IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 丸栄コンクリート工業株式会社の特許一覧

特開2022-183795プレキャストコンクリート製品の品質管理システム
<>
  • 特開-プレキャストコンクリート製品の品質管理システム 図1
  • 特開-プレキャストコンクリート製品の品質管理システム 図2
  • 特開-プレキャストコンクリート製品の品質管理システム 図3
  • 特開-プレキャストコンクリート製品の品質管理システム 図4
  • 特開-プレキャストコンクリート製品の品質管理システム 図5
  • 特開-プレキャストコンクリート製品の品質管理システム 図6
  • 特開-プレキャストコンクリート製品の品質管理システム 図7
  • 特開-プレキャストコンクリート製品の品質管理システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183795
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート製品の品質管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20221206BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20221206BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221206BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G01B11/30 102Z
G06T7/00 610Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091280
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】592086880
【氏名又は名称】丸栄コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 肇
(72)【発明者】
【氏名】杉本 年也
(72)【発明者】
【氏名】奥田 忠男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】水野 克基
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065BB01
2F065BB26
2F065CC14
2F065FF01
2F065FF42
2F065FF61
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
2F065MM06
2F065QQ01
2F065QQ04
2F065QQ13
2F065QQ41
2G051AA88
2G051AB07
2G051AC15
2G051CA04
2G051EA11
2G051EC01
2G051ED09
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA43
5L096FA14
5L096FA17
5L096FA59
5L096FA64
5L096GA03
5L096GA51
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】空隙痕の発生状態を適切に確認できるとともに、空隙痕の補修が必要か否かを迅速に判断できるプレキャストコンクリート製品の品質管理システムを提供する。
【解決手段】プレキャストコンクリート製品5の品質管理システム1は、光Lが傾斜して差し込む撮影用表面51のデジタル写真を撮影するデジタルカメラ2、及び演算装置4を備える。演算装置4は、デジタル写真における指定範囲内の抽出画素を、空隙痕が撮影された画素と、正常なコンクリート面が撮影された画素とに分ける画像処理部41、空隙痕が撮影された画素の割合に基づいて空隙形成度合を算出する算出部42、及び空隙形成度合を表示する表示部43を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート製品における、光が傾斜して差し込む撮影用表面のデジタル写真を撮影するデジタルカメラと、
前記デジタルカメラ、又は前記デジタルカメラと通信を行う通信機器に構築された演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
前記デジタルカメラによって撮影された前記デジタル写真を画像処理し、前記デジタル写真における指定範囲内の抽出画素を、前記撮影用表面に存在する空隙痕が撮影された画素と、正常なコンクリート面が撮影された画素とに分ける画像処理部と、
