(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183811
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】樹脂封止金型、樹脂封止装置および樹脂封止方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20221206BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20221206BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20221206BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20221206BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20221206BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01L21/56 T
B29C43/18
B29C43/34
B29C45/26
B29C33/12
B29C45/14
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091300
(22)【出願日】2021-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】501184434
【氏名又は名称】アサヒ・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】久松 誠
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F206
5F061
【Fターム(参考)】
4F202AD03
4F202AD05
4F202AH33
4F202AH37
4F202CA09
4F202CA12
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CK18
4F202CQ01
4F204AD19
4F204AH37
4F204AJ08
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB17
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
4F206AD03
4F206AD05
4F206AH33
4F206AH37
4F206JA02
4F206JB12
4F206JB17
4F206JL02
4F206JQ81
5F061AA01
5F061CA21
5F061DA01
(57)【要約】
【課題】電子部品間に厚みの差があっても適切な押圧力により電子部品端面を押圧して、樹脂バリの発生および電子部品の破損がない両面露出成形が可能な樹脂封止金型、樹脂封止装置および樹脂封止方法の提供。
【解決手段】樹脂封止金型1は、複数の電子部品11を樹脂封止するための複数のキャビティ10と、複数のキャビティ10内にそれぞれ配置された電子部品11をそれぞれ押圧する複数の可動コア22と、複数の可動コア22をそれぞれ押圧する押圧部材4と複数の可動コア22との間にそれぞれ設けられたバネ定数の異なる複数の弾性部材23a,23bとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品を樹脂封止するための複数のキャビティと、
前記複数のキャビティ内にそれぞれ配置された電子部品をそれぞれ押圧する複数の可動コアと、
前記複数の可動コアをそれぞれバネ定数の異なる複数の弾性部材により押圧する複数の弾性部材セットと
を含む樹脂封止金型。
【請求項2】
前記弾性部材セットは、前記複数の弾性部材の少なくとも一部が前記可動コアに対して並列に配設されたものである請求項1記載の樹脂封止金型。
【請求項3】
前記弾性部材セットは、前記複数の弾性部材の少なくとも一部が前記可動コアに対して直列に配設されたものである請求項1または2に記載の樹脂封止金型。
【請求項4】
前記複数の弾性部材セットの各複数の弾性部材の間にそれぞれ設けられた複数の第1プレートを有する請求項3に記載の樹脂封止金型。
【請求項5】
前記複数の弾性部材セットの各複数の弾性部材を前記可動コアに対して一括して押圧する複数の第2プレートを有する請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂封止金型。
【請求項6】
前記複数の弾性部材と前記複数の可動コアとの間にそれぞれ設けられた複数の第3プレートを有する請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂封止金型。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂封止金型を含む樹脂封止装置。
【請求項8】
前記複数の弾性部材セットを介して前記複数の可動コアを押圧する複数の押圧部材を含む請求項7記載の樹脂封止装置。
