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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183822
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221206BHJP
   H02P 25/16 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P25/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091315
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 祐司
(72)【発明者】
【氏名】田井 慎太郎
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB05
5H505CC04
5H505DD03
5H505EE49
5H505GG04
5H505HA08
5H505HB01
5H505LL22
5H505LL24
5H505PP02
5H770AA04
5H770AA13
5H770CA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770EA01
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】複数の小信号回路の電源供給の冗長性を確保しつつノイズ耐性の低下を抑制することが可能な駆動制御装置を提供する。
【解決手段】冗長性を有するように外部電源に接続された給電用端子子と、該給電用端子に入力された小信号電源が第1の電源配線及び第1の接地配線とによって給電される複数の小信号回路と、第2の電源配線及び第2の接地配線によって駆動電源が給電され、当該駆動電源に基づいて所定の駆動信号を生成する駆動回路と、第1の接地配線と第2の接地配線と接続するコンデンサとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冗長性を有するように外部電源に接続された給電用端子と、
該給電用端子に入力された小信号電源が第1の電源配線及び第1の接地配線とによって給電される複数の小信号回路と、
第2の電源配線及び第2の接地配線によって駆動電源が給電され、当該駆動電源に基づいて所定の駆動信号を生成する駆動回路と、
前記第1の接地配線と前記第2の接地配線と接続するコンデンサと
を備えることを特徴とする駆動制御装置。
【請求項2】
前記コンデンサは、前記複数の小信号回路に対応して複数設けられた前記第2の接地配線毎に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記小信号回路は、三相インバータの出力電流を検出する電流センサであり、
前記駆動回路は、前記三相インバータを制御するゲート信号を生成するゲートドライバであることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記小信号回路は、走行モータを駆動する駆動用三相インバータの出力電流を各々検出する3つの走行電流センサと、発電機から入力された三相交流電力を直流電力に変換する発電用三相インバータの入力電流を各々検出する3つの発電電流センサと、電池と前記駆動用三相インバータ及び前記発電用三相インバータとの間に設けられ、前記電池から入力された直流電力を昇圧して前記駆動用三相インバータに出力する一方、前記駆動用三相インバータあるいは/及び前記発電用三相インバータから入力された直流電力を降圧して前記電池に出力する昇降圧コンバータのリアクトル電流を検出するリアクトル電流センサとであり、
前記駆動回路は、前記発電用三相インバータ、前記発電用三相インバータ及び前記昇降圧コンバータを制御するゲート信号を生成するゲートドライバであることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記給電用端子は、少なくとも前記3つの走行電流センサに冗長性を具備した状態で前記小信号電源が給電されるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の請求項1には、「制御回路を構成する電気部品が搭載された回路基板を備え、センサからの信号を受信して制御対象を制御する制御装置であって、前記回路基板は、複数のグランドパターンを有し、前記複数のグランドパターンは、前記回路基板の外周の少なくとも一部に沿って形成された少なくとも一つの外縁部グランドパターンを含み、当該外縁部グランドパターンは、他の前記複数のグランドパターンを、前記回路基板の外周の前記少なくとも一部に沿って囲うように構成されており、前記外縁部グランドパターンを除く前記各グランドパターンは、それぞれ一部分において、前記外縁部グランドパターンに対し直接に、又は他の前記グランドパターンを介して間接に、抵抗器を介さず直流的に接続されていると共に、当該直流的に接続されている部分以外の部分において、少なくとも一つのコンデンサを介して前記外縁部グランドパターンに対し直接に、又は他の前記グランドパターンを介して間接に、交流的に接続されている、制御装置」が記載されている。
