(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183778
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電子部品包装用カバーテープおよび包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 73/02 20060101AFI20221206BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B65D73/02 A
B32B27/28 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091263
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】長塚 保則
(72)【発明者】
【氏名】太田 友里恵
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 宏徳
(72)【発明者】
【氏名】長尾 将弘
【テーマコード(参考)】
3E067
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB41
3E067AC04
3E067BA26A
3E067BA33A
3E067BA37A
3E067BB14A
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3E067CA24
3E067EA06
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3E067FA01
4F100AK01A
4F100AK42A
4F100AK68B
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4F100BA07
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4F100GB15
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4F100JL12B
4F100JN30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電子部品の視認性に優れた電子部品包装用カバーテープを提供する。
【解決手段】樹脂層2と、上記樹脂層の一方の面側に配置されたヒートシール層3と、を有する電子部品包装用カバーテープ1であって、上記ヒートシール層は、エチレン-酢酸ビニル系共重合体を含み、示差走査熱量計(DSC)により測定される相転移温度が50℃以上である、電子部品包装用カバーテープである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、
前記樹脂層の一方の面側に配置されたヒートシール層と、を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記ヒートシール層は、エチレン-酢酸ビニル系共重合体を含み、示差走査熱量計(DSC)により測定される相転移温度が50℃以上である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項2】
前記電子部品包装用カバーテープの前記ヒートシール層側の表面の算術平均粗さRaが0.3μm以上1.5μm以下である、請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項3】
ヘーズ値が55%以下である、請求項1または請求項2に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項4】
電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、
前記収納部に収納された電子部品と、
前記収納部を覆うように配置された、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の電子部品包装用カバーテープと、
を備える、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品包装用カバーテープおよびそれを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC、抵抗、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、圧電素子レジスタ等の電子部品は、テーピング包装され、表面実装に供せられる。テーピング包装においては、電子部品を収納する収納部を複数有するキャリアテープに電子部品を収納した後に、キャリアテープをカバーテープでヒートシールし、電子部品を保管および搬送するための包装体を得る。電子部品の実装時には、カバーテープをキャリアテープから剥離し、電子部品を自動的に取り出して基板に表面実装する。なお、カバーテープはトップテープとも称される。
【0003】
テーピング包装体は未開封の状態で、カバーテープの上から、カバーテープ越しに収納物である電子部品を目視又は機械で確認することが行われている。そのため、カバーテープには優れた視認性が必要とされており、視認性の指標としてヘーズ値に着目した電子部品包装用カバーテープが種々提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-155090号公報
