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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183769
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】主軸装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/12 20060101AFI20221206BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B23Q11/12 C
B23B19/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091249
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 雅樹
【テーマコード(参考)】
3C011
3C045
【Fターム(参考)】
3C011FF06
3C045FD12
3C045FD18
3C045FD28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】主軸装置において、転がり軸受の潤滑および冷却を十分に行うと共に、皿ばねの寿命を長くできる技術を提供する。
【解決手段】主軸装置は、ハウジング3と、転がり軸受と、主軸10と、主軸10の軸方向に沿って移動可能なプッシュロッド30と、主軸10内において主軸10の内周面とプッシュロッド10との間に配置され、プッシュロッド10に対して前端部側から後端部側に向かう付勢力を与える皿ばね33と、転がり軸受に向けて潤滑油を吹き付ける供給流路61と、少なくとも主軸10に形成された連通流路62であって、転がり軸受に吹き付けられた潤滑油を皿ばね33に供給する連通流路62と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸装置であって、
ハウジングと、
転がり軸受と、
前端部と、前記前端部と対向する後端部とを有する主軸であって、前記ハウジングに前記転がり軸受を介して回転可能に支持される主軸と、
前記主軸内に配置されたプッシュロッドであって、前記主軸の軸方向に沿って移動可能なプッシュロッドと、
前記主軸内において前記主軸の内周面と前記プッシュロッドとの間に配置され、前記プッシュロッドに対して前記前端部側から前記後端部側に向かう付勢力を与える皿ばねと、
前記ハウジングに設けられ、前記転がり軸受に向けて潤滑油を吹き付ける供給流路と、
少なくとも前記主軸に形成された連通流路であって、前記転がり軸受に吹き付けられた前記潤滑油を前記皿ばねに供給する連通流路と、を備える、主軸装置。
【請求項2】
請求項1に記載の主軸装置であって、さらに、
前記連通流路に配置され、前記皿ばねに向かう供給方向への前記潤滑油の流れを許容し、前記供給方向とは反対の方向への前記潤滑油の流れを阻止する第1チェック弁を有する、主軸装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の主軸装置であって、
前記連通流路は、
前記潤滑油を受け入れる一端部としての入口開口部と、
前記入口開口部と連通し、前記主軸内の前記皿ばねが配置された配置領域に開口する他端部を有する出口流路と、を有し、
前記供給流路の下流端である供給開口部は、前記転がり軸受のうちで頂部が位置する領域と、前記軸方向において対向し、
前記入口開口部は、少なくとも前記主軸の回転動作が停止している停止状態の場合には、鉛直上方向を向いて開口する、主軸装置。
【請求項4】
請求項3に記載の主軸装置であって、
前記入口開口部の流路断面積は、前記出口流路の流路断面積よりも大きい、主軸装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の主軸装置であって、さらに、
前記軸方向について前記転がり軸受を挟んで前記供給開口部とは反対側に位置するプレート部材を有し、
前記入口開口部は、前記軸方向について前記プレート部材と前記転がり軸受との間に位置する、主軸装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の主軸装置であって、さらに、
前記ハウジング内における前記主軸の外周に配置され、前記主軸を回転させる電動モータと、
前記軸方向について、前記電動モータから外れた位置に形成された排出流路であって、前記皿ばねに供給された前記潤滑油を外部に排出する排出流路と、を備える、主軸装置。
【請求項7】
請求項6に記載の主軸装置であって、さらに、
前記排出流路に配置され、前記外部に向かう排出方向への前記潤滑油の流れを許容し、前記排出方向とは反対の方向への前記潤滑油の流れを阻止する第2チェック弁を有する、主軸装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の主軸装置であって、
前記排出流路は、前記主軸と前記プッシュロッドとの少なくともいずれか一方に形成されている、主軸装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の主軸装置であって、
前記主軸は、前記前端部に形成された工具が配置される配置孔を有し、
