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特開2022-183808電力変換装置及び電気機器、並びに、三相交流電源の不平衡状態検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183808
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電気機器、並びに、三相交流電源の不平衡状態検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
H02M7/06 A
H02M7/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091297
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖本 聖
(72)【発明者】
【氏名】金谷 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】森本 一慶
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA07
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC01
5H006CC02
5H006CC08
5H006DC02
5H006DC05
5H006DC08
5H006FA02
(57)【要約】
【課題】三相交流電源の不平衡状態を高精度に検出する。
【解決手段】平滑コンデンサ130は、整流回路102と、負荷150の駆動電力を供給する主回路104とを接続する第1及び第2の電力線PL,NLの間に接続される。周波数フィルタ160は、電圧検出器107及び電流検出器108によって検出される平滑コンデンサ103の直流電圧Vc及び直流電流Icの少なくとも一方から、三相交流電源101の系統周波数の2倍の周波数の成分を抽出する。判定部170は、周波数フィルタ160によって抽出された周波数成分が上昇すると、三相交流電源101の三相不平衡状態を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源からの三相交流電圧を整流して第1及び第2の電力線に出力する整流回路と、
前記第1及び第2の電力線の間に接続された平滑コンデンサと、
前記第1及び第2の電力線間の直流電圧を負荷の駆動電力に変換する主回路と、
前記平滑コンデンサの直流電圧及び直流電流の少なくとも一方を検出する検出器と、
前記検出器による検出値を用いて前記三相交流電源の不平衡状態を検出する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記直流電圧及び前記直流電流の少なくとも一方の前記検出値から、前記三相交流電圧の周波数の2倍の周波数の成分を抽出する周波数フィルタを含み、
前記制御部は、前記2倍の周波数の成分の上昇に応じて、前記不平衡状態を検出する第1の検出制御を実行する、電力変換装置。
【請求項2】
前記負荷は、三相モータであり、
前記主回路は、前記直流電圧を、前記三相モータに供給される交流電圧に変換する三相インバータであり、
前記制御部は、
前記2倍の周波数の成分を順次蓄積するための第1の記憶部を更に含み、
前記制御部は、前記第1の検出制御によって前記不平衡状態が検出された場合に、前記負荷の異常に起因する前記不平衡状態が発生していることを検出するための第2の検出制御を更に実行し、
前記第2の検出制御では、24時間以上の予め定められた期間内における前記2倍の周波数の成分の変化度が予め定められた閾値よりも小さいときに、前記負荷の異常に起因する前記不平衡状態を検出する、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の検出制御では、前記2倍の周波数の成分が第1の判定値を超えたときに前記不平衡状態が検出され、
前記制御部は、一定時間の経過毎に前記第2の検出制御を更に実行し、
前記一定時間の経過毎に実行される前記第2の検出制御では、前記一定時間における前記2倍の周波数の成分の平均値が第2の判定値よりも大きく、かつ、前記予め定められた期間内における前記2倍の周波数の成分の前記変化度が前記閾値よりも小さいときに、前記負荷の異常に起因する前記不平衡状態が検出され、
前記第2の判定値は、前記第1の判定値よりも小さい、請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記平滑コンデンサの温度を更に検出し、
前記制御部は、
前記直流電流と前記平滑コンデンサの上限温度との対応関係を予め記憶する第2の記憶部を更に含み、
前記制御部は、前記第1又は第2の検出制御によって前記不平衡状態が検出され、かつ、前記検出器によって検出された前記平滑コンデンサの温度が、前記検出器によって検出された前記直流電流に基づき、前記対応関係に従って設定された前記上限温度よりも高いときに、前記三相交流電源の不平衡状態を検出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記三相交流電源及び前記主回路の間の電力伝達経路に介挿接続された保護リレーを更に備え、
前記制御部は、前記三相交流電源の不平衡状態の検出に応じて、前記保護リレーを開放する制御信号を生成する、請求項1~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部によって制御される報知器を更に備え、
前記制御部は、前記三相交流電源の不平衡状態の検出に応じて、前記不平衡状態の発生を知らせるアラームを発生する様に前記報知器を制御する、請求項1~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の電力変換装置と、