【特許文献2】特開2005-096852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に押出ラミネート法を用いてカバーテープを製造する場合、カバーテープの層間の密着性を得るために、ある程度の表面粗さを有する冷却ロールを使用する必要があることから、カバーテープのヒートシール層側の表面粗さをある程度大きくする必要がある。このため、ヘーズ値が高くなる傾向にある。
【0006】
また、ヒートシール層材料として、エチレン-酢酸ビニル系共重合体は、汎用性が高く、ヒートシール性が良好である等の理由により、好適に用いられている。しかしながら、エチレン-酢酸ビニル系共重合体は、他のヒートシール材料と比較してヘーズ値が高い傾向にある。
【0007】
したがって、上述した視認性の観点から、ヒートシール層材料としてエチレン-酢酸ビニル系共重合体を用いた場合でも、ヘーズ値を低くすることが求められている。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電子部品の視認性に優れた電子部品包装用カバーテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態は、樹脂層と、前記樹脂層の一方の面側に配置されたヒートシール層と、を有する電子部品包装用カバーテープであって、上記ヒートシール層は、エチレン-酢酸ビニル系共重合体を含み、示差走査熱量計(DSC)により測定される相転移温度が50℃以上である、電子部品包装用カバーテープである。
【0010】
本開示の一実施形態は、電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、上記収納部に収納された電子部品と、上記収納部を覆うように配置された、上述の電子部品包装用カバーテープと、を備える、包装体である。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、電子部品の視認性に優れた電子部品包装用カバーテープを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の電子部品包装用カバーテープを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示の包装体を例示する概略平面図および断面図である。
【
図3】本開示の電子部品包装用カバーテープを例示する概略断面図である。
【
図4】実施例におけるブロッキング評価方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0014】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0015】
以下、本開示の電子部品包装用カバーテープおよび包装体について、詳細に説明する。なお、本明細書において、「電子部品包装用カバーテープ」を単に「カバーテープ」と称する場合がある。
【0016】
A.電子部品包装用カバーテープ
本実施形態の電子部品包装用カバーテープは、樹脂層と、上記樹脂層の一方の面側に配置されたヒートシール層と、を有する電子部品包装用カバーテープであって、上記ヒートシール層はエチレン-酢酸ビニル系共重合体(以下、EVA樹脂とする場合がある。)を含み、上記ヒートシール層は、示差走査熱量計(DSC)により測定される相転移温度が50℃以上であることを特徴とする。
【0017】
本開示のカバーテープについて、図面を参照して説明する。
図1は本開示のカバーテープの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本開示のカバーテープ1は、樹脂層2と、樹脂層2の一方の面側に配置されたヒートシール層3とを有する。また、
図3に示すように、樹脂層2のヒートシール層3側の面とは反対の面側に、樹脂層2側から、基材層4、帯電防止層5がこの順に配置されていてもよい。本開示のカバーテープ1は、ヒートシール層3がEVA樹脂を含み、ヒートシール層3は、示差走査熱量計(DSC)により測定される相転移温度が50℃以上であることを特徴とする。
【0018】
図2(a)、(b)は本開示の電子部品包装用カバーテープを用いた包装体の一例を示す概略平面図および断面図であり、
図2(b)は
図2(a)のA-A線断面図である。
図2(a)、(b)に示すように、包装体10は、電子部品13を収納する複数の収納部12を有するキャリアテープ11と、収納部12に収納された電子部品13と、収納部12を覆うように配置されたカバーテープ1と、を備える。キャリアテープ11にはカバーテープ1がヒートシールされており、カバーテープ1のヒートシール層3の両端に所定の幅でライン状にヒートシール部3hが設けられている。また、包装体10において、キャリアテープ11は、送り穴14を有することができる。
【0019】
上記のように電子部品の視認性に優れた電子部品包装用カバーテープが求められており、ヘーズ値が視認性の指標として用いられている。押出ラミネート法を用いてカバーテープを製造する場合、カバーテープの層間の密着性を得るために、ある程度の表面粗さを有する冷却ロールを使用する必要がある。そのため、カバーテープのヒートシール層側の表面粗さが大きくなり、この大きな表面粗さ(特に、算術平均粗さRa)によりヘーズが高くなってしまう場合がある。
【0020】
一方、カバーテープに用いられるヒートシール層材料としては、ヒートシール性やコスト面等の観点から、EVA樹脂が用いられる場合が多い。しかしながら、EVA樹脂をヒートシール材料として使用したカバーテープでは、例えばポリエチレン等の他の樹脂材料をヒートシール材料として使用したカバーテープと比較し、ヘーズ値が高くなる傾向がある。
【0021】
EVA樹脂を用いてヘーズ値を小さくするためには、ヒートシール層の表面の算術平均粗さRaを小さくすることが考えられるが、例えばブロッキング等の観点からRaを小さくすることにも限界がある。
