(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183768
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】耐火カバー
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20221206BHJP
F21S 8/02 20060101ALI20221206BHJP
F21V 29/10 20150101ALI20221206BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20221206BHJP
A62C 3/16 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E04B1/94 N
F21S8/02 400
F21V29/10
E04B1/94 F
E04B9/00 D
A62C3/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091248
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】521237099
【氏名又は名称】株式会社YAZAWA LUMBER
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】秋山 耕三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 明
(72)【発明者】
【氏名】京井 貴史
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 琢磨
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA15
2E001GA24
2E001HA32
2E001HA33
2E001HF12
2E001LA05
2E001LA12
2E001LA16
(57)【要約】
【課題】建物の火災の際に、天井板に開けられた電気設備モジュール用の孔を通して、火炎が天井裏へ回り込むのを防止する。
【解決手段】電気設備モジュール2用の耐火カバー10は、軟質の耐火層12を含む軟質カバー材11を備えている。軟質カバー材11は、建物の天井1に形成された電気設備モジュール設置孔3を通過可能に折り畳み又は重ね合わせ可能であり、かつ電気設備モジュール2に天井裏から被さるように展開可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井に設置される電気設備モジュール用の耐火カバーであって、
軟質の耐火層を含み、天井に形成された電気設備モジュール設置孔を通過可能に折り畳み又は重ね合わせ可能かつ前記電気設備モジュールに天井裏から被さるように展開可能な軟質カバー材を備えたことを特徴とする耐火カバー。
【請求項2】
折り畳み可能及び展開可能な保形フレームを備え、前記軟質カバー材が前記保形フレームに張り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐火カバー。
【請求項3】
前記保形フレームが、複数のコ字状又は半円状のフレーム部材と、これらフレーム部材の互いに重ね合わされた端部どうしを回転可能に連結する連結軸部材とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の耐火カバー。
【請求項4】
軟質カバー材の縁が、前記保形フレームにおける前記縁と対応する部分を包むように折り返されて袋綴じされていることを特徴とする請求項2又は3に記載の耐火カバー。
【請求項5】
前記軟質カバー材が、複数の軟質カバー片を含み、これら軟質カバー片が連結軸部材によって互いに回転可能に連ねられていることを特徴とする請求項1に記載の耐火カバー。
【請求項6】
前記軟質カバー材に、前記電気設備モジュールの電源コードを通すハトメが設けられていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の耐火カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建て住宅、集合住宅、オフィスビル、工場などの建物に設けられる耐火用のカバーに関し、特に、建物の天井に設置される電気設備モジュールに被せられる耐火カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅などの建物においては、天井板に孔が開けられて、そこに照明機器等の電気設備モジュールが設置されることが知られている(特許文献1等参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような建物において、仮に室内で火災があった場合、火炎が前記孔を通して天井裏に回り込むことが考えられる。
