1溝の開口面積は狭くてよい。それ故、第1溝によって円筒部の強度が低下しにくいので、円筒部の外径を大きくする必要がない。
【0008】
本発明において、前記ロータは、前記ラジアル軸受がインサート成形された樹脂成形品である態様を採用することができる。インサート成形を行う際、金型内でラジアル軸受の第2溝にピンを配置しておけば、ラジアル軸受がインサート成形された樹脂成形品によってロータを製作することができる。
【0009】
本発明において、前記ラジアル軸受の回転軸線方向の一方の端部には、前記第1溝の位置を示すマークが付されている態様を採用することができる。
【0010】
本発明において、前記円筒部の外周面には、前記回転中心軸線に沿って延在する複数本のリブが設けられ、前記駆動マグネットは、前記複数本のリブに径方向の外側から接するように前記円筒部に圧入されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、駆動マグネットを円筒部に圧入した際、駆動マグネットと円筒部との偏心を抑制することができる。また、駆動マグネットと円筒部がリブを介して接しているため、急激な温度変化が発生した際でも駆動マグネットに大きな応力が加わりにくいので、駆動マグネットの割れを抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記第1溝は、径方向からみたとき前記リブと重なる角度位置に設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、貫通部にリブが重なっているため、円筒部の肉厚が薄くなり過ぎることをリブによって抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、ロータとラジアル軸受との間には、回転軸線方向に延在する貫通部を設けられているため、ロータに対して回転中心軸線方向の両側に大きな圧力差が発生しにくい。従って、ロータが回転中心軸線方向で振動しにくい。ここで、貫通部は、円筒部の内周面に形成された第1溝と、ラジアル軸受の外周面に形成された第2溝とによって構成されている。従って、十分な開口面積を有する貫通部を形成する場合でも、第1溝の開口面積は狭くてよい。それ故、第1溝によって円筒部の強度が低下しにくいので、円筒部の外径を大きくする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用したポンプ装置およびモータの一態様を示す斜視図。
図2図1に示すポンプ装置およびモータの縦断面図。
図3図2に示すインペラ等の説明図。
図4図2に示すロータ等の斜視図。
図5図2に示すロータに駆動マグネットを固定した様子を示す縦断面図。
図6図2に示すロータに駆動マグネットを固定した様子を示す横断面図。
図7図2に示すロータの断面図。
図8図2に示すロータ等を回転中心軸線方向の他方側からみた斜視図。
図9図2に示すロータ等を回転中心軸線方向の他方側からみた底面図。
図10図2に示すロータ等を回転中心軸線方向の一方側からみた平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るモータ10およびポンプ装置1を説明する。以下の説明において、回転中心軸線L方向とは、回転中心軸線Lが延在している方向を意味し、径方向の内側および径方向の外側における径方向とは、回転中心軸線Lを中心とする半径方向を意味し、周方向とは、回転中心軸線Lを中心とする回転方向を意味する。
【0015】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したポンプ装置1およびモータ10の一態様を示す斜視図である。図2は、図1に示すポンプ装置1およびモータ10の縦断面図である。図3は、図2に示すインペラ25等の説明図である。図1および図2において、ポンプ装置1は、吸入口21aおよび吐出口22aを備えたケース2と、ケース2に対して回転中心軸線L方向の他方側L2に配置されたモータ10と、ケース2の内部のポンプ室20に配置されたイン
ペラ25とを有しており、インペラ25は、モータ10によって回転中心軸線L周りに回転駆動される。モータ10は、円筒状のステータ3と、ステータ3の内側に配置されたロータ4と、ステータ3を覆う樹脂製のハウジング6と、ロータ4を回転可能に支持する丸棒状の支軸5とを備えている。支軸5は、金属製あるいはセラミック製である。本形態のポンプ装置1において、流体は液体であり、ポンプ装置1は、環境温度や流体温度が変化しやすい条件で使用される。
【0016】
ケース2は、ポンプ室20の回転中心軸線L方向の一方側L1の壁面23、および周方向に延在する側壁29を構成している。ケース2は、回転中心軸線Lに沿って延在する吸入管21と、回転中心軸線Lに対して直交する方向に延在する吐出管22とを備えており、吸入管21および吐出管22は各々、端部に吸入口21aおよび吐出口22aを備えている。吸入管21は、回転中心軸線Lに対して同心状に設けられている。
