(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183824
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ゲート駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20221206BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02M1/00 E
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091317
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】小林 敦
(72)【発明者】
【氏名】山内 一輝
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740AA10
5H740BA11
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
(57)【要約】
【課題】ゲート駆動型のスイッチング素子を駆動するときに、短絡状態である場合にこれを迅速に判定することができるようにしたゲート駆動装置を提供することにある。
【解決手段】ゲート駆動形の半導体スイッチング素子に対して駆動回路によりゲート駆動信号を与えてオンオフの制御を行うゲート駆動装置であって、半導体スイッチング素子の主端子間の電圧を検出し、オン駆動時に主端子間電圧が増大することをもって半導体スイッチング素子の短絡状態を判定する判定回路と、判定回路により半導体スイッチング素子の短絡状態が判定されたときに半導体スイッチング素子を遮断する制御回路とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート駆動形の半導体スイッチング素子に対して駆動回路によりゲート駆動信号を与えてオンオフの制御を行うゲート駆動装置であって、
前記半導体スイッチング素子の主端子間の電圧を検出し、オン駆動時に主端子間電圧が増大することをもって前記半導体スイッチング素子の短絡状態を判定する判定回路(30、30a、30b、30c)と、
前記判定回路により前記半導体スイッチング素子の短絡状態が判定されたときに前記半導体スイッチング素子を遮断する制御回路(20)と
を備えたゲート駆動装置。
【請求項2】
前記判定回路は、
前記半導体スイッチング素子の主端子間電圧のボトム電圧を保持するボトムホールド回路(40、40a)と、
前記半導体スイッチング素子の前記主端子間電圧が、前記ボトム電圧をヒステリシス電圧分を加算した参照電圧よりも大きくなったときに短絡状態を判定する比較回路(50、50a、50b)と
を備える請求項1に記載のゲート駆動装置。
【請求項3】
前記ボトムホールド回路は、前記半導体スイッチング素子がオフすると前記ボトム電圧の保持をリセットするリセットスイッチ(44)を備える請求項2に記載のゲート駆動装置。
【請求項4】
前記比較回路は、前記ヒステリシス電圧分を調整可能な可変ヒステリシス電源(54)を備える請求項2または3に記載のゲート駆動装置。
【請求項5】
前記半導体スイッチング素子の主端子間の電圧を分圧する分圧回路(2)を備え、
前記判定回路は、前記分圧回路により分圧された前記半導体スイッチング素子の主端子間の電圧を入力して前記半導体スイッチング素子の短絡状態を判定する請求項2から4のいずれかに記載のゲート駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲート駆動型の半導体スイッチング素子であるMOSトランジスタなどのパワー素子を駆動制御するゲート駆動装置は、短絡時を検出する機能を備えたものがある。短絡時を検出する方式として、Desat方式がある。これは、オン指令時に短絡している場合にはドレイン・ソース間電圧Vdsが下がらない現象を利用するもので、ドレイン・ソース間電圧Vdsをモニタし、短絡しきい値と比較して短絡時を判定するものである。
【0003】
Desat方式では、ターンオン指令により、パワー素子のゲート電圧が上昇すると共に、定電流IdesatによりコンデンサCdesatに電荷が充電され、Desat端の電圧すなわちコンデンサCdesatの端子電圧が上昇する。
【0004】
この場合、通常時は、パワー素子がオンすると、ドレイン・ソース間電圧Vdsが低下するので、定電流Idesatは、ダイオードを介してパワー素子側に流れ、コンデンサCdesatへの充電が停止するので、Desat端の電圧は短絡しきい値よりも低くなり、通常時と判定することができる。
【0005】
一方、短絡時は、ドレイン・ソース間電圧Vdsが下がらないので、コンデンサCdesatへの定電流Idesatによる充電は継続することとなり、やがて短絡しきい値を超え、短絡時を判定することができる。そして、短絡時が判定されると、ゲート駆動装置は、ゲート電圧を下げパワー素子を遮断する。