【0022】
そこで、本発明者らは、ヒートシール層に含まれるEVA樹脂のヘーズ値に着目し、鋭意検討した結果、EVA樹脂が含まれるヒートシール層の示差走査熱量計(DSC)により測定される相転移温度が比較的高い場合に、ヘーズ値が低く抑えられるという事実を新たに見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0023】
このように、示差走査熱量計(DSC)により測定される相転移温度が比較的高い場合は、EVA樹脂中のエチレン鎖がある程度配向されているため、相転移温度がある程度高くなっていることが想定される。
【0024】
そして、EVA樹脂中のエチレン鎖がランダムである領域は、入射された光を散乱させる効果があると考えられるため、このエチレン鎖をある程度配向させたEVA樹脂を用いることにより、ヒートシール層としてのヘーズ値を低く抑えられるものと想定される。
【0025】
以上の説明の通り、EVA樹脂を有するヒートシール層材料の示差走査熱量計(DSC)により測定される相転移温度が比較的高い温度、具体的には50℃以上であることで、良好なヘーズ値を得ることができ、電子部品の視認性に優れたカバーテープが得られるという効果を奏するものとなる。
【0026】
I.ヒートシール層
本開示におけるヒートシール層は、樹脂層の一方の面側に配置される層である。ヒートシール層は、本開示のカバーテープを用いて包装体を製造する際に、キャリアテープに対してヒートシールすることにより、カバーテープとキャリアテープとが接着される。本開示においてヒートシール層は、EVA樹脂を含み、示差走査熱量計(DSC)により測定される相転移温度が50℃以上であることを特徴とする。ヒートシール層の相転移温度は、好ましくは55℃以上である。一方、例えば、100℃以下であり、90℃以下であることが好ましい。
【0027】
なお、本開示において、示差走査熱量計(DSC)による測定において、1stスキャン(初回昇温時)における10℃/minの昇温速度での加熱時に、40℃~100℃の範囲内で、0.05mW/mg以上の強度を持つ吸熱ピークを、ヒートシール層の相転移温度と定義する。示差走査熱量計(DSC)としては、例えばNETZSCH社製のDSC204を用いることができる。
【0028】
(a)材料
ヒートシール層はEVA樹脂を含有する。ヒートシール層がEVA樹脂を含むことにより、キャリアテープに対するヒートシール性が良好になる。そのため、搬送、保管中等において意図しない剥がれの発生を抑制することができる。
【0029】
本開示においてEVA樹脂とは、少なくとも、エチレンモノマー単位と酢酸ビニルモノマー単位とを含む共重合体である。エチレンモノマー単位とは、エチレンモノマー由来の構成単位をいい、酢酸ビニルモノマー単位とは、酢酸ビニルモノマー由来の構成単位をいう。EVA樹脂中のエチレンの含有量は、特に限定されないが、60質量%以上98質量%以下にでき、70質量%以上97質量%以下であってもよい。EVA樹脂中の酢酸ビニルの含有量は、特に限定されないが、2質量%以上40質量%以下にでき、3質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0030】
EVA樹脂は、エチレンモノマー単位と酢酸ビニルモノマー単位の他に、第三のモノマー単位を含んでもよい。第三のモノマー単位は帯電防止性能を有する官能基を含んでいてもよい。
【0031】
ヒートシール層におけるEVA樹脂の含有量は、特に限定されないが、50質量%以上100質量%以下にでき、60質量%以上80質量%以下にできる。EVA樹脂の含有量を増やすとヒートシール性能が向上する。
【0032】
また、本開示に用いられるEVA樹脂を含むヒートシール材料としては、メルトマスフローレート(MFR)が、5g/10分以上であることが好ましく、20g/10分以上であることがより好ましい。一方、メルトマスフローレート(MFR)は、120g/10分以下であってもよく、80g/10分以下であってもよい。なお、本明細書におけるMFRは、JIS K7210により測定した、120℃、荷重2.16kgにおける値をいう。
【0033】
本開示におけるヒートシール層は、更にポリエチレン樹脂を含んでいてもよい。ポリエチレン樹脂を配合することで、良好なヒートシール性を保ちつつ、表面タック性を低くし、高湿熱環境下に置いた後の劣化を抑制することができる。
【0034】
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の種々のポリエチレンが挙げられるが、分散性の観点から優位であることから、低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.910~0.930未満)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、密度0.910~0.925)が好適に用いられる。
【0035】
また、本開示において、各種ポリエチレンの分類は、旧JIS K6748:1995
やJIS K6899-1:2000において定義されたものを指す。ヒートシール層におけるポリエチレン樹脂の含有量は、例えば0質量%以上50質量%以下であってもよく、20質量%以上40質量%以下であってもよい。ポリエチレンの含有量を増やすとヒートシール性能が低下するが、表面タック力が低くなる傾向がある。
【0036】
ヒートシール層には、必要に応じて、例えば、粘着付与剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、分散剤、充填剤、可塑剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0037】
(b)厚さ