【請求項9】
樹脂封止金型の複数のキャビティ内にそれぞれ配置された電子部品を複数の可動コアによりそれぞれ押圧して、前記複数のキャビティ内に樹脂を注入する樹脂封止方法であって、
前記複数の可動コアをそれぞれバネ定数の異なる複数の弾性部材からなる複数の弾性部材セットにより押圧するに際し、前記複数の弾性部材セットの各弾性部材のうちバネ定数の小さい弾性部材の撓みにより、前記複数の可動コアをそれぞれ押圧すること、
前記複数のキャビティ内にそれぞれ樹脂を注入充填し、前記複数のキャビティ内の樹脂圧上昇に伴い、さらに前記バネ定数の小さい弾性部材に加えて弾性部材の大きい弾性部材により前記樹脂圧に応じた力を発生させること
を含む樹脂封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の両面露出成形を行うための樹脂封止金型、樹脂封止装置および樹脂封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体などの電子部品は、その機能特性から、基板の両面に配置された放熱部材などを露出して樹脂封止成形される。しかし、電子部品の構造上、基板と放熱部材との間にはチップなどが積層されているため、樹脂封止前の電子部品は個体ごとに厚みのばらつきがある。
【0003】
ところで、半導体の生産効率を上げるため、1つの金型で一度に複数の電子部品を両面露出成形する場合、上下金型の各キャビティ面で電子部品の両端面を押さえて樹脂を注入し、樹脂封止成形する。しかし、前述のように個体ごとの厚みのばらつきにより、厚みが薄いものはキャビティ面と電子部品端面の間に隙間ができて樹脂が浸入し、樹脂バリが発生する。一方、厚いものは、電子部品の両端面に力が掛かりすぎて電子部品を破損するという問題がある。
【0004】
このような問題を解消するため、電子部品を押さえるキャビティ端面を可動コアで構成し、可動コアをバネで押すことにより、厚みのばらつきを吸収する技術が公開されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように可動コアをばねで押す方法では、上下型を型締めする際に、ばね力によって可動コアが電子部品の端面を押圧するので、ばね圧は電子部品が破損しない範囲に設定することが必要である。
【0007】
また、樹脂封止成形では、型締め後、封止用樹脂をキャビティ内に注入、充填し、キャビティ内の空気を完全に押し出して、成形後の封止樹脂内にボイド(気泡)が発生しないようにする必要がある。そのため、樹脂注入時には、樹脂に圧力(樹脂圧)を掛け(例えば6~10MPa程度)、空気をエアベントから排出する。
【0008】
前記のように、電子部品が破損しない程度のばね圧を設定した場合、型締め後、樹脂注入して樹脂圧を掛けたとき、樹脂圧がばね圧を上回ると、可動コアが押し戻されて電子部品の端面と可動コアの押圧面との間に隙間ができ、この隙間に樹脂が侵入して、樹脂バリが発生する恐れがある。
【0009】
また、樹脂は、電子部品の積層構造内部の隙間も封止するため、電子部品内部にも入り込んでおり、樹脂圧により可動コアが押し戻されるにしたがって、電子部品の積層部材も押し広げられ、積層部材が剥離する恐れがある。
【0010】
さらに、特許文献1に記載の方法では、押圧力はばね圧だけであるため、押圧力の調整を行う場合、ばねの交換作業が必要となる。
【0011】
そこで、本発明においては、電子部品間に厚みの差があっても適切な押圧力により電子部品端面を押圧して、樹脂バリの発生および電子部品の破損がない両面露出成形が可能な樹脂封止金型、樹脂封止装置および樹脂封止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の樹脂封止金型は、複数の電子部品を樹脂封止するための複数のキャビティと、複数のキャビティ内にそれぞれ配置された電子部品をそれぞれ押圧する複数の可動コアと、複数の可動コアをそれぞれバネ定数の異なる複数の弾性部材により押圧する複数の弾性部材セットとを含むものである。
【0013】
本発明の樹脂封止金型によれば、複数の可動コアを複数の弾性部材セットによりそれぞれ押圧した際、各弾性部材セットのバネ定数の異なる複数の弾性部材のうちバネ定数の小さい弾性部材から先に撓み、複数の電子部品間の厚みの差を吸収して対応する各電子部品をそれぞれ小さな圧縮力で押圧するので、各電子部品の破損を防止することができる。その後、各キャビティ内にそれぞれ樹脂を注入充填すると各キャビティ内の樹脂圧が上昇する。この樹脂圧上昇に伴い、さらに各弾性部材セットにより押圧するとバネ定数の小さい弾性部材に続いてバネ定数の大きい弾性部材が圧縮され、これらの弾性部材の合計の圧縮力が可動コアに掛かり、樹脂圧に応じた力を発生させるので、各可動コアと各電子部品の端面との間に隙間が発生せず、樹脂漏れを防ぐことができる。また、樹脂充填時の樹脂圧による電子部品の剥離を防ぐことができる。
【0014】
弾性部材セットは、複数の弾性部材の少なくとも一部が可動コアに対して並列に配設されたものとすることができる。これにより、複数の弾性部材からなる弾性部材セットの厚みを小さくすることができ、金型寸法を小さくすることが可能となる。
