(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183835
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20221206BHJP
C08L 27/24 20060101ALI20221206BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20221206BHJP
C08L 23/28 20060101ALI20221206BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08J9/12 CEV
C08L27/24
C08L25/12
C08L23/28
C08K5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021091333
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】西本 豊
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】田中 克幸
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA33
4F074AA35
4F074AA36
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4F074AB01
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4J002BB24Y
4J002BC06X
4J002BD18W
4J002EH146
4J002FD026
4J002FD030
4J002GQ01
4J002HA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、高い発泡倍率を有する押出発泡成形体を提供できる発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】物理発泡剤を1~20重量%含有し、ポロシティが7.5(ml/100g)以下である、押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理発泡剤を1~20重量%含有し、ポロシティが7.5(ml/100g)以下である、押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項2】
溶解度指数(SP値)が7.4以下の物理発泡剤を含む、請求項1記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項3】
発泡倍率(倍)/発泡時揮発分(重量%)が2.0以上である、請求項1又は2に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項4】
前記物理発泡剤が炭素数4~6の飽和炭化水素の少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項5】
前記物理発泡剤がケトンおよび/またはハロゲン化アルキルを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項6】
塩素含有量が60重量%以上75重量%以下である塩素化塩化ビニル系重合体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項7】
平均重合度が300以上3000以下である塩素化塩化ビニル系重合体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項8】
前記炭素数4~6の飽和炭化水素がペンタンを含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項9】
芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリルを構造単位に有する共重合体、アクリル系樹脂、および、塩素化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項10】
フタル酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤およびポリエステル系可塑剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、機械的性質、物理的性質、電気的性質および成形加工性などに優れていることから、多岐の用途に使用されている。例えば、電線やケーブルの被覆材料として、塩化ビニル系樹脂の押出発泡体が使用されている。
【0003】
塩化ビニル系樹脂の押出発泡体は、化学発泡剤(分解型発泡剤)を使用する製造方法と、物理発泡剤(揮発性発泡剤)を使用する製造方法とが挙げられる。
【0004】
化学発泡剤を使用する製法としては、例えば、特許文献1には、塩化ビニル系樹脂、メタクリル酸メチル系共重合体、可塑剤および分解型発泡剤を配合してなるペレット状発泡用塩化ビニル系樹脂組成物を押出発泡成形して発泡倍率1.3~3.5倍の発泡成形体を製造する技術が開示されている。しかし、化学発泡剤を使用する製法は、押出発泡成形に供するペレット状組成物の製造時においては、化学発泡剤の分解を抑制するために混錬温度を下げざるをえず、混錬が不十分になる問題がある。分解温度の高い化学発泡剤を用いた場合には、押出時の温度を上げる必要があり、塩化ビニル系樹脂の劣化が促進されてしまう。そのため、発泡倍率を高めることは難しく、専ら、低発泡倍率の発泡成形体の製造に限られる。
【0005】
一方、物理発泡剤を使用する製造方法としては、例えば、特許文献2には、改質剤として塩素化ポリエチレン及び/又はクロロプレンを含有する塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂組成物ペレットに、特定の溶解度指数を有する有機発泡性発泡剤を含浸後、加熱押出発泡して発泡成形体を製造する技術が開示されている。しかし、当該技術は、高発泡倍率の発泡形成体は得られるものの、物理発泡剤を多量に含浸させる必要がある上、含浸時間の短縮および有機揮発性発泡剤の飛散抑制を達成するには特定の物理発泡剤に限られる。
また、特許文献3にはメルトフロー向上剤として原子数が1~10のアルキル基をもつアルキルメタクレートのホモ重合体または共重合体等を含有するポリ塩化ビニル系樹脂粒状物に、物理発泡剤を含浸後、加熱押出発泡して発泡成形体を製造する技術が開示されている。しかし、当該技術は、高発泡倍率の発泡成形体は得られているものの、物理発泡剤を多量に含浸させる必要があるため、発泡剤の逸散が速まり、安定して高倍率の押出発泡体を得ることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-125536号公報
【特許文献2】特公平2-20654号公報
【特許文献3】特開昭57-1730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い発泡倍率を有する押出発泡成形体を提供できる発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の細孔容積(ポロシティ)および物理発泡剤含有量が特定範囲にある場合に、安定して高い発泡倍率を有する押出発泡成形体を与え得る新規の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を製造することを成功させ、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
[1]物理発泡剤を1~20重量%含有し、ポロシティが7.5(ml/100g)以下である、押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[2] 溶解度指数(SP値)が7.4以下の物理発泡剤を含む、[1]に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[3] 発泡倍率(倍)/発泡時揮発分(重量%)が2.0以上である、[1]又は[2]に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[4]前記物理発泡剤が炭素数4~6の飽和炭化水素の少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[5]前記物理発泡剤がケトンおよび/またはハロゲン化アルキルを含有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[6]塩素含有量が60重量%以上75重量%以下である塩素化塩化ビニル系重合体を含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[7]平均重合度が300以上3000以下である塩素化塩化ビニル系重合体を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[8]前記炭素数4~6の飽和炭化水素がペンタンを含む、[4]~[7]のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[9]芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリルを構造単位に有する共重合体、アクリル系樹脂、および、塩素化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