前記抽出画素における、前記空隙痕が撮影された画素の割合に基づいて空隙形成度合を算出する算出部と、
前記算出部による前記空隙形成度合を表示する表示部と、を有する、プレキャストコンクリート製品の品質管理システム。
【請求項2】
前記デジタルカメラを保持して、前記撮影用表面に対向する位置を飛行する無人飛行体と、
前記無人飛行体の飛行を操縦するコントローラと、をさらに備え、
前記画像処理部は、前記コントローラによる前記無人飛行体の操縦を受けて移動する前記デジタルカメラによって撮影された前記撮影用表面の複数箇所のデジタル写真について画像処理し、前記算出部は、前記複数箇所のデジタル写真についての前記空隙形成度合を算出し、前記表示部は、前記複数箇所のデジタル写真についての前記空隙形成度合を表示するよう構成されている、請求項1に記載のプレキャストコンクリート製品の品質管理システム。
【請求項3】
前記表示部は、前記コントローラ、又は前記コントローラによって前記無人飛行体を操縦する作業者によって視認可能な前記演算装置に設けられている、請求項2に記載のプレキャストコンクリート製品の品質管理システム。
【請求項4】
前記デジタルカメラは、互いに異なる複数の方向から前記撮影用表面の同じ位置のデジタル写真を、方向デジタル写真として複数撮影するよう構成されており、
前記画像処理部は、複数の前記方向デジタル写真が重ね合わされた合成デジタル写真を生成し、前記合成デジタル写真を画像処理して、前記合成デジタル写真における指定範囲内の抽出画素を、前記撮影用表面に存在する空隙痕が撮影された画素と、正常なコンクリート面が撮影された画素とに分けるよう構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート製品の品質管理システム。
【請求項5】
前記デジタルカメラが保持され、移動プログラムに応じて、前記デジタルカメラを前記撮影用表面に対向する複数の位置へ順次移動させる移動体をさらに備え、
前記画像処理部は、移動する前記移動体に保持された前記デジタルカメラによって撮影された前記撮影用表面の複数箇所のデジタル写真について画像処理し、前記算出部は、前記複数箇所のデジタル写真についての前記空隙形成度合を算出し、前記表示部は、前記複数箇所のデジタル写真についての前記空隙形成度合を表示するよう構成されている、請求項1に記載のプレキャストコンクリート製品の品質管理システム。
【請求項6】
前記移動体の前記移動プログラムは、互いに異なる複数の方向から前記撮影用表面の同じ位置のデジタル写真を、方向デジタル写真として複数撮影するための移動経路を含み、
前記画像処理部は、複数の前記方向デジタル写真が重ね合わされた合成デジタル写真を生成し、前記合成デジタル写真を画像処理して、前記合成デジタル写真における指定範囲内の抽出画素を、前記撮影用表面に存在する空隙痕が撮影された画素と、正常なコンクリート面が撮影された画素とに分けるよう構成されている、請求項5に記載のプレキャストコンクリート製品の品質管理システム。
【請求項7】
前記算出部は、前記空隙形成度合として、前記抽出画素の面積における、補修が必要となる大きさ以上の前記空隙痕が撮影された画素の面積の割合としての空隙率を算出し、前記表示部は、前記空隙率を表示するよう構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート製品の品質管理システム。
【請求項8】
前記算出部は、前記空隙形成度合の他に、前記空隙痕が撮影された画素の集合体に基づいて、前記抽出画素内における最も大きな前記空隙痕である最大空隙痕の最大径を算出し、前記表示部は、前記最大空隙痕の最大径を表示するよう構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート製品の品質管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート製品の品質管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリート製品は、型枠内に充填されたコンクリート材料によって、所望の形状に成形される。このコンクリート製品の表面には、成形時における気泡の発生によって空隙痕が生じることがある。空隙痕は、コンクリート製品の見栄えを損ねる。そのため、コンクリート製品の出荷前には、コンクリート製品の表面の検査を行い、この表面における空隙痕の形成状態が不良であると判断される場合には、空隙痕を補修することが行われている。
【0003】