【0015】
なお、弾性部材セットは、複数の弾性部材の少なくとも一部が可動コアに対して直列に配設されたものとすることもできる。
【0016】
本発明の樹脂封止金型は、複数の弾性部材セットの各複数の弾性部材の間にそれぞれ設けられた複数の第1プレート(以下、「弾性部材間プレート」と称す。)を有することが望ましい。これにより、弾性部材同士が直接接触することなく弾性部材間プレートを介して押圧されるため、安定した押圧が可能となる。
【0017】
本発明の樹脂封止金型は、複数の弾性部材セットの各複数の弾性部材を可動コアに対して一括して押圧する第2プレート(以下、「弾性部材押圧プレート」と称す。)を有することが望ましい。これにより、バネ定数の異なる複数の弾性部材を直接押圧することなく弾性部材押圧プレートを介して一括して押圧するため、安定した押圧が可能となる。
【0018】
本発明の樹脂封止金型は、複数の弾性部材と前記複数の可動コアとの間にそれぞれ設けられた複数の第3プレート(以下、「弾性部材可動コア間プレート」と称す。)を有することが望ましい。これにより、バネ定数の異なる複数の弾性部材により直接可動コアを押圧することなく弾性部材可動コア間プレートを介して押圧するため、安定した押圧が可能となる。
【0019】
本発明の樹脂封止装置は、上記樹脂封止金型を含むものである。本発明の樹脂封止装置によれば、複数の可動コアを複数の弾性部材セットによりそれぞれ押圧した際、各弾性部材セットのバネ定数の異なる複数の弾性部材のうちバネ定数の小さい弾性部材から先に撓み、複数の電子部品間の厚みの差を吸収して対応する各電子部品をそれぞれ小さな圧縮力で押圧するので、各電子部品の破損を防止することができる。その後、各キャビティ内にそれぞれ樹脂を注入充填すると各キャビティ内の樹脂圧が上昇する。この樹脂圧上昇に伴い、さらに各弾性部材セットにより押圧するとバネ定数の小さい弾性部材に続いてバネ定数の大きい弾性部材が圧縮され、これらの弾性部材の合計の圧縮力が可動コアに掛かり、樹脂圧に応じた力を発生させるので、各可動コアと各電子部品の端面との間に隙間が発生せず、樹脂漏れを防ぐことができる。また、樹脂充填時の樹脂圧による電子部品の剥離を防ぐことができる。
【0020】
また、本発明の樹脂封止装置は、複数の弾性部材セットを介して複数の可動コアを押圧する複数の押圧部材を含むものであることが望ましい。これにより、複数の可動コアを複数の押圧部材によりそれぞれ押圧した際、各押圧部材と各可動コアとの間にそれぞれ設けられたバネ定数の異なる複数の弾性部材のうちバネ定数の小さい弾性部材の撓みにより、複数の電子部品間の厚みの差を吸収して対応する各電子部品をそれぞれ小さな圧縮力で押圧するので、各電子部品の破損を防止することができる。その後、各キャビティ内にそれぞれ樹脂を注入充填すると各キャビティ内の樹脂圧が上昇する。この樹脂圧上昇に伴い、さらに各押圧部材により押圧するとバネ定数の小さい弾性部材に続いてバネ定数の大きい弾性部材が圧縮され、これらの弾性部材の合計の圧縮力が可動コアに掛かり、樹脂圧に応じた力を発生させるので、各可動コアと各電子部品の端面との間に隙間が発生せず、樹脂漏れを防ぐことができる。また、樹脂充填時の樹脂圧による電子部品の剥離を防ぐことができる。
【0021】
本発明の樹脂封止方法は、樹脂封止金型の複数のキャビティ内にそれぞれ配置された電子部品を複数の可動コアによりそれぞれ押圧して、複数のキャビティ内に樹脂を注入する樹脂封止方法であって、複数の可動コアをそれぞれバネ定数の異なる複数の弾性部材からなる複数の弾性部材セットにより押圧するに際し、複数の弾性部材セットの各弾性部材のうちバネ定数の小さい弾性部材の撓みにより、複数の可動コアをそれぞれ押圧すること、複数のキャビティ内にそれぞれ樹脂を注入充填し、複数のキャビティ内の樹脂圧上昇に伴い、さらにバネ定数の小さい弾性部材に加えて弾性部材の大きい弾性部材により樹脂圧に応じた力を発生させることを特徴とする。
【0022】
本発明の樹脂封止方法によれば、複数の可動コアを複数の弾性部材セットによりそれぞれ押圧した際、各弾性部材セットのバネ定数の異なる複数の弾性部材のうちバネ定数の小さい弾性部材の撓みにより、複数の電子部品間の厚みの差を吸収して対応する各電子部品をそれぞれ小さな圧縮力で押圧するので、各電子部品の破損を防止することができる。その後、各キャビティ内にそれぞれ樹脂を注入充填すると各キャビティ内の樹脂圧が上昇する。この樹脂圧上昇に伴い、さらに各弾性部材セットにより押圧するとバネ定数の小さい弾性部材に続いてバネ定数の大きい弾性部材が圧縮され、これらの弾性部材の合計の圧縮力が可動コアに掛かり、樹脂圧に応じた力を発生させるので、各可動コアと各電子部品の端面との間に隙間が発生せず、樹脂漏れを防ぐことができる。また、樹脂充填時の樹脂圧による電子部品の剥離を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
