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2022-183814活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ、印刷体、成型加工印刷体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183814
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ、印刷体、成型加工印刷体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20221206BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091303
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 健
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD09
4J039AD21
4J039AE04
4J039AF01
4J039AF07
4J039BA20
4J039BC12
4J039BC19
4J039EA04
4J039EA40
4J039FA02
(57)【要約】
【課題】 本発明は、プラスチック基材に対して良好な密着性を有し、耐薬品性、後加工性、硬化塗膜の柔軟性に優れ、かつ、インキ中のバイオマス由来成分を有する比率が10質量%以上である活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ及び印刷体を提供することである。
【解決手段】着色剤、植物成分変性アクリレートを含有するバインダー樹脂、および、バイオマス樹脂粒子を含む活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ。
植物成分変性アクリレートが、ロジン変性ポリエステルアクリレートおよび/または植物油変性ポリエポキシアクリレートを含む、上記活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤、植物成分変性アクリレートを含有するバインダー樹脂、および、樹脂粒子を含む活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ。
【請求項2】
植物成分変性アクリレートが、ロジン変性ポリエステルアクリレートおよび/または植物油変性ポリエポキシアクリレートを含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ。
【請求項3】
植物成分変性アクリレートの含有量が、活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ全質量に対して5~30質量%である、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ。
【請求項4】
バインダー樹脂が、更にウレタンアクリレートを含む、請求項1~3いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ。
【請求項5】
ウレタンアクリレートの単独硬化物のガラス転移温度が、-50~50℃である、請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ。
【請求項6】
樹脂粒子が、バイオマス樹脂粒子である、請求項1~5いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ。
【請求項7】
更に、非シリコーン系化合物である消泡剤を、インキ全量中に0.1~5質量%含む、請求項1~6いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ。
【請求項8】
基材上に、請求項1~7いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキからなる硬化印刷層を有する印刷体。
【請求項9】
基材が、成型加工されたプラスチックである、請求項8に記載の印刷体。
【請求項10】
成型加工されたプラスチックに、請求項1~7いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキを印刷する工程を含む、成型加工印刷体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ、並びに、これを用いた印刷体に関する。特に、プラスチック基材に対して良好な密着性を有し、耐薬品性、後加工性、硬化塗膜の柔軟性に優れ、かつ、インキ中のバイオマス由来成分を有する比率が10質量%以上である活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ、並びに、これを用いた印刷体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキは、紫外線、可視光線、電子線等の活性エネルギー線をごく短時間照射することで硬化が可能であり、生産性が高く、また、高い塗膜耐性を得ることが可能なことから耐久性が必要な分野で広く使用されている。
【0003】
この活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキは、印刷対象基材がプラスチック基材の場合、プラスチックの種類、特に、極性の低いポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系基材や、ポリエチレン基材は良好な密着性が得られないという課題や、塗膜性能として耐薬品性、柔軟性、後加工適性、などの要求物性があり、種々の検討がされている。
【0004】
一方で、近年、環境負荷低減のための取り組みとして、一般社団法人日本有機資源協会によって、新たにバイオマスマーク制度が制定されたことにより、インキに含まれる原料をバイオマス由来原料に代替し、その比率を高めることが求められている。しかしながら、活性エネルギー線硬化性インキにおいて、バイオマス由来原料の比率を高めると、基材への十分な密着性や塗膜耐性などの諸物性が得られないという課題があった。
【0005】