前記プッシュロッドは、前記軸方向に貫通する第1ロッド孔を有する外周側プッシュロッドと、前記第1ロッド孔内に配置され、前記軸方向に貫通する第2ロッド孔を有する内周側プッシュロッドと、を有し、
前記主軸装置は、さらに、
少なくとも前記第2ロッド孔によって形成されたクーラント流路であって、クーラントを前記前端部側に位置する加工ポイントに供給するクーラント流路と、
少なくとも前記外周側プッシュロッドと前記内周側プッシュロッドとの隙間によって形成されたエア流路であって、前記配置孔に吹き付けるエアを前記配置孔に供給するエア流路と、を有する、主軸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主軸装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械における主軸装置は、ハウジングと、ハウジングに転がり軸受を介して回転可能に支持される主軸と、主軸に挿通され、軸方向に移動可能なプッシュロッド(「ドローバー」ともいう。)と、主軸とプッシュロッド間に挿通され、プッシュロッドを付勢する皿ばねとを備える(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-59975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、主軸装置は、プッシュロッドと主軸の軸心内との間の皿ばねが配置されたばね配置空間を有し、このばね配置空間を主軸の軸受部を冷却する冷却液が流れる冷却液供給通路として利用している。しかしながら、従来の技術では、ばね配置空間内を流通した後に主軸の軸受部に冷却液が流れるため、軸受部の冷却が十分に行えず、皿ばね同士を擦り合わせた汚れが軸受部へ供給される恐れがある。また、主軸装置の皿ばねは、プッシュロッドの軸方向に沿った移動に応じて伸縮する。この伸縮が繰り返されることで、皿ばね同士の摩擦によって皿ばねの寿命が到達する。このように、従来から、主軸装置において、軸受部を効率的に冷却および潤滑することと、皿ばねの寿命を長くすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、主軸装置が提供される。この主軸装置は、ハウジングと、転がり軸受と、前端部と、前記前端部と対向する後端部とを有する主軸であって、前記ハウジングに前記転がり軸受を介して回転可能に支持される主軸と、前記主軸内に配置されたプッシュロッドであって、前記主軸の軸方向に沿って移動可能なプッシュロッドと、前記主軸内において前記主軸の内周面と前記プッシュロッドとの間に配置され、前記プッシュロッドに対して前記前端部側から前記後端部側に向かう付勢力を与える皿ばねと、前記ハウジングに設けられ、前記転がり軸受に向けて潤滑油を吹き付ける供給流路と、少なくとも前記主軸に形成された連通流路であって、前記転がり軸受に吹き付けられた前記潤滑油を前記皿ばねに供給する連通流路と、を備える。この形態によれば、供給流路によって皿ばねよりも先に転がり軸受に潤滑油を吹き付けることで、転がり軸受の冷却を十分に行うと共に転がり軸受の潤滑を行うことができる。また、連通流路によって、転がり軸受に吹き付けられた潤滑油を利用して皿ばねの冷却と潤滑を行うことができる。皿ばねの潤滑を行うことで、皿ばねの摩擦による損傷を低減できるので、皿ばねの寿命を長くすることができる。
(2)上記形態において、さらに、前記連通流路に配置され、前記皿ばねに向かう供給方向への前記潤滑油の流れを許容し、前記供給方向とは反対の方向への前記潤滑油の流れを阻止する第1チェック弁を有していてもよい。この形態によれば、潤滑油が反対の方向へ逆流して、供給流路側へと排出される可能性を低減できる。
(3)上記形態において、前記連通流路は、前記潤滑油を受け入れる一端部としての入口開口部と、前記入口開口部と連通し、前記主軸内の前記皿ばねが配置された配置領域に開口する他端部を有する出口流路と、を有し、前記供給流路の下流端である供給開口部は、前記転がり軸受のうちで頂部が位置する領域と、前記軸方向において対向し、前記入口開口部は、少なくとも前記主軸の回転動作が停止している停止状態の場合には、鉛直上方向を向いて開口していてもよい。この形態によれば、少なくとも主軸の停止状態において、転がり軸受に吹き付けられた潤滑油を効率良く入口開口部に流入させることができる。
(4)上記形態において、前記入口開口部の流路断面積は、前記出口流路の流路断面積よりも大きくてもよい。この形態によれば、入口開口部の容積を増大できるので、入口開口部により多くの量の潤滑油を流入させることができる。
(5)上記形態において、さらに、前記軸方向について前記転がり軸受を挟んで前記供給開口部とは反対側に位置するプレート部材を有し、前記入口開口部は、前記軸方向について前記プレート部材と前記転がり軸受との間に位置していてもよい。この形態によれば、プレート部材によって潤滑油が周囲に飛散することを抑制しつつ、プレート部材に当たった潤滑油のより多くを入口開口部に流入させることができる。
(6)上記形態において、さらに、前記ハウジング内における前記主軸の外周に配置され、前記主軸を回転させる電動モータと、前記軸方向について、前記電動モータから外れた位置に形成された排出流路であって、前記皿ばねに供給された前記潤滑油を外部に排出する排出流路と、を備えていてもよい。この形態によれば、排出流路を介して外部に排出された潤滑油が電動モータに付着する可能性を低減できる。