複数の電子部品を樹脂封止するための複数のキャビティと、複数のキャビティ内にそれぞれ配置された電子部品をそれぞれ押圧する複数の可動コアと、複数の可動コアをそれぞれバネ定数の異なる複数の弾性部材により押圧する複数の弾性部材セットとを含む樹脂封止金型によれば、電子部品間に厚みの差があっても適切な押圧力により電子部品端面を押圧して、樹脂バリの発生および電子部品の破損がない両面露出成形が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態における樹脂封止装置を正面からみた概略断面図である。
【
図2】
図1の樹脂封止金型の一部を拡大した概略断面図である。
【
図3】
図2の樹脂封止金型に電子部品を配置した状態を示す概略断面図である。
【
図4】
図2の樹脂封止金型に電子部品をクランプした状態を示す概略断面図である。
【
図5】
図2の樹脂封止金型に樹脂注入し、加圧した状態を示す概略断面図である。
【
図6】複数の弾性部材が2枚のプレートにより挟まれた樹脂封止金型の例を示す概略断面図である。
【
図7】
図6の樹脂封止金型に電子部品を配置した状態を示す概略断面図である。
【
図8】
図6の樹脂封止金型をクランプした状態を示す概略断面図である。
【
図9】
図6の樹脂封止金型に樹脂注入し、加圧した状態を示す概略断面図である。
【
図10】バネ定数の異なる3つの弾性部材を用いた樹脂封止金型の例を示す概略断面図である。
【
図11】バネ定数の異なる複数の弾性部材を直列に配設した樹脂封止装置の一部を拡大した概略断面図である。
【
図12】厚み寸法測定センサの例を示す概略断面図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態を示す樹脂封止装置を正面からみた概略断面図であって、型開き状態を示す図である。
【
図14】本発明の第2の実施の形態を示す樹脂封止装置を正面からみた概略断面図であって、型締め初期状態を示す図である。
【
図15】本発明の第2の実施の形態を示す樹脂封止装置を正面からみた概略断面図であって、型締め後期状態を示す図である。
【
図16】本発明の第2の実施の形態を示す樹脂封止装置を正面からみた概略断面図であって、型締め完了状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態1>
図1は本発明の第1の実施の形態における樹脂封止装置を正面からみた概略断面図、
図2は
図1の樹脂封止金型の一部を拡大した概略断面図、
図3は
図2の樹脂封止金型に電子部品を配置した状態を示す概略断面図、
図4は
図2の樹脂封止金型に電子部品をクランプした状態を示す概略断面図、
図5は
図2の樹脂封止金型に樹脂注入し、加圧した状態を示す概略断面図である。
【0026】
本発明の第1の実施の形態における樹脂封止装置は、
図1に示すように、第1の金型としての上型2および第2の金型としての下型3により形成される複数のキャビティ10内にそれぞれ電子部品11をクランプして樹脂封止する樹脂封止金型1を有する。電子部品11は、基板12の上下両面にそれぞれに実装されたチップ13と、チップ13に積層された放熱部品14とをそれぞれ有する。樹脂封止金型1は、上下両面に積層された各放熱部品14のそれぞれの表面を露出して樹脂封止成形するものである。
【0027】
図2に示すように、上型2の下面および下型3の上面には、各キャビティ10を構成するキャビティ凹部20,30がそれぞれ形成されている。また、上型2および下型3の少なくともいずれか一方のキャビティ凹部20,30には、キャビティ10内に樹脂を注入するための樹脂注入口15と、キャビティ10内の空気を排出するためのエアベント16とを備える。なお、上型2と下型3とは、図示しないプレス装置に設置されて相対的に接近および離間できるように構成されている。
【0028】
また、上型2の各キャビティ凹部20の底面(図示例ではキャビティ凹部20の上面)20aには貫通穴21が設けられている。各貫通穴21は、上型2の上面2aからキャビティ凹部20にかけて貫通した穴である。各貫通穴21には、それぞれ可動コア22が挿入されている。各可動コア22は、各貫通穴21内を上下方向に移動可能である。可動コア22は、貫通穴21内で動作することにより、各キャビティ10内に配置された電子部品11をそれぞれ押圧する。より具体的には、各可動コア22は、各電子部品11の上面の放熱部品14の表面14a(
図3参照。)に圧力を付与する。このとき、各電子部品11の下面の放熱部品14の表面14bは、下型3の各キャビティ凹部30の底面30aに押し付けられる。
【0029】
また、本実施形態における樹脂封止装置は、
図1に示すように各可動コア22をそれぞれ押圧する複数の押圧部材4と、各押圧部材4を押圧する押圧機構5とを備える。また、本実施形態における樹脂封止装置は、
図2に示すように、押圧機構5等を制御する制御部6を備える。押圧機構5は、駆動ロッド5bを進退動作させるアクチュエータ5aと、駆動ロッド5bの進退動作を各可動コア22の押圧方向の押圧部材4の動作に変換する動力伝達機構としてのコッター機構5cとを有する。
【0030】
各押圧部材4の先端部には、各押圧部材4の押圧力を検知するための圧力センサ7がそれぞれ設けられている。また、下型3には、各キャビティ10内の樹脂圧を検知するための圧力センサ8がそれぞれ設けられている。制御部6は、各圧力センサ7,8の検知結果に基づいてアクチュエータ5aの駆動ロッド5bの移動量を制御することにより、各押圧部材4および各可動コア22を介して各電子部品11および樹脂圧に対抗する力を管理する。
