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特開2022-183793ポンプ異常報知装置およびポンプ異常報知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183793
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ポンプ異常報知装置およびポンプ異常報知方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 15/00 20060101AFI20221206BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F04D15/00 B
C02F3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091278
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390021348
【氏名又は名称】フジクリーン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩間 俊之
【テーマコード(参考)】
3H020
4D027
【Fターム(参考)】
3H020AA05
3H020AA08
3H020BA29
3H020CA05
3H020EA10
3H020EA17
4D027AB11
(57)【要約】
【課題】水移送で連係する2つのポンプの異常を誤って報知するのを抑制するのに有効な技術を提供する。
【解決手段】ポンプ異常報知装置10は、水移送で連係する2つのポンプP1,P2の異常を報知するためのものであり、2つのポンプP1,P2のそれぞれの運転回数M1,M2に関するポンプ運転情報D1,D2を検出する情報検出部としての電流センサ11,12と、電流センサ11,12が検出したポンプ運転情報D1,D2を蓄積する記憶部22と、記憶部22から読み出したポンプ運転情報D1,D2に基づいて2つのポンプP1,P2の異常を報知する報知部23,24,25と、を備え、報知部23,24,25は、2つのポンプP1,P2の間の単位期間あたりの運転回数差ΔMが閾値Maを上回る状態が管理回数Na以上連続したときに異常報知信号を出力するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水移送で連係する2つのポンプの異常を報知するポンプ異常報知装置であって、
上記2つのポンプのそれぞれの運転回数に関するポンプ運転情報を検出する情報検出部と、
上記情報検出部が検出した上記ポンプ運転情報を蓄積する記憶部と、
上記記憶部から読み出した上記ポンプ運転情報に基づいて上記2つのポンプの異常を報知する報知部と、
を備え、
上記報知部は、上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに異常報知信号を出力するように構成されている、ポンプ異常報知装置。
【請求項2】
水移送で連係する2つのポンプの異常を報知するポンプ異常報知装置であって、
上記2つのポンプのそれぞれの運転回数及び運転時間に関するポンプ運転情報を検出する情報検出部と、
上記情報検出部が検出した上記ポンプ運転情報を蓄積する記憶部と、
上記記憶部から読み出した上記ポンプ運転情報に基づいて上記2つのポンプの異常を報知する報知部と、
を備え、
上記報知部は、上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回り且つ上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転時間差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに異常報知信号を出力するように構成されている、ポンプ異常報知装置。
【請求項3】
上記2つのポンプはいずれも、浄化槽で浄化処理された後の水を上記浄化槽の外部へ放流する放流ポンプである、請求項1または2に記載のポンプ異常報知装置。
【請求項4】
上記2つのポンプはいずれも、水位変動を検知するための水位検知部が一体となるように構成されたポンプである、請求項1または2に記載のポンプ異常報知装置。
【請求項5】
上記単位期間は、24時間の整数倍の期間である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポンプ異常報知装置。
【請求項6】
水移送で連係する2つのポンプの異常を報知するポンプ異常報知方法であって、
上記2つのポンプのそれぞれの運転回数に関するポンプ運転情報を検出し、
検出した上記ポンプ運転情報を蓄積し、
蓄積した上記ポンプ運転情報に基づいて、上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに異常報知信号を出力する、ポンプ異常報知方法。
【請求項7】
水移送で連係する2つのポンプの異常を報知するポンプ異常報知方法であって、
上記2つのポンプのそれぞれの運転回数及び運転時間に関するポンプ運転情報を検出し、
検出した上記ポンプ運転情報を蓄積し、
蓄積した上記ポンプ運転情報に基づいて、上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回り且つ上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転時間差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに異常報知信号を出力する、ポンプ異常報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプの異常を報知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、この種の技術として、マンホールポンプ場管理システムが開示されている。この管理システムは、汚水槽内の汚水を排出するように交互運転する2つのポンプと、2つのポンプの点検を促す通報手段と、を備えている。