例えば、特許文献1には、ロジンエポキシアクリレートを5~95重量%、炭素-炭素不飽和結合基を有する数平均分子量1,000~50,000のポリウレタン樹脂を5~95重量%、反応性希釈剤を0~70重量%を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、ロジンエポキシアクリレートを使用することでバイオマス比率は高くなるが、プラスチック基材への密着性は十分ではなかった。更に、ロジンエポキシアクリレート、ポリウレタン樹脂のいずれも単官能のため塗膜耐性に課題があった。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、単官能のポリエーテル系重合性オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、柔軟なポリエーテル構造を有する単官能オリゴマーを使用することで、ポリエチレンテレフタレート基材への密着性は向上するが、ポリスチレン基材の密着性には課題があった。また、バイオマス由来原料を使用しておらず、環境対応が十分ではないといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-143635号公報
【特許文献2】特開2004-339487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、プラスチック基材に対して良好な密着性を有し、耐薬品性、後加工性、硬化塗膜の柔軟性に優れ、かつ、インキ中のバイオマス由来成分を有する比率が10質量%以上である活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ及び印刷体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキおよび印刷体により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、着色剤、植物成分変性アクリレートを含有するバインダー樹脂、および、樹脂粒子を含む活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキに関する。
【0011】
また、本発明は、植物成分変性アクリレートが、ロジン変性ポリエステルアクリレートおよび/または植物油変性ポリエポキシアクリレートを含む、上記活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキに関する。
【0012】
また、本発明は、植物成分変性アクリレートの含有量が、活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ全質量に対して5~30質量%である、上記活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキに関する。
【0013】
また、本発明は、バインダー樹脂が、更にウレタンアクリレートを含む、上記活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキに関する。
【0014】
また、本発明は、ウレタンアクリレートの単独硬化物のガラス転移温度が、-50~50℃である、上記活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキに関する。
【0015】
また、本発明は、樹脂粒子が、バイオマス樹脂粒子である、上記活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキに関する。
【0016】
また、本発明は、更に、非シリコーン系化合物である消泡剤を、インキ全量中に0.1~5質量%含む、上記活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキに関する。
【0017】
また、本発明は、基材上に、上記活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキからなる硬化印刷層を有する印刷体に関する。
【0018】
また、本発明は、基材が、成型加工されたプラスチックである、上記印刷体に関する。
【0019】
また、本発明は、成型加工されたプラスチックに、上記活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキを印刷する工程を含む、成型加工印刷体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、プラスチック基材に対して良好な密着性を有し、耐薬品性、後加工性、硬化塗膜の柔軟性に優れ、かつ、インキ中のバイオマス由来成分を有する比率が10質量%以上である活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ及び印刷体を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の構成要件等を詳細に説明するが、以下の説明は本発明の実施形態の一部であり、これらに限定されない。また、特段の説明がない限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」を表す。
【0022】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を表し、「(メタ)アクリレート」は、「メタクリレートおよび/またはアクリレート」を表す。「(メタ)アクロイル」は、「メタクリロイルおよび/またはアクリロイル」を表す。
また、以下の説明において、重合性オリゴマーとは重合性基を持つ分子量1,000以上の化合物をいい、重合性モノマーとは、重合性基を持つ分子量1,000未満の化合物をいう。重合性基とは、アクリレート基、メタクリレート基その他の重合性不飽和二重結合基をいう。
【0023】
[活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ]
本発明の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキは、着色剤、植物成分変性アクリレートを含有するバインダー樹脂、および、樹脂粒子を含むことを特徴とする。
バインダー樹脂に植物成分変性アクリレートを含むことで顔料分散性、塗膜柔軟性、およびバイオマス度が向上し、樹脂粒子を含むことで、印刷適性、塗膜柔軟性が向上し、好ましくは、バイオマス樹脂粒子を含むことで、およびバイオマス度が向上する。
【0024】
以下、本実施形態の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ(以下、単に「スクリーンインキ」あるいは「インキ」とも称する場合がある)に含まれるか、含まれ得る成分等を説明する。
【0025】
[着色剤]
