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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183798
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/30 20060101AFI20221206BHJP
   E03D 9/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A47K13/30 Z
E03D9/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091283
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】梶野 真一
【テーマコード(参考)】
2D037
2D038
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AB01
2D037AB07
2D037AD00
2D037AD13
2D037AD14
2D037AD16
2D038GA01
2D038JC00
2D038JC11
2D038KA01
2D038KA03
2D038ZA00
(57)【要約】
【課題】便座装置の大型化とコストの増加を抑えた簡易な構成で便座を適切に除菌する。
【解決手段】便座装置は、便座と、閉状態で便座を覆う便蓋と、便蓋の裏面に取り付けられた複数の紫外線発光素子と、便蓋が閉状態で、便座の着座面に紫外線を照射するように複数の紫外線発光素子を制御する制御装置と、を備える。複数の紫外線発光素子は、各々の取付位置によって、紫外線の波長と出力と配光角の少なくともいずれかが異なる仕様に定められており、制御装置は、紫外線発光素子の各々に予め定められた照射時間に基づいて紫外線の照射を制御する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座と、
閉状態で前記便座を覆う便蓋と、
前記便蓋の裏面に取り付けられた複数の紫外線発光素子と、
前記便蓋が閉状態で、前記便座の着座面に紫外線を照射するように前記複数の紫外線発光素子を制御する制御装置と、
を備える便座装置であって、
前記複数の紫外線発光素子は、各々の取付位置によって、紫外線の波長と出力と配光角の少なくともいずれかが異なる仕様に定められており、
前記制御装置は、前記紫外線発光素子の各々に予め定められた照射時間に基づいて紫外線の照射を制御する
便座装置。
【請求項2】
請求項1に記載の便座装置であって、
前記複数の紫外線発光素子は、各々の取付位置における前記着座面までの距離に応じて前記着座面に照射される紫外線エネルギが略同等となるように、各々の前記仕様と前記照射時間とが定められている
便座装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の便座装置であって、
前記制御装置は、前記照射時間が所定時間以下の前記紫外線発光素子については、紫外線の照射を開始してから前記照射時間が経過するまで連続的に紫外線を照射するように制御し、前記照射時間が前記所定時間を超える前記紫外線発光素子については、紫外線の照射を開始してから照射している時間の合計が前記照射時間となるまで断続的に紫外線を照射するように制御する
便座装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の便座装置であって、
使用者に対する報知を行う報知部を備え、
前記制御装置は、少なくともいずれかの前記紫外線発光素子から紫外線を照射している場合に、紫外線を照射中である旨の報知を行うように前記報知部を制御する
便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置としては、紫外線を便座などに照射して除菌するものが提案されている。例えば、特許文献1には、便蓋の裏面に複数の紫外線LEDを取り付けておき、便蓋が閉状態となっている間は、紫外線LEDから便座の着座面に紫外線を常時照射するものが記載されている。また、特許文献2には、便蓋の裏面に紫外線照射部を移動可能に設けておき、紫外線照射部を移動させた際に便座までの距離を距離センサで測定し、測定した距離から設定した照射時間に基づいて、紫外線を照射するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3193623号