(7)上記形態において、さらに、前記排出流路に配置され、前記外部に向かう排出方向への前記潤滑油の流れを許容し、前記排出方向とは反対の方向への前記潤滑油の流れを阻止する第2チェック弁を有していてもよい。この形態によれば、排出流路を逆流する潤滑油の流れを阻止できる。
(8)上記形態において、前記排出流路は、前記主軸と前記プッシュロッドとの少なくともいずれか一方に形成されていてもよい。この形態によれば、主軸やプッシュロッドを用いて排出流路を形成できる。
(9)上記形態において、前記主軸は、前記前端部に形成され、工具が配置される配置孔を有し、前記プッシュロッドは、前記軸方向に貫通する第1ロッド孔を有する外周側プッシュロッドと、前記第1ロッド孔内に配置され、前記軸方向に貫通する第2ロッド孔を有する内周側プッシュロッドと、を有し、前記主軸装置は、さらに、少なくとも前記第2ロッド孔によって形成されたクーラント流路であって、クーラントを前記前端部側に位置する加工ポイントに供給するクーラント流路と、少なくとも前記外周側プッシュロッドと前記内周側プッシュロッドとの隙間によって形成されたエア流路であって、前記配置孔に吹き付けるエアを前記配置孔に供給するエア流路と、を有していてもよい。この形態によれば、加工ポイントへのクーラントの供給と、配置孔へのエアの供給とを行うことができる。
本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、上記の主軸装置の他に、例えば主軸装置の製造方法、主軸装置の制御方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の主軸装置の縦断面を示す模式図。
図2図1の領域の拡大図。
図3図2のIII-III線断面図。
図4】第2実施形態の主軸装置を説明するための図。
図5】他の実施形態1を説明するための第1図。
図6】他の実施形態1を説明するための第2図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の主軸装置1の縦断面を示す模式図である。本実施形態の主軸装置1は、マシニングセンタなどの工作機械に備えられるモータビルトイン方式の主軸装置である。主軸装置1は、前方側において被加工物を加工する工具(図示)を把持する。図1には、主軸装置1が有する主軸10の軸線AXが示されている。軸線AXよりも上半分の図は、工具の把持が解除されたアンクランプ状態を示し、軸線AXよりも下半分の図は、工具を把持したクランプ状態を示している。また、軸線AXに沿った方向である軸方向について、工具を把持する側を前方側とし、工具を把持する側とは反対側を後方側とする。また、図1の紙面上側が鉛直上方向側であり、紙面下側が鉛直下方向側である。
【0009】
主軸装置1は、筒状のハウジング3と、主軸10と、前方側軸受10Aと、後方側軸受10Bと、電動モータ40と、プッシュロッド30と、コレット32と、皿ばね33と、移動制御機構15と、制御装置90と、を備える。ハウジング3は、主軸10や電動モータ40などの主軸装置1の主要な要素を内側に配置する。
【0010】
主軸10は、ハウジング3に前方側軸受10Aおよび後方側軸受10Bを介して回転可能に支持されている。主軸10は、軸線AXを有し、電動モータ40の駆動によって軸線AXを中心として回転する。主軸10は、前方側の端部である前端部10Fと、前端部10Fと対向する後端部10Rとを有する。主軸10は、軸方向に貫通する主軸内孔10Hを有する。主軸内孔10Hのうち、前端部10F側には工具の一部が配置されて、工具を主軸装置1に装着するための配置孔10Tが形成されている。
【0011】
前方側軸受10Aは、軸方向について、電動モータ40よりも前方側の位置に配置されているアンギュラ型の転がり軸受である。前方側軸受10Aは、軸方向に間隔を開けて2つ配置されている。前方側軸受10Aは、軸方向と直交する主軸10の径方向について、ハウジング3と主軸10との間に介在する。後方側軸受10Bは、軸方向について、電動モータ40よりも後方側の位置に配置されているコロ型の転がり軸受である。後方側軸受10Bは、主軸10の径方向について、ハウジング3と主軸10との間に介在する。
【0012】
電動モータ40は、ロータ41と、ステータ42とを備える。電動モータ40は、ハウジング3内における主軸10の外周に配置されている。ロータ41は、ロータスリーブ44を介して主軸10と一体回転可能に構成されている。制御装置90の制御によってステータ42に電力が供給されることでロータ41が回転することで、主軸10が回転する。
【0013】
プッシュロッド30は、主軸10内である主軸内孔10Hに配置されている。プッシュロッド30は、前端部10F側に位置する一端部30Fと、後端部10R側に位置する他端部30Rとを有する。プッシュロッド30は、後述する移動制御機構15の動作によって主軸10の軸方向に沿って移動可能である。プッシュロッド30は、主軸10の回転動作と連動するように主軸10に連結されている。
【0014】