本発明の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキは、着色剤を含有する。着色剤としては、顔料および染料のうち少なくとも一方を用いることができる。耐光性の観点から、顔料が好ましい。
本発明に用いることができる顔料としては、特に制限はなく、公知の顔料を用いることができる。顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれも用いることができる。
【0026】
上記無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック類、酸化鉄、酸化チタンなどが挙げられる
【0027】
上記有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料; β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料;銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(例えば、塩素化または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系など)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系等の多環式顔料および複素環式顔料などが挙げられる。
【0028】
更に詳しくは、C.I.カラーインデックスで示すと、黒顔料としては、C.I.Pigment Black 1、6、7、9、10、11、28、26、31などが挙げられる。
【0029】
白顔料としては、C.I.Pigment White 5、6、7、12、28などが挙げられる。
【0030】
黄顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、18、24、73、74、75、83、93、95、97、98、100、108、109、110、114、120、128、129、138、139、174、150、151、154、155、167、180、185、213などが挙げられる。
【0031】
青またはシアン顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、2、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62などが挙げられる。
【0032】
赤または紅顔料としては、C.I.Pigment RED 1、3、5、19、21、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、50、52、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、90、104、108、112、114、122、144、146、148、149、150、166、168、169、170、172、173、176、177、178、184、185、187、193、202、209、214、242、254、255、264、266、269、C.I.Pigment Violet 19などが挙げられる。
【0033】
緑顔料としては、C.I.Pigment Green 1、2、3、4、7、8、10、15、17、26、36、45、50などが挙げられる。
【0034】
紫顔料としては、C.I.Pigment Violet 1、2、3、4、5:1、12、13、15、16、17、19、23、25、29、31、32、36、37、39、42などが挙げられる。
オレンジ顔料としては、C.I.Pigment Orange 13、16、20、34、36、38、39、43、51、61、63、64、74などが挙げられる。
【0035】
本発明において、上記顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明において、上記顔料は、印刷面上に目的の濃度が再現可能であれば任意の含有量で使用することが可能であり、インキの全質量に対して1~40質量%であることが好ましく、より好ましくは5~30質量%である。
【0037】
[バインダー樹脂]
本発明において、バインダー樹脂とはスクリーン印刷用インキ中で結着剤として機能し得る樹脂を指し、植物成分変性アクリレートを含むものである。なお、多くの植物成分変性アクリレートは重合性オリゴマーに該当するバインダー樹脂である。
【0038】
[植物成分変性アクリレート]
本発明における活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキが含有する植物成分変性アクリレートとしては(メタ)アクリレート基を有し、植物成分により変性されたものであれば制限なく用いることができる。植物成分変性アクリレートにより、顔料分散性、塗膜柔軟性が向上し、更にバイオマス度を高くすることができる。植物成分変性アクリレートとしては、ロジン変性ポリエステルアクリレートおよび/または植物油変性ポリエポキシアクリレート、植物油変性ウレタンアクリレートを好適に挙げることができる。
【0039】
[ロジン変性ポリエステルアクリレート]
ロジン変性ポリエステルアクリレートは、ロジン変性ポリエステルアクリレート全質量中の、ロジン由来の構成単位の割合(以下、「ロジン含有量」ともいう)が、40~80質量%であることが好ましく、耐薬品性の観点から40~60質量%であることがなお好ましい。上記ロジン変性ポリエステルアクリレートの重量平均分子量は、1,000~10,000であることが好ましく、1,000~8,000であることがなお好ましい。また、ロジン変性ポリエステルアクリレートは、(メタ)アクロイル基を2~6個有することが好ましく、3~6個の(メタ)アクロイル基を有することがなお好ましい。
【0040】
なお、ロジン変性ポリエステルアクリレートは、例えば、共役系ロジン酸と、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和二重結合含有化合物とをディールスアルダー付加反応させ、さらに、反応化合物のカルボキシ基と、ポリオールの水酸基とをエステル化反応させたロジン変性ポリエステル化合物に、水酸基を持つ(メタ)アクリレート化合物の反応により得られるものが挙げられるがこれらに限定されない。当該ロジン変性ポリエステルアクリレートは、例えば、長興材料工業社製「ETERCURE」シリーズ、ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL」シリーズ、などが挙げられる。