【0017】
モータ10において、ステータ3は、ステータコア31と、ステータコア31に保持されたインシュレータ32、33と、ステータコア31にインシュレータ32、33を介して巻回されたコイル35とを有している。
【0018】
ロータ4は、ステータ3に径方向の内側で対向する位置から回転中心軸線Lに沿ってポンプ室20に向けて延在する円筒部40を備えており、円筒部40は、ポンプ室20で開口している。円筒部40の外周面には、ステータ3に径方向の内側で対向するように円筒状の駆動マグネット8が保持されている。駆動マグネット8は、例えば、ネオジムボンド磁石である。
【0019】
図2および図3に示すように、ロータ4において、円筒部40の回転中心軸線L方向の一方側L1の端部には、円板状のフランジ部45が形成されており、フランジ部45には、回転中心軸線L方向の一方側L1から円板26が連結されている。円板26の中央には中央穴260が形成されている。円板26のフランジ部45と対向する面には、中央穴260の周囲から円弧状に湾曲しながら径方向の外側に延在する複数の羽根部261が等角度間隔に形成されており、円板26は、羽根部261を介してフランジ部45に固定されている。従って、フランジ部45と円板26とによって、ロータ4の円筒部40に接続されたインペラ25が構成される。本形態において、円板26は、径方向の内側より径方向の外側がフランジ部45の側に位置するように傾いている。本形態において、フランジ部45には、羽根部261の端部が重なる溝454が形成されている。また、フランジ部45には、溝454と重なる位置に穴455が形成され、円板26の羽根部261には、穴455に嵌る凸部265が形成されている。穴455は、後述する説明で参照する図8から分かるように、貫通穴である。
【0020】
再び図2において、ロータ4では、円筒部40の径方向の内側に円筒状のラジアル軸受11が保持されており、ロータ4は、ラジアル軸受11を介して支軸5に回転可能に支持されている。支軸5の回転中心軸線L方向の他方側L2の端部51は、ハウジング6の底壁63に形成された軸穴65に保持されている。ケース2には、支軸5のポンプ室20側の端部52にポンプ室20の側で対向して支軸5のポンプ室20側への可動範囲を制限する受け部280が形成されている。ケース2は、吸入管21の内周面からモータ10の側に延在する3本の支持部27を備えている。支持部27の端部には、支軸5の回転中心軸線L方向の一方側L1の端部52が内側に位置する筒部28が形成されており、筒部28の回転中心軸線L方向の一方側L1の底部によって受け部280が構成されている。支軸5の端部52には円環状のスラスト軸受12が装着されており、スラスト軸受12は、ラジアル軸受11と筒部28の間に位置する。支軸5の端部51および軸穴65は、少なくとも一部が断面D字形状に形成され、支軸5の端部52およびスラスト軸受12の穴は断面D字形状に形成されている。従って、支軸5およびスラスト軸受12の回転が阻止され
ている。
【0021】
ハウジング6は、ポンプ室20の壁面23に対向する第1隔壁部61と、ステータ3と駆動マグネット8との間に介在する第2隔壁部62とを有する隔壁部材である。また、ハウジング6は、ステータ3を径方向の外側から覆う円筒状の胴部66を有している。従って、ハウジング6は、ステータ3を径方向の両側、および回転中心軸線L方向の両側から覆う樹脂封止部材60であり、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene Sulfide)等によってステータ3をインサート成形した際の樹脂部分である。
【0022】
ハウジング6の回転中心軸線L方向の他方側L2の端部64には、回転中心軸線L方向の他方側L2からカバー18が固定され、カバー18とハウジング6の底壁63との間には、コイル35に対する給電を制御する回路等が設けられた基板19が配置されている。基板19は、ねじ92よってハウジング6に固定されている。基板19には、ステータ3からハウジング6の底壁63を貫通して回転中心軸線L方向の他方側L2に突出した金属製の巻線端子71と、ハウジング6に保持された金属製のコネクタ端子75とがハンダによって接続されている。基板19には、駆動回路を構成する電子部品が実装されている。また、基板19には配線等が形成されている。
【0023】
ハウジング6には、筒状のコネクタハウジング69が形成されており、コネクタハウジング69の内側にコネクタ端子75の端部750が位置する。従って、コネクタハウジング69にコネクタを連結して信号等を供給すると、かかる信号がコネクタ端子75、基板19、および巻線端子71を介して各コイル35に供給される。その結果、ロータ4が回転中心軸線L周りに回転する。これにより、ポンプ室20内でインペラ25が回転してポンプ室20の内部が負圧となるため、流体は吸入管21からポンプ室20に吸い込まれて、吐出管22から吐出される。