コレット32は、プッシュロッド30の一端部30Fに取り付けられている。コレット32は、プッシュロッド30に連動して、工具を把持するクランプ状態と、工具の把持が解除されたアンクランプ状態とのいずれかの状態をとる。具体的には、コレット32は、プッシュロッド30が移動制御機構15によって前方側に押し出されて、一端部30F側に移動した場合にはアンクランプ状態となる。一方で、コレット32は、プッシュロッド30が移動制御機構15から離間して皿ばね33の付勢力によって他端部30R側に移動した場合にはクランプ状態となる。
【0015】
皿ばね33は、主軸10内である主軸内孔10Hにおいて、主軸10の内周面とプッシュロッド30との間に配置されている。皿ばね33は、主軸10の軸方向において、主軸10の内周に配置されたカラー34と、プッシュロッド30の他端部30Rに形成された大径部30Dとの間に配置されている。詳細には、皿ばね33は、プッシュロッド30の外周に挿通されて配置されている。皿ばね33は、軸方向に沿って複数設けられている。皿ばね33の後方側の端部は、プッシュロッド30の他端部30R側の大径部30Dに軸方向に対向した状態で当接している。これにより、皿ばね33は、プッシュロッド30に対して前端部10F側から後端部10R側に向かう付勢力を与える。この付勢力によって、移動制御機構15が作動していない場合には、コレット32が常時クランプ状態となる。なお、皿ばね33には、摩擦力を低減するためにグリースが塗布されていてもよい。
【0016】
移動制御機構15は、軸方向について、プッシュロッド30よりも後方側に配置されている。移動制御機構15は、軸方向に移動可能に構成されたピストン18を有する。ピストン18は、プッシュロッド30の他端部30Rと軸方向に対向する。ピストン18が前方側に移動することで、皿ばね33の付勢力に抗してプッシュロッド30がピストン18によって前方側に向かって移動する。これにより、コレット32はアンクランプ状態となる。
【0017】
制御装置90は、CPUと記憶装置などによって構成され、主軸装置1の動作を制御する。例えば、制御装置90は、主軸装置1の電動モータ40の動作を制御する。
【0018】
主軸装置1は、さらに、潤滑油供給装置91と、エア供給装置92と、油圧装置93と、クーラント供給装置95とを備える。これらの装置91,92,93,95は、制御装置90によって動作が制御される。潤滑油供給装置91は、後方側軸受10Bおよび皿ばね33に潤滑油を供給する装置である。潤滑油供給装置91は、潤滑油タンクを有し、高圧エアと潤滑油とを下流側に送り、ハウジング3に取り付けられたパイプの先端部81を介してミスト状の潤滑油をハウジング3内の流路に供給する。ハウジング3内に供給された潤滑油は、後方側軸受10Bの潤滑および冷却と、皿ばね33の潤滑および冷却に用いられる。潤滑油供給装置91は、制御装置90がON状態のときに常時作動している。つまり、潤滑油供給装置91は、クランプ状態とアンクランプ状態にかかわらず潤滑油を下流側に向けて供給している。エア供給装置92は、例えばコンプレッサーであり、移動制御機構15のピストン18に設けられた流路に加圧されたエアを送り込む。このピストン18に設けられた流路は、エア流路120の一部を構成、エアはエア流路120を流通して前方側に位置する配置孔10Tに吹き付けられる。これにより、配置孔10Tに付着した切屑が除去される。油圧装置93は、ピストン18を軸方向に沿って移動させるための作動油をシリンダ室18aに供給したりシリンダ室18aから排出したりする。油圧装置93は、ピストン18を前方側に移動させて、プッシュロッド30を前方側に押し進める場合(アンクランプ状態にする場合)には、シリンダ室18aの第1ポート83に作動油を供給する。一方で、油圧装置93は、ピストン18を後方側に移動させて、プッシュロッド30から離間させる場合(クランプ状態にする場合)には、シリンダ室18aの第2ポート84に作動油を供給する。クーラント供給装置95は、移動制御機構15の後端側の開口部85を介して軸方向に延びるクーラント流路130にクーラントを供給する。クーラントは、クーラント流路130を流れて、一端部30F,工具内を経由して、工具の刃先である加工ポイントに供給される。
【0019】
図2は、図1の領域R2の拡大図である。図3は、図2のIII-III線断面図である。図1図3を用いて、主軸装置1が有する各種流路に関連する構成と、後方側軸受10B周辺の部材構成について説明する。まずは、後方側軸受10B周辺の部材構成について説明する。図2に示すように、ハウジング3は、後方側軸受10Bを収容する筒状の軸受ハウジング12を有する。また、主軸装置1は、エンコーダ45と、軸受押え16と、ロータリージョイント44と、ナット43とを備える。エンコーダ45は、主軸10の回転角度位置や回転速度を検出し、制御装置90に検出信号を送信する。制御装置90は、例えば、エンコーダ45からの回転角度位置に関する検出信号を用いて、電動モータ40を制御することで、主軸10の停止位置を制御できる。軸受押え16は、主軸10の外周にねじ結合されて後方側軸受10Bの後方側に配置され、後方側軸受10Bの端面に当接して後方側軸受10Bの軸方向の動きを規制する。ロータリージョイント44は、主軸10の後方側端部に取り付けられた回転ジョイント46と、移動制御機構15に取り付けられた固定ジョイント47とを有する。回転ジョイント46と固定ジョイント47同士が端面で滑り接触する。回転ジョイント46と固定ジョイント47には、クーラント供給装置95(図1)から供給されるクーラントが流通する流路を有する。ナット43は、軸受押え16と主軸10の間に配置され、軸受押え16が緩まないようにロックする。