【0031】
各押圧部材4と各可動コア22との間には、1組の弾性部材セットとして、バネ定数の異なる第1の弾性部材23aおよび第2の弾性部材23bが並列に配設されている。弾性部材23a,23bとしては、例えばベルビルスプリング(皿ばね)を重ねて使用することができる。弾性部材23a,23bと押圧部材4との間には、各貫通穴21内を上下方向に移動可能な弾性部材押圧プレートとしてのプレート24がそれぞれ設けられている。
【0032】
本実施形態においては、第1の弾性部材23aのバネ定数は、第2の弾性部材23bのバネ定数よりも小さい。また、
図3に示すように第1の弾性部材23aの厚さは、第2の弾性部材23bよりも厚い。そのため、押圧部材4によりプレート24が押圧された際、プレート24は最初に第1の弾性部材23aを圧縮し、次いで第2の弾性部材23bを圧縮する。なお、可動コア22の初期位置においては、第1の弾性部材23aは所定量圧縮されていても良いが、第2の弾性部材23bは圧縮されていない。
【0033】
次に、上記構成の樹脂封止装置による樹脂封止方法について説明する。
図2に示すように、樹脂封止金型1の上型2と下型3とを離間させてキャビティ10(キャビティ凹部20,30)を開放状態とし、
図3に示すように開放されたキャビティ凹部30内に電子部品11を供給して設置する。その後、
図4に示すように、上型2と下型3とを接近させて、樹脂封止金型1を型締めする。この状態では、キャビティ凹部20,30の左右両側において電子部品11が樹脂封止金型1によってクランプされることにより位置固定される。また、キャビティ10は密閉されて閉塞状態となる。
【0034】
次いで、制御部6により押圧機構5を制御して、各押圧部材4により各プレート24を押圧する。このとき、各押圧部材4と各可動コア22との間にそれぞれ設けられた複数の弾性部材23a,23bのうちバネ定数の小さい弾性部材、すなわち第1の弾性部材23aから先に撓み、複数の電子部品11間の厚みの差を吸収して、それぞれの第1の弾性部材23aに対応する各電子部品11をそれぞれ小さな圧縮力で押圧する。
図1に示す例では、左側の電子部品11が最も薄く、右側の電子部品11が最も厚いが、いずれの電子部品11も第1の弾性部材23aの圧縮により厚みの差が吸収され、バネ定数の大きい第2の弾性部材23bは圧縮されていない。そのため、バネ定数の大きい第2の弾性部材23bにより押圧されることがなく、過剰な力で電子部品11が破損することがない。
【0035】
その後、
図5に示すように、各キャビティ10内にそれぞれ樹脂注入口15より樹脂9を注入充填すると、各キャビティ10内の樹脂圧が上昇する。この樹脂圧上昇に伴い、各可動コア22が押し戻されないようにさらに制御部6により押圧機構5を制御して各押圧部材4により押圧すると、バネ定数の小さい第1の弾性部材23aに続いてバネ定数の大きい第2の弾性部材23bが圧縮される。これにより、これらの弾性部材23a,23bの合計の圧縮力が各可動コア22に掛かり、樹脂圧に応じた力を発生させるので、各可動コア22と各電子部品11の端面(上側の放熱部品14の表面14a)との間に隙間が発生せず、樹脂漏れを防ぐことができる。また、樹脂充填時の樹脂圧による電子部品11の剥離を防ぐことができる。
【0036】
すなわち、本実施形態における樹脂封止金型1およびこれを備えた樹脂封止装置によれば、電子部品11間に厚みの差があっても適切な押圧力により電子部品11の端面を押圧して、全電子部品11にわたって樹脂バリの発生がなく、また電子部品の破損もない両面露出成形が可能である。
【0037】
また、本実施形態における樹脂封止装置では、各押圧部材4に圧力センサ7を備えており、圧力センサ7により測定した押圧力を制御部6にフィードバックして押圧機構5により押圧部材4の押圧力を制御するため、高精度で安定した押圧力で樹脂漏れや部材破損を防止し、成形品質を向上することができる。また、本実施形態における樹脂封止装置では、各キャビティ10内の樹脂圧を圧力センサ8により検知して、制御部6はこの圧力センサ8により検知した樹脂圧に応じてアクチュエータ5aの駆動ロッド5bを移動することにより、樹脂圧で可動コア22が押し戻されるのを防止している。
【0038】
本実施形態における樹脂封止装置では、
図4に示すように、電子部品11の端面(上側の放熱部品14の表面14a)と可動コア22との間に離型フィルム17を配設することで、貫通穴21と可動コア22との間の隙間や電子部品11の端面と可動コア22の押圧面との間の隙間等への樹脂漏れを防いでいる。また、図示しないが、下型3のキャビティ凹部30の底面30aと電子部品11の他方の端面(下側の放熱部品14の表面14b)との間にも離型フィルムを配設することで、下型3のキャビティ凹部30の底面30aと電子部品11の他方の端面との間の隙間への樹脂漏れを防ぐこともできる。
【0039】