【0041】
[植物油変性ポリエポキシアクリレート]
植物油変性ポリエポキシアクリレートは、不飽和植物油の二重結合を過酢酸、過安息香酸でエポキシ化したエポキシ化植物油のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸を付加反応させた化合物など、公知のものを用いることができる。変性される植物油は大豆油、ナタネ油、ひまわり油、トウモロコシ油などが好ましい。植物油変性ポリエポキシアクリレートは、植物油由来構造の含有量が40~80質量%であることが好ましく、60~80質量%であることがなお好ましい。また、植物油変性ポリエポキシアクリレートの重量平均分子量は、1,000~10,000であることが好ましく、1,000~8,000であることがなお好ましい。また、植物油変性ポリエポキシアクリレートは、(メタ)アクロイル基を2~5個有することが好ましく、塗膜柔軟性の観点から2~4個の(メタ)アクロイル基を有することがなお好ましい。
植物油変性ポリエポキシアクリレートは、例えば、IGM Resins社製「PHOTOMER」シリーズ、ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL」シリーズ、などが挙げられる。
【0042】
[ウレタンアクリレート]
本発明のスクリーンインキにおいて、バインダー樹脂は、更にウレタンアクリレートを含むことが好ましい。なお、多くのウレタンアクリレートは重合性オリゴマーに該当する。ウレタンアクリレートは(メタ)アクリレート基を有し、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類とを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの等がある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
なお、植物油変性ジオールなど植物成分を変性した化合物を原料とするウレタンアクリレートは、「植物成分変性アクリレート」として扱う。
ウレタンアクリレートの重量平均分子量は、1,000~50,000であることが好ましく、1,000~30,000であることがなお好ましい。また、ウレタンアクリレートは、(メタ)アクロイル基を2~5個有することが好ましく、2~4個有することがなお好ましい。また、当該ウレタンアクリレートの単独硬化物のガラス転移温度が-50~50℃であることが好ましく、柔軟性と耐薬品性とのバランスの取れた塗膜性能の観点からガラス転移温度が-40~40℃であることがなお好ましい。なお、ガラス転移温度の測定方法については後述する。
上記ウレタンアクリレートは、例えば、三菱ケミカル社製「紫光」シリーズ、根上工業社製「AER RESIN」シリーズ、などが挙げられる。
【0043】
本発明において、上記ウレタンアクリレートの含有量が、スクリーンインキの全質量に対して、1~50質量%であることが好ましく、より好ましくは10~30質量%であることがなお好ましい。
【0044】
なお、上記植物成分変性アクリレートと上記ウレタンアクリレートとの質量比率は10:90~80:20であることが好ましく、30:70~80:20であることがなお好ましい。また、スクリーンインキ総質量中に植物成分変性アクリレートとウレタンアクリレートを合計で20~80質量%含むことが好ましく、20~60質量%含むことがなお好ましい。
【0045】
[樹脂粒子]
本発明のスクリーンインキにおいて用いられる樹脂粒子は、インキ層の表面保護や耐薬品性などの塗膜性能に効果を発揮し、樹脂からなる粒子(微粒子であってよい)であれば制限ない。当該樹脂粒子はバイオマス樹脂粒子であることが好ましく、例えば、天然物系(植物系を含む)である化合物を含むことが好ましい。当該バイオマス樹脂粒子の有する構造としては、デンプン、セルロース、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)などのポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を含む樹脂粒子などが好適に挙げられる。ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を含む樹脂粒子であることがより好ましい。また、上記天然物系(植物系を含む)である化合物を原料としバイオマス度が0%を超え(好ましくは10%以上、あるいは20%以上)、100%未満のバイオマス樹脂粒子も好適に使用できる。
当該バイオマス樹脂粒子の平均粒子径は1~20μmであることが好ましく、1~15μmであることがなお好ましく、2~12μmであることが更に好ましい。平均粒子径は、レーザ回折・散乱法におけるD50の測定値をいう。
また、塗膜性能の観点から融点温度は100℃以上250℃以下あるいは120℃以上220℃以下であることが好ましい。
このような樹脂粒子は、例えば、RETTENMAIER社製「ARBOCEL」シリーズ、などが挙げられる。
【0046】
本発明において、上記樹脂粒子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本発明において、上記樹脂粒子の含有量は、インキの全質量に対して、1~20質量%であることが好ましく、より好ましくは1~10質量%である。
【0048】
[重合開始剤]
本発明における活性エネルギー線硬化性インキは、重合開始剤を含有することが好ましい。上記重合開始剤としては、ラジカル重合の重合性開始剤を含有することが好ましく、また、光重合開始剤を含有することがより好ましい。本発明における重合開始剤は、光の作用、または増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、例えばラジカルを生成する化合物であり、中でも、露光という手段で重合開始させることができるという観点から光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。ただし、活性エネルギー線が電子線などである場合、重合開始剤を必要としない場合がある。
【0049】
本発明において、上記光ラジカル重合開始剤は、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体例としては、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チオキサントン化合物などが挙げられる。
【0050】
上記ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノンなどが挙げられる。