【0020】
プッシュロッド30は、外周側プッシュロッド30Aと、内周側プッシュロッド30Bとによって構成される。外周側プッシュロッド30Aの他端部30R側に形成された段差部は、皿ばね33と当接する。外周側プッシュロッド30Aは、筒状の部材であり、軸方向に貫通する第1ロッド孔31Hを有する。内周側プッシュロッド30Bは、筒状の部材であり、第1ロッド孔31H内に配置され、軸方向に貫通する第2ロッド孔32Hを有する。
【0021】
次に、主軸装置1が有する各種流路に関連する構成について図1図3を用いて説明する。なお、各種流路について「上流」、「下流」の基準は、各装置91,92,93,95(図1)から供給される流体の流れ方向を基準とする。主軸装置1は、後方側軸受10Bおよび皿ばね33に潤滑油を供給する潤滑油流路110(図2)と、コレット32によって把持された工具によって加工する加工ポイントにクーラントを供給するクーラント流路130(図1図2)と、配置孔10Tに吹き付けるエアを配置孔10Tに供給するエア流路120(図1図2)とを備える。
【0022】
クーラント流路130は、移動制御機構15に形成された第1クーラント流路19(図1)と固定ジョイント47に形成された第4クーラント流路47a(図1)と回転ジョイント46に形成された第2クーラント流路48(図2)と内周側プッシュロッド30Bに形成された第3クーラント流路38(図1図2)とを有する。第3クーラント流路38は、内周側プッシュロッド30Bの第2ロッド孔32Hによって形成されている。クーラント供給装置95から供給されたクーラントは、第1クーラント流路19、第4クーラント流路47a、第2クーラント流路48、第3クーラント流路38の順に流通して、内周側プッシュロッド30Bの一端部30F、工具内を経由して、前端部10F側に位置し、工具の刃先である加工ポイントに供給される。このように、クーラント流路130は、軸方向に沿って形成された流路である。クーラント供給装置95は、制御装置90からの指令に応じて、クランプ状態において主軸10が回転している間の期間においてクーラントをクーラント流路130に供給する。
【0023】
エア流路120は、ピストン18に形成された第1エア流路55(図1図2)と、プッシュロッド30に形成された第2エア流路35(図2)と、主軸10とプッシュロッド30との間に形成された第3エア流路125(図1)と、主軸10内に形成された第4エア流路155(図1)および第5エア流路156(図1)とを有する。図2に示すように、第1エア流路55の下流端は、ピストン18のうち軸方向においてプッシュロッド30と対向する位置に形成された開口である。アンクランプ状態において、ピストン18とプッシュロッド30の端面同士が当接した場合に、ピストン18の第1エア流路55は、プッシュロッド30の第2エア流路35に接続される。図2に示すように、第2エア流路35は、外周側プッシュロッド30Aに形成された上流側流路35Aと、上流側流路35Aに接続された下流側流路35Bとを有する。下流側流路35Bは、外周側プッシュロッド30Aの内周面と内周側プッシュロッド30Bの外周面との隙間によって形成されている。図1に示すように、第3エア流路125は、第2エア流路35を流通した加圧されたエアが流通する。第3エア流路125は、主軸10とプッシュロッド30との隙間によって形成されている。第4エア流路155は、主軸10の前端部10F内において軸線AX周りに間隔を開けて複数形成されている。第4エア流路155の上流端は、第3エア流路125に接続され、第4エア流路155の下流端は、第5エア流路156に連通し、第5エア流路156の下流端は、配置孔10Tに向かって開口している。第4エア流路155を経て、第5エア流路156から配置孔10T内にエアが吹き付けられる。図1に示すエア供給装置92は、制御装置90の指令によって、ピストン18によってプッシュロッド30が前方側に移動したアンクランプ状態の時に、加圧されたエアをエア流路120に供給する。以上のように、エア流路120は、少なくとも外周側プッシュロッド30Aの内周面と、内周側プッシュロッド30Bの外周面との隙間によって形成されている。
【0024】
図2に示すように、潤滑油流路110は、供給流路61と、連通流路62と、主軸内孔10Hのうち皿ばね33が配置されたばね室10HRと、排出流路67とを有する。供給流路61は、後方側軸受10Bに向けてミスト状の潤滑油を吹き付ける流路である。潤滑油が後方側軸受10Bに吹き付けられることで、後方側軸受10Bの潤滑と冷却が行われる。供給流路61は、ハウジング3のうち軸受ハウジング12内に形成されている。詳細には、供給流路61は、軸受ハウジング12のうち主軸10の軸線AXよりも上側の位置に形成されている。供給流路61は、先端部81に接続された上流端61Aと、後方側軸受10Bに向かって開口する下流端としての供給開口部61Bとを有する。供給開口部61Bは途中で2つに分岐した流路である。2つの供給開口部61Bは、後方側軸受10Bのうちで鉛直方向において最も高い位置にある頂部(後方側軸受10Bは主軸10の回りに360度配置され、主軸10よりも上側に位置する部分)が位置する領域TRと、軸方向において対向する。供給開口部61Bは、供給流路61の上流側の流路よりも流路面積が小さい。これにより、供給開口部61B内の圧力が高くなり、供給開口部61Bからミスト状の潤滑油が後方側軸受10Bに向けて吹き付けられる。