【0003】
また、特許文献1の段落0045には、「本制御装置10の回路基板100は、外縁部グランドパターンであるPG172が回路基板100の外周部に沿って形成され、LG170がPG172に対し回路基板100の内側(中央寄り)に形成されており、かつ、PG172とLG170とがコンデンサ200a~dにより交流的に接続されている。すなわち、PG172とLG170とは、上述のようにGND接続パターン174により直流的に接続される一方、コンデンサ200a~dを介して交流的にも接続され、各接続部の近傍において、高周波に対し互いに低インピーダンスで結合された状態となっている」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5740427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記背景技術のように比較的大きな振幅の信号を扱う大信号回路と比較的小さな振幅の信号を扱う小信号回路とで電源パターン及びグランドパターン(接地パターン)を個別に設けることにより大信号回路と小信号回路との相互干渉を抑制することは回路の実装技術として一般的に行われている手法であるが、電源の給電先である小信号回路が複数ある場合において電源供給の冗長性を確保するためには、電源パターン及び接地パターンを小信号回路毎に複数設ける必要がある。
【0006】
しかしながら、小信号回路毎に電源パターン及び接地パターンを複数設ける場合、各々の電源パターン及び接地パターンのパターン幅を狭くせざるを得ず、つまり電源パターン及び接地パターン等の電力供給路の太さを細くせざるを得ないため、電力供給路のインピーダンスが増大する。この結果として、小信号回路小信号回路がノイズの影響を受け易くなるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数の小信号回路の電源供給の冗長性を確保しつつノイズ耐性の低下を抑制することが可能な駆動制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、駆動制御装置に係る第1の解決手段として、冗長性を有するように外部電源に接続された給電用端子と、該給電用端子に入力された小信号電源が第1の電源配線及び第1の接地配線とによって給電される複数の小信号回路と、第2の電源配線及び第2の接地配線によって駆動電源が給電され、当該駆動電源に基づいて所定の駆動信号を生成する駆動回路と、前記第1の接地配線と前記第2の接地配線と接続するコンデンサとを備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、駆動制御装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記コンデンサは、前記複数の小信号回路に対応して複数設けられた前記第2の接地配線毎に設けられている、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、駆動制御装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記小信号回路は、三相インバータの出力電流を検出する電流センサであり、前記駆動回路は、前記三相インバータを制御するゲート信号を生成するゲートドライバである、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、駆動制御装置に係る第4の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記小信号回路は、走行モータを駆動する駆動用三相インバータの出力電流を各々検出する3つの走行電流センサと、発電機から入力された三相交流電力を直流電力に変換する発電用三相インバータの入力電流を各々検出する3つの発電電流センサと、電池と前記駆動用三相インバータ及び前記発電用三相インバータとの間に設けられ、前記電池から入力された直流電力を昇圧して前記駆動用三相インバータに出力する一方、前記駆動用三相インバータあるいは/及び前記発電用三相インバータから入力された直流電力を降圧して前記電池に出力する昇降圧コンバータのリアクトル電流を検出するリアクトル電流センサとであり、前記駆動回路は、前記発電用三相インバータ、前記発電用三相インバータ及び前記昇降圧コンバータを制御するゲート信号を生成するゲートドライバである、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、駆動制御装置に係る第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記給電用端子は、少なくとも前記3つの駆動用電流センサに冗長性を具備した状態で前記小信号電源が給電されるように構成されている、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の小信号回路の電源供給の冗長性を確保しつつノイズ耐性の低下を抑制することが可能な駆動制御装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る駆動制御装置の全体構成を示すブロックである。