【0051】
上記ジアルコキシアセトフェノン系化合物としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。
【0052】
上記α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシメトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0053】
上記α-アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル-1-ブタノンなどが挙げられる。
【0054】
上記のアシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ジフェニルアシルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0055】
上記チオキサントン系化合物としては、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0056】
本発明において、上記重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本発明において、上記重合開始剤の含有量は、インキの全質量に対して、0.5~20質量%であることが好ましく、より好ましくは1~10質量%である。
【0058】
[重合性モノマー]
本発明のスクリーンインキは、上記以外に重合性モノマーを含むことが好ましい。本発明において、「重合性モノマー」とは、分子量1000未満の重合可能な単量体をいう(ただし、植物成分変性アクリレート、ウレタンアクリレートである場合を除く)。なお以下、単に「モノマー」とも表記する。モノマーは、分子内に(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基から選ばれる重合性基を有する化合物が好ましい。中でも、重合性基として、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であるアクリレートモノマーがより好ましい。
上記モノマーは、具体的には、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性(2)ノニルフェノールアクリレート、2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、アクリロイルモルフォリンなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマーや、
N-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミドなどの分子内にビニル基を1つ有する単官能ビニルモノマー、など単官能モノマーが好適である。
1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(300)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性(2)1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、など2官能モノマーが好適である。
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を3つ有する3官能(メタ)アクリレートモノマー、
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの分子内にアクリロイル基を4つ有する4官能(メタ)アクリレートモノマー、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を5つ有する5官能(メタ)アクリレートモノマー、
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を6つ有する6官能(メタ)アクリレートモノマー、などが挙げられる。
【0059】
これらモノマーの中でも、柔軟性、密着性の観点から、2官能モノマー、及び/又は単官能モノマーを含むことが好ましく、2官能モノマー、及び単官能モノマーを含むことがより好ましい。2官能モノマー、及び単官能モノマーを質量比10:90~80:20、好ましくは10:90~70:30で含む形態であればよい。
【0060】
単官能モノマーを含む場合は、耐薬品性の観点から、活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキの全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
また、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを含む場合は、柔軟性の観点から、活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキの全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
なお、スクリーンインキにおいて、耐薬品性、柔軟性、密着性向上のため、重合性オリゴマーと重合性モノマーの質量比率は5:95~95:5であることが好ましい。30:70~95:5であることがなお好ましい。
【0062】
[植物成分変性アクリレート、ウレタンアクリレート以外の重合性オリゴマー(その他重合性オリゴマー)]
本発明は、植物成分変性アクリレート、ウレタンアクリレート以外の重合性オリゴマーを含むことも好ましい。重合性オリゴマーはアクリレート基のみならず、分子内にアリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、内部二重結合性基(マレイン酸など)などの重合性基を有する化合物であってもよい。
その他重合性オリゴマーとしては、例えば、石油由来のアクリルアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエポキシアクリレートなどが挙げられる。耐摩擦性の観点から、ポリエポキシアクリレート好ましく、ビスフェノールA構造を有するポリエポキシアクリレートがより好ましい。また、重合性オリゴマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0063】