【特許文献2】特表2020-515348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1では、便蓋が閉状態となっている間は紫外線を常時照射するから、除菌が完了しても紫外線を照射し続けることになる。このため、紫外線LEDを必要以上に点灯させることになり、紫外線LEDの寿命が短くなったり、便座が劣化するおそれがある。また、特許文献2では、照射時間を設定するために距離センサを設ける必要があるため、装置の大型化やコストの増加を招いてしまう。
【0005】
本発明は、便座装置の大型化とコストの増加を抑えた簡易な構成で、便座を適切に除菌することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の便座装置は、
便座と、
閉状態で前記便座を覆う便蓋と、
前記便蓋の裏面に取り付けられた複数の紫外線発光素子と、
前記便蓋が閉状態で、前記便座の着座面に紫外線を照射するように前記複数の紫外線発光素子を制御する制御装置と、
を備える便座装置であって、
前記複数の紫外線発光素子は、各々の取付位置によって、紫外線の波長と出力と配光角の少なくともいずれかが異なる仕様に定められており、
前記制御装置は、前記紫外線発光素子の各々に予め定められた照射時間に基づいて紫外線の照射を制御する
ことを要旨とする。
【0008】
本発明の便座装置では、各々の取付位置によって紫外線の波長と出力と配光角の少なくともいずれかが異なる仕様の紫外線発光素子が便蓋の裏面に取り付けられており、各々に予め定められた照射時間に基づいて紫外線の照射を制御する。このため、紫外線を過不足なく照射して除菌を適切に行うことが可能となり、必要以上に紫外線を照射して便座が劣化するのを防止することができる。また、紫外線発光素子を移動可能としたり、距離センサを設けたりしないから、簡易な構成として便蓋が大きくなるのを防止することができる。したがって、便座装置の大型化とコストの増加を抑えた簡易な構成で、便座を適切に除菌することができる。
【0009】
本発明の便座装置において、前記複数の紫外線発光素子は、各々の取付位置における前記着座面までの距離に応じて前記着座面に照射される紫外線エネルギが略同等となるように、各々の前記仕様と前記照射時間とが定められているものとしてもよい。こうすれば、着座面の全体に紫外線をムラなく均一に照射することができるから、より適切に除菌することができる。
【0010】
本発明の便座装置において、前記制御装置は、前記照射時間が所定時間以下の前記紫外線発光素子については、紫外線の照射を開始してから前記照射時間が経過するまで連続的に紫外線を照射するように制御し、前記照射時間が前記所定時間を超える前記紫外線発光素子については、紫外線の照射を開始してから照射している時間の合計が前記照射時間となるまで断続的に紫外線を照射するように制御するものとしてもよい。こうすれば、紫外線発光素子が所定時間を超えて連続的に照射するのを防止するから、紫外線発光素子の過度な発熱を抑えて、発熱による照度の低下や寿命の低下を抑制することができる。また、冷却用のヒートシンクなどを便蓋に設ける必要がないから、便蓋が大きくなるのを防止することができる。
【0011】
本発明の便座装置において、使用者に対する報知を行う報知部を備え、前記制御装置は、少なくともいずれかの前記紫外線発光素子から紫外線を照射している場合に、紫外線を照射中である旨の報知を行うように前記報知部を制御するものとしてもよい。こうすれば、除菌中であることを使用者に認識させることができるから、便蓋が開状態とされるのを抑制して、便座の除菌を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図である。
図2】便座装置10の便蓋14を閉じた状態の外観斜視図である。
図3】便座装置10の構成を示すブロック図である。
図4】紫外線LED30の配置の一例を示す説明図である。
図5】紫外線LED30の配置の一例を示す説明図である。
図6】紫外線LEDの仕様と照射時間の選定表の一例を示す説明図である。
図7】各紫外線LED30の仕様と照射パターンの一例を示す説明図である。
図8】便座除菌処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図9】紫外線が照射される様子の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
図1は、便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図であり、図2は、便座装置10の便蓋14を閉じた状態の外観斜視図であり、図3は、便座装置10の構成を示すブロック図である。便座装置10は、図1に示すように、便器1の上面に取り付けられ、便座装置本体12と、便座装置本体12に対して開閉可能に支持された便座13および便蓋14と、使用者による各種操作が可能な操作パネル18と、装置全体を制御する制御装置20(図3参照)とを備える。なお、本実施形態において、左右方向、前後方向および上下方向は、図1に示した通りとする。