通報手段は、一方のポンプの運転時間と他方のポンプの運転時間とを比較し、一方のポンプの運転時間が他方のポンプの運転時間の所定数倍以上になると点検を促すように構成され、或いは、一方のポンプの運転回数と他方のポンプの運転回数とを比較し、両運転回数の差が所定回数以上になると点検を促すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-266421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の管理システムのように、2つのポンプの運転時間や運転回数を単純に比較する場合には、各ポンプが正常であるにもかかわらず異常であると判定される事態が発生し得る。例えば、一時的に単位時間当たりの流入水量が非常に多くなり、1つのポンプでは排水が追い付かないときに、2つのポンプが同時に作動するモードが設定されていることが一般的であるが、このとき各ポンプが正常な状態でも一方のポンプの運転回数が他方のポンプの運転回数の所定数倍以上になることが想定される。また、2つのポンプの吐出配管の管径や長さのような施工条件が相違しているような場合には、2つのポンプの運転時間が異なるのが一般的であり、各ポンプが正常な状態でも2つのポンプの運転時間の差が所定時間以上になることが想定される。この場合、ポンプが正常であるにもかかわらず異常の報知が頻繁に行われるという問題が生じ得る。そこで、この種の技術の設計においては、ポンプの異常についての誤警報を抑える技術が求められている。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、水移送で連係する2つのポンプの異常を誤って報知するのを抑制するのに有効な技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
水移送で連係する2つのポンプの異常を報知するポンプ異常報知装置であって、
上記2つのポンプのそれぞれの運転回数に関するポンプ運転情報を検出する情報検出部と、
上記情報検出部が検出した上記ポンプ運転情報を蓄積する記憶部と、
上記記憶部から読み出した上記ポンプ運転情報に基づいて上記2つのポンプの異常を報知する報知部と、
を備え、
上記報知部は、上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに異常報知信号を出力するように構成されている、ポンプ異常報知装置、
にある。
【0007】
また、本発明の他の態様は、
水移送で連係する2つのポンプの異常を報知するポンプ異常報知装置であって、
上記2つのポンプのそれぞれの運転回数及び運転時間に関するポンプ運転情報を検出する情報検出部と、
上記情報検出部が検出した上記ポンプ運転情報を蓄積する記憶部と、
上記記憶部から読み出した上記ポンプ運転情報に基づいて上記2つのポンプの異常を報知する報知部と、
を備え、
上記報知部は、上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回り且つ上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転時間差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに異常報知信号を出力するように構成されている、ポンプ異常報知装置、
にある。
【0008】
また、本発明の他の態様は、
水移送で連係する2つのポンプの異常を報知するポンプ異常報知方法であって、
上記2つのポンプのそれぞれの運転回数に関するポンプ運転情報を検出し、
検出した上記ポンプ運転情報を蓄積し、
蓄積した上記ポンプ運転情報に基づいて、上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに異常報知信号を出力する、ポンプ異常報知方法、
にある。
【0009】
また、本発明の他の態様は、
水移送で連係する2つのポンプの異常を報知するポンプ異常報知方法であって、
上記2つのポンプのそれぞれの運転回数及び運転時間に関するポンプ運転情報を検出し、
検出した上記ポンプ運転情報を蓄積し、
蓄積した上記ポンプ運転情報に基づいて、上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回り且つ上記2つのポンプの間の単位期間あたりの運転時間差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに異常報知信号を出力する、ポンプ異常報知方法、
にある。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様のポンプ異常報知装置及びポンプ異常報知方法のそれぞれによれば、2つのポンプのそれぞれの運転回数に関するポンプ運転情報が検出され、このポンプ運転情報が蓄積される。そして、蓄積されたポンプ運転情報に基づいて異常報知信号が出力される。
【0011】
このとき、2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに、異常報知信号が出力される。2つのポンプを連係させて運転する場合、一般的に2つのポンプの運転回数に差が生じる可能性があり、単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回る状態が単に検出されたからといってポンプの異常が発生しているとはかぎらない。そこで、単位期間あたりの運転時間差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときにはじめて異常報知信号を出力することで、異常報知信号が誤って出力されるのを抑制することができる。
【0012】
また、2つのポンプを連係させて運転する場合、一般的に2つのポンプの運転回数に加えて運転時間にも差が生じる可能性がある。そこで、2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回り且つ2つのポンプの間の単位期間あたりの運転時間差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに、異常報知信号を出力するようにできる。これにより、2つのポンプの間の単位期間あたりの運転回数差が閾値を上回る状態が管理基準回数以上連続したときに異常報知信号を出力する場合に比べて、2つのポンプが異常であるか否かを判定する精度を高めることが可能になる。
【0013】
以上のごとく、上述の各態様によれば、水移送で連係する2つのポンプの異常を誤って報知するのを抑制するのに有効な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1のポンプ異常報知装置を浄化槽とともに示す模式図。