図2】本発明の一実施形態に係る駆動制御装置の給電系統を示すブロックである。
図3】本発明の一実施形態に係る駆動制御装置におけるGD基板の給電回路を示す回路図である。
図4】本発明の一実施形態に係る駆動制御装置における電源供給冗長性を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る駆動制御装置におけるノイズの通過経路を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態の変形例に係る駆動制御装置の電源供給系統を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る駆動制御装置Aは、図示するようにPCU1(パワーコントロールユニット)を駆動制御する駆動制御回路であり、ECU2及びゲートドライバ3を備えている。
【0016】
PCU1は、3つの電力変換回路の集合体であり、より具体的には昇降圧コンバータ1a、走行用インバータ1b及び発電用インバータ1cを備えている。昇降圧コンバータ1aは、リアクトル、複数のスイッチングトランジスタ及び平滑コンデンサを備え、リチウムイオン電池等の組電池から一次側に供給された直流電力を昇圧して二次側の走行用インバータ1bに供給する一方、二次側の走行用インバータ1bあるいは/及び発電用インバータ1cから入力される直流電力(回生電力あるいは/及び発電電力)を降圧して一次側の組電池に供給する。
【0017】
走行用インバータ1bは、複数のスイッチングトランジスタを備え、昇降圧コンバータ1aから入力される直流電力を三相交流電力に変換して走行モータに駆動信号として供給する一方、走行モータから入力される回生電力(三相交流電力)を直流電力に変換して昇降圧コンバータ1a二次側に供給する三相インバータである。なお、上記走行モータは、走行用の回転動力を発生させて電動車両の車輪に供給する三相同期モータである。
【0018】
発電用インバータ1cは、複数のスイッチングトランジスタを備え、電動車両に付帯的に設けられた発電機の発電電力(三相交流電力)を直中電力に変換して昇降圧コンバータ1a二次側に供給する三相インバータである。すなわち、PCU1は、走行モータ及び発電機と組電池との間に設けられた電力変換回路であり、走行モータ及び発電機と組電池との間において電力を双方向に通電させる。
【0019】
詳細については後述するが、このような昇降圧コンバータ1a、走行用インバータ1b及び発電用インバータ1cには、動作状態を示す状態量を検出する各種センサが設けられている。例えば、昇降圧コンバータ1aには一次電圧を検出する一次電圧センサ、二次電圧を検出する二次電圧センサ、また一次側と二次側との間に通電するリアクトル電流を検出するリアクトル電流センサが設けられている。
【0020】
走行用インバータ1bには、走行モータとの間に通電する三相走行電流つまりU相走行電流、V相走行電流及びW相走行電流を各々検出する3つの電流センサ(U相走行電流センサ、V相走行電流センサ及びW相走行電流センサ)が設けられている。また、発電用インバータ1cには、発電機との間に通電する三相発電電流つまりU相発電電流、V相発電電流及びW相発電電流を各々検出する3つの電流センサ(U相発電電流センサ、V相発電電流センサ及びW相発電電流センサ)が設けられている。
【0021】
ECU2は、ECU基板B1(プリント回路基板)に実装された制御回路でり、ゲートドライバ3を制御する。すなわち、このECU2は、昇降圧コンバータ1a、走行用インバータ1b及び発電用インバータ1cの動作状態を示す検出信号に基づいてゲートドライバ3に供給する駆動制御指令を生成するフィードバック制御回路である。
【0022】
上記検出信号は、上述した各種センサの出力信号である。すなわち、ECU2は、一次電圧信号、二次電圧信号、リアクトル電流信号、U相走行電流信号、V相走行電流信号、W相走行電流信号、U相発電電流信号、V相発電電流信号及びW相発電電流信号、また上位制御装置から入力される制御指令等を予め記憶した走行制御プログラムで情報処理することにより駆動制御指令を生成するソフトウエア制御回路である。
【0023】
ゲートドライバ3は、GD基板B2(プリント回路基板)に実装された駆動回路である。このゲートドライバ3は、昇降圧駆動IC3a、走行駆動IC3b及び発電駆動IC3cを備えている。昇降圧駆動IC3aは、昇降圧コンバータ1aの各スイッチングトランジスタをON/OFF駆動する複数のゲート信号を生成して昇降圧コンバータ1aに出力する。
【0024】
走行駆動IC3bは、走行用インバータ1bの各スイッチングトランジスタをON/OFF駆動する複数のゲート信号を生成して走行用インバータ1bに出力する。発電駆動IC3cは、発電用インバータ1cの各スイッチングトランジスタをON/OFF駆動する複数のゲート信号を生成して発電用インバータ1cに出力する。
【0025】
このようなゲートドライバ3が生成する各ゲート信号は、ECU2から入力される駆動制御指令に基づいて昇降圧コンバータ1aの各スイッチングトランジスタ、走行用インバータ1bの各スイッチングトランジスタ及び発電用インバータ1cの各スイッチングトランジスタにおけるON/OFF動作のデューティ比を設定するPWM信号である。
【0026】