前記負荷とを備える、電気機器。
【請求項8】
三相交流電源からの三相交流電圧を整流する整流回路と、負荷に駆動電力を供給する主回路とを接続する第1及び第2の電力線の間に接続される平滑コンデンサの直流電圧及び直流電流の少なくとも一方の検出値を取得するステップと、
取得された前記少なくとも一方の検出値から、前記三相交流電圧の周波数の2倍の周波数の成分を抽出するステップと、
抽出された前記2倍の周波数の成分の上昇に応じて、前記三相交流電源の不平衡状態を検出する第1の検出ステップとを備える、三相交流電源の不平衡状態検出方法。
【請求項9】
前記負荷は、三相モータであり、
前記主回路は、前記直流電圧を、前記三相モータに供給される交流電圧に変換する三相インバータであり、
前記不平衡状態検出方法は、
前記2倍の周波数の成分を順次蓄積するステップと、
前記第1の検出ステップによって前記不平衡状態が検出された場合に、24時間以上の予め定められた期間内における前記2倍の周波数の成分の変化度が予め定められた閾値よりも小さいと、前記負荷の異常に起因する前記不平衡状態を検出する第2の検出ステップを更に備える、請求項8記載の三相交流電源の不平衡状態検出方法。
【請求項10】
前記第1の検出ステップでは、前記2倍の周波数の成分が第1の判定値を超えたときに前記不平衡状態が検出され、
前記第2の検出ステップは、一定時間の経過毎に更に実行され、
前記一定時間の経過毎に実行される前記第2の検出ステップでは、前記一定時間における前記2倍の周波数の成分の平均値が第2の判定値よりも大きく、かつ、前記予め定められた期間内における前記2倍の周波数の成分の前記変化度が前記閾値よりも小さいときに、前記負荷の異常に起因する前記不平衡状態が検出され、
前記第2の判定値は、前記第1の判定値よりも小さい、請求項9記載の三相交流電源の不平衡状態検出方法。
【請求項11】
前記平滑コンデンサの温度及び直流電流の検出値を取得するステップと、
前記直流電流及び前記平滑コンデンサの上限温度の間の予め定められた対応関係に従って、取得された前記直流電流の検出値から前記上限温度を設定するステップと、
前記第1又は第2の検出ステップによって前記不平衡状態が検出され、かつ、取得された前記平滑コンデンサの温度が設定された前記上限温度よりも高いときに、前記三相交流電源の不平衡状態を検出するステップとを更に備える、請求項8~10のいずれか1項に記載の三相交流電源の不平衡状態検出方法。
【請求項12】
前記三相交流電源の不平衡状態の検出に応じて、前記三相交流電源及び前記主回路の間の電力伝達経路に介挿接続された保護リレーを開放するステップを更に備える、請求項8~11のいずれか1項に記載の三相交流電源の不平衡状態検出方法。
【請求項13】
前記三相交流電源の不平衡状態の検出に応じて、前記不平衡状態の発生を知らせるアラームを発生するステップを更に備える、請求項8~11のいずれか1項に記載の三相交流電源の不平衡状態検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置及び電気機器、並びに、三相交流電源の不平衡状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三相交流で構成された配電系統に対して単相接続された電気機器の負荷が大きい場合に、三相交流電源のR相、S相、T相のそれぞれの電圧や位相が不平衡状態となることが知られている。例えば、配電系統の需要家である住宅、店舗、工場等で使用される電気機器(例えば、照明機器等)が、三相交流電源に対して単相接続される。更に、近年では、太陽光発電システム及びヒートポンプ式給湯器等の大容量負荷が、単相接続されることにより、電圧不平衡の問題が大きくなることが懸念される。
【0003】
三相交流電源が不平衡状態になると、三相交流電源から電力供給を受ける電気機器に過大な電流が流れることがある。その場合、電気機器において、動作の不具合、及び、搭載される電子部品の劣化又は故障が発生する可能性がある。このため、三相交流電源の不平衡状態(以下、単に「三相不平衡状態」とも称する)を精度良く検出して、システムを保護する技術が求められる。
【0004】
例えば、特開2006-180649号公報(特許文献1)には、三相交流電源を整流し、かつ、コンデンサで平滑した直流電圧を電源とするインバータによって三相電動機を駆動するシステムに用いられる、三相電源不平衡状態の検出装置が記載されている。具体的には、直流電圧を平滑するコンデンサのリップル電圧の大きさが所定値以上となった状態が所定時間を超えて継続すると、三相不平衡状態を検出して、インバータに保護動作をかけることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-180649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、三相不平衡状態の検出に用いられるリップル電圧の大きさを、平滑コンデンサの電圧検出値から、リップル電圧の上限値及び下限値、並びに、両者の差分を演算することによって求めている。
【0007】
しかしながら、平滑コンデンサのリップル電圧の大きさは、インバータによって駆動される負荷の消費電力によっても変化する。電気機器の負荷は一定ではなく変動することが一般的であるため、特許文献1の技術では、負荷の出力増大時に、三相不平衡状態を誤検出することが懸念される。一方で、この様な誤検出を防止するために、三相不平衡状態を検出するための判定値を緩和すると、今度は、検出精度の低下が懸念される。