図2図1中の2つのポンプの構造を示す図。
図3図2において2つのポンプの第1段階の様子を示す図。
図4図2において2つのポンプの第2段階の様子を示す図。
図5図2において2つのポンプの第3段階の様子を示す図。
図6図2において2つのポンプの第4段階の様子を示す図。
図7】実施形態1のポンプ異常報知方法を示すフローチャート。
図8】実施形態1にかかるポンプ運転情報を示す図。
図9】実施形態2のポンプ異常報知装置を浄化槽とともに示す模式図。
図10】実施形態2のポンプ異常報知方法を示すフローチャート。
図11】実施形態2にかかるポンプ運転情報を示す図。
図12】別構造の2つのポンプの構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0016】
上述の態様のポンプ異常報知装置において、上記2つのポンプはいずれも、浄化槽で浄化処理された後の水を上記浄化槽の外部へ放流する放流ポンプであるのが好ましい。
【0017】
このポンプ異常報知装置によれば、いずれも放流ポンプである2つのポンプの異常を、誤警報を抑えた状態で報知することが可能になる。
【0018】
上述の態様のポンプ異常報知装置において、上記2つのポンプはいずれも、水位変動を検知するための水位検知部が一体となるように構成されたポンプであるのが好ましい。
【0019】
このポンプ異常報知装置によれば、いずれも水位検知部が一体とされた2つのポンプの異常を、誤警報を抑えた状態で報知することが可能になる。
【0020】
上述の態様のポンプ異常報知装置において、上記単位期間は、24時間の整数倍の期間であるのが好ましい。
【0021】
このポンプ異常報知装置によれば、24時間の整数倍の期間を、ポンプ運転情報を評価するための単位期間とすることによって、ユーザがポンプ運転情報を管理し易くなる。例えば、住居や店舗のような建屋では1日の排水パターンが概ね決まっており、使用するポンプの稼働回数や稼働時間も24時間ごとに区切ることで安定するため、24時間の整数倍の単位でポンプ運転情報を管理することが望ましい。
【0022】
以下、浄化槽に設けられるポンプ異常報知装置の詳細な構造と、ポンプ異常報知装置を使用したポンプ異常報知方法の具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
(実施形態1)
図1に示されるように実施形態1のポンプ異常報知装置10(以下、単に「異常報知装置10」ともいう。)は、処理槽としての浄化槽1に対して設けられるものである。本実施形態の浄化槽1は、工場等で使用される大型の浄化槽とは異なり、住居や店舗などで発生した水の浄化処理を行う中型若しくは小型の浄化槽として構成されている。このような浄化槽1は、大型の浄化槽のように、ポンプを制御するための別置きの制御盤を有していない。この浄化槽1で使用されるポンプは、それ自体に設けられた後述の水位検知部および制御部によって、後述の放流ポンプ槽9Aの水位変動に応じて運転及び停止が制御されるように構成されている。
【0024】
なお、本実施形態の浄化槽1はあくまで例示的なものであって、異常報知装置10を適用し得る浄化槽は、浄化槽1のみに限定されるものではない。
【0025】
浄化槽1は、内部が中空の槽本体2と、槽本体2に移流管を通じて連通するように設けられた内部が中空の放流ポンプ槽9Aと、を有する。槽本体2に流入管3が設けられ、放流ポンプ槽9Aに流出管4が設けられている。浄化処理前の被処理水、所謂「原水」は、流入管3を通じて槽本体2の内部に流入可能とされている。槽本体2で処理された浄化処理後の水は、放流ポンプ槽9Aに移流したのち流出管4を通じて外部へ放流水として放流可能とされている。
【0026】
槽本体2の内部空間は、最上流部である流入管3から流入した被処理水を処理するための処理空間である。特に図示しないものの、この内部空間は、複数の仕切隔壁によって複数の領域に仕切られ、且つ複数の移流開口を通じて連通しており、複数の領域間で押し出し流れの原理やポンプ移送を利用して被処理水が移流するように構成されている。複数の領域には、沈殿分離槽5と、嫌気ろ床槽6と、接触ろ床槽7と、処理水槽8と、消毒槽9と、が含まれている。
【0027】
沈殿分離槽5は、流入管3から流入した被処理水に含まれている夾雑物などの固形物を沈殿させて分離するための処理領域である。
【0028】
嫌気ろ床槽6は、沈殿分離槽5で固形物が分離された後の水の嫌気処理を行うための領域である。この嫌気ろ床槽6には、嫌気性微生物が付着する嫌気濾材が充填されており、水が嫌気濾材に接触することによって、この水に含まれている有機汚濁物質が嫌気処理(還元処理)される。また、特に図示しないものの、この嫌気処理で発生した汚泥の一部は、ブロワBを空気供給源として作動するエアリフトポンプ等の移送手段を利用して沈殿分離槽5へと移送されるようになっている。
【0029】
接触ろ床槽7は、嫌気ろ床槽6で処理された後の水の好気処理を行うための領域である。この接触ろ床槽7には、好気性微生物が付着する接触材が充填されており、この接触材にブロワBを空気供給源とする散気装置から空気を供給可能とされている。散気装置から空気が供給されると、空気中の酸素の助けによって、水に含まれている有機汚濁物質が好気処理(酸化処理)される。
【0030】
処理水槽8は、流出管4から流出する直前の水を一時的に貯留することにより固液分離処理を行うための領域である。この処理水槽8に貯留された水は、その一部がブロワBを空気供給源として作動するエアリフトポンプ等の移送手段を利用して沈殿分離槽5へ循環移送され、その残部がオーバーフローによって消毒槽9へと移流するようになっている。
【0031】
消毒槽9は、処理水槽8から移流した水の消毒処理を行うための領域である。この消毒槽9で消毒処理された水は、放流ポンプ槽9Aに移流する。放流ポンプ槽9Aは、消毒処理された水を一時的に貯留して2つのポンプP1,P2で排水するための領域である。放流ポンプ槽9Aは、その水位が槽本体2の水位とは独立して変動するように構成されている。放流ポンプ槽9A内に設置された2つのポンプP1,P2によって吸入された水は流出管4に向けて吐出される。2つのポンプP1,P2は、浄化槽1で浄化処理された後の水を互いに連係することによって浄化槽1の外部へ放流する放流ポンプである。
【0032】