ヒートシール層の厚さは、特に限定されず、例えば、1μm以上30μm以下、好ましくは、10μm以上20μm以下とすることができる。ヒートシール層の厚さが薄すぎると、シール性に劣る場合があり、また、均一な膜が得られない場合がある。ヒートシール層の厚さが厚すぎると、カバーテープの透明性が低下するおそれがあり、かつ、ヒートシール層単層での応力増加により、タックが悪化(増加)するおそれがある。
【0038】
(c)表面粗さ
カバーテープは、使用前の巻かれた状態において、ブロッキングが発生する場合がある。
本開示においては、カバーテープのヒートシール層側の表面の算術平均粗さRaを、例えば0.3μm以上とすることにより、ブロッキングを抑制することができる。カバーテープのヒートシール層側の表面の算術平均粗さRaは、0.5μm以上であることが好ましい。一方、カバーテープのヒートシール層側の表面の算術平均粗さRaは、例えば1.5μm以下であり、1.4μm以下であることが好ましい。ヘーズ値をより低減することができるためである。
算術平均粗さRaは、JIS B 0601-2001に基づいて、小型表面粗さ測定機 Surftest SJ-210(株式会社ミツトヨ製)を使用し、測定した値である。試験条件及び試験手順としては、後述する実施例に記載の条件を採用することができる。
【0039】
このように、ヒートシール層の相転移温度が50℃以上であり、かつ、ヒートシール層側の表面の算術平均粗さRaが0.3μm以上1.5μm以下であるカバーテープであれば、良好な視認性を保ちつつ、ブロッキングを抑制することが可能となる。
【0040】
また、本開示におけるカバーテープのヒートシール層側の表面の最大高さ粗さRzは、例えば3.6μm以上であり、4.0μm以上であることが好ましい。一方、例えば9.0μm以下であり、8.5μm以下であることが好ましい。
【0041】
本開示におけるカバーテープのヒートシール層側の表面の算術平均粗さRaおよび最大高さ粗さRzは、例えば、ヒートシール層を形成する際の押出ラミネートに使用する冷却ロールの表面粗さに影響される。
【0042】
ヒートシール層の形成に使用する冷却ロールの表面粗さとしては、算術平均粗さRaが、例えば2.0μm以下であり、1.5μm以下が好ましく、1.2μm以下が更に好ましい。また、算術平均粗さRaは、例えば0.3μm以上であり、0.4μm以上であってもよい。また、最大高さ粗さRzが、例えば14.0μm以下であり、10.0μm以下が好ましく、8.0μm以下が更に好ましい。また、最大高さ粗さRzは、例えば2.0μm以上であり、3.0μm以上であってもよい。
【0043】
(d)ヒートシール層形成方法
ヒートシール層の形成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、熱溶融させたフィルムの原材料を樹脂層にTダイ等で押出して、冷却ロールで樹脂層と圧着する方法(押出ラミネート法)が挙げられる。また、予め製造したフィルムを接着剤で樹脂層に貼り合せる方法も挙げられる。接着剤としては、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等を用いることができる。
【0044】
また、ヒートシール層の他の形成方法としては、例えば、熱可塑性樹脂、帯電防止剤及びその他に添加剤等を溶媒に分散または溶解したヒートシール層用組成物を用い、後述する樹脂層の基材層とは反対側に上記ヒートシール層用組成物を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。上記ヒートシール層用組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ロッドコ-ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の塗布法が挙げられる。
【0045】
相転移温度が50℃以上であるヒートシール層を得るためには、製膜後にエージングすることが好ましい。エージングすることによって、EVA樹脂の配向性が良好となり、DSCピークを高くすることができる。エージング条件としては、特に限定されないが、エージング温度が、例えば35℃以上であり、40℃以上が好ましい。一方、60℃以下であり、58℃以下が好ましい。また、エージング時間が、例えば24時間以上であり、48時間以上が好ましい。一方、例えば72時間以下である。
【0046】
また、50℃以上の相転移温度を有する、EVA樹脂を含むヒートシール層を得るための他の方法としては、押出ラミネート法において、従来の冷却ロール温度よりも高温に設定した冷却ロールを複数用いることで、冷却を徐々に行う方法が挙げられる。冷却を徐々に行うことで、急冷する場合と比較し、EVA樹脂中のエチレン鎖の配向性が良好となる。
【0047】
II.樹脂層
本開示のカバーテープは、樹脂層を含有する。樹脂層の一方の面側にはヒートシール層が配置される。樹脂層は、後述する基材層とヒートシール層との間や、後述する帯電防止層とヒートシール層との間に配置されることが好ましい。この場合、樹脂層は中間層として機能し、基材層や帯電防止層とヒートシール層との密着性を向上させることができる。また、樹脂層により、本開示のカバーテープをキャリアテープにヒートシールする際に、クッション性を向上させることができるために、より均一にヒートシール層に熱を与えることができる。
【0048】
樹脂層に用いられる樹脂材料としては、ヒートシール層や後述する基材層の材料等に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン、およびポリエステル等が挙げられる。
【0049】