本発明は、かかる事情に鑑み、建物の火災の際に、天井板に開けられた電気設備モジュール用の孔を通して、火炎が天井裏へ回り込むのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、建物の天井裏に設置される電気設備モジュール用の耐火カバーであって、
軟質の耐火層を含み、天井に形成された電気設備モジュール設置孔を通過可能に折り畳み又は重ね合わせ可能かつ前記電気設備モジュールに天井裏から被さるように展開可能な軟質カバー材を備えたことを特徴とする。
【0006】
前記耐火カバーが、折り畳み可能及び展開可能な保形フレームを備え、前記軟質カバー材が前記保形フレームに張り付けられていることが好ましい。
【0007】
前記保形フレームが、複数のコ字状又は半円状のフレーム部材と、これらフレーム部材の互いに重ね合わされた端部どうしを回転可能に連結する連結軸部材とを備えたことが好ましい。
【0008】
軟質カバー材の縁が、前記保形フレームにおける前記縁と対応する部分を包むように折り返されて袋綴じされていることが好ましい。
【0009】
前記軟質カバー材が、複数の軟質カバー片を含み、これら軟質カバー片が連結軸部材によって互いに回転可能に連ねられていることが好ましい。
【0010】
前記軟質カバー材に、前記電気設備モジュールの電源コードを通すハトメが設けられていることが好ましい。
前記連結軸部材に、前記電気設備モジュールの電源コードを通すハトメが設けられていてもよい。
前記軟質カバー材が、前記耐火層と、前記耐火層を包む被覆層とを有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る耐火カバーによれば、建物の火災の際に、天井に設けられた電気設備モジュールに被せられることで、前記電気設備モジュール用の孔を通して、火炎が天井裏へ回り込むのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る耐火カバーを、建物の天井裏の電気設備モジュールに設置した状態で示す正面断面図である。
【
図2】
図2は、前記耐火カバーの軟質カバー材の断面構造を示す、
図1の円部IIの拡大断面図である。
【
図3】
図3は、前記耐火カバーの保形フレームを実線で示し、軟質カバー材を二点鎖線で示す、展開状態の耐火カバーの斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、前記耐火カバーを展開状態で示す、同図(b)のIVa-IVa線に沿う正面断面図である。
図4(b)は、同図(a)のIVb-IVb線に沿う側面断面図である。
【
図5】
図5(a)は、前記耐火カバーを収縮状態で示す、同図(b)のVa-Va線に沿う正面断面図である。
図5(b)は、同図(a)のVb-Vb線に沿う側面断面図である。
【
図6】
図6は、前記耐火カバーを、天井の電気設備モジュール設置孔に挿通する様子を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る耐火カバーを展開状態で示す平面図である。
【
図8】
図8は、前記第2実施形態に係る耐火カバーを収縮状態で示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図7のIX-IX線に沿う、前記第2実施形態に係る耐火カバーを電気設備モジュールに被せた状態の正面断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3実施形態に係る耐火カバーを展開状態にして電気設備モジュールに被せた状態で示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態(
図1~
図6)>
図1に示すように、戸建て住宅等の建物の天井1に電気設備モジュール設置孔3が形成されている。孔3の大きさは、人の手が挿し入れ可能な程度であり、具体的には直径100mm程度であるが、これに限られるものではない。孔3に電気設備モジュール2が設置されている。電気設備モジュール2は、好ましくは、ダウンライトなどの照明器具によって構成されている。
【0014】
図1に示すように、建物の天井裏には、耐火カバー10が配置されている。耐火カバー10は展開可能(
図4)かつ収縮可能(
図5)である。以下の説明では、耐火カバー10は、特に断らない限り、展開状態であるものとする。展開状態の耐火カバー10が、電気設備モジュール2に天井裏から被さっている。
【0015】