2つのポンプP1,P2は、浄化槽1から浄化処理済の水を放流するための水移送で連係するポンプセットである。ここでいう「連係」とは、一方の第1ポンプP1と他方の第2ポンプP2の間に、放流ポンプ槽9Aの水位情報を介して浄化処理済の水を協働して放流するという点で、つながりがある関係をいう。具体的には後述するが、2つのポンプP1,P2は、放流ポンプ槽9Aの水位変動に応じて、通常時は交互運転し、非常時は単独運転若しくは同時運転するように制御される。これにより、いずれか一方のポンプが他方のポンプのバックアップ用ポンプとして水移送の継続を担保する第1の機能と、各ポンプの負荷を下げて寿命を延ばす第2の機能と、を果たす。これらの機能を有する2つのポンプP1,P2は、一般的に「親子ポンプ」と称呼される。
【0033】
2つのポンプP1,P2は、中型若しくは小型の浄化槽1で使用される場合、予め定められたタイムスケジュールに応じて運転が制御されるものでなく、後述の水位検知部を介して検知される放流ポンプ槽9Aの水位情報に応じて交互運転するように制御される。このため、2つのポンプP1,P2の運転は放流ポンプ槽9Aの水位変動に大きく依存しており、実際の稼働状況に差が生じ易い。それに加えて、2つのポンプP1,P2は、構造を簡素化するためにそれぞれの異常を個別に検知するための構造を備えていない。
【0034】
このような2つのポンプP1,P2のいずれにも異常が発生して停止しているときは、浄化槽1の水位が流出管4の水位まで上昇するため、流入管3が水没する。このとき、建物からの排水機能に支障がでる場合(例えば、トイレの水が流れない等)が多く、ユーザが異常に気付き易い。或いは、浄化槽1の点検時に槽内の水位が明らかに異常とわかるため、作業員がポンプ異常に気付くことは容易である。ところが、2つのポンプP1,P2のうちの一方のみで異常が発生しているときには槽本体2の水位が正常な状態で運転継続が可能であるため、当該ポンプの異常に気付きにくい。また、2つのポンプP1,P2の運転時間や運転回数を単純に比較する場合には、各ポンプが正常であるにもかかわらず異常であると判定される事態が発生し得る。そこで、本実施形態では、2つのポンプP1,P2の異常を誤って検知することなく報知するための異常報知装置10が設けられている。
【0035】
実施形態1の異常報知装置10は、浄化槽1の近傍に屋外設置される現場型の端末ユニットとして構成されている。この異常報知装置10は、2つの電流センサ11,12と、制御基板13と、外部機器20と、を備えている。電流センサ11,12及び制御基板13はいずれも、耐候性を有する樹脂製或いは金属製のケース10aに収容されている。ケース10aには、浄化槽1で使用する電気機器(2つのポンプP1,P2を含む複数の電気機器)に電源を供給するための電源コンセント10bが設けられている。
【0036】
第1の電流センサ11は、第1ポンプP1の運転回数M1に関する情報の1つとして、第1ポンプP1に通電される電流値を検出する情報検出部である。この第1の電流センサ11が検出した電流値の情報は制御基板13に伝送される。同様に、第2の電流センサ12は、第2ポンプP2の運転回数M2に関する情報の1つとして、第2ポンプP2に通電される電流値を検出する情報検出部である。この第2の電流センサ12が検出した電流値の情報は制御基板13に伝送される。
【0037】
制御基板13には、情報処理部14と通信部15が搭載されている。情報処理部14は、2つのポンプP1,P2のポンプ運転情報D1,D2を一時的に蓄積する処理を行う機能を有する。通信部15は、ポンプ運転情報D1,D2を、1日ごとに通信ネットワークNWを介して外部機器20に送信する機能を有する。
【0038】
ここで、ポンプ運転情報D1は、第1ポンプP1の運転回数M1に関する情報であり、ポンプ運転情報D2は、第2ポンプP2の運転回数M2に関する情報である。本実施形態では、電流センサ11,12が検出した電流値から導出される、2つのポンプP1,P2の運転回数M1,M2自体をポンプ運転情報D1,D2としている。この場合、2つの電流センサ11,12と制御基板13の情報処理部14とによって、ポンプ運転情報D1,D2を検出する情報検出部が構成されている。
【0039】
ポンプ運転情報D1,D2として、運転回数M1,M2に代えて或いは加えて、電流センサ11,12が検出した電流値や、この電流値が基準電流値(閾値)を超えたか否かを示す接点信号(On/Off)などを用いるようにしてもよい。
【0040】
なお、異常報知装置10に、電流センサ11,12とは別に、ブロワBの電流値を検出する電流センサを設けて、2つのポンプP1,P2の電流値にあわせてブロワBの電流値も取得するのが好ましい。これにより、2つのポンプP1,P2とブロワBの異常報知の管理を異常報知装置10によって包括的に実行することが可能になる。
【0041】
通信ネットワークNWは、基地局を含む携帯電話回線、無線LAN、LPWA(Low Power Wide Area)型無線通信、有線LANなどを含む各種の通信手段の中から適宜に選択が可能である。
【0042】
外部機器20は、入力部21と、記憶部22と、情報処理部23と、判定部24と、出力部25と、を備えている。この外部機器20として、典型的には、既知の構造のサーバ、パーソナルコンピュータ、携帯端末などが使用される。
【0043】
入力部21には、ポンプ運転情報D1,D2が制御基板13から通信ネットワークNWを介して入力される。記憶部22は、2つのポンプP1,P2のポンプ運転情報D1,D2を蓄積するためのものである。このため、ポンプ運転情報D1,D2が入力部21を介して記憶部22のデータベースに蓄積される。この記憶部22は、既知の構造のメモリによって構成されている。
【0044】
情報処理部23と、判定部24と、出力部25は、記憶部22から読み出したポンプ運転情報D1,D2に基づいて2つのポンプP1,P2の異常を報知する報知部としての機能を果たす。
【0045】
情報処理部23は、ポンプ運転情報D1,D2に基づいて、第1ポンプP1の1日あたりの運転回数(稼働回数)M1と、第2ポンプP2の1日あたりの運転回数(稼働回数)M2との差分である、2つのポンプP1,P2の間の1日あたりの運転回数差ΔMを導出するように構成されている。この情報処理部23による導出結果は、記憶部22に一時的に蓄積される。
【0046】
判定部24は、情報処理部23による導出結果に基づいて、1日あたりの運転回数差ΔMが閾値Maを上回る状態が管理基準回数Na以上連続したか否かを判定する。このとき、本実施形態では、当該状態が管理基準回数Na以上連続したことが2つのポンプP1,P2に異常があると判定することと同義であるとしている。なお、予め設定された閾値Ma及び管理基準回数Naは記憶部22に蓄積されている。