【0015】
便座装置本体12は、便蓋14を自動で開閉する便蓋開閉装置16と、便座13を除菌するための紫外線を照射する複数の紫外線LED30と、各種状態を報知する報知ランプとしての複数の可視光LED40とを備える。便座装置本体12は、この他に、給水管(水道配管)に接続された給水路から供給された水(洗浄水)を加温する熱交換ユニットや、洗浄水の流量や供給先を切り替える切替バルブ、切替バルブを介して供給された洗浄水を人体局部に吐出する洗浄ノズル、洗浄ノズルを進退移動させる移動機構などを備える。
【0016】
便蓋開閉装置16は、開閉モータ16aと、回転角度センサ16bとを備え、図示しない伝達ギヤや出力シャフトなどを介して開閉モータ16aの駆動力を伝達して便蓋14を自動で開閉する。回転角度センサ16bは、例えば出力シャフトに設けられた図示しない検出用ギヤの回転角度を検出するロータリポテンショメータである。便蓋14は、便蓋開閉装置16の開閉モータ16aの駆動による自動開閉に加えて、使用者の手動操作による手動開閉が可能である。なお、便座13が便蓋14と同様に自動開閉可能に構成されていてもよい。
【0017】
複数の紫外線LED30は、いずれも便蓋14の裏面(内面)に設けられている。各紫外線LED30は、図示および説明の都合上、一例として便蓋14の裏面における左右両端側に4個ずつ、左右対称の取付位置に計8個取り付けられているものとする。また、各紫外線LED30は、図1の上方から、紫外線LED31(31a,31b)、32(32a,32b)、33(33a,33b)、34(34a,34b)とする。
【0018】
図4図5は、紫外線LED30の配置の一例を示す説明図であり、図4は便座13と便蓋14の前後方向に沿った断面の一例を示し、図5図4に直交する方向に沿った断面の一例を示す。各紫外線LED30と便座13の着座面(上面)までの距離Dは、短い方から紫外線LED31の距離D1、紫外線LED32の距離D2、紫外線LED33の距離D3、紫外線LED34の距離D4の順となっている。また、便蓋14は、便座装置本体12に軸支される便蓋本体14aと、便蓋本体14aの内側に取り付けられる内蓋14bとを有する二重蓋構造となっている。各紫外線LED30は、比較的厚みの薄い基板に取り付けられた状態で便蓋本体14aと内蓋14bとの間に設けられ、内蓋14bに形成された貫通孔から露出して紫外線を照射可能となっている。このため、便蓋14に各紫外線LED30を設けても、便蓋14の厚みtが増して便蓋14が大きくなるのを抑制することができる。なお、図示は省略するが、各紫外線LED30の配線は、便蓋本体14aと内蓋14bとの間と、便蓋14の軸部とを通って便座装置本体12内の制御装置20に接続されている。
【0019】
複数の可視光LED40としては、便蓋14の裏面に設けられた可視光LED41,42と、便座装置本体12の右側面に設けられた可視光LED43との3つを備える。例えば、可視光LED41は青色光を点灯し、可視光LED42は赤色光を点灯し、可視光LED43は緑色光を点灯する。また、可視光LED41,42は、便蓋14の開状態で各紫外線LED30よりも上方の位置で、便蓋本体14aと内蓋14bとの間に設けられ、内蓋14bに形成された貫通孔から露出して可視光を照射可能となっている。
【0020】
操作パネル18には、便蓋14の開閉を指示する開閉スイッチ18aや、便座13の除菌を使用者が指示する除菌スイッチ18b、除菌などの動作の停止を指示する停止スイッチ18cが設けられている。なお、操作パネル18には、この他に、局部洗浄を指示する洗浄スイッチや、洗浄強さや洗浄位置を調整する各調整スイッチなどが設けられている。
【0021】
制御装置20は、図示しないCPUやROM,RAM,入出力ポートなどを備える。制御装置20には、便座装置10が配置された便房内(室内)の人体(使用者)を検知する人体検知センサ22からの検知信号や便座13への使用者の着座を検知する着座検知センサ24からの検知信号、操作パネル18に設けられた各操作スイッチからの操作信号、回転角度センサ16bからの検出角度などが入力ポートを介して入力される。なお、制御装置20は、回転角度センサ16bから入力した回転角度に基づいて、便蓋14の角度(開度)を算出し、便蓋14が開状態か閉状態かを検出する。また、制御装置20からは、便蓋開閉装置16への開閉信号や複数の紫外線LED30への点灯信号、複数の可視光LED40への点灯信号などが出力ポートを介して出力される。