また、本実施形態における樹脂封止装置では、弾性部材23a,23bと押圧部材4との間にプレート24が設けられているため、バネ定数の異なる弾性部材23a,23bを直接押圧することなくプレート24を介して一括して押圧する。そのため、安定した押圧が可能となっている。なお、プレート24は省略することも可能である。
【0040】
なお、弾性部材23a,23bは、
図6に示すように弾性部材可動コア間プレートとしてのプレート24aと弾性部材押圧プレートとしてのプレート24bとの2枚のプレート24a,24bにより挟まれた構成とすることも可能である。これにより、バネ定数の異なる弾性部材23a,23bにより直接可動コア22を押圧することがなく、また、バネ定数の異なる弾性部材23a,23bを直接押圧することなくプレート24a,24bを介して一括して押圧するため、安定した押圧が可能となっている。
【0041】
この場合も前述と同様に、
図7に示すように、キャビティ10内に電子部品11を設置して樹脂封止金型1の型締めを行い、押圧部材4によりプレート24bを押圧すると、
図8に示すように、バネ定数の大きい第2の弾性部材23bよりも先にバネ定数の小さい第1の弾性部材23aが撓み、図示しない複数の電子部品11間の厚みの差を吸収して、それぞれの第1の弾性部材23aに対応する電子部品11をそれぞれ小さな圧縮力で押圧する。このとき、バネ定数の大きい第2の弾性部材23bは圧縮されていないため、電子部品11は第2の弾性部材23bにより押圧されることがなく、過剰な力で電子部品11が破損することがない。
【0042】
その後、
図9に示すように、キャビティ10内に樹脂9を注入充填すると、キャビティ10内の樹脂圧が上昇するので、この樹脂圧上昇に伴い、可動コア22が押し戻されないようにさらに押圧部材4により押圧する。これにより、バネ定数の小さい第1の弾性部材23aに続いてバネ定数の大きい第2の弾性部材23bが圧縮され、これらの弾性部材23a,23bの合計の圧縮力が可動コア22に掛かり、樹脂圧に応じた力を発生させる。したがって、各可動コア22と各電子部品11の端面との間に隙間が発生せず、樹脂漏れを防ぐことができる。また、樹脂充填時の樹脂圧による電子部品11の剥離を防ぐことができる。
【0043】
すなわち、弾性部材23a,23bが2枚のプレート24a,24bにより挟まれた樹脂封止金型1およびこれを備えた樹脂封止装置においても、電子部品11間に厚みの差があっても適切な押圧力により電子部品11の端面を押圧して、全電子部品11にわたって樹脂バリの発生がなく、また電子部品の破損もない両面露出成形が可能である。
【0044】
また、樹脂封止金型1は、
図10に示すように、バネ定数の異なる3つの弾性部材23a,23b,23cを用いた構成とすることも可能である。図示例において、バネ定数は、第1の弾性部材23aが最も小さく、第2の弾性部材23b、第3の弾性部材23cの順に大きい(第1の弾性部材23a<第2の弾性部材23b<第3の弾性部材23c)ものとする。
【0045】
同図(a)に示すように、キャビティ10内に電子部品11を設置して樹脂封止金型1の型締めを行い、押圧部材4によりプレート24bを押圧すると、最初にバネ定数の小さい第1の弾性部材23aが撓み、図示しない複数の電子部品11間の厚みの差を吸収して、それぞれの第1の弾性部材23aに対応する電子部品11をそれぞれ小さな圧縮力で押圧する。このとき、バネ定数の大きい第2の弾性部材23bおよび第3の弾性部材23cは圧縮されていないため、電子部品11は第2の弾性部材23bおよび第3の弾性部材23cにより押圧されることがなく、過剰な力で電子部品11が破損することがない。
【0046】
その後、同図(b)に示すように、キャビティ10内に樹脂9を注入充填すると、キャビティ10内の樹脂圧が上昇するので、この樹脂圧上昇に伴い、可動コア22が押し戻されないようにさらに押圧部材4により押圧する。これにより、バネ定数の小さい第1の弾性部材23aに続いて次にバネ定数の大きい第2の弾性部材23bが圧縮され、これらの弾性部材23a,23bの合計の圧縮力が可動コア22に掛かり、樹脂充填中に樹脂圧に応じた力(軽加重)を発生させる。したがって、各可動コア22と各電子部品11の端面との間に隙間が発生せず、樹脂漏れを防ぐことができる。また、樹脂充填時の樹脂圧による電子部品11の剥離を防ぐことができる。
【0047】
そして、樹脂充填後、さらに設定樹脂圧となるように押圧部材4により押圧する。これにより、さらにバネ定数の大きい第3の弾性部材23cが圧縮され、弾性部材23a,23b,23cの合計の圧縮力が可動コア22に掛かり、設定樹脂圧に応じた力(重加重)を発生させる。
【0048】
このように、バネ定数の異なる3つの弾性部材23a,23b,23cを用いた樹脂封止金型1によれば、押圧力の範囲を広げることが可能であり、第3の弾性部材23cによりさらに大きな押圧力を発生させることが可能であるため、より大きな電子部品11に対応することが可能となる。
【0049】
なお、第1の弾性部材23aおよび第2の弾性部材23bは、直列に配設することも可能である。
図11はバネ定数の異なる複数の弾性部材を直列に配設した樹脂封止装置の一部を拡大した概略断面図である。