【0008】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本開示の目的は、三相交流電源の不平衡状態を高精度に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面は、電力変換装置を提供する。電力変換装置は、整流回路と、平滑コンデンサと、主回路と、検出器と、制御部とを備える。整流回路は、三相交流電源からの三相交流電圧を整流して第1及び第2の電力線に出力する。平滑コンデンサは、第1及び第2の電力線の間に接続される。主回路は、第1及び第2の電力線間の直流電圧を負荷の駆動電力に変換する。検出器は、平滑コンデンサの直流電圧及び直流電流の少なくとも一方を検出する。制御部は、検出器による検出値を用いて三相交流電源の不平衡状態を検出する。制御部は、周波数フィルタを有する。周波数フィルタは、直流電圧及び直流電流の少なくとも一方の検出値から、三相交流電圧の周波数の2倍の周波数の成分を抽出する。制御部は、2倍の周波数の成分の上昇に応じて、不平衡状態を検出する第1の検出制御を実行する。
【0010】
本発明の他のある局面は、上記電力変換装置及び上記負荷を備える電気機器を提供する。
【0011】
本発明の更に他のある局面は、三相交流電源の不平衡状態検出方法を提供する。不平衡状態検出方法は、平滑コンデンサの直流電圧及び直流電流の少なくとも一方の検出値を取得するステップと、取得された少なくとも一方の検出値から、三相交流電圧の周波数の2倍の周波数の成分を抽出するステップと、抽出された2倍の周波数の成分の上昇に応じて三相交流電源の不平衡状態を検出する第1の検出ステップとを備える。平滑コンデンサは、第1及び第2の電力線の間に接続される。三相交流電源からの三相交流電圧を整流する整流回路と、負荷に駆動電力を供給する主回路とは、第1及び第2の電力線によって接続される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、平滑コンデンサの直流電圧及び直流電流の少なくとも一方に含まれる、三相交流電圧の周波数の2倍の周波数の成分が、負荷の消費電力に依らず三相不平衡状態において増加するため、当該2倍の周波数成分の上昇に応じて、三相交流電源の不平衡状態を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の構成を説明するブロック図である。
図2図1に示された主回路の構成例を説明する回路図である。
図3】正常時(三相平衡状態)における三相交流電源の電圧波形例である。
図4】三相不平衡状態における三相交流電源の電圧波形例である。
図5】正常時における平滑コンデンサの直流電圧の第1の波形例である。
図6】正常時における平滑コンデンサの直流電圧の第2の波形例である。
図7】三相不平衡状態における平滑コンデンサの直流電圧の波形例である。
図8】実施の形態1における制御部の制御処理を説明するフローチャートである。
図9】実施の形態2に係る電力変換装置の構成を説明するブロック図である。
図10】三相交流電源の電圧不平衡率の推移の一例を示すグラフである。
図11】実施の形態2における制御部の制御処理を説明するフローチャートである。
図12】実施の形態3に係る電力変換装置の構成を説明するブロック図である。
図13】平滑コンデンサの電気抵抗値の周波数特性の例を説明するグラフである。
図14】実施の形態3における制御部の制御処理を説明する第1のフローチャートである。
図15】実施の形態3における制御部の制御処理を説明する第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置100Aの構成を説明するブロック図である。
【0016】
図1に示される様に、電力変換装置100Aは、三相交流電源101から供給された三相交流電力を、負荷105の駆動電力に変換する。例えば、負荷105は、エレベータ、又は、空調機器等に搭載される三相モータであり、電力変換装置100A及び負荷105は、電気機器200の構成要素とされる。
【0017】
電力変換装置100Aは、整流回路102と、平滑コンデンサ103と、主回路104と、電圧検出器107と、電流検出器108と、制御部150と、報知器210とを備える。
【0018】
整流回路102は、代表的には全波整流を行うダイオードブリッジで構成されて、三相交流電源101と、電力線PL,NLとの間に接続される。平滑コンデンサ103は、電力線PL及びNLの間に接続される。平滑コンデンサ103は、アルミ電解コンデンサ又はフィルムコンデンサ等によって構成される。
【0019】
電圧検出器107は、平滑コンデンサ103によって平滑化された直流電圧(以下、「コンデンサ電圧」とも称する)Vcを検出する。電流検出器108は、平滑コンデンサ103を流れる直流電流(以下、「コンデンサ電流」とも称する)Icを検出する。電圧検出器107及び電流検出器108によるコンデンサ電圧Vc及びコンデンサ電流Icの検出値は、制御部150に入力される。制御部150は、代表的には、マイクロコンピュータによって構成することができる。
【0020】
主回路104は、電力線PL,NLによって伝達される直流電力を、負荷105の駆動電力に変換する。図1の例では、主回路104は、上記コンデンサ電圧Vcを、三相モータを回転駆動するための三相交流電圧に変換する。
【0021】
図2には、主回路104の構成例を説明する回路図が示される。
図2に示される様に、主回路104は、半導体スイッチング素子14a~14fによって構成されたインバータ14と、保護リレー15とを有する。インバータ14は、一般的な三相インバータの回路構成を有し、半導体スイッチング素子14a~14fが制御部150からの制御信号Sa~Sfに応じてオンオフすることで、コンデンサ電圧Vcを負荷105(三相モータ)に印加される三相交流電圧に変換する。半導体スイッチング素子14a~14fは、例えば、MOS-FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)及びIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等によって構成することができる。