[10]フタル酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤およびポリエステル系可塑剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[1]~[9]のいずれか一項に記載の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子。
【発明の効果】
【0010】
本発明の押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子によれば、安定して高い発泡倍率を有する押出発泡成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は「A以上B以下」を意味する。また、「Aおよび/またはB」は、「A、B、ならびに、AおよびB」を意味する。
【0012】
本発明に係る押出成形用発泡性塩化ビニル系樹脂粒子(以下、「発泡性塩化ビニル系樹脂粒子」と称することがある。)は、物理発泡剤を1~20重量%含有し、かつ、ポロシティが7.5(ml/100g)以下であることを特徴とする。発泡性塩化ビニル系樹脂粒子に存在する細孔の容積(ポロシティ)を制御することにより、押出発泡成形に供した際に、得られる押出発泡成形体が高い発泡倍率を達成することができる。従来の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子では物理発泡剤を多量に含有させる必要があったところ、本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子では、従来よりも物理発泡剤の含有量が低減してても、同等以上の高発泡倍率の押出発泡成形体を得ることができるため、コスト面でも優れる。
【0013】
本発明の一実施形態に係る発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、ポロシティが7.5(ml/100g)以下であるが、好ましくは7.2(ml/100g)以下であり、より好ましくは6.9(ml/100g)以下であり、更に好ましくは6.7(ml/100g)以下であり、最も好ましくは6.5(ml/100g)以下である。ポロシティが前記範囲であることにより、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子から物理発泡剤が逸散しにくくなり、さらに発泡に必要なゲル化も十分となる。その結果、発泡性塩化ビニル系粒子内における物理発泡剤の残存性が高まるだけでなく、混練性の弱い押出機等を用いた場合においても高発泡倍率の押出発泡成形体を安定的に得ることが可能となる。なお、本発明の一実施形態に係る発泡性塩化ビニル系樹脂粒子のポロシティの下限値は特に限定されないが、例えば、0.5(ml/100g)以上である。本明細書において、ポロシティは、水銀圧入法で測定される細孔容積であり、具体的には後述する測定方法で求めることができる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、発泡倍率(倍)/発泡時揮発分(重量%)が2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.4以上であり、より好ましくは2.7以上であり、更に好ましくは3.0以上である。最大発泡倍率(倍)/発泡時揮発分(重量%)が前記範囲であれば、少ない発泡剤量において高発泡が可能であり、発泡効率に優れた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子であるといえる。本明細書において、発泡時揮発分は押出発泡評価に用いた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を150℃で30分間加熱した際の重量変化率のことであり、具体的には後述する測定方法で求めることができる。なお、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中の揮発分は経時的に変化することから、発泡時揮発分と押出発泡評価とは期間を開けずに測定される。
【0015】
本発明の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、塩化ビニル系樹脂を含有する。塩化ビニル系樹脂としては、特に限定されないが、公知の塩化ビニル系樹脂を使用できる。例えば、塩化ビニルの単独重合体、および、塩化ビニル単量体と塩化ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。具体的には、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体);塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの塩化ビニル系共重合体(以下、「塩化ビニル系共重合体」と称することがある);後塩素化したビニル系重合体、後塩素化したポリ塩化ビニル、後塩素化した塩化ビニル系共重合体、後塩素化した塩素化オレフィン等のビニル系重合体を改質(塩素化等)したものなどを挙げることができる。更には塩素化度40重量%以上の塩素化ポリエチレン等の、化学構造がポリ塩化ビニルと類似する塩素化ポリオレフィンが含まれていても良い。塩化ビニル系樹脂としては、これらを1種又は2種以上の混合物を用いることができる。難燃性と発泡性の両立の点から、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体)、塩化ビニル系共重合体、後塩素化したポリ塩化ビニル、および、後塩素化した塩化ビニル系共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。なお、本明細書において、「塩素化塩化ビニル系重合体」は「後塩素化したポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体)および/または後塩素化した塩化ビニル系共重合体」を意味する。
【0016】
本発明の一実施形態で用いられる塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されないが、下限は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。一方、上限は3000以下であることが好ましく、より好ましくは1500以下である。平均重合度が前記範囲であれば、高い発泡倍率を得られる傾向にある。平均重合度はJIS K6720-2に準拠して測定される。
【0017】
本発明の一実施形態で用いられる塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、20,000以上400,000以下の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が前記範囲であれば、高い発泡倍率を得られる傾向にある。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリスチレン換算分子量で評価される。
【0018】
本発明の一実施形態で用いられる塩化ビニル系樹脂の塩素含有量は、56重量%以上75重量%以下の範囲であることが発泡性を確保する観点から好ましい。より好ましくは、下限値は、60重量%以上、63重量%以上であり、上限値は70重量%以下である。塩素含有量が高いほど高い発泡倍率を得られる傾向にあるが、一方で塩素含有量が高すぎると溶融粘度の上昇により、加工性が著しく損なわれる傾向にある。塩化ビニル系樹脂の塩素含有量は、JIS K7385 B法に準拠して測定される。
【0019】
本発明の一実施形態として、塩化ビニル系樹脂には、発泡性及び難燃性の観点から、塩素化塩化ビニル系重合体が含まれることが好ましく、塩素化塩化ビニル系重合体が主として含まれることがより好ましい。特に限定するわけではないが、塩化ビニル系樹脂100重量%において、塩素化塩化ビニル系重合体が50重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%であり、もっと好ましくは80重量%以上である。一方、上限は塩化ビニル系樹脂100重量%において、塩素化塩化ビニル系重合体が100重量%であることが好ましい。