その他重合性オリゴマーは、1分子内に重合性基として、(メタ)アクリロイル基を有することが好ましく、その場合の(メタ)アクリロイル基の数は、柔軟性の観点から、1分子あたり1~6であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。その他重合性オリゴマーの重量平均分子量は、1,000~50,000が好ましく、1,000~30,000がより好ましい。
【0064】
本発明において、「重量平均分子量」は、一般的なゲルパーミッションクロマトグラフィー(以下、GPC)によりスチレン換算分子量として求めることができる。
GPCの測定方法は、以下の通りである。東ソー(株)製HLC-8020を用い、検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は、流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃などが採用できる。
【0065】
[消泡剤]
本発明のスクリーン印刷インキは、消泡剤を含有することが好ましい。含有量としてはスクリーンインキ総質量中、0.1~5質量%含まれることが好ましい。消泡剤を構成する化合物としてはアクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂、ブタジエン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂およびそれらの変性樹脂から選ばれる少なくとも一種の消泡剤が好適に挙げられる(ただし上記バインダー樹脂は含まない)。消泡剤は、非シリコーン系樹脂であることが好ましく、アクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂、ブタジエン樹脂、から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することが好ましい。
例えば、市販されているこのような消泡剤としては、BYKシリーズ(ビックケミー・ジャパン社製)フローレンシリーズ(共栄社化学社製)などが挙げられる。
【0066】
[レベリング剤]
本発明のスクリーン印刷インキは更にレベリング剤を含有することが好ましい。含有量としてはスクリーン印刷インキ総質量中、0.1~1質量%含まれることが好ましい。レベリング剤を構成する化合物としてはアクリル樹脂および/またはシリコーン樹脂であることが好ましい(ただし上記バインダー樹脂は含まない)。例えば、市販されているこのようなレベリング剤としては、ポリフローシリーズ(共栄社化学社製)などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0067】
[その他の成分]
本発明の活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキは、必要に応じて本発明の効果が低下しない範囲で、上記成分以外に、体質顔料、顔料分散剤、その他の重合性化合物、増感剤、ワックス、重合禁止剤、表面張力調整剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含有することができる。
【0068】
[顔料分散剤]
本発明において、インキは、顔料分散性をより良好なものにするために、顔料分散剤を含有することが好ましい。顔料分散剤としては、特に制限はなく、公知の顔料分散剤を用いることができる。中でも、塩基性官能基を有する樹脂型顔料分散剤が好ましく、前記塩基性官能基としては一級、二級、または三級アミノ基、ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素複素環などを挙げることができる。
また、前記樹脂型顔料分散剤を構成する骨格としては、脂肪酸アミン骨格、および/または、ウレタン骨格が、良好な顔料分散性が容易に得られることからさらに好ましい。
【0069】
前記顔料分散剤としては、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーシリーズ(アジスパーPB821、PB822、PB824など)、ルーブリゾール社製のソルスパーズシリーズ(Solsperse24000、Solsperse32000、Solsperse38500など)、ビックケミー社製のディスパービックシリーズ(BYK-162、BYK-168、BYK-183など)などから入手できる。
【0070】
前記顔料分散剤の含有量は、インキの全質量に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0071】
[増感剤]
本発明において、インキは、硬化性をより良好なものにするために増感剤を含有することもできる。増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤を用いることができる。具体的には、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、脂肪族アミン、2-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエタノールアミン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0072】
前記重合開始助剤の含有量は、インキの総質量に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~3質量%である。
【0073】
[ワックス]
本発明において、インキは、耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性をより良好なものにするために、ワックスを含有することが好ましい。ワックスとしては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えば、天然ワックスおよび合成ワックスがある。
天然ワックスは、例えば、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。
合成ワックスは、例えば、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックスシリコーン化合物などが挙げられる。
【0074】
前記ワックスの含有量は、インキの全質量に対して、0.1~5質量%であることが好ましい。
【0075】
[重合禁止剤]
本発明において、インキは、保存安定性を高めるため、重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が特に好適に使用される。