ここで、ゲートドライバ3は、比較的大きな振幅の信号である各種ゲート信号を生成する回路であり、よって大信号回路と言えるものである。これに対して、上述した各種センサは、比較的小さな振幅の信号である検出信号をECU2に供給する電子部品であり、ECU2と共に小信号回路と言えるものである。
【0027】
続いて、このような駆動制御装置Aの給電系統について図2を参照して説明する。
この図2に示すように、この駆動制御装置Aでは、ECU基板B1からGD基板B2に小信号電源SVCCと駆動電源IGAが給電される。小信号電源SVCCは、小信号回路用(例えば電流センサ用)の電源であり、駆動電源IGAは、駆動回路用つまり昇降圧駆動IC3a、走行駆動IC3b及び発電駆動IC3cの電源である。
【0028】
ECU基板B1とGD基板B2とは並行対峙した状態で筐体(図示略)に収容されており、BtoBコネクタB3によって相互接続されている。ECU基板B1には、システム電源11とトラッカIC12とが実装されており、システム電源11は、小信号電源SVCC及び駆動電源及びIGAを生成する。このシステム電源11は、本発明の外部電源に相当する。トラッカIC12は、小信号電源SVCCの給電を中継する電源回路である。
【0029】
また、上述したPCU1の各種センサのうち、7つの電流センサつまりU相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10は、図示するようにゲートドライバ3と同様にGD基板B2に実装されている。これら7つの電流センサには、BtoBコネクタB3を介してECU基板B1から小信号電源SVCCが給電されている。
【0030】
ここで、GD基板B2には、BtoBコネクタB3の端子構成に対応すると共に上記7つの電流センサに小信号電源SVCCを給電するための給電用端子Tが備えられている。BtoBコネクタB3及び給電用端子Tは、7つの電流センサに冗長性を具備した状態で小信号電源SVCCが給電されるよう各電流センサ毎に電源端子とGND端子(接地端子)とを備えている。
【0031】
すなわち、BtoBコネクタB3とGD基板B2の給電用端子Tとは、冗長性を有するようにECU基板B1のシステム電源11(外部電源)に接続されており、各々に合計7個の電源端子と合計7個のGND端子(接地端子)を備えている。小信号電源SVCCは、このようなBtoBコネクタB3及び給電用端子Tを介して、ECU基板B1からGD基板B2に冗長性を有した状態で給電される。
【0032】
また、U相走行電流センサ4は、走行用インバータ1bの出力電流である三相交流電流のうち、U相電流を検出する電流センサであり、U相電流の大きさを示すU相走行電流信号(小信号)を出力する。V相走行電流センサ5は、走行用インバータ1bの出力電流である三相交流電流のうち、V相電流を検出する電流センサであり、V相電流の大きさを示すV相走行電流信号(小信号)を出力する。
【0033】
W相走行電流センサ6は、走行用インバータ1bの出力電流である三相交流電流のうち、W相電流を検出する電流センサであり、W相電流の大きさを示すW相走行電流信号(小信号)を出力する。U相発電電流センサ7は、発電用インバータ1cの入力電流である三相交流電流のうち、U相電流を検出する電流センサであり、U相電流の大きさを示すU相発電電流信号(小信号)を出力する。
【0034】
V相発電電流センサ8は、発電用インバータ1cの入力電流である三相交流電流のうち、V相電流を検出する電流センサであり、V相電流の大きさを示すV相発電電流信号(小信号)を出力する。W相発電電流センサ9は、発電用インバータ1cの入力電流である三相交流電流のうち、W相電流を検出する電流センサであり、W相電流の大きさを示すW相発電電流信号(小信号)を出力する。
【0035】
リアクトル電流センサ10は、昇降圧コンバータ1aのリアクトルに流れる電流(リアクトル電流)を検出する電流センサであり、当該リアクトル電流の大きさを示すリアクトル電流信号(小信号)を出力する。
【0036】
このような7つの電流センサに関する小信号電源SVCCの給電系統に対して、同じくGD基板B2に実装されたゲートドライバ3には、システム電源11で別途生成された駆動電源IGAがBtoBコネクタB3を介して給電されている。この駆動電源IGAは、上述した小信号電源SVCCとは別の電源であり、駆動回路であるゲートドライバ3の専用電源である。
【0037】
図3は、GD基板B2における小信号電源SVCCの給電回路を示している。GD基板B2には、小信号電源SVCCを各電流センサに個別に給電するようにU相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10毎に小信号電源パターンP4S、P5S、P6S、P7S、P8S、P9S、P10S及び小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gが形成されている。
【0038】
なお、これら小信号電源パターンP4S、P5S、P6S、P7S、P8S、P9S、P10S及び小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gのうち、小信号電源パターンP4S、P5S、P6S、P7S、P8S、P9S、P10Sは本発明における第1の電源配線に相当し、また小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gは本発明における第1の接地配線に相当する。