コンクリート製品の表面は、作業者の目視によって検査する他に、デジタルカメラ等によって撮影した画像を処理することによって検査することがある。例えば、特許文献1のコンクリート表面の充填率算出システムにおいては、撮影手段によって撮影されたコンクリートの表面の画像を用いて、コンクリートの表面の充填率を算出することが記載されている。
【0004】
特許文献1においては、コンクリートの表面についての複数の画像に基づいて生成された二値化画像と、コンクリートの表面の画像との関係性を学習し、この学習された関係性に基づいて、コンクリートの表面の充填率を算出している。この構成により、現場の担当者等の作業負担を低減し、容易かつ短時間で充填率の算出を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-160748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プレキャストコンクリート製品の表面における空隙痕の発生状態を適切に確認するためには、デジタルカメラによる撮影の仕方等に更なる工夫が必要である。そして、空隙痕の発生状態を適切に確認するためには、コンクリート製品に照射される光の状態が重要であることが分かった。また、コンクリート製品の表面における空隙痕を補修する場合には、空隙痕の発生状態を迅速に確認できることが重要になる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、空隙痕の発生状態を適切に確認することができるとともに、空隙痕の補修が必要か否かを迅速に判断することができるプレキャストコンクリート製品の品質管理システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
プレキャストコンクリート製品における、光が傾斜して差し込む撮影用表面のデジタル写真を撮影するデジタルカメラと、
前記デジタルカメラ、又は前記デジタルカメラと通信を行う通信機器に構築された演算装置と、を備え、
前記演算装置は、
前記デジタルカメラによって撮影された前記デジタル写真を画像処理し、前記デジタル写真における指定範囲内の抽出画素を、前記撮影用表面に存在する空隙痕が撮影された画素と、正常なコンクリート面が撮影された画素とに分ける画像処理部と、
前記抽出画素における、前記空隙痕が撮影された画素の割合に基づいて空隙形成度合を算出する算出部と、
前記算出部による前記空隙形成度合を表示する表示部と、を有する、プレキャストコンクリート製品の品質管理システムにある。
【発明の効果】
【0009】
前記一態様のプレキャストコンクリート製品の品質管理システムにおいては、デジタルカメラによって、プレキャストコンクリート製品における、光が傾斜して差し込む撮影用表面のデジタル写真を撮影する。そして、演算装置の画像処理部は、デジタル写真における指定範囲内の抽出画素を、撮影用表面に存在する空隙痕が撮影された画素と、正常なコンクリート面が撮影された画素とに分ける。このとき、画像処理部において、光が傾斜して差し込んだ状態で撮影された撮影用表面のデジタル写真が用いられることにより、空隙痕が陰影として撮影されやすく、空隙痕が撮影された画素を、正常なコンクリート面が撮影された画素から分けやすくすることができる。そのため、空隙痕の発生状態を適切に確認することができる。
【0010】
また、演算装置の算出部は、抽出画素における、空隙痕が撮影された画素の割合に基づいて空隙形成度合を算出し、演算装置の表示部は、空隙形成度合を表示する。この構成により、デジタルカメラによる撮影用表面のデジタル写真の撮影後には、作業者は、空隙形成度合を迅速に確認して、プレキャストコンクリート製品の撮影用表面について、空隙痕の補修が必要か否かを迅速に判断することができる。
【0011】
それ故、前記一態様のプレキャストコンクリート製品の品質管理システムによれば、空隙痕の発生状態を適切に確認することができるとともに、空隙痕の補修が必要か否かを迅速に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1にかかる、品質管理システム及びプレキャストコンクリート製品を示す説明図である。
図2図2は、実施形態1にかかる、品質管理システム及びプレキャストコンクリート製品を、図1とは90°異なる方向から見た状態で示す説明図である。
図3図3は、実施形態1にかかる、品質管理システムの電気的構成を模式的に示す説明図である。
図4図4は、実施形態1にかかる、撮影用表面のデジタル写真を示す説明図である。
図5図5は、実施形態1にかかる、空隙痕が撮影された画素と正常なコンクリート面が撮影された画素とを有する抽出画素を示す説明図である。
図6図6は、実施形態1にかかる、空隙痕が撮影された画素と正常なコンクリート面が撮影された画素とを示す説明図である。