【0022】
例えば、制御部150は、図示しない電流センサによって検出された、インバータ14及び負荷(三相モータ)15の間に流れる三相電流の検出値に基づいて、三相モータの回転数又はトルクが指令値に従って制御される様に、制御信号Sa~Sfを生成する。
【0023】
保護リレー15は、三相交流電源101及び主回路104の間の電力伝達経路に介挿接続される。例えば、保護リレー15は、電力線PL又はNLに介挿接続される。保護リレー15は、ノーマリオンであり、制御部150から制御信号Sopnに応じてオフ(開放)される。保護リレー15のオフにより、インバータ14及び負荷105は、動作を停止する。
【0024】
再び図1を参照して、三相交流電源101の各相の電圧が不平衡状態になると平滑コンデンサ103の電圧変動が大きくなったり、平滑コンデンサ103に流れる電流が大きくなったりする。従って、制御部150は、コンデンサ電圧Vc又はコンデンサ電流Icに基づいて三相不平衡状態を検出するための、周波数フィルタ160及び判定部170を有する。
【0025】
周波数フィルタ160は、逐次検出されるコンデンサ電圧Vc又はコンデンサ電流Icの予め定められた特定の周波数の成分(以下、「特定周波数成分」と称する)を抽出する。例えば、周波数フィルタ160には、ローパスフィルタ(LPF)又はバンドパスフィルタ(BPF)を用いることができる。周波数フィルタ160は、抵抗、コイル、及び、コンデンサで構成されるパッシブフィルタ、又は、オペアンプ等の能動素子を利用したアクティブフィルタによって構成することができる。或いは、周波数フィルタ160は、コンデンサ電圧Vc及びコンデンサ電流Icのデジタル変換値を演算処理(フーリエ変換等)するデジタルフィルタによって構成することも可能である。
【0026】
判定部170は、周波数フィルタ160によって抽出された、特定周波数成分に基づき、三相不平衡状態が発生しているか否かを判定する。判定部170は、代表的には、所定のプログラムを実行するソフトウェア処理によって構成することができる。或いは、判定部170は、後述する処理を実行する専用の電子回路(ハードウェア)によって構成することも可能である。
【0027】
報知器210は、制御部150からの制御指令に応じて、三相不平衡状態の検出時に、アラーム又はメッセージ等をユーザに対して出力する様に構成される。例えば、報知器210は、表示画面或いはスピーカ、又は、両者の組み合わせによって構成することができる。
【0028】
制御部150は、周波数フィルタ160及び判定部170を具備することにより、電圧検出器107及び電流検出器108による検出値を用いて、三相不平衡状態を検出する機能を有する。以下では、平滑コンデンサ103のコンデンサ電圧Vcの特定周波数成分を用いた三相不平衡状態の検出手法について説明する。
【0029】
図3には、正常時(三相平衡状態)における三相交流電源101の電圧波形例が示される一方で、図4には、三相不平衡状態における三相交流電源101の電圧波形例が示される。
【0030】
図3に示される様に、三相交流電源101は、R相、S相、T相の三相の交流電圧Vr,Vs,Vtを発生する。交流電圧Vr,Vs,Vtは、予め定められた系統周波数f(50[Hz]又は60[Hz])を有し、かつ、位相が120[deg]ずつ異なる。
【0031】
図3に示される様に、正常時(三相平衡状態)には、交流電圧Vr,Vs,Vtの各々の振幅は同等(V1)である。これに対して、図4に示される三相不平衡状態では、交流電圧Vr,Vs,Vtの振幅に差異が生じる。図4には、T相の交流電圧Vtの振幅が、他のR相及びS相の交流電圧Vr,Vsの振幅(V1)よりも小さい例が示される。
【0032】
図5及び図6には、正常時(三相平衡状態)における平滑コンデンサ103のコンデンサ電圧Vcの波形例が示される。即ち、図5及び図6には、図3に対応する、コンデンサ電圧Vcの波形例が示される。
【0033】
図5に示される様に、整流回路102からは、交流電圧Vr,Vs,Vtの絶対値の波形を合成した脈動電圧Vrstが出力される。コンデンサ電圧Vcは、負荷105での電力消費による平滑コンデンサ103の放電によって低下する。一方で、脈動電圧Vrstがコンデンサ電圧Vcよりも低くなると、平滑コンデンサ103が充電されることにより、コンデンサ電圧Vcは上昇する。これにより、三相交流電源101から生成されるコンデンサ電圧Vcには、系統周波数fの6倍の周波数の変動成分を有するリップル電圧が発生する。尚、平滑コンデンサ103を流れるコンデンサ電流Icにも同様の周波数成分が発生する。
【0034】
図6には、負荷105の消費電力の違いに対するコンデンサ電圧Vcの波形例が示される。
【0035】
図6中には、負荷105の消費電力が小さいときのコンデンサ電圧Vcの波形が実線で示される一方で、負荷105の消費電力が大きいときのコンデンサ電圧Vcの波形が点線で示される。
【0036】
図6から理解される様に、負荷105の消費電力に依存してコンデンサ電圧Vcの低下速度が変化するので、コンデンサ電圧Vcの変動量(リップル電圧の大きさ)は、負荷105の動作状態(消費電力)に応じて変化する。従って、特許文献1の様に、リップル電圧の大きさと判定値との比較によって三相不平衡状態を検知すると、負荷電力が大きいときに三相不平衡状態を誤検出する虞がある。
【0037】
又、平滑コンデンサ103の経年劣化によって容量値が減少するのに応じて、リップル電圧も大きくなる。従って、リップル電圧の大きさに基づく判定では、経年劣化に応じて三相不平衡状態が誤検出されることも懸念される。
【0038】
一方で、これらの誤検出を回避するためのマージンを持たせて当該判定値を設定すると、三相不平衡状態の検出精度が低下することが懸念される。