【0039】
これら小信号電源パターンP4S、P5S、P6S、P7S、P8S、P9S、P10S及び小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gのうち、小信号電源パターンP4S及び小信号GNDパターンP4Gは、U相走行電流センサ4に小信号電源SVCCを給電し、小信号電源パターンP5S及び小信号GNDパターンP5Gは、V相走行電流センサ5に小信号電源SVCCを給電し、小信号電源パターンP6S及び小信号GNDパターンP6Gは、W相走行電流センサ6に小信号電源SVCCを給電する。
【0040】
また、小信号電源パターンP7S及び小信号GNDパターンP7Gは、U相発電電流センサ7に小信号電源SVCCを給電し、小信号電源パターンP8S及び小信号GNDパターンP8Gは、V相発電電流センサ8に小信号電源SVCCを給電し、小信号電源パターンP9S及び小信号GNDパターンP9Gは、W相発電電流センサ9に小信号電源SVCCを給電する。さらに、小信号電源パターンP10S及び小信号GNDパターンP10Gは、昇降圧コンバータ1aのリアクトル電流センサ10に小信号電源SVCCを給電する。
【0041】
このような小信号電源パターンP4S、P5S、P6S、P7S、P8S、P9S、P10S及び小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gのうち、小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gと駆動電源IGAのGND(接地電位)との間には、コンデンサC~C10が各々設けられている。
【0042】
すなわち、コンデンサCは、一端が小信号GNDパターンP4Gに接続され、他端が駆動電源IGAのGND(接地電位)に接続されている。コンデンサCは、一端が小信号GNDパターンP5Gに接続され、他端が駆動電源IGAのGND(接地電位)に接続されている。コンデンサCは、一端が小信号GNDパターンP6Gに接続され、他端が駆動電源IGAのGND(接地電位)に接続されている。
【0043】
また、コンデンサCは、一端が小信号GNDパターンP7Gに接続され、他端が駆動電源IGAのGND(接地電位)に接続されている。コンデンサCは、一端が小信号GNDパターンP8Gに接続され、他端が駆動電源IGAのGND(接地電位)に接続されている。
【0044】
コンデンサCは、一端が小信号GNDパターンP9Gに接続され、他端が駆動電源IGAのGND(接地電位)に接続されている。コンデンサC10は、一端が小信号GNDパターンP10Gに接続され、他端が駆動電源IGAのGND(接地電位)に接続されている。
【0045】
また、小信号電源パターンP4S、P5S、P6S、P7S、P8S、P9S、P10Sと小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gとの間には、各々にコンデンサC4b~C10bが設けられている。これらコンデンサC4b~C10bは、U相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10に対して並列に各々接続されたバイパスコンデンサである。
【0046】
すなわち、コンデンサC4bは、一端が小信号電源パターンP4Sに接続され、他端が小信号GNDパターンP4Gに接続されている。コンデンサC5bは、一端が小信号電源パターンP5Sに接続され、他端が小信号GNDパターンP5Gに接続されている。コンデンサC6bは、一端が小信号電源パターンP6Sに接続され、他端が小信号GNDパターンP6Gに接続されている。
【0047】
コンデンサC7bは、一端が小信号電源パターンP7Sに接続され、他端が小信号GNDパターンP7Gに接続されている。コンデンサC8bは、一端が小信号電源パターンP8Sに接続され、他端が小信号GNDパターンP8Gに接続されている。コンデンサC9bは、一端が信号電源パターンP9Sに接続され、他端が小信号GNDパターンP9Gに接続されている。コンデンサC10bは、一端が信号電源パターンP10Sに接続され、他端が小信号GNDパターンP10Gに接続されている。
【0048】
これらコンデンサC~C10、C4b~C10bは、電源ノイズのU相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10への影響を軽減するための回路素子である。
【0049】
すなわち、コンデンサC~C10は、小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gのインピーダンスを低下させることにより、小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gの電圧変動に起因する電流検出信号の変動を軽減する。
【0050】
一方、コンデンサC4b~C10bは、電源ノイズのU相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10への流入を抑制することにより、電源ノイズに起因する電流検出信号の変動を軽減する。