【0025】
連通流路62は、後方側軸受10Bに吹き付けられ、ミスト状から液状となった潤滑油を皿ばね33に供給する流路である。連通流路62は、軸方向について、後方側軸受10Bに対して供給開口部61Bが位置する側と同じ側、すなわち後方側軸受10Bよりも後方側に形成されている。連通流路62は、供給開口部61Bと後方側軸受10Bとの間の空間と、皿ばね33が配置されたばね室10HRとを連通させる。
【0026】
連通流路62は、図3に示すように、軸受押え16に形成された第1連通流路62Aと、主軸10に形成された出口流路としての第2連通流路62Bとを有する。第1連通流路62Aは、軸受押え16を軸方向と直交する径方向に貫通する貫通孔である。第2連通流路62Bは、主軸10を軸方向と直交する径方向に貫通する貫通孔であり、第1連通流路62Aと径方向に延びる流路を形成するように同位置に形成されている。つまり、主軸10を定位置に回転を停止した状態(定位置停止状態)において、第1連通流路62Aは、軸受押え16のうちで、最も高くに位置する部分に形成されている。第1連通流路62Aは、潤滑油を受け入れる一端部としての入口開口部64を有する。供給流路61によって後方側軸受10Bに吹き付けられた潤滑油を、入口開口部64を介して効率良く連通流路62に流入させることができる。特に、主軸10を定位置に回転停止したときは、第1連通流路62Aおよび第2連通流路62Bは皿ばねよりも上方にあり、供給開口部61Bの直下に位置するので、潤滑油を効率良く入口開口部64に流入させることができる。また入口開口部64の流路断面積(開口面積)は、出口流路としての第2連通流路62Bの流路断面積よりも大きい。これにより、入口開口部64の容積を増大できるので、入口開口部64により多くの量の潤滑油を流入させることがきる。
【0027】
連通流路62の第2連通流路62Bは、入口開口部64と連通し、入口開口部64を含む第1連通流路62Aを流通した潤滑油が流通する。第2連通流路62Bは、主軸10を軸方向と直交する径方向に貫通する貫通孔である。つまり、第2連通流路62Bは、主軸10の軸受押さえ16が位置する外周側とプッシュロッド30が位置する内周側とを連通させる。第2連通流路62Bは、主軸10内である配置孔10Tのうちで皿ばね33が配置された配置領域であるばね室10HRに開口する他端部65を有する。他端部65は、連通流路62の下流端である。第2連通流路62Bは、工具交換時のアンクランプ状態である主軸10の定位置停止状態において、主軸10のうちで最も高くに位置する部分に形成されている。なお、主軸10の定位置停止状態は、制御装置90によって制御される。主軸10の定位置停止状態において、第1連通流路62Aおよび第2連通流路62Bは、供給開口部61Bと径方向に直下に対向する。
【0028】
ばね室10HRは、主軸内孔10Hのうち皿ばね33が配置された領域である。連通流路62を流通した潤滑油は、ばね室10HRに流入することで皿ばね33に供給される。これにより、皿ばね33の潤滑と冷却が行われる。図2に示すように、ばね室10HRは、主軸10の内周面と外周側プッシュロッド30Aによって区画されている。ばね室10HRは、主軸10の軸方向において、主軸10の内周に配置されたカラー34とプッシュロッド30に形成された大径部30Dによって区画されている。ばね室10HRは、プッシュロッド30の軸方向に移動に伴う皿ばね33の伸縮に応じて容積が変化する。ばね室10HRの容積は、クランプ状態の特に最も大きくなり、アンクランプ状態のときに最も小さくなる。
【0029】
図2に示すように、排出流路67は、皿ばね33に供給された潤滑油をばね室10HRの外部に排出する流路である。排出流路67は、主軸10を軸方向と直交する径方向に貫通する貫通孔である。排出流路67は、主軸10の定位置停止状態において、主軸10のうちで最も低くに位置する部分に形成されている。これにより、皿ばね33に供給された潤滑油を円滑に外部に排出できる。また排出流路67、詳細には排出流路67の下流端は、軸方向について、電動モータ40が位置する範囲から外れた位置に形成されている。本実施形態では、排出流路67は、軸方向について電動モータ40よりも後方側に位置する。これにより、排出流路67を介して外部に排出された潤滑油が電動モータ40に付着する可能性を低減できるので、電動モータ40が故障する可能性を低減できる。
【0030】
上記第1実施形態によれば、供給流路61によって皿ばね33よりも先に後方側軸受10Bに潤滑油を吹き付けることで、後方側軸受10Bの冷却を十分に行うと共に後方側軸受10Bの潤滑を行うことができる。また、後方側軸受10Bに吹き付けられた潤滑油はミスト状から液状となり、液状の潤滑油が連通流路62を流通して皿ばね33に到達することで、皿ばね33の冷却と潤滑を行うことができる。皿ばね33の潤滑を行うことで、皿ばね33の摩擦による損傷を低減できるので、皿ばね33の寿命を長くすることができる。これにより、皿ばね33のプッシュロッド30への付勢力が低下することを抑制できるので、コレット32による工具のクランプ力の急激な低下を抑制できる。クランプ力の急激な低下を抑制することで、被加工物の加工精度の低下を抑制できる。