樹脂層の厚さは、例えば、5μm以上50μm以下とすることができる。樹脂層としては、フィルムを用いることができる。この場合、基材層および樹脂層の積層方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、熱溶融させたフィルムの原材料を基材層にTダイ等で押出しして、ラミロール(冷却ロール)で基材層と圧着して積層体を得る方法(押出ラミネート法)等が挙げられる。また、予め製造したフィルムを接着剤で基材層に貼り合せる方法も挙げられる。本開示においては、前者の方法が好ましい。
【0050】
樹脂層のヒートシール層側の面の粗さは、カバーテープのヒートシール層側の表面粗さにも影響する場合がある。そのため、樹脂層のヒートシール層側の面の粗さを調整することで、カバーテープのヒートシール層側の表面粗さを上述した範囲に調整することができる。
【0051】
具体的には、樹脂層のヒートシール層側の面の算術平均粗さRaが、例えば2.0μm以下であり、1.4μm以下が好ましい。一方、樹脂層のヒートシール層側の面の算術平均粗さRaが、例えば0.2μm以上であり、0.25μm以上が好ましい。
【0052】
また、樹脂層のヒートシール層側の面の最大高さ粗さRzが、例えば14.0μm以下であり、10.0μm以下が好ましい。一方、樹脂層のヒートシール層側の面の最大高さ粗さRzが、例えば1.5μm以上であり、3.0μm以上が好ましい。
【0053】
樹脂層の粗さは、樹脂層を形成する際の押出ラミネートに使用する冷却ロールの表面粗さが反映される。樹脂層の形成に使用する冷却ロールの表面粗さとしては、算術平均粗さRaが、例えば2.0μm以下であり、1.5μm以下が好ましい。また、算術平均粗さRaは、例えば0.2μm以上であり、0.25μm以上が好ましい。また、最大高さ粗さRzが、例えば14.0μm以下であり、10.0μm以下が好ましい。また、最大高さ粗さRzは、例えば1.0μm以上であり、3.0μm以上が好ましい。
【0054】
III.カバーテープ
(1)ヘーズ値
本開示におけるカバーテープは、上述の各層を積層してなるカバーテープにおけるヘーズ値は、例えば60%以下であり、55%以下であることが好ましく、特には50%以下であることが好ましい。
【0055】
(2)全光線透過率
本開示におけるカバーテープは、上述の各層を積層してなるカバーテープにおける全光線透過率が80%以上であることが好ましく、特には85%以上であることが好ましい。
【0056】
本開示において、全光線透過率およびヘーズ値は、それぞれ、JIS-K-7361およびJIS-K-7136に準拠して、ヘーズメーターNDH 7000(日本電色工業製)で測定した値である。このような光学的特性を有するものであれば、より視認性の良いカバーテープとなる。
【0057】
(3)幅及び長さ
本開示のカバーテープの幅および長さは、キャリアテープの幅および長さに応じて適宜設定することができる。例えば、カバーテープの幅は1~100mm程度であり、5.25mm~5.5mmであってもよい。また、長さは100~10000m程度である。本開示のカバーテープは、使用前(キャリアテープにヒートシールする前)に、通常、巻かれた状態で保管される。
【0058】
IV.その他構成
(1)基材層
本開示のカバーテープは、基材層を含んでもよい。基材層は、樹脂層(中間層)、ヒートシール層や後述する帯電防止層を支持する層である。基材層としては、保存および搬送時の外力に耐える機械的強度や、製造およびテーピング包装に耐える耐熱性等を有していれば、種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルが、コスト面および機械的強度が良いため、好ましく用いられる。
【0059】
また、基材層には、必要に応じて、例えば充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。基材層は、単層であってもよく、同種または異種の複数層の積層体であってもよい。また、基材層は、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。中でも、基材層は、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。
【0060】
基材層の厚さは、例えば、2.5μm以上300μm以下とすることができ、6μm以上100μm以下であってもよく、12μm以上50μm以下であってもよい。基材層の厚さが厚すぎると、テーピング包装時の剛性が強くなりハンドリング性とコスト面でも不利である。また、基材層の厚さが薄すぎると、機械的強度が不足する場合がある。
【0061】
(2)帯電防止層
本開示では、基材層の樹脂層(中間層)側の面とは反対の面側に、帯電防止層が配置されていることが好ましい。帯電防止層は、カバーテープが帯電することを防止するための層である。帯電防止層を有することによって、キャリアテープからカバーテープを剥離する際の剥離帯電によりチップの損傷や静電気による実装不良を抑制すること、他の面との接触による静電気の発生を防止することや、静電気が帯電してカバーテープの表面へのゴミやチリ等の付着を防止することができる。
【0062】
帯電防止層は、基材層に帯電防止剤をコーティングすることにより形成することができる。帯電防止剤としては、導電性高分子が挙げられ、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。中でも、導電性高分子は、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびポリピロールからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。湿度に依存しない十分な帯電防止性および透明性が得られるからである。ポリチオフェンとしては、例えば、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)が好ましく用いられる。ポリアニリンとしては、例えば、スルホン化ポリアニリンが好ましく用いられる。上記導電性高分子を含む帯電防止層であれば厚みが薄くとも、低い表面抵抗率を得ることができるために好ましい。帯電防止層の厚みが薄いことで、カバーテープの光の透過率を向上させることができる。また、帯電防止層の厚みが薄いことで、カバーテープの光の吸収率を低くすることができる。そのため、カバーテープの視認性を向上させることができる。