【0051】
また、GD基板B2には、上述した小信号電源パターンP4S、P5S、P6S、P7S、P8S、P9S、P10S及び小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gとは別に、駆動電源パターンPaS、PbS、PcS及び駆動GNDパターンPaG、PbG、PcGが形成されている。
【0052】
なお、これら駆動電源パターンPaS、PbS、PcS及び駆動GNDパターンPaG、PbG、PcGのうち、駆動電源パターンPaS、PbS、PcSは本発明における第2の電源配線に相当し、駆動GNDパターンPaG、PbG、PcGは本発明における第2の接地配線に相当する。
【0053】
ゲートドライバ3には、駆動電源パターンPaS、PbS、PcS及び駆動GNDパターンPaG、PbG、PcGを介して駆動電源IGAが給電されている。なお、図示するように、GD基板B2には、上述した一次電圧センサ及び二次電圧センサ用にも電源パターン及びGNDパターンが個別に設けられている。
【0054】
次に、本実施形態に係る駆動制御装置Aの作用効果について、図4及び図5をも参照して詳しく説明する。
【0055】
最初に、この駆動制御装置Aでは、図2に示しているように、ECU基板B1からGD基板B2のU相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10に小信号電源SVCCが個別に給電されているので、各電流センサの電源供給における冗長性を確保することが可能である。
【0056】
例えば、コネクタ13の接触不良等によりU相走行電流センサ4への給電不良が発生した場合に、他のV相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10には小信号電源SVCCが正常に給電される。
【0057】
すなわち、この駆動制御装置Aによれば、7個の電流センサのいずれかに給電不良が発生しても、当該給電不良の電流センサ以外の電流センサを健全に動作させることが可能である。この結果、複数の電流センサ(小信号回路)の電源供給における冗長性を確保することが可能である。
【0058】
また、この駆動制御装置Aでは、図3に示しているように、小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gと駆動電源IGAのGND(接地電位)との間にコンデンサC~C10が各々設けられているので、各々の小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gとのインピーダンスを低減することが可能である。
【0059】
すなわち、この駆動制御装置Aによれば、小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gの電圧変動に起因する電流検出信号の変動を軽減することが可能、つまり小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gとのインピーダンスの上昇に起因するU相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10のノイズ耐性の低下を抑制することが可能である。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、複数の電流センサ(小信号回路)の電源供給における冗長性を確保しつつ、複数の電流センサ(小信号回路)におけるノイズ耐性の低下を抑制することが可能な駆動制御装置Aを提供することが可能である。
【0061】
また、この駆動制御装置Aによれば、小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gと駆動電源IGAのGND(接地電位)との間、つまり小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gと駆動信号GNDパターンPaG、PbG、PcGとの間にコンデンサC~C10を各々設けられているので、U相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10の全てについて、ノイズ耐性の低下を抑制することが可能である。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、PCU1を駆動制御する駆動制御装置Aに本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、第1の電源配線及び第1の接地配線によって駆動電源が給電され、当該駆動電源に基づいて所定の駆動信号を生成する駆動回路と、第2の電源配線及び第2の接地配線によって小信号電源が給電され、当該小信号電源に基づいて上記駆動回路を制御するための制御用信号を生成する小信号回路とを備えるものであれば、如何なる回路にも適用可能である。
【0063】
(2)上記実施形態では、複数の電流センサ(小信号回路)に対する小信号電源SVCCの給電に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、小信号電源SVCCの給電先である小信号回路は、複数の電流センサつまりU相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10に限定されない。