【0006】
しかしながら、このようにパワー素子のドレイン・ソース間電圧Vdsをモニタし、短絡を検出するDesat方式では、パワー素子の電流経路に含まれる配線寄生インダクタンスLsの影響によって短絡判定の遅れを招くことがある。そして、短絡判定の遅れは短絡時にパワー素子に加わる短絡エネルギーを増大させることとなる。また、短絡エネルギーが増大することは、これに耐性を持たせるためには、パワー素子の大型化を招くこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許06525141号公報
【特許文献2】特開2017-212870号公報
【特許文献3】国際公開番号WO2017/141545A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、ゲート駆動型のスイッチング素子を駆動するときに、短絡時である場合にこれを迅速に判定することができ、スイッチング素子の短絡エネルギーを抑制させることで大型化することを回避できるようにしたゲート駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のゲート駆動装置は、ゲート駆動形の半導体スイッチング素子に対して駆動回路によりゲート駆動信号を与えてオンオフの制御を行うゲート駆動装置であって、前記半導体スイッチング素子の主端子間の電圧を検出し、オン駆動時に主端子間電圧が増大することをもって前記半導体スイッチング素子の短絡時を判定する判定回路(30、30a、30b、30c)と、前記判定回路により前記半導体スイッチング素子の短絡状態が判定されたときに前記半導体スイッチング素子を遮断する制御回路(20)とを備えている。
【0010】
半導体スイッチング素子を上下アームに接続して負荷に給電する構成では、配線寄生インダクタンスがあるため、スイッチング動作の際に短絡があると、半導体スイッチング素子の主端子間電圧が、一度下がってから再び上がってくるという特性がある。このため、一般的に用いられるDesat方式による短絡判定では、主端子間電圧がしきい値レベルまで上昇するのに遅れ時間を伴うため判定遅れが生ずる。
【0011】
これに対して、本方式では、上記構成を採用することにより、半導体スイッチング素子を駆動したときに、通常時と短絡時とで異なる主端子間電圧の変化を検出することで短絡時を判定することができる。
【0012】
すなわち、通常時には半導体スイッチング素子の主端子間電圧はオン状態で最も低い電圧に保持されるが、短絡時には半導体スイッチング素子の主端子間電圧が、一度下がってから再び上がってくる。このような特性の相違を利用して、判定回路では、半導体スイッチング素子の主端子間電圧が上昇することをもって短絡時を判定することができる。
【0013】
したがって、一定のしきい値まで上昇するのを待って検出する方式と異なり、上昇に転じたことで判定するので、迅速に短絡状態を判定することができ、パワー素子として用いる半導体スイッチング素子の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、
図1、
図2および
図9を参照して説明する。
電気的構成を示す
図1において、パワー素子であるゲート駆動形の半導体スイッチング素子としてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)1を上下アームにそれぞれ配置して負荷への通電経路を形成する回路に対して、ゲート駆動装置10は、一方のIGBT1をオン駆動制御する際に、他方のIGBTが短絡状態にあるかどうかを判定することができるようにした機能を備える。
【0016】
ゲート駆動装置10は、制御回路20、判定回路30などを備えている。制御回路20は、外部から与えられるオン/オフ指令のオン指令信号に基づいてゲート駆動信号Sonを生成し、駆動回路21を介してIGBT1のゲートにゲート駆動電圧Vonを与える。制御回路20は、後述するように、IGBT1のオフ駆動機能も備えており、オン駆動中に短絡が検出された場合にはIGBT1を遮断する。
【0017】
判定回路30は、ボトムホールド回路40およびヒステリシス付きのコンパレータを有する比較回路50を備えている。判定回路30は、IGBT1のコレクタ・エミッタ間電圧(以下、単に「コレクタ電圧」と称す)Vceを取り込み、この電圧の変化状態から短絡の有無を検出して出力する。
【0018】
ボトムホールド回路40は、オペアンプ41、トランジスタ42およびコンデンサ43を備える。オペアンプ41は、非反転入力端子にコレクタ電圧Vceが入力され、反転入力端子にはコンデンサ43の端子電圧Vbhが入力される。オペアンプ41の出力端子はトランジスタ42のベースに接続される。
【0019】