図11に示す例では、押圧部材4と可動コア22との間に、バネ定数の異なる第1の弾性部材23aおよび第2の弾性部材23bが直列に配設されている。第2の弾性部材23bと押圧部材4との間には、前述のプレート24が設けられている。なお、図示しないが、樹脂封止金型1には、
図1と同様に複数のキャビティ10が形成され、各キャビティ10にそれぞれ押圧部材4、可動コア22や弾性部材23a,23b等が配置されている。
【0050】
また、第1の弾性部材23aと第2の弾性部材23bとの間には、貫通穴21内を上下方向に移動可能な弾性部材間プレートとしてのプレート25が設けられている。プレート25は、バネ定数の小さい第1の弾性部材23a側の周縁部に立壁部25aが形成されている。プレート25の第1の弾性部材23aとの接触面と立壁部25aとに囲まれた凹部25bは、第1の弾性部材23aが収容可能な空間となっている。このプレート25により、バネ定数の異なる複数の弾性部材23a,23b同士が直接接触することなくプレート25を介して押圧されるため、安定した押圧が可能となっている。
【0051】
図11に示す例では、同図(a)に示すようにキャビティ10内に電子部品11を設置して樹脂封止金型1の型締めを行い、押圧部材4によりプレート24を押圧すると、同図(b)に示すように、バネ定数の大きい第2の弾性部材23bよりも先にバネ定数の小さい第1の弾性部材23aが撓み、図示しない複数の電子部品11間の厚みの差を吸収して、それぞれの第1の弾性部材23aに対応する電子部品11をそれぞれ小さな圧縮力で押圧する。このとき、バネ定数の大きい第2の弾性部材23bは圧縮されていないため、電子部品11は第2の弾性部材23bにより押圧されることがなく、過剰な力で電子部品11が破損することがない。
【0052】
その後、同図(c)に示すように、キャビティ10内に樹脂9を注入充填すると、キャビティ10内の樹脂圧が上昇するので、この樹脂圧上昇に伴い、可動コア22が押し戻されないようにさらに押圧部材4により押圧する。このとき、バネ定数の小さい第1の弾性部材23aは、プレート25の立壁部25aが可動コア22に当接するまで凹部25b内で圧縮され、立壁部25aが可動コア22に当接後はバネ定数の大きい第2の弾性部材23bが圧縮される。これにより、第2の弾性部材23bの圧縮力が可動コア22に掛かり、樹脂圧に応じた力を発生させるので、各可動コア22と各電子部品11の端面との間に隙間が発生せず、樹脂漏れを防ぐことができる。また、樹脂充填時の樹脂圧による電子部品11の剥離を防ぐことができる。
【0053】
すなわち、
図11に示すように、第1の弾性部材23aおよび第2の弾性部材23bを直列に配設した樹脂封止金型1およびこれを備えた樹脂封止装置においても、電子部品11間に厚みの差があっても適切な押圧力により電子部品11の端面を押圧して、全電子部品11にわたって樹脂バリの発生がなく、また電子部品の破損もない両面露出成形が可能である。なお、複数の弾性部材を直列かつ並列に配置した構成とすることも可能である。
【0054】
また、本実施形態における樹脂封止金型1では、各可動コア22は各貫通穴21内で傾斜可能な構成とすることが可能である。これにより、電子部品11の端面が傾斜している場合は各可動コア22も傾斜して、各可動コア22と電子部品11との間に隙間が発生しないようにすることができる。
【0055】
また、弾性部材23a~23cは可動コア22ごとに異なるバネ定数のものを配置することも可能である。これにより、1つの樹脂封止金型1で異なる種類の電子部品を一度に成形することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態における樹脂封止装置は、
図12に示すように、電子部品11を樹脂封止金型1に搬入する前に、厚み寸法測定センサ26により電子部品11の厚み寸法を測定し、樹脂封止金型1に配置された電子部品11の厚み寸法の測定値に基づいてアクチュエータ5aの駆動ロッド5bの移動量を決定する構成とすることができる。これにより、厚みのばらつきを考慮した駆動ロッド5bの移動量を決定することが可能となる。
【0057】
本実施形態における樹脂封止金型1では、アクチュエータ5aの駆動ロッド5bの移動量によりバネ荷重を制御することができるので、幅広い種類の電子部品に対応することが可能であり、バネの交換作業が不要である。また、本実施形態における樹脂封止金型1は、キャビティ10ごとに1つの押圧部材4で押圧される複数の弾性部材23a~23cと1つの可動コア22によるシンプルな構成であるため、低コストで幅広い種類の電子部品に対応することが可能である。
【0058】
弾性部材23a~23cにより可動コア22に掛かるバネ荷重は樹脂封止成形品の大きさによるが、一例として、電子部品11がパワー半導体などのキャビティ容積が大きく、12~20MPa、例えば15MPa程度の大きな注入圧により樹脂注入を行うものである場合、可動コア22に掛かる第1の弾性部材23aのバネ荷重は4.9~6.4kN(500~650kgf)程度であり、第2の弾性部材23bのバネ荷重は9.8~21.6kN(1000~2200kgf)程度である。
【0059】