【0020】
本発明の一実施形態として、塩素化塩化ビニル系重合体は、平均重合度が、特に限定されないが、下限は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。一方、当該平均重合度の上限は3000以下であることが好ましく、より好ましくは1500以下である。当該平均重合度が前記範囲であれば、高い発泡倍率を有する発泡粒子が得られる傾向にある。尚、塩素化塩化ビニル系重合体の平均重合度は、塩素化前の塩化ビニル系重合体の平均重合度と実質的に同一とみなす。上述の通り、塩素化前の塩化ビニル系重合体の平均重合度はJIS K6720-2に準拠して測定される。
【0021】
本発明の一実施形態として、塩化ビニル系樹脂には1種のみを使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の一実施形態の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子に含まれる物理発泡剤は、公知の物理発泡剤を使用でき、特に限定されないが、例えば下記の物理発泡剤が挙げられる。例えば、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、又はシクロヘキサン等の炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2-メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル;ジメチルケトン(アセトン)、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、エチル-n-プロピルケトン、エチル-n-ブチルケトンなどのケトン;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどの炭素数1~4の飽和アルコール;蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル;塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル;トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234e)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(シス-HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234yf)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス-HCFO-1233zd)などのハイドロフルオロオレフィンあるいは塩素化されたハイドロフルオロオレフィン;水、二酸化炭素、窒素などの無機系発泡剤が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
本発明の一実施形態として、物理発泡剤は、溶解度指数(SP値)が7.4((cal/cm3)1/2)以下の物理発泡剤を含有することが好ましい。より好ましくは7.3((cal/cm3)1/2)以下であり、さらに好ましくは7.2以((cal/cm3)1/2)下である。物理発泡剤の溶解度指数が7.4((cal/cm3)1/2)以下のものを含有することで、物理発泡剤と塩化ビニル系樹脂との親和性が高すぎることがなくなり、物理発泡剤の逸散を抑制し易くなり、安定して高い発泡倍率を有する押出発泡成形体が得られ易くなる。一方、物理発泡剤の溶解度指数は6.5((cal/cm3)1/2)以上が好ましく、より好ましくは6.7((cal/cm3)1/2)以上である。溶解度指数が6.5以上の物理発泡剤を用いることで塩化ビニル系樹脂への物理発泡剤の溶解性が高まり、塩化ビニル系樹脂に安定して物理発泡剤が保持され易くなる。
【0024】
本発明の一実施形態として、物理発泡剤には、発泡性の点から炭素数4~6(炭素数4、5および6)の飽和炭化水素の少なくとも一種を含有することが好ましい。炭素数4~6の飽和炭化水素としては、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、およびシクロヘキサンなどが例示される。本発明の一実施形態においては、炭素数4~6の飽和炭化水素として、発泡剤の樹脂への溶解性並びに発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中での保持性の観点から、少なくともペンタンを含有することが好ましい。
【0025】
本発明の一実施形態としては、物理発泡剤としてケトン、ハロゲン化アルキル、エーテル、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが、物理発泡剤の塩化ビニル系樹脂への溶解性向上の観点から好ましく、物理発泡剤としてケトンおよび/またはハロゲン化アルキルを含むことがさらに好ましい。例えば、物理発泡剤として、炭素数4~6の飽和炭化水素の少なくとも1種と、ケトンおよび/またはハロゲン化アルキルとを併用することにより、炭素数4~6の飽和炭化水素の塩化ビニル系樹脂への溶解性を更に向上することができる。ケトンとしてはメチルエチルケトン、アセトン、ジエチルケトンが好ましく、ハロゲン化アルキルとしては塩化メチレン、塩化エチルが好ましい。
【0026】
炭素数4~6の飽和炭化水素と、ケトン、ハロゲン化アルキル、エーテル、ハイドロフルオロオレフィンおよびハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む物理発泡剤を併用する場合、発泡性および発泡剤の保持性の点から、物理発泡剤100重量%中の炭化水素の割合が20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましく、50重量%以上が特に好ましい。または物理発泡剤の塩化ビニル系樹脂への溶解性の観点から、物理発泡剤中の炭化水素の割合は97重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましく、92重量%以下がさらに好ましい。
【0027】
本発明の一実施形態としては、物理発泡剤の含有量は、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子100重量%に対して1~20重量%である。物理発泡剤の含有量は、押出時の可塑化と発泡倍率の観点より、好ましい範囲としては、2~17重量%であり、より好ましくは3~15重量%である。
【0028】
本発明の一実施形態としては、物理発泡剤を含有するものであれば、化学発泡剤を更に含有させても構わない。化学発泡剤としては、公知の分解型発泡剤を使用でき、例えば、重曹、クエン酸塩、アゾ化合物、テトラゾールなどが挙げられる。
【0029】
本発明の一実施形態として、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、加工助剤を含有してもよい。加工助剤としては、塩化ビニル系樹脂に一般的に使用される加工助剤であれば特に問われない。加工助剤としては、例えば、スチレン-アクリロニトリル共重合体のような、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体(つまり、芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリルを構造単位に有する共重合体)、アクリル系樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン系重合体のような耐衝撃改良剤、塩素化ポリエチレン、などが挙げられる。発泡性向上の点から、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、加工助剤として、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体、アクリル系樹脂および塩素化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。塩化ビニル系樹脂の流動性を改善し、成形加工性を改善する観点から、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体および/またはアクリル系樹脂と、塩素化ポリエチレンとを含むことがより好ましい。
【0030】
本発明の一実施形態では、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体を塩化ビニル系樹脂に用いることにより、高発泡倍率の押出発泡成形体を得やすい。
【0031】
芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体における芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α―メチルスチレン、エチルスチレン、ハロゲン化スチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。不飽和ニトリル単量体としては、アクニロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0032】
本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲で、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体は、上記芳香族ビニル単量体及び不飽和ニトリル単量体以外の他の単量体由来の構造単位(すなわち、芳香族ビニル単量体および/または不飽和ニトリル単量体と共重合可能な他の単量体由来の構造単位ともいえる)を有していても良い。芳香族ビニル単量体および/または不飽和ニトリル単量体と共重合可能な他の単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸N-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、N-置換マレイミドなどが挙げられる。
【0033】
芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体中における不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位の好ましい範囲としては、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体全体を100重量%として、好ましくは5~45重量%であり、より好ましくは、8~35重量%であり、更に好ましくは、10~30重量%である。不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位が前記範囲であることで、高発泡倍率の押出発泡成形体を得られやすい。
【0034】
芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体の好ましい態様としては、スチレン-アクリロニトリル共重合体が挙げられる。芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体は、1種のみを使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましい実施形態としては、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体の少なくとも1種としてスチレン-アクリロニトリル共重合体が使用される。芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体は、押出発泡成形体の高発泡倍率を確保しやすい点から、当該共重合体の重量平均分子量が、使用される塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量よりも高いものが好ましい。尚、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリスチレン換算分子量で評価される。芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体として、例えばGalata製のBlendex869等が使用できる。
【0035】
本発明の一実施形態に係る発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中の、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位及び不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位を有する共重合体の含有量は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1~50重量部であることが好ましく、3~40重量部がより好ましく、5~35重量部がさらに好ましく、8~30重量部が特に好ましい。当該含有量の範囲であることにより、高い発泡倍率を有する押出発泡成形体を得やすくなり、かつ、塩化ビニル系樹脂由来の優れた難燃性能が生かされる。
【0036】
アクリル系樹脂の具体例としては、たとえば(a)メタクリル酸メチルを重合させて得られるポリメタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルを重合させて得られるポリアクリル酸メチル、並びに(b)(i)メタクリル酸メチルもしくはアクリル酸メチルと、(ii)メタクリル酸n-ブチルなどのアルキル基の炭素数が2~8のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸エチルなどのアルキル基の炭素数が2~8のアクリル酸アルキルエステル、ブチレン、置換スチレン、アクリロニトリルなどのメタクリル酸メチルもしくはアクリル酸メチルと共重合可能な単量体の少なくとも1種と、の共重合体などがあげられる。アクリル系樹脂は、アクリル系樹脂の重量平均分子量が、使用される塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量よりも高いアクリル系樹脂を使用することが押出発泡成形体の高発泡倍率を確保しやすい点から好ましい。尚、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリスチレン換算分子量で評価される。アクリル系樹脂として、例えばカネカ製のカネエースPA-40等を使用することができる。
【0037】
本発明の一実施形態に係る発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中の、アクリル系樹脂の含有量は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1~50重量部であることが好ましく、5~50重量部がより好ましく、8~30重量部が更に好ましい。当該含有量の範囲にあることでより、高い発泡倍率を有する押出発泡成形体を得やすくなり、塩化ビニル系樹脂由来の優れた難燃性能が生かされる。
【0038】
本発明の一実施形態に係る発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中の、塩素化ポリエチレンの含有量は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1~30重量部であることが好ましく、2~25重量部であることがより好ましく、3~20重量部であることがさらに好ましい。尚、塩素化ポリエチレンの塩素含有量は、JIS K7385 B法に準拠して測定される。
【0039】
本発明の一実施形態として、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤を含有させることにより、発泡効率を向上できる。
【0040】
本発明の一実施形態として、可塑剤には、公知の可塑剤を使用でき、特に限定されないが、例えば下記の可塑剤が挙げられる。例えば、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)等のフタル酸系可塑剤;アジピン酸系可塑剤;トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート(TBP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリフェニルホスフェート(TPP)等のリン酸系可塑剤;トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)(TOTM)等のトリメリット酸系可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ系可塑剤、アジピン酸系ポリエステル等のポリエステル系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、塩素化パラフィン等その他塩化ビニル系樹脂に可塑化効果のある化合物を用いることができる。これらの可塑剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
本発明の一実施形態としては、可塑剤として、塩化ビニル系樹脂のゲル化性の観点から、フタル酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤およびポリエステル系樹脂の群から選択される少なくとも一種が好ましく、より好ましくはフタル酸系可塑剤および/またはリン酸系可塑剤である。塩化ビニル系樹脂のゲル化性が良好な可塑剤を用いることで、物理発泡剤の保持性が向上し易い傾向があり、高発泡倍率の発泡体が得られ易くなる傾向がある。