【0039】
これに対して、図6中の点線及び実線の波形の比較から、コンデンサ電圧Vcのリップル電圧の周波数成分は、平滑コンデンサ103の放電速度に依らず、系統周波数fの6倍の周波数が支配的になることが分かる。即ち、コンデンサ電圧Vcの周波数特性は、負荷105の動作状態(消費電力)に応じた変化が小さいことが理解される。
【0040】
図7には、三相不平衡状態における平滑コンデンサ103のコンデンサ電圧Vcの波形例が示される。即ち、図7には、図4に対応する、コンデンサ電圧Vcの波形例が示される。
【0041】
図7に示される様に、三相不平衡状態では、脈動電圧Vrstにおいて、振幅が他の相よりも小さい交流電圧Vtのピークに相当する位相の電圧値が、三相平衡状態(図5)よりも低下する。
【0042】
この結果、図7では、上述の位相において、平滑コンデンサ103が充電されない。この結果、コンデンサ電圧Vcが低下する期間が長くなり、リップル電圧の周波数特性が変化する。具体的には、コンデンサ電圧Vc及びコンデンサ電流Icは、系統周波数fの成分、或いは、系統周波数fの2倍の周波数(100[Hz]又は120[Hz])の成分(以下、「2f成分」)を含む様になる。
【0043】
図示は省略するが、三相のうちの二相の電圧が、残りの相の電圧よりも低くなる三相不平衡状態でも、同様に平滑コンデンサ103の充電回数が減るので、コンデンサ電圧Vc及びコンデンサ電流Icには、2f成分が含まれる様になる。この様な、コンデンサ電圧Vcの周波数特性の変化は、図6で説明したのと同様に、負荷105の動作状態(消費電力)が異なっても共通に現れる。
【0044】
三相不平衡状態では、平滑コンデンサ103の充電回数の減少に伴い、各充電タイミングでのコンデンサ電流Icは増加する。これにより、平滑コンデンサ103の発熱による温度上昇に起因して、電気機器の寿命が短くなる虞がある。或いは、平滑コンデンサ103の温度上昇に伴ってコンデンサ電圧Vcの変動成分(リップル電圧)が大きくなることで、負荷(三相モータ)105の制御性が低下することで、電気機器の動作に影響が出ることも懸念される。従って、三相不平衡状態の発生を適切に検出することが求められる。
【0045】
図8には、実施の形態1に係る制御部150の制御処理を説明するフローチャートが示される。
【0046】
図8を参照して、制御部150は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110では、電圧検出器107及び電流検出器108の出力から、平滑コンデンサ103のコンデンサ電圧Vc又はコンデンサ電流Icの検出値を取得する。制御部151は、S120により、コンデンサ電圧Vc又はコンデンサ電流Icの特定周波数の成分(ここでは、2f成分)を抽出する。即ち、周波数フィルタ160の周波数特性は、系統周波数fの2倍の周波数(100[Hz]又は120[Hz])を抽出する様に設計される。S110及びS120による処理は、周波数フィルタ160によって実現される。
【0047】
制御部150は、S130により、S120で抽出された2f成分を予め定められた判定値P1と比較する。判定値P1は、三相交流電源101の不平衡状態の度合いと、コンデンサ電圧Vc又はコンデンサ電流Icの2f成分の大きさと対応関係を、実施試験又はシミュレーションで測定することにより、予め定めることができる。尚、上述の様に、判定値は、負荷105の動作状態(消費電力)に依存しない一定値とすることができる。
【0048】
制御部150は、2f成分が判定値P1より大きい場合(S130のYES判定時)には、S140により、三相不平衡状態を検出する。更に、三相不平衡状態の検出に応じて、S150の処理が実行される。S150では、報知器210を用いた、三相不平衡状態の発生を知らせるアラームの発生、及び、保護リレー15のオフによる電力変換装置100A(電気機器200)の自動停止の少なくとも一方を実行することができる。制御部150は、報知器210に対するアラーム出力指令、及び、保護リレー15を開放するための制御信号Sopnの少なくとも一方を実行する。S130~S150による処理は、判定部170によって実現される。S130及びS140は、「第1の検出ステップ」の一実施例に対応し、S130及びS140の処理によって「第1の検出制御」が実現される。
【0049】
2f成分が判定値P1より小さい場合(S130のNO判定時)には、S110~S130の処理が繰り返し実行される。即ち、三相不平衡状態が検出されることなく、三相不平衡状態を検出するための監視が継続的に実行されることになる。
【0050】
この様に、実施の形態1に係る電力変換装置及び電気機器によれば、平滑コンデンサ103の電圧又は電流の特定の周波数成分の抽出により、負荷の動作状態(消費電力)の変化、及び、経年劣化による平滑コンデンサ103の容量値の変化の影響を抑制して、三相交流電源の三相不平衡状態を高精度に検出することが可能である。
【0051】
更に、三相不平衡状態の検出に応じた、保護リレー15のオフ又は報知器210によるアラーム出力により、電力変換装置及び電気機器が三相不平衡状態の下で継続的に動作するのを回避することによって、機器の長寿命化を図ることができる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態2では、負荷側の異常による三相不平衡状態の検出について説明する。
【0053】
図9には、実施の形態2に係る電力変換装置100Bの構成を説明するブロック図が示される。
【0054】
図9に示される様に、電力変換装置100Bは、実施の形態1に係る電力変換装置100A(図1)と比較して、制御部150に代えて、制御部151を備える点で異なる。
【0055】