【0022】
例えば、制御装置20は、便座装置10に異常が生じていない正常状態で、可視光LED41を点灯させて可視光LED42を消灯させる。可視光LED41の青色光により、使用者に正常状態であることを報知することができる。また、便座装置10に何らかの異常が生じている異常状態で、可視光LED42を点灯させて可視光LED41を消灯させる。可視光LED42の赤色光により、使用者に異常状態であることを報知することができる。可視光LED41,42は、便蓋14の開状態で上方の位置に設けられており、使用者が視認し易くして、正常状態か異常状態かを容易に把握させることができる。なお、制御装置20は、便蓋14が開状態の場合(閉状態でない場合)に、可視光LED41,42のいずれかを点灯させる。また、可視光LED43は、紫外線による除菌処理が実行されている場合に点灯させるものであり、詳細は後述する。
【0023】
ここで、複数の紫外線LED30は、各々の取付位置によって異なる仕様のものが取り付けられている。以下、これについて説明する。図6は、紫外線LEDの仕様と照射時間の選定表の一例を示す説明図であり、図7は、各紫外線LED30の仕様と照射パターンの一例を示す説明図である。図6に示すように、上述した距離D1,D2,D3,D4は、一例として10mm,20mm,40mm,80mmとする。また、本実施形態では、各々の取付位置における距離Dに応じて紫外線LED30の仕様が異なるものとし、左右対称の取付位置には同じ仕様の紫外線LED30が取り付けられている。
【0024】
図6では、紫外線LEDの仕様として、2種類の波長と2種類の出力とを組み合わせた4つの仕様(1)~(4)を示し、各々のコストと距離別の照射時間とを示す。紫外線による除菌効果(除菌性能)は、265nm付近の波長で最も高いことが知られており、本実施形態では、その265nm(特定の波長)と、それよりも除菌効果が低い例えば280nmのいずれかを選定した。また、出力は、例えば3mwなどの低出力と、30mwなどの高出力のいずれかを選定した。除菌効果およびコストは、波長が265nmで出力が30mwの仕様(2)が最も高く、波長が280nmで出力が3mwの仕様(3)が最も低く、波長が265nmで出力が3mwの仕様(1)や波長が280nmで出力が30mwの仕様(4)が中程度となる。
【0025】
除菌効果は、波長と出力以外に距離Dと照射時間とによって定まり、距離Dの2乗に反比例して小さくなり、出力や照射時間に比例して大きくなる。ここで、仕様(1)の紫外線LEDが、例えば距離D1(10mm)離れた照射面に、必要な除菌効果を得るための所定の紫外線エネルギを照射するのに80sかかるものとする。また、距離D2は、距離D1の2倍であるから、紫外線による除菌効果が距離Dの2乗に反比例して1/4程度に小さくなり、紫外線エネルギを略同等とするために距離D1の4倍の照射時間である320sが必要となる。同様に、距離D3,D4は、距離D1の4倍,8倍であるから、それぞれ距離D1の16倍,64倍の照射時間である1280s,5120sが必要となる。また、仕様(2)は、出力が仕様(1)の10倍であるから、紫外線エネルギを略同等とするために仕様(1)の1/10の照射時間であればよい。このため、仕様(2)の紫外線LEDの場合、距離D1,D2,D3,D4でそれぞれ8s,32s,128s,512sの照射時間となる。また、280nmの波長は、特定波長である265nmに比して、除菌効果が20%~30%程度低下する傾向にある。その低下分を考慮して略同等の紫外線エネルギとするために、265nmの照射時間に25%増しの照射時間を設定した。即ち、仕様(3)の各照射時間は、仕様(1)の各照射時間の25%増しの時間とした。また、仕様(1),(2)の関係と同様に、仕様(4)の各照射時間は、仕様(3)の各照射時間の1/10とした。
【0026】
こうした関係の選定表に基づいて、できるだけコストや出力(消費電力)を抑えつつ、数分程度の照射時間となるように、各紫外線LED30の仕様が定められている。例えば、距離D1の紫外線LED31の場合、いずれの仕様でも照射時間が2分未満と短いため、コストを重視して低コストの仕様(3)を選定した。また、距離D2の紫外線LED32の場合、数分程度の照射時間の仕様(1),(3)が候補となり、仕様(1)を選定した。なお、コストを重視して、仕様(3)としてもよい。また、距離D3の紫外線LED33の場合、数分程度の照射時間の仕様(2),(4)が候補となり、コストを重視して仕様(4)を選定した。また、距離D4の紫外線LED34の場合、コストが最も高くなるが照射時間を10分未満の数分程度とするため、仕様(2)を選定した。