【0042】
本発明の一実施形態としては、可塑剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、好ましくは1.0重量部以上10.0重量部以下であり、より好ましくは2.0重量部以上9.5重量部以下であり、さらに好ましくは3.0重量部以上9.0重量部以下である。可塑剤の含有量を前記範囲とすることで、発泡時の樹脂粘度の抵抗を小さくすることができるため高い発泡効率となり、かつ樹脂粘度が下がりすぎないことで、高倍発泡となり気泡膜が薄くなった場合においても気泡膜が破れることが防止でき、高倍発泡が可能となる。樹脂粘度が低下しすぎると、発泡過程で気泡膜が破れ、発泡剤が揮散することで所望の発泡倍率がでない問題が生じる。
【0043】
本発明の一実施形態に係る発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他添加剤を含有してもよい。例えば、難燃剤、安定剤、滑剤、造核剤、発泡助剤、帯電防止剤、輻射伝熱抑制剤、溶剤及び顔料・染料などの着色剤等が挙げられる。
【0044】
難燃剤としては、公知の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、ホウ素系難燃剤、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムなどのイントメッセント系難燃剤、メラミンシアヌレート等のメラミン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化化合物が挙げられる。難燃助剤が含有してもよく、例えば、酸化アンチモン、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。
【0045】
安定剤としては、従来より塩化ビニル系樹脂に用いられるものを使用することができる。安定剤としては、例えば、錫系安定剤、フェノール系化合物、リン系化合物、アミン系化合物などの酸化防止剤、エポキシ系安定剤、ゼオライト等が挙げられる。本発明の一実施形態に係る塩化ビニル系樹脂粒子中の、其々の安定剤の使用量は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して10重量部以下であることが好ましい。
【0046】
滑剤としては、エステルワックス、ポリエチレンワックス等のワックス;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩などが挙げられる。
【0047】
造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、ゼオライトもしくはタルク等の無機化合物が挙げられる。
【0048】
輻射伝熱抑制剤としては、近赤外又は赤外領域の光を反射、散乱又は吸収する特性を有する物質が挙げられ、例えば、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、膨張黒鉛、酸化チタン、アルミニウムなどがある。
【0049】
本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲で、塩化ビニル系樹脂に他の樹脂(熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂)を併用してもよい。塩化ビニル系樹脂と他の樹脂を併用する場合、他の樹脂の配合量は、本発明の一実施形態の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0~99重量部が好ましい。
【0050】
本発明の一実施形態の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、粒子の形状は特に問わない。本発明の一実施形態の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子には、一般的な粒状物(例えば、球状、略球状、凸レンズ状、凹レンズ状、紡錘状などの丸みを帯びた小さい粒子)だけでなく、凹みのある粒子も含まれるものとする。尚、本発明の一実施形態の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の粒重量は、押出安定性の観点から、1.3~10mg/粒であることが好ましく、1.7~8mg/粒がより好ましく、2.5~7mg/粒が更に好ましい。
【0051】
本発明の一実施形態の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子からの物理発泡剤の逸散速度を小さくする観点から、真密度が1100kg/m3以上であることが好ましく、1150kg/m3以上がより好ましく、1200kg/m3以上が更に好ましく、1250kg/m3以上が特に好ましい。ここでいう真密度は、後述する測定方法で求めることができる。
【0052】
本発明の一実施形態の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、例えば、以下の2つの製造方法(第1の製造方法、および、第2の製造方法)によって製造することができる。
【0053】
本発明の一実施形態として、第1の製造方法は、
(1-1)塩化ビニル系樹脂、および、必要に応じて各種添加剤を押出機、ロール加工機、バンバリミキサーなどの公知の混練機にて加熱溶融混合する;
(1-2)溶融混錬物を粒子化し、得られた塩化ビニル系樹脂粒子をオートクレーブ中にて、物理発泡剤を含浸させて、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得る。
【0054】
本発明の一実施形態として、第2の製造方法は、
(2-1)塩化ビニル系樹脂、および必要に応じて各種添加剤を押出機に供給して、供給された原料を溶融混練する;
(2-2)物理発泡剤を前記押出機または押出機以降の分散設備によって溶融混練物に溶解および分散させる;
(2-3)押出機以降に取り付けた、小孔を多数有するダイを通じて、加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に発泡剤含有塩化ビニル系樹脂組成物の溶融混練物(樹脂溶融物)を押し出す;
(2-4)溶融混練物(樹脂溶融物)の押し出し直後から、ダイと接する回転カッターにより前記溶融混練物(樹脂溶融物)を切断すると共に加圧循環水により溶融混練物を冷却固化し、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得る。
【0055】
本発明の一実施形態の所定のポロシティを有する発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を容易に得やすい点から、第2の製造方法が好ましい。第2の製造方法は、物理発泡剤と塩化ビニル系樹脂とを溶融混練することにより、溶融樹脂の粘度を低下させることができ、塩化ビニル系樹脂の成形加工温度を下げることが可能となる。その結果、塩化ビニル系樹脂及び添加剤の熱分解が生じにくくなるメリットがある。
【0056】
尚、第1及び第2の製造方法に共通して、塩化ビニル系樹脂は十分にゲル化させることが好ましい。十分にゲル化が行われないと、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子とした場合に、物理発泡剤の散逸速度が大きくなる場合があり、押出発泡成形時に物理発泡剤が寄与し難い傾向にある。そのため、押出発泡成形時における樹脂溶融混錬時に発泡剤をさらに添加する必要がありうる。
【0057】
第1および第2の製造方法として、押出機には一般的な押出機を使用することができ、具体的には、単軸押出機、二軸押出機、タンデム押出機などが挙げられる。タンデム押出機としては、単軸押出機を二機連結したもの、または二軸押出機に単軸押出機を連結したものなどが挙げられる。また、押出機と、スタティックミキサーおよび/またはスクリューを有さない攪拌機などの分散設備とを併用してもよい。
【0058】
第1および第2の製造方法において、樹脂溶融混練時の樹脂温度は、塩化ビニル系樹脂、並びに必要により併用される各種添加剤の熱分解に影響を及ぼす可能性がある。そのため、樹脂溶融物の樹脂温度が130~230℃であることが好ましく、より好ましくは140~220℃であり、更に好ましくは150~210℃である。樹脂溶融物の樹脂温度が130℃以上であれば、樹脂溶融物の樹脂粘度が下がり押出機等の混錬機内での十分な溶融混練が可能となる。樹脂溶融物の樹脂温度が230℃を超えると塩化ビニル系樹脂、並びに必要により併用される各種添加剤の熱分解の虞がある。その結果として発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の劣化を誘発し、発泡性能の低下に繋がる恐れがある。