トランジスタ42のエミッタはコンデンサ43を介して直流電源VDに接続され、コレクタはグランドに接続される。コンデンサ43の端子電圧Vphは、トランジスタ42のエミッタとコンデンサ43の共通接続点の電圧である。オペアンプ41は、コレクタ電圧Vceがコンデンサ43の端子電圧であるボトムホールド電圧Vbhよりも小さい期間中はトランジスタ42をオン駆動し、コンデンサ43の充電電荷を放電させる。
【0020】
これにより、コレクタ電圧Vceがボトム電圧VBに達した後に上昇すると、オペアンプ41の出力信号が大きくなり、トランジスタ42がオフしてコンデンサ43への充電が停止する。この結果、コンデンサ43の端子電圧であるボトムホールド電圧Vbhは、コレクタ電圧Vceのボトム電圧VBとなりこの電圧が保持される。
【0021】
比較回路50は、コンパレータ51およびヒステリシス電圧Vhを与えるヒステリシス電源52を備える。コンパレータ51は非反転入力端子にコレクタ電圧Vceが入力され、反転入力端子にボトムホールド回路40の出力電圧であるボトムホールド電圧Vbhを、ヒステリシス電源52を通じてヒステリシス電圧Vhだけ上昇させた電圧が参照電圧Vhysとして入力される。
【0022】
コンパレータ51は、コレクタ電圧Vceが参照電圧Vhysよりも大きいときにはハイレベル、小さくなるとローレベルとなる判定信号Sdを出力する。この判定信号Sdは、制御回路20および外部に出力される。
【0023】
次に、上記構成の作用について、
図2および
図9も参照して説明する。
まず、Desat方式による課題の原因と、本実施形態の検出方式について、
図9を参照してMOSトランジスタを用いた構成で簡単に説明する。上下アームを設けて負荷Lに給電する構成においては、電流経路上に配線寄生インダクタンスLsがDesat方式における検出動作に悪影響を与えることがある。すなわち、MOS1がオン駆動されたときに、ドレイン電圧Vdsが時間と共に変化するときに、寄生インダクタンスLsによってd(Vds)/dtが発生する。このd(Vds)/dtの発生により、検出回路からMOS1のドレインに接続されるダイオードの接合容量によりコンデンサCdesatから電荷が引き抜かれる。
【0024】
コンデンサCdesatからd(Vds)/dtによって引き抜かれる電荷量が、検出回路側から定電流源によって流し込む電流による電荷量を上回り、Desatの容量が充電されるよりも放電される量が大となって、図示のようにDesat電圧が下がることがある。この結果、d(Vds)/dtによって引き抜かれた電荷を充電した後に再び充電動作によってDesat電圧が上昇し、しきい値電圧に達することで短絡判定がなされるので、配線寄生Lsがなければ狙いの時刻t0で短絡判定ができるところ、Desat電圧が低下してから元の電圧に戻るまでの時間Tだけ遅れた時刻t1になって短絡判定がなされるので、大幅な検出時間遅れを招くこととなっていた。
【0025】
本実施形態においては、配線寄生インダクタンスLsの影響によってコレクタ電圧Vceの時間変化に起因して電圧低下が発生することを利用している。IGBT1のオン駆動時に短絡状態が発生していると、コレクタ電圧Vceが一度低下した後に再び上昇するという特性を利用してこれを検知するようにしたものである。
【0026】
図2の下段には、短絡が発生していない通常時においてIGBT1がゲートに駆動電圧が与えられた後にコレクタ電圧Vceが変化する様子を示している。ゲート電圧がしきい値電圧に達する時刻t0で、コレクタ電圧VceはVCEから低下し始める。コレクタ電圧Vceは、ミラー期間に入ると、電圧V1から低下の傾きが急峻になり、電圧V2に達するとオン状態となる。つまり、IGBT1のコレクタ電圧Vceは、ゲート駆動信号が与えられてオン駆動し始めると、電圧V1を経て電圧V2まで低下する。
【0027】
図2の上段および中段のそれぞれに、通常時および短絡時におけるコレクタ電圧Vceと判定信号Sdについて示している。まず、通常時においては、制御回路20が外部からオン/オフ指令によってオン駆動するタイミングになると、駆動回路21にオン駆動信号Sonを与えて、IGBT1のゲートにゲート駆動電圧Vonを与える。
【0028】
これにより、時刻t0でIGBT1のゲート電圧Vgがしきい値電圧に達すると、コレクタ電圧Vceは、配線寄生インダクタンスLsの影響でコレクタ電流Icの時間変化でLs・dIc/dtによって電圧VCEから低下し始める。この後、時刻t1でゲート電圧Vgがミラー期間に入って一定になると、コレクタ電圧Vceはさらに急峻に低下していく。時刻t2になってミラー期間が終了してコレクタ電流Icが負荷電流に達すると、IGBT1はオン状態となり、コレクタ電圧Vceはほぼ0Vの低い電圧で一定となる。このときのコレクタ電圧Vceは、これより低下しないから、ボトム電圧VBとなる。
【0029】
これに対して、判定回路30においては、ボトムホールド回路40にコレクタ電圧Vceが取り込まれ、オペアンプ41に入力されている。ボトムホールド回路40は、コレクタ電圧Vceが下降している期間中はトランジスタ42を駆動させてコンデンサ43に充電することでボトムホールド電圧Vbhを下げていく。コレクタ電圧Vceがボトム電圧VBを経てその電圧に保持されるかあるいは上昇する場合には、トランジスタ42は駆動されず、ボトムホールド電圧Vbhはボトム電圧VBに保持される。