制御部151は、制御部150(図1)と比較すると、記憶部180及びタイマ185を更に含む点と、判定部170(図1)に代えて判定部171を含む点とで異なる。
【0056】
制御部151は、実施の形態1で説明した制御部150による三相不平衡状態の検出機能に加えて、後述する様な、負荷側の異常による三相不平衡状態を検出する機能を有する。
【0057】
図10には、三相交流電源の電圧不平衡率の推移の一例を示すグラフが示される。電圧不平衡率は、三相不平衡状態の度合いを示す定量値であり、三相のうちの最も高電圧の相の電圧Vmax(実効値、又は、振幅)と、三相のうちの最も低電圧の相の電圧Vmin(実効値、又は、振幅)とを用いると、(Vmax-Vmin)/Vminで定義される。尚、当該電圧不平衡率と、コンデンサ電圧Vc及びコンデンサ電流Icの2f成分との間には、正の相関があることが、発明者らによって確認されている。
【0058】
図10中には、ある需要家における電圧不平衡率の24時間の推移例が示される。図10から、上述した、昼間及び夜間の間での、電気機器及び太陽光発電システム等の動作状況の変化により、1日の中で、電圧不平衡率が変化していることが理解される。1日(24時間内)での電圧不平衡率の変動率Kを、例えば、24時間内での電圧不平衡率の最大値K1及び最小値K2を用いて、K=(K1-K2)/K2で定義することができる。
【0059】
三相交流電源101の電圧不平衡は、上述した様に、配電系統の需要家である住宅、店舗、及び、工場等で使用される電気機器、及び、太陽光発電システム等の単相大容量負荷が、三相交流電源101の三相のうちの二相に接続される、単相接続の態様で使用されることが原因となるケースがある。
【0060】
例えば、照明機器は、単相接続されるケースが多いため、特定の相に対する接続が集中すると、照明機器の消費電力が大きくなる夜間において、当該相の電圧低下によって電圧不平衡の度合いが大きくなる可能性がある。反対に、特定の相に対する太陽光発電システムの接続が集中すると、発電電力が大きくなる昼間において、当該相の電圧上昇によって電圧不平衡の度合いが大きくなる可能性がある。
【0061】
この様な、三相交流電源101に接続された負荷105の種類及び動作状況に起因して三相不平衡状態が検出される場合には、図10に示される様に、三相不平衡の度合いが時間帯に依存して変化する特性が現れる。
【0062】
これに対して、三相不平衡状態は、負荷105側の異常が原因で発生するケースも存在する。代表的には、三相モータが、欠相によって単相運転することで、三相不平衡状態が発生することがある。例えば、三相モータの欠相は、いずれかの相に接続される電線が断線状態、又は、不安定な接続状態となったり、主回路104において、一部の相のスイッチング素子が故障したりすることで発生する。
【0063】
三相運転されるべき負荷(モータ)が欠相状態で起動する場合には、特定相への電流集中等によって過電流が発生するため、電流監視による過負荷検出によって、負荷を保護停止することが可能である。
【0064】
一方で、三相負荷(モータ)の連続運転中に欠相が発生した場合には、モータの負荷が軽い為、過電流検出が困難であり、かつ、平滑コンデンサ103のコンデンサ電圧Vc及びコンデンサ電流Icの変化も比較的小さくなる。或いは、モータが欠相状態までは至らないものの、劣化等によって三相不平衡状態で運転されるケースも想定される。この様なケースについても、実施の形態1で説明した様に、コンデンサ電圧Vc及びコンデンサ電流Icの2f成分に基づいて、三相不平衡状態を検出することができる。
【0065】
実施の形態1によって検出された電圧不平衡状態について、上述の様に、負荷105(電気機器)側の異常で発生している場合には、ユーザに対して、負荷105の異常を解消するアクションを促す報知を行うことが好ましい。
【0066】
図11には、実施の形態2に係る制御部151による制御処理を説明するフローチャートが示される。制御部151は、電気機器200の動作中において、実施の形態1の制御部150による制御処理(図8)に加えて、図11の制御処理を実行する。
【0067】
制御部151は、図8と同様のS110及びS120により、平滑コンデンサ103のコンデンサ電圧Vc又はコンデンサ電流Icの検出値を取得するとともに、コンデンサ電圧Vc又はコンデンサ電流Icの2f成分を抽出する。更に、制御部151は、S200により、S120で抽出された2f成分の値を、測定時間データと合わせて蓄積する。S200の処理は、タイマ185及び記憶部180によって実現される。即ち、記憶部180は「第1の記憶部」の一実施例に対応する。
【0068】
制御部151は、判定タイミングが到来すると(S210のYES判定時)、S200により蓄積されたデータを用いて、S220以降の処理を実行する。判定タイミングは、例えば、実施の形態1における三相不平衡状態の検出時に設けられる。即ち、図8のS130のYES判定に連動して、S210をYES判定とすることができる。
【0069】
判定タイミング以外では(S210のNO判定時)、S110、S120、及び、S200の処理が繰り返されて、コンデンサ電圧Vc又はコンデンサ電流Icの2f成分の値が順次蓄積される。
【0070】
制御部151は、S220では、現時点(即ち、当該判定タイミング)から、24時間以上の予め定められた一定期間(代表的には、24時間)内で蓄積された2f成分の値から、2f成分の変化率Xfを算出する。当該変化率は、蓄積された2f成分(例えば、24時間分)の最大値f1及び最小値f2を用いて、Xf=(f1-f2)/f2として算出することができる。代表的には、当該判定タイミングから24時間内で蓄積された2f成分の最大値及び最小値を抽出して、変化率Xfを算出することができる。或いは、時間帯毎(例えば、1時間毎)に複数日のデータを平均して、時間帯毎の当該平均値から最大値及び最小値を抽出することによって、変化率Xfを求めることも可能である。