なお、上記樹脂封止装置では、樹脂封止金型1の型締めのみでは複数の弾性部材23a,23bによる押圧は行わず、樹脂封止金型1の型締め後、各押圧部材4により各プレート24を押圧することで、弾性部材セット(複数の弾性部材23a,23b)を撓ませて各電子部品11を押圧するものであるが、樹脂封止金型1の型締めのみにより弾性部材セットを撓ませて各電子部品11を押圧する構成とすることも可能である。
【0060】
<実施形態2>
図13~
図16は本発明の第2の実施の形態を示す樹脂封止装置を正面からみた概略断面図であって、
図13は型開き状態を示す図、
図14は型締め初期状態を示す図、
図15は型締め後期状態を示す図、
図16は型締め完了状態を示す図である。なお、
図13~
図16において、前述したものと共通の構成部分については同一符号を付している。
【0061】
図13~
図16に示す樹脂封止装置における樹脂封止金型1Aでは、上型40の各キャビティ凹部20の底面に、上型40の上面40aからキャビティ凹部20にかけて貫通した貫通穴41が設けられている。各貫通穴41は、プレート24a,24bにより挟まれた弾性部材23a,23bが収容される第1貫通穴41aと、第1貫通穴41aに連通された第2貫通穴41bとから構成される。
【0062】
第1貫通穴41aと第2貫通穴41bとの境界部分には、プレート24aが通過できないように段差部41cが設けられている。樹脂封止金型1Aは、前述の押圧部材4および押圧機構5を備えておらず、貫通穴41の上面はプレート42によって閉塞されている。第2貫通穴41bには、可動コア22が挿入されている。可動コア22は、第2貫通穴41bを上下方向に移動可能である。
【0063】
上記構成の樹脂封止装置では、
図13に示すように樹脂封止金型1Aの上型40と下型3とを離間させてキャビティ10を開放状態とし、開放されたキャビティ凹部30内に電子部品11を供給して設置する。なお、図示例では、左側の電子部品11が最も薄く、右側の電子部品11が最も厚いものとする。その後、この型開きの状態から上型40と下型3とを接近させて、樹脂封止金型1Aを型締めする。
【0064】
図14に示すように型締め初期では、最初に最も厚い右側の電子部品11が可動コア22に当接し、上方向へ押圧する。そして、厚い右側の電子部品11から順次可動コア22に当接し、上方向へ押圧していく。すなわち、型締め初期では、まずバネ定数の小さい第1の弾性部材23aのみが圧縮され、この第1の弾性部材23aの圧縮により電子部品11の厚みの差が吸収され、各電子部品11が小さな圧縮力で押圧される。
【0065】
次に、
図15に示すように型締め後期では、最も厚い右側の電子部品11からバネ定数の小さい第1の弾性部材23aに続いて順次バネ定数の大きい第2の弾性部材23bが圧縮され、各電子部品11が徐々に大きな圧縮力で押圧される。このとき、各電子部品11は最初からバネ定数の大きい第2の弾性部材23bで押圧されるのではなく、最初にバネ定数の小さい第1の弾性部材23aで圧縮された後にバネ定数の大きい第2の弾性部材23bにより押圧されるので、電子部品11の破損が防止される。
【0066】
そして、
図16に示すように型締めが完了すると、弾性部材23a,23bの合計の圧縮力が各可動コア22に掛かる。その後、各キャビティ10内に樹脂を注入充填すると、弾性部材23a,23bが樹脂圧に応じた力を発生させるので、各可動コア22と各電子部品11の端面との間に隙間が発生せず、樹脂漏れを防ぐことができる。
【0067】
以上のように、樹脂封止金型1Aの型締めのみにより弾性部材セット(弾性部材23a,23b)を撓ませて各電子部品11を押圧する構成であっても、電子部品11の破損を防止するとともに、樹脂漏れを防ぐことが可能である。なお、このような型締めにより弾性部材セットを撓ませて各電子部品11を押圧する樹脂封止金型1Aに、前述の押圧部材4および押圧機構5を組み合わせた構成を採用することも可能である。表1に採用可能な弾性部材23a,23bの動作タイミングのパターンを示す。
【0068】
【0069】
表1のいずれのパターンであっても、電子部品11の破損を防止するとともに、樹脂漏れを防ぐことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の樹脂封止金型、樹脂封止装置および樹脂封止方法は、電子部品の両面露出成形を行うための樹脂封止金型、樹脂封止装置および樹脂封止方法として有用であり、特に、パワー半導体などのキャビティ容積が大きく、12~20MPaの大きな注入圧により樹脂注入を行う電子部品に好適である。
【符号の説明】
【0071】
1,1A 樹脂封止金型
2,40 上型
3 下型
4 押圧部材
5 押圧機構
5a アクチュエータ
5b 駆動ロッド
5c コッター機構
6 制御部
7,8 圧力センサ
9 樹脂
10 キャビティ
11 電子部品
12 基板
13 チップ
14 放熱部品
15 樹脂注入口
16 エアベント
17 離型フィルム
20,30 キャビティ凹部
21 貫通穴
22 可動コア
23a,23b,23c 弾性部材
24,24a,24b,25 プレート
26 寸法測定センサ
41 貫通穴
41a 第1貫通穴
41b 第2貫通穴
41c 段差部