図1に示すように、耐火カバー10は、軟質カバー材11と、保形フレーム20を備えている。軟質カバー材11は、平坦な上面部15と、周面部16を有し、底部が開放された天蓋状(ドーム状)に形成されている。周面部16における左右両側部16aは、上面部15へ向かうにしたがって互いに接近するように曲面状になっているが、これに限らず、周面部16の4つの側部が共に縦面状であってもよい。軟質カバー材11が、逆さにした四角形の箱状であってもよい。
軟質カバー材11は、天井1の孔3を通過可能な程度に折り畳み又は重ね合わせ可能であり、かつ電気設備モジュール2に天井裏から被さるように展開可能である。
【0016】
図2に示すように、軟質カバー材11の断面構造は、耐火層12と、被覆層13,14を有している。耐火層12は、グラスウール、ロックウール、発泡耐火シート等の不燃性かつ軟質の断熱材によって構成されている。耐火層12の外面(
図2において上面)が外面被覆層13で覆われている。外面被覆層13は、好ましくは多孔樹脂フィルム等によって構成され、通気性を有している。耐火層12の内面(
図2において下面)が内面被覆層14で覆われている。内面被覆層14は、好ましくは防湿フィルムによって構成されている。被覆層13,14の厚みは、耐火層12の厚みと比べて十分に小さい。被覆層13,14は、前記フィルムに限らず、不織布や織布などであってもよい。
なお、
図1等においては、被覆層13,14の図示が省略されている。
【0017】
図3及び
図4に示すように、保形フレーム20は、4つ(複数)のフレーム部材21,22,23,24と、一対の連結軸部材25とを含む。
図3及び
図4(b)に示すように、各フレーム部材21~24は、コ字状に屈曲された板状になっている。フレーム部材21~24の材質は、好ましくはスチール、ステンレス等の金属である。
【0018】
4つのフレーム部材21,22,23,24の両端部が重ね合わされ、一対の連結軸部材25によって回転可能に連結されている。一対の連結軸部材25どうしは、互いに同一軸線上に配置されている。該軸線のまわりにフレーム部材21,22,23,24が互いに角度調節可能である。これによって、保形フレーム20が、全体として折り畳み可能かつ展開可能である。
図3及び
図4(a)に示すように、展開状態の保形フレーム20においては、底部側の2つのフレーム部材21,24どうしが180°離れて対向している。中間の2つの保形フレーム22,23どうしは、互いに正面視でV字状をなすように傾斜されている。
図5(a)に示すように、折り畳み状態の保形フレーム20においては、フレーム部材21,22,23,24どうしが互いにほぼ重ね合わされるか、数度~十数度程度の角度を置いて互いに接近されている。
【0019】
図4に示すように、軟質カバー材11が、保形フレーム20に外側から被さるようにして張り付けられている。軟質カバー材11の縁11eが、保形フレーム20における底部フレーム部材21,24(縁11eと対応する部分)を包むように内側へ折り返されて、溶着又はステープル等の綴じ手段17によって袋綴じされている。
【0020】
図4及び
図5に示すように、保形フレーム20によって、軟質カバー11の形状が保持されたり変更されたりする。すなわち、
図4(a)に示すように、保形フレーム20を展開状態にすることによって、軟質カバー11が展開されて天蓋状又は逆さ箱状に保持されている。V字状をなす中間の保形フレーム22,23は、軟質カバー材11の周面部16の前後両側部16bの内面に沿って斜めに延び、上面部15の左右両端部分に内側から押し当てられている。これらフレーム部材22,23と、軟質カバー材11とは、互いに固定されておらず、軟質カバー材11の内面に沿ってフレーム部材22,23が移動可能である。
図5(b)に示すように、保形フレーム20を折り畳み状態にすることで、軟質カバー11が折り畳まれて、耐火カバー10が全体として概略コ字状の収縮状態になる。
【0021】
耐火カバー10は次のようにして使用される。
図6に示すように、建物における施工済の天井1に孔3を開ける。次に、耐火カバー10を収縮状態にして、室内から孔3に通して、天井裏に配置する。軟質カバー材11を折り畳み、耐火カバー10を収縮状態にすることで、耐火カバー10を孔3に挿通することができる。
天井裏において耐火カバー10を展開させる。展開作業は、室内から手を孔3に差し入れて行なう。展開状態の耐火カバー10を、孔3を覆うように位置調節して天井裏に設置する。
次に、孔3に電気設備モジュール2を取り付ける。これによって、展開状態の耐火カバー10が、天井裏から電気設備モジュール2に被さる。
耐火カバー10によって、電気設備モジュール2の耐火性を確保できる。万が一、建物の室内で火災が発生したときは、室内の火炎が孔3を通して天井裏へ回り込むのを防止することができる。