【0030】
比較回路50においては、ボトムホールド電圧Vbhがヒステリシス電源52を介してヒステリシス電圧Vhが加算された参照電圧Vhysとしてコンパレータ51に入力される。コンパレータ51は、コレクタ電圧Vceが参照電圧Vhysよりも大きくなることはないので、通常時であると判定してローレベルの判定信号Sdを出力する。
【0031】
次に、短絡時においては、同様に、制御回路20が外部からオン/オフ指令によってオン駆動するタイミングになると、駆動回路21にオン駆動信号Sonを与えて、IGBT1のゲートにゲート駆動電圧Vonを与える。
【0032】
これにより、時刻t0でIGBT1のゲート電圧Vgがしきい値電圧に達すると、コレクタ電圧Vceは、配線寄生インダクタンスLsの影響でコレクタ電流Icの時間変化でLs・dIc/dtによって電圧VCEから一旦低下し始め、この後、時刻t1以後は再び上昇していく。したがって、コレクタ電圧Vceのボトム電圧VBは、一旦低下した時刻t1の時点の電圧となる。
【0033】
これに対して、判定回路30においては、ボトムホールド回路40により時刻t1のボトム電圧VBがボトムホールド電圧Vbhとして検出され、このボトム電圧VBが保持される。比較回路50においては、ボトムホールド電圧Vbhにヒステリシス電圧Vhを加算した参照電圧Vhysがコンパレータ51に入力される。コンパレータ51は、コレクタ電圧Vceがボトム電圧VBから上昇する途中の時刻txで参照電圧Vhysよりも大きくなるので、短絡時であると判定してハイレベルの判定信号Sdを出力する。これにより、制御回路20は、判定回路30からハイレベルの判定信号Sdが入力された時点でIGBT1をオフさせて遮断するようになる。
【0034】
このような本実施形態によれば、判定回路30としてボトムホールド回路40および比較回路50を設け、コレクタ電圧Vceのボトムホールド電圧から参照電圧Vhysを生成してコレクタ電圧Vceとの比較により短絡状態を判定するようにしたので、従来のDesat方式による検出と異なり、短絡を早期に検出することができるようになり、IGBT1を早期に遮断することで過剰な耐性を持たせたものを使用する必要がなくなり、パワー素子として用いる半導体スイッチング素子の小型化に貢献できる。
【0035】
(第2実施形態)
図3および
図4は第2実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、第1実施形態におけるような判定回路30のボトムホールド回路40によりコレクタ電圧Vceのボトムホールド電圧Vbhを検出する場合に、コレクタ電圧Vceの波形が異なる場合に対応してボトムホールド電圧Vbhをスイッチング毎にリセットできるようにしたものである。
【0036】
図3において、ゲート駆動装置110は、判定回路30に代えて判定回路30aを備えている。判定回路30aは、ボトムホールド回路40に代わるボトムホールド回路40aを備える。ボトムホールド回路40aは、リセットスイッチ44が追加された構成である。リセットスイッチ44は、コンデンサ43の両端子間を短絡可能に接続されている。また、リセットスイッチ44は、制御回路20からリセット信号Swが与えられるとオンしてコンデンサ43の端子間を短絡状態として電荷の放電を実施する。
【0037】
次に、上記構成の作用について説明する。
図4は各部の信号の変化状態を示している。この実施形態では、制御回路20は、オン/オフ指令によりオン指令信号が与えられている期間中は、リセットスイッチ44をリセット解除すなわちローレベルのリセット信号Swを与えてオフ状態に保持し、オフ指令信号が与えられている期間中は、リセットスイッチ44をリセット状態すなわちハイレベルのリセット信号Swを与えてオン状態に保持する。
【0038】
これにより、時刻t0のタイミングでオン指令が与えられると、リセットスイッチ44は、リセット信号Swがローレベルとなってリセット解除となり、ボトムホールド回路40aでは、コレクタ電圧Vceのボトムホールドを行い、コンデンサ43にボトムホールド電圧VBが出力される。これにより、前述した判定処理の動作が行われる。
【0039】
この後、時刻t1でオン指令からオフ指令に切り替わると、制御回路20は、リセットスイッチ44にハイレベルのリセット信号Swを出力してリセット動作させ、コンデンサ43の電荷を放電させ、ボトムホールド電圧Vbhを電圧VCEにする。オフ指令が与えられている期間中は、ボトムホールド電圧Vbhが電圧VCEに保持される。
【0040】
時刻t2で再びオン指令が与えられると、時刻t3のオフ指令が与えられるまでの間、制御回路20はリセット信号Swを解除する。以下、上述と同様にして、制御回路20は、スイッチング毎にリセット解除を実施してコレクタ電圧Vceが変動する場合でも、これに対応してその都度ボトムホールド電圧Vbhがそのときのボトム電圧VBに追随できるように動作させることができる。