【0047】
出力部25は、判定部24による判定結果に基づいて、当該状態が管理基準回数Na以上連続したときに、2つのポンプP1,P2に異常があることを示す異常報知信号を出力するように構成されている。このとき、出力部25は、音、音声、画面表示、印字などを適宜に使用した出力態様で異常報知信号を出力することができる。外部機器20は、出力部25が異常報知信号を出力したことを示す情報(異常報知信号の出力履歴)を、予め登録された宛先の管理者にメール送信するのが好ましい。
【0048】
なお、記憶部22、情報処理部23、判定部24及び出力部25の機能の一部或いは全部を制御基板13に組み込むように構成してもよい。この場合、2つの電流センサ11,12に加えて制御基板13が異常報知装置10の一構成要素となる。制御基板13に上記の機能を組み込むことによって、データ量を節減でき、通信費用を低減できるという利点がある。
【0049】
ここで、2つのポンプP1,P2の構造及び動作について図2図6を参照しながら説明する。
【0050】
図2に示されるように、第1ポンプP1は、ポンプハウジング30にポンプロータ31と、主軸32を介してポンプロータ31と一体回転可能に連結された羽根車33と、を収容している。2つのポンプP1,P2はいずれも、電力供給時に制御部34によって駆動制御され、ポンプロータ31及び羽根車33の一体回転に伴って水を吸入して吐出するように構成されている。この内部構造については、特に図示しないものの、第2ポンプP2も同様である。なお、2つのポンプP1,P2の更なる詳細な内部構造については、例えば、特開2003-286990号公報に開示の水中ポンプの構造を参照することができる。
【0051】
第1ポンプP1は、いずれも玉形の3つのフロートスイッチF1,F2,F3からなるフロート式の水位検知部が一体となるように構成されたフロート一体型のポンプである。3つのフロートスイッチF1,F2,F3は、設置高さの低い方からフロートスイッチF1、フロートスイッチF2、フロートスイッチF3の順でポンプハウジング30に設けられている。3つのフロートスイッチF1,F2,F3はいずれも上下に動けるように構成されており、上に動くことによってオン状態になり、下に動くことによってオフ状態になる。この第1ポンプP1は、一般的に、自動交互運転型の親機とも称呼される。また、この第1ポンプP1にのみ、1回休みの機能が搭載されている。
【0052】
同様に、第2ポンプP2は、いずれも玉形の2つのフロートスイッチF4,F5からなるフロート式の水位検知部が一体となるように構成されたフロート一体型のポンプである。2つのフロートスイッチF4,F5は、設置高さの低い方からフロートスイッチF4、フロートスイッチF5の順でポンプハウジング30に設けられている。2つのフロートスイッチF4,F5はいずれも上下に動けるように構成されており、上に動くことによってオン状態になり、下に動くことによってオフ状態になる。フロートスイッチF4は、その設置高さがフロートスイッチF1と同一となるように設定されている。フロートスイッチF5は、その設置高さがフロートスイッチF2とフロートスイッチF3との間に設定されている。この第2ポンプP2は、一般的に、自動運転型の子機とも称呼される。これら2つのポンプP1,P2を連係させて自動交互運転を行う場合について、以下に説明する。
【0053】
図3に示されるように、2つのポンプP1,P2がともにオフ状態から、例えば水位WL2までの水位上昇に伴って、フロートスイッチF5よりも先にフロートスイッチF2がオン状態になると、第1ポンプP1のみが起動する。
【0054】
その後、図4に示されるように、例えば水位WL1までの水位下降に伴ってフロートスイッチF2が下がると、第1ポンプP1に1回休みの信号が出される。これにより、第1ポンプP1が1回休みモードになる。
【0055】
その後、図5に示されるように、例えば水位WL2までの水位上昇に伴ってフロートスイッチF2がオン状態になっても、第1ポンプP1は1回休みモードであるため起動しない。例えば水位WL3までの更なる水位上昇に伴ってフロートスイッチF5がオン状態になると、今度は第2ポンプP2が起動する。
【0056】
その後、図6に示されるように、例えば水位WL1までの水位下降に伴ってフロートスイッチF2がオフ状態になると、第1ポンプP1の1回休みの信号がリセットされる。その後、図3に示されるように、フロートスイッチF5よりも先にフロートスイッチF2がオン状態になり、第1ポンプP1のみが起動する。このようにして、図3図6までに示されるような、2つのポンプP1,P2の交互運転モードが継続される。
【0057】
ただし、第1ポンプP1が1回休みモードでもフロートスイッチF3がオン状態になったら第1ポンプP1が起動するようになっており、第2ポンプP2による排水能力以上の流入があった場合には、2つのポンプP1,P2の2台同時運転をする。
【0058】
なお、玉形のフロートスイッチに代えて、ポンプと一体化された筒状の収容体に収容され水位変動に応じて収容体の内部を上下に動くような構造のフロートスイッチを採用することもできる。
【0059】
次に、上記構成の異常報知装置10を使用した、実施形態1のポンプ異常報知方法について、図7を参照しながら説明する。
【0060】
図7に示されるように、実施形態1のポンプ異常報知方法は、ステップS101からステップS106までの各ステップを順次に実行することによって可能になる。なお、必要に応じて、これらのステップに1または複数のステップを追加してもよいし、いずれかのステップを複数のステップに分割してもよい。
【0061】
ステップS101は、電流センサ11,12を利用して2つのポンプP1,P2のポンプ運転情報D1,D2を検出するステップである。このステップS101は、電流センサ11,12と、制御基板13の情報処理部14と、によって実行される。このステップS101によれば、2つのポンプP1,P2のポンプ運転情報D1,D2が検出される。
【0062】
ステップS102は、ステップS101で検出したポンプ運転情報D1,D2を蓄積するステップである。このステップS102は、制御基板13の情報処理部14によって、また制御基板13の通信部15から伝送されたポンプ運転情報D1,D2を記憶する外部機器20の記憶部22によって実行される。このステップS102によれば、2つのポンプP1,P2のポンプ運転情報D1,D2が蓄積される。
