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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183766
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】熱源システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/875 20180101AFI20221206BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20221206BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20221206BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20221206BHJP
【FI】
F24F11/875
F24F11/61
F24F5/00 102C
F24F11/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091246
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB06
3L260BA41
3L260BA45
3L260CB81
3L260EA07
3L260FA10
3L260FB33
3L260FB59
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】システム全体の効率の向上を図ること。
【解決手段】冷熱を利用した冷熱利用運転を実行可能な複数の熱負荷装置2と、蓄熱槽1に蓄熱された冷熱を有する熱媒体を複数の熱負荷装置2に供給自在な冷熱供給部3と、蓄熱槽1の蓄熱水を冷却して蓄熱槽1に冷熱を蓄熱させる冷却用熱源機4と、その冷却用熱源機4の作動状態を制御する制御部6とが備えられ、制御部6は、蓄熱槽1における蓄熱水温度が運転開始用温度以上になると、冷却用熱源機4の運転を開始させ、運転停止条件が満たされるまで、冷却用熱源機4を定格能力状態にて運転を継続させる定格能力運転を実行自在に構成されている。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷熱を利用した冷熱利用運転を実行可能な複数の熱負荷装置と、
蓄熱槽に蓄熱された冷熱を有する熱媒体を複数の熱負荷装置に供給自在な冷熱供給部と、
前記蓄熱槽の蓄熱水を冷却して蓄熱槽に冷熱を蓄熱させる冷却用熱源機と、
その冷却用熱源機の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記制御部は、前記蓄熱槽における蓄熱水温度が運転開始用温度以上になると、前記冷却用熱源機の運転を開始させ、運転停止条件が満たされるまで、前記冷却用熱源機を定格能力状態にて運転を継続させる定格能力運転を実行自在に構成されている熱源システム。
【請求項2】
前記蓄熱槽は、低温の蓄熱水を貯留させる低温槽部位と高温の蓄熱水を貯留させる高温槽部位とを有し、
前記冷熱供給部は、前記蓄熱槽における低温槽部位の蓄熱水が有する冷熱を複数の熱負荷装置に供給自在に構成され、
前記蓄熱槽における高温槽部位の蓄熱水を前記冷却用熱源機にて冷却させたのち、その冷却後の蓄熱水を蓄熱槽における低温槽部位に戻す蓄熱水循環部が備えられ、
前記制御部は、前記蓄熱槽における低温槽部位の蓄熱水温度が低温槽用の運転開始用温度以上になると、前記定格能力運転を実行する請求項1に記載の熱源システム。
【請求項3】
前記蓄熱槽は、低温の蓄熱水を貯留させる低温槽部位と高温の蓄熱水を貯留させる高温槽部位とを有し、
前記冷熱供給部は、前記蓄熱槽における低温槽部位の蓄熱水が有する冷熱を複数の熱負荷装置に供給自在に構成され、
前記蓄熱槽における高温槽部位の蓄熱水を前記冷却用熱源機にて冷却させたのち、その冷却後の蓄熱水を蓄熱槽における低温槽部位に戻す蓄熱水循環部が備えられ、
前記制御部は、前記蓄熱槽における高温槽部位の蓄熱水温度が高温槽用の運転開始用温度以上になると、前記定格能力運転を実行する請求項1に記載の熱源システム。
【請求項4】
前記運転停止条件は、冷却用熱源機を運転開始させてから所定時間が経過するという条件に設定されている請求項1~3の何れか1項に記載の熱源システム。
【請求項5】
前記冷却用熱源機は、複数の熱負荷装置の全てが冷熱利用運転を行ったときの冷熱負荷を賄える能力を有している請求項1~4の何れか1項に記載の熱源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱槽に蓄熱された冷熱を利用する熱源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の熱源システムとして、冷熱を利用した冷熱利用運転を実行可能な複数の熱負荷装置(例えば、空調装置)と、蓄熱槽に蓄熱された冷熱を有する熱媒体を複数の熱負荷装置に供給自在な冷熱供給部と、蓄熱槽の蓄熱水を冷却して蓄熱槽に冷熱を蓄熱させる冷却用熱源機と、その冷却用熱源機の作動状態を制御する制御部とが備えられたシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のシステムでは、蓄熱槽が、低温の蓄熱水を貯留させる低温槽部位と高温の蓄熱水を貯留させる高温槽部位とを有している。冷熱供給部は、蓄熱槽における低温槽部位の蓄熱水を複数の熱負荷装置に供給自在に構成され、冷却用熱源機は、蓄熱槽における高温槽部位の蓄熱水を冷却して、その冷却した熱源水を蓄熱槽における低温槽部位に戻すことで、蓄熱槽に冷熱を蓄熱させている。