図7図7は、実施形態2にかかる、品質管理システム及びプレキャストコンクリート製品を示す説明図である。
図8図8は、実施形態2にかかる、方向デジタル写真の重ね合わせによって合成デジタル写真が生成された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前述したプレキャストコンクリート製品の品質管理システムにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態のプレキャストコンクリート製品5の品質管理システム1は、図1図3に示すように、デジタルカメラ2及び演算装置4を備える。デジタルカメラ2は、プレキャストコンクリート製品5における、光Lが傾斜して差し込む撮影用表面51のデジタル写真Dを撮影するよう構成されている。演算装置4は、デジタルカメラ2と通信を行う通信機器に構築されている。
【0014】
図3図5に示すように、演算装置4は、画像処理部41、算出部42及び表示部43を有する。画像処理部41は、デジタルカメラ2によって撮影されたデジタル写真Dを画像処理し、デジタル写真Dにおける指定範囲内の抽出画素Gを、撮影用表面51に存在する空隙痕(気泡痕)K1が撮影された画素と、正常なコンクリート面K2が撮影された画素とに分けるよう構成されている。算出部42は、抽出画素Gにおける、空隙痕K1が撮影された画素の割合に基づいて空隙形成度合を算出するよう構成されている。表示部43は、算出部42による空隙形成度合を表示するよう構成されている。
【0015】
以下に、本形態のプレキャストコンクリート製品5の品質管理システム1について詳説する。
(プレキャストコンクリート製品5)
図1に示すように、プレキャストコンクリート製品5は、工場等において型枠内に充填されたコンクリート材料によって、所定の形状に成形されたものである。コンクリート製品には、種々の構造物を構成するブロック等として成形される。コンクリート材料は、セメント、水、骨材(砂等)などを含有する。コンクリート製品は、水とセメントの化学反応を伴って成形される。また、コンクリート製品内には、強度を高めるための鉄筋が埋設されることがある。
【0016】
プレキャストコンクリート製品5が屋外に配置される場合には、デジタルカメラ2によって撮影される撮影用表面51が、鉛直方向に対して垂直な状態又は垂直に近い状態に配置される。このとき、撮影用表面51に空隙痕K1がある場合には、空隙痕K1には、太陽光Lが斜めから差し込む状態が形成される。この状態により、デジタルカメラ2によって撮影する際に、空隙痕K1に陰影が生じやすくし、画像処理によって空隙痕K1が撮影された画素を抽出しやすくすることができる。
【0017】
デジタルカメラ2によって撮影するプレキャストコンクリート製品5は、屋内に配置されていてもよい。この場合には、撮影用表面51における空隙痕K1に、蛍光灯等の光Lが斜めから差し込む状態が形成されるようにする。
【0018】
(品質管理システム1)
図1図5に示すように、品質管理システム1は、プレキャストコンクリート製品5の表面に空隙痕K1がどれだけ形成されているかを確認し、プレキャストコンクリート製品5の品質を管理するためのものである。品質管理システム1は、デジタルカメラ2で撮影された撮影用表面51のデジタル写真Dを画像処理し、撮影用表面51の空隙形成度合を表示するよう構成されている。品質管理システム1を使用する作業者Mは、空隙形成度合を、撮影用表面51における空隙痕K1の補修が必要か否かの一次判断に使用することができる。
【0019】
品質管理システム1によって管理する品質は、見栄えに影響する空隙痕K1がないことである。この空隙痕K1は、形成されたサイズが大きい場合、形成された数が多い場合等に、品質管理システム1によって補修が必要であることが示される。
【0020】
(デジタルカメラ2)
図1図3に示すように、デジタルカメラ2は、被写体が複数の画素によって撮影されたデジタル写真Dを取得できるものであればよい。デジタルカメラ2は、カメラの機能を有していればよく、スマートフォン、タブレット、ビデオカメラ、小型パーソナルコンピュータ等であってもよい。デジタルカメラ2による撮影用表面51は、プレキャストコンクリート製品5において外部に露出される意匠表面とすればよい。
【0021】
(無人飛行体3,コントローラ31)
図1図3に示すように、品質管理システム1は、無人飛行体3、及び無人飛行体3の飛行を操縦するコントローラ31をさらに備える。本形態のデジタルカメラ2は、操縦によって飛行する、ドローン等の無人飛行体3に保持(搭載)されている。無人飛行体3は、デジタルカメラ2を保持し、作業者Mによるコントローラ31の操縦を受けて、プレキャストコンクリート製品5の撮影用表面51に対向する位置を飛行するよう構成されている。換言すれば、無人飛行体3は、作業者Mによるコントローラ31の操縦を受けて、デジタルカメラ2による撮影が行われる、撮影用表面51の種々の撮影地点に移動する。コントローラ31は、作業者Mによって、無人飛行体3の上昇・下降、前後左右への移動等の操縦(操作)が可能である。図2においては、無人飛行体3の移動経路を符号Rによって示す。