【0024】
(ロータ4の円筒部40への駆動マグネット8の固定構造等)
図4は、図2に示すロータ4等の斜視図である。図5は、図2に示すロータ4に駆動マグネット8を固定した様子を示す縦断面図である。図6は、図2に示すロータ4に駆動マグネット8を固定した様子を示す横断面図である。図7は、図2に示すロータ4の縦断面図である。図8は、図2に示すロータ4等を回転中心軸線L方向の他方側L2からみた斜視図である。図9は、図2に示すロータ4等を回転中心軸線L方向の他方側L2からみた底面図である。
【0025】
図2図4図5図6図7図8、および図9に示すように、モータ10において、ロータ4の円筒部40の外周側には、フランジ部45から他方側L2に離間した位置で径方向の外側に張り出した円環状の座部42が形成されており、円筒部40のうち、座部42から他方側L2がマグネット保持部43になっている。マグネット保持部43は、円筒状の駆動マグネット8の内側に嵌って駆動マグネット8を保持する。その際、座部42は、駆動マグネット8の一方側L1の端部81を支持する。
【0026】
ロータ4の円筒部40の内周側には、径方向からみたとき座部42と重なる位置に径方向の内側に張り出した円環状の第1凸部441が形成され、第1凸部441より他方側L2には、径方向の内側に張り出した円環状の第2凸部442が形成されている。
【0027】
また、座部42とフランジ部45との間には、図8に示す貫通穴44が設けられている。貫通穴44は、円筒部40を径方向に貫通する。本形態において、貫通穴44は、円筒部40において角度位置で互いに180度ずれた2か所に設けられている。従って、インペラ25が回転した際、流体の一部がポンプ室20からロータ4の円筒部40の内側に流
れ込んだ後、円筒部40の貫通穴44を通って底壁24に沿って再びポンプ室20に流れる。このため、流体に混入した空気等がポンプ室20から排出される。
【0028】
このように構成したロータ4において、マグネット保持部43の外周面には、回転中心軸線Lに沿って延在するリブ46が周方向の複数個所に設けられており、駆動マグネット8は、複数本のリブ46に径方向の外側から接するようにマグネット保持部43に圧入されている。従って、マグネット保持部43と駆動マグネット8との間には、周方向で隣り合う2つのリブ46の間に隙間G(図6参照)が形成されている。
【0029】
また、座部42には、駆動マグネット8の一方側L1の端部81に形成された凹部811に嵌る凸部421が形成されている。凸部421は、凹部811に嵌ることにより駆動マグネット8の周方向の角度位置を規定するとともに、駆動マグネット8の回転を阻止する。また、座部42には、凸部421に対して周方向で離間する位置に凹部422が形成されており、凹部422は、座部42の内縁から外縁まで延在している。凹部422は、駆動マグネット8をマグネット保持部43に固定した際、周方向で隣り合う2つのリブ46によって挟まれた隙間Gと繋がっている。
【0030】
円筒部40の座部42とは反対側の端部47には、駆動マグネット8に重なるカシメ部471(図9参照)が周方向の複数個所に設けられ、隙間Gの少なくとも一部は、複数個所のカシメ部471のうち、周方向で隣り合う2箇所のカシメ部471の間で開口している。
【0031】
本形態において、リブ46および凹部422は周方向の6か所に等角度間隔に形成され、凹部811、凸部421、およびカシメ部471は、周方向の3か所に等角度間隔に形成されている。なお、駆動マグネット8の端部81において凹部811から周方向に離間する位置には、駆動マグネット8を成形した際のゲート痕812が周方向の3か所に等角度間隔に形成されている。
【0032】
このように構成したモータ10を備えたポンプ装置1において、インペラ25を駆動するモータ10では、駆動マグネット8を円筒部40に圧入した際、駆動マグネット8はロータ4の円筒部40に形成されたリブ46に径方向の外側から当接する。従って、駆動マグネット8と円筒部40との偏心を抑制することができる。また、駆動マグネット8と円筒部40がリブ46を介して接しているため、急激な温度変化が発生した際でも駆動マグネット8に大きな応力が加わりにくいので、駆動マグネット8の割れを抑制することができる。
【0033】
また、ロータ4において駆動マグネット8の端部81を支持する座部42には、周方向の複数個所に凹部422が設けられ、円筒部40と駆動マグネット8との間において周方向で隣り合う2つのリブ46によって挟まれた隙間Gは凹部422に繋がっている。このため、ポンプ装置1を流れる流体は、座部42の凹部422、および円筒部40と駆動マグネット8との間の隙間Gを流れることができる。従って、ロータ4および駆動マグネット8の冷却を行うことができるので、駆動マグネット8等の発熱を抑制することができる。