【0071】
制御部151は、S230により、S220で算出された変化率Xfを、予め定められた閾値Tpと比較する。変化率Xfが閾値Tpより低い場合には(S230のYES判定時)、S240に処理が進められて、負荷105(電気機器200)側の異常に起因する三相不平衡状態が検出される。2f成分の変化率に係る閾値Tpについても、実機試験又はシミュレーションの結果に基づいて、予め求めることができる。S230及びS240は、「第2の検出ステップ」の一実施例に対応し、S230及びS240の処理によって「第2の検出制御」が実現される。
【0072】
更に、制御部151は、S250により、負荷105(電気機器200)の異常発生を報知するためのアラームを、報知器210を用いて発生する。当該アラームには、三相モータが単相運転されている可能性があることを報知する等、ユーザに対して負荷105の点検を促す情報が含まれることが好ましい。或いは、S250においても、保護リレー15(図1)の開放による、電力変換装置100B及び電気機器200の保護停止を行うことが可能である。
【0073】
これに対して、変化率Xfが閾値Tp以上である場合(S230のNO判定時)には、S240,S250の処理はスキップされて、負荷105(電気機器200)側の異常に起因する三相不平衡状態は検出されない。
【0074】
この様に、実施の形態2に係る電力変換装置及び電気機器によれば、実施の形態1で説明した効果に加えて、平滑コンデンサ103の電圧又は電流の特定周波数成分(2f成分)の時間経過に伴う変化度に基づいて、負荷105(電気機器200)側の異常に起因して三相不平衡状態が生じていることを検出できる。
【0075】
更に、ユーザに対して負荷105(電気機器200)側の異常の発生を報知することで、当該異常による三相不平衡状態が継続することを防止できる。これにより、三相不平衡状態での連続的な負荷105の運転を回避して、電気機器200に流れる過大な電流を抑制することで、電気機器200の長寿命化を図ることできる。
【0076】
図11では、2f成分の変化率Xfと閾値との比較によって、一定期間(24時間以上)内での2f成分の変化度を定量評価する例を示したが、当該変化度は、変化率Xf以外の数値を用いて、評価することも可能である(例えば、最大値及び最小値の差分、又は、標準偏差等)。
【0077】
尚、実施の形態2において、図11のS210による判定タイミングは、実施の形態1での三相不平衡状態の検出タイミングに加えて、定期的(例えば、1回/日)に設けることも可能である。この様な判定タイミングにおいても、S220での変化率Xfは、同様に算出することができる。一方で、S230では、Xf<Tpの判定に加えて、判定タイミング間で蓄積された2f成分の平均値Xaを判定値P2と比較する処理が更に実行される。当該判定値P2は、実施の形態1での図8のS130で用いられる判定値P1よりも低い値に設定される(P2<P1)。
【0078】
そして、S230は、Xf<Tp、及び、Xa>P2の両方が成立するとYES判定とされて、S240,S250の処理が実行される。この様にすると、判定値P1を用いた実施の形態1では三相不平衡状態が検出されないレベルであっても、負荷105(電気機器200)側の異常に起因して、継続的に発生している三相不平衡状態を更に検出することが可能となる。
【0079】
尚、実施の形態1及び2では、平滑コンデンサ103のコンデンサ電圧Vc又はコンデンサ電流Icの2f成分に基づいて三相不平衡状態を検出する例を説明したが、コンデンサ電圧Vc及びコンデンサ電流Icの2f成分を用いて、三相不平衡状態を検出することも可能である。即ち、本実施の形態では、平滑コンデンサ103のコンデンサ電圧Vc及びコンデンサ電流Icの少なくとも一方の2f成分を用いて、三相不平衡状態を検出することが可能である。
【0080】
実施の形態3.
実施の形態3では、平滑コンデンサ103の温度上昇の検出を組み合わせて、三相不平衡状態を正確に検出するための制御処理を説明する。
【0081】
図12には、実施の形態3に係る電力変換装置100Cの構成を説明するブロック図が示される。
【0082】
図12に示される様に、電力変換装置100Cは、実施の形態1に係る電力変換装置100A(図1)と比較して、温度検出器109を更に備える点と、制御部150に代えて、制御部152を備える点で異なる。
【0083】
制御部152は、制御部150(図1)と比較すると、記憶部181を更に含む点と、判定部170(図1)に代えて判定部172を含む点とで異なる。
【0084】
温度検出器109は、平滑コンデンサ103に配置されて、平滑コンデンサ103の温度を検出する。温度検出器109によって検出されたコンデンサ温度Tcは、制御部152(判定部172)に入力される。温度検出器109は、サーミスタ、又は、熱電対等の任意の温度センサによって構成することができる。
【0085】
制御部152は、実施の形態1,2で説明した制御部150又は151による三相不平衡状態の検出機能に加えて、後述する様な、平滑コンデンサ103の温度検出値(コンデンサ温度)Tcに基づく、三相不平衡状態の検出機能を有する。
【0086】
図13には、平滑コンデンサ103の電気抵抗値(ESR:Equivalent series resistance)の周波数特性の例を説明するグラフが示される。図13には、アルミ電解コンデンサのESRの周波数特性が示される。
【0087】
図13に示される様に、アルミ電解コンデンサのESRは、メーカ及び品種によって若干の差異はあるものの、低周波数になる程高くなる特性を有する。これにより、系統周波数f(50[Hz]又は60[Hz])の2倍の周波数である2fでのESRは、交流周波数の6倍の周波数である6fでのESRよりも高い値(例えば、10~30(%)程度上昇)を有する。この様な周波数特性は、アルミ電解コンデンサに限らず、セラミックコンデンサ、及び、フィルムコンデンサ等、平滑コンデンサ103と通常用いられる種類のコンデンサにも共通に現れる。