【0022】
デジタルカメラ2が無人飛行体3に保持されていることにより、プレキャストコンクリート製品5における、大型の製品等について、作業者Mによって撮影が難しい部位であっても、デジタルカメラ2によって容易に撮影することができる。
【0023】
(演算装置4)
図1及び図3に示すように、演算装置4は、デジタルカメラ2と通信を行う通信機器としてのコントローラ31に一体的に構築されている。演算装置4における画像処理部41及び算出部42は、デジタルカメラ2に構築し、演算装置4における表示部43は、コントローラ31に構築してもよい。
【0024】
図4図6に示すように、画像処理部41は、画像処理として、デジタル写真Dの2値化処理を行うよう構成されている。画像処理部41は、2値化処理として、デジタル写真Dにおける指定範囲内の抽出画素Gを、所定の閾値において2種類の画素に分けるよう構成されている。2種類の画素は、撮影用表面51に存在する空隙痕K1が撮影された画素である第1画素G1と、正常なコンクリート面K2が撮影された画素である第2画素G2として分けられる。第1画素G1は、黒に近い色として撮影され、第2画素G2は、白に近い色として撮影される。
【0025】
2値化処理は、例えば、ラプラシアンヒストグラム法に基づいて行われる。この2値化処理においては、複数の抽出画素Gに対して二次微分を行い、各抽出画素Gについて二次微分絶対値を求める。二次微分絶対値は、複数の抽出画素Gにおける、濃淡が変化する境界付近において大きな値を示す。そして、複数の二次微分絶対値のうちの最大値に、所定の係数を掛けて、微分閾値を求める。この微分閾値を用いて複数の抽出画素Gを黒色の第1画素G1と白色の第2画素G2とに分けることにより、2値化処理に基づく空隙痕K1が撮影された画素の仕分けをより適切に行うことができる。
【0026】
本形態の画像処理部41は、コントローラ31による無人飛行体3の操縦を受けて移動するデジタルカメラ2によって撮影された撮影用表面51の複数箇所のデジタル写真Dについて画像処理するよう構成されている。プレキャストコンクリート製品5が大型である場合等には、複数箇所のデジタル写真Dを撮影することにより、製品の広い範囲の品質の確認を容易にすることができる。
【0027】
図5及び図6に示すように、本形態の算出部42は、空隙痕K1が撮影された画素である第1画素G1の集合体を特定し、この第1画素G1の集合体に基づいて空隙痕K1の最大径Yを算出するよう構成されている。また、算出部42は、抽出画素G内における最も大きな空隙痕K1である最大空隙痕K1の最大径Yを算出するよう構成されている。第1画素G1の集合体は、周囲の第2画素G2との境界を形成する、第1画素G1が連続して集まった塊として特定される。そして、空隙痕K1の最大径Yは、撮影用表面51における抽出画素Gの最大長さ、面積等に応じて決定される。
【0028】
本形態の算出部42は、空隙形成度合として、抽出画素Gの面積における、補修が必要となる大きさ以上の空隙痕K1が撮影された第1画素G1の面積の割合としての空隙率Xを算出するよう構成されている。補修が必要となる空隙痕K1は、例えば、最大径Yが5mm以上であるもの、又は所定数以上の第1画素G1が連続するもの等とすればよい。
【0029】
算出部42は、複数箇所のデジタル写真Dの抽出画素Gについて、空隙形成度合としての空隙率Xを算出するよう構成されている。表示部43は、複数箇所のデジタル写真Dの抽出画素Gについての空隙形成度合としての空隙率Xを表示するよう構成されている。また、表示部43は、空隙率Xの他に、抽出画素G内における最大空隙痕K1の最大径Yも表示するよう構成されている。そして、表示部43には、複数箇所のデジタル写真Dについて、デジタル写真Dの抽出画素Gごとに空隙率X及び最大空隙痕K1の最大径Yが表示される。
【0030】
デジタル写真Dの抽出画素Gについての空隙率Xの監視によっては、プレキャストコンクリート製品5の撮影用表面51に、小さな空隙痕K1が多数含まれる場合と、大きな空隙痕K1が少数含まれる場合とを区別することが難しい。より大きな空隙痕K1ほど、補修を行う必要性が高い。そのため、作業者は、表示部43によって、空隙率Xの他に、抽出画素G内における最大空隙痕K1の最大径Yも確認することにより、より補修が必要な空隙痕K1が含まれる場合を認識することができる。