【0034】
また、円筒部40の座部42とは反対側の端部47には、駆動マグネット8に重なるカシメ部471が周方向の複数個所に設けられ、隙間Gの少なくとも一部は、複数個所のカシメ部471のうち、周方向で隣り合う2箇所のカシメ部471の間で開口している。従って、座部42の凹部422、および円筒部40と駆動マグネット8との間の隙間Gを流れる流体をカシメ部471の間を通すことができるので、駆動マグネット8等の発熱を効率よく抑制することができる。
【0035】
(ロータ45の貫通部15の構造)
図10は、図2に示すロータ4等を回転中心軸線L方向の一方側L1からみた平面図である。図4図5図6図7に示すように、モータ10およびポンプ装置1において、ロータ4の円筒部40とラジアル軸受11との間には、円筒部40の内周面で回転中心軸線Lに沿って延在する第1溝48と、ラジアル軸受11の外周面で回転中心軸線Lに沿って延在する第2溝111とによって、回転中心軸線Lの両側を貫通させる貫通部15が設けられている。より具体的には、第2溝111は、第1溝48に径方向の内側から重なって、第1溝48とともに貫通部15を構成している。第1溝48および第2溝111は各々、断面が半円形の溝である。従って、貫通部15は、断面が円形の穴として直線的に延在している。ここで、第2溝111は周方向の4か所に等角度間隔に形成され、第1溝48は周方向の2か所に等角度間隔に形成されている。従って、2つの第1溝48は、4つの第2溝111のうちの2つに径方向の外側から重なって貫通部15を構成する。
【0036】
円筒部40において、第1溝48は、径方向からみたときリブ46と重なる角度位置に設けられている。このため、第1溝48の形成によって、円筒部40の肉厚が薄くなり過ぎることをリブ46によって抑制することができる。
【0037】
ここで、円筒部40には、径方向の内側に張り出してラジアル軸受11の回転中心軸線L方向の一方側L1の段部116、および回転中心軸線L方向の他方側L2の段部117に重なる円環状の第1凸部441および第2凸部442が形成されている。一方、第1溝48は、円筒部40の内周面に沿って形成されている。従って、第1溝48は、円形の穴として第1凸部441および第2凸部442を貫通しており、第1凸部441の内縁および第2凸部442の内縁まで届いていない。それ故、第1凸部441の内縁および第2凸部442の内縁は各々、連続した円弧形状になっている。
【0038】
このように本形態では、ロータ4の回転中心軸線Lの両側を貫通させる貫通部15が設けられているため、ロータ4に対して回転中心軸線L方向の両側に大きな圧力差が発生しにくい。従って、ロータ4が回転中心軸線L方向で振動しにくい。ここで、貫通部15は、円筒部40の内周面に形成された第1溝48と、ラジアル軸受11の外周面に形成された第2溝111とが径方向で重なることによって構成されている。従って、十分な開口面積を有する貫通部15を形成する場合でも、第1溝48の開口面積は狭くてよい。それ故、第1溝48によって円筒部40の強度が低下しにくいので、円筒部40の外径を大きくする必要がない。
【0039】
また、第1溝48および第2溝111は直線的に延在している。従って、ロータ4は、ラジアル軸受11がインサート成形された樹脂成形品として構成することができる。より具体的には、インサート成形を行う際、金型内でラジアル軸受11の第2溝111に断面が円形のピンを配置してインサート成形した後、ピンを外せば、貫通部15を形成しつつ、インサート成形によってロータ4を製作することができる。
【0040】
また、ラジアル軸受11の回転中心軸線L方向に一方側L1の端部118には、第2溝111の位置を示す溝状のマーク119が付されている。従って、インサート成形の際、ラジアル軸受11の端部118に付されたマーク119を基準にしてピンの配置等を行うことができる。
【0041】
[他の実施の形態]
上記実施形態では、ハウジング6がステータ3を径方向の両側、および回転中心軸線L方向の両側から覆う樹脂封止部材60であったが、ハウジング6がステータ3を径方向の内側、および回転中心軸線L方向の他方側L2のみを覆う部材である場合に本発明を適用
してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…ポンプ装置、2…ケース、3…ステータ、4…ロータ、5…支軸、6…ハウジング、8…駆動マグネット、10…モータ、11…ラジアル軸受、15…貫通部、18…カバー、19…基板、20…ポンプ室、25…インペラ、35…コイル、40…円筒部、42…座部、43…マグネット保持部、45…フランジ部、46…リブ、48…第1溝、60…樹脂封止部材、65…軸穴、111…第2溝、119…マーク、261…羽根部、471…カシメ部、G…隙間、L…回転中心軸線
図1
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