【0059】
第1および第2の製造方法における造粒工程の条件について説明する。
【0060】
ダイから溶融混練物(樹脂溶融物)を押出す実施形態においては、ダイは特に限定されないが、例えば、好ましくは直径0.3mm~2.0mm、より好ましくは0.4mm~1.5mmの小孔を有するものが挙げられる。
【0061】
ロール加工機等でシート状の溶融混練物を得る実施形態においては、得られたシートを冷却した後、カッターやシュレッダーなどの裁断設備でシート状の塩化ビニル系樹脂粒子を造粒する例が挙げられる。尚、この際のシート状の塩化ビニル系樹脂粒子の厚みは、混練設備であるロール加工機のクリアランスの調整や、得られたシートを更にプレスすることで調整できる。
【0062】
第2の製造方法において、ダイより上流側に取り付けられた押出機の先端圧力が4~20MPaであることが好ましく、より好ましくは6~18MPaであり、7~15MPaであることが更に好ましい。なお、押出機先端圧力は、押出機先端に取り付けられた圧力センサーにて測定される値である。ダイより上流側に押出機が二つ以上取り付けられている場合は、最も下流側の押出機の先端圧力を、本明細書中の押出機先端圧力とする。押出機先端圧力が4MPa以上であれば、溶融混練時に樹脂への物理発泡剤の溶解分散が容易になり、安定的に発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得ることができる。一方で、押出機先端圧力が20MPa以下であれば、溶融混練時のせん断発熱を抑制することができ、塩化ビニル系樹脂、並びに必要により併用される各種添加剤の熱分解が生じにくくなる。
【0063】
第2の製造方法において、ダイより押出される直前の溶融樹脂(樹脂溶融物)の温度は、物理発泡剤を含まない状態での樹脂のガラス転移温度をTgとすると、Tg+20℃以上であることが好ましく、Tg+20℃~Tg+130℃がより好ましく、Tg+30℃~Tg+110℃であることがさらに好ましく、Tg+40℃~Tg+90℃であることが特に好ましい。尚、塩化ビニル系樹脂については、塩素含有量の増加に伴い、ガラス転移温度が上昇する。そのため、使用する塩化ビニル系樹脂の塩素含有量に伴い、ダイより押出される直前の溶融樹脂(樹脂溶融物)の温度を適宜調整することが好ましい。ダイより押出される直前の溶融樹脂(樹脂溶融物)の温度がTg+20℃以上であれば、押出された溶融樹脂(樹脂溶融物)の粘度が低くなり、ダイの小孔詰まりが発生しにくく、実質ダイの小孔開口率の低下が起きない。そのため、得られる発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の形状が歪もしくは不揃いとなる事態を避けることができる。一方で、ダイより押出される直前の溶融樹脂(樹脂溶融物)の温度がTg+130℃以下であれば、押出された溶融樹脂(樹脂溶融物)が固化し易くなり、回転カッターに溶融樹脂(樹脂溶融物)が巻き付き難くなり、安定的に溶融樹脂(樹脂溶融物)を切断できる。
【0064】
ここで、「発泡剤を含まない状態での樹脂」とは、塩化ビニル系樹脂、並びに必要により併用される加工助剤及び添加剤(但し物理発泡剤以外)を含む樹脂を意図する。
【0065】
第2の製造方法において、循環加圧冷却水に押出された溶融樹脂(樹脂溶融物)を切断する切断装置としては、特に限定されない。当該切断装置としては、例えば、ダイに接触する回転カッターで溶融樹脂(樹脂溶融物)を切断して小球化し、得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を、加圧循環冷却水中で発泡することなく、発泡性樹脂粒子を遠心脱水機まで移送して脱水および集約する装置、等が挙げられる。
【0066】
加圧循環冷却水の条件については、塩化ビニル系樹脂、添加剤、物理発泡剤などの種類、および/または各成分の含有量によって調整すべきである。加圧循環冷却水の条件としては、ダイより押し出される溶融樹脂(樹脂溶融物)の発泡が抑制され、安定的にカッターで溶融樹脂(樹脂溶融物)が切断される条件が好ましい。具体的には、加圧循環冷却水の温度条件としては、好ましくは40℃~99℃、より好ましくは50~90℃である。
【0067】
加圧循環冷却水の圧力条件としては、得られる発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の発泡倍率が1.0~1.25倍となるよう、圧力を調整することが好ましい。尚、前記発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の発泡倍率は、基材樹脂の真密度(kg/m3)を発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の真密度(kg/m3)で除した値を指す。ここでいう基材樹脂及び発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の真密度は、重量W(kg)の塩化ビニル系樹脂ペレットまたは発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を、エタノールの入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積V(m3)を求め、算出される。具体的には後述する測定方法から求めることができる。
【0068】
使用する発泡剤の種類にも依存するが、加圧循環冷却水の圧力条件は、好ましくは0.6~2.0MPa、より好ましくは0.7~1.8MPa、更に好ましくは0.8~1.6MPaである。
【0069】
第1の製造方法における、塩化ビニル系樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる条件や設備等は、一般的に行なわれる条件・設備と同様でよく、適宜設定すればよい。
【0070】
本発明に係る発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は、押出機で溶融押出発泡させることにより、高発泡倍率を有する押出発泡体を連続的に製造することができる。発泡性塩化ビニル系樹脂粒子は単独で使用してもよい、その他樹脂を併用してもよい。
【0071】
押出発泡成形で使用される装置および設備としては、公知の装置および設備を用いることができる。例えば、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子、および、必要によりその他樹脂や各種添加剤を押出機に供給し、押出機内で溶融混錬し、発泡剤含有溶融樹脂を押出機先端からダイに押出発泡し、冷却することによって押出発泡体が製造できる。射出発泡装置を装置を用いてもよい。押出機内での溶融混錬の途中において、物理発泡剤を新たに圧入しても構わない。
【0072】
本発明に係る発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を押出発泡成形することにより、板状、シート状、棒状、チューブ状等各種形状の高発泡倍率の押出発泡成形体を得ることができ、用途としては建材、緩衝材、電子部品搬送用トレイ、断熱材、目地材、配管断熱材、発泡管材、盛土、リチウムイオン電池用断熱材、通函、衝撃吸収材、サンドイッチパネル芯材、天井材、パーティション、自動車内装材、鉄道車両部材、船舶部材、電線・ケーブル被覆材、断熱サイディング、パネル壁紙用基材、ドア芯材、木材代替ボード、化粧板、壁紙、フロア材、吸音材、防音材、スポーツ用品、養生材、住設部材、防振材、クッション材、ろ過材などに使用されうる。
【0073】
本発明の一実施形態は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の一実施形態の技術的範囲に含まれる。
【実施例0074】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の一実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
なお、以下の実施例及び比較例における測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0076】
<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子のポロシティ評価>
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を試料としてオートポアIV9500(米国マイクロメリティックス社製)を用いて下記条件にてポロシティ評価を実施した。
【0077】