【0064】
(3)上記実施形態では、GD基板B2における複数の小信号回路、つまりU相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10の各々に個別に小信号電源SVCCを給電したが、本発明はこれに限定されない。
【0065】
例えば、図6に示すようなU相走行電流センサ4、V相走行電流センサ5、W相走行電流センサ6、U相発電電流センサ7、V相発電電流センサ8、W相発電電流センサ9及びリアクトル電流センサ10への給電系統が考えられる。
【0066】
例えば、図6(a)に示す結線方法では、ECU基板B1から4つの電流センサ4~6、10に個別に小信号電源SVCCを給電し、残りの3つの電流センサ7~9については、ECU基板B1から小信号電源SVCCを給電するのではなく、GD基板B2内でコネクタ23と4つの電流センサ4~6、10との間の電源パターン及びGNDパターンを分岐させることにより小信号電源SVCCを給電するものである。
【0067】
上記電源パターン及びGNDパターンの分岐態様は、図示するようにコネクタ23と電流センサ4との間の電源パターン及びGNDパターンを分岐させて電流センサ7に小信号電源SVCCを給電し、コネクタ23と電流センサ5との間の電源パターン及びGNDパターンを分岐させて電流センサ8に小信号電源SVCCを給電し、コネクタ23と電流センサ6との間の電源パターン及びGNDパターンを分岐させて電流センサ9に小信号電源SVCCを給電するものであるが、分岐態様はこれに限定されない。
【0068】
また、図6(b)に示す結線方法では、ECU基板B1から3つの電流センサ4~6に個別に小信号電源SVCCを給電し、残りの4つの電流センサ7~10については、GD基板B2内でコネクタ23と3つの電流センサ4~6との間の電源パターン及びGNDパターンを分岐させることにより小信号電源SVCCを給電するものである。
【0069】
上記電源パターン及びGNDパターンの分岐態様は、例えば図6(b)に示すように、コネクタ23と電流センサ4との間の電源パターン及びGNDパターンを分岐させて2つの電流センサ7、10に小信号電源SVCCを給電し、コネクタ23と電流センサ5との間の電源パターン及びGNDパターンを分岐させて電流センサ8に小信号電源SVCCを給電し、コネクタ23と電流センサ6との間の電源パターン及びGNDパターンを分岐させて電流センサ9に小信号電源SVCCを給電するものであるが、分岐態様はこれに限定されない。
【0070】
このような結線方法は、3つの電力変換器つまり昇降圧コンバータ、走行用インバータ及び発電用インバータのうち、昇降圧コンバータの出力電流を検出する電流センサ4~6における電源供給の冗長化が他の4つの電流センサ7~10における電源供給の冗長化よりも重要なことを考慮したものである。
【0071】
すなわち、PCU1の場合、走行モータMの駆動に直接関係する走行用インバータは、他の昇降圧コンバータ及び発電用インバータよりも重要である。したがって、より重要な走行用インバータの出力電流を検出する電流センサ4~6を優先的に冗長化させ、他の4つの電流センサ7~10については、電源供給の冗長化をしないということ場合もあり得る。このような趣旨から、本発明の給電用端子は、少なくとも3つの走行電流センサに冗長性を具備した状態で小信号電源が給電されるように構成される。
【0072】
(4)上記実施形態では、小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gと駆動電源IGAのGND(接地電位)との間、つまり小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gと駆動信号GNDパターンPaG、PbG、PcGとの間にコンデンサC~C10を各々設けたが、本発明はこれに限定されない。
【0073】
すなわち、全ての小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10GにコンデンサC~C10を設けることに代えて、小信号GNDパターンP4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10Gの一部にコンデンサを設けてもよい。
【符号の説明】
【0074】
A 駆動制御装置
B1 ECU基板
B2 GD基板
B3 BtoBコネクタ
4S、P5S、P6S、P7S、P8S、P9S、P10S 小信号電源パターン
4G、P5G、P6G、P7G、P8G、P9G、P10G 小信号GNDパターン
aS、PbS、PcS 駆動信号電源パターン
aG、PbG、PcG 駆動信号GNDパターン
T 給電用端子
1 PCU(パワーコントロールユニット)
2 ECU2
3 ゲートドライバ
3a 昇降圧駆動IC
3b 走行駆動IC
3c 発電駆動IC
4 U相走行電流センサ
5 V相走行電流センサ
6 W相走行電流センサ
7 U相発電電流センサ
8 V相発電電流センサ
9 W相発電電流センサ
10 リアクトル電流センサ
11 システム電源
12 トラッカIC


図1
図2
図3
図4
図5
図6