具体的には、4-メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩などが挙げられる。
中でも、ヒンダードフェノール系化合物および/またはフェノチアジン系化合物を含むことが好ましく、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジンを含むことがより好ましい。
【0076】
前記重合禁止剤の含有量は、硬化性を維持しつつ保存安定性を高める観点から、インキの全質量に対して、0.01~2質量%であることが好ましい。
【0077】
なお、本発明において、インキは、環境負荷低減の観点から、実質的に有機溶剤を含有しないことが好ましい。「実質的に含有しない」とは、意図せず混入した少量の有機溶剤の場合は「実質的に含有しない」に該当する、という意味であり、少量の有機溶剤を含む場合、スクリーンインキの全質量に対して、3質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満である。
【0078】
[バイオマス度]
バイオマス度は以下の式で計算することができる。
バイオマス度 (%)=(「使用した植物成分変性アクリレートのバイオマス成分質量」+「使用したバイオマス樹脂粒子のバイオマス成分質量」)×100/「活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキ全質量」
バイオマス度は10%以上が好ましい。なお、本発明において、バイオマス度10質量%以上を達成する手段は、上記所定化合物の使用以外、特に限定されるわけでなく、公知のバイオマス化合物の添加などの方法を適宜用いることができる。
【0079】
[スクリーン印刷インキの製造]
本発明のスクリーン印刷インキは、適宜公知の分散方法で作製することができる。例えば、バインダー樹脂、顔料、有機溶剤および添加剤を必要量混合し、攪拌機などで良く撹拌してから、3本ロール、ペイントシェーカーやアトライター、サンドミル等の分散機により製造することが可能である。中でも好ましくは、3本ロール分散機による製造である。
【0080】
[基材]
本発明における印刷体を形成するために用いられる基材は特に限定されるものではなく、ガラス等の無機基材、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル基材、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニルその他のポリオレフィン基材、ポリアミド等のナイロン基材、アクリル基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリカーボネート基材、ポリウレタン基材、エポキシ基材等の樹脂基材が挙げられる。また、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機化合物を当該基材に蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコールなどによるコート処理を施されていても良い。また、コロナ処理やフレーム処理、延伸処理が施されていてもよい。中でも、成型加工されたプラスチックに対して、良好な密着性を得ることができる。
【0081】
[成型加工されたプラスチック基材]
本発明における成型加工されたプラスチック基材における成型加工は特に限定されるものではなく、公知の成型加工方法を用いることができる。インジェクション成型加工、ダイレクトブロー成型加工、インジェクションブロー成型加工、インサート成型加工等が挙げられる。
【0082】
[印刷体]
本発明の印刷体とは、上記スクリーンインキを用いてスクリーン印刷方法により、上記基材上に印刷層が形成され、活性エネルギー線により硬化印刷層となった印刷体をいう。印刷方法としてはスクリーン印刷方法であり、印刷機としてシリンダープレス印刷機や半自動印刷機、刷版としてナイロンやポリエステル等の樹脂素材、ステンレスなどの樹脂素材を使用した印刷条件であることが好ましい。
【0083】
本発明において、スクリーンインキを硬化する方法は、活性エネルギー線によるものであれば特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光または赤外光などを照射することで硬化することができる。中でも、紫外線、電子線が好ましく、より好ましくは紫外線である。紫外線のピーク波長は、200~600nmであることが好ましく、より好ましくは350~420nmである。
【0084】
活性エネルギー線源としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等のLED(発光ダイオード)やガス・固体レーザーなどが挙げられる。
【0085】
[ガラス転移温度]
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定測定)により求めた値をいう。なお、測定機は株式会社リガク製 DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分、DSC曲線におけるガラス転移に基づく吸熱開始温度と終了温度との中点をガラス転移温度とした。
植物成分変性アクリレートである、ロジン変性ポリエステルアクリレートおよび/または植物油変性ポリエポキシアクリレートの単独硬化物のガラス転移温度は0~100℃であることが好ましく、0~70℃であることがなお好ましい。またウレタンアクリレートの単独硬化物のガラス転移温度は-50℃~50℃であることが好ましく、-40℃~40℃であることがなお好ましい。
ここで、単独硬化物とは、原料の重合性オリゴマーを単独重合させたものを意味する。
上記範囲であれば、柔軟性と耐薬品性とのバランスの取れた塗膜性能を得ることができるためである。
【実施例0086】
以下、実施例として本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何等限定されるものではない。本発明において、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は、「質量%」をそれぞれ表す。
【0087】
<実施例1>[活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキS1の作製]