【0031】
本形態の表示部43は、無人飛行体3のコントローラ31に設けられている。表示部43に表示される空隙形成度合としての空隙率Xは、空隙痕K1の補修が必要であるか否かの判断指標として用いられる。コントローラ31を操作する作業者Mは、表示部43に表示される空隙率Xを視認することにより、デジタルカメラ2によって撮影された撮影用表面51について、空隙痕K1の補修が必要であるか否かの一次判断を迅速に行うことができる。なお、表示部43は、コントローラ31とは別体のものとして、コントローラ31によって無人飛行体3を操縦する作業者Mによって視認可能な表示装置に設けられていてもよい。
【0032】
(作用効果)
本形態のプレキャストコンクリート製品5の品質管理システム1においては、デジタルカメラ2によって、プレキャストコンクリート製品5における、光Lが傾斜して差し込む撮影用表面51のデジタル写真Dを撮影する。そして、演算装置4の画像処理部41は、デジタル写真Dにおける指定範囲内の抽出画素Gを、撮影用表面51に存在する空隙痕K1が撮影された第1画素G1と、正常なコンクリート面K2が撮影された第2画素G2とに分ける。このとき、画像処理部41において、光Lが傾斜して差し込んだ状態で撮影された撮影用表面51のデジタル写真Dが用いられることにより、空隙痕K1が陰影として撮影されやすく、空隙痕K1が撮影された第1画素G1を、正常なコンクリート面K2が撮影された第2画素G2から分けやすくすることができる。そのため、空隙痕K1の発生状態を適切に確認することができる。
【0033】
また、演算装置4の算出部42は、抽出画素Gにおける、補修が必要となる大きさ以上の空隙痕K1が撮影された第1画素G1の割合に基づいて空隙率Xを算出するとともに抽出画素G内における最大空隙痕K1の最大径Yを算出し、演算装置4の表示部43は、空隙率X及び最大空隙痕K1の最大径Yを表示する。この構成により、デジタルカメラ2による撮影用表面51のデジタル写真Dの撮影後には、作業者Mは、抽出画素Gにおける空隙率X及び最大空隙痕K1の最大径Yを迅速に確認して、プレキャストコンクリート製品5の撮影用表面51について、空隙痕K1の補修が必要か否かを迅速に判断することができる。
【0034】
それ故、本形態のプレキャストコンクリート製品5の品質管理システム1によれば、空隙痕K1の発生状態を適切に確認することができるとともに、空隙痕K1の補修が必要か否かを迅速に判断することができる。
【0035】
なお、デジタルカメラ2は、無人飛行体3等の移動体に保持せず、作業者Mが直接把持する、又は作業者Mが把持する道具等に保持してもよい。この場合には、演算装置4をデジタルカメラ2に組み込み、デジタルカメラ2において、空隙形成度合としての空隙率Xが表示されるようにしてもよい。
【0036】
<実施形態2>
本形態は、デジタルカメラ2による撮影用表面51の撮影の仕方に工夫をし、空隙痕K1が撮影された画素をより適切に抽出するようにしている。
具体的には、図7及び図8に示すように、本形態のデジタルカメラ2は、互いに異なる複数の方向から撮影用表面51の同じ位置のデジタル写真Dを、方向デジタル写真D1として複数撮影するよう構成されている。撮影用表面51の同じ位置についての複数の方向デジタル写真D1は、同じ位置のデジタル写真Dを複数撮影することにより、撮影用表面51における空隙痕K1の形成状態を三次元的に把握するためのものである。撮影用表面51を撮影する方向が変化することにより、撮影用表面51における空隙痕K1によって形成される陰影の形成状態が変化する。本形態のデジタルカメラ2も、実施形態1の場合と同様に無人飛行体3に保持されている。
【0037】
デジタルカメラ2は、左右に所定間隔だけ離れて配置されたレンズ21を有するものとし、左右のレンズ21によって方向デジタル写真D1を撮影すればよい。この場合には、デジタルカメラ2の構成が簡単であり、デジタルカメラ2を無人飛行体3に保持することが容易である。なお、2台のデジタルカメラ2を用いて方向デジタル写真D1を撮影してもよい。また、1台のデジタルカメラ2による撮影用表面51の撮影角度を適宜変更して、複数の方向デジタル写真D1を撮影してもよい。
【0038】
図8に示すように、画像処理部41は、複数の方向デジタル写真D1が重ね合わされた合成デジタル写真D2を生成するよう構成されている。合成デジタル写真D2は、複数の方向デジタル写真D1の撮影方向が互いに異なっていることにより、空隙痕K1の形成状態を三次元的に把握することを可能にする。合成デジタル写真D2は、三次元デジタル写真として捉えてもよい。
【0039】
画像処理部41は、合成デジタル写真D2を画像処理して、合成デジタル写真D2における指定範囲内の抽出画素Gを、撮影用表面51に存在する空隙痕K1が撮影された第1画素G1と、正常なコンクリート面K2が撮影された第2画素G2とに分けるよう構成されている。