【0027】
また、本実施形態では、図7に示すように、各紫外線LED30の配光角も異なっており、配光角が広い方から配光角A1,A2,A3,A4となっている。ここで、各紫外線LED30の配光角が同じであれば距離Dが小さいほど便座13の着座面における照射範囲が狭くなるから、できるだけ広範囲に紫外線を照射できるように、距離Dが小さいほど配光角が広くなるように選定した。なお、各紫外線LED30を左右それぞれで4個ずつを例示したが、各紫外線LED30の配光角や取付位置を考慮して、紫外線を着座面全体に満遍なく照射するのに必要な数の紫外線LED30を取り付ければよい。
【0028】
さらに、図7に示すように、各紫外線LED30の照射パターンも定められている。照射パターンには、上述した照射時間の他に、照射の中断有無と、中断させる場合の断続的な点灯および消灯の時間とが定められている。本実施形態では、照射時間が例えば100sなどの所定時間以下の場合には、照射時間が経過するまで連続的に紫外線を照射し、照射時間が所定時間を超える場合には、紫外線を照射している時間の合計が照射時間となるまで、断続的に紫外線を照射する。このため、紫外線LED31の場合には、中断のない連続的な照射パターンが定められ、紫外線LED32~34の場合には、中断のある断続的な照射パターンが定められる。断続的な照射パターンは、100sの点灯と、所定の中断時間(例えば30s)の消灯とを繰り返し、最後に100s以下の点灯を行うことで、点灯時間の合計が照射時間となっている。例えば、紫外線LED32の場合、100sの点灯と、30sの消灯とを3回繰り返してから、最後に20s点灯することで、合計で320sの照射時間を確保している。紫外線LED33,34も同様に照射パターンが定められており、説明は省略する。なお、点灯時間と消灯時間は一例であり、100sと30sとに限定するものではない。例えば、点灯時間が、所定時間以下となるように照射時間を略均等に分割した時間などとしてもよい。
【0029】
次に、こうして構成された便座装置10の動作、特に、便座13の着座面を除菌する際の動作を説明する。図8は、便座除菌処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0030】
図8の便座除菌処理ルーチンでは、制御装置20は、着座検知センサ24がオフであるか否か(S100)、人体検知センサ22がオフであるか否か(S110)、をそれぞれ判定する。着座検知センサ24がオンであるか、人体検知センサ22がオンであると判定すると、そのまま便座除菌処理ルーチンを終了する。一方、制御装置20は、着座検知センサ24がオフで且つ人体検知センサ22がオフである、即ち便座13に使用者が着座しておらず便房内に使用者が存在しない不在状態中と判定すると、その不在状態中に除菌処理を実行済みであるか否かを判定する(S120)。制御装置20は、後述する処理で各紫外線LED30から紫外線を照射させることにより除菌処理を実行した後の不在状態中は、S120で除菌処理を実行済みであると判定し、そのまま便座除菌処理ルーチンを終了する。なお、制御装置20は、除菌処理を実行しても、着座検知センサ24がオンとなって便座13が使用されると除菌処理の実行履歴をクリアするものとする。そのため、便座13を使用した使用者が便房から退出した場合に、S120で除菌処理を実行済みでないと判定することになる。
【0031】
制御装置20は、S120で除菌処理を実行済みでないと判定すると、便蓋14が開状態であるか否かを判定する(S130)。制御装置20は、便蓋14が開状態であると判定すると、便蓋開閉装置16により便蓋14を閉動作して閉状態とする(S140)。次に、制御装置20は、各紫外線LED30を点灯して紫外線の照射を開始することで除菌処理を開始すると共に(S150)、便座装置本体12の側面の可視光LED43を点灯させる(S160)。可視光LED43を緑色光で点灯させることにより、除菌処理中であることを使用者に報知する。即ち、可視光LED43は、除菌処理中であることを報知する報知部として機能する。
【0032】
こうして除菌処理を開始すると、制御装置20は、いずれかの紫外線LED30の照射時間に到達したか否かを判定し(S170)、照射時間に到達したと判定すると、当該紫外線LED30を消灯させて(S180)、S220に進む。なお、上述したように、中断ありの照射パターンの紫外線LED30については、S170で点灯時間の合計が、予め定められた照射時間(図7参照)に到達したか否かが判定される。
【0033】