【0063】
ステップS103は、ステップS102で蓄積したポンプ運転情報D1,D2を読み出し、このポンプ運転情報D1,D2に基づいて、2つのポンプP1,P2の間の1日あたりの運転回数差ΔMを情報処理部23により導出するステップである。運転回数差ΔMは、第1ポンプP1の1日あたりの運転回数M1と、第2ポンプP2の1日あたりの運転回数M2と、の差分として導出される。このステップS103によれば、2つのポンプP1,P2の間の1日あたりの運転回数差ΔMが導出される。
【0064】
ステップS104は、ステップS103で導出した運転回数差ΔMが予め設定した閾値Maを上回る状態を情報処理部23によりカウントするステップである。このステップS104によれば、運転回数差ΔMが閾値Maを上回る状態がカウントされる。
【0065】
ステップS105は、当該状態が予め設定された管理基準回数Na以上連続したか否かを判定部24により判定するステップである。このステップS105において当該状態が管理基準回数Na以上連続したと判定したとき(ステップS105の「Yes」の場合)にステップS106にすすむ。一方で、このステップS105において当該状態が管理基準回数Na以上連続していないと判定したとき(ステップS105の「No」の場合)にステップS104に戻る。
【0066】
ステップS106は、出力部25により異常報知信号、即ち、2つのポンプP1,P2の運転についての警報を出力するステップである。このステップS106によれば、ユーザに2つのポンプP1,P2の点検を促すことができる。
【0067】
ここで、上述のポンプ異常報知方法の具体例について、図8を参照しながら説明する。なお、この具体例では、以下の条件が例示的に設定されている。
【0068】
(1)制御基板13は、2つのポンプP1,P2の電流値を電流センサ11,12で連続的に検出し、検出した電流値から導出されるポンプ運転情報D1,D2を情報処理部14に一時的に蓄積する。
(2)制御基板13は、ポンプ稼働に関する単位期間を1日(24時間)として1日に1回のタイミングでポンプ運転情報D1,D2を制御基板13の通信部15から外部機器20に送信する。ポンプ運転情報D1,D2において運転回数M1,M2には日付情報が紐付けられている。さらに、2つのポンプP1,P2の電流値が検出された時刻の情報がポンプ運転情報D1,D2に含まれていてもよい。
(3)運転回数M1,M2については、2つのポンプP1,P2のそれぞれにおいて、電流値Iが基準電流値Iaを下回る状態が2秒以上継続した状態から基準電流値Iaに達し、基準電流値Ia以上の状態が2秒以上継続したときに、運転回数を1回とカウントする。
(4)運転回数差ΔMの閾値Maを1日あたり10回とする。
(5)管理基準回数Naを7回とする。
【0069】
図8に示されるポンプ運転情報によれば、運転回数差ΔMが閾値Maの10回を上回る日は、12月12日と、12月17日から20日までの4日間と、12月23日から31日までの9日間である。
【0070】
このうち、運転回数差ΔMが閾値Maの10回を上回る状態が管理基準回数Naである7回以上連続したことが判明するのが12月30日である。即ち、12月29日の24時までの集計データに基づいて翌日の12月30日に判明する。このため、12月30日に外部機器20の出力部25から異常報知信号が出力される(オン状態に設定される)。この後、ポンプP1,P2が正常稼働に戻ったこと(異常報知の条件から外れたこと)を外部機器20が検知して異常報知信号の出力を自動でオン状態からオフ状態にしてもよいし、或いは、現場の端末もしくは外部機器20にリセット機能を設けて、このリセット機能でリセットされるまでの間、異常報知信号のオン状態を維持するようにしてもよい。このときの異常報知信号の出力履歴を、外部機器20から予め登録された宛先の管理者にメール送信すれば、ポンプP1,P2の異常発生についての信頼性の高い情報を管理者に速やかに提供することができる。
【0071】
これに対して、12月17日から20日までの4日間は、運転回数差ΔMが閾値Maの10回を上回る状態が4回連続したが、12月21日には運転回数差ΔMが正常範囲である閾値Ma以下になっている。この場合、管理基準回数Naである7回に達していないため、外部機器20の出力部25から異常報知信号は出力されない(オフ状態が維持される)。従って、運転回数差ΔMが閾値Maの10回を上回る状態が単に1日検出されたからといって、そのタイミングで異常報知信号が誤って出力されるのを抑制することができる。
【0072】
なお、上述の実施形態1において、運転回数差ΔMの閾値Ma及び管理基準回数Naのそれぞれの具体的な数値は、特に限定されるものではなく、浄化槽1の運転条件等に基づいて適宜に設定することが可能である。
【0073】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0074】
2つのポンプP1,P2のそれぞれの運転回数M1,M2に関するポンプ運転情報D1,D2が検出され、このポンプ運転情報D1,D2が蓄積される。そして、蓄積されたポンプ運転情報D1,D2に基づいて異常報知信号が出力される。
【0075】
このとき、2つのポンプP1,P2の間の1日あたりの運転回数差ΔMが閾値Maを上回る状態が管理基準回数Na以上連続したときに、異常報知信号が出力される。2つのポンプP1,P2を連係させて運転する場合、一般的に2つのポンプP1,P2の運転回数M1,M2に差が生じる可能性があり、1日あたりの運転回数差ΔMが閾値Maを上回る状態が単に検出されたからといってポンプの異常が発生しているとはかぎらない。そこで、1日あたりの運転時間差ΔMが閾値Maを上回る状態が管理基準回数Na以上連続したときにはじめて異常報知信号を出力することで、異常報知信号が誤って出力されるのを抑制することができる。
【0076】
従って、上述の実施形態1によれば、水移送で連係する2つのポンプP1,P2の異常を誤って報知するのを抑制するのに有効な技術を提供することができる。
【0077】
また、上述の実施形態1によれば、いずれも水位検知部が一体とされた放流ポンプである2つのポンプP1,P2の異常を、誤警報を抑えた状態で報知することが可能になる。
【0078】