【0040】
実施形態1に示したように、撮影用表面51を一方向から撮影したデジタル写真Dのみを用いることによっては、空隙痕K1が形成されているのか、窪みによる陰影があるのか、色が黒い骨材、カーボン等による色むらが存在するのかなどの判別が難しいことがある。また、空隙痕K1であったとしても、窪みが浅いもの、輪郭が明確でないもの等については、空隙痕K1への光Lの差し込み方向によっては、空隙痕K1が黒く撮影されない場合も想定される。
【0041】
本形態の品質管理システム1においては、画像処理部41が、互いに異なる複数の方向から撮影された同じ位置の方向デジタル写真D1に基づく合成デジタル写真D2を利用する。この構成により、プレキャストコンクリート製品5の撮影用表面51における空隙痕K1の発生状態をより適切に把握することができ、空隙痕K1の補修が必要か否かをより適切に判断することが可能になる。
【0042】
本形態の品質管理システム1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の構成、作用効果等と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の構成要素と同様である。
【0043】
<実施形態3>
本形態は、作業者Mによって操縦される無人飛行体3及びコントローラ31に代えて、コンピュータの移動プログラムによって制御される移動体を用いる場合について示す。
本形態の移動体は、コンピュータの移動プログラムに従って移動する無人飛行体3である。移動体には、デジタルカメラ2が保持されている。移動体は、移動プログラムに応じて、デジタルカメラ2を撮影用表面51に対向する複数の位置へ順次移動させるよう構成されている。なお、移動体は、無人飛行体3の他にも、例えば、デジタルカメラ2を搭載して移動する移動車両等としてもよい。
【0044】
移動プログラムは、移動及び撮影を行うプログラムとして形成されており、撮影用表面51に対向する複数の撮影位置において移動体を停止させ、デジタルカメラ2による撮影を行った後に、移動体を再度移動させる構成とする。換言すれば、移動プログラムは、移動体及びデジタルカメラ2の移動と、移動の停止及びデジタルカメラ2の撮影とを繰り返し行う構成とする。
【0045】
本形態の移動プログラムは、互いに異なる複数の方向から撮影用表面51の同じ位置のデジタル写真Dを、方向デジタル写真D1として複数撮影するための移動経路Rを含む。複数の方向デジタル写真D1は、左右のレンズ21を有するデジタルカメラ2によって同時に撮影すればよい。
【0046】
本形態の画像処理部41は、移動する移動体に保持されたデジタルカメラ2によって撮影された撮影用表面51の複数箇所のデジタル写真Dについて2値化処理を行うよう構成されている。また、画像処理部41は、複数の方向デジタル写真D1が重ね合わされた合成デジタル写真D2を生成し、合成デジタル写真D2を2値化処理して、合成デジタル写真D2における指定範囲内の抽出画素Gを、撮影用表面51に存在する空隙痕K1が撮影された第1画素G1と、正常なコンクリート面K2が撮影された第2画素G2とに分けるよう構成されている。
【0047】
本形態の表示部43は、デジタルカメラ2及び移動体と通信を行うよう構成された表示装置に形成されている。表示装置は、プレキャストコンクリート製品5の品質の確認をする作業者Mが、空隙率Xを監視できるものであればよい。算出部42の構成は、実施形態1,2の場合と同様である。
【0048】
本形態の品質管理システム1においては、移動プログラムに従って移動及び撮影を行うことにより、デジタルカメラ2による撮影に作業者Mの操作を必要とせず、プレキャストコンクリート製品5の撮影用表面51における空隙痕K1の発生状態の確認を容易にすることができる。
【0049】
本形態の品質管理システム1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の構成、作用効果等と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の構成要素と同様である。
【0050】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 品質管理システム
2 デジタルカメラ
3 無人飛行体
31 コントローラ
4 演算装置
41 画像処理部
42 算出部
43 表示部
5 プレキャストコンクリート製品
51 撮影用表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8