【0088】
平滑コンデンサ103の発熱量は、オームの法則より、上述のESRと、コンデンサ電流Ic(実効値)の2乗との積で示される。従って、同一のコンデンサ電流Ic(実効値)の下でも、ESRが増加すると、平滑コンデンサ103の発熱量も増加することが理解される。
【0089】
上述した様に、三相不平衡状態が発生すると、平滑コンデンサ103に流れるコンデンサ電流Icの主な周波数成分は、6fから2fに低下する。これにより、図13に示された周波数特性に従ってESRが増加することによって、同じ大きさの直流電流(実効値)が流れた下で、三相不平衡状態では、正常時(三相平衡状態)と比較して、平滑コンデンサ103の温度上昇が大きくなる。実施の形態3では、上述の周波数特性を利用して、三相不平衡状態を検出する。
【0090】
図14には、実施の形態3における制御部152の制御処理を説明する第1のフローチャートが示される。
【0091】
図14を参照して、制御部152は、S310では、電流検出器108及び温度検出器109の出力から、平滑コンデンサ103のコンデンサ電流Ic、及び、コンデンサ温度Tcの検出値を取得する。
【0092】
制御部152は、記憶部181に予め保持された対応関係(テーブル、又は、関数式)に従って、S310で取得されたコンデンサ電流Icの検出値に対応する平滑コンデンサ103の上限温度Tclimを設定する。即ち、記憶部181は「第2の記憶部」の一実施例に対応する。尚、当該対応関係は、6f成分を主成分とするコンデンサ電流Icの各電流値が平滑コンデンサ103を流れたときの発熱量に対応させて、実機試験又はシミュレーションの結果から予め定めることができる。
【0093】
制御部152は、S330により、S310で取得されたコンデンサ温度Tcと、S320で設定された上限温度Tclimとを比較する。コンデンサ温度Tcが上限温度Tclimよりも高い場合(S330のYES判定時)には、S340により、三相不平衡状態が検出される。一方で、コンデンサ温度Tcが上限温度Tclim以下である場合(S330のNO判定時)には、S350により、三相不平衡状態は非検出とされる。
【0094】
次に、実施の形態1,2に係るコンデンサ電圧Vc又はコンデンサ電流Icの2f成分に基づく三相不平衡状態の検出と、実施の形態3に係るコンデンサ温度Tcに基づく三相不平衡状態の検出との組み合わせについて説明する。
【0095】
図15には、実施の形態3における制御部152の制御処理を説明する第2のフローチャートが示される。
【0096】
図15に示される様に、制御部152は、S410によって、実施の形態1又は2に係る2f成分に基づく三相不平衡状態の判定結果を参照し、不平衡状態が検出されると(S410のYES判定時)、S420により、実施の形態3に係るコンデンサ温度Tcに基づく三相不平衡状態の判定結果を参照する。
【0097】
制御部152は、コンデンサ温度Tcからも三相不平衡状態が検出されると、(S410及びS420のYES判定時)、S430により、三相交流電源101の三相不平衡状態を検出する。S430では、図8のS150と同様に、報知器210を用いたアラームの発生、及び、保護リレー15のオフによる電力変換装置100C(電気機器200)の自動停止の少なくとも一方が更に実行される。
【0098】
これに対して、制御部152は、S410又はS420のNO判定時、即ち、2f成分に基づく判定(実施の形態1,2)、及び、コンデンサ温度Tcに基づく判定(実施の形態3)の少なくとも一方で、三相不平衡状態が非検出である場合には、S440により、三相不平衡状態を非検出とする。
【0099】
この様に実施の形態3に係る電力変換装置及び電気機器によれば、三相不平衡状態の発生に伴う平滑コンデンサ103の温度上昇の検出を更に組み合わせることにより、コンデンサ電圧Vc及びコンデンサ電流Icの測定ノイズ等による誤検出を抑制することによって、三相交流電源の不平衡状態の検出精度を高めることができる。
【0100】
尚、実施の形態1~3では、インバータ14によって構成された主回路104によって、三相モータで構成された負荷105を駆動する例を説明したが、主回路104及び負荷105は、この例示に限定されるものではない。例えば、実施の形態1及び3については、負荷105が三相モータ以外で構成されても適用可能であり、更には、主回路104及び負荷105がDC/DC変換器及び直流負荷(例えば、直流モータ)で構成された場合にも、三相不平衡状態を検出することが可能である。
【0101】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示による技術的範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
14 インバータ、14a,14f 半導体スイッチング素子、15 保護リレー、100A,100B,100C 電力変換装置、101 三相交流電源、102 整流回路、103 平滑コンデンサ、104 主回路、105 負荷、107 電圧検出器、108 電流検出器、109 温度検出器、150,151,152 制御部、160 周波数フィルタ、170,171,172 判定部、180,181 記憶部、185 タイマ、200 電気機器、210 報知器、Ic コンデンサ電流、NL,PL 電力線、P1,P2 判定値、Sa~Sf,Sopn 制御信号、Tc コンデンサ温度、Tclim 上限温度、Vc コンデンサ電圧、Vr,Vs,Vt 交流電圧、Vrst 脈動電圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15