また、上述の実施形態1によれば、1日(24時間)をポンプ運転情報D1,D2(運転回数差ΔM)を評価するための単位期間とすることによって、ユーザがポンプ運転情報D1,D2を管理し易くなる。例えば、住居や店舗のような建屋では1日の排水パターンが概ね決まっており、使用するポンプの稼働回数や稼働時間も24時間ごとに区切ることで安定する。このため、好ましくは24時間の整数倍を単位期間とし、より好ましくは24時間を単位期間とする。
【0079】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、上述の実施形態1の要素と同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0080】
(実施形態2)
図9に示されるように、実施形態2の異常報知装置110は、ポンプ運転情報D1,D2について、また外部機器20の情報処理部23、判定部24及び出力部25における各処理について、実施形態1のものと相違している。
【0081】
ポンプ運転情報D1は、第1ポンプP1の運転回数M1と運転時間T1に関する情報である。同様に、ポンプ運転情報D2は、第2ポンプP2の運転回数M2と運転時間T2に関する情報である。本実施形態では、電流センサ11,12が検出した電流値から導出される、2つのポンプP1,P2の運転回数M1,M2自体及び運転時間T1,T2をポンプ運転情報D1,D2としている。
【0082】
情報処理部23は、ポンプ運転情報D1,D2に基づいて、第1ポンプP1の1日あたりの運転回数(稼働回数)M1と、第2ポンプP2の1日あたりの運転回数(稼働回数)M2との差分である、2つのポンプP1,P2の間の1日あたりの運転回数差ΔMを導出するように構成されている。
【0083】
また、情報処理部23は、ポンプ運転情報D1,D2に基づいて、第1ポンプP1の1日あたりの運転時間(稼働時間)T1と、第2ポンプP2の1日あたりの運転回数(稼働時間)T2との差分である、2つのポンプP1,P2の間の1日あたりの運転時間差ΔTを導出するように構成されている。この情報処理部23による導出結果は、記憶部22に一時的に蓄積される。
【0084】
なお、情報処理部23は、2つのポンプP1,P2のそれぞれについて、1日あたりの総運転時間、平均運転時間などの情報を補助的に導出するようにしてもよい。
【0085】
判定部24は、情報処理部23による導出結果に基づいて、1日あたりの運転回数差ΔMが閾値Maを上回り且つ1日あたりの運転時間差ΔTが閾値Taを上回る状態が管理基準回数Nb以上連続したか否かを判定する。このとき、本実施形態では、当該状態が管理基準回数Nb以上連続したことが2つのポンプP1,P2に異常があると判定することと同義であるとしている。なお、予め設定された閾値Ma,Ta及び管理基準回数Nbは記憶部22に蓄積されている。
【0086】
出力部25は、判定部24による判定結果に基づいて、当該状態が管理基準回数Nb以上連続したときに、実施形態1の場合と同様に、2つのポンプP1,P2に異常があることを示す異常報知信号を出力するように構成されている。
【0087】
図10に示されるように、実施形態2のポンプ異常報知方法は、ステップS102からステップS206までの各ステップを順次に実行することによって可能になる。ステップS201,202については、実施形態1のステップS101,102と同様である。
【0088】
ステップS203は、ステップS202で蓄積したポンプ運転情報D1,D2を読み出し、このポンプ運転情報D1,D2に基づいて、2つのポンプP1,P2の間の1日あたりの運転回数差ΔM及び運転時間差ΔTを情報処理部23により導出するステップである。運転回数差ΔMは、第1ポンプP1の1日あたりの運転回数M1と、第2ポンプP2の1日あたりの運転回数M2と、の差分として導出される。運転時間差ΔTは、第1ポンプP1の1日あたりの運転時間T1と、第2ポンプP2の1日あたりの運転時間T2と、の差分として導出される。このステップS203によれば、2つのポンプP1,P2の間の1日あたりの運転回数差ΔM及び運転時間差ΔTが導出される。
【0089】
ステップS204は、ステップS203で導出した運転回数差ΔMが予め設定した閾値Maを上回り且つステップS203で導出した運転時間差ΔTが予め設定した閾値Taを上回る状態を情報処理部23によりカウントするステップである。このステップS204によれば、運転回数差ΔMが閾値Maを上回り且つ運転時間差ΔTが値Taを上回る状態がカウントされる。
【0090】
ステップS205は、当該状態が予め設定された管理基準回数Nb以上連続したか否かを判定部24により判定するステップである。このステップS205において当該状態が管理基準回数Nb以上連続したと判定したとき(ステップS205の「Yes」の場合)にステップS206にすすむ。一方で、このステップS205において当該状態が管理基準回数Nb以上連続していないと判定したとき(ステップS205の「No」の場合)にステップS204に戻る。
【0091】
ステップS206は、実施形態1のステップS106の場合と同様に、出力部25により異常報知信号、即ち、2つのポンプP1,P2の運転についての警報を出力するステップである。このステップS206によれば、ユーザに2つのポンプP1,P2の点検を促すことができる。
【0092】
ここで、上述のポンプ異常報知方法の具体例について、図11を参照しながら説明する。なお、この具体例では、以下の条件が例示的に設定されている。
【0093】
(1)制御基板13は、2つのポンプP1,P2の電流値を電流センサ11,12で連続的に検出し、検出した電流値から導出されるポンプ運転情報D1,D2を情報処理部14に一時的に蓄積する。
(2)制御基板13は、ポンプ稼働に関する単位期間を1日(24時間)として1日に1回のタイミングでポンプ運転情報D1,D2を制御基板13の通信部15から外部機器20に送信する。ポンプ運転情報D1,D2において運転回数M1,M2及び運転時間T1,T2にはいずれも日付情報が紐付けられている。さらに、2つのポンプP1,P2の電流値が検出された時刻の情報がポンプ運転情報D1,D2に含まれていてもよい。
(3)運転回数M1,M2については、2つのポンプP1,P2のそれぞれにおいて、電流値Iが基準電流値Iaを下回る状態が2秒以上継続した状態から基準電流値Iaに達し、基準電流値Ia以上の状態が2秒以上継続したときに、運転回数を1回とカウントする。
(4)運転時間T1,T2については、2つのポンプP1,P2のそれぞれにおいて、電流値Iが基準電流値Iaを下回る状態から基準電流値Iaに達したのち、再び基準電流値Iaを下回る状態になるまでの時間を運転時間としてカウントする。