【0063】
また、本開示における帯電防止層は、導電性高分子以外の帯電防止剤を含むことにより帯電防止性を発現するものであっても良い。導電性高分子以外の帯電防止剤としては、例えば、高分子型界面活性剤、低分子型界面活性剤等が挙げられる。それぞれ、ノニオン、カチオン、アニオン型があり、この界面活性剤としては、帯電防止性能、塗工性の観点からはカチオン型高分子界面活性剤が好ましく、コスト、光学物性、インキ化の観点からはノニオン系低分子型界面活性剤が好ましい。カチオン型高分子界面活性剤としては、高分子型4級アンモニウム塩が好ましい。4級アンモニウム塩のカウンターアニオンは特に限定されず、例えば、ハロゲンイオン、硫化物イオン等が用いられ、アンモニウムの1~3位まではアリール基、アルキル基が入り、特に限定されないが、溶解性の観点から炭素数6個以下が好ましい。高分子型4級アンモニウム塩の主鎖にはアクリル主鎖が透明性、基材密着性の観点から好ましい。また、帯電防止層は、樹脂を含んでいてもよい。ノニオン系低分子型界面活性剤は特に限定されないが、親油基が10~20の脂肪酸エステル型、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル型、エステルエーテル型、アルカノールアミド型、アルキルグリコシド型、アルキルアミン型が好ましい。また、塗膜に光学特性、機械特性を付与するため、特にアクリル系樹脂バインダー、または、その架橋型バインダーを含んでもよい。
【0064】
帯電防止層の形成方法としては、例えば、帯電防止剤等を溶媒に分散または溶解した帯電防止層用組成物を用い、基材層の樹脂層(中間層)側とは反対の面側に上記帯電防止層用組成物を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。上記帯電防止層用組成物の塗布方法としては、例えば、エアドクター、ブレードコート、ナイフコート、ロッドコート、バーコート、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、スライドコート等の公知の塗布法が挙げられる。
【0065】
帯電防止層の厚さは、例えば、0.02μm以上3μm以下とすることができる。この程度の厚さの帯電防止層とすることにより、カバーテープに帯電防止性を付与することができる。
【0066】
(3)接着剤層
更に、基材層と樹脂層との間、又は樹脂層とヒートシール層との間に、接着剤層を有していてもよい。接着剤層を形成することで、基材層、樹脂層又はヒートシール層が接着力に乏しい場合であっても、基材層と樹脂層との間、又は樹脂層とヒートシール層との間の密着性を向上させることができる。接着剤層としては、基材層、樹脂層、ヒートシール層に用いられる材料に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。接着剤層は、例えば、オレフィン系、アクリル系、イソシアネート系、ウレタン系、エステル系の接着剤等のような接着性の良好な樹脂で形成することができる。
【0067】
また、接着剤の塗布は、特に限定されないが、グラビアコーティング、ロールコーティング等で行うことができる。
【0068】
接着剤層の厚さは、適宜調整することができるが、例えば、カバーテープに適度な剛性を与えるように、1~10g/m2であり、好ましくは、2~5g/m2である。1g/m2以上であれば、接着強度を均一にすることができる。
【0069】
B.包装体
本開示の包装体は、電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、上記収納部に収納された電子部品と、上記収納部を覆うように配置された、上述のカバーテープと、を備える。
【0070】
本開示のカバーテープを用いた包装体は、カバーテープ越しに電子部品を目視又は機械で確認する場合において、電子部品の視認性が向上したものとなる。
【0071】
図2(a)、(b)は本開示の包装体の一例を示す概略平面図および断面図である。なお、
図2(a)、(b)については、上記「A.電子部品包装用カバーテープ」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0072】
以下、本開示の包装体の各構成について説明する。
【0073】
1.カバーテープ
本開示におけるカバーテープについては、上記「A.電子部品包装用カバーテープ」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0074】
本開示の包装体においては、カバーテープのヒートシール層とキャリアテープとはヒートシール部で接着されている。ヒートシール部は、例えば、カバーテープのヒートシール層がキャリアテープと接する部分の一部に配置することができる。すなわち、ヒートシール層は、ヒートシール部と非ヒートシール部とを有していてもよい。これにより、キャリアテープに対するカバーテープの剥離性を良くすることができる。
【0075】
2.キャリアテープ
本開示におけるキャリアテープは、電子部品を収納する複数の収納部を有する部材である。
【0076】