試料として発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を0.35g秤量し、次に記載するセルに加えた。用いたセルは粉体用のセルであり、試料室容積は5cc、最大測定容積0.366cc、全ステム容積0.392cc、最大水銀頭圧4.45psia、セル定数11.117μL/pF、外形寸法I(測定ステム長)215mm、H(全ステム長)230mm、D(ステムの直径)1.473mmであるセルを用いた。また、Correction methodはNoneを選択し、補正せずに測定を実施した。試料を加えたセルを50μmHgまで減圧し、さらに5分間減圧を行った(50μmHgの状態を5分間保持させた後に、水銀を導入し評価した)。
【0078】
減圧後のセルに1.52psiaの圧力で水銀を満たし後に、当該水銀に2~33000psiaまで圧力を加え、ポロシティ評価を行った。なお、明細書記載中では、20~33000psiaの圧力範囲で試料中に侵入した水銀量をポロシティと称する。試料である発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の細孔中に侵入した水銀量は、試料容器内の水銀柱の変位から求めることができる。変位は、水銀と試料容器の管壁にある電極間の静電容量の変化から算出される。オートポアIV9500は静電容量型検出器により、測定された静電容量から水銀柱の変位を計算し、試料中に侵入した水銀量(ポロシティ)を算出している。
【0079】
測定時の圧力プロフィールは以下の通りであり、記載の各圧力(圧入圧力)まで昇圧し、各圧力における平衡時間は10秒で測定を行った。
【0080】
2psia、3psia、4psia、5.5psia、7psia、8.5psia、10.5psia、13psia、16psia、20psia、23psia、25psia、30psia、40psia、50psia、60psia、75psia、90psia、115psia、140psia、175psia、220psia、270psia、330psia、420psia、520psia、640psia、700psia、800psia、990psia、1200psia、1300psia、1400psia、1500psia、1600psia、1700psia、1900psia、2050psia、2200psia、2350psia、2500psia、2650psia、2700psia、2850psia、3000psia、3250psia、3500psia、3750psia、4000psia、4250psia、4500psia、4740psia、5000psia、5300psia、5500psia、5750psia、6000psia、6250psia、6500psia、6750psia、7000psia、7500psia、8000psia、8500psia、9000psia、9300psia、9600psia、10050psia、10500psia、11000psia、11500psia、12000psia、12600psia、13100psia、13650psia、14000psia、14340psia、14600psia、15000psia、15450psia、15800psia、16200psia、16650psia、17000psia、17350psia、17700psia、18100psia、18450psia、18800psia、19200psia、19800psia、20300psia、20800psia、21200psia、21650psia、22050psia、22650psia、23200psia、23750psia、24100psia、24650psia、25050psia、25450psia、25900psia、26450psia、26950psia、27400psia、27800psia、28250psia、29000psia、29500psia、30000psia、30450psia、30900psia、31300psia、31800psia、32350psia、33000psia。
【0081】
測定時の細孔半径はr=2δcosθ/Pで算出される。r:細孔半径、δ:水銀の表面張力、θ:水銀の接触角、P:圧入圧力であり、それぞれ水銀の接触角を130°、表面張力を485dynes/cmとして試料に存在する細孔を算出した。圧入接触角および退出接触角ともに130°とし、水銀密度は13.5335g/mlとした。
【0082】
<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子に含まれる発泡剤量(揮発分)の測定>
発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の重量W1(g)を測定した。次に、当該発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を150℃のオーブンで30分加熱し、その後、加熱された発泡性塩化ビニル系樹脂粒子をデシケータ内にて室温で30分冷却した。その後、再度、冷却された発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の重量W2(g)を測定した。この加熱前後の重量差(W1-W2)を発泡性塩化ビニル系樹脂粒子中の発泡剤含有量とした。本明細書中では、この発泡剤含有量を揮発分と称することがある。前述の揮発分は以下の式で算出した。
【0083】
揮発分(重量%)=(W1-W2)/W1×100
後述する押出発泡評価時(すなわち押出発泡評価実施日と同日)に、上述の条件で測定し上記式に基づき算出した値(揮発分)を、発泡時揮発分(重量%)と称する。
【0084】
<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の48時間後揮発分と48時間後揮発分保持率>
製造直後の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子約200gをチャック付きサンプル袋に入れ、23℃×50%RH恒温恒湿室にて48時間保管した後に、上述の発泡剤量(揮発分)の測定と同条件にて測定し、算出した値(揮発分)を、48時間後の揮発分とした。また、48時間後の揮発分保持率については、48時間後の揮発分の値を発泡剤の添加量で割った値を48時間後の揮発分保持率とした。
【0085】
<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の粒重量の測定>
0.01mgまで測定できる電子天秤を用いて、ランダムにサンプリングした発泡性塩化ビニル系樹脂粒子100粒の重量を測定し、以下の式で粒重量を算出した。
粒重量(mg)=[発泡性塩化ビニル系樹脂粒子100粒の重量(mg)]/100
【0086】
<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の真密度測定>
重量W(kg)の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を、エタノールの入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積V(m3)を求め、以下の式で算出した。
発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の真密度(kg/m3)=(W/V)
【0087】
<塩化ビニル系樹脂ペレットの真密度測定>
後述の(A-1)塩素化塩化ビニル系樹脂と加工助剤、安定剤、滑剤等の副原料をブレンドし均一な配合物を得た。その後、押出機を用いて当該配合物を溶融混練し、塩化ビニル系樹脂ペレットを得た。重量W(kg)の塩化ビニル系樹脂ペレットを、エタノールの入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から体積V(m3)を求め、以下の式で算出した。
塩化ビニル系樹脂ペレットの真密度(kg/m3)=(W/V)
【0088】
前述の方法に基づき、測定された塩化ビニル系樹脂ペレットの真密度は1430kg/m3であった。
【0089】
<押出発泡成形体の倍率測定>
実施例および比較例で得られた各発泡体から約1.5gの試験片を準備し、試験片の重量W(g)を測定し、その後、水の入ったメスシリンダー内に沈め、メスシリンダーの液面上昇分(水没法)から見かけ上の体積Va(cm3)を求め、発泡体密度を下記式より算出した後に、発泡倍率を下記式より求めた。なお樹脂真密度は上述の1430kg/m3を用いた。
発泡体密度(kg/m3)=W/Va×1000
発泡倍率(倍)=樹脂真密度/発泡体密度
以下に、実施例及び比較例で用いた原材料を示す。
【0090】
<発泡効率の算出>
押出発泡成形体の倍率測定で得られた値を、発泡時揮発分の値で割った数値を、発泡効率として算出した。
【0091】
(塩化ビニル系樹脂)
(A-1)塩素化塩化ビニル樹脂[(株)カネカ製、H716S、平均重合度600、塩素含有量67.6重量%]
【0092】
(加工助剤)
(B-1)アクリル系樹脂[(株)カネカ製、カネエースPA-40]