(5)運転回数差ΔMの閾値Maを1日あたり10回とする。
(6)運転時間差ΔTの閾値Taを1日あたり100分とする。
(7)管理基準回数Nbを3回とする。
【0094】
図11に示されるポンプ運転情報によれば、運転回数差ΔMが閾値Maの10回を上回る日は、12月12日と、12月17日から20日までの4日間と、12月23日から31日までの9日間である。また、運転時間差ΔTが閾値Taの100分を上回る日は、12月4日と、12月12日から14日までの3日間と、12月18日から19日までの2日間と、12月27日から31日までの5日間である。
【0095】
このうち、運転回数差ΔMが閾値Maの10回を上回り且つ運転時間差ΔTが閾値Taの100分を上回る状態が管理基準回数Nbである3回以上連続したことが判明するのが12月30日である。即ち、12月29日の24時までの集計データに基づいて翌日の12月30日に判明する。このため、12月30日に外部機器20の出力部25から異常報知信号が出力される(オン状態に設定される)。この後、ポンプP1,P2が正常稼働に戻ったこと(異常報知の条件から外れたこと)を外部機器20が検知して異常報知信号の出力を自動でオン状態からオフ状態にしてもよいし、或いは、現場の端末もしくは外部機器20にリセット機能を設けて、このリセット機能でリセットされるまでの間、異常報知信号のオン状態を維持するようにしてもよい。このときの異常報知信号の出力履歴を、外部機器20から予め登録された宛先の管理者にメール送信すれば、ポンプP1,P2の異常発生についての信頼性の高い情報を管理者に速やかに提供することができる。
【0096】
これに対して、12月12日から14日までの3日間は、運転時間差ΔTが閾値Taの100分を上回る状態が3回連続したが、12月13日には運転回数差ΔMが正常範囲である閾値Ma以下になっている。この場合、外部機器20の出力部25から異常報知信号は出力されない(オフ状態が維持される)。従って、運転回数差ΔMが閾値Maの10回を上回る状態や、運転時間差ΔTが閾値Taの100分を上回る状態が単に1日検出されたからといって、そのタイミングで異常報知信号が誤って出力されるのを抑制することができる。
【0097】
その他の構成及び処理方法は、実施形態1のものと同様である。
【0098】
なお、上述の実施形態2において、運転回数差ΔMの閾値Ma、運転時間差ΔTの閾値Ta、及び管理基準回数Nbのそれぞれの具体的な数値は、特に限定されるものではなく、浄化槽1の運転条件等に基づいて適宜に設定することが可能である。
【0099】
上述の実施形態2において、2つのポンプP1,P2を連係させて運転する場合、一般的に2つのポンプP1,P2の運転回数M1,M2に加えて運転時間T1,T2にも差が生じる可能性がある。そこで、2つのポンプP1,P2の間の単位期間あたりの運転回数差ΔMが閾値Maを上回り且つ2つのポンプP1,P2の間の単位期間あたりの運転時間差ΔTが閾値Taを上回る状態が管理基準回数Nb以上連続したときに、異常報知信号を出力するようにできる。
【0100】
これにより、実施形態1のように2つのポンプP1,P2の間の単位期間あたりの運転回数差ΔMが閾値Maを上回る状態が管理基準回数Na以上連続したときに異常報知信号を出力する場合に比べて、2つのポンプP1,P2が異常であるか否かを判定する精度を高めることが可能になる。
【0101】
また、上述の実施形態2によれば、24時間をポンプ運転情報D1,D2(運転回数差ΔM及び運転時間差ΔT)を評価するための単位期間とすることによって、ユーザがポンプ運転情報D1,D2を管理し易くなる。
【0102】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0103】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0104】
上述の実施形態では、24時間を単位期間とする場合について例示したが、必要に応じて、24時間の整数倍(2倍以上)の期間を単位期間とすることもできる。
【0105】
上述の実施形態では、フロート式の水位検知部を有するポンプP1,P2について例示したが、必要に応じて、フロート式の水位検知部を電極式の水位センサに変更することもできる。図12に示されるように、電極式の水位センサS1,S2は、ポンプP1,P2のそれぞれの本体ハウジングの上部に突出するように設けられている。水位センサS1,S2はいずれも、水位が検出水位WLaに達したときに当該水位を検出したことを出力するように構成されている。なお、この水位センサS1,S2の更なる詳細な構造については、例えば、特開2017-180114号公報に開示の水中ポンプの水位センサの構造を参照することができる。
【0106】
上述の実施形態では、2つのポンプP1,P2の運転回数M1,M2及び運転時間T1,T2に関するポンプ運転情報D1,D2として各ポンプに通電される電流値を使用する場合について例示したが、これに代えて、各ポンプに回転体の回転数を検出可能な回転数センサを設けて、この回転数センサで検出される情報をポンプ運転情報D1,D2とすることもできる。
【0107】
上述の実施形態では、浄化槽1で処理された処理済の水を放流するのに連係する2つの放流ポンプP1,P2の異常を報知する技術について例示したが、この技術を、浄化槽1内で流量調整を行うのに連係する2つの移送ポンプや、住居や店舗で発生した処理前の原水を浄化槽1に移送するのに連係する2つの原水ポンプに対して適用することもできる。また、浄化槽に限らず、水移送で連係する2つのポンプを使用する場合に、これら2つのポンプの異常を報知する技術に本発明を広く適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0108】
1 浄化槽
10,110 ポンプ異常報知装置
11,12 電流センサ(情報検出部)
14 情報処理部(情報検出部、記憶部)
22 記憶部
23 情報処理部(報知部)
24 判定部(報知部)
25 出力部(報知部)
D1,D2 ポンプ運転情報
M1,M2 運転回数
ΔM 運転回数差
Ma 閾値
Na,Nb 管理基準回数
T1,T2 運転時間
ΔT 運転時間差
Ta 閾値
P1 第1ポンプ(ポンプ)
P2 第2ポンプ(ポンプ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12