ロジン変性ポリエステルアクリレート(バイオマス度30質量%、長興材料工業社製「ETERCURE」、重量平均分子量2,000~3,000 3官能)15部、ウレタンアクリレート(三菱ケミカル社製 紫光UV-3200B、単独硬化物ガラス転移温度-8℃、重量平均分子量10,000 2官能)25部、バイオマス樹脂粒子としてバイオマス樹脂粒子A(天然物系、ポリヒドロキシアルカン酸を含む樹脂粒子 バイオマス度の割合100質量%、平均粒子径5μm 融点170℃)6部、モノマーとしてN-ビニルカプロラクタム10部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート10部、重合開始剤として2,4-ジエチルチオキサントン3部、増感剤として2-ジメチルアミノ安息香酸エチル3部、非シリコーン系消泡剤としてBYK-057(ブタジエン共重合物、ビックケミー・ジャッパン社製)2部、着色剤(C.I.ピグメントブルー15:4)6部、体質顔料(硫酸バリウム)20部を、ミキサー回転式攪拌機を用いて均一に混合した後、3本ロール分散機を2パスしてスクリーン印刷インキ(S1)を調製した。
【0088】
<実施例2~17、比較例1~6>[スクリーン印刷インキS2~S17、T1~T6の作製]
実施例1と同様の方法によって、表1及び表2に示す、スクリーン印刷インキをそれぞれ作製した。尚、表中の略称を以下に示す。また、表中の数値は、特に断りのない限り「部」を表し、空欄は使用していないことを表す。
大豆油変性ポリエポキシアクリレート(ダイセル・オルネクス社製 官能基数4、重量平均分子量1200、単独硬化物のガラス転移温度13℃ バイオマス度の割合64質量%)
紫光UV-3000B(三菱ケミカル社製 2官能、ウレタンアクリレート、単独硬化物ガラス転移温度-39℃、重量平均分子量18,000)
紫光UV-7000B(三菱ケミカル社製 2~3官能、ウレタンアクリレート、単独硬化物ガラス転移温度52℃、重量平均分子量3,500)
ART RESIN UN-6200(根上工業社製 2官能、ウレタンアクリレート、単独硬化物ガラス転移温度-52℃、重量平均分子量6,500)
EBECRYL 1830(ダイセル・オルネクス社製 6官能、ポリエステルアクリレート、単独硬化物ガラス転移温度77℃、重量平均分子量1,000)
バイオマス樹脂粒子B(植物系、ポリ乳酸を含むバイオマス度の割合100質量%、平均粒子径3μm)
シンエツシリコンKF-96-1000CS:シリコーン系消泡剤(信越化学工業社製)
【0089】
<スクリーン印刷インキS1による印刷>
基材としてフレーム処理を施した成型加工されたプラスチックを使用して、この基材上に上記活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキS1をスクリーン刷版(NBCメッシュテック社製、L-SCREEN、140-030/355PW)を用いてパターンをスクリーン印刷した。その後、コンベア速度10m/分、120W/cm、照射距離15mmとなるようにUV光(光源はメタルハライドランプ)でスクリーン印刷インキを硬化させ、試験サンプルを作成した。スクリーン印刷体を作製した。
尚、フレーム処理は、従来公知の方法で行うことができるが、火力が35~40μAのバーナーを用い、バーナー先端と成型加工されたプラスチック表面との間隔を25~75mm程度とし、0.5~2.0秒間かけて成型加工されたプラスチック表面を均一に加熱処理する。尚、フレーム処理後の成型加工されたプラスチック表面は、表面張力が40~60mN/mの範囲になるように、印刷処理に適した濡れ性を確保した。
【0090】
<実施例1~17、比較例1~6>[スクリーン印刷インキS1~S15、T1~T6による印刷]
実施例1で使用したスクリーン印刷インキS1の替わりに、表1及び表2に記載したスクリーン印刷インキに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって印刷体をそれぞれ作製した。
【0091】
<スクリーン印刷インキおよびその印刷体の評価>
上記実施例および比較例で得られたスクリーン印刷インキおよび印刷体について以下の評価を行った。評価結果は表1及び表2に示した。
【0092】
[耐薬品性]
実施例1~17及び比較例1~6で得られた印刷体を用いて評価を行った。印刷面に99.5%のエタノールを含ませた綿棒で100往復擦り、基材が露出する回数を評価した。
A(優):100回以上
B(良):50回以上100回未満
C(不良):50回未満
なお産業上利用可能なレベルはAおよびBである。
【0093】
[柔軟性]
実施例1~17及び比較例1~6で得られた印刷体を用いて評価を行った。印刷面を180°山折りにし、元に戻した時の印刷面のひび割れの状態を目視判定した。評価結果の判定基準は以下のとおりとした。
A(優):折り曲げ線部に塗膜の割れが10%未満、塗膜の白化無し
B(良):折り曲げ線部に塗膜の割れが10%以上20%未満、僅かに塗膜が白化している
C(不良):折り曲げ線部に塗膜の割れが20%以上割れて、欠片が落ちる
なお産業上利用可能なレベルはAおよびBである。
【0094】
[密着性]
実施例1~17及び比較例1~6で得られた印刷体を用いて評価を行った。印刷面に幅12mmの粘着テープ(ニチバン社製 セロハンテープ)を貼り付け、これを急速に剥がした時の印刷面の外観の状態を目視判定した。評価結果の判定基準は以下のとおりとした。
A(優):印刷面のインキ皮膜の剥離が5%未満であること。
B(良):インキ皮膜の剥離面積が5%以上20%未満であること。
C(不良):インキ皮膜の剥離面積が20%以上であること。
なお産業上利用可能なレベルはAおよびBである。
【0095】
[後加工性]
実施例1~17及び比較例1~6で得られた印刷体を用いて評価を行った。以下の評価で後加工性とは箔(村田金箔社製 蒸着箔)転写による単位面積当たりに転写される箔の転写面積比率をいう。尚、評価結果の基準は以下のとおりとした。
A(優):転写される箔の転移率が90質量%以上であること。
B(良):転写される箔の転移率が80質量%以上90質量%未満あること。
C(不良):転写される箔の転移率が80質量%未満であること。
なお産業上利用可能なレベルはAおよびBである。
【0096】
本発明により、上記問題点を解決すべくなされたものであって、着色剤、植物成分変性アクリレートを含有するバインダー樹脂、および、樹脂粒子を含む実施例S1~S17は、耐薬品性、柔軟性、密着性、後加工性に優れる活性エネルギー線硬化型スクリーン印刷インキと印刷体を提供することが可能となった。
植物成分変性アクリレートを除く比較例T1やT4およびT5では、柔軟性や密着性が不良であり、バイオマス樹脂粒子を除く比較例T2やT3およびT6では、耐薬品性や密着性が不良であった。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】