【0031】
また上記第1実施形態によれば、アンクランプ状態からクランプ状態に切り替わる過程において、ばね室10HRの容積が大きくなるために、ばね室10HRの圧力が連通流路62の入口開口部64側の圧力よりも低くなる。この圧力差を駆動力としてアンクランプ状態のときに入口開口部64に溜まった潤滑油を、連通流路62を介してばね室10HRに円滑に供給できる。また上記実施形態によれば、クランプ状態からアンクランプ状態に切り替わる過程において、ばね室10HRの容積は小さくなるために、ばね室10HRの圧力が排出流路67の下流側部分の圧力よりも高くなる。この圧力差を駆動力としてクランプ状態からアンクランプ状態に切り替わる過程において、排出流路67を介してばね室10HRの潤滑油を円滑に排出できる。これにより、新たな潤滑油が連通流路62を介してばね室10HRに円滑に供給される。
【0032】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態の主軸装置11を説明するための図である。図4は、図2に相当する図である。第2実施形態の主軸装置11と、第1実施形態の主軸装置1との異なる点は、新たにプレート部材50を有する点と、潤滑油流路210が有する連通流路162および排出流路167の形成位置である。その他の構成については、上記第1実施形態と同一の構成であるため、同一の構成については同一符号を付すと共に説明を適宜省略する。
【0033】
プレート部材50は、軸方向について、後方側軸受10Bを挟んで供給開口部61Bとは反対側に位置する。プレート部材50は、後方側軸受10Bを挟んで軸方向において供給開口部61Bと対向する。供給開口部61Bから後方側軸受10Bに吹き付けられたミスト状の潤滑油は、プレート部材50に当たることで液状となり下方へ滴り落ちる。つまり、プレート部材50によって、ミスト状の潤滑油が後方側軸受10Bの周囲に飛び散ることを抑制することで、後述する連通流路162に効率良く潤滑油を流入させることができる。
【0034】
連通流路162は、軸受押え16には形成されておらず、主軸10に形成されている。連通流路162は、主軸10を軸方向と直交する径方向に貫通する貫通孔である。連通流路162は、後方側軸受10Bに供給された潤滑油を受け入れる一端部としての入口開口部164と、入口開口部164と連通し、ばね室10HRに開口する他端部165を有する出口流路162Bとを有する。入口開口部164の流路断面積は、出口流路162Bの流路断面積よりも大きい。また、入口開口部164は、主軸10の外周面のうちで、主軸10の定位置停止状態において、鉛直上方向を向いて開口する位置に形成されている。入口開口部164は、軸方向について、プレート部材50と後方側軸受10Bとの間に位置する。これにより、主軸10の定位置停止状態において、プレート部材50に当たって滴り落ちた潤滑油のより多くを入口開口部164に流入させることができる。
【0035】
排出流路167は、皿ばね33に供給された潤滑油をばね室10HRの外部に排出する流路である。排出流路167は、外周側プッシュロッド30Aに形成されている。詳細には、排出流路167は、外周側プッシュロッド30Aのうち、皿ばね33の後方側が当接する後方側ロッド30ARに形成されている。排出流路167は、後方側ロッド30ARを軸方向に貫通する貫通孔である。また排出流路167は、後方側ロッド30ARのうちで、主軸10の定位置停止状態において、最も低い位置にある部分に形成されている。排出流路167は、後方側ロッド30ARのうちで、第2エア流路35が有する上流側流路35Aが形成された部分とは異なる部分に形成されている。排出流路167の下流端は、軸方向について、電動モータ40が位置する範囲から外れた位置に形成されている。
【0036】
上記第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の構成を有する点において同様の効果を奏する。また、上記第2実施形態によれば、排出流路167が電動モータ40から遠ざかる方向である後方側に延びることから、排出流路167の潤滑油が電動モータ40に付着する可能性をより低減できる。
【0037】
C.他の実施形態:
C-1.他の実施形態1:
図5は、他の実施形態1を説明するための第1図である。図6は、他の実施形態1を説明するための第2図である。図5図3に相当する図であり、図6は、図2に相当する図である。上記第1,2実施形態において、連通流路62,162と、排出流路67,167の少なくともいずれか一方にはチェック弁を設けてもよい。以下、図5および図6を用いて、第1実施形態の主軸装置1を例に他の実施形態1を説明する。
【0038】
図5に示すように、連通流路62のうち第2連通流路62Bには第1チェック弁71が配置される。第1チェック弁71は、皿ばね33に向かう供給方向、すなわち上流側から下流側へと向かう方向への潤滑油の流れを許容し、供給方向とは反対の方向への潤滑油の流れを阻止する。こうすることで、皿ばね33が位置するばね室10HRに供給された潤滑油が、遠心力などに起因して連通流路62に逆流して入口開口部64から供給流路61側へと排出される可能性を低減できる。これにより、皿ばね33が配置されたばね室10HR内に潤滑油を留まらせることができるので、皿ばね33の冷却および潤滑をより一層促進できる。