制御装置20は、S170で照射時間に到達していないと判定すると、いずれかの紫外線LED30の照射中断タイミングであるか否か(S190)、照射を中断した紫外線LED30において所定の中断時間(消灯時間の30s)が経過したか否か(S200)、をそれぞれ判定する。例えば、紫外線LED32~34については、点灯開始から100sが経過すると、S190で照射中断タイミングであると判定する。また、照射を中断して30sが経過すると、S200で消灯時間が経過したと判定する。
【0034】
制御装置20は、S190でいずれかの紫外線LED30の照射中断タイミングであると判定すると、その紫外線LED30を消灯即ち照射を中断させて(S180)、S220に進む。また、制御装置20は、S200で中断時間(消灯時間)が経過したと判定すると、照射を中断している紫外線LED30を再度点灯させて(S210)、S220に進む。なお、S190で照射中断タイミングでなく、S200で中断時間が経過していないと判定すると、そのままS220に進む。
【0035】
そして、制御装置20は、全ての紫外線LED30の照射時間が経過して消灯したか否かを判定し(S220)、消灯していないと判定すると、S170に戻る。一方、制御装置20は、全ての紫外線LED30の照射時間が経過して消灯した即ち除菌処理が完了したと判定すると、可視光LED43を消灯して(S230)、便座除菌処理ルーチンを終了する。なお、図示は省略するが、S150以降の除菌処理の実行中に、便蓋14が開状態とされたり、停止スイッチ18cが操作されたりすると、各紫外線LED30を消灯すると共に可視光LED43を消灯して除菌処理を終了すればよい。
【0036】
以上説明した便座装置10では、取付位置によって紫外線の波長と出力と配光角が異なる仕様の紫外線LED30を、各々に予め定められた照射時間に基づいて照射制御する。このため、紫外線を過不足なく照射して除菌を適切に行うことが可能となり、必要以上に紫外線を照射して便座13が劣化するのを防止することができる。また、紫外線LED30を移動可能としたり距離センサを設けたりしないから、簡易な構成として便蓋14が大きくなるのを防止することができる。したがって、便座装置10の大型化とコストの増加を抑えた簡易な構成で、便座13を適切に除菌することができる。
【0037】
また、各紫外線LED30から着座面に照射される紫外線エネルギが略同等(略均一)となるように、仕様と照射時間とが定められているから、便座13の着座面の全体に紫外線をムラなく均一に照射して、より適切に除菌することができる。
【0038】
また、照射時間が所定時間(100s)以下であれば連続的に紫外線を照射し、所定時間を超えていれば断続的に紫外線を照射するため、紫外線LED30が所定時間を超えて連続的に照射するのを防止することができる。このため、過度な発熱を抑えて、発熱による照度の低下や寿命の低下を抑制することができる。また、冷却用のヒートシンクなどを便蓋14に設ける必要がないから、便蓋14が大きくなるのを防止することができる。
【0039】
また、便座装置10では、紫外線LED30から紫外線を照射中に、可視光LED43を点灯させるから、紫外線を照射中である旨即ち除菌処理中である旨を使用者に認識させることができる。このため、便蓋14が開状態とされるのを抑制して、便座13の除菌を適切に行うことができる。
【0040】
また、便座装置10は、正常状態では可視光LED41を点灯させて、可視光LED41の青色光により正常状態であることを報知し、異常状態では可視光LED42を点灯させて、可視光LED42の赤色光により異常状態であることを報知する。可視光LED41,42は、便蓋14の開状態で上方となる位置に設けられているから、使用者に正常状態か異常状態かを適切に報知することができる。なお、各紫外線LED30の配線を設ける際に、可視光LED41,42の配線を設ければよいから、可視光LED41,42を取り付けることにより作業負担が大きく増えることはない。また、可視光LED41,42は、正常状態か異常状態かを報知するものに限られず、異常の内容(故障内容)などの何らかの情報を使用者へ報知するものであればよい。
【0041】
実施形態では、除菌処理中に可視光LED(ランプ)43を点灯させたが、これに限られず、可視光LED43に代えてあるいは加えて、スピーカを設け、除菌処理中である旨を音(音声メッセージや報知音など)により報知してもよい。また、可視光LED43を便座装置本体12の側面に設けたが、これに限られず、便座装置本体12の上面に設けてもよいし、閉状態の便蓋14の上面(表面)に設けてもよい。あるいは、このような可視光LED43やスピーカなどを備えず、除菌処理中である旨を報知しなくてもよい。なお、除菌が完了したことを報知する可視光LEDを設け、便座13が除菌済みの状態か否かを使用者に容易に認識させてもよい。この可視光LEDは、可視光LED43とは別の可視光LEDでもよいし、可視光LED43を除菌処理中とは異なる態様で点灯させてもよい。また、実施形態では、可視光LED41,42を備えたが、これに限られず、可視光LED41,42を備えなくてもよい。