(B-2)スチレン-アクリロニトリル共重合体(Galata製、Blendex869、重量平均分子量286万、共重合体中のアクニロニトリル由来の成分比率;20重量%)
【0093】
(発泡剤)
(C-1)ノルマルペンタン[富士フィルム和光純薬(株)製、SP値:7.0((cal/cm3)1/2)]
(C-2)アセトン[富士フィルム和光純薬(株)製、SP値:10.0((cal/cm3)1/2)]
(C-3)塩化エチル[日本特殊化学工業(株)製、SP値:9.2((cal/cm3)1/2)]
【0094】
(実施例1)
[発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の作製]
塩素化塩化ビニル樹脂(A-1)100重量部に対し、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B-2)13重量部、更にブチル錫メルカプト系安定剤5重量部、滑剤(エステルワックス、ポリエチレンワックス)3重量部、塩素含有量35重量%の塩素化ポリエチレン5重量部、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)5重量部を加え、配合物を得た。この配合物をブレンドし均一な配合物を得た。その後、かみあい型同方向二軸押出機にて配合物を溶融混練し、上記配合比率のペレットを得た。得られたペレットは、塩素化塩化ビニル系樹脂のペレットであり、基材樹脂と称される場合もある。得られたペレットを、二軸押出機に40kg/hrのフィード量で供し、ペレットを溶融混練した。使用した二軸押出機は、軸径φ40mmのかみあい型同方向二軸押出機である。
【0095】
φ40mm同方向噛み合い二軸押出機の途中から、前記ペレット100重量部に対して、発泡剤としてノルマルペンタン(C-1)8.7重量部とアセトン(C-2)3.8重量部とを圧入した。その後、二軸押出機先端に取り付けられた継続管、160℃に設定した単軸押出機、ギアポンプ、ダイバータバルブを経て、溶融混練物(樹脂溶融物)を冷却した。続いて、ダイバータバルブの下流に取り付けられた直径1.0mm、ランド長3.5mmの小孔を30個有する220℃に設定したダイから、吐出量45kg/hrで、温度60℃及び1.3MPaの加圧循環水中に樹脂溶融物を押出した。この際の押出機先端圧力は15MPaであり、溶融物の樹脂温度(すなわち、押出機先端の樹脂溶融物の樹脂温度)は155℃であった。なお、実施例・比較例において押出機先端とは、単軸押出機先端を指す。押出された樹脂溶融物は、ダイに接触する回転カッターを用いて、切断・小粒化され、遠心脱水機に移送されて、粒重量5.2mgの発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得た。得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を、前述の<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の真密度測定>に記載の方法にて真密度を測定した結果、1308kg/m3であった。
【0096】
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の48時間後揮発分と48時間後揮発分保持>に記載の方法にて48時間後揮発分と48時間後揮発分保持を評価した。結果を表1に示す。
【0097】
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を10℃で7日間保管した後に、前述の<発泡性塩化ビニル系樹脂粒子のポロシティ評価>に記載の方法にてポロシティを評価した。結果を表1に示す。
【0098】
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を押出機に供給し、押出機内で溶融混錬し、発泡剤含有溶融樹脂を押出機先端からダイに押出発泡し、冷却することによって、押出発泡体を得た。押出発泡体を得るために用いた装置としては、φ90mmの単軸押出機および単軸押出機先端に取り付けられたギアポンプおよび直径1.0mm、ランド長3.5mmの小孔を30個有する220℃に設定したダイを用いた。この時、吐出量は45kg/hとなり、ギアポンプ前後の圧力が13MPaとなるように押出機およびギアポンプの回転数を調整し、ダイでの樹脂温度が140℃となるように押出機温度を設定した。得られた押出発泡体の発泡倍率を<押出発泡成形体の倍率測定>に記載の方法にて測定した。また用いた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の揮発分についても、 <発泡性塩化ビニル系樹脂粒子に含まれる発泡剤量(揮発分)の測定>に記載の方法にて測定を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例2)
実施例1において、発泡剤としてノルマルペンタン(C-1)6.25重量部と塩化エチル(C-3)6.25重量部に、単軸押出温度を160℃に、加圧循環水温度を70℃に変更した以外は実施例1と同様にして、粒重量5.0mg、真密度1302kg/m3の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得た。この際の押出機先端圧力は13MPaであり、溶融物の樹脂温度は166℃であった。
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を実施例1と同様にして48時間後揮発分と48時間後揮発分保持評価およびポロシティ評価を実施した。
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を実施例1と同様にして押出発泡評価、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の揮発分の測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0100】
(実施例3)
実施例1において、スチレン-アクリロニトリル共重合体(B-2)13重量部をアクリル系樹脂(B-1)10重量部とし、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を0重量部とし、発泡剤としてノルマルペンタン(C-1)11.7重量部とアセトン(C-2)0.8重量部に、単軸押出機の設定温度を185℃に、加圧循環水温度を70℃に変更した以外は実施例1と同様にして、粒重量2.9mg、真密度1344kg/m3の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得た。この際の押出機先端圧力は12MPaであり、溶融物の樹脂温度は186℃であった。
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を実施例1と同様にして48時間後揮発分と48時間後揮発分保持評価、ポロシティ評価および押出発泡評価を実施した。
【0101】
評価結果を表1に示す。
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を実施例1と同様にして押出発泡評価、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の揮発分の測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0102】
(比較例1)
実施例3において、発泡剤をノルマルペンタン(C-1)13.1重量部に変更した以外は実施例3と同様にして、粒重量2.0mgの発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を得た。この際の押出機先端圧力は12MPaであり、溶融物の樹脂温度は187℃であった。
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を実施例1と同様にして48時間後揮発分と48時間後揮発分保持評価、ポロシティ評価および押出発泡評価を実施した。
【0103】
評価結果を表1に示す。
得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を実施例1と同様にして押出発泡評価、発泡性塩化ビニル系樹脂粒子の揮発分の測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0104】
(比較例2)
実施例1にて得られた発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を23℃×50%RH環境下で揮発分が0.7wt%となるまで静置した。揮発分が0.7wt%の発泡性塩化ビニル系樹脂粒子を用いて、押出発泡評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】