キャリアテープとしては、複数の収納部を有するものであればよく、例えば、エンボスキャリアテープ(エンボステープとも称される。)、パンチキャリアテープ(パンチテープとも称される。)、プレスキャリアテープ(プレステープとも称される。)のいずれも用いることができる。中でも、コスト、成形性、寸法精度等の観点から、エンボスキャリアテープが好ましく用いられる。
【0077】
キャリアテープの材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ABS樹脂等のプラスチックや、紙等が挙げられる。本開示において紙とは、セルロースを主成分とするものをいい、更に樹脂成分が含まれていてもよい。
【0078】
キャリアテープの厚さは、キャリアテープの材質や、電子部品の厚さ等に応じて適宜選択される。例えば、キャリアテープの厚さは、30μm以上1500μm以下とすることができる。キャリアテープの厚さが厚すぎると、成形性が悪くなり、キャリアテープの厚さが薄すぎると、強度が不足する場合がある。
【0079】
キャリアテープは、複数の収納部を有する。収納部は、通常、キャリアテープの長手方向に所定の間隔をおいて配置される。収納部の大きさ、深さ、ピッチ等としては、電子部品の大きさ、厚さ等に応じて適宜調整される。
【0080】
収納部を有するキャリアテープの形成方法としては、一般的なキャリアテープの成形方法を適用することができ、キャリアテープの種類や材質等に応じて適宜選択される。例えば、プレス成形、真空成形、圧空成形、打抜加工、圧縮加工等が挙げられる。
【0081】
3.電子部品
本開示の包装体に用いられる電子部品としては、特に限定されず、例えば、IC、抵抗、コンデンサ、インダクタ、トランジスタ、ダイオード、LED(発光ダイオード)、液晶、圧電素子レジスタ、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、コネクタ、スイッチ、ボリュウム、リレー等が挙げられる。ICの形式についても、特に限定されない。
【0082】
4.包装体
本開示の包装体は、電子部品の保管および搬送のために用いられる。電子部品は、包装体の状態で保管および搬送され、実装に供される。実装時には、カバーテープを剥離し、キャリアテープの収納部に収納されている電子部品を取り出し、基板等へ実装される。
【0083】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0084】
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
基材層として、厚さ25μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学社製 FE2002、以下PETフィルム)を準備した。PETフィルムの一方の面側に帯電防止コート剤(導電性高分子としてPEDOTを含み、硬化剤としてアジリジンを含む、アラコートAS601D/CL910(質量比)=10/1 荒川化学社製、溶液固形分濃度1.5wt%)を塗布することによって、帯電防止層(厚さ0.05μm)を形成した。PETフィルムの帯電防止層が形成された面とは反対の面側に、ウレタン系アンカーコート剤(タケネートA-3075/タケラックA-3210(質量比)=3/1 酢酸エチルで5%希釈)を塗布し(ウェット厚さ1μm)、接着剤層を形成した。次いで、ポリエチレン樹脂(ノバテックLC600A、日本ポリエチレン社製)を溶融させて、接着剤層の形成されたPETフィルム表面に押出し、押出ラミネート法により、厚さ15μmの樹脂層(中間層)を形成した。次いで、CMPS V8021(EVA樹脂を含む 三井ダウポリケミカル株式会社製)およびエレストマスターHE-510(花王株式会社製)を150:3の配合比率(重量比)で含むヒートシール材料(相転移温度42℃)を溶融させて中間層表面に押出し、算術平均粗さRa0.41μmおよび最大高さ粗さRz2.90μmの表面を有する冷却ロールを用いた押出ラミネート法により製膜した。製膜後、40℃、48時間の条件でエージングを行い、厚さ15μmのヒートシール層を形成した。形成されたヒートシール層の中間層側とは反対側の表面の算術平均粗さRaおよび最大高さ粗さRzを表1に示す。これによって、帯電防止層/基材層/接着剤層/中間層/ヒートシール層からなる構成の実施例1のカバーテープを作製した。
【0085】
なお、算術平均粗さRaおよび最大高さ粗さRzは、JIS B 0601-2001に基づいて、小型表面粗さ測定機 Surftest SJ-210(株式会社ミツトヨ製)を使用し、下記試験条件及び試験手順で測定した値である。
【0086】
(試験条件)
・規格 JIS B 0601-2001
・曲線:R
・フィルタ:GAUSS
・λc/λs:2.5mm/8μm
・区間数:×5
・測定速度0.5mm/s
・合計5点を測定し、平均値を算出
【0087】
(カバーテープのヒートシール層側の表面粗さの試験手順)
上記で得られたカバーテープを50mm×20mmにカットしサンプルを得る。サンプルのヒートシール層側の面を上に向け、スライドガラス(76×26mm,0.8~1.0mmt)上に平坦になるように3MTM耐熱ポリイミドテープ 7414を用い、サンプル4隅、または4辺にポリイミドテープがスライドガラスからはみ出さないように貼り付けた。小型表面粗さ測定機、及びその走査プローブを、サンプル表面上に対し水平になるように設置した。上記の試験条件で、走査プローブをフィルム表面上で走査させ、粗さ曲線の算術平均粗さRaおよび最大高さ粗さRzの各値を取得した。
【0088】
(実施例2)