【0041】
このような第2実施形態によれば、ボトムホールド回路40aにリセットスイッチ44を設けて、スイッチング毎にボトムホールド電圧Vbhをリセットさせるようにしたので、コレクタ電圧Vceがスイッチング毎に変動した場合でも、ボトムホールド電圧Vbhを正確に検出できるようになる。
【0042】
なお、リセットはオフ指令が与えられている期間中行う上記実施形態の場合に加えて、ノイズなどによる悪影響が無い場合には、オフ指令が与えられた直後に短時間で実施することもできる。
【0043】
(第3実施形態)
図5は第3実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、ゲート駆動装置120は、IGBT1のコレクタ電圧Vceを直接取り込むのではなく、分圧回路2を介して分圧コレクタ電圧Vcedを取り込む構成としている。
【0044】
分圧回路2は、分圧抵抗2aおよび2bを直列接続したもので、コレクタ電圧Vceを分圧回路2の一端子に入力し、分圧抵抗2aおよび2bの共通接続点から分圧された分圧コレクタ電圧Vcedを得る構成である。
【0045】
IGBT1の使用形態によっては、コレクタに高電圧が印加される場合がある。このような場合においては、ゲート駆動装置120においては、高電圧のコレクタ電圧Vceを取り込んで判定回路30により判定を行う構成においても高電圧を取り扱える構成が必要となるので、全体が大型化したり高価になったりすることがあるが、本実施形態のように分圧コレクタ電圧Vcedを取り扱えるようにすることで小型化、低価格化を図ることができる。
なお、分圧回路2は、分圧抵抗2a、2bによる構成に限らず、2個のコンデンサにより分圧する構成とすることもできる。
【0046】
(第4実施形態)
図6および
図7は第4実施形態を示すもので、以下第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、ゲート駆動装置130として、
図6に示すように、判定回路30bの比較回路50aの出力段にフィルタ53を設けている。フィルタ53は、ノイズを除去するためのローパスフィルタの機能を持つもので、コレクタ電圧Vceなどに重畳されるノイズを除去して判定信号Sdを出力しようとするものである。
【0047】
これにより、例えば
図7に示すように、判定回路30bにおいて、入力されるコレクタ電圧Vceが短絡時のものであって、時刻txで短絡状態を判定するハイレベルの判定信号Sdが出力された後に、時刻tyでコレクタ電圧Vceにノイズが重畳した場合には、判定信号Sdが一時的にローレベルの誤検出パルスを出力してしまう恐れがあった。
【0048】
これに対して、この実施形態においては、時刻tyでフィルタ前の判定信号Sdにノイズに起因したハイレベルの信号が出力されていた場合でも、フィルタ53を介して出力される判定信号Sdではノイズによるハイレベルの信号部分が除去されるので、誤検出することなく検出動作が行われる。
【0049】
(第5実施形態)
図8は第5実施形態を示すもので、以下第1実施形態と異なる部分について説明する。
この実施形態では、
図8に示すように、ゲート駆動装置140は、判定回路30cにおいて、比較回路50bとして、ヒステリシス電源52に代えてヒステリシス電圧Vhを変更設定することができる可変ヒステリシス電源54を設ける構成としている。
【0050】
可変ヒステリシス電源54により、ヒステリシス電圧Vhを変更設定することで、システムにおいて発生するノイズで誤動作しないように適切なヒステリシス電圧Vhとすることができる。システムにおいてノイズ量は様々であるから、そのノイズ量に応じてヒステリシス電圧Vhを調整することで誤動作の発生を抑制すことができる。
【0051】
(他の実施形態)
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
【0052】
上記各実施形態では、パワー素子としてIGBTを用いた場合で説明したが、IGBT以外にSiCMOSトランジスタなどのパワー系のゲート駆動型の半導体スイッチング素子のいずれにおいても適用することができる。
上記各実施形態は、第1実施形態を基本とし、その応用として示しているが、もちろん他の実施形態に複合的に適用することもできる。
【0053】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0054】
図面中、1はIGBT(ゲート駆動型の半導体スイッチング素子)、2は分圧回路、10、110、120、130はゲート駆動装置、20は制御回路、21は駆動回路、30、30a、30b、30cは判定回路、40、40aはボトムホールド回路、41はオペアンプ、42はトランジスタ、43はコンデンサ、44はリセットスイッチ、50、50a、50bは比較回路、51はコンパレータ、52はヒステリシス電源、53はフィルタ、54は可変ヒステリシス電源である。