【0004】
制御部が冷却用熱源機の作動状態を制御するに当たり、当初あらかじめ設定した初期台数にて運転を開始し、蓄熱槽における低温槽部位の蓄熱水温度が設定温度以上となると、運転台数を1台増加させ、蓄熱槽における高温槽部位の蓄熱水温度が設定温度以下となると、運転台数を1台減少させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4569661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、複数の熱負荷装置における冷熱負荷を賄うために、蓄熱槽における冷熱の蓄熱状況を考慮して、冷却用熱源機の作動状態を制御しているが、蓄熱槽における冷熱の蓄熱状況だけを考慮して、冷却用熱源機を運転させており、冷却用熱源機の運転回数が増大する等して、システム全体としては効率の低下を招く可能性がある。
【0007】
冷却用熱源機を運転させる場合には、蓄熱槽における高温槽部位から蓄熱水を冷却用熱源機に供給するためのポンプ等も作動させなければならず、冷却用熱源機の運転回数が増えると、それだけ消費エネルギーも増大して、効率の低下を招くことになる。
【0008】
また、冷却用熱源機は、どのような能力にて運転させるかによって運転効率も変化するが、冷却用熱源機を運転させる際に、どのような能力にて運転させるかが記載されておらず、冷却用熱源機の運転効率の向上が求められている。
【0009】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、システム全体の効率の向上を図ることができる熱源システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は、冷熱を利用した冷熱利用運転を実行可能な複数の熱負荷装置と、
蓄熱槽に蓄熱された冷熱を有する熱媒体を複数の熱負荷装置に供給自在な冷熱供給部と、
前記蓄熱槽の蓄熱水を冷却して蓄熱槽に冷熱を蓄熱させる冷却用熱源機と、
その冷却用熱源機の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記制御部は、前記蓄熱槽における蓄熱水温度が運転開始用温度以上になると、前記冷却用熱源機の運転を開始させ、運転停止条件が満たされるまで、前記冷却用熱源機を定格能力状態にて運転を継続させる定格能力運転を実行自在に構成されている点にある。
【0011】
本構成によれば、制御部は定格能力運転を実行するので、蓄熱槽における蓄熱水温度が運転開始用温度以上になると、冷却用熱源機の運転を開始させ、複数の熱負荷装置における冷熱負荷を賄うことができる。しかも、定格能力運転では、冷却用熱源機を運転効率の高い定格能力にて運転させることができるので、冷却用熱源機の運転効率の向上を図ることができる。更に、定格能力運転では、複数の熱負荷装置における冷熱負荷の大きさにかかわらず、冷却用熱源機を定格能力にて運転させるので、冷却用熱源機が出力する冷熱能力が複数の熱負荷装置における冷熱負荷よりも大きくなり、余剰の冷熱が発生する場合がある。このような場合には、余剰の冷熱を蓄熱槽に蓄熱させることができるので、複数の熱負荷装置における冷熱負荷を賄いながら、蓄熱槽への冷熱の蓄熱も同時に行うことができる。この蓄熱槽への冷熱の蓄熱によって、次回、蓄熱槽における蓄熱水温度が運転開始用温度以上となるまでの期間を延ばすことができ、冷却用熱源機の運転回数を減少させることができる。
【0012】
以上のことから、冷却用熱源機の定格能力での運転による運転効率の向上、及び、冷却用熱源機の運転回数の減少を図ることができ、システム全体の効率の向上を図ることができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記蓄熱槽は、低温の蓄熱水を貯留させる低温槽部位と高温の蓄熱水を貯留させる高温槽部位とを有し、
前記冷熱供給部は、前記蓄熱槽における低温槽部位の蓄熱水が有する冷熱を複数の熱負荷装置に供給自在に構成され、
前記蓄熱槽における高温槽部位の蓄熱水を前記冷却用熱源機にて冷却させたのち、その冷却後の蓄熱水を蓄熱槽における低温槽部位に戻す蓄熱水循環部が備えられ、
前記制御部は、前記蓄熱槽における低温槽部位の蓄熱水温度が低温槽用の運転開始用温度以上になると、前記定格能力運転を実行する点にある。
【0014】
本構成によれば、冷熱供給部は、蓄熱槽における低温槽部位の蓄熱水が有する冷熱を複数の熱負荷装置に供給しているので、複数の熱負荷装置の夫々では、その低温槽部位の蓄熱水が有する冷熱を利用して冷熱利用運転を実行することができる。制御部は、熱負荷装置に供給される低温槽部位の蓄熱水が有する冷熱の状況を監視しながら、その低温槽部位の蓄熱水温度が低温槽用の運転開始用温度以上になると、定格能力運転を実行するので、蓄熱槽に蓄熱された冷熱にて複数の熱負荷装置における冷熱負荷を賄えなくなる前に、定格能力運転を実行して、冷却用熱源機にて複数の熱負荷装置における冷熱負荷を賄う状態にスムーズに移行することができる。これにより、冷却用熱源機にて複数の熱負荷装置における冷熱負荷を適切に賄うことができる。
【0015】
本発明の第3特徴構成は、前記蓄熱槽は、低温の蓄熱水を貯留させる低温槽部位と高温の蓄熱水を貯留させる高温槽部位とを有し、
前記冷熱供給部は、前記蓄熱槽における低温槽部位の蓄熱水が有する冷熱を複数の熱負荷装置に供給自在に構成され、
前記蓄熱槽における高温槽部位の蓄熱水を前記冷却用熱源機にて冷却させたのち、その冷却後の蓄熱水を蓄熱槽における低温槽部位に戻す蓄熱水循環部が備えられ、
前記制御部は、前記蓄熱槽における高温槽部位の蓄熱水温度が高温槽用の運転開始用温度以上になると、前記定格能力運転を実行する点にある。
【0016】
本構成によれば、本構成によれば、蓄熱槽における高温槽部位の蓄熱水を冷却用熱源機にて冷却させたのち、その冷却後の蓄熱水を蓄熱槽における低温槽部位に戻す蓄熱水循環部が備えられているので、冷却用熱源機の冷却対象は、高温槽部位の蓄熱水となる。制御部は、冷却用熱源機の冷却対象となる高温槽部位の蓄熱水温度の状況がどのような状況であるかを監視しながら、その高温槽部位の蓄熱水温度が高温槽用の運転開始用温度以上になると、定格能力運転を実行するので、運転効率を向上させるために、定格能力運転を好適なタイミングにて実行することができる。これにより、冷却用熱源機の運転効率の向上を効果的に図ることができ、システム全体の効率の向上も効果的に図ることができる。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、前記運転停止条件は、冷却用熱源機を運転開始させてから所定時間が経過するという条件に設定されている点にある。
【0018】
本構成によれば、運転停止条件を簡易な条件に設定することができながら、冷却用熱源機の運転効率の向上を図ることができるタイミングにて、冷却用熱源機を運転停止させることができる。
【0019】
本発明の第5特徴構成は、前記冷却用熱源機は、複数の熱負荷装置の全てが冷熱利用運転を行ったときの冷熱負荷を賄える能力を有している点にある。
【0020】
本構成によれば、冷却用熱源機は、複数の熱負荷装置の全てが冷熱利用運転を行ったときの冷熱負荷を賄える能力を有しているので、冷却用熱源機が出力する冷熱能力が複数の熱負荷装置における冷熱負荷よりも大きくなり、余剰の冷熱が発生する場合が多くなる。これにより、冷却用熱源機を一度運転させると、そのときの余剰の冷熱を蓄熱槽に効率よく蓄熱させておくことができるので、冷却用熱源機の運転回数の低減を効果的に図ることができ、システム全体の効率の向上を効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】熱源システムの概略構成において冷熱蓄熱運転の流体の通流状態を示す図
図2】熱源システムの概略構成において冷熱供給運転の流体の通流状態を示す図
図3】熱源システムの概略構成において冷熱蓄熱・冷熱供給運転の流体の通流状態を示す図
図4】熱源システムの概略構成において温熱供給運転の流体の通流状態を示す図
図5】冷熱供給運転及び冷熱蓄熱・冷熱供給運転の動作を示すフローチャート
図6】熱源システムの効率についてのシミュレーション結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る熱源システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
この熱源システムは、図1図4に示すように、複数の空調対象空間を有する建物7に備えられ、蓄熱槽1に蓄熱された冷熱を利用して、複数の熱負荷装置2の夫々にて空調等の運転を行うものである。図1図4は、いずれも熱源システムの概略構成を示すものであるので、以下、図1に基づいて説明する。図1~4では、流体が通流する部位が異なっており、流体が通流する部位を太線にて示している。
【0023】
熱源システムは、蓄熱槽1及び複数の熱負荷装置2に加えて、蓄熱槽1に蓄熱された冷熱を有する熱媒体を複数の熱負荷装置2に供給自在な冷熱供給部3と、蓄熱槽1の蓄熱水を冷却して蓄熱槽1に冷熱を蓄熱させる冷却用熱源機4と、その冷却用熱源機4の作動状態等、熱源システムの動作を制御する制御部6とが備えられている。
【0024】
蓄熱槽1は、低温の蓄熱水を貯留させる低温槽部位11と、高温の蓄熱水を貯留させる高温槽部位12と、低温と高温との間の中間温の蓄熱水を貯留させる中間温槽部位13とを有している。低温槽部位11と中間温槽部位13との間で蓄熱水の通流が可能とされ、中間温槽部位13と高温槽部位12との間で蓄熱水の通流が可能とされており、蓄熱槽1には、低温槽部位11、中間温槽部位13、高温槽部位12の順に温度成層を形成する状態で蓄熱水が貯留されている。
【0025】
冷却用熱源機4は、例えば、密閉式の冷却塔にて構成されている。冷却用熱源機4にて蓄熱槽1の蓄熱水を冷却するために、蓄熱槽1における高温槽部位12の蓄熱水を取り出して通流させて冷却用熱源機4に供給し、冷却用熱源機4を通過した蓄熱水を蓄熱槽1における低温槽部位11に戻す第1蓄熱水循環路41(蓄熱水循環部に相当する)と、第1蓄熱水循環路41の途中部位に配設された第1蓄熱水循環ポンプ42(蓄熱水循環部に相当する)とが備えられている。第1蓄熱水循環路41には、冷却用熱源機4よりも蓄熱水の通流方向の上流側に第1制御弁43が備えられている。
【0026】
第1蓄熱水循環ポンプ42を作動させることで、例えば、図1の太線にて示すように、第1蓄熱水循環路41を通して蓄熱槽1の高温槽部位12から冷却用熱源機4を通過させる状態で低温槽部位11へ蓄熱水を通流させている。このとき、冷却用熱源機4を作動させることで、冷却用熱源機4にて蓄熱水を冷却し、その冷却された蓄熱水を低温槽部位11に供給して、蓄熱槽1に冷熱を蓄熱させることができる。
【0027】
冷熱供給部3は、蓄熱槽1の低温槽部位11から蓄熱水を取り出して通流させ、蓄熱槽1の高温槽部位12に戻す第2蓄熱水循環路31と、その第2蓄熱水循環路31の途中部位に配設された熱交換部32と、熱交換部32にて熱交換された熱媒体を複数の熱負荷装置2の夫々に供給自在な熱媒体往路33と、複数の熱負荷装置2の夫々からの熱媒体を熱交換部32に戻す熱媒体復路34とが備えられている。ここで、熱媒体としては、例えば、熱源水を適用することができるが、熱を媒体できるものであればよく、熱源水に限らず、その他の熱媒体を適用することもできる。
【0028】
冷熱供給部3は、例えば、図2の太線にて示すように、蓄熱槽1の低温槽部位11における蓄熱水を第2蓄熱水循環路31を通して通流させるとともに、熱媒体を熱媒体往路33及び熱媒体復路34を通して通流させることで、熱交換部32にて蓄熱水と熱媒体とを熱交換させて、蓄熱水が有する冷熱を熱媒体に伝達させて、冷熱を有する熱媒体を複数の熱負荷装置2の夫々に供給自在に構成されている。このようにして、冷熱供給部3は、蓄熱槽1の蓄熱水を直接熱負荷装置2に供給するのではなく、蓄熱槽1の低温槽部位11における蓄熱水が有する冷熱を伝達させた熱媒体を複数の熱負荷装置2の夫々に供給自在としている。
【0029】
第2蓄熱水循環路31には、蓄熱水の通流方向の上流側から、熱交換部32、第2蓄熱水循環ポンプ35が備えられている。第2蓄熱水循環ポンプ35を作動させることで、第2蓄熱水循環路31を通して、蓄熱槽1の低温槽部位11から蓄熱水を取り出して通流させて熱交換部32に供給し、熱交換部32を通過した蓄熱水を蓄熱槽1の高温槽部位12に戻している。
【0030】
熱媒体往路33は、複数の熱負荷装置2の夫々に接続された複数の分岐路が分岐接続されている。熱媒体往路33には、複数の分岐路の分岐箇所よりも熱媒体の通流方向の上流側に、熱媒体制御弁36、熱媒体供給ポンプ37が備えられている。熱媒体制御弁36の開閉状態を制御することで、複数の熱負荷装置2に対して熱媒体を供給するか否か等の供給状態を制御可能となっており、熱媒体供給ポンプ37の作動状態を制御することで、複数の熱負荷装置2に対する熱媒体の供給量を制御可能となっている。
【0031】
熱負荷装置2は、例えば、熱媒体が有する熱を熱源として、空調対象空間の空調を行う空調装置にて構成されている。熱負荷装置2は、熱媒体が有する冷熱を利用して空調対象空間の冷房を行う冷房運転と、熱媒体が有する温熱を利用して空調対象空間の暖房を行う暖房運転とを実行可能に構成されている。ここで、熱負荷装置2については、例えば、熱媒体が有する冷熱を利用する冷熱利用運転と、熱媒体が有する温熱を利用する温熱利用運転とを実行可能な熱利用装置等、各種の装置を適用することができ、熱媒体が有する熱を利用して空調対象空間の空調を行う空調装置に限るものではない。
【0032】
冷房運転を行うときには、熱負荷装置2が、熱媒体往路33から熱媒体を引き込んで、その熱媒体が有する冷熱を利用し、利用後の熱媒体を熱媒体復路34に戻している。暖房運転を行うときにも、熱負荷装置2が、熱媒体往路33から熱媒体を引き込んで、その熱媒体が有する温熱を利用し、利用後の熱媒体を熱媒体復路34に戻している。
【0033】
複数の熱負荷装置2の夫々は、各空調対象空間の負荷(要求)に応じて、各別に冷房運転又は暖房運転を実行可能に構成されている。例えば、夏期等に冷房負荷(冷房要求)があれば、熱負荷装置2が冷房運転を実行し、冬期等に暖房負荷(暖房要求)があれば、熱負荷装置2が暖房運転を実行している。また、夏期と冬期の間の中間期等では、ある空調対象空間では冷房負荷(冷房要求)があり、別の空調対象空間では暖房負荷(暖房要求)があり、冷房負荷と暖房負荷とが混在している場合がある。このような場合には、冷房運転を行う熱負荷装置2と暖房運転を行う熱負荷装置2とが混在することになる。
【0034】
冷房運転を行う熱負荷装置2と暖房運転を行う熱負荷装置2とが混在する場合等において、冷房運転を行う熱負荷装置2も、暖房運転を行う熱負荷装置2も、熱媒体往路33から引き込んだ熱媒体が有する熱を利用可能となるように、熱媒体往路33にて複数の熱負荷装置2に供給する熱媒体の温度が中間温度に設定されている。
【0035】
この熱源システムでは、冷却用熱源機4に加えて、冷却・加熱用熱源機5が備えられている。この冷却・加熱用熱源機5は、例えば、空冷ヒートポンプチラーにて構成され、第1蓄熱水循環路41において蓄熱水の通流方向で冷却用熱源機4と第1蓄熱水循環ポンプ42との間に配設されている。第1蓄熱水循環路41には、冷却・加熱用熱源機5をバイパスさせるバイパス路44が備えられ、冷却・加熱用熱源機5にて冷却や加熱する必要がない場合には、図外の開閉弁を制御して、バイパス路44にて冷却・加熱用熱源機5をバイパスさせる状態で通流させている。
【0036】
制御部6は、第1蓄熱水循環ポンプ42、第1制御弁43、第2蓄熱水循環ポンプ35、熱媒体制御弁36、熱媒体供給ポンプ37、冷却用熱源機4、冷却・加熱用熱源機5等の各種の機器の作動状態を制御することで、熱源システムの動作を制御している。また、制御部6は、複数の熱負荷装置2との間での無線又は有線での通信等により、冷房運転中であるか暖房運転中であるか運転停止中であるか等、熱負荷装置2の運転状況を取得しており、複数の熱負荷装置2の全体における熱負荷状況(冷熱負荷及び温熱負荷の大きさ)を把握している。
【0037】
制御部6は、蓄熱槽1に冷熱を蓄熱する冷熱蓄熱運転、蓄熱槽1に蓄熱された冷熱を熱負荷装置2に供給する冷熱供給運転、蓄熱槽1に冷熱を蓄熱しながら、その冷熱を熱負荷装置2に供給する冷熱蓄熱・冷熱供給運転、冷却・加熱用熱源機5にて生成した温熱を熱負荷装置2に供給する温熱供給運転等の各種の運転を実行可能に構成されている。
【0038】
以下、図1~4に基づいて、各運転について説明する。図1~4において、流体が通流する部位を太線にて示しており、開状態とする弁や作動させる機器も太線にて示している。
【0039】
(冷熱蓄熱運転)
冷熱蓄熱運転では、図1に示すように、制御部6が、第1制御弁43を開状態とし、第1蓄熱水循環ポンプ42を作動させ、冷却用熱源機4を運転させている。蓄熱槽1の高温槽部位12の蓄熱水が、第1蓄熱水循環路41を通して冷却用熱源機4を通過する状態で低温槽部位11に通流している。このとき、制御部6が開閉弁(図示省略)を制御して、第1蓄熱水循環路41においてバイパス路44に蓄熱水を通流させることで、冷却・加熱用熱源機5をバイパスさせる状態で蓄熱水を通流させている。高温槽部位12の蓄熱水が冷却用熱源機4にて冷却され、その冷却後の蓄熱水が低温槽部位11に供給されて、蓄熱槽1に冷熱を蓄熱している。ここで、制御部6は、例えば、冷却用熱源機4を定格能力状態(冷却用熱源機4の運転効率が高くなる能力)にて運転させており、冷却用熱源機4の運転効率を向上させて、システム効率の向上を図っている。
【0040】
冷熱蓄熱運転を実行するタイミングについて、制御部6は、例えば、夜間等、熱負荷装置2にて冷房運転や暖房運転が行われない時間帯や複数の熱負荷装置2の全体における熱負荷が小さい時間帯等に、冷熱蓄熱運転を実行している。これにより、蓄熱槽1への冷熱の蓄熱を集中的に行うことができ、蓄熱槽1に冷熱を効率よく蓄熱することができる。冷熱蓄熱運転を実行する時間帯については、適宜設定することができるが、例えば、過去の熱負荷装置2の熱負荷状況等に応じて、熱負荷が無い時間帯又は熱負荷が小さい時間帯に設定することができる。冷熱蓄熱運転において蓄熱槽1に蓄熱する冷熱量についても、適宜設定することができるが、例えば、過去の熱負荷装置2の熱負荷状況等に応じて、次の日に使用する冷熱量を推定し、その推定した冷熱量を、蓄熱槽1に蓄熱する冷熱量として設定することができる。
【0041】
(冷熱供給運転)
冷熱供給運転では、図2に示すように、制御部6が、第2蓄熱水循環ポンプ35を作動させ、熱媒体制御弁36を開状態とし、熱媒体供給ポンプ37を作動させている。蓄熱槽1の低温槽部位11の蓄熱水が、第2蓄熱水循環路31を通して熱交換部32を通過する状態で高温槽部位12に通流しているとともに、熱媒体が、熱媒体往路33と熱媒体復路34とを通して熱交換部32と熱負荷装置2との間で循環する状態で通流している。これにより、熱交換部32において低温槽部位11の蓄熱水と熱媒体とを熱交換させて、低温槽部位11の蓄熱水が有する冷熱を熱媒体に伝達し、冷熱を有する熱媒体(中間温度の熱媒体)を複数の熱負荷装置2に供給可能としている。複数の熱負荷装置2への熱媒体の供給量については、制御部6が、複数の熱負荷装置2の全体における熱負荷の大きさ等に応じて、熱媒体供給ポンプ37の回転速度等を制御している。
【0042】
図2では、冷房運転を行う熱負荷装置2と暖房運転を行う熱負荷装置2とが混在している状態において、冷房運転を行う熱負荷装置2が暖房運転を行う熱負荷装置2よりも多く、冷房負荷(冷熱負荷)の方が暖房負荷(温熱負荷)よりも大きい場合を示している。図2において、冷房運転を行う熱負荷装置2を太線にて囲んで示しており、暖房運転を行う熱負荷装置2を太線の点線にて囲んで示している。
【0043】
この場合には、冷房運転を行う熱負荷装置2が暖房運転を行う熱負荷装置2よりも多いことから、熱媒体復路34における熱媒体の温度が上昇して、熱媒体復路34にて熱交換部32に戻される熱媒体の温度が中間温度よりも上昇している。そこで、熱交換部32において低温槽部位11の蓄熱水と熱媒体とを熱交換させることで、熱媒体の温度を中間温度まで冷却させて、熱媒体往路33を通して中間温度の熱媒体を複数の熱負荷装置2に供給可能としている。これにより、冷房運転を行う熱負荷装置2も、暖房運転を行う熱負荷装置2も、熱媒体往路33から引き込んだ熱媒体が有する熱を利用可能となり、冷房負荷がある熱負荷装置2では、熱媒体が有する冷熱を利用して冷房運転を行い、その冷房負荷を賄うことができ、暖房負荷がある熱負荷装置2でも、熱媒体が有する温熱を利用して暖房運転を行い、その暖房負荷を賄うことができる。
【0044】
また、図示は省略するが、冷房運転を行う熱負荷装置2のみが存在して、冷房負荷のみがある場合にも、熱媒体復路34にて熱交換部32に戻される熱媒体の温度が中間温度よりも上昇することになり、熱交換部32において低温槽部位11の蓄熱水と熱媒体とを熱交換させることで、熱媒体の温度を中間温度まで冷却させて、熱媒体往路33を通して中間温度の熱媒体を複数の熱負荷装置2に供給可能としている。これにより、冷房負荷がある熱負荷装置2では、熱媒体が有する冷熱を利用して冷房運転を行い、その冷房負荷を賄うことができる。
【0045】
冷熱供給運転を実行するタイミングについて、制御部6が、複数の熱負荷装置2の全体における熱負荷状況や、熱媒体復路34における熱媒体の温度に基づいて、冷熱供給運転の運転開始及び冷熱供給運転の運転停止を行うことができる。例えば、複数の熱負荷装置2の全体における熱負荷状況が、冷房負荷(冷熱負荷)のみの場合や、暖房負荷と冷房負荷とが混在している状態において冷房負荷(冷熱負荷)の方が暖房負荷(温熱負荷)よりも大きい場合等に、制御部6が、冷熱供給運転を運転開始し、冷房負荷が無くなると、冷熱供給運転を運転停止させることができる。また、熱媒体復路34における熱媒体の温度が中間温度以上となると、制御部6が、冷熱供給運転を運転開始し、熱媒体復路34における熱媒体の温度が中間温度よりも所定温度だけ低くなると、冷熱供給運転を運転停止させることができる。
【0046】
(冷熱蓄熱・冷熱供給運転)
冷熱蓄熱・冷熱供給運転では、図3に示すように、制御部6が、冷熱蓄熱運転(図1参照)と冷熱供給運転(図2参照)とを同時に行うべく、第1制御弁43を開状態とし、第1蓄熱水循環ポンプ42を作動させ、冷却用熱源機4を運転させるとともに、第2蓄熱水循環ポンプ35を作動させ、熱媒体制御弁36を開状態とし、熱媒体供給ポンプ37を作動させている。冷却用熱源機4を運転させるに当たり、制御部6は、冷却用熱源機4を定格能力状態(冷却用熱源機4の運転効率が高くなる能力)にて運転させる定格能力運転を実行している。
【0047】
ちなみに、制御部6が、開閉弁(図示省略)を制御して、第1蓄熱水循環路41において冷却・加熱用熱源機5に蓄熱水を通流させ、冷却・加熱用熱源機5を運転させることで、冷却・加熱用熱源機5によって蓄熱水を冷却させることができるので、例えば、冷却用熱源機4の故障時やメンテナンス時等に、冷却・加熱用熱源機5をバックアップの熱源機として用いることができる。
【0048】
蓄熱槽1の高温槽部位12の蓄熱水が、第1蓄熱水循環路41を通して冷却用熱源機4を通過する状態で低温槽部位11に通流している。よって、高温槽部位12の蓄熱水が冷却用熱源機4にて冷却され、その冷却後の蓄熱水が低温槽部位11に供給されて、蓄熱槽1に冷熱を蓄熱している。また、蓄熱槽1の低温槽部位11の蓄熱水が、第2蓄熱水循環路31を通して熱交換部32を通過する状態で高温槽部位12に通流しているとともに、熱媒体が、熱媒体往路33と熱媒体復路34とを通して熱交換部32と熱負荷装置2との間で循環する状態で通流している。よって、熱交換部32において低温槽部位11の蓄熱水と熱媒体とを熱交換させて、低温槽部位11の蓄熱水が有する冷熱を熱媒体に伝達し、冷熱を有する熱媒体(中間温度の熱媒体)を複数の熱負荷装置2に供給可能としている。
【0049】
このようにして、第1蓄熱水循環路41にて冷却用熱源機4にて冷却された蓄熱水を低温槽部位11に供給しながら、その低温槽部位11に供給された蓄熱水を第2蓄熱水循環路31にてそのまま熱交換部32に供給して、熱交換部32において蓄熱水と熱媒体との熱交換を行うようにしている。熱交換部32での熱交換により中間温度に冷却された熱媒体を複数の熱負荷装置2に供給して、複数の熱負荷装置2の夫々において熱媒体が有する熱を利用した冷房運転又は暖房運転を行うようにしている。
【0050】
ちなみに、図3においても、図2と同様に、冷房運転を行う熱負荷装置2と暖房運転を行う熱負荷装置2とが混在している状態において、冷房運転を行う熱負荷装置2が暖房運転を行う熱負荷装置2よりも多く、冷房負荷(冷熱負荷)の方が暖房負荷(温熱負荷)よりも大きい場合を示している。図3においても、冷房運転を行う熱負荷装置2を太線にて囲んで示しており、暖房運転を行う熱負荷装置2を太線の点線にて囲んで示している。
【0051】
冷熱蓄熱・冷熱供給運転を実行するタイミングについて、上述の冷熱供給運転を行うことで、蓄熱槽1に蓄熱された冷熱が消費されていくので、蓄熱槽1に蓄熱された冷熱だけでは、複数の熱負荷装置2の全体における冷房負荷(冷熱負荷)を賄えなくなる可能性がある。そこで、制御部6は、蓄熱槽1における蓄熱水温度が運転開始用温度以上になると、冷熱蓄熱・冷熱供給運転を開始させ、運転停止条件が満たされるまで、冷熱蓄熱・冷熱供給運転の実行を継続している。
【0052】
ここで、運転開始用温度については、蓄熱槽1における低温槽部位11の蓄熱水温度に対応する低温槽用の運転開始用温度(例えば、28℃)に設定する、又は、蓄熱槽1における高温槽部位12の蓄熱水温度に対応する高温槽用の運転開始用温度(例えば、32℃)に設定することができる。
【0053】
例えば、冷房負荷(冷熱負荷)を賄うことを優先する場合には、制御部6が、運転開始用温度を低温槽用の運転開始用温度に設定する状態に切り替え、システムの効率を優先する場合には、制御部6が、運転開始用温度を高温槽用の運転開始用温度に設定する状態に切り替えることができる。このように、各種の切替条件に応じて、運転開始用温度を低温槽用の運転開始用温度に設定する状態と、運転開始用温度を高温槽用の運転開始用温度に設定する状態とに、制御部6が自動的に又はユーザ等の人為操作に基づいて切替自在とすることができる。また、このような運転開始用温度の設定の切替を行うタイミングについては、冷熱蓄熱・冷熱供給運転を実行するごとや所定期間が経過するごとに、制御部6が自動的に又はユーザ等の人為操作に基づいて切り替えることができる。
【0054】
運転停止条件については、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4)を運転開始させてから所定時間が経過するという条件に設定されている。これにより、運転停止条件を簡易な条件に設定することができながら、冷却用熱源機4の運転効率の向上を図ることができるタイミングにて、冷却用熱源機4を運転停止させることができる。
【0055】
この冷熱蓄熱・冷熱供給運転では、複数の熱負荷装置2の全体における熱負荷状況に関わらず、冷却用熱源機4を定格能力状態にて運転させているので、例えば、複数の熱負荷装置2の全体における熱負荷状況が冷房負荷の小さい場合等には、その冷房負荷を賄いながら、余剰な冷熱が発生することになり、その余剰な冷熱を蓄熱槽1に蓄熱することになる。
【0056】
ここで、冷却用熱源機4は、複数の熱負荷装置2の全てが冷房運転を行ったときの冷房負荷(冷熱負荷)を賄える能力を有している。仮に、全ての熱負荷装置2が冷房運転を行っており、冷房負荷(冷熱負荷)が最大となっている場合でも、冷熱蓄熱・冷熱供給運転を行うことで、冷却用熱源機4にて生成した冷熱を熱交換部32を介して熱媒体に伝熱して、熱媒体の中間温度に冷却させることができ、中間温度の熱媒体を複数の熱負荷装置2の全てに供給することができる。よって、全ての熱負荷装置2において、熱媒体が有する冷熱を利用して冷房運転を行うことができ、冷房負荷(冷熱負荷)が最大であってもその冷房負荷を適切に賄うことができる。
【0057】
このように、冷却用熱源機4は、複数の熱負荷装置2の全てが冷房運転を行ったときの冷房負荷(冷熱負荷)を賄える能力を有していることから、上述の如く、複数の熱負荷装置2の全体における冷房負荷(冷熱負荷)を賄いながら、余剰な冷熱を蓄熱槽1に蓄熱することができる機会が多くなる。これにより、冷却用熱源機4を一度運転させると、余剰な冷熱を蓄熱槽1に効果的に蓄熱することができ、蓄熱槽1の蓄熱水温度が運転開始用温度以上となるまでの期間を長くすることができる。よって、冷却用熱源機4の運転回数を極力低減させることができ、システム効率の向上を効果的に図ることができる。
【0058】
(温熱供給運転)
温熱供給運転では、図4に示すように、制御部6が、第1制御弁43を開状態とし、第1蓄熱水循環ポンプ42を作動させ、冷却・加熱用熱源機5を作動させるとともに、第2蓄熱水循環ポンプ35を作動させ、熱媒体制御弁36を開状態とし、熱媒体供給ポンプ37を作動させている。このとき、制御部6が、開閉弁(図示省略)を制御して、第1蓄熱水循環路41においてバイパス路44に蓄熱水を通流させずに、冷却・加熱用熱源機5に蓄熱水を通流させている。
【0059】
蓄熱槽1の高温槽部位12の蓄熱水が、第1蓄熱水循環路41を通して冷却用熱源機4、冷却・加熱用熱源機5の順に通過する状態で蓄熱槽1に戻されている。冷却用熱源機4が運転停止しており、冷却・加熱用熱源機5が運転しているので、高温槽部位12の蓄熱水が冷却・加熱用熱源機5にて加熱され、その加熱後の蓄熱水が蓄熱槽1に戻されている。また、蓄熱槽1に戻された加熱後の蓄熱水が、そのまま第2蓄熱水循環路31を通して熱交換部32を通過する状態で高温槽部位12に通流しているとともに、熱媒体が、熱媒体往路33と熱媒体復路34とを通して熱交換部32と熱負荷装置2との間で循環する状態で通流している。よって、熱交換部32において蓄熱槽1に戻された加熱後の蓄熱水と熱媒体とを熱交換させて、低温槽部位11の加熱後の蓄熱水が有する温熱を熱媒体に伝達し、温熱を有する熱媒体(中間温度の熱媒体)を複数の熱負荷装置2に供給可能としている。
【0060】
図4では、冷房運転を行う熱負荷装置2と暖房運転を行う熱負荷装置2とが混在している状態において、暖房運転を行う熱負荷装置2が冷房運転を行う熱負荷装置2よりも多く、暖房負荷(温熱負荷)の方が冷房負荷(冷熱負荷)よりも大きい場合を示している。図4において、冷房運転を行う熱負荷装置2を太線にて囲んで示しており、暖房運転を行う熱負荷装置2を太線の点線にて囲んで示している。
【0061】
この場合には、暖房運転を行う熱負荷装置2が冷房運転を行う熱負荷装置2よりも多いことから、熱媒体復路34における熱媒体の温度が低下して、熱媒体復路34にて熱交換部32に戻される熱媒体の温度が中間温度よりも下降している。そこで、熱交換部32において低温槽部位11の加熱後の蓄熱水と熱媒体とを熱交換させることで、熱媒体の温度を中間温度まで加熱させて、熱媒体往路33を通して中間温度の熱媒体を複数の熱負荷装置2に供給可能としている。これにより、暖房運転を行う熱負荷装置2も、冷房運転を行う熱負荷装置2も、熱媒体往路33から引き込んだ熱媒体が有する熱を利用可能となり、暖房負荷がある熱負荷装置2では、熱媒体が有する温熱を利用して暖房運転を行い、その暖房負荷を賄うことができ、冷房負荷がある熱負荷装置2でも、熱媒体が有する冷熱を利用して冷房運転を行い、その冷房負荷を賄うことができる。
【0062】
温熱供給運転を実行するタイミングについて、制御部6が、複数の熱負荷装置2の全体における熱負荷状況や、熱媒体復路34における熱媒体の温度に基づいて、温熱供給運転の運転開始及び温熱供給運転の運転停止を行うことができる。例えば、複数の熱負荷装置2の全体における熱負荷状況が、暖房負荷(温熱負荷)のみの場合や、暖房負荷と冷房負荷とが混在している状態において暖房負荷(温熱負荷)の方が冷房負荷(冷熱負荷)よりも大きい場合等に、制御部6が、温熱供給運転を運転開始し、暖房負荷が無くなると、温熱供給運転を運転停止させることができる。また、熱媒体復路34における熱媒体の温度が中間温度以下となると、制御部6が、温熱供給運転を運転開始し、熱媒体復路34における熱媒体の温度が中間温度よりも所定温度だけ高くなると、温熱供給運転を運転停止させることができる。
【0063】
以下、図5のフローチャートに基づいて、冷熱供給運転及び冷熱蓄熱・冷熱供給運転の動作について説明する。
【0064】
まず、制御部6が、冷却供給運転を実行すべきか否かを判別している(ステップ#1)。例えば、制御部6が、冷房負荷(冷熱負荷)のみの場合や、暖房負荷と冷房負荷とが混在している状態において冷房負荷(冷熱負荷)の方が暖房負荷(温熱負荷)よりも大きい場合等であると、冷却供給運転を実行すべきと判別している。
【0065】
冷却供給運転を実行すべきであると判別すると、制御部6が、冷却供給運転を実行している(ステップ#1のYesの場合、ステップ#2)。冷却供給運転を実行することで、蓄熱槽1に蓄熱されている冷熱が消費されていくと、蓄熱槽1における蓄熱水温度が変化するので、制御部6が、図外の温度センサにより蓄熱槽1における蓄熱水温度がどのように変化するかを監視している。
【0066】
蓄熱槽1における蓄熱水温度が運転開始用温度以上となると、制御部6が、冷却供給運転から移行して、冷熱蓄熱・冷熱供給運転を実行している(ステップ#3のYesの場合、ステップ#4)。運転開始用温度が低温槽用の運転開始用温度に設定されている場合には、低温槽部位11の蓄熱水温度が低温槽用の運転開始用温度以上となると、制御部6が、冷熱蓄熱・冷熱供給運転を実行している。また、運転開始用温度が高温槽用の運転開始用温度に設定されている場合には、高温槽部位12の蓄熱水温度が高温槽用の運転開始用温度以上となると、制御部6が、冷熱蓄熱・冷熱供給運転を実行している。
【0067】
冷熱蓄熱・冷熱供給運転の実行中に、運転停止条件が満たされると、制御部6が、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4)を停止させている(ステップ#5のYesの場合、ステップ#6)。制御部6は、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4)を運転開始させてから所定時間が経過すると、運転停止条件が満たされたと判別している。
【0068】
冷熱蓄熱・冷熱供給運転を停止させる際に、冷房負荷が継続して存在する場合等には、制御部6が、冷熱蓄熱・冷熱供給運転を停止させて、冷熱供給運転に移行して、蓄熱槽1に蓄熱されている冷熱にて冷房負荷を賄うようにしている。その後、スタートに戻り、上述の動作が行われる。
【0069】
この実施形態では、冷熱蓄熱・冷熱供給運転について、制御部6が、蓄熱槽1における蓄熱水温度が運転開始用温度以上になると、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4の運転)を開始させ、冷熱供給運転(冷却用熱源機4の運転)を開始させてから所定時間が経過するという運転停止条件が満たされるまで、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4の運転)を継続させるという制御構成を採用している。このような制御構成を採用することで、図6に示すように、熱源システムの効率がどのような数値になるかをシミュレーションして確認している。
【0070】
図6は、制御構成について、A1、A2、Bの3つのパターンにてシミュレーションした場合に、熱源システムの効率がどのような数値になるかを示したグラフである。A1は、蓄熱槽1における低温槽部位11の蓄熱水温度が低温槽用の運転開始用温度以上となると、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4の運転)を開始させ、冷熱供給運転(冷却用熱源機4の運転)を開始させてから所定時間が経過するという運転停止条件が満たされるまで、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4の運転)を継続させるという制御構成を採用した場合のシミュレーション結果である。A2は、蓄熱槽1における高温槽部位12の蓄熱水温度が高温槽用の運転開始用温度以上となると、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4の運転)を開始させ、冷熱供給運転(冷却用熱源機4の運転)を開始させてから所定時間が経過するという運転停止条件が満たされるまで、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4の運転)を継続させるという制御構成を採用した場合のシミュレーション結果である。Bは、蓄熱槽1における低温槽部位11の蓄熱水温度が一定の設定温度になるように、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4の運転)を行うという制御構成を採用した場合のシミュレーション結果である。
【0071】
図6に示すように、Bでは、システムの効率(COP)が2.17となっているのに対して、A1では、システムの効率(COP)が2.46となっており、A2では、システムの効率(COP)が2.48となっている。A1及びA2が、この実施形態における制御構成を採用したものであり、Bに比べて、熱源システムの効率(COP)が向上していることが分かる。
【0072】
ここで、蓄熱槽1に蓄熱させる蓄熱水の温度について、冷却用熱源機4(冷却塔)を主熱源としていることから、通常の温度帯域とは異なる中温度帯域に設定している。例えば、通常の温度帯域は、低温の蓄熱水を7℃以下とし、高温の蓄熱水を50℃以上の温度帯域に設定しているが、この実施形態では、低温の蓄熱水を15~25℃、高温の蓄熱水を25~35℃の中温度帯域に設定している。このように蓄熱水の温度帯域を中温度帯域に設定することで、冷却用熱源機4(冷却塔)を有効に活用して、熱源システムのシステム効率向上を効果的に図ることができる。
【0073】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0074】
(1)上記実施形態では、運転開始用温度については、蓄熱槽1における低温槽部位11の蓄熱水温度に対応する低温槽用の運転開始用温度(例えば、28℃)に設定する状態と、蓄熱槽1における高温槽部位12の蓄熱水温度に対応する高温槽用の運転開始用温度(例えば、32℃)に設定する状態とに切替自在としているが、例えば、常時、運転開始用温度を低温槽用の運転開始用温度(例えば、28℃)に設定したり、又は、常時、運転開始用温度を高温槽用の運転開始用温度(例えば、32℃)に設定することもできる。
【0075】
(2)上記実施形態では、運転停止条件を、冷熱蓄熱・冷熱供給運転(冷却用熱源機4)を運転開始させてから所定時間が経過するという条件に設定しているが、例えば、蓄熱槽1における蓄熱水温度が運転停止用温度以下となる条件に設定することもでき、各種の条件を設定することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 蓄熱槽
2 熱負荷装置
3 冷熱供給部
4 冷却用熱源機
6 制御部
11 低温槽部位
12 高温槽部位
41 第1蓄熱水循環路(蓄熱水循環部)
42 第1蓄熱水循環ポンプ(蓄熱水循環部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6