CMPS V8021(EVA樹脂を含む 三井ダウポリケミカル株式会社製)、スミカセン L705(住友化学株式会社製)およびESR-702(理研ビタミン株式会社製)を115:33:5の配合比率(重量比)で含むヒートシール材料(相転移温度48℃)を用い、算術平均粗さRa0.79μmおよび最大高さ粗さRz7.90μmの表面を有する冷却ロールを用いた押出ラミネート法により製膜し、製膜後に40℃、48時間の条件でエージングを行うことにより、表1に示す表面粗さのヒートシール層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0089】
(実施例3)
CMPS V70(EVA樹脂を含む 三井ダウポリケミカル株式会社製)、エレマスターHE-510(花王株式会社製)を150:3の配合比率(重量比)で含むヒートシール材料(相転移温度46℃)を用い、算術平均粗さRa1.20μmおよび最大高さ粗さRz9.70μmの表面を有する冷却ロールを用いた押出ラミネート法により製膜し、製膜後に40℃、48時間の条件でエージングを行うことにより、表1に示す表面粗さのヒートシール層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0090】
(実施例4)
CMPS V70(EVA樹脂を含む 三井ダウポリケミカル株式会社製)、ESR-702(理研ビタミン社製)を100:5の配合比率(重量比)で含むヒートシール材料(相転移温度45℃)を用い、算術平均粗さRa0.25μmおよび最大高さ粗さRz3.87μmの表面を有する冷却ロールを用いた押出ラミネート法により製膜し、製膜後に40℃、48時間の条件でエージングを行うことにより、表1に示す表面粗さのヒートシール層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0091】
(比較例1)
メルセンMX65D(東ソー株式会社製)を含むヒートシール材料(相転移温度45℃)を用い、算術平均粗さRa2.10μmおよび最大高さ粗さRz14.40μmの表面を有する冷却ロールを用いた押出ラミネート法により製膜し、製膜後のエージングを行わないで、表1に示す表面粗さのヒートシール層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0092】
(比較例2)
CMPS V8021(EVA樹脂を含む 三井ダウポリケミカル株式会社製)、スミカセン L705(住友化学株式会社製)およびESR-702(理研ビタミン株式会社製)を105:40:5で含むヒートシール材料(相転移温度47℃)を用い、算術平均粗さRa0.41μmおよび最大高さ粗さRz2.90μmの表面を有する冷却ロールを用いた押出ラミネート法により製膜し、製膜後のエージングを行わないで、表1に示す表面粗さのヒートシール層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0093】
[示差走査熱量計(DSC)測定]
実施例1~4、比較例1~2で製造したカバーテープに対して、上記「A.電子部品包装用カバーテープ」で記載した方法により相転移温度(DSCピーク)を測定した。結果を表1に示す。
【0094】
[ヘーズの測定]
実施例1~4、比較例1~2で製造したカバーテープのヘーズを、上記「A.電子部品包装用カバーテープ III.カバーテープ (1)ヘーズ値」で記載した方法により測定した。結果を表1に示す。
【0095】
【0096】
表1に示されるように、50℃以上の相転移温度を有する、エチレン-酢酸ビニル系共重合体を含むヒートシール層を有する実施例1~4のカバーテープは、ヘーズ値が55.0%以下に低減されたことが確認された。一方、比較例1および比較例2のカバーテープは、ヘーズ値が高いことが確認された。また、実施例1~4と比較例2とを比較すると、ヒートシール層の表面粗さが小さくても、相転移温度が50℃未満であると、ヘーズ値が高くなることが確認された。実施例1~4と比較例1とを比較すると、比較例1ではヒートシール層の表面粗さが大きく、かつ、相転移温度が50℃未満であり、ヘーズ値が高くなることが確認された。
【0097】
[ブロッキング評価]
実施例1~4、比較例1~2のカバーテープを、幅5.25mmに裁断した。そして、裁断されたカバーテープを巻き取って巻回物を得た。耐ブロッキング性の有無を、以下の評価方法および評価基準で評価した。結果を表2に示す。
・評価方法
5.25mm幅にスリットした3000mトラバース巻(3インチコア、幅180mm、紙管)のカバーテープフィルムのフィルム端を巻ズレ防止のため、セロテープ(登録商標)で止めて、ニューポリ袋(規格袋) LDPE・透明 0.025mm厚 12号 230×340mm(福助工業)に入れ、袋の口を紙管に入れた。その後、トラバース巻を縦にして40℃90%RH環境下に3時間入れ、その後、室温環境(20~25℃、40±10%RH)に取出し、開封せず、60秒以内に7℃の冷蔵環境にトラバース巻を縦にして3時間投入した。冷蔵環境から取り出した後、袋に入れた状態で室温環境(20~25℃、40±10%RH)で12時間トラバース巻を縦にして静置した。
上記サンプルのフィルム端を5~8m廃棄し、
図4に示すように、(1)フィルム端を50mm引出し、(2)そのフィルム端に15mgの荷重をかけ、(3)ロールを2~3秒/回転で回転させたときの耐ブロッキング性を以下の基準で評価した。
【0098】
・評価基準
耐ブロッキング性なし(
図4(a)):ロールを回転させたとき、引出したフィルム端が9時の位置までロールに貼りついて、剥がれなかった場合
耐ブロッキング性あり(
図4(b)):ロールを回転させたとき、引出したフィルム端が9時の位置前にロールから剥がれ、自然落下した場合
【0099】
【0100】
表2に示されるように、カバーテープのヒートシール層側の表面の算術平均粗さRaが0.3μm以上である実施例1~3は、実施例4に対して耐ブロッキング性が良好であることが確認された。