【0039】
図6に示すように、排出流路67には第2チェック弁72が配置される。第2チェック弁72は、外部に向かう排出方向、すなわち上流側から下流側へと向かう方向への潤滑油の流れを許容し、排出方向とは反対の方向への潤滑油の流れを阻止する。こうすることで、排出流路67を逆流する潤滑油の流れを阻止できる。これにより、連通流路62を介して皿ばね33が配置されたばね室10HR内に新たな潤滑油を供給できる。
【0040】
上記他の実施形態1において、第1チェック弁71は、アンクランプ状態からクランプ状態へと切り替わる際に、開弁するように構成されていることが好ましい。例えば、第1チェック弁71のクラッキング圧力は、アンクランプ状態からクランプ状態へと切り替わる際に生じる第1チェック弁71を挟む上流側と下流側との圧力差以下に設定されている。アンクランプ状態からクランプ状態へと切り替わる際には、プッシュロッド30が後方側に移動することでばね室10HRの容積が大きくなる。これにより、ばね室10HRの圧力が低下する。例えば、ばね室10HRの圧力は、負圧となる。これにより、第1チェック弁71を挟む上流側(外気と通じる側)と下流側(ばね室10HRと通じる側)との圧力差が、第1チェック弁71のクラッキング圧力以上となる。第1チェック弁71が上記のごとく動作することで、アンクランプ状態のときに入口開口部64に溜まっていた潤滑油を、アンクランプ状態からクランプ状態へと切り替わる際に、連通流路62を介してばね室10HRに吸い込むことができる。
【0041】
また他の実施形態1において、第2チェック弁72は、クランプ状態からアンクランプ状態へと切り替わる際に、開弁するように構成されていることが好ましい。例えば、第2チェック弁72のクラッキング圧力は、クランプ状態からアンクランプ状態へと切り替わる際に生じる第2チェック弁72を挟む上流側と下流側との圧力差以下に設定されている。クランプ状態からアンクランプ状態へと切り替わる際には、プッシュロッド30が前方側に移動することでばね室10HRの容積が小さくなる。これにより、ばね室10HRの圧力が上昇し、第2チェック弁72よりも下流側の圧力よりも高くなる。これにより、第2チェック弁72を挟む上流側(ばね室10HRと通じる側)と下流側(外気と通じる側)との圧力差が、第2チェック弁72のクラッキング圧力以上となる。すなわち、クランプ状態のときには、第2チェック弁72を挟む上流側と下流側との圧力差がクラッキング圧力未満であることから、排出流路67を介して潤滑油の外部への排出が抑制される。一方で、クランプ状態のときには主軸10は回転動作によって被加工物の加工を行っている。よって、クランプ状態において主軸10が回転動作しているときには、主軸10の回転動作および回転動作によって生じる遠心力によって、主軸10に形成された連通流路62を介した潤滑油の皿ばね33への供給がほとんどできない。よって、クランプ状態のときに第2チェック弁72を挟む上流側と下流側との圧力差がクラッキング圧力未満となる第2チェック弁72を用いることで、排出流路67を介して潤滑油の外部への排出を抑制できる。これにより、ばね室10HRに滞留する潤滑油の量が極端に減少することを抑制できる。
【0042】
C-2.他の実施形態2:
上記第1実施形態から他の実施形態1を組み合わせて主軸装置1,11に用いてもよい。例えば、主軸装置1は、連通流路62、162と、排出流路67,167とを有していてもよい。
【0043】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1,11…主軸装置、3…ハウジング、10…主軸、10A…前方側軸受、10B…後方側軸受、10F…前端部、10H…主軸内孔、10HR…ばね室、10R…後端部、10T…配置孔、12…軸受ハウジング、15…移動制御機構、16…軸受押え、18…ピストン、18a…シリンダ室、19…第1クーラント流路、30…プッシュロッド、30A…外周側プッシュロッド、30AR…後方側ロッド、30B…内周側プッシュロッド、30D…大径部、30F…一端部、30R…他端部、31H…第1ロッド孔、32…コレット、32H…第2ロッド孔、34…カラー、35…第2エア流路、35A…上流側流路、35B…下流側流路、38…第3クーラント流路、40…電動モータ、41…ロータ、42…ステータ、43…ナット、44…ロータリージョイント、45…エンコーダ、46…回転ジョイント、47…固定ジョイント、48…第2クーラント流路、50…プレート部材、55…第1エア流路、61…供給流路、61A…上流端、61B…供給開口部、62…連通流路、62A…第1連通流路、62B…第2連通流路、64…入口開口部、65…他端部、67…排出流路、71…第1チェック弁、72…第2チェック弁、81…先端部、83…第1ポート、84…第2ポート、85…開口部、90…制御装置、91…潤滑油供給装置、92…エア供給装置、93…油圧装置、95…クーラント供給装置、110…潤滑油流路、120…エア流路、125…第3エア流路、130…クーラント流路、155…第4エア流路、156…第5エア流路、164…連通流路、162B…出口流路、164…入口開口部、165…他端部、167…排出流路、210…潤滑油流路、AX…軸線、TR…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6