【0042】
実施形態では、紫外線LED30の仕様として、波長と出力と配光角との3つが異なるものとしたが、これに限られず、波長と出力と配光角とのうちいずれか2つが異なるものやいずれか1つが異なるものなど、少なくともいずれかが異なるものであればよい。例えば距離Dに応じて異なる波長とする場合、距離Dが近い取付位置では、除菌効果が低い波長としてコストを抑えることができ、距離Dが遠い取付位置では、除菌効果が高い波長(特定波長)として照射時間を短くすることができる。また、距離Dに応じて異なる出力とする場合、距離Dが近い取付位置では、除菌効果が低い出力としてコストを抑えることができ、距離Dが遠い取付位置では、除菌効果が高い出力として照射時間を短くすることができる。
【0043】
実施形態では、照射時間が所定時間以下のものは連続的に紫外線を照射し、所定時間を超えるものは断続的に紫外線を照射したが、これに限られず、全ての紫外線LED30が断続的に紫外線を照射するようにしてもよい。あるいは、全ての紫外線LED30が連続的に紫外線を照射するようにして、図8のS190~S210の処理を省略してもよい。そのようにする場合、ヒートシンクなどを備えて紫外線LED30を冷却すればよいが、便蓋14の大型化を抑制するため実施形態のようにするものが好ましい。また、各々の照射時間として、各々の紫外線LED30の仕様と距離Dとに応じて同等の紫外線エネルギを照射するのに必要な時間を定めたが、これに限られず、各々の紫外線LED30の仕様に応じて適宜定めるものなど、各々の照射時間が予め定められていればよい。
【0044】
実施形態では、各々の取付位置における距離Dに応じて紫外線LED30の仕様が異なるものとしたが、これに限られず、各々の取付位置によって紫外線LED30の仕様が異なるものであればよい。各々の取付位置によって、対向する便座13の着座面の形状などが異なるから、着座面の形状などを考慮して配光角などの仕様を異ならせてもよい。
【0045】
実施形態では、制御装置20が自動で便座13の除菌処理を行うものとしたが、これに限られず、使用者などによる除菌スイッチ18bの操作に基づいて、即ち除菌の指示を受けて制御装置20が便座13の除菌処理を行ってもよい。
【0046】
実施形態では、便蓋開閉装置16を備える便座装置10を例示したが、これに限られず、便蓋開閉装置16を備えない便座装置に適用してもよい。そのようにする場合、便座除菌処理ルーチンのS130で便蓋14が開状態であると判定すると、そのまま便座除菌処理ルーチンを終了すればよい。
【0047】
本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本実施形態では、便座13が「便座」に相当し、便蓋14が「便蓋」に相当し、紫外線LED30が「紫外線発光素子」に相当し、制御装置20が「制御装置」に相当する。可視光LED43が「報知部」に相当する。
【0048】
なお、本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、本実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行われるべきものであり、本実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0049】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、便座装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 便器、10 便座装置、12 便座装置本体、13 便座、14 便蓋、14a 便蓋本体、14b 内蓋、16 便蓋開閉装置、16a 開閉モータ、16b 回転角度センサ、18 操作パネル、18a 洗浄スイッチ、18b 開閉スイッチ、18c 除菌スイッチ、18d 停止スイッチ、20 制御装置、22 人体検知センサ、24 着座検知センサ、30,31(31a,31b),32(32a,32b),33(33a,33b),34(34a,34b) 紫外線LED、40,41,42,43 可視光LED。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9