【0022】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図7~
図9)>
図7に示すように、第2実施形態の耐火カバー10Bは、軟質カバー材30と、連結軸部材35を備えている。軟質カバー材30は、複数(例えば4つ)の軟質カバー片31を含む。各軟質カバー片31は、扇形ないしは四半円形状に形成されている。軟質カバー片31の断面構造は、第1実施形態の軟質カバー材11(
図2)と同様であり、グラスウール等の不燃性の断熱材からなる軟質の耐火層12の表面が被覆層13,14(
図9において省略)によって包まれている。
【0023】
複数の軟質カバー片31における扇のカナメ部分が互いに合わせられ、連結軸部材35によって互いに回転可能に連ねられている。
耐火カバー10Bには、保形フレームが設けられていない。
【0024】
図7に示すように、複数の軟質カバー材30が連結軸部材35を中心にして互いに環状に配置されることによって、耐火カバー10Bが平面視円形の展開状態になる。
図9の二点鎖線に示すように、展開状態の耐火カバー10Bの本来の側面視形状は、天蓋状(ドーム状)になっている。
【0025】
図8に示すように、軟質カバー片31を回転させて互いに重ね合わせることで、耐火カバー10Bが概略扇状の収縮状態になる。収縮状態の耐火カバー10Bを孔3に通して天井裏に差し入れる。耐火カバー10Bには硬質の保形フレームが無く、かつ軟質カバー片31を重ね合わせることができるため、孔3への挿通が容易である。
【0026】
図7に示すように、天井裏において、軟質カバー材30を全体として円形になるように拡げて、耐火カバー10Bを展開状態にする。展開作業は手を孔3に差し入れて行なうことができる。展開状態の耐火カバー10Bによって孔3を天井裏から覆う。
図9に示すように、孔3には電気設備モジュール2を取り付ける。これによって、展開状態の耐火カバー10Bが、天井裏から電気設備モジュール2に被さる。
図9の実線に示すように、耐火カバー10Bは、電気設備モジュール2の形状に倣うように変形される。
【0027】
<第3実施形態(
図10)>
図10に示すように、第3実施形態の耐火カバー10Cは、軟質の耐火層12を主体とする軟質カバー材11Cを備えている。
図10において二点鎖線にて示すように、軟質カバー材11Cは、例えば第1実施形態の軟質カバー材11と同様の天蓋状(ドーム状)ないしは逆さの四角形の箱状に形成されている。軟質カバー材40Cの中央部には、ハトメ45が設けられている。
【0028】
一方、耐火カバー10Cには、軟質カバー材11Cの前記二点鎖線の形状を保持する保形フレーム及び連結軸部材が設けられていない。
保形フレームが無いため、耐火カバー10Cを孔3に容易に通すことができる。
【0029】
図10の実線に示すように、天井裏において展開された耐火カバー10Cが、電気設備モジュール2に被せられている。軟質カバー材11Cは、電気設備モジュール2の形状に倣うように変形されている。
【0030】
ハトメ45には、電気設備モジュール2の電源コード2cが通されている。これによって、電源コード2cの引き回しを容易化できる。
【0031】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、耐火カバーを釘、クランプ、粘着テープ等の固定手段で天井1に固定してもよい。
グラスウール等の耐火層12が多少の保形性を有していることで、軟質カバー材にある程度の自立性を持たせてもよい。
内面被覆層14等の張り具合を調整することで、軟質カバー材にある程度の自立性を持たせてもよい。
第1実施形態の耐火カバー10において、フレーム部材21~24の形状は、コ字状に限らず、半円状であっていてもよい。
軟質カバー材11,11Cが概略半球面状に形成されていてもよい。
電気設備モジュールは、ダウンライトなどの照明器具に限らず、音響器具、撮影器具、火災報知器などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、例えば建物の天井に設置された照明器具の耐火カバーに適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 天井
2 電気設備モジュール
3 電気設備モジュール孔
10 耐火カバー
10B,10C 耐火カバー
11,11C 軟質カバー材
11e 軟質カバー材の縁
12 耐火層
13 外面被覆層
14 内面被覆層
15 上面部
16 周面部
16a 左右両側部
16b 前後両側部
17 綴じ手段
20 保形フレーム
21~24 フレーム部材
25 連結軸部材
30 軟質カバー材
31 軟質カバー片
35 